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134(平成17年6月)(PDF文書)

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134(平成17年6月)(PDF文書)
畜産技術センター情報
No.134
飼料イネWCS消化試験
イタリアンライグラスの反転集草作業
2005.6
広島県立畜産技術センター
広島県庄原市七塚町 584
TEL:0824−74−0331
◇ ◆ ◇ ◆ も く じ ◆ ◇ ◆ ◇
◇課題紹介◇
成分調整堆肥による土地利用型農作物の減化学肥料栽培技術--------- 1
飼料用稲と粕類主体の搾乳牛用発酵 TMR 飼料の調製技術の開発--- 3
◇研究速報◇
体外受精胚の凍結保存技術の検討--------------------------------------------- 5
飼料作物品種選定と飼料分析--------------------------------------------------- 6
◇トピック◇
硝酸態窒素の簡易測定研修会を開催しました------------------------------ 7
水田放牧推進のための指導者研修会を開催しました--------------------- 8
◇ニュース◇
当センターの研究員が学位を取得しました--------------------------------- 9
☆当センターのホームページを御覧ください☆
当センターでは、ホームページを公開しています。
(アドレス→http://www.hiroshima-chikugi.jp)
是非一度御覧になってみてください。
(ホームページの内容)
①「畜産技術センター情報」をはじめ,「研究報告」や
「最新の畜産技術」等の刊行物の内容を掲載
②研究成果発表会の発表内容を掲載
③肉用牛飼料計算ソフト「飼葉桶」の提供
④広島牛改良の最新情報の掲載 etc…
◇ 課題紹介 ◇
成分調整堆肥による土地利用型農作物の減化学肥料栽培技術
背景・目的
食の安全・安心への志向が強まるなか,化学肥料に頼らない農産物の栽培と供給
の機運が高まっており,化学肥料に代替できる家畜ふん堆肥は地域の資源として活
躍の場が期待されています。牛,豚,鶏の家畜ふん堆肥は,地力増進効果や肥料効
果に特性があることが,また,作物には養分要求特性があることが知られています。
そこで,作物の養分要求特性に合わせて,家畜ふん堆肥や食品製造副産物の成分
特性を利用した混合堆肥を製造し,その成分を調整した堆肥を用いて作物を栽培し,
化学肥料の代替効果,地力増進効果を明らかにし,水稲等土地利用型農作物の減化
学肥料栽培技術を農業技術センターと共同で研究します。
期待される成果
(ア)成分調整堆肥利用による土地利用型農作物の栽培基準を作成することにより,
耕畜連携による資源循環型農業が推進できます。
(イ)「安心!広島ブランド」認証の特別栽培農産物生産の推進が図られます。
(ウ)堆肥の流通が促進され,畜産農家の経営安定と規模拡大が可能になります。
研究の内容とスケジュール
研 究 内 容
H 17
(ア)飼料イネ・イタリアンライグラス二毛作体系に
適した堆肥の成分調整と栽培技術
a 牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の組合せによる成
分調整
b 飼料イネ・イタリアンライグラス二毛作体
系の栽培技術
(イ)トウモロコシ・イタリアンライグラス二毛作
体系に適した堆肥の成分調整と栽培技術
a 牛ふん,コーヒーかす,茶かす等の混合堆
肥化による成分調整
b トウモロコシ・イタリアンライグラス二毛
作体系の栽培技術
c 周産期病の予防効果の確認
(ウ)水稲,大豆栽培に適した堆肥の成分調整と栽
培技術
a 水稲用堆肥の成分調整と栽培技術
b 大豆用堆肥の成分調整と栽培技術
c 栽培実証試験
−1−
H 18
H 19
課題を取り上げた背景と研究内容の概要図
「安心!広島ブランド」の推進
環境にやさしい水田農業の推進
耕畜連携による資源循環型農業の推進
化学肥料に頼らない農作物の生産
(土地利用型農作物の推進)
減化学肥料栽培
無化学肥料栽培
化学肥料代替堆肥の製造
(肥料効果・地力増進効果)
家畜ふん堆肥の特性
作物別養分要求特性
成分調整
鶏ふん堆肥
飼料イネ・牧草
水稲
(二毛作体系)
牛ふん堆肥
大豆
K含量の少ない牧草
焼却灰
発酵促進効果
食品製造副産物の特性
K含量の少ない
堆肥
消臭効果
フィールド試験
施用基準の作成
( 農業技術センターとの共同研究 )
【環境資源部】
−2−
◇ 課題紹介 ◇
飼料用稲と粕類主体の搾乳牛用発酵 TMR 飼料の調製技術の開発
背景・目的
現在,飼料イネの作付面積は全国で 5,300ha,広島県で 120ha 前後になっていま
すが,飼料イネホールクロップサイレージ(WCS)の利用は,収穫した水田に近い
畜産農家に限られています。 飼料イネ WCS の生産拡大には,ある程度広範囲に流
通させる新たな取組みが望まれています。 一方,地域の莫大な食品製造副産物の利
用も限られています。そこで,混合飼料(TMR)供給センターの機能支援のため,
飼料イネ WCS と食品製造副産物を組み合せて調製した TMR の迅速成分測定技術法
の開発,長期貯蔵に耐えうる発酵 TMR の調製技術,安定した乳生産が可能な TMR
の給与技術を開発し,飼料イネ WCS と食品製造副産物の広域流通を推進します。
期待される成果
(ア)飼料イネの栽培面積が拡大し,WCS の広域利用が進みます。
(イ)飼料自給率が向上します。
(ウ)酪農家の飼料調製に係る労力が低減します。
研究の内容とスケジュール
研 究 内 容
(ア)TMR センターにおける
品質管理技術の確立
a サンプリング技術の開
発
b 迅速分析技術の開発
H17
H18
H19
摘 要
TMR サンプリング技
術の開発
近赤外分光分析によ
る条件解明
(イ)高泌乳牛用 TMR 調製
技術の開発
a TMR の発酵特性の解
明
食品製造副産物等の
混合割合の違いが
TMR の発酵品質や貯
蔵性に及ぼす影響を
解明
乳牛精密飼養試験
b TMR の乳牛用飼料と
しての価値解明
c TMR 給与効果の解明
TMR の広域流通およ
び農家給与実証
共同機関:中央農総研センター,畜草研(筑波・那須),近畿中国四国農研センター,
千葉畜総研センター,(株)雪印種苗・千葉研究農場,(有)TMR 鳥取,
広島県酪農業協同組合
−3−
課題を取り上げた背景と研究内容の概要図
TMR:Total Mixed Rations
牛が、必要な養分をバランスよく摂取できる
ように、数種の配合原料を混合した飼料。
【飼養技術部】
−4−
◇ 研究速報 ◇
体外受精胚の凍結保存技術の検討
1
成果の概要
体外受精胚の保存にガラス化法(マイクロドロップレット)は有効であり,受胎性も新鮮
胚を用いた場合と同様に高い水準でした。
ガラス化保存液の耐凍剤濃度は前処理液で 10%,保存液で 30%が最適でした。
金属刃による栄養膜細胞の一部バイオプシーによる性判別胚の保存にもガラス化法が有
効でした。しかし割球 2 分離胚の受胎性は,改善されませんでした。
2 技術の内容
(ア)体外受精胚の凍結保存法の検討
a ガラス化保存液のエチレングリコール濃度を前処理液では 10%に増加させ,保存液で
は 30%に低減させることで,胚の生存性や総細胞数を改善することができました。
b マイクロドロップレット法で保存した胚は,新鮮胚と同等の高い受胎性を維持するこ
とができました。
(表 1)
(イ)体外培養及び修復培養の検討
a mSOF 培養液に牛血清アルブミン 8mg/ml を添加することで従来法と同等の発生率を維
持することができ,牛胎仔血清を用いない培養系を確立することができました。
b 培養液中にプロテインキナーゼ阻害剤(PD98059)を 5μg/ml 添加することで,胚の
発生率と胚盤胞期胚の細胞数を増加させることができました。
(ウ)受精時期調節技術の検討
a 未成熟卵子にロスコビチン 25μM で処理することで,4 時間加温したまま短期保存す
ることが可能であり,短期保存した胚から正常な産子を得ることができました。
表1 体外受精胚の凍結保存成績
24h後生存率(個数) 総細胞数±S.E.(個数)
163.4±5.6(41)a
Intact 新鮮
100.0 ( 43/ 43) a
b
116.5±5.0(70)b
Intact 緩慢凍結
84.3(102/121)
Intact ガラス化
97.1( 34/ 35)a
146.3±5.8(32)a
a
性判別 新鮮
100.0 ( 21/ 21)
105.3±7.4(15)a
b
76.5±6.1(22)b
性判別 緩慢凍結
53.7( 36/ 67)
79.5±5.8(25)b
性判別 ガラス化
90.5( 38/ 42)a
a
90.1±5.7(35)
割球2分離 新鮮
100.0( 40/ 40)
b
割球2分離 緩慢凍結
66.7( 14/ 21)
70.6±6.1(14)
b
84.6±7.6(28)
割球2分離 ガラス化
73.7( 28/ 38)
受胎率(頭数)
68.4 (13/19)
38.9( 7/18)b
83.3(10/12)a
100.0( 4/ 4)
100.0( 1/ 1)
63.2(12/19)
61.1(11/18)a
0.0( 0/ 2)
b
0.0( 0/ 4)
※a,b異符号間で有意差(p<0.05)
3 今後の活用
(ア)胚の融解には,衛生的な施設が必要であり,農家庭先での融解・移植は困難です。
(イ)核移植用レシピエント卵子の保存へ成果を利用します。
【生物工学部】
−5−
◇ 研究速報 ◇
飼料作物品種選定と飼料分析
飼料作物優良品種選定普及促進事業
本県の気候風土に適した飼料作物の奨励品種を選定するため,栽培調査を行っています。
最近の調査では,イタリアンライグラスは早生ではワセアオバ,中生ではドライアン,タ
チムシャが収量的に優れていましたが,ワセアオバは耐倒伏性が劣りました。
トウモロコシは,早生ではセシリア,ZX5198,中生では ZX7605,ZX8872が
収量に優れていました。
スーダングラスでは,KCS209,PC3079が乾物収量に優れていました。
これらの結果は,畜産普及指導及び畜産農家における種子の選定に活用されています。
スーダングラス
トウモロコシ
イタリアン
乾物収量kg/a
170
300
120
110
150
250
100
130
200
90
110
80
150
90
70
100
70
60
50
50
ワセアオバ
ドラ イ アン
タチムシャ
50
セシリア ZX5198 ZX7605 ZX8872
HS8S
KCS209 PC3079
飼料利用高度化対策事業(飼料分析)
近年は肉用牛の給与飼料分析が増加傾向にあります。飼料分析結果は農業改良普及センタ
ー(畜産普及課)等を通じて農家へ情報伝達されています。
普及センター経由で依頼された分析件数は年間約300件で,この分析数値を利用して飼
料給与設計を行い,農家への指導が行われています。
平成 17 年度から「広島県自給飼料分析指導実施要領」が改訂され,一般成分(栄養価)と硝
酸態窒素のみを実施することとし,βカロチン,ミネラル,サイレージ発酵品質については,
緊急性,必要性が認められるものについてのみ行うことになりました。
分析項目および実績(件数)
年 度
9
10
11
12
13
14
15
16
123
128
90
153
286
313
246
193
一般成分分析
403
386
293
308
361
373
403
265
硝酸態窒素含量
83
85
194
90
100
βカロチン含量
127
90
183
158
154
ミネラル含量
57
86
187
181
86
サイレージ発酵品質
【飼養技術部】
−6−
◇トピック◇
硝酸態窒素の簡易測定研修会を開催しました
3月25日,地域事務所,農業改良普及センター等から約 30 名の人が当センターに集ま
り,飼料の硝酸態窒素濃度を簡易に測定する実技研修会が行われました。
粗飼料に含まれる硝酸態窒素による中毒は,畜産経営に大きな損害を生じさせます。これ
を防止するためには,硝酸態窒素濃度を測定し,牛の安全性を考慮した許容給与量を把握す
る必要があります。
平成 17 年度より,飼料利用高度化対策事業の見直しのため,自給飼料の分析体制が変更
されます。これを機に,硝酸態窒素の分析については,現場で簡易かつ迅速にその濃度を測
定できる簡易法の活用を推進することとなりました。
研修会ではまず,農業改良普及センターの佐原専門技術監から,硝酸態窒素中毒の発生機
序や硝酸態窒素の摂取許容量などについての解説がありました。その後,飼養技術部員の指
導の下,乾草やサイレージを用いて簡易法による硝酸態窒素濃度測定の実習を行いました。
研修会で学ばれたことは,今後,農家の庭先で十分に活用していただきたいと思います。
【簡易法による飼料の硝酸態窒素濃度測定概要】
準備物:容器 2 個(容量 1ℓ 程度,100mℓ 単位で目盛を入れておく)
,秤(最小目盛 1g)
,
温湯(80℃以上)
,菜箸(杭)
,硝酸イオン試験紙
① 飼料を容器に秤り取り,温湯(容量測定)を注ぐ。
飼料を菜箸(杭)で押さえて温湯に沈め,10 分間静置する。
② 抽出液全量を別の容器に移す(抽出液の攪拌)
。
③ 試験紙を抽出液に 1 秒間浸す。
1 分後,試験紙の発色と色表を照合し,硝酸イオン濃度を測定する。
※色表の目盛が 1,10,25,50,100,250,500 と値が大きいほど間隔が広いので,必
要に応じて抽出液を希釈し,50ppm 以下で判定する。
①
②
③
<測定>
1秒
<攪拌>
1 分後
<抽出> 10 分
④ 硝酸態窒素濃度の許容給与量を計算する。
原物中硝酸態窒素濃度(ppm) = 試験紙の硝酸イオン濃度(ppm)×希釈倍率*×0.3367**
* :希釈倍率 =(試料重量(g)+温湯量(mℓ ))÷試料重量(g)
**:抽出率 90%,試験紙の判定精度 75%,換算係数 4.4 から導いた係数
許容給与量(原物:kg/日・頭)= 5000÷原物中硝酸態窒素濃度(ppm)
【飼養技術部】
−7−
◇トピック◇
水田放牧推進のための指導者研修会を開催しました
5月11日、当センターにおいて、地域事務所の畜産担当者や集落法人育成担
当者ら40人が参加して、牛の放牧馴致(電気牧柵に触れさせて痛みを認識させ
る方法)研修会を実施しました。
最初に,農業改良普及センター畜産普及課の福田課長が広島県で作成したパン
フレット「放牧のすすめ」をパワーポイントを使用して紹介しました。そのなか
で、放牧は耕作放棄地を簡易な電牧で囲んで牛を放すだけで、非常に省力的で低
コストに実施でき、しかも、除草作業の省力化、景観の向上、獣害の防止等の大
きなメリットがあることを説明しました。
その後、放牧地で当センター飼養技術部岩水部長の指導で、放牧未経験牛を3
頭使用して、牛の馴致の実習を行いました。始めに放牧の準備として、ピロプラ
ズマ病防止法(ダニ対策)や電気牧柵の取り付け方、電流の確認方法等を実習し、
その後、牛の馴致実習をしました。牛の馴致方法は牛の鼻を電線に当てて一度感
電させるだけです。参加者は馴致が簡単にできることに驚いて、
「これなら放牧の
推進も容易にできる」と皆さんが納得されたようです。
今後は水田放牧推進事業で水田放牧のモデル集落をつくるために、現地の3か
所で放牧馴致の現地研修会を開催する予定になっています。
(牛の馴致実習の様子) (放牧準備の説明の様子)
【企画情報部】
−8−
◇ ニュース ◇
当センターの研究員が学位を取得しました
飼養技術部の新出昭吾主任研究員が『高泌乳牛における乳タンパク質向上のための飼
料給与に関する研究』の学位論文を京都大学に提出し、本年 5 月 23 日に博士号(農学)
を取得しました。
学位授与に値すると評価された点の要旨は、つぎのとおりです。
『本論文は、農家においては、泌乳前期に低下しやすい乳タンパク質率の向上が課題
であり、BSE や口蹄疫の発生以来、植物性の粗タンパク質(CP)飼料の利用や地域の自
給粗飼料を用いた乳成分の改善が求められている中で研究された内容である。
1.本研究は、従来明らかでなかった様々な飼料 CP の第一胃内分解パラメータを調
査提示し、また、固定した値で評価されていた第一胃における飼料 CP の分解の程度を、
様々な要因で変化する飼料の通過速度との関係から、第一胃内 CP 有効分解度という新
しい概念により評価したところにある。これにより、第一胃内での CP の利用がより実
際的に推定できるようになったということで評価される。
2.泌乳初期の乳タンパク質率向上に関して、第一胃内 CP 有効分解度を下げた飼料
給与の有効性を明らかにしている。これは、飼料摂取量の少ない泌乳ピーク前(分娩後
3∼6 週)には,乳タンパク質率が CP の高分解度飼料で大きく低下するのに対して,低
分解度飼料ではその低下を抑制できること、また、血液中の尿素態窒素量も低下できる
ことを示している。この研究は、粗飼料給与の割合が少ない高エネルギー飼料給与とい
う農家の実態に合わせて実施されており,特に乳タンパク質率が低下しやすい泌乳初期
の飼料給与指標として優れ、酪農現場への応用度は非常に高く、意義は大きい。
3.酪農家で使われる代表的な自給粗飼料 3 種類の乾物摂取量や咀嚼行動に及ぼす特
性を評価し、混合飼料(TMR)中の自給粗飼料の違いや粗濃比が通過速度に影響するこ
とを明示し、乳タンパク質率に影響する第一胃内での分解性 CP の利用程度は、非繊維
性炭水化物摂取量との関係で評価すべきことを提案している。同時に、エネルギーを最
大限摂取させ反芻生理を維持する TMR 中の適正な粗飼料割合を示し、これらの結果は、
近年利用が増加している TMR の調製や給与において有用な指標であると評価される。
以上のことから、本論文は、実際的
な飼料給与レベルを基本に、第一胃内
CP 有効分解度を用いた乳タンパク質
率向上についての指標を示しており、
家畜栄養学および飼養学の面で貢献は
大きい。
』
本研究の成果は、本人が作成した飼
料給与プログラムを用いて農家現場へ
応用されており、学位授与に相当する
ものと判断されました。
【企画情報部】
−9−
発 行 広島県立畜産技術センター
http://www.hiroshima-chikugi.jp
〒727-0023 広島県庄原市七塚町584
TEL (0824) 74−0331
FAX
(0824) 74−1586
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