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「一般化学技術分野」における標準化戦略 日本工業標準調査会 標準
「一般化学技術分野」における標準化戦略 日本工業標準調査会 標準部会 一般化学技術専門委員会 日本工業標準調査会 標準部会 一般化学技術専門委員会 構成表 (委員会長)川瀬 晃 セイコーインスツルメンツ株式会社 齋藤 壽 角田 欣一 中村 陽 旭化成株式会社 主席研究員 中村 進 独立行政法人産業技術総合研究所 中村 洋 東京理科大学 西川 輝彦 石油連盟 技術環境部長 西本 右子 神奈川大学 顧問 社団法人日本分析機器工業会 技術委員会副委員長 群馬大学 教授 主任研究員 教授 助手 槇 宏 日本プラスチック工業連盟 TC138 国 際 幹 事 事務局長・規格部長 松本 潔 社団法人日本化学工業協会 部長 松本 保輔 財団法人化学物質評価研究機構 森嵜 功一 社団法人日本試薬協会 副会長 課長 (五十音順、敬称略) 目 次 頁 1. 標準化対象分野及び主なデジュール規格制定の状況 2 1.1 標準化対象分野 2 1.2 JIS制定の状況 2 1.3 JISと強制法規等との関係 3 1.4 国際規格の整備動向 4 2.デファクト標準形成の動向 4 3.標準化・国際標準化活動の問題点、課題及びその対策 4 3.1 全般 4 3.2 共通基盤的な規格の整備 4 3.3 試薬関連規格の体系的見直し 5 3.4 標準物質規格と計量法の整合化 5 3.5 一般化学分野における環境・安全の試験方法に係る標準化体系の整備 5 3.6 国際標準化活動の課題 6 -1- 1. 標準化対象分野及び主なデジュール規格制定の状況 1.1 標準化対象分野 一般化学技術専門委員会では、試薬や標準物質、化学分析手法等化学分野で一般的 ・汎用的に使用されるもの(以下「一般化学分野」という。)の標準化及び国際標準 化に関することを調査・検討・審議する。 1.2 JIS制定の状況 一般化学分野のJIS規格は792規格(平成13年3月1日現在) 。この内訳は、 用語規格が6規格、方法規格が97規格、製品規格が689規格である。 当該規格の主な規格、主な原案作成(協力)団体等は、以下のとおり。 分野 標準物質 主なJI S規格 K0001 標準物質−標準ガス−一酸化窒素 数 主な原案作成(協力)団体 37 (財 )化 学 物 質 評 価 研 究 K0040 アルシン標準ガス 化学製品の物 K0061 化学製品の密度及び比重測定方法 化性状測定 機構 16 (社)日本化学工業協会 42 (社)日本分析機器工業会 K0062 化学製品の屈折率測定方法 K0063 化学製品の施光度測定方法 Z7260-107分配係数(1−オクタノール/水)の 測定−フラスコ振とう法 共通的分析方 K0121 原子吸光分析通則 法 K0123 ガスクロマトグラフ質量分析通則 (財 )化 学 物 質 評 価 研 究 機構 工 業 薬 品 ,単 K1200-1 工業用水酸化ナトリウム−第1部:比 152 (社)日本化学工業協会 体 重又は密度の求め方 日本無機薬品協会 (製品,試験方 K1504-2工業用1−ブタノール(ブタン−1−オー 法,等) ル) −第2部:品質 芳 香 族 ・ タ ー K2420 芳香族製品及びタール製品試料採取方 8 ル製品 (社)日本芳香族工業会 法 K2439 クレオソート油・加工タール・タールピッチ 脂 肪 酸 ・ 油 脂 K3351 工業用グリセリン 6 製品 K3501 油脂の脱色試験方法 有機中間物 K4101 有機中間物一般試験方法 日本石鹸洗剤工業会 (社)日本油化学協会 45 化成品工業協会 K4102 クロロベンゼン類 K4128 無水フタル酸 試薬関係 K8001 試薬試験方法通則 ∼生化学試薬 K8007 高純度試薬試験方法通則 を除く K8247 過マンガン酸カリウム(試薬) K8617 炭酸カルシウム(試薬) K9902 高純度試薬−塩酸 -2- 486 (社)日本試薬協会 1.3 JISと強制法規等との関係 一般化学分野の規格は、以下の法令に引用されている。その他、試薬の製品規格の うち約200規格が日本薬局方に引用されている。 <計量法施行規則> K0006:標準物質−標準ガス−メタン K0055:ガス分析装置校正方法通則 K0512:水素 <消防法施行規則> K1106:液化二酸化炭素(液化炭酸ガス) <毒物又は劇物を含有する物の定量方法を定める省令> K8495:p−ジメチルアミノベンジリデンロダニン 1.4 国際規格の整備動向 一般化学分野に関連する国際標準化機構(ISO)の専門委員会(TC)には、T C47(化学)があり、ISO規格は510規格。 (1)関連する国際標準化組織 TC47及び傘下の分科委員会(SC) 、国際審議団体等は、以下のとおり。 TC47では、各種工業に広く使用されている基礎化学製品の化学工業分野におけ る標準化を所掌しているが、他のTCで取り扱われていない分野のものに限られてい る。 TC/ SC TC 47 SC 1 SC 7 名 称 参加地位 主な国内審議団体 対応 JIS の有無 化学 S (社)日本化学工業協会 有 一般試験 P (社)日本化学工業協会 有 アルミニウム精錬に用いる酸化 アルミニウム、氷晶石、ふっ化ア ルミニウム、ふっ化ナトリウム、炭 素質物質 N な し 無 (S:幹事国、P:積極参加メンバー、O:オブザーバーメンバー、N:非メンバー) (2)国際規格制定の現状 一般化学分野のISO規格は510規格。この内訳は、MSDS(化学物質等安全 データシート)の他、用語規格が1規格、試験方法規格が502規格、製品規格が6 規格である。 これらの規格は、現在ISO中央事務局において、古く使用されていない規格を廃 止する方向で全面的に見直し中である。 -3- 2.デファクト標準形成の動向 試薬については、生産者作成のカタログ等が国内で利用されている他、米国化学会の ACS Specifications、ドイツメルク社の Merck Standards 等が世界中で広く利用されている。 3.標準化・国際標準化活動の問題点、課題及びその対策 3.1 全般 平成8年12月の日本工業標準調査会答申「工業標準化制度等の見直しについて」 に基づき、JIS規格として整備すべき分野を重点化するとともに、平成9年度から 平成11年度までの3ケ年計画で、JIS規格及びJIS指定品目についてその必要 性の有無の抜本的な総点検(JISゼロベース見直し作業)を実施したところである が 、一般化学分野792規格のうち約100規格が15年以上改正されていないなど、 現存のJIS規格にあっても、技術水準の確保、SI単位への統一、国際整合性の確 保等の十分な見直しが行われているとはいえない。今後、民間主導の規格原案作成体 制を一層推進するとともに、適宜適切な改正が行われない規格にあっては、強制法令 等に引用されているJIS規格を除き廃止を含めた見直しを行うなど、当該分野の規 格の総点検が必要である。更に、試薬関連、環境安全の試験方法など分野ごとに標準 化体系の整備を実施する必要がある。 また、当該一般化学分野の規格は、多様な分野の研究開発や産業活動に広く利用さ れており、また、環境問題、リサイクル問題等とも深い関わりがある。標準化の検討 にあたっては、関連の技術横断的委員会である環境・資源循環専門委員会等と十分調 整しながら進めていくことが重要である。 3.2 共通基盤的な規格の整備 一般化学分野の規格は、物理化学的性状に関する試験規格や試薬の製品規格のよう に、多様な分野の研究開発や産業活動に利用されるものの、3.1のとおり機動的な 見直し改正が行われていない例が散見されることから、長期的に利用され、またあま りにも汎用的な内容であるため、必ずしも規格ごとの有用性、貢献度がユーザーであ る産業界において十分に認識されていないと考えられる。これは、情報分野等と違っ て標準化が民間の経営問題と直結しないことも一因かもしれない。しかしながら、試 験方法や評価方法の標準化によって製品間の比較が可能となり、製品規格によって使 用目的の適合性の確保が図れるなど、当該規格分野が、研究開発や製品開発の促進、 貿易や商業活動の促進に果たしてきた役割は大きい。 また、近年では、化学物質の自主的な管理の改善に活用されるよう取扱者への化学 物質等安全データシート(MSDS)の提供が法制化されたり、化学物質を利用する 事業者と周辺住民が共存していくためのリスクコミュニケーションの確立が求められ ている。 -4- このような状況で、化学物質の生産者、利用者及び生活者が化学物質の利用に関す る相互理解を促進していくためには、共通基盤的な規格の制定が必要である。 3.3 試薬関連規格の体系的見直し 試薬関連規格は、化学工業を始めとする産業だけでなく、厚生、環境分野において も広く使用され、重要な役割を果たしてきた。また、日本薬局方で約200規格が引 用されている他、他のJIS規格や強制法規等にも多数引用されている。現在、試薬 関連規格は486規格にも上っているが、3.1のとおり、その必要性が薄れたもの 又は改正を必要とするものがあるか否かなど更なる点検が必要である。また規格数が 非常に多いことが規格メンテナンスの観点から障害になっており、この点の改善も望 まれる。このため 、 「試薬ワーキンググループ」を当該専門委員会に設置し、以下の 視点により、試薬関連規格全体の体系的見直しと再構築を図ることとする。 ①デファクト標準との役割分担 試薬関連規格は、生産者作成のカタログ等が広く利用され事実上の標準として機能 している。また、試薬の国際規格は少ない。このことからデジュール規格としてJI S制定等のニーズを整理する。 ②重点化 JIS制定等における重点分野を整理する。 ③強制法規等との関係 強制法規を始めとする試薬JIS利用者の要望等を整理する。 ④指定商品の取扱い 試薬は指定商品と非指定商品が存在するが、そのデマケが明確ではない。このため この考え方を整理する。 3.4 標準物質規格と計量法の整合化 現在、標準物質の供給は計量法に基づくトレーサビリティ制度( JCSS )に従って行わ れているが、JCSS に基づく技術基準と標準物質のJIS規格とは整合がとれていない。 このため、標準物質のJISを計量法の技術基準と整合性を図ることが必要である。 3.5 環境・安全の試験方法に係る標準化体系の整備 これまで環境中の微量有害化学物質の分析方法、化学物質の物理的・化学的特性の 試験方法など、化学安全管理に必要な公的規格としてJISが制定され、広く活用さ れてきた。しかし、化学物質に係る安全問題はその対象が広範囲に及び、現状では、 社会の要請に対応すべく必要な規格が必ずしも整備されているとはいえない。例えば、 MSDSで情報提供事項とされているにもかかわらず、当該項目の試験方法がJIS で制定されていないケースがある。 -5- このため、まず、横断的、俯瞰的見地から化学安全に係る試験方法の標準体系を描 き、これに基づいて、標準の現状把握、及び今後整備すべき公的標準を検討すること が必要である。 3.6 国際標準化活動の課題 ISO/TC47の活動が約20∼30年間活動していなかったため、ISO規格 の陳腐化が生じている。このため、JIS規格を国際整合化すると、内容が後退する という問題が起きている。2000年にJISCが当該TCの幹事国を引き受け、 (社) 日本化学工業協会が幹事国業務を開始したところであり、現在進行中のISO中央事 務局におけるこれら古い規格の廃止作業が終了し次第、TC47における有益な国際 規格の制定が期待される。 しかしながら、TC47では、主要工業国である米国、英国、ドイツ、フランスが Oメンバー(議決権なし)であるなど標準化の活性化に向け少なからず問題が存在す る。また、新規規格作成の Work Item が全くない状況となっている。 今後、TC47の活動の活性化及び日本提案による規格制定のためには、十二分な 幹事国業務遂行に向けた体制の整備、主要工業国のPメンバー登録の実現、魅力ある 規格の探索・提案等が必要である。 -6-