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中高生の理科教育支援に関する教育手法の開発
社会連携研究推進事業プロジェクト 8「理科離れ対策」 中高生の理科教育支援に関する教育手法の開発 Science Lab ~遺伝子から宇宙開発まで~ PJ8-4-1 藤原 美樹(工学部) PJ8-4-2 1. 事業内容 1.1 目的 社会連携研究推進事業プロジェクト 8「理科離れ対策」事業の一環として、 「中高生 の理科教育支援に関する教育手法の開発」を企画実施した。 本プロジェクトの目的は、将来の日本の科学技術の担い手である男子中高生を対象 とした「理科離れ」対策の一環である「実験型理科学習」を通じた教育手法の提案で ある。 科学技術創造立国を国家戦略とし、科学技術基本法及び科学技術基本計画に基づい て総合的に科学技術政策を推進している我が国においては、科学技術者の養成は、最 重要課題のひとつである。 本プロジェクトの対象は、福山市内の中高 6 年一貫教育校の男子中高生であり、有 効な理科教育支援を確立するプロジェクトとして「実験型理科学習」を中心に展開し た。 「実験型理科学習」は、日頃体験できない実験を通して、生徒自身が、見て感じた 体験により、理科の面白さを知り、科学への興味をもってもらうことを目指すもので ある。 1.2 実施計画と実施状況の概要 「実験型理科学習」は、薬学部、工学部、生命工学部から提出された 4 テーマを 1 シリーズとし、男子中高校生を対象に各 2 シリーズ(スターシリーズ、ローズシリー ズ)行った(表 1~4)。 第1回は、実験型理科学習にさきだち、Opening Ceremony(大学会館 3 階第3会議 室)を行った。科学技術分野への興味や関心を喚起する取組みとして、大学施設見学 (グリーンサイエンス研究センター、図書館)を実施した。 Opening Ceremony には、福山市内の中高 6 年一貫教育校の先生方、実施担当者、報 道関係を含め、多数の参加者があった。 第4回には、シリーズ(表 4)のほかに、2 つの公開テーマ(表 5)を実施したほか、 Closing Ceremony、Science Lab Café Meeting を実施した。 Closing Ceremony では、修了生徒に修了証書、参加生徒に参加証明書を授与した。 Café Meeting は、本学工学部卒業生 1 名を講師に招き、講演してもらった。これは、 科学の様々な職種を知るとともに、具体的なロールモデルを示し、理系分野に進学し た将来像を想起できる一助とし、進学意欲の向上に資することを目的としている。 そののち、中高 6 年一貫教育校の男子中高生、本学教員、本学学生、講演者が気軽 に科学の話しをする交流会を設けて懇親を深めた。 PJ8-4-3 表 1 第1回「実験型理科学習」実施内容 実施日:平成 20 年 6 月 15 日(日) シリーズ テーマ ウインドカーを作ろう 担当教員 中 学 生 スター 工学部 小林正明 高 校 生 スター 工学部 エネルギー資源と省エネ 占部逸正 ローズ 薬学部 化学実験「発色する化学」 町支臣成、日比野俐、藤岡晴 人、岸田早由利、東 修平 ローズ アサリの浄化能力を調べてみよう 北口博隆、高村克美 生命工学部 山岸幸正、藤井啓子 佐川宏幸 表 2 第2回「実験型理科学習」実施内容 実施日:平成 20 年 8 月 9 日(土) シリーズ テーマ 担当教員 中 学 生 スター 薬学部 抗体抗原反応を利用して血液型を 小嶋英二朗、伊達有子、 調べる 古謝景子、田中正孝 ローズ 薬学部 ショウガやクズから漢方薬『葛根 岡村信幸、竹村尚子 湯』をつくる 高 校 生 スター 薬学部 危ない薬-麻薬、覚せい剤から違 石津 隆、堤 法ドラッグまで 杉原成美 ローズ 遺伝子の本体である DNA の分離に 広岡和丈、松崎浩明、 生命工学部 トライ 久冨泰資、杉原千紗 シリーズ 中 学 生 高 校 生 広之、 スター 生命工学部 ローズ 生命工学部 スター 生命工学部 ローズ 工学部 表 3 第3回「実験型理科学習」実施内容 実施日:平成 20 年 11 月 9 日(日) テーマ 担当教員 海洋動物の形態観察 高村克美、北口博隆、 山岸幸正、藤井啓子 ミルキークイーンの美味しさにせ 井ノ内直良、中浦嘉子 まる 酵素を使っていろいろな食品の糖 山本覚、松浦史登、 分を測定しよう 太田雅也、宮尾夕子 バベルの塔はなぜ潰れたか? 中山昭夫、藤原美樹 ~構造の強さの秘密~ PJ8-4-4 シリーズ 中 スター 学 薬学部 生 ローズ 工学部 高 スター 校 薬学部 生 ローズ 薬学部 表 4 第4回「実験型理科学習」実施内容 実施日:平成 21 年 2 月 14 日(土) テーマ 担当教員 はっぱの科学分析~植物色素の 抽出と観察~ コンクリートのふしぎ ~コンクリートはどうして固ま るの~ 化学実験 「液体窒素・ドライ アイスの性質・利用」 解熱鎮痛剤って何?~アスピリ ンとアセトアミノフェンの特徴 と定性分析~ 鶴田泰人、井上裕文、 伊達有子、古謝景子 寺井雅和 町支臣成、日比野俐、 藤岡晴人、石津 隆、 岸田早由利、堤 広之、 東修平 古野浩二、杉原成美、 中谷吏菜 表5 公開テーマ「実験型理科学習」実施内容 実施日:平成 21 年 2 月 14 日(土) テーマ 担当教員 中 レーザと光の不思議 香川直己 学 工学部 生 高 薬とサプリメント 冨田久夫、安楽 誠、 校 薬学部 古谷暢子 生 表6 シリーズ名 福山市内の中高 6 年一貫教育校別登録者内訳 福山市立 英数学館 銀河学院 盈進学院 計(人数) 中学生 スター 3 6 3 9 21 中学生 ローズ 6 2 4 1 13 高校生 スター 7 0 3 3 13 高校生 ローズ 0 0 0 13 13 16 8 10 26 60 PJ8-4-5 中学生 高校生 大成館中 6 表7 精華中 4 公開テーマ参加者内訳 尾道中 尾道北 尾道東 2 2 2 如水館 5 1.3 「実験型理科学習」の様子 第 1 回 中学生スターシリーズ 工学部 「ウインドカーを作ろう」 講義の様子 小林正明 ウインドカーの作製開始 第 1 回 中学生ローズシリーズ 生命工学部 「アサリの浄化能力を調べてみよう」 講義の様子 北口博隆 高村克美 山岸幸正 第 1 回 高校生スターシリーズ 「エネルギー資源と省エネ」 講義の様子 占部逸正 濁りを測定中 工学部 佐川宏幸 PJ8-4-6 回路を作製中 計 12 9 第 1 回 高校生ローズシリーズ 「化学実験「発色する化学」」 薬学部 講義の様子 町支臣成 第2回 実験の様子 中学生スターシリーズ 薬学部 「抗体抗原反応を利用して血液型を調べる」 講義の様子 小嶋英二朗 実験の様子 第 2 回 中学生ローズシリーズ 薬学部 「ショウガやクズから漢方薬『葛根湯』をつくる」 講義の様子 岡村信幸 紫雲膏の調製の様子 PJ8-4-7 第 2 回 高校生スターシリーズ 薬学部 「危ない薬-麻薬、覚せい剤から違法ドラッグまで」 講義の様子 第2回 石津 隆 高校生ローズシリーズ 実験の様子 生命工学部 「遺伝子の本体である DNA の分離にトライ」 講義の様子 久冨泰資 DNA の抽出 第 3 回 中学生スターシリーズ 生命工学部 「海洋動物の形態観察」 実験の説明 高村克美 クラゲのエサやり PJ8-4-8 第 3 回 中学生ローズシリーズ 生命工学部 「ミルキークイーンの美味しさにせまる」 講義の様子 井ノ内直良 中浦嘉子 炊飯物性測定の様子 第 3 回 高校生スターシリーズ 生命工学部 「酵素を使っていろいろな食品の糖分を測定しよう」 講義の様子 宮尾夕子 山本覚 ウォーターバスで加温 第 3 回 高校生ローズシリーズ 工学部 「バベルの塔はなぜ潰れたか?~構造の強さの秘密~」 講義の様子 中山昭夫 折板構造物を作製 PJ8-4-9 第 4 回 中学生スターシリーズ 薬学部 「はっぱの科学分析~植物色素の抽出と観察~」 講義の様子 鶴田泰人 第4回 井上裕文 植物色素の抽出 中学生ローズシリーズ 工学部 「コンクリートのふしぎ~コンクリートはどうして固まるの~」 講義の様子 寺井雅和 セメントペーストの作製 第 4 回 高校生スターシリーズ 薬学部 「化学実験 「液体窒素・ドライアイスの性質・利用」」 講義の様子 町支臣成 実験の様子 PJ8-4-10 第 4 回 高校生ローズシリーズ「解熱鎮痛剤って何? 薬学部 ~アスピリンとアセトアミノフェンの特徴と定性分析~」 講義の様子 公開テーマ 古野浩二 実験の様子 工学部 中学生「レーザと光の不思議」 講義の様子 香川直己 反射光の偏光特性を実験 公開テーマ 薬学部 高校生「薬とサプリメント」 実験の説明 冨田久夫 安楽 誠 PJ8-4-11 健康食品の抗酸化作用確認実習 2. 研究成果 アンケート、感想の結果より、参加した福山市内中高一貫教育校の男子中高生は、 「実験型理科学習」において、直接実物に触れ、目の前で現象を体感することに高い 関心をもっていることが見て取れる。 現在の教育内容では、小学校、中学校、高校の段階でゆっくりと実験をやってその 結果を検討するという本来理系の学習に一番重要な部分が欠落しているため、理系学 習の面白さが伝わらない傾向が見られ、この改善が理系離れの一番の対策だと思われ る。教育の基本が物事を体験して理解することから遊離して、ものを憶えることだけ が重要視されていることの結果であろう。 詰め込み教育の弊害と教師の質の低下が、謂わば、受験戦争に勝ち残る教育に力を 集中して、有名進学校というレッテルをつけるための教育になってしまった結果が理 系離れの根底にある。このような傾向が見受けられる現在の教育を本来のあるべき方 向へ戻していくためには、このような実験型の教育システムの導入が一番効果的で、 実際にこのプロジェクトに参加した中高生の生き生きした瞳は体験型学習の必要性 を映し出していると思われる。 科学技術への興味は、本プロジェクトのような「実験型理科学習」によって十分有 効に引き出され、今後ともこのような取り組みが望まれる。 PJ8-4-12