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基幹システム向けMCMパッケージ基板

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基幹システム向けMCMパッケージ基板
基幹システム向けMCMパッケージ基板
パッケージ基板:
基幹システム向け
パッケージ基板:
GigaModule-U
GigaModule-U MCM Package Substrate for Backbone Systems
あらまし
グローバルサーバのGSシリーズなど高性能・大容量・高信頼性システムに採用されてい
るGigaModule-U基板技術について紹介する。GigaModule-Uはマルチチップモジュール
(MCM)用基板であり,半導体素子を封止することなく配線基板に実装することにより高密
度実装を実現するものである。半導体素子は微細な入出力端子を持つため,素子間を配線す
るためには通常のプリント配線板技術では対応できない。このため繊細な回路形成を実現す
るために,薄膜多層技術を適用した配線回路形成技術を開発し1995年から製品採用を開始し
た。今回紹介するのはMCM基板技術の中でも最高峰に位置するGigaModule-U技術で,ラ
イン幅5μ
μm,スペース7.5μ
μmの超高密度配線基板である。これにより,基板サイズ63 mm
×104 mm内に,マルチプロセッサCPUを構築することが可能となった。さらに,この技術
はスーパーコネクトへの要素技術として新たなる展開も期待される。
Abstract
This paper introduces the GigaModule-U substrate technology for high-capacity and high-reliability
systems such as the GS series of global servers. The GigaModule-U is a multi-chip module (MCM)
on which bare semiconductor chips are directly mounted to build high-density assemblies. Because
these semiconductor chips have fine-pitch input/output terminals, a new fine-line formation
technology was required to replace conventional printed wiring board technology. To meet this
challenge, Fujitsu developed a new multi-layer, thin-film technology and started using it in volume
production in 1995.
The GigaModule-U technology provides a 5 µm line width and a 7.5 µm
spacing, which is fine enough for mounting multiple CPU processors in a 104 × 63 mm area. This
multi-layer, thin-film technology is suitable for use as a super connect technology.
森泉清和(もりいずみ きよかず)
草野清治(くさの きよはる)
共通部品統括センター企画部 所属
現在,装置採用部品の企画業務に
従事。
プリント板事業部カストマ技術部
所属
現在,先行技術品の技術営業に従事。
FUJITSU.53, 2, p.139-144 (03,2002)
P139:3月号‐あらまし(9)青校.doc 1/1 最終印刷日時:02/03/26 22:21
139
基幹システム向けMCMパッケージ基板:GigaModule-U
ま え が き
これは30年間で約2,000倍の密度向上である。これには
半導体技術の急激な進歩とともに,プリント配線板の高
GigaModule-Uは,超高密度配線を実現したマルチ
密度化も大きく寄与している。多層薄膜技術を採用した
チップモジュール(MCM)用基板である。MCMは,
MCMのグローバルサーバへの採用は1995年から開始さ
基板の上にウエハから切り出した裸のLSI(ベアチッ
れた(1)
。富士通が開発したMCMには各種タイプが存在し,
プ)を搭載することによって,高密度化・高性能化を実
MCM-1E,MCM-1S,GigaModule-Uとハイエンド情
現する実装形態の一種である。その概念を図-1に示す。
報処理装置の高性能・高速化の追求に伴い,MCM技術
半導体パッケージから出ているリード端子による余分な
は改良が加えられ微細化が進化してきた。GigaModule-
配線を削減し,LSI間の距離を短くすることにより,高
Uは,富士通の配線基板技術として最上位を占め,グ
速動作と小型化の実現をねらいとしている。その代わり
ローバルサーバのGS8900シリーズに採用されている。
にMCMに使用する配線基板は,一般のプリント配線板
GigaModule-Uの概要
と比較して,非常に微細な回路形成が必要となる。これ
は,LSIがベアチップの状態で実装されるために,微細
GS8900シリーズに採用されているCPU基板は63×
なLSIの入出力端子同士を接続しなければならないから
104 mmサイズの基板上に最大13個のLSIを搭載する。
である。これを実現するために,富士通では薄膜回路形
これにより基板上に四つのCPU(中央処理装置機能)
成技術を開発し,ライン幅が5μ
μm,スペースが7.5μ
μm
を構築することが可能となった。このCPUを構成する
という超微細な配線基板を提供してきた。これは,仮に
GigaModule-U基板の外観を図-3に示す。
ラインを5 mm幅とすると,基板がサッカーグランドの
図-4はGigaModule-U基板を含めたCPUモジュールの
大きさになる比率である。本稿ではこの技術について紹
構成断面図である。CPUモジュールは冷却ユニットに
介する。
GigaModule-U基板が組み込まれた構成となっている。
サーバ用プリント基板の変遷
搭載されているLSIは,素子面が冷却ユニットに接する
ことにより,高い冷却性能を持つことが可能となった。
図-2は富士通の大型コンピュータに使用されてきた
これは,GigaModule-U基板の入出力ピン端子をLSI搭
CPU(中央演算ユニット)を構成するプリント配線板
載面と反対側に配置したことによって実現された。この
の大きさの推移を示す。古くは1CPUを構成するために
入出力ピン端子は,1.27 mmの格子上に配置されてお
複数のプリント基板が必要だったものが,近年では1枚
り,約3,000ピンの端子が搭載されている。
の基板上に複数のCPUを搭載することが可能になった。
図-5はLSI,GigaModule-U基板,出力端子ピンの断
面図を示している。LSIは鉛フリーはんだで基板に接続
MCM
LSIベアチップ
微細配線
ラインを5 mm幅で引いたら
基板はサッカーグランドの大きさに相当
されている。GigaModule-U基板は窒化アルミニウムの
1CPUあたりの基板面積(mm2)
一般基板
10,000,000
M-380
1,000,000 M-200
100,000
M-780
M-1800
薄膜テクノロジ
10,000
GS8600
GS8800
1,000
GS8900
100
1970
1980
1990
2000
年
図-1 MCMの概念
Fig.1-Concept of MCM.
140
P140-144:3月号‐本文(9)青校.doc 140/5 最終印刷日時:02/03/25 17:43
図-2 サーバCPU構成基板面積の推移
Fig.2-Reduction of board area per server CPU.
FUJITSU.53, 2, (03,2002)
基幹システム向けMCMパッケージ基板:GigaModule-U
コントローラ
クーリングプレート(液冷)またはヒートシンク(空冷)
サーマルジョイント
リッド
CPU
スペーサ
CPU
コネクタ構造部品
キャパシタ
CPU
CPU
2次キャッシュ
I/Oピン
薄膜多層基板
バンプ
サーマルジョイント
LSI
図-4 CPUモジュールの構成断面図
Fig.4-Cross sectional structure of CPU module.
2次キャッシュ
93.5 × 120 mm
材料
窒化アルミニウム
サイズ
63 × 104 mm
50,000端子以上/MCM
LSI素子I/O
端子数
153μm エリアアレイ
ピッチ
LSI素子搭載数 素子数
13個
2,968 ピン
MCM I/O
端子数
ピッチ 1.27 mm フルマトリックス
LSI
MCMサイズ
ベース基板
図-3 GigaModule-U基板とLSI
Fig.3-GigaModule-U substrate and LSI.
パターン
バンプ
ビア
ポリイミド
窒化アルミ
ベース基板
貫通ビア
I/Oピン
ポリイミド
図-5 GigaModule-UとLSI実装部断面
Fig.5-Cross section of GigaModule-U and LSI bonding.
ベース基板上に薄膜回路とポリイミド樹脂によって多層
配線が行われている。窒化アルミニウムのベース基板に
(1) ベース基板{図-6(a)
}
は貫通ビアが形成されており,LSI搭載面の反対側に入
ベース基板は窒化アルミニウム製で板厚が2.0 mmの
出力ピン端子が搭載されている。
ものを採用しており,銅ペースト 充填 による貫通ビア
このCPUモジュールに搭載されているLSIは,153μ
μm
が形成されている。
じゅうてん
のピッチで入出力端子が格子状に形成されている。この
(2) シード層形成{図-6(b)
}
微細な端子同士を高密度に配線接続するために,
ベース基板上にスパッタ法によって,銅の薄膜を形成
GigaModule-U基板ではライン幅5μ
μm,スペース7.5μ
μm
する。この薄膜銅はシード層と呼ばれ後工程でめっき処
の薄膜回路を最大9層までの多層化によって対応している。
理するときの導体となる。
薄膜多層回路形成技術
(3) リソグラフィ{図-6(c)
}
シード層の上に,光感光性のレジストをコーティング
GigaModule-U技術は,
する。このレジストは紫外線が当たった部分が硬化する
(1) 5μ
μmレベルのファインパターン形成
機能を持っており,現像処理を行うことで図-6(c)の
(2) 20μ
μmレベルのピラー(層間接続導体)形成
ような形状をシード層の上に形成することができる。レ
を高い歩留りで製造することをねらいとして開発された。
ジストに当たる紫外線をガラスマスク(ガラス上に回路
LSIを高密度に実装可能とするためには5μ
μmレベルの
パターンを印刷したもの)で選択的に遮断することで,
配線パターンを精度良く製造する必要がある。さらにそ
硬化させるレジスト部分を選択する。レジストの上
の超微細配線パターンを多層化して層間の接続をとり,
に は,図-6(i)のようにCEM(Contrast Enhanced
十分な配線容量を提供しなければならない。この構造を
Material)とBC(Barrier Coat)を適用している。
歩留り良く製造するために,半導体製造で蓄積された薄
CEMは露光によって透明化する材料であり,これに
膜形成技術,加工技術とプリント基板製造技術を組み合
よって光の回り込みを防止し,レジストに高いコントラ
わせ,自動化とクリーン化で実現している。図-6はプロ
ストで光を照射することができる。レジストとCEMの
セスフローを示す。
間には両材料の干渉を防止するために非常に薄いBCを
塗布している。この構成により非常に微細なガラスマス
FUJITSU.53, 2, (03,2002)
P140-144:3月号‐本文(9)青校.doc 141/5 最終印刷日時:02/03/25 17:43
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基幹システム向けMCMパッケージ基板:GigaModule-U
クのパターン形状が正確にレジストに反映されるように
(a)ベース基板
(b)シード層形成
している。
(4) パターン形成{図-6(d)
}
シード層がこれらの凹みの部分に露出しているため,
電気めっきを行うと銅が露出しているシード層の上に析
- スパッタ
(c)リソグラフィ
(d)パターン形成
出される。これは一般的にプリント基板製造方法でいう,
パターンめっき法である。銅めっきによりレジストの凹
み部分に5μ
μmの銅を析出させる。この後にレジストを
除去すると図-6(d)のようにシード層の上にパターン
とランド部分が選択的にめっきされたものが形成される。
- レジストコート
- 露光
- 現像
(e)リソグラフィ
- 電解銅めっき
- レジスト剥離
(f)ピラー形成
(5) リソグラフィ{図-6(e)
}
上記(4)でパターン形成した物の上に更にレジスト
をコートする。このレジストはピラーを形成するための
もので,このピラーは上下の層を電気的に接続する。ピ
ラーを形成するか所はレジストが円形の凹みを持つよう
に紫外線を露光し,現像処理を行う。
- レジストコート
- 露光
- 現像
(g)PI コーティング
(6) ピラー形成{図-6(f)
}
- 電解銅めっき
- レジスト剥離
- シード層エッチ
(h)平坦化
上記(5)のレジストで円形の凹みがある部分は,銅
のランドが露出しているため,電気めっきによってこの
はくり
部分に銅を析出させることができる。レジストを剥離し,
シード層をエッチングで除去すると,図-6(f)のよう
にパターンと,ランドの上にピラーが突出した形状が完
成する。このとき,ライン幅は5μ
μ m,ピラーの直径は
- PI コート
- CMP
20μ
μm,高さは15μ
μmで層あたり約6万個存在している。
ピラーの形状は析出しためっき品質によって決定してし
未露光部(不透明)
露光部(透明)
ガラスマスク
まうため,確実なピラー形成と,高さばらつきを極限ま
で抑えた,高度なめっき析出技術が要求される。
CEM
BC
ポジフォト
レジスト
未露光部
露光部
シード層
(i)レジスト露光
ビアポスト
(7) PIコーティング{図-6(g)
}
PI(ポリイミド)をピラー形成したパターンの上に
コーティングする。このPIは,非常に平滑にコーティ
ングする必要があるため,半導体製造でも使用されるス
ピンコート技術を採用した。PI樹脂は層間の絶縁樹脂
研磨テーブル
となるため,高速な信号を伝送し,高い信頼性を要求す
るため,低誘電率で高剛性な樹脂を採用している。
(8) 平坦化{図-6(h)
}
ポリイミド
スラリー
CMPパッド
PIをコーティングした後に,ピラーがPI状に露出す
るようにPIを平坦化する。この平坦化プロセスには半
導 体 製 造 に 採 用 さ れ て い る CMP ( Chemical
テーブル
Mechanical Polishing)技術を採用している。図-6(j)
(j)CMPプロセスの概念
のように,回転テーブルに基板を取り付け,スラリー
図-6 プロセスフロー
Fig.6-Process flow.
(研磨剤)とCMPパッドによって平滑化を行う。このプ
ロセスにより,面内の平滑度は1μ
μm以下を実現した。
平坦化したPIの表面にはピラーが露出している。こ
142
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FUJITSU.53, 2, (03,2002)
基幹システム向けMCMパッケージ基板:GigaModule-U
表-1 GigaModule-Uの特性
5μm 7.5μ
7.5μm
回路パターン
ポリイミド樹脂
導体材料
銅
絶縁樹脂
ポリイミド
最小ライン幅/スペース 最小5μ
μm /7.5μ
μm
ピラー径
最小20μ
μm
層数
最大9層
層間距離
μm
5μ
特性インピーダンス
35∼60Ωの範囲で選択可
伝搬遅延時間
∼6.3 ps/mm
電源インダクタンス
6.3 pH
誘電率
3.0
誘電正接
0.002
5μm
電源層
窒化アルミベース基板
(a)回路パターン
φ 20μ
20μm
LSI
キャパシタ
多層薄膜回路
ピラー
キャッシュLSI
ビルドアップ基板
LSI
LSI
LSI
(b)ピラー
図-7 多層薄膜回路の断面
Fig.7-Multi-layer thin film circuit cross section.
LSI間接続
多層薄膜回路
図-8 薄膜回路によるシステムインパッケージ概念図
Fig.8-Concept of system in package with thin film circuit.
の上に,さらにシード層をスパッタによって形成し,パ
ターン形成,ピラー形成を繰り返すことにより,配線回
ランド間距離を非常に近接させることによるノイズ対策
路の多層化が可能になる。多層薄膜回路の断面を図-7に
効果は大きい。また,ポリイミド樹脂の低誘電率,低誘
示す。
電正接特性は,材料の耐熱性,高信頼性とともに高速化,
薄膜多層技術の応用
低損失化に合致する。このように,GigaModule-Uの薄
膜多層回路技術は,これから更に進展するであろう,高
GigaModule-U技術は表-1のような仕様を満足する。
速大容量,高密度化を実現する技術として考えている。
ラインのピッチが12.5μ
μ m(ライン幅5μ
μ m+スペース
GigaModule-U技術の応用の一例として,システムイ
7.5μ
μm)と従来のビルドアップ基板のラインピッチ60
ンパッケージへの適用が考えられる。図-8は,その概念
∼80μ
μ mに比較して数倍の密度向上が可能である。こ
図である(2)
。多層薄膜回路は,フィルム状に形成し有機ビ
れにより,高機能半導体の端子数増大に対応し,多数の
ルドアップ基板に貼り付けている。このフィルム状の多
ファンアウトが可能となる。また,層間距離が5μ
μmと
層薄膜回路の表裏にはLSIが複数個実装されることに
従来のビルドアップ基板の50∼60μ
μ mに対して1/10と
よって,非常に高密度な半導体モジュールをパッケージ
なっており,電源-グランド間のインダクタンスを1/10
ングすることが可能になる。
に,キャパシタンスを10倍にすることができる。これ
む す び
によって,電源インピーダンスを1/10にすることで,電
流変動によって発生するノイズ吸収の効果が高い。高速
GigaModule-Uによる多層薄膜回路技術は,グローバ
回路では,GHz帯の高周波領域での電源インダクタン
ルサーバの性能向上に大きく貢献してきたが,実装技術
スはほとんどインダクタンス成分になるため,電源-グ
業界の見地からもLSIとプリント配線板の配線ルール
FUJITSU.53, 2, (03,2002)
P140-144:3月号‐本文(9)青校.doc 143/5 最終印刷日時:02/03/25 17:43
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基幹システム向けMCMパッケージ基板:GigaModule-U
ギャップを埋める,スーパーコネクトのコンセプトを実
現するための要素技術として重要な位置にある。一般的
な有機プリント基板の特性と,薄膜回路基板の特性の両
参 考 文 献
(1) 森田義裕ほか:GS8600,GS8400の部品および実装技術.
FUJITSU,Vol.47,No.2,p.132-138(1996).
長所を組み合わせることによって,さらなる電子機器の
(2) 高橋康仁:システム・イン・パッケージにおけるマイク
高速化,高密度化に貢献すべく,技術の応用を展開して
ロファブリーケーション.マイクロファブリーケーション
いく所存である。
研究会 第四回公開研究会,p.9-13(2001)
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P140-144:3月号‐本文(9)青校.doc 144/5 最終印刷日時:02/03/25 17:43
FUJITSU.53, 2, (03,2002)
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