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観光に関する戦略的方策

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観光に関する戦略的方策
観光 に 関 す る 戦略的方 策(バージョン 1)
平成 24 年 12 月
気 仙 沼 市 観 光 戦 略 会 議
目 次
1.気仙沼市観光戦略の目的・考え方 .................................................................................... 1
(1)気仙沼市観光戦略策定の背景 .................................................................................... 1
(2)気仙沼市観光戦略が目指す将来像............................................................................. 1
(3)将来目標の設定と戦略の進行管理............................................................................. 2
2.気仙沼の観光をとりまく「現状」と「課題」.................................................................. 4
(1)東日本大震災による影響と被災地に対する関心・注目 ............................................ 4
(2)震災後、気仙沼を訪れる人びとの実像 ..................................................................... 4
(3)観光資源/コンテンツ・広域連携・市民意識 ............................................................ 5
3.気仙沼の観光再生に向けた推進体制の確立 ..................................................................... 8
(1)推進体制..................................................................................................................... 8
(2)キャッチフレーズ ...................................................................................................... 9
(3)観光特区(民間投資促進特区)の導入 ..................................................................... 9
4.観光再生に向けた 7 つの戦略 ..........................................................................................11
戦略1 気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略.......................11
戦略2 水産業と観光産業の連携・融合による新たな付加価値創造戦略...................... 14
戦略3 観光資源の磨き上げによる観光魅力創造戦略 ................................................... 15
戦略4 観光施設の再整備戦略 ....................................................................................... 17
戦略5 観光市場(マーケット)とのコミュニケーション戦略
18
戦略6 広域観光及び外国人観光客受け入れ体制の強化戦略 ........................................ 20
戦略7 「観光地・気仙沼」を目指した観光受け入れ体制の強化戦略 ......................... 21
5.戦略実現に向けた重点プログラムの設定 ....................................................................... 22
(1)観光再生に向けて取り組むべき「重点プログラム」の設定 .................................. 22
(2)
「重点プログラム」の内容と推進イメージ .............................................................. 24
6.戦略実現に向けた観光施設整備 ..................................................................................... 25
■ 施設整備の概要 ......................................................................................................... 25
■ 施設整備に係る継続検討 ........................................................................................... 27
資料編(別添)
0. 気仙沼市観光戦略の成果導出プロセスと指標
1. 気仙沼の観光の現状に関する各種指標
2. 気仙沼観光アンケート報告書
3. オンリーワン検討部会と観光コンテンツ創出部会について
4. 気仙沼における観光コミュニケーション戦略について
1.気仙沼市観光戦略の目的・考え方
(1)気仙沼市観光戦略策定の背景
気仙沼市では、東日本大震災により多くの市民が被災するとともに、水産業を中心とし
た地域産業も甚大な被害を受けた。また、これに伴い市内の人口も減少しており、地域経
済の活力の低下が懸念されている。
こうした状況を踏まえ、平成 23 年 10 月に策定した「震災復興計画」では、食や地域文
化を活用した観光メニューに加え、震災の経験や教訓、復興への過程を新たな観光資源と
する地域再生観光の創出、また、施設の再整備等の推進を通じて交流人口の拡大を図り、
水産業に並ぶ新たな基幹産業としての観光産業の振興に向け、市全体の観光戦略の再構築
が掲げられている。
「震災復興計画」を受け、気仙沼市では、被災を契機として観光の可能性を再発見し、
より魅力的な観光地としての気仙沼の創造を図るため、平成 24 年3月に観光戦略会議を設
置した。その後、市内各地域でフィールドワークを行い、同年6月には「観光再生基本方
針」の策定を目的とした基本方針案検討部会を設置するとともに、5つの専門部会を設け、
様々な観点から、今後の気仙沼観光の振興に向けた戦略的方策について検討を進めてきた
ところである。
(2)気仙沼市観光戦略が目指す将来像
①気仙沼の強みを活かした観光振興
気仙沼は、古くから沿岸近海/遠洋漁業を生業の中心としており、震災を経験してもなお、
「海と生きる」ことを選んだ。
「海と生きる」を実践する地域として、気仙沼は、港町の歴
史や漁労、魚食等の文化を体験でき、地域の人々と交流ができる三陸最大、東北有数の観
光地を目指す。また、東日本大震災後も、ソフト・ハード両面に関する観光基盤の整備を
通じて、震災からの復興過程を学ぶことができる日本唯一の港町を目指すものとする。
そのため、豊かな自然や優れた歴史・文化・産業など、地域の強みを活かし観光資源の
コンテンツ化を進めるとともに、それらの個性と魅力を最大限引き出しネットワーク化を
図ることで、観光客に感動を与えられるようなストーリー性溢れる観光地を構築する。
②ビルド・バック・ベター
新たな観光戦略の検討を通じて、
「Build Back Better」という方針の下、単に、被災した
観光地や観光施設を元の通りに戻すのではなく、被災を契機に、気仙沼市の観光の魅力・
潜在的な可能性を自ら再発見し、より魅力的な観光地としての気仙沼を創りあげる。
③人とのつながりを大事にする観光地
気仙沼の港や魚市場、復興商店街等で働く人々を含め、気仙沼の人々がそれぞれ観光客
とのつながりを持ち、もてなしを行うことで、観光地としての魅力を醸成する。また、人
と人とのつながりを大事にすることで、観光客が気仙沼で得たつながりを求め、何度も再
訪するリピート率の高い観光地を目指す。
1
(3)将来目標の設定と戦略の進行管理 【別添資料0参照】
①目標設定の意義
前述の観光戦略が目指す将来像に向けて、着実に前進させるため、実現すべき目標を設
定し、観光戦略に基づく取り組みの進行管理や見直しに活用できるようにする。
特に観光戦略では、これまで以上に多くの主体が観光産業に参画することを目指してい
るため、目標及びその達成のための道筋が明確になっていないと、こうした関係主体が連
携し効率的に観光戦略を推進していくことが困難である。そのため、実現すべき目標の設
定が必要である。
②目標設定の考え方
観光戦略の最終目標は将来像の実現であるが、そこに至るまでの目標を具体的に設定し
なければならない。
目標年次を平成25年度から平成34年度までとし、後述する重点プログラムの成果(ア
ウトプット)や効果(アウトカム)のタイミングを考慮して、3年以内での実現を目指す
「短期目標」
、6年以内での実現を目指す「中期目標」、10年以内での実現を目指す「長
期目標」と段階的に目標を設定することとする。
別添資料1の「気仙沼市観光戦略の成果導出プロセスと指標」は、目標達成に向けた道
筋を明らかにするため、目標を実現するための施策について、目標達成までのプロセスを
体系化したものである。
具体的には、目標を達成するために投入する資金や人員などの「投入資源(インプット)」、
資源を活用して行うコンテンツ・メニュー開発や連携・ネットワーク化活動、情報発信な
どの「活動(アクティビティ)」
、活動を通して創出される物品や記録などの「成果(アウ
トプット)」
、成果をもとに実現される便益や魅力などの「効果(アウトカム)」に分けて、
観光戦略の成果導出プロセスと成果の達成度を図る指標を整理した。
2
③数値目標
現時点での観光における数値目標は、気仙沼市総合計画の目標を一つの目安とするが、
戦略的な目標については、観光客のリピート率、満足度、観光産業の雇用者数、観光消費
の経済効果など新たに注目すべき評価尺度や、基本となるデータの収集方法などを含めて、
さらに検討を進め設定することとする。
また、これらの評価指標・目標は、観光関連事業者が肌感覚でつかめる、より現実的な
ものとすることにより、事業者の目標達成意欲を喚起することとしたい。
観光客の
入込み数
平成 21年
平成 23 年
平成 28 年
総合計画の基点
現状
総合計画の目標
260万人
22万人
宿泊者数
体験学習
・教育旅行
観光消費額
43 万人
330万人
27 万人
38万人
復興関係者
23 万人
上記以外
4万人
4,121 人
300 人
10,000 人
228億円
127 億円
300億円
3
2.気仙沼の観光をとりまく「現状」と「課題」
(1)東日本大震災による影響と被災地に対する関心・注目 【別添資料1・図表1~3参照】
震災前、気仙沼市には、毎年、約 250 万人前後の観光客が訪れていた。しかし、平成 23
(2011)年3月の東日本大震災により、市内の主要観光施設や宿泊施設には大きな被害が
生じ、また、域外から多くの観光客を集めていた観光イベントも中止された。このことを
受け、平成 23 年の観光入込客数は約 43 万人と震災前の約 1/6 にまで減少している。
一方、東日本大震災による被害状況、その後の被災地の復興状況について、これまで多
くの報道がなされてきたことにより、国内における被災地および気仙沼の知名度は高まっ
ており、これをきっかけに来訪した観光客も見受けられる。人々の被災地への関心・注目
が薄れ風化してしまう前に、積極的な情報発信や観光誘客を図り、「被災地に対する関心・
注目」から「観光地/滞在地としての愛着」に人々の認識をシフトさせていくことが重要
である。
【ポイント】
*被災後、気仙沼を訪れる観光客は大きく減少
*マスメディアの報道を受け、被災地および被災地気仙沼の知名度は向上
*必ずしも観光地としての注目ではないものの、気仙沼への関心・注目が高い現在、観光
誘客に関する取組みを行うことが重要
(2)震災後、気仙沼を訪れる人びとの実像
【別添資料2参照】
震災後、気仙沼を訪れる観光客は大きく減少したものの、若年層のボランティア、また、
被災地の状況を体感するとともに、着地での消費を通じて被災地を支援したいと考える年
配層が、いわゆる「被災地観光」を目的に気仙沼に訪れている。こうした人々は、気仙沼
を訪れ、魅力的な人々と接することで再訪意向を抱くようになっている。ボランティアで
訪れた人々等を中心に、継続的なつながりを構築し、気仙沼のファンとなってもらうこと。
これは、今後の気仙沼への観光客誘致の重要な要素のひとつとなる。
【調査結果】
*震災後、今回が初めての気仙沼訪問である観光客が、全体の 2/3 以上を占める
*震災後の気仙沼訪問者の主な目的は、
「消費による経済支援」
「被災地気仙沼の状況を見
ること」にある
- 20 代の訪問目的:ボランティア
30 代以上の訪問目的:消費による経済的支援
*気仙沼を訪れた者の約半数は、南三陸/仙台/一関など、市外に宿泊している
(旅行日程の都合、気仙沼には宿泊することができなかったとする者が 2/3 を占める)
*気仙沼来訪者の多くが、復興屋台村や第 18 共徳丸など、震災後に設置された施設や被
災状況を中心に市内をめぐっている
*気仙沼を訪問し印象に残った点として、多くの来訪者が「人の温かさ」「親切さ」を挙
げている。また、多くの者が「温かく元気をもらえる気仙沼の人々にまた会いたい」と
いうことを、再訪理由として挙げている。
資料)WAVOC 東日本大震災復興支援プロジェクト気仙沼チーム(学生チーム)
4
(3)観光資源/コンテンツ・広域連携・市民意識
東日本大震災により市内の多くの観光施設が被災したものの、厳然と存在する被災のあ
りさまも、視点を変えれば「観光資源」として活用することができる。既に、気仙沼市を
訪れた観光客に被災状況を含め案内するガイドコースが提供されている
【別添資料1・図
表4参照】
。
また、震災前から、気仙沼には魚市場や新鮮な水産物をはじめとした海の魅力に加え、
歴史・文化的な遺産、リアス式海岸の地形や風景など、様々な観光資源が存在していた。
しかし、複数ある観光資源を絞り込み、磨き上げ、
「気仙沼でしかできない観光体験」を明
確に打ち出し情報発信をしていくことでしか、観光地としての優位性の獲得、他地域との
差別化を図ることはできない。そのため、まずは気仙沼が提供可能な「オンリーワン(唯
一無二)
」の観光資源を特定し、それを地域全体で育てていくことが必要である。
加えて、気仙沼観光の活性化に向けて、近隣の平泉を含め広域的に連携し観光振興を進
めていくことで、気仙沼の魅力の向上、競争力の強化を図ることが求められる。
また、これまで気仙沼市民は必ずしも気仙沼を観光地として認識していなかったことか
ら、今後、観光客を積極的に迎え入れ、水産業とならぶ新たな基幹産業として観光産業の
活性化を図るためには、観光地としての雰囲気づくり、それを下支えする市民意識につい
ても、併せて醸成していくことが求められる。
【ポイント】
*震災後、被災状況や復興の様子の見学に対する観光需要が生じている
*魚市場を中心とした港町文化、リアス式海岸なとの自然風景を活かした観光体験の魅力
を磨き、積極的に発信していくことが重要
*気仙沼だけでなく、周辺の観光地とも連携し、広域観光に取り組むことも重要
*観光客の受け入れに向け、市民のおもてなし意識を醸成するとともに、観光事業者だけ
でなく、市民、水産業を営む事業者が広く連携し、観光まちづくりにあたることが重要
図表 気仙沼の観光を取り巻く状況
内的要因
外的要因
強み(魅力)
① 水産業 (漁港、東洋一の魚市場)
② 被災経験
③ 食 (海産物,ホルモン, 知名度の高さ)
④ 自然景観 (リアス式海岸、大島)
⑤ 伝統的な街並み (唐桑)
機会
① 被災地としての注目・知名度の高まり
② 多数のボランティアの来訪
弱み(課題)
① 情報発信が弱い
② 宿泊施設が少ない
③ 観光地としての意識が弱い
④ 震災の影響
⑤ 交通の便が良くない
⑥ 目玉となる観光地がない
脅威
① 被災地としての注目度の低下
② 周辺に有名な観光地 (
松島・平泉)
5
以上の点を踏まえ、今後、気仙沼における観光振興を図るにあたり、
「中期的な課題」と
して次の7点が挙げられる。
①中心的な魅力となる観光資源が特定されていない
震災後も含め、気仙沼を訪れようとする観光客/実際に訪れた観光客に対して、気仙沼
観光の中核的な魅力、
「気仙沼ならでは」の魅力を明確に発信、伝達することができていな
かったのではないか。また、観光客には、気仙沼が提供している観光メニューが総花的に
映るため、他の観光地としての差異を識別できず、そのことが気仙沼に行ってみようとい
う動機を与えなかったのではないか。「気仙沼はこれだ」という観光資源を特定し、発信し
ていくことが重要である。
②水産業と観光産業の連携が図られていない
これまでも、観光産業は水産業と並ぶ基幹産業の両輪として期待されてはいたものの、
必ずしもその連携は明確でなかった。気仙沼の魅力を観光客に発信していくためには、水
産業を中心とした港町文化等を、地域の様々な観光資源とあわせて活用し、新しい魅力的
な観光コンテンツを創出することが不可欠である。水産業と観光を連携させることで相乗
効果を生み出すことが期待される。
③現存する観光資源が十分に活用されていない
気仙沼の各地域が提供可能な観光資源はそれぞれ魅力的であり、可能性を有するもので
ある。しかし、それらの観光資源が観光客の誘致に十分に活用されず、せっかくのチャン
スを逃していたのではないか。加えて、観光施設相互の連絡や点在する観光資源を結びつ
ける工夫が少なかった。複数の観光資源を組み合わせた1つのまとまった観光コンテン
ツ・観光体験として提供することで、観光客に新しい気仙沼の観光魅力をアピールするこ
とができる。
④時代の経過とともに、観光客のニーズに対応した観光施設とは言い難い状況となっている
震災後の新たな気仙沼観光像を描き、さらに、その観光像を実現するために、既存の観
光施設の再生、整備が必要とされている。観光施設の再生、整備にあたっては、施設の事
業性や効果的・効率的な配置、運営や担うべき事業主体等について検討するとともに、本
観光戦略に沿って観光施設の再生、整備の優先順位を明確化し、取り組みを進めていくこ
とが求められる。
⑤一方的な情報提供やプロモーションとなっており、双方向のコミュニケーションとなって
いない
ソーシャルメディアやスマートフォン等の持ち歩ける情報端末の普及に伴い、人々の観
6
光地選択や観光地における行動選択は、行政や民間事業者からの一方的な情報発信だけで
なく、観光客間の口コミなどの水平的なコミュニケーション、観光地に暮らす市民との双
方向のコミュニケーションに基づき行われるようになりつつある。しかし、これまでの気
仙沼観光に関するPRの多くは、発地に対する一方的な観光情報提供であり、今後は新た
な情報発信の仕組みを十分に活用すべきである。また、震災から現在に至るまでご協力い
ただいた多くのボランティアやNPOの方々と継続的にコミュニケーションすることで、
気仙沼のファンになっていただき、将来の観光客として再訪を促すとともに、知人友人に
気仙沼訪問を勧めていただくことができる。
⑥広域観光連携が確立されていない
気仙沼市内には様々な観光資源もあるものの、近隣地域には、世界文化遺産の平泉や国
内有数の観光地である松島など、大きな魅力を有する観光資源が存在している。これらの
近隣の観光地と競合するのではなく、広域的・一体的な観光誘致の取り組みを進め、より
大きな観光需要を獲得することが望まれる。しかし、現在のところ、仙台や松島、世界文
化遺産・平泉と連携した観光プログラムの開発や、観光誘致活動は十分になされていない。
また、震災後、外国人観光客は増加傾向にあるが、外国人が利用しやすい二次交通をはじ
め、外国人観光客の受入れ体制を整備することが、将来的に広域観光連携を通じて外国人
誘致を進める上で重要である。
⑦観光客を受け入れるための意識が醸成されていない
これまで気仙沼では、観光産業に携わる民間事業者、行政、市民がそれぞれの視点から
観光客を迎え入れてきた。観光に携わる人々が思いを共有し、「おもてなし」に向けて協力
すれば、観光地としての一体感が生まれてくるのではないか。景観保全やまちづくりを含
め、観光地としての機運を高めていくとともに、観光地づくりを支える市民の観光に対す
る意識を高めることが求められる。
7
3.気仙沼の観光再生に向けた推進体制の確立
(1)推進体制
気仙沼観光が抱える課題を解決し、観光客にとってより魅力的な観光地を「戦略的」に
構築・発信していくため、次の推進体制を設け、観光戦略の具体化を図る。
①機動力の高い新たな推進体制
<関係主体が連携する場・機会の構築>
気仙沼の観光産業の振興においては、観光業に従事する事業者だけでなく、市民や水産
業の事業者等が広く連携していくことが重要である。そのため、現在、策定している気仙
沼市観光戦略の推進に向け、関係者の今後の取り組み意向を共有するとともに、各事業者
の創発的な取り組みを様々な角度から支援する場・機会(プラットフォーム)を形成し、
同組織が中核的かつ主導的な役割を担う。
また、上記の連携の場・機会(プラットフォーム)には、市内の観光関係者に加え、旅
行会社やメディア等、観光産業の振興に向け連携が望まれる市外の事業者や団体の参画も
得て、外部に向けた発信を強く意識し、運営する。
<資金や権限を有する組織(法人)>
気仙沼市観光戦略の推進に向け、計画事業の実施・拡大を柔軟に支援、促進していくため
には、機動的な意志決定の下、自らの裁量において活用可能な資金を有する組織が、中核
的な役割を担うことが重要である。
また、「資金」
「権限」を有する組織が、観光戦略に記載された目標や将来像の実現に向
け、それに即した民間事業者等の取り組みに対して、直接、経済的な支援や事業への投資
を行うことにより、観光戦略の進捗管理を図るとともに、計画目標の実現に向けた動きを
自ら加速させる主導的な役割を担うこともできる。
②戦略の推進体制の特徴
これまでの行政計画の推進・執行機関は、あくまで行政が議題を設定し、それを受け、
市民を交えた委員会が検討・答申するというものであった。しかし、被災地気仙沼の現状
を踏まえると、行政の外側に、資金・権限を有する機動的な機関を設け、観光関係者の発
意や創意工夫を促しつつ、事業を具体化し観光戦略を推進していくことが求められる。そ
のため、新たな推進組織が戦略に即した民間事業者、NPO 等の提案事業に対する「助成」
、
将来的には三陸海岸全域をも対象に、一定規模以上の事業に対する投資を視野に入れた「融
資」や「専門化によるアドバイス」などを行うことで、気仙沼観光戦略の実現・推進を図
るものとする。
なお、気仙沼市および新たに設置する推進組織では、気仙沼市観光戦略で掲げるプログ
ラムを迅速かつ確実に実行していくため、国や県、民間団体等が提供する支援制度につい
8
ても積極的に活用することを検討する。また、観光戦略の推進・実現に資する事業、取組
みに対する支援として、出資や融資等の経済的な支援だけでなく、特区等の優遇制度につ
いても視野に入れ、今後検討を具体化する。
図表 気仙沼観光戦略の推進体制のイメージ
観
光 戦 略
観光戦略の重点プログラム
1.水産業活用プログラム
+ 食ブランド化プログラム
【行政組織内】
庁内の
横断的
事務局
(関係部課)
個別の民間事業者な
どでは困難な大規模
な施設、インフラの
整備/再建など
観光戦略の重点プログラム
観光戦略の重点プログラム
2.復興・防災教育復興過程発信
プログラム
3.観光情報発信・基盤整備
プログラム
参画
観
光
戦
略
の
推
進
プ
ラ
ッ
ト
フ
ォ
ー
ム
観
光
戦
略
の
中
核
的
推
進
機
関
<想定される「テーマ」のイメージ>
○「ふかひれ」を活かしたイベント開催
(例:気仙沼ふかひれまつり)
○遠洋マグロ船を活用した観光メニューの開発
○震災語り部の着地回遊型プログラムの開発
(例:回遊型の観光・交通プログラム)
○漁業復興に向けた漁業・水産加工体験メニューの
開発(例:漁船への乗船、加工工場見学)
外部機関
資金、ノウハウ
【行政組織外 ※戦略を実行するための資金とノウハウを有する組織
→ 観光戦略の中核的推進機関】
-金融機関
-旅行代理店
-公的機関
-NGO
など
※組織形態(法人格)、組織内の体制整備については今後検討
報告
理事会
委任
情報
共有
委任
事務局
連携
基金
※出資形態 / 出資者 /
出資金額 / 運用方法に
ついては、今後検討
重点プログラム
に即した案件
①
民間の営利事業者や市
民団体/NPOからの事業
提案が見込まれるテー
マの場合
提案者の募集,掘り起こし
助成、融資・利子補給
選定後のアドバイス
進捗管理
営利
事業者
外部アドバイザー
(観光/広報/経営)
観光戦略推進プラット
フォームが支援・実施する
事業の効果を高めるため、
有用なアドバイスを行う
重点プログラム
に即した案件
②
地域全体の観光振興のため
には必要だが、個別の民間
事業者などからの提案が見
込めないテーマの場合
(例:地域全体の観光情報の
発信)
助成・融資
の申請
市民団体
NPO
参加
市民評議会
観光戦略推進プラットフォーム
直轄による事業の実施
外部審査機関
観光戦略推進プラット
フォームが支援・実施する
事業を、外部から進捗
管理し、関係者への説明
責任を担保する
重点プログラム
の具体化に向けて
③
重点プログラムの効果や効
率を高めていくため、引き
続き検討すべきテーマ、論
点がある場合には、市民や
関係者が集い、議論・情報
共有することができる場・
機会を設置する
(例)コンテンツ
ブラッシュ
アップ部会
プラットフォームと市民、
業界団体との接点として、
プラットフォームにおける
活動の報告を行うとともに、
広く情報共有や意見交換を
行う
■個人
-市民サポーター
-気仙沼ガイド
■事業者
-観光業事業者
-水産業事業者
■業界団体
-各地区観光協会
-商工会議所
など
(例)情報発信
コミュニケ
ーション部会
<今後の検討課題>
○個別の観光コンテンツの磨き
上げ(外部の観光アドバイ
ザーや旅行代理店との協力)
○リピーター率の向上に向けた
ファンコミュニティの創出
→ソーシャルメディアを活用
した双方向のコミュニケー
ションの実施・検討
<想定される取組みのイメージ>
○「気仙沼おもてなしの店」認定事業
○市民向け市内観光ツアーの実施(目的:市内の魅力の再発見)
○気仙沼ガイドマスター制度、市民サポーター制度の創設
○旅行代理店のツアー組成担当者を対象とした市内ツアーの実施
(2)キャッチフレーズ
今後の気仙沼観光の振興を図るにあたり、広く一般市民の協力・参画を得て、地域をあ
げた観光まちづくりを進めていくことは極めて重要であることから、効果的な「キャッチ
フレーズ」を設定し、それを積極的に活用していくこととする。
そこで、今後の気仙沼観光を象徴する「キャッチフレーズ」を作成する際には、観光客
に対し、
「海と生きる」気仙沼観光の新たなビジョンとして伝わりやすく、印象的なもので
あることに加え、同キャッチフレーズは復興する意欲と決意を持って、観光のまちづくり
を進める気仙沼市民にとっても、前向きな言葉であるものとする。
(3)観光特区(民間投資促進特区)の導入
震災後、国は東日本大震災復興特別区域法を制定し、震災により一定の被害が生じた県
9
および市町村に対し、特区制度の認証・適用を行っている。気仙沼市では、迅速に観光再
生を図るため、新たに市内に進出する企業や既存企業が、復興に寄与するであろう観光事
業を営む場合、税控除や減免等の優遇措置を受けることができるよう、早期に観光産業を
中心とした特区申請を行うものとする。
10
4.観光再生に向けた 7 つの戦略
2.で整理した現状および課題を踏まえ、今後の気仙沼観光の振興に向け、3.で挙げた気仙
沼の観光再生に向けた推進体制を中心に、戦略的に次の取り組みを行う。
戦略1
気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを
戦略1 気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略
活用した誘客戦略
観光マーケットにおいて、人々の興味・関心を喚起し、具体の観光行動につなげていく
ためには、気仙沼観光の中核的な魅力、
「気仙沼ならでは」の魅力を明確化し、他地域の観
光コンテンツとの差別化を図ることができるオンリーワンの観光資源を特定することが必
要不可欠である。また、被災地気仙沼の「オンリーワン」は、観光関係者のみならず、多
くの市民が観光復興の象徴として誇ることができるものであることが必要である。
こうした背景を踏まえ、気仙沼市観光戦略会議では、複数ある観光資源のなかでも、特
に、気仙沼に強みがある領域、現在の気仙沼を象徴する側面に焦点を当て、
「気仙沼市魚市
場を中心とした港資源」「ふかひれを中心とした食のブランド」「震災の遺構と伝承、復興
する人々」の3点を「オンリーワン」の観光資源として設定した。
図表 2つのオンリーワンコンテンツのイメージ
気仙沼市魚市場を中心とした港資源と食ブランド
食
食
港町文化
港町文化
○漁労文化(かつお一般釣り・まき網)
○魚食文化(魚を余すことなく利用)
○民俗文化(海の唄・大漁かんばん) /等
景観
景観
○自然環境 (海・漁港)
○伝統的な建築物、街並み /等
○レストラン・飲食店街
○鮮魚の直売や加工品の販売、朝市
○魚介類以外の食(ホルモン、マツタケ等)
震災を乗り越え海と生きる
震災を乗り越え海と生きる
魚市場
魚市場
人
人
○漁船員 ○市場で働く人々 ○つばき会
○仲買人・魚問屋 ○観光ボランティアガイド
○気仙沼市民 /等
港機能
港機能
○港、係留岸壁、船舶仕込・無線技術
○造船基地
○製氷技術・冷蔵・冷凍施設、
○水産加工場、
○餌場、仲介人の集積 /等
被災状況・復興過程
被災状況・復興過程
○上記の被災状況・復興過程を学ぶ施設
○復興の象徴となる施設 /等
観光資源をうまく連携させて
観光資源をうまく連携させて
観光プログラムを展開
観光プログラムを展開
※「気仙沼市魚市場を中心とした港資源」「ふかひれを中心とした食のブランド」の2つの「オンリーワン」は、
対象となる観光コンテンツやその観光事業主体が類似しており、一体的に推進していくことが重要であること
から、両者を1つの「オンリーワン」とみなし整理した。
11
震災の遺構と伝承、復興する人々
被災の象徴となる施設
被災の象徴となる施設
復興の象徴となる施設
復興の象徴となる施設
※魚市場等、復旧・復興が進み、
再び活気があふれる場
○魚市場
○復興屋台村、復興商店街・紫市場
○復興マルシェ /等
※被害を受けた施設のうち、そのままの
状態で保存可能なもの
震災の遺構と伝承
震災の遺構と伝承
復興する人々
復興する人々
ミュージアム等
ミュージアム等
※ミュージアム等、復興の過程を学ぶこと
ができる施設・プログラム
自然との調和の象徴
自然との調和の象徴
※自然(災害も含め)調和しながら生きて
きた気仙沼の暮らしを象徴するもの
○自然環境
○伝統的な建築物、町並み /等
人
人
○復興商店街で働く人々
○語り部 ○地域住民
○観光ボランティアガイド /等
観光資源をうまく連携させた
観光資源をうまく連携させた
観光プログラムを展開
観光プログラムを展開
【取組みのイメージ】
○オンリーワン 1:気仙沼市魚市場を中心とした港資源と食ブランド
→ 新たに設置する戦略の推進体制が助成・融資する事業(重点プログラムに即した
「個別事業」)の募集テーマとして、次内容を掲げ、採択案件を通じて、上記オ
ンリーワンの具体化を図る。
例)水産加工工場の見学、加工体験(土産物づくり)、乗船プログラム
新たな土産物やメニュー開発、スローフード認証店制度の導入 など
→ 助成・融資を通じた事業および重点プログラムの具体化・推進に加え、市民や関
係者の参加による観光資源の磨き上げ、新たな観光資源の発掘、他地域との差別
化、広域連携の可能性について、継続的な検討を行う。
○オンリーワン 2:震災の遺構と伝承、復興する人々
→ 新たに設置する戦略の推進体制が助成・融資する事業の募集テーマとして、次の
内容を掲げ、採択案件を通じて、上記オンリーワンの具体化を図る。
例)震災復興に取り組む商店や企業を対象とした団体向けツアーの受入
震災復興に取り組む人々を対象とした「ひとめぐりツアー」
来訪者が復興に参画するプログラム
など
→ 助成・融資を通じた事業および重点プログラムの具体化・推進に加え、震災ガイ
ドの養成や来訪者が参画する場の創出などを支援する事業を実施する。
→ 被災の象徴となる施設は、地域住民の理解のもと、復興の取組みの記録の展示、
防災教育・体験学習の拠点となりうる社会教育的な施設の整備についても、今後
検討を進める。
12
今後は、これらの「オンリーワン」の観光資源を中核に据え、後述の重点プログラム等
を通じて、地域全体でオンリーワンに連なる観光コンテンツを重点的・優先的に商品化/
事業化していくことにより、
「気仙沼でしかできない観光体験」を1つ1つ具体のものとし、
気仙沼観光の再生・強化の「呼び水」する。
また、観光戦略に定める7つの戦略を通じて、オンリーワンの観光資源以外の様々な観
光資源を磨き上げるとともに、それらを一体化した観光・滞在のストーリーを提供するこ
とで、気仙沼観光の魅力を高め、需要拡大を図る【戦略3参照】。
図表 気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略
目指す将来像
目指す将来像
「海と生きる」を実践する地域として、“港町の歴史・文化の体験” “地域の人々との交流”ができる
三陸最大・東北有数の観光地を目指す
港町文化
港町文化
魚市場
魚市場
港機能
港機能
オンリーワン
オンリーワン
コンテンツ
コンテンツ
食
食
景観
景観
被災地
被災地
人
人
7つの戦略
7つの戦略
による推進
による推進
観光資源の発掘、
個別の観光コンテンツの
磨き上げ、ネットワーク化
による魅力の創造・強化
長期
重点
重点
プログラム
プログラム
による推進
による推進
中期
短期
オンリーワンコンテンツを核とした取り組み
・・・気仙沼観光の再生・拡大の 「呼び水」
魚市場
魚市場
港機能
港機能
被災地
被災地
港町文化
港町文化
オンリーワン
オンリーワン
コンテンツ
コンテンツ
人
人
オンリーワンコンテンツ
オンリーワンコンテンツ
食
食
景観
景観
13
①気仙沼魚市場を中心とした港資源
②ふかひれを中心とした気仙沼の食ブランド
③震災の遺構と伝承、復興する人々
戦略2
水産業と観光産業の連携・融合による
戦略2 水産業と観光産業の連携・融合による新たな付加価値創造戦略
新たな付加価値創造戦略
観光産業を、水産業と並ぶ気仙沼の基幹産業のひとつと位置づけるとともに、ホテルや
民宿、土産物店などの観光事業者だけでなく、市民、水産業を営む事業者などとの積極的
な参加・連携を促し、港町気仙沼ならではの観光体験を提供可能な観光まちづくりを進め
ていく。今後は、各地区の観光協会や民間の宿泊事業者、交通事業者等と、漁業および水
産加工業の関係団体・事業者等との連携を促し、水産業と観光産業の連携・融合による新
たな付加価値の創造を推進する。
図表 水産業との連携による観光まちづくりのイメージ
これまでの観光、観光まちづくり
観光客
(気仙沼の訪問客)
消費
観光
コンテンツ
観光事業者が設計
した気仙沼観光
のメニュー
観光事業者
(宿泊、交通、飲食)
これからの観光、観光まちづくり
観光客
(気仙沼の訪問客)
消費
より魅力的な
観光コンテンツ
観光客
(気仙沼の訪問客)
消費
多様な主体が連携し
設計した気仙沼観光
のメニュー
観光事業者
(宿泊、交通、飲食)
水産業の従事者
(漁師、魚市場、水産加工)
これまで気仙沼を訪れて
いなかった新たな層の
誘客の可能性
(ターゲットの多様化)
市民
【取組みのイメージ】
○コンセプト:水産業と観光業の連携・融合の促進による新たな付加価値の創造
→ 魚市場周辺に、水産業事業者との連携を念頭においた、観光情報の発信拠点を設
置し、港町文化の発信や体験学習プログラムの提供・案内を実施する。
→ 新たに設置する戦略の推進体制が助成・融資する事業(重点プログラムに即した
「個別事業」)の募集要件の1つに、
「水産業事業者と観光業事業者の連携」を盛
り込み、同推進機関が推進する観光まちづくりのなかで、水産業と観光業の連携
を促進する。
14
戦略3
観光資源の磨き上げと観光魅力創造戦略
戦略3 観光資源の磨き上げによる観光魅戦略
【別添資料3参照】
【別添資料3参照】
気仙沼の豊かな観光資源を生かして気仙沼を魅力ある観光地にするために、これまで注
目されていなかった新たな観光資源を地域全体で発掘し、それらに観光客がより楽しめる
ような付加価値や体験しやすいしくみをつけて観光コンテンツを作りあげていく。また、
観光コンテンツの創出においては、復興事業への関与など、観光客の参画そのものが付加
価値となる工夫を施す。こうした新たな観光資源は、従来の観光資源だけでなく、気仙沼
の日常生活の一部にも見出されうる。気仙沼市民にとってあたりまえの日常風景を外の目
で見ることにより、気仙沼らしい新たな観光コンテンツを創出する。
観光コンテンツ間の相互の関係を整理して、気仙沼観光の一体的なストーリーを描くこ
とにより、観光客にとってテーマ性のあるストーリーにそって、気仙沼のさまざまな観光
コンテンツを見、体験し、楽しむことができるようにする。このことによって、オンリー
ワンの観光資源のみならず、気仙沼全体に観光振興の便益が生じることが期待される。
図表 気仙沼の観光コンテンツと今後の磨き上げについて
オンリーワン
コンテンツ
気仙沼市魚市場を
中心とした港資源と食ブランド
震災の遺構と伝承、
復興する人々
気仙沼ならではの観光コンテンツを
「オンリーワンコンテンツ」として
設定
市民から
挙げられた
観光コンテンツ
オンリーワンコンテン
ツと直接的な関連性を
もたない観光資源につ
いても、今後、オン
リーワンとの連携可能
性を検討
魚市場
魚市場
港町文化
港町文化
景観
景観
被災経験
被災経験
歴史的建造物
歴史的建造物
港機能
港機能
食
食
人
人
復興の様子
復興の様子
山、田園風景
山、田園風景
【取組みのイメージ】
○コンセプト:コンテンツのネットワーク化による観光滞在のストーリーの提示
→ 気仙沼を訪れた観光客が、訪問前に抱いていた印象/期待(想定する気仙沼像)をは
るかに超える体験・経験を行うことができた場合、あるいは、体験し残した側面
を感じ帰途につく場合、訪問者は気仙沼への再訪意向を持つようになると考えら
れる。
→ そこで、気仙沼を訪れる観光客の訪問目的(被災地めぐりなど)に即した観光コン
テンツを提供しつつも、気仙沼域外の人には知られていない「気仙沼(地元)な
らでは」の観光コンテンツ(港町文化,自然資源など)を織り込み、一体的なストー
リーを提示することにより、観光客に気仙沼に訪れたことではじめて得られる発
見/気づきの機会を提供する。
→ そのため、市民や水産業および観光産業に携わる事業者に加え、市外の人の参加・
協力を得て、観光コンテンツとなり得る「景観/場所/施設」
「食/商品」
「人/活動」
15
などを発掘・共有し、それらをどのように魅力付けするかについて検討を継続す
る。
16
戦略4
観光施設の再整備戦略
戦略4 観光施設整備の再整備戦略
【別添資料4参照】
観光施設の整備に関しては、次の「観光施設整備基本方針」を戦略とする。
〔観光施設整備基本方針〕
1 意義
観光施設整備基本方針は、気仙沼市観光戦略会議・観光再生基本方針に基づき、
被災後の観光施設の再整備について基本的な考え方を示すものであり、三陸沿岸道
路及び大島架橋の整備をはじめとした気仙沼市震災復興計画に掲げる重点事業の進
捗を見据えながら、気仙沼市を新しい魅力ある観光地として作り上げるため実施す
る施設整備の基本方針である。
2 施設整備の考え方
気仙沼市観光戦略会議においては、気仙沼市観光戦略が目指す将来像に向けて、
オンリーワンコンテンツ戦略を提起しており、観光施設の整備においてもその戦略
に即したものを優先的に整備することが必要である。
また、これまでの観光戦略会議の議論や観光再生フォーラム等のパブリックコメ
ントにおいては、オンリーワンコンテンツとは必ずしも直結しない観光コンテンツ
が多数提示されている。これらは、オンリーワンコンテンツによって来訪した観光
客に、気仙沼の多面的な魅力を伝える可能性があることから、関連する施設の充実
も重要である。
これらのことから、オンリーワン戦略に基づく施設の整備と既存(被災)施設の
整備に区分して整備内容を掲げることとする。
なお、施設整備には多額の費用がかかり、維持管理のための後年度負担も大きい
ことから、事業採算性の精査は必須である。加えて、既存(被災)施設においては
老朽化、陳腐化が目立つ施設があり、当面のサービス低下を招かないための手当て
は必要であるが、他の施設への機能の集約とともに、改修、改築に係る費用対効果
を見極め施設の廃止も選択する。
3 施設整備の概要
4 施設整備に係る継続検討
3、4は「6 戦略実現に向けた施設整備」として後述
17
戦略5 観光市場(マーケット)とのコミュニケーション戦略
【別添資料4参照】
オンリーワンコンテンツをはじめとする気仙沼観光の魅力について、観光マーケットに
おけるターゲットを明確に設定した上で、潜在的な観光客を、最終的には気仙沼観光の「リ
ピーター」としていくため、ターゲットの属性に応じて、適時適切かつ継続的なコミュニ
ケーション、情報発信を行うことが重要である。そのため、まずは震災後に気仙沼を訪れ
たボランティアをターゲットとしたコミュニケーションの場、仕掛けづくりを行い、気仙
沼のファンコミュニティを創造する。また、今後は、各観光コンテンツが訴求する具体的
なターゲット層を明らかにした上で、当該ターゲットに影響力を有する情報発信媒体・方
法を活用し、ファンコミュニティの創出や顧客の囲い込み(リピーターの確保)を進める。
図表 今後の観光コミュニケーション戦略の概念図
観光地に対する関心、保有する情報の「量(規模)」
深い
リピーター
関心・情報
リピーター
戦術④
気
仙
沼
と
の
関
係
性
戦術③
ビジター
ビジター
戦術⑤
観光訪問という
行動選択の壁
戦術②
ファン
ファン
ライトファン
戦術①
ライト
ファン
浅い
観光行動別にみた対象集団の「規模」
分類
リピーター
ビジター
ファン
ライトファン
内容
気仙沼に思い入れや愛着があり、何度でも来訪するコアなファン層(リピート
客となるパターンは複数有)
旅行やボランティア活動などで一度は来訪したがリピートしない層(リピート
を阻害する要因有)
行ったことはないけど、きっかけがあれば行ってみたいと思っている層。気仙
沼を好意的に思っている層。
なんとなく気仙沼を知っている層。
(背景:情報接触度 NO1 としての気仙沼の
知名度)
18
【取組みのイメージ】
○コンセプト:魅力的な気仙沼人を広告塔とした戦略的なプロモーション、誘客
→ 気仙沼に暮らす魅力的な人を広告塔に、首都圏をはじめとした観光マーケットに対
する戦略的なプロモーションを行い、気仙沼に対する具体的関心の喚起、観光行動
への発展を促す。
(テーマ例:復興に向けた力強さ/海と生きる・漁業/スローフード など)
○コンセプト:現在進行形の被災地気仙沼の姿を発信し、ボランティア等で訪れた来訪
者とのつながりを継続的なものとする
→ ボランティアへの御礼状や現在の気仙沼の様子(写真)の送付をはじめ、気仙沼の
復興過程、現在の状況を発信・共有する場、仕組みを構築する。
(ブログ/SNS 等
の活用を含め) ・・・
[気仙沼ファンクラブの創設]
○コンセプト:気仙沼を訪れた観光客を囲い込むための仕掛けづくり
→ 市民と観光客、観光客と観光客、それぞれがコミュニケーションできる仕組みを設
け、首都圏など、気仙沼域外にいる人にも、気仙沼に対する思い入れや愛着を喚起
させる場/機会を構築する。
(ブログ/SNS 等の活用を含め)
受信主体
市外→市内
市内→市内
市
内
■観光地づくり
・おもてなし意識の醸成
・まちの魅力の理解
1.気仙沼観光ポータルサイトやfacebookページの
運営による双方向コミュニケーション体制の構築
2.気仙沼市や観光協会のホームページ上における
気仙沼観光なんでも相談室の開設
3.ホヤぼーやの活用による情報受発信
4.気仙沼観光ガイドブックや専用地図アプリの作成
1.市民向け市内観光バスツアーの実施
2.子ども向けの市内ウォークラリーの開催
3.気仙沼おもてなしの店認定の仕組みづくり
4.「語りべガイド」や「気仙沼観光ガイドマ
スター」の養成
発
信
主
体
市内
■観光客とのコミュニケーション
・気仙沼訪問を企画している人々とのコミュニケーション(訪問前)
・気仙沼訪問後のコミュニケーション(訪問後)
5.観光客のニーズ、動向の把握のための調査の継続
的な実施
ファン
コミュニティ
の創出・運営
1.気仙沼観光ポータルサイトやfacebookページの
運営による双方向コミュニケーション体制の構築
2.気仙沼市や観光協会のホームページ上における
気仙沼観光なんでも相談室の開設
3.ホヤぼーやの活用による情報受発信
4.気仙沼観光ガイドブックや専用地図アプリの作成
市外
1.気仙沼観光ポータルサイトやfacebookページの
運営による双方向コミュニケーション体制の構築
2.観光体験を口コミを通じて発信/共有/伝播させて
いくための仕組みの検討
3.コアファンを中心に、気軽に情報の交換・共有が
できる場/機会(交流会、SNSなど)の構築,整備
市内→市外
市外→市外
市
外
■観光客とのコミュニケーション
・気仙沼から域外への情報発信(発地でのコミュニケーション)
・気仙沼を訪問中の観光客のおもてなし
(着地でのコミュニケーション)
■観光客間のコミュニケーション
・観光客による口コミ(体験共有)を促す仕掛けづくり
市内でのコミュニケーション
市外でのコミュニケーション
市内からのコミュニケーション
市外からのコミュニケーション
■事業例
魚市場周辺を拠点とした情報発信・コミュニケーション
・ケーブルテレビや災害FMを活用した情報発信、観光客
とのコミュニケーション
・魚市場周辺に、情報発信拠点、市内ガイドのツアーデスク
を設け、気仙沼観光のスタート地点/結節点とする
19
■事業例
交流機会としての各種イベントの開催
・首都圏及び仙台圏の観光キャンペーンにおける情報
発信、域外のファンコミュニティの方々との交流
イベントの開催
(例:目具のさんままつり、首都圏観光キャンペーン)
戦略6
広域観光及び外国人観光客受け入れ体制の強化戦略
戦略6 広域観光ルート開発及びインバウンド対策の強化戦略
国内外からの観光需要が高まっている世界文化遺産・平泉、仙台や松島等の近隣の観光地
と連携し、新たな広域観光プログラムの開発を進める。また、外国人観光客が気仙沼観光
をより楽しんでいただけるように、気仙沼に詳しい通訳案内士やボランティアガイドの養
成、観光案内、公共標示の多言語化等にも取り組む。
今後、広域観光プログラムについては、
「伊達な広域観光推進協議会」や「岩手宮城県際
広域観光推進協議会」、「みやぎ三陸黄金海道観光推進協議会」など既存組織と連携して具
体的な開発・検討を進める。また、外国人観光客受け入れ体制、特に、多言語標示につい
ては、関係機関との調整を図り、震災復旧事業としての土地区画整理事業や道路等の建設
にあわせ設置を進めるものとする。
【取組みのイメージ】
○コンセプト:広域観光のプログラムづくりの促進
→ 広域観光の活性化、誘客については、伊達な広域観光推進協議会等と連携し、具
体化を図るとともに、新たに設置する戦略の推進体制が助成・融資するプロジェ
クトの募集テーマとして、将来的に、平泉等を含めた広域観光プログラムを掲げ、
採択案件を通じて、気仙沼観光を中核とした広域連携を促す。
20
戦略7
「観光地・気仙沼」を目指した
戦略7 「観光地・気仙沼」を目指した観光受け入れ体制の強化戦略
観光客受け入れ体制の強化戦略
水産業に加え、観光産業を新たな基幹産業と位置づけまちづくりを進めていくにあたり、
宿泊事業者や飲食事業者、交通事業者等が提供する各種観光サービスの水準を、今以上に
高める。また、併せて、景観の保全や統一性の確保、美観の維持等を含め、観光地として
の機運を高めていくとともに、観光地づくりを支える市民の観光に対する意識を高め、地
域一丸となった「おもてなし」の向上を図る必要がある。そのため、市民/民間事業者/
行政が連携・協力し、観光誘客に向けた環境づくりを推進する。
【取組みのイメージ】
○コンセプト:気仙沼市民の「おもてなし意識」
「スキル」の向上
→ 市民が「気仙沼という世界観」を共有し気仙沼を好きになることで、市民からの
発信/おもてなしが自然に行われるような環境、雰囲気を醸成するとともに、観
光客に対するおもてなしの取組みを行う団体に対する積極的な支援を実施する。
上記の論点のうち、戦略 1「気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦
略」、戦略3「観光コンテンツの磨き上げとネットワーク化による魅力創造戦略」、戦略4
「観光施設整備の再整備戦略」
、戦略5「観光市場(マーケット)とのコミュニケーション
戦略」については、それぞれ専門部会を設置し検討を行った。(※詳細は各部会の答申資料
を参照)
【これまでの検討経過】
・平成24年3月 3日
第1回会議
委員の委嘱、進め方やスケジュールを検討
・
〃
4月15日
第2回会議
階上・本吉地区を現地調査し、意見交換
・
〃
5月
8日
第3回会議
唐桑地区を現地調査し、意見交換
・
〃
6月
8日
第4回会議
大島地区を現地調査し、意見交換
・
〃
7月
5日~7日
奥尻島視察研修(8名参加)
・
〃
7月13日
第5回会議
奥尻島視察報告、高松委員長講話、作業部会報告
・
〃
8月31日
第6回会議
観光再生基本方針案了承、観光アンケート報告
・
〃
9月28日
第7回会議
各作業部会の進捗状況報告、観光特区の説明
・
〃 10月24日
第8回会議
各作業部会の進捗状況報告、パブリックコメント
・
〃 11月1日~14日 パブリックコメントを実施(7名から意見の提出有)
・
〃 11月28日
作業部会設置
観光再生フォーラム
※作業部会として、基本方針案検討部会(8回)、オンリーワン検討部会(6回)、観光コンテン
ツ創出部会(6回)、観光施設整備検討部会(5回)、コミュニケーション部会(6回)を開催
し検討を進めてきた。
21
5.戦略実現に向けた重点プログラムの設定
(気仙沼の強み・弱み/機会・脅威 × 取り組み方針)
(1)観光再生に向けて取り組むべき「重点プログラム」の設定
2.で整理した現状および課題、4.観光再生に向けた7つの戦略に基づき、今後の気仙沼観
光の振興方策について検討を行い、気仙沼観光の現況を取り巻く内的環境(要因)と外的
環境(要因)から、
「強み(魅力)
」と「弱み(課題)」、「機会」と「脅威」をそれぞれ整理
した。また、これらの現況整理に基づき、現実的可能性を加味した上で、気仙沼の観光再
生に向けた具体的なプログラムとして、下図の通り 11 案を設定した。
その後、専門部会を中心とした継続的な検討を経て、これらの案を集約・統合を図り、
観光戦略会議では、2つのオンリーワンコンテンツに関連する「水産業活用(海と生きる
気仙沼発信)/食ブランド化プログラム」
「復興・防災教育/復興過程発信プログラム」の2
案を「重点プログラム」とし、気仙沼の観光まちづくりの中核かつ優先的に取り組むべき
領域として選定した。
また、これらの2つの重点プログラムを円滑に推進していくため、その土台として「観
光情報発信・基盤整備プログラム」についても重点的に実施していくこととする。
(次ペー
ジの図表参照)
図表 気仙沼観光の現況と今後の方向性
外的要因
機会
① 被災地としての注目・知名度の
高まり
② 多数のボランティアの来訪
内
的
要
因
強み(魅力)
① 水産業
(漁港、東洋一の魚市場)
② 被災経験
③食
(海産物,ホルモン, 知名度
の高さ)
④ 自然景観
(リアス式海岸、大島)
⑤ 伝統的な街並み(唐桑)
弱み(課題)
① 情報発信が弱い
② 宿泊施設が少ない
③ 観光地としての意識が弱い
④ 震災の影響
⑤ 交通の便が良くない
⑥ 目玉となる観光地がない
脅威
① 被災地としての注目度の低下
② 周辺に有名な観光地
(
松島・
平泉)
水産業活用(海と生きる気仙沼発信)/食ブランド化プログラム 「海とともに生きる」気仙
■水産業活用プログラム
(強み①
×
■食ブランド化プログラム
機会①②)
(強み③
×
脅威①)
沼発信プログラム
(強み①②③④⑤)
自然の魅力活用プログラム
(強み④)
街中観光プログラム
■復興・防災教育プログラム
(強み②
×
(強み⑤)
機会①②)
復興・防災教育/復興過程発信プログラム
■観光情報発信プログラム
(弱み①
×
機会①②)
■復興過程発信プログラム
(弱み④⑤⑥
×
脅威①)
■観光基盤強化プログラム
(弱み②③
×
機会②)
広域観光推進プログラム
(弱み⑥
観光情報発信・基盤整備プログラム
=土台
22
×
脅威②)
被災施設の再建・改善プロ
グラム
(弱み④)
図表 気仙沼観光の今後の方向性(具体的な取り組みの内容について)
プログラム
☆ 水産業活用
(海と生きる
気仙沼発信)
プログラム
☆ 食ブランド化
プログラム
活
動
市内に向
けて
活動の中心主体
気仙沼市
民間事業者
市民団体
民間事業者
お客様に
向けて
市内に向
けて
お客様に
向けて
気仙沼市
民間事業者
市民団体
民間事業者
市民団体
気仙沼市
民間事業者
市民団体
気仙沼市
民間事業者
市民団体
市内に向
けて
気仙沼市
市民団体/市民
お客様に
向けて
気仙沼市
市民団体
市内に向
けて
気仙沼市
市民団体/市民
民間事業者
☆復興・防災教育
復興過程発信
プログラム
☆ 観光情報発信
・基盤整備
プログラム
お客様に
向けて
広域観光推進
プログラム
街中観光
プログラム
自然の魅力活用
プログラム
市内に向
けて
お客様に
向けて
市内に向
けて
お客様に
向けて
市内に向
けて
お客様に
向けて
気仙沼市
民間事業者
市民団体/市民
気仙沼市
民間事業者
市民団体
気仙沼市
市民団体
気仙沼市
市民団体
民間事業者
気仙沼市
市民団体
市民団体
民間事業者
気仙沼市
市民団体
具体的な取り組みイメージ
・魚市場の見学、魚市場周辺での港町文化(漁師生活)の体感ツアー
・魚市場周辺を水産業(漁業/造船/製氷/水産加工/食育など)や水産資
源の社会教育の拠点として活用した学びの場づくり
・水産加工工場(例:ふかひれ,塩辛,イカの一夜干し等)の見学、体験型土
産ツアー(土産物を自ら作る体験型プログラム)
・ポータルサイトや SNS/ブログ、各地での観光イベントを通じた港町
文化や食などの気仙沼の多様な魅力の発信
・着地での工場見学,製造体験と、発地での気仙沼の水産業の歴史の学習
コンテンツをセットとした3ヶ月~半年程度の社会教育プログラム
・港町の新たなご当地料理の企画開発(本物志向の食、メニュー開発)
・魚介料理との対立軸/ストーリーの構築、イベントの開催(魚介だけ
ではない食の魅力、文化の発信(例:気仙沼ホルモン、港町の酒蔵見学、
飲み比べ体験の開催、秀ノ山ちゃんこ鍋))
・ふかひれブランドの維持、向上に向けたイベントの開催
・スローフード認証店制度、気仙沼おもてなし店の認定制度の構築
・沿岸被災地間での「食」コンテスト開催(案:ギネス申請等を目指す)
・気仙沼や三陸地域のアンテナショップの設置、イベントの開催
・インターネットを通じた食文化の発信、魅力的な販売サイトの構築
・旅行代理店との連携による、個人/団体向けの防災教育の施設・プロ
グラムの作成
・震災の語り部の組織化
・震災からこれまでの復興の過程の記録、防災教育に関するコンテンツ
の体系化、一体的な展示・発信のあり方の検討(施設展示を含む)
・SNS/ブログ等も活用した、震災ボランティアの方々と市民との継続
的な交流の場・機会づくり(ファンコミュニティの創設)
→復興の過程、現在進行形の気仙沼の姿を見守ることができる仕掛
け(ポータルサイトや SNS/ブログ)の構築
→現地に来訪せずともつながりやサポートの気持ちを維持できる
仕組みづくり
・魚市場周辺への観光案内/観光情報の発信・共有拠点の設置
・修学旅行の誘致を念頭においた、観光地や施設の安全性の確保
(避難・誘導計画の作成と徹底)
・市民のおもてなし意識の向上、そのための市民向け観光ツアーの開催
・ホームステイや小学校等を活用した宿泊プログラムの整備
・修学旅行の誘致を念頭においた、観光地や施設の安全性に関する情報
発信
・SNS/ブログ等も活用した、震災ボランティアの方々と市民との継続
的な交流の場・機会づくり(ファンコミュニティの創設)
・平泉・松島観光の拠点としての活性化
・周辺観光地との連携による情報発信の強化
・唐桑御殿を核に街中観光プランの作成
・伝統的な建築物、街並みの保存。休憩所など街歩き環境の整備
・伝統的な街並みとしての魅力の発信
・大島を核に豊かな自然環境、眺望を活かした観光プランの作成
・森と海のつながりを活かした環境学習プランの作成と教育旅行の誘致
・豊かな自然環境や眺望の魅力の発信
・環境学習の受け入れ地域、対応可能性に関する情報発信の強化
(注釈 1)上表の「活動の中心主体」は、観光戦略会議や各部会で提示された取り組みに関するアイデアを踏まえ、事務局に
て振り分け整理を行ったものである。黄色の網掛け記載は、
「重点プログラム」として選定したものをあらわす。
(注釈2)着地:観光客にとっての旅行先(=気仙沼)
発地:観光客が旅行に出発する地域(=居住地)
23
(2)
「重点プログラム」の内容と推進イメージ
気仙沼の観光再生戦略の中核かつ優先的に取り組むべき領域として設定した3つの「重
点プログラム」のうち、オンリーワンコンテンツとの関連性も高い下記プログラム①、②
の実施においては、同プログラムの実施に必要な施設等について、他に優先して整備する。
また、重点プログラムにおいて開発・PR する個別コンテンツの販売や、それを通じた誘
客のためには、域内外との継続的なコミュニケーションを通じた顧客の囲い込みや、ファ
ンコミュニティの創出と観光客間の口コミによる誘客など、情報発信と観光コミュニケー
ションが極めて重要な役割を担う。
そのため、観光資源の発掘・磨き上げや観光コンテンツの PR と併せて重点プログラム③
に掲げるハード/ソフトの整備・運営に取り組む。
図表 重点プログラムの内容と推進イメージ
① 水産業活用(海と生きる気仙沼発信)/
食ブランド化プログラム
② 復興・防災教育/復興過程発信プログラム
外部主体との
マッチング
旅行代理店との連携による個人・団体向けの観光ツアーの企画(旅行代理店のプログラムとのマッチングを希望する着地・気仙沼側の受け
皿主体の募集)
※想定されるテーマ:被災地見学、スローフード体験、港町文化体験、魅力的な人めぐり
観光メニューの
企画開発
魚市場や水産加工工場(ふかひれ,塩辛,イカの一夜干しなど)の見学、
工場での体験型土産、漁船の乗船、海産物の収穫体験(海藻,牡蛎な
ど)、造船過程の学習などの体験型プログラムの企画開発、実施主体
の募集
⇒受け皿主体に対する支援(助成・融資、専門的なアドバイス)
既存の被災状況の見学プログラム、語り部による講座などを一覧整
理し、観光客が個々に観光ルート、観光体験をカスタマイズできる
ようなプラットフォーム、案内機能の構築
(※拠点施設の整備含む)
飲食品・土産物
の企画開発
全国区の知名度を有する「ふかひれ」を活かした食品メニュー、土
産物の開発。また、「ふかひれ」以外のご当地メニューの開発を進
めるため、企画開発、実施主体の募集
⇒受け皿主体に対する支援(助成・融資、専門的なアドバイス)
他の被災地との差別化を図るため、防災教育の拠点として、発地に
対する情報発信を積極的に行うとともに、外部にも発信可能なコン
テンツとして、「震災からの復興の取り組みの記録」「防災教育の
体系的なプログラム」を整理する主体の募集
⇒受け皿主体に対する支援(助成・融資、専門的なアドバイス)
ブランディング
観光客に対し、ご当地メニューやスローフードという気仙沼の強み
を適切に提供できる店舗を認証する制度の実施
・・・スローフード認証店制度の導入
(※この他、域外での情報発信/おもてなし含む)
現在進行形の被災地気仙沼の姿を発信し、ボランティア等で訪れた
来訪者とのつながりを継続的なものとする、ファンコミュニティサ
イト(ポータルサイト)の構築
(※この他、御礼状の送付等を含む)
人材育成
新たな港町文化の担い手として、漁業や水産加工の事業者、魚介類
を中心とする伝統料理の料理人の育成を目的とした、社会教育的な
プログラムの企画・実施主体の募集
⇒受け皿主体に対する支援(助成・融資、専門的なアドバイス)
(※この他、市民のおもてなし意識の醸成、市民向けツアーの開催、
気仙沼おもてなし店の認定制度等を含む)
震災語り部ガイドの組織化、気仙沼観光ガイドマスターの養成など
を行い、質の高い観光ガイドの養成を図るとともに、担い手の拡
大・多様化を進める
(※この他、市民のおもてなし意識の醸成、市民向けツアーの開催、
などを含む)
※採択/成約化した事業者/団体には、必要に応じて推進機関が助成・ 融資を行うとともに、金融機関の低利融資を受けることができる枠組みを構築。
③ 観光情報発信・基盤整備プログラム
情報発信、コミュニケーション
(ポータルサイト、イベント、おもてなし意識の醸成)
施設整備
24
6.戦略実現に向けた観光施設整備
(戦略4に掲げた「観光施設整備基本方針」の3,4にあたるもの)
■ 施設整備の概要
(1)オンリーワン戦略に基づく施設の整備
オンリーワンコンテンツは「気仙沼市魚市場を中心とした港資源と食ブランド」
と「震災の遺構と伝承、復興する人々」のふたつである。これに基づく施設整備の
概要は次のとおりである。
①「気仙沼市魚市場を中心とした港資源と食ブランド」に基づく施設整備
総延長約 900 メートルとして計画されている気仙沼市魚市場は、カツオをはじめ
とする水揚げ実績からも高度衛生管理に配慮した卸売市場としてもオンリーワンに
ふさわしく、気仙沼の復興を象徴する施設である。
海の生き物たちは、魚市場を通して我々の「食」として食卓に上がるのであり、
魚市場とその背後のエリアに整備される水産加工場等には、気仙沼の食ブランドを
生み出す多様なストーリーが内在する。
魚市場北側に連なる係留漁船の景観と、内湾地区の親水性あふれる景観は、気仙
沼を代表する景観として強い訴求力を持っており、現在進められている内湾地区復
興まちづくりに関する協議においても観光交流の視点からの新しいまちづくりが展
望されている。
これらのことから、今後具体化する重点プログラムにおけるソフト事業の展開を
見据えて次の施設整備を進める。
ア 水産業と観光産業の結接点となる魚市場エリア
魚市場の施設整備においては、産業観光としての視点から、見学、研修、体験、
情報発信等の機能を備えるとともに、背後地に水産業と観光産業の結接点として、
産業センター「海の市」の再建を早急に進める。
そのほか周辺エリアに販売施設(農林水産物・特産品・加工品等)、飲食施設
(レストラン、フードコート等)、水産加工場等の見学・体験など産業観光に資
する施設設備、観光案内所等の集積を促し、三陸道からのアクセスに配慮した駐
車場の整備を行い、四季を通じて誘客できる観光エリアとする。
イ
魚町南町内湾及び港町エリア
内湾エリアにおいては、気仙沼の顔として新しい港景観、港空間を形成すると
ともに、コンベンション機能を有する施設、イベント開催に役立つ多目的広場、
駐車場、バス・タクシー・旅客船のターミナル施設を整備し、宿泊施設の充実を
促し、散策や夜景が楽しめる工夫を施すなど、魚町南町内湾地区の新しいまちづ
くりに呼応した観光地づくりを進める。
魚市場エリアと内湾エリアをつなぐ港町エリアでは、係留漁船の景観に配慮し
た公園や散策路の整備を行う。
25
②「震災の遺構と伝承、復興する人々」に基づく施設整備
被災地域のガレキ撤去が進んだ今、震災遺構は貴重な価値を持ち始め、第 18 共徳
丸や岩井崎秀の山像、小泉海岸シーサイドパレスなどは、まさしくオンリーワンの
存在である。
震災遺構を観光の視点からのみ論議することはできないが、震災遺構を活用し被
災の実情を伝え後世の教訓とすることは、市内外の防災意識、防災・減災対策の向
上に役立つものであり、防災教育や体験学習の機会の提供により結果として交流人
口の増大が期待できるものである。
このことから、三陸沿岸において極めて希少となった震災遺構について、その周
辺環境の整備を含め防災メモリアル公園として整備し、津波災害の記録・研究、記
憶の伝承と防災教育・体験学習に活用するため、震災遺構の保存及び維持管理に関
する有識者の検討が急務である。
(2)既存(被災)施設の整備
既存(被災)施設については、次の①から⑤の方針により整備を進めることとす
る。なお、被災沿岸部にあっては防潮堤建設、嵩上げ等の状況を勘案して目標期間
を設定する。
①主な観光施設の整備
施
設
観光物産センター
「エースポート」
現
状
解体
方針
27 年
30 年
34 年
まで
まで
まで
内湾エリアのターミナル施設の中に機能
○
を持たせる。
内湾エリアのまちづくり準備期間中は暫
南町海岸駐車場
解体
定として新たな内湾地区駐車場を設置。将
来的にはまちづくりの中に恒久的な駐車
暫定
○
場整備を位置づける。
神明崎浮見堂
岩井崎プロムナード
センター
亀山リフト
解体
アクセス道の復旧を待って再建する。
○
解体
跡地利用について検討を継続する。
-
-
-
解体
代替機能について検討を継続する。
-
-
-
当面は施設の維持管理、映像や展示物のリ
唐桑半島ビジターセ
通 常 営
ニューアルを行う。防災教育に資する新た
ンター・津波体験館
業
な施設整備等がなされた場合には、防災関
○
係の機能を集約する。
国民宿舎からくわ荘
通 常 営
現指定管理期間はサービスの低下を招か
業
ないよう維持管理を行う。
26
○
漁火パーク
はまなすステーショ
ン
通 常 営
仮設住宅終了後に多目的広場、公園等の整
業
備を行う。
○
当面は仮設営業の道の駅大谷海岸に機能
解体
を持たせ、防潮堤、三陸道、JRの位置等
○
の諸条件を勘案し新たに建設する。
②大島地区の観光施設整備
亀山の展望が持つ観光の戦略的価値はだれもが認めるところであり、上記の表に
掲げた亀山リフトに代わる機能については、ゴンドラ等の先進事例や事業採算性を
調査して、事業主体の検討を含め有効な代替機能の整備手法を確立する。併せて、
大島架橋の完成後の総合的な観光振興策についても検討を継続する。
③トイレ、駐車場等の整備
観光客の快適性・利便性を向上させるトイレ、駐車場、休憩所等の施設について
は、観光のまちづくりを進める基本と位置付け、既存施設の美化・清掃に努めると
ともに、防潮堤建設及び嵩上げ等の状況を勘案した仮設による整備を含め優先的に
対応する。
④海水浴場・砂浜の再生・保全
小田の浜、田中浜、十八鳴浜、お伊勢浜、九九鳴浜、大谷海岸、小泉海岸の再生・
保全のため地域住民と海岸管理者等関係者の協議を継続する。
⑤その他の施設整備
三陸復興国立公園の指定に対応した受入体制整備として、観光客の安全と利便性
に配慮した自然公園園地、遊歩道、案内板等の整備を行う。
また、新たなまちづくりの進捗及び観光施設の整備に併せ、外国語表示のある誘
導サインや観光案内板の設置を進める。
■ 施設整備に係る継続検討
以上が観光施設整備基本方針であるが、記述のとおり、継続して検討すべき事項
があること、また、この方針の具体化や観光戦略の推進体制の議論を見届ける必要
があること、観光戦略会議の他部会においても継続検討事項がありその結論に応じ
当部会として対応すべき事項も想定されることから、観光施設整備検討部会はなお
継続して議論を重ねることとする。
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