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時間領域におけるディジタルゴースト透かし方式の一検討
平成 19 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号:50 時間領域におけるディジタルゴースト透かし方式の一検討 A-4 A Note on Digital Ghost-Watermarking Scheme in Time Domain 久田 亮 Ryo HISATA 若林 康央 Kou WAKABAYASHI 小田 弘 Hiromu KODA 電気通信大学 The University of Electro-Communications はじめに 近年, 電子透かしの研究が盛んに行われている [1]. 電子透か しの一方式として, ディジタルゴーストに基づく方式が提案さ れている [2]. 上記の方式において, 時間領域で透かし情報を検 出する際に, ゼロ挿入 [3] の処理を行うことで, 検出性能の改善 が期待できる. 本稿では, 異なる相関値の 2 次元 AR 画像に対 して, ゼロ挿入処理の有効性を調べる. 2 ディジタルゴースト透かし方式の基本原理 原信号 x(n) に対して, 混合信号 g(n) と相補的信号 ĝ(n) は g(n) = (1 − a)x(n) + ax(n − M ) (1) 1 45 35 30 BER (2) で与えられる. 但し, パラメータ a は混合率 (|a| ≤ 0.5), M は ゴーストの遅延である. これより, 混合信号対 (g(n), ĝ(n)) を バイポーラゴーストモデルと呼ぶ. 次に原信号 x(n) のケプストラムは次式で定義される. xpc (q) = Z −1 [log|Z[x(n)]|2 ] (3) 次に透かし情報の検出は以下のようにする (図 1). ⟨S4⟩ 透かしの埋め込み時と同様に, 偶奇の系列に分ける. ⟨S5⟩ 上記 ⟨S4⟩ で得られた偶奇の系列からケプストラム検出 係数 d を計算し, 埋め込まれた混合率の符号を判断する. 4 DFT 入力系列へのゼロ挿入 前述したように透かし情報の検出では, ケプストラムの差分 を用いている. しかし, 実際の計算では, z 変換を離散フーリエ 変換 (DFT) とするので, xpc (q) は以下のようになる. xpc (q) = IDF T [log|DF T [x(n)]|2 ] (5) 一般にケフレンシ帯域は非常に広いため, エリアジングの影 響を完全には避けることができない. しかし, その影響はでき るだけ低く抑えることが必要である. そのためにはサンプリ ングの間隔を狭くすればよく, 通常は十分な長さの 0 系列を 付け加える方法が用いられている [3]. これが「ゼロ挿入 (zero padding)」である. 第 3 節では透かし情報の検出時に, 2 つの埋め込み系列の長 さを共に N としたとき, 各系列の最後に長さ N の 0 系列を挿 入して得られる長さ 2N の系列に対して検出を行う. -50- 25 20 15 10 5 0 30 45 40 45 50 SNR[dB] 55 60 45 0.90 0.90_zero 40 BER 35 図 2 ゼロ挿入有無の BER 特 性 (CHEST, 相 関 値 = 0.70[縦], 0.80[横]) 図 1 ディジタルゴースト 透かし方式の原理 但し, Z −1 [·] は z 変換 Z [·] の逆変換である. バイポーラゴース トモデルに対するケプストラム差分は次のように表される. dpc (q) = Z −1 [log|Z[g(n)]|2 ] − Z −1 [log|Z[ĝ(n)]|2 ] (4) ここで混合率 a に対してケプストラム検出係数 [2] を d(= dpc (M ) − dpc (0)) とすると, a > 0 の時は d > 0 で, a < 0 の 時は d < 0 となる. 本稿では, バイポーラゴーストモデルに対 する上記の性質を利用して, 透かし入り画像から透かし情報を 検出する. 3 透かし情報の埋め込み · 検出 以下のように透かし情報を埋め込む (図 1). ⟨S1⟩ 原画像の 1 ラインのデータを取り出し, 偶数番目と奇数 番目の 2 つの系列に分ける. ⟨S2⟩ 各系列に, 式 (1), (2) により透かし情報を埋め込む. ⟨S3⟩ 上記 ⟨S2⟩ で得られた 2 つの系列を 1 つに合わせる. この作業を全てのラインに行い, 透かし入り画像を作成する. chest chest_zero 40 0.50 0.50_zero 40 35 35 30 30 25 25 BER ĝ(n) = (1 − ā)x(n) + āx(n − M ), ā = −a 計算機シミュレーション 標準画像 SIDBA の”CHEST”と”GIRL”(共に, N 2 = 2562 画素, 256 階調), および相関値 ρ = 0.90, 0.50, 標準偏差 σu = 42.620 で生成した 2 次元 AR(autoregressive, 自己回帰) 画像 [2] を使用し, 遅延 M = 2, 混合率 |a| を 0.01∼0.20 まで 0.01 刻みで透かし情報を埋め込む. ここで検出時に第 4 節に基づ いてゼロ挿入を行い, ゼロ挿入しない場合との比較を行う. 5 20 20 15 15 10 10 5 5 0 0 30 35 40 45 50 SNR[dB] 55 図 3 2 次元 AR 画像の BER 特性 (相関値 0.90) 60 25 30 35 40 45 SNR[dB] 50 55 図 4 2 次元 AR 画像の BER 特性 (相関値 0.50) 図 2 は標準画像”CHEST”の SNR と誤り率 (BER) の関係 を表し, 図 3, 4 は 2 次元 AR 画像の相関値 0.90, 0.50 での SNR と誤り率の関係を各々表している. 図 2 からゼロ挿入有りの場 合は, 無しの場合よりも誤り率が低い, すなわち検出性能が上 がっていることがわかる. 図 3 では, 50[dB] 以上ではゼロ挿入 有りの方が誤り率は低いが, 50[dB] 以下では検出性能の差が ほとんどなかった. 図 4 では, ほぼ全ての SNR で, ゼロ挿入有 りの方が, 無しの場合よりも検出性能が上がった. なお, 標準画 像”GIRL”の結果については, 当日発表する予定である. まとめ 2 次元 AR 画像を用いて, 相関値が低い画像にゼロ挿入を行 うことで検出性能が上がることを実験的に確認した. このこと から, 無相関信号 (例えば, 周波数領域での成分) に入力信号を 変換すれば, 時間領域での画像の相関値に関わらずゼロ挿入で 検出性能を向上できると考えられる. 6 参考文献 [1] 松井 : 電子透かしの基礎, 森北出版 (1998). [2] 小田, 若林, 久田 :“ 2 次元 AR 画像に対するディジタルゴースト 透かし方式の性能評価”, SITA 2007, pp.577–580 (2007–11). [3] 森下, 小畑 : 信号処理, コロナ社 (1994). Copyright © 2008 IEICE