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第3号(2007年12月10日発行)

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第3号(2007年12月10日発行)
大東文化大学図書館
大東 BOOKS
第3号 2007 年12月10日
図書館からのお知らせ
・・・・・・・・・・ 1
図書あれこれ(魂を震撼させる10の作品・近現代日本文学)
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
海外資料収蔵機関めぐり(英国国立公文書館 The National Archives;
旧 Public Record Office Kew)・・・・ 6
図書館からのお知らせ
◆ 2008年1月から3月までの図書館臨時開館
図書館では、
『大東 BOOKS』2号で一部お知らせしましたが,冬季休暇中等の臨時開館
および土曜日における開館時間の延長を行います。課題や研究論文の作成、後期試験の
準備等にご利用ください。
板橋校舎図書館(※書庫棟は閉館です。)
開館日時 : 2008年1月 4日(金) 10:00-16:30
1月 5日(土) 10:00-16:00
1月12日(土)
9:00-18:30
1月18日(金)
9:00-17:00
1月26日(土)
9:00-18:30
東松山校舎図書館(※地下視聴覚フロアーは閉館です。)
開館日時 : 2008年1月 4日(金) 10:00-16:30
1月 5日(土) 10:00-16:00
1月12日(土)
9:00-18:30
1月26日(土)
9:00-18:30
★1月18日(金)に東松山校舎は大学センター入試準備をするために、東松山
校舎図書館は休館にします。
1
◎1月4・5日のサービス内容については、
『大東 BOOKS 第2号』もしくは、図書館
内の掲示をごらんください。
◆ グループ学習室の開放
図書館では、後期試験準備による利用者増加のため、普段はグループ研究を行うため
に予約して使用するグループ学習室を閲覧室として開放します。試験準備・レポート作
成等にご利用ください。利用できる期間は、館内に掲示します。
◆ 冬季休暇中の長期貸出
冬季休暇中の図書利用のために、12月11日(火)から1月15日(火)まで長期
貸出を実施します。ご利用ください。
◆ 板橋校舎図書館の地域住民への利用開放
すでに東松山キャンパスの図書館では、地域住民に対し図書館の利用を開放しており
ますが、板橋キャンパスでもいよいよ2008年2月12日(火)より板橋区・練馬区の
地域住民を対象に図書館の利用を開放します。板橋区・練馬区住民(在勤の方も含む)
の方で板橋校舎図書館を利用希望される方は、図書館までお問い合わせください。
(図書館閲覧係 ℡:03-5399-7332)
◆ 図書館内での複写における注意点
図書館には図書資料複写のために、コピー機を設置しています。図書や論文を全頁コ
ピーすることは著作権法上違反となりますので、ご注意ください。
☆2階閲覧室☆
☆3階閲覧室☆
☆カウンター内のクリスマス・ツリー☆
2
☆新着図書コーナー☆
◎資料の紹介
◆社団法人 日本図書館協会 DVD『情報の達人』 2007 年刊行
多用な情報へのアクセスと収集、その利用と加工の入門的知識をヴィジュアルに
紹介します。第1巻「図書館に行こう」
、第2巻「ゼミ発表をしよう」
、第3巻「レ
ポート・論文を書こう」の3巻より成り、目標別に使い分けることができます。と
りわけ、第1巻では図書館を利用する際の基本的な方法が理解できます。学生にとっ
て大変参考になりますので、大いにご利用ください。
☆利用希望者は、板橋・東松山両図書館のカウンターまで申し込んでください。
請求記号:DV/007.3/J66/1から3
◎板橋キャンパス図書館だより
◆職場実習生が見学
11月19日(月)に筑波大学附属桐ヶ丘養護学校から職場実習生1名を受け入れ、
今年は本学学生部学生課で22日(木)まで実習していただきました。19日(月)午
後には図書館にも来訪され、図書および設備等を直接体験していただきました。板橋校
舎図書館には、視力の弱い学生のための読書機を備えていますが、来年度には車椅子利
用者のための机等設備の充実を計画しています。
♦板橋キャンパス中央棟 図書館全景♦
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(○
C 大東文化大学
学務部
広報課)
図書あれこれ
(魂を震撼させる10の作品・近現代日本文学)
藤尾健剛(文学部日本文学科教授)
日本文学科では、日本文学基礎演習の教科書として「日本文学研究入門」を配布している。そ
のなかに、
「近・現代文学必読作品 60 選」という項目がある。日本文学科で学ぶ4年間に、
ぜひとも読んでおいてほしい作品 60 作を、近現代文学を担当している専任教員3名で選出し
たものである。それと重複するところがあるが、ここでは私が個人的に特に愛好し、折りに触
れて読み返し、そのたびに感銘を新たにする作品を 10 挙げてみたい。
なお、紹介する図書は、出版社はまちまちだが、いずれも本学図書館に収蔵されている。書
店でも、容易に入手できる。
①樋口一葉「たけくらべ」(明治 28 年)
思春期の少年少女の心理を描いて間然するところがな
い。子どもたちがそれぞれに重い宿命を背負って、少年期という黄金時代と訣別するさまを描
いた結末部は、哀切この上ない余情を湛えている。
(新潮・岩波文庫『にごりえ・たけくらべ』
所収)
②夏目漱石『明暗』(大正5年) 日常というものをシュミレーション化して描いた作品。人間と
人間が、また出来事と出来事が緻密きわまりないネットワークで接合されていて、そこではど
のような些事も孤立したまま生起することはありえず、ネットワークの全体の組成に刻々と変
化を与えていく。―そのようなものとして日常世界が描かれており、卑近なはずのその世界
が、なんと複雑で奥深いミステリーを潜めているかをあらためて認識させてくれる。(新潮・
角川・岩波文庫)
③谷崎潤一郎『痴人の愛』(大正 13 年) 悪女ナオミが官能的な魅力によってひとりの男性をと
りこにし、奴隷のように支配するまでの過程を描く。性という深淵がいかに暗く深いものであ
るか、そこへ引きずっていく力がいかに抗しがたく強大なものかを実感させてくれる。(中公
文庫)
④堀口大学『月下の一群』<訳詩集>(大正 14 年) アポリネールの「ミラボオ橋」や「狩の角
笛」、コクトーの「耳」、グールモンの「落葉」などは、私のかつての愛唱の詩篇。軽妙で、お
しゃれな訳しぶりは、いまもなお新鮮。
(新潮・講談社文芸文庫)
⑤横光利一『上海』(昭和3年) 全世界の政治と経済の緊張した潮流が流れ込み、激しく渦を巻
く都市上海を舞台に、1人の日本人がアイデンティティを摸索する過程を描く。政治的・経済
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的因子も含めて、現代人の生を取り囲む現実を追究した意欲作。
(講談社文芸文庫)
⑥川端康成『雪国』(昭和 17 年) 無為徒食の演劇研究家の島村と、雪国の芸者駒子との出会い
と別れを描く。現実生活の葛藤がはらむ生臭さに背を向けて、西洋舞踏が描き出す幻想の世界
を堪能しようとする島村の姿勢は、この作品を支える美学でもある。汽車の窓ガラスに葉子の
顔の像が浮び、背後に流れる夕景色と1つに融け合う冒頭部の描写は有名だが、この作品の全
篇が、現実世界の上に幻影を投射する方法で描かれている。 (新潮・岩波文庫)
⑦遠藤周作『海と毒薬』(昭和 32 年) 戦時下、某大学医学部の研究者たちが、アメリカ軍兵士
を対象に生体実験を行った事件を描く。絶対的な唯一神の存在しない日本人の精神風土の荒廃
ぶりを描き出している。
(新潮・角川文庫)
⑧安部公房『砂の女』(昭和 37 年) 砂地にある部落に迷い込み、寡婦の住む家に監禁された男が、
やがて脱出の企図を放棄し、そこに定住するまでの過程を描く。村人たちは、絶え間なく吹き
込んでくる砂を、来る日も来る日も掻き出すだけの生活を続けているが、主人公は、われわれ
現代人の生活も、村人たちのそれと異なるものでないことを認識していく。
(新潮文庫)
⑨大江健三郎『個人的な体験』(昭和 39 年) 脳に障害をもつ子どもの父となることから逃避し
ていたバードが、それを引き受けるまでの葛藤を描く。人生の不条理を正面から引き受けよう
と決意するに至った主人公の姿勢が、さわやかで、感動的。
(新潮文庫)
⑩村上春樹『1973 年のピンボール』(昭和 55 年) 資本主義の機構のもとに、自由と主体性と個
性を剥奪されつつある現代人の悲哀を描く。主人公とピンボール・マシンとの再会を描く末尾
の場面は哀切この上ない。それにしても、再会した相手が、人間の恋人ではなく、ピンボール・
マシーンというのは、なんとも侘びしい。(講談社文庫、
『村上春樹全作品:1979~1989』
<講談社>)
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海外資料収蔵機関めぐり
英国国立公文書館
(The National Archives; 旧 Public Record Office, Kew)
~紹介、および利用の実践的案内~
臼杵
英一(国際関係学部国際関係学科教授)
英国国立公文書館は、世界でも名のある最大規模の文書館である。旧来からあった Public
Record Office (PRO)とその他の公文書館(Her Majesty’s Stationery Office など)を統
合したものである。ちなみに、ある日本の学会で発表者がフロアからの若い研究者の質問に対
して、いかにも知ったかぶり(patronising)な態度で「アメリカと違ってイギリスでは公文
書館は PRO と申します」と諭すような発言をしていたが、一体いつ行ったきりなのだろう。
この公文書館は、法務大臣の管轄下にあり、英国政府の公文書の保管と一般および研究者に対
する情報公開の役目を担っている。イギリス史に関しては、1086 年のドゥームズデイ・ブッ
ク(イングランドのウィリアムⅠ世が作成を命じた土地調査台帳)から、1982 年のフォーク
ランド紛争など最近の政府文書まで(原則として作成から 25 年で公開される)を所蔵・公開
している。
公文書館との〝出会い〟について一言。この紹介記事を書いている筆者の専攻は国際法であ
るが、オーストラリア出身の国際政治学者ヘドリー・ブルの影響を受けて通い出したのがきっ
かけである。ブルによれば、国際法学者の学問的任務は、国際政治学者とちがって、時事的な
論争の追究のほかに、個々の国際法規の明確化のために、国家実行・先例に関する外交史料を
用いた歴史的な実証研究の方法論を見失ってはならないと云う。もとより、歴史学の方法的訓
練を受けておらず、外交史の先輩の助言のおかげでなんとか基本的なことは体験的に学んでき
た。この紹介記事も、若い研究者の皆さんに、もっとこの史料の宝の山を利用していただきた
いと願って、実践的な紹介ならばと引き受けた次第である。新発見の史料をねらうのではない。
比喩的にいえば、英国など西洋の学者がすでに見た史料の中に、日本人の視点からの新発見が
あるのである。
公文書館へ通うには、従来は、英国のいずれかの大学に留学生あるいは訪問研究員として所
属して、英国の史学コース担当教員や学者の助言を受けながら研究するのが通例であった。し
かし、今は、公文書館自身が月曜日から土曜日まで毎日午後 2:15 から 1 時間弱、一階エン
トランス・ホールの受付から利用案内ツアーを実施しているし、最低限の文献の探し方を知る
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だけで、どこの大学にも所属せずとも、(あたかも若き日のマルクスや漱石が大英図書館に通
ったように)ロンドン市内の宿に私的に滞在しながら通うことが可能である。
公文書館は、ロンドン市の西の郊外、キュー・ガーデンズ植物園の反対側にある。ロンドン
地下鉄ディストリクト線のキュー・ガーデンズ駅下車徒歩 10 分弱。若者の街アールズ・コー
ト駅あたりからリッチモンド行きに乗りかえて、30 分ぐらいで行ける(なお近年、切符の料
金は朝 9 時半までは目が飛び出るほど値上げされているので、窓口で一日乗り放題の day
card か 1 週間単位その他の oyster card を買うこと)
。テムズ川の鉄橋を渡るとき左側に下
記の写真のような薄茶色の建物が見えてくる。駅をはさんで植物園とは反対側の土手沿いにあ
り、館までは、住宅街をぬけていく。路上に案内板もあるが、駅員に聞くとよい。
到着したら、まず一階エントランス・ホールの左奥にある受付カウンターに行き、パスポー
トを提示し登録申請書に記入してバーコード付きの利用証(Reader’s ticket)をつくっても
らう。推薦状は不要。無料で即発行してくれる。この利用証の裏にある 7 桁の数字が座席選
択や文書請求の ID となる。ホール左側の廊下を進むと、右に本屋、左にカフェ・レストラン
がある。近現代史であれば、本屋で必ず Michael Roper, The Records of the Foreign Office
1782-1968, 2nd ed., PRO, 2002(£35)を購入しよう。この期間の政府文書の総合的な
説明と文書のレファランス記号/番号の案内、歴代閣僚一覧などが、分りやすく年代別・文書
別に説明されていて便利である。
廊下を進んでいくと正面に、さらにセキュリティ・スタッフのいる入口がある。この二階に
上がって行くと閲覧室がある(三階は地図や 1688 年以前の文書などの大型文書の閲覧室)。
閲覧室内には、ノートと鉛筆(あるいは、ラップトップ・コンピュータやカメラ)以外は持ち
込めないので、右奥のロッカー・ルームにかばん類・飲み物類を置いてゆく(最近、ロッカー
の鍵かけに 1 ポンド・コインが要らなくなった)
。無料で利用でき持ち込める透明な手提げビ
ニール袋がロッカー・ルーム入口にたくさんかかっている。化粧室も入口左側にある。セキュ
リティ・スタッフの持ち物検査を受けて二階に上がると、参考室になっており文書検索のファ
イル類があり、そして文書について相談に乗ってくれる専門司書がいる。そこを左に進むと閲
覧室がある。閲覧室では、左手の文書受取りロッカーや案内係のいるガラス張りの区画の外の
両側にあるデスクトップ・コンピュータ(数台しかないのは不便だが)を探して利用証を通し
(または、ID の数字を打ちこんで)
、画面の指示に従って好きな閲覧座席(六角の机の一辺)
をたとえば〝ノートと鉛筆〟組の4B(4 番机の B 辺)などと画面の配置図で選ぶ。自分の持
ち込んだラップトップ・コンピュータを使用する場合は 24 番机から 42 番机の遠く離れた窓
辺の机を選ぶ決まりである。この番号+アルファベットがその日の座席となり、また請求した
文書を取りに行く文書受取りロッカーの番号となる。座席に着いて、近くの専用机に山積みに
なっている黒い発泡スチロール製の三角形の積み木のような文書台(reading aids)を二つ持
っていっておく。以前はうるさくなかったが、今は使わないと常時室内監視カメラでチェック
している係官が来て注意される。さて、文書を先ほどのデスクトップ・コンピュータで請求す
る前に、文書のレファランス記号/番号を調べなければならない。
7
具体的に、たとえば日中関係史のテーマから、日中戦争中に日本が南京に成立させた汪兆銘
[Wang Chao-ming]「国民政府」(1940 年‐1945 年)が日本と締結した日華基本条約
(1940 年 11 月 30 日)の英文テキスト(駐上海英国領事館作成)を探し出し、英国のとっ
た政策に関連する英国外務省本省の文書(省内メモ、覚書、議事録、電報、ときに関連した閣
議決定書など)を調べる場合を説明しよう。先ほどの参考室に戻り、階段のある右手側の書棚
に、赤い製本背表紙の Index to the Correspondence of the Foreign Office for the Year
19[41], (Now preserved in the P.R.O., London) Published by Kraus-Thomson
Organization, Ltd/Neudeln/Liechtenstein, 1972 by arrangement with H.M. ’ s
Stationery Office, London、通称 F.O. General Correspondence を探す(赤インデック
ス)。各年度(1960 年代まで)数巻ずつ並んでいる。Green Correspondence という表示
の巻は、長く未公開にされていた機密文書の索引となっている。この赤インデックスは、英国
の大学ならどこでも総合図書館(UL)にあるものである。日本では東京大学法学部研究室図
書室に所蔵されているが、部外者の利用は極めて限定されていて宝の持ち腐れである。総合図
書館に移すことが望まれる。
他大学のことはともかく、個別の文書をピンポイントで探したい場合は、事前調査に充分時
間をかけなければならない。公文書館にあるこの赤インデックスでまず、たとえば 1941 年
の各巻は事項のアルファベット順になっているので、China の C の含まれている巻を開き
China: Administration (Nanking “Puppet Govt. of Wang Ching-wei”[汪精衛])の項
目をみると、たとえば Treaty between Mr Wang Chin-wei’s Govt. and Japan の見出
しとともに F3787/273/10 がリストアップされている。F は英国外務省の Far Eastern(極
東部)の文書であり、3787 は文書番号、273 はこれから説明するが、その文書がファイル
されているファイル番号で、10 は中国をしめす国番号である。このほかに、別の巻で
Japan:Foreign Relations や Treaties その他の関連事項も適宜引くと良い。
さて、文書請求するためにはこのままではだめで、さらに同じ書棚に並んでいる黒い背表紙
の F.O.ファイル(黒ファイル)の 1941 年のファイルを出して、上記の表記にあった Far
Eastern の分類頁の中の China の頁を探して、各頁の右端の pages(この場合、ファイル番
号のことを指す)の項で 273 を含んでいる F.O.ファイル番号を確認しなければならない。こ
の場合、273(pp.)を含む F.O.ファイルの番号(頁の左端にある)は、(FO371/)27668
であることが分かる。これがコンピュータで請求する番号である。利用証を閲覧室内のコンピ
ュータに通して文書請求の画面から請求する。指定された場所に FO、371、27668 の順に
打ち込み確認をクリックするだけである。一度に 3 点だけ請求できる。出てくるまでかつて
は 1 時間かかった。今は早くなって 30 分後には先ほどの文書ロッカー4B に入れておいてく
れる。先が長いので、下のカフェにコーヒーでも飲みに行って一息つくと良い。文書 3 点は
ほぼ同時に出てくるが、文書は 1 つづつしか閲覧机で見ることができない。
ファイルされた各文書の一枚目を見ながら探す。すると、左上に「文書記号・番号」
F3787/273/10 とともに文書の「発信者」Sir A. Clarke Kerr (Chungking)と「日付」12th
8
Feb. 1941 が、またその右には文書のタイトルとごく簡単な要約が付けられたお目当ての文
書が出てくる。コピーを申請した場合はその頁の一番上部に「ファイル番号」FO371/27668
も記載される。この文書を引用する際には、これらの「発信者」
、
「日付」
、
「文書記号・番号」、
そして「ファイル番号」の順に註記すること。文書には、そのほかに関連した条約テキストや
メモや電報などが含まれているので、必要なものはやはり重ねてそれらについて註記する必要
がある。読み終えて、筆写または自分のコンピュータへの打ち込み、あるいは撮影、コピーな
どしたら、返却デスクに、文書受取りロッカーに一緒に入っていた文書スリップとともに返却
する。さらに次の文書を読みながら、適当な時にさらに 4 つ目の文書もあらたに請求してお
くとよい。
特定の文書でなく、汪政権一般に関する外務省文書を探してじっくり読み込みたい場合は、
最初から上記の黒ファイルで Far Eastern の China のところを開き、ファイル番号と pages
との間に大雑把だが文書の大テーマが一言記載されているので、そのファイルをコンピュータ
で請求すれば良い。ファイルの最初から一つひとつ目を通しながら役に立つ文書を探すので時
間はかかる。長期滞在できる場合向きである。幸い 1941 年の汪政権については、黒ファイ
ルに中国・汪政権のテーマ表記でまとまって二つのファイルが掲載されていて
(FO371/27668 および FO371/27669)、このやり方でも可能である。世界史で習った
ことについて同時代の文書の現物を目の当たりにすると、やはり感動する。有益なファイルや
文書に出会えるかどうかは、その人のもつ宿命のようなものを感じる。必要な文書を見つけた
時の感動は、歴史家だけの特権にしておくのはもったいないだろう。
さて、第二次世界大戦後の文書の一部や比較的最近の文書をコンピュータで請求すると、マ
イクロフィルム閲覧室蔵と出てくることがある。参考室の例のファイルの書棚を右手にして正
面に、マイクロフィルム閲覧室がある。午前中早めに行かないとこの部屋はすぐ満室になる。
マイクロ閲覧室では、自分で引き出しからフィルムを取り出して見る。部屋の中央の係の司書
から個別の小箱(blue box)を受け取り、取り出したフィルムの場所に置いておく。開館時
間を含めて(朝 9 時から夕方 5 時まで。火曜日 10 時・土曜日 9 時半から、また火曜日と木
曜日は夜 7 時まで開いている)詳細については、この紹介記事の末尾に示したホームページ
を参考にしていただきたい。
また、文書のコピー(photocopies)は、紙ベースのコピーを申請できる。コピーカードを
買ってその場でコピーできるのはわずか 15 枚までである。大量コピーは、閲覧室の一番奥に
あるコピー依頼室で申請書に記入して後日英国国内へでも日本へでも郵送してもらうことが
できる(料金は前払いだが、クレジットカード可)。ルース・ファイルの文書ならば、現物か
らコピーしてくれる(1 枚 50 ペンス)
。ただし、最近は現物の文書の製本ファイルを見ても
それがマイクロ化もされている場合、現物でなくマイクロ化したものからコピーを作成するの
で(1 枚 40 ペンス;文書には黒字の頁数で表記されている)、全然関係ない頁コピーが送ら
れてくることがある。再び公文書館に行って訳を話し、特別に現物の文書からコピーを作成し
てもらった。内規違反であるらしいが。マイクロ化にミスのないドイツなどとは違って、たし
9
かにイギリスでは仕事は荒い。けれども、このように正当な理由を申し立てれば、規則にとら
われず特別に配慮してくれる。ドイツでは絶対に許されないだろう。同じヨーロッパでもおも
しろい文化の違いである。また、持ち込んだデジタル・カメラで指定された場所で撮る写真な
らば枚数制限はないが、無駄に大量に写してあとで「何だこれは」ということになる。筆者は、
鬼のようにすばやいが人には読めない字でノートに筆写するという院生時代からの習慣がぬ
けない。
かりにいまこれを読んでくださっている読者諸賢が中国研究者であって、そして日本と中国
の文献は調べつくされていたとしても、かつて出先機関を中国に持っていた英国ほか各国の公
文書館の外交文書の中に、まだ日本人から見て宝の山が残っていると思われる。たとえば「南
京虐殺」についても、米国と中国の史料調査をまとめた研究書はあるが、英国の史料を検討し
てまとめたものはまだないような気がする。政治的論争とは距離を置いて、ぜひどなたか取り
組んで欲しいものである。歴史研究の中で、歴史史料を扱うには謙虚さが大切である。自分の
思い入れに都合のいい史料だけを拾い上げて歴史を書こうとすればできてしまうのではない
か。そういう恐ろしさすら感じる。時には自分の立論やこだわりを捨てる勇気が肝要である。
バランス感覚を失わないで欲しい。専攻分野を問わず、将来有る若い研究者諸君はこれから〝
なんでもあり〟なのだから、毎年夏休みなどを利用して、ぜひ現地で基本から体験的に学んで
いって欲しいと思う。近年、公文書館でも大学でも韓国人研究者が増え、日本人研究者を見か
けることが少なくなったような気がする。
公文書館には個人的に思い出がある。今年も、閲覧室で偶然十数年ぶりに先に触れた外交史
の先輩に声をかけられたし、文書館のカフェで英国の国際法学者とその助手と知り合いになっ
て、のちに国際学会の折に北海道まで一緒に旅することになった。あるいは、公文書館からケ
ンブリッジへ帰る日にはよくアールズ・コートで途中下車して、レックスハム・ガーデンズの
住宅街クロムウェル通り 160 番にある Capriccioza という温室のようなガラス張りの清潔で
親しみのあるイタリアン・カフェに寄ったものである。大皿のミュール貝のボイルにイタリア
のワインやビールがよく合う。店の人も気さくなイタリア系姉さん・兄さんで心がなごむ(Tel:
020 72344 6444)。公文書館への旅は、厳しいが愉快で、ときにはほろ苦く、これまで自
分にとってもっとも実り多い内省のかたちとなってきたのである。
Homepage: http://www.nationalarchives.gov.uk/
The National Archives Kew, Richmond, Surrey, TW9 4DU, UK
Tel: +44 (0)20 8876 3444
Email: www.nationalarchives.gov.uk/contact/form
10
大東文化大学図書館報『大東 BOOKS』
第3号
2007 年 12 月 10 日刊行
編集発行人 柴田善雅
連絡先
大東文化大学図書館事務部図書課
住所
〒175-8571 東京都板橋区高島平 1-9-1
電話
(03)5399-7331
Email
[email protected]
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