...

ガイガーモード距離画像センサの開発

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

ガイガーモード距離画像センサの開発
研究成果のタイトル
共通様式
ISAS事業
計画No,
研究代表者(所属)
費用(概算で
もOK)
3-­‐2-­‐1(例)
事務局記
入
水野 貴秀 宇宙機応用工学
13,000千円
研究成果のハイライト
ガイガーモード距離画像センサの開発
(1) 16×16素子の測距回路(ROIC, H26年度試作)について、詳細に評価して技術課題を抽出した。
①データ読みだし、パラメータ設定機能については完全に動作している。
②PLL回路が予定周波数では動作しない。
③測距カウンタの動作が不安定となる。 (2) 測距回路(ROIC , H26年度試作)とデバイスメーカ側にて試作したAPDアレイを垂直接合してFlash LIDARデバイスを試作、評価し、 技術課題を抽出した。
①16×16素子のAPDとROICを接合してFlashLIDARデバイスの試作に成功した。
試作Flash LIDARデバイス
②APDをガイガーモードで動作させ、APD+ROICの動作を確認した。
③ROICの問題点は識別した上で、光学系内に組み込み、距離画像を取得することに成功した。
④APDの均一性、感度について調査し、技術課題を明らかにした。
(3) 抽出された技術課題を改善した測距回路(ROIC)を試作、評価する。
①(1)②の問題に対して、シミュレータにて再現し、回路を簡素化して高速動作可能な設計に変更した。
②(2)③の問題に対して、16×16の測距カウンタ動作時にPLL回路への電力供給が不足したため、電 力ラインを別にする設計に変更。
③(2)④の問題に対して、各素子のAPDバイアス電圧を微調整する回路を付加した。
④2月にH27年度試作ROICが納品され性能確認予定である。
得られた距離画像
成果の社会的意義・価値
アイセーフ波長帯で動作可能なInGaAs-­‐Gm*-­‐APDを用いて3次元距離
測距センサの初期動作を確認することができた。Flash LIDARは宇宙
機の他、測量、火山観測などへの応用が期待される。また、本開発
によって、得られる高感度APDはフォトンカウンティングなどの幅広い
応用が考えられる。 * ガイガーモード
成果創出に至る取組・克服状況
・国内半導体デバイス製造メーカとの協力 ・軌道上での実験を前提として、研究開発部門第一研究ユ
ニットとFlash LIDARのセンサシステムとしての検討を開始 ・試験評価方法の検討
上記研究成果に関するエビデンス(査読付き論文、学会発表等)
水野貴秀,池田博一,川原康介,三田信,片岡淳,「Flash LIDAR用デバイスの開発」,2016年宇宙科学シンポジウム
平成27年度戦略的開発研究(工学)報告書
研究課題名
ガイガーモード距離画像センサの開発
研究代表者(所属)
水野貴秀(宇宙機応用工学研究系)
共同研究者(所属)
池田博一、三田信、橋本樹明(宇宙機応用工学研究系)、川原康介(基盤技術グループ)、
星野健(探査ハブ)
研究協力者(所属)
片岡淳(早稲田大学)
活動区分
□WG ■RG □衛星運用 研究活動期間
平成 26年度 から 平成 27年度(予定) 平成27年度 研究費 13,000 (千円) 平成28年度 研究費要求額
35,000(千円)
平成27年度
研究成果
16×16素子の測距回路(ROIC, H26年度試作)について、詳細に評価してPLLの電力供給
問題などの技術課題を抽出した。測距回路(ROIC, H26年度試作)をデバイスメーカ側にて
試作したAPDアレイと垂直接合してFlash LIDARデバイスを試作し、ガイガーモードAPDと
ROICの組み合わせでの動作を確認するとともに、距離画像を取得することに成功した。
ROIC単体評価及びAPDとの組立状態での試験で抽出された技術課題を反映して改善し
た測距回路(ROIC)を設計した。引き続き年度内にROIC単体の評価を実施する。
評価ポイント
CMOS 0.18µmプロセスを使用したROICの設計製作、APDの製造、ROICとAPDの組立
という一連の製造プロセスを経て完成した、最初の試作で距離画像が得られている。
2
本研究の目的
本研究の背景,目的,意義など
(背景)
月や惑星に着陸探査をおこなう探査機では、着陸直前に地形測定や着陸時の障害物回避の必要から、単一方
向の測距装置だけでなく数百mから3次元的な距離画像が取得可能なセンサが強く望まれている。同様に軌道
上でのランデブードッキング用の航法センサ或いはデブリ探査センサとしても、3次元距離画像センサへの要求
は強い。
(目的)
月惑星への着陸機では着陸地点の地形認識や障害物回避に適した3次元距離画像センサであるFlash
LIDAR開発のため、高感度なガイガーモードのAPDアレイと側距回路を使用したデバイス開発を行う。
(意義)
Flash LIDARは高いフレームレートで同時刻性に優れた距離画像を提供する3次元距離画像センサであり、着
陸機システムから要求されている地形掌握、障害物検出を実現することができる。本センサは日本が宇宙探査
の自由度を確保するために、独自に開発すべきセンサである。
本研究のゴール
InGaAs-APDをガイガーモードで動作させたFlash LIDARデバイスのROIC部について、128×128以上の実用
的な規模の画素数をターゲットとして、CMOS 0.18µmプロセスを使ってレンジ分解能0.1m程度を可能にする回
路設計技術および周辺回路技術(クエンチ回路及びデジタル系読み出し回路)を実証して確立する。
3
研究計画と方法
研究計画・方法(開始年度から)
平成26年度 (研究費: 15,000千円)
基軸プロジェクトとして、APDの製造性、電気特性を考慮した上で十分なレンジ分解能を得られ、かつ簡易なシ
リアル入出力を持った測距回路を設計・製造することを目標とした。具体的には16×16素子のアレイを作成し、
測距回路の性能、画素間の干渉、読み出しインターフェースの評価など電気的な特性試験を実施した。
平成27年度 (研究費: 13,000千円)
平成26年度に試作したROICとAPDを接合して組立たデバイスに対して電気的、光学的な特性評価を行う。こ
の評価結果を踏まえて、ROICの改善、APDの性能改善(デバイス製造メーカ担当)行い、評価する予定である。
また、光学的評価方法の検討を行う。この年度でFlash LIDAR用デバイス製造のための基礎的な技術を確立
する。
平成28年度 (研究費: 35,000千円)
画素の規模を拡大して画素数128×128のROICを製作し、回路の大規模化にともなう問題について評価を行う。
デバイスパッケージを開発し、別途製作する128×128APDアレイと接合してパッケージングし、距離画像センサ
として評価する。
平成29年度 (研究費: 5,000千円)
平成28年度に製作したデバイスの詳細評価及びフィールド試験を行う。
4
平成27年度研究成果の概要
研究成果
16×16素子の測距回路(ROIC, H26年度試作)について、詳細に評価してPLLの電力供給問題などの技術課題
を抽出した。
測距回路(ROIC, H26年度試作)をデバイスメーカ側にて試作したAPDアレイと垂直接合してFlash LIDARデバ
イスを試作し、ガイガーモードAPDとROICの組み合わせでの動作を確認するとともに、距離画像を取得するこ
とに成功した。
ROIC単体評価及びAPDとの組立状態での試験で抽出された技術課題を反映して改善した測距回路(ROIC)を
設計した。引き続き年度内にROIC単体の評価を実施する。
目標の達成状況
APDと測距回路を接合したFlash LIDARデバイスとして距離画像を取得することで、電気的、光学的な評価を
実施する目標を達成している。
上記結果を反映して改善した測距回路の設計、製作についても実施済みで、その評価も今年度中に実施完了
見込みであることから、Flash LIDAR用デバイス製造のための基礎的な技術を確立できる見込みである。
来年度以降の研究方針
128×128程度の実用レベルのデバイスを製造し、HTV実験モジュールなどの軌道上での実験に向けて、システ
ム設計と並行して作業を進める。
5
平成27年度研究費内訳
項目
詳細
回路設計・製造
・256ピクセル回路 設計,製造,パッケージング 9,363
評価試験
・試験評価基板 ・デジタル回路設計 ・データI/Fソフトウェア ・光学パワーセンサ ・半導体パラメータ測定装置 ・SMファイバ光減衰器 ・ヒータ及びコントローラ 3,424
200
旅費
合計
価格(千円)
1/29現在
1,2987
6
平成27年度研究業績(研究発表,特許,表彰など)
【国内会議】
水野貴秀,池田博一,川原康介,三田信,片岡淳,「Flash LIDAR用デバイスの開発」,第16回宇宙科学シンポジ
ウム,P-145、Jan. 2016
7
平成27年度研究成果の詳細
非公開希望の有無
Flash LIDAR 近年月・惑星に関する本格的な科学観測活動が行われているが、これらの探査機の多くが数十~数
百kmからの距離測定が可能なLIDARを搭載している。さらに、月や惑星に着陸探査をおこなう探査機で
は、着陸直前に地形測定や着陸時の障害物回避の必要から、単一方向の測距装置だけでなく数百mか
ら3次元的な距離画像が取得可能なセンサが強く望まれている。同様に軌道上でのランデブードッキン
グ用の航法センサとしても、3次元距離画像センサへの要求は強く、さらに有人機へのドッキングの際は
アイセーフレーザの使用も望まれる。
Flash LIDARは将来の月惑星への着陸技術およびランデブードッキング技術に必要なセンサであり、先
に述べた米国のDragonやOSIRIS-­‐Rexの例に見るように宇宙機へも適用されつつある。本センサは日本
が宇宙開発の自由度を確保するために、独自に開発すべきセンサである。
図1 月着陸機の障害物検出センサ
ガイガーモード距離画像センサ Flash LIDARの開発の鍵は、APDアレイとその後段の測距回路および読み出し回路(ROIC:Read Out IC)で形成された受信専用の複合デ
バイスの開発にある。デバイスは図2のように、APDと測距回路をアレイ状に配置して、2つを垂直に接合して形成される。APDの感度を
示すブレークダウン電圧を均一に作ることが難しいため、測距回路をできるだけ小さく作る必要がある。本研究開発では、アイセーフ
レーザの波長帯である1500nm付近に感度を持たせるために、APDとしてInGaAsを採用し、感度の高いガイガーモードで動作させる。
ROICは試作開発コストを抑制する必要から、民生シャトルサービスのCMOS 0.18μmプロセスを選択した。1画素の測距回路の概略を図
2に示した。0.1mの時間分解能を持たせるために内部で1GHzを生成し、回路規模を小さくおさえるためにカウンタではなくM系列符号発
生器を使用している。ガイガーモードAPDのためのクエンチ回路については、APDアレイ側に抵抗負荷するか、外部に持たせる設計であ
る。
図2 Flash LDIAR用デバイスの構造と1画素の測距回路の概略
8
ROICの試作とその評価
ROICはできるだけ小さな面積で作る必要があること、搭載品として実績のあるプロセスであること、
開発コストを低減することから、民生シャトルサービスのCMOS0.18μmプロセスを選択した。FMでは
128×128素子程度の実用規模のROICとなることと、APDとの接合のMEMS工程の作業性のため、同
一プロセスにて専用ウエハで製造する予定である。図3は2014年度に試作したROICの写真で、ベア
チップサイズは3×3mmである。
ROICはAPDとの接合前に単体でセラミックパッケージに組立、電気的試験を行い、データ読みだし
回路、測距回路、測距回路のカウンタクロックとなるPLL出力について確認した。図4は読み取られ
た距離画像で、X方向6番目のY列に入力されたテスト用のタイミング信号のタイミングをROICが読み
取れていることを示している。単体試験によって基本動作が確認されるとともに、以下の問題があ
ることが明らかになった。 ①PLL回路が予定周波数で動作しない。 PLLは本来1GHzのクロックを測距カウンタに供給するが、1GHzではロックせず500MHzでの動 作となっている。
②測距カウンタの動作が不安定となる。 図5に見られるように測距カウンタ動作と同時にPLLのロックが外れるため、測距カウンタの値 が不安定となる。 ROICの改良設計 2015年度設計のROICでは、①の対策
として、PLLの回路を簡素化して高い周
波数に対応可能とし、②に対しては、PLL
回路の電源を測距カウンタと別電源に
することと、デジタル系の電源供給パッ
ドを増加さる対策がとられている。 また、APD+ROICの評価結果から、APD
のブレイクダウン電圧のばらつきを吸収
するため、バイアス電圧を微調整できる
機能を付加した。 3mm
非公開希望の有無
平成27年度研究成果の詳細
3mm
図3 試作したROIC
測距ゲートが開くとPLLのロックが外れている
PLLモニタ
測距ゲート(ARMIN)
図4 テストパルス信号
図5 読み出しロジックの動作
9
平成27年度研究成果の詳細
非公開希望の有無
APDとROICの接合 試作したROICに半導体デバイス製
造メーカによって製造されたAPDアレ
イを接合したFlash LIDARデバイスの写
真を図6に示す。
図6 APDと接合したROIC
距離画像の取得 図7は距離画像を取得するための実験装置で、常温大気
圧化の試験評価基板にf=4mmの単焦点レンズを取り付け
て約13°の視野を持たせている。送信光源としてはYAGレー
ザの基本波1.064μmを視野20×20°にDOEで拡散照射して
いる。ターゲットは発泡剤で作った”H”の文字である。左上
に撮像した距離画像を示した。ターゲットの”H”の文字の
距離画像が得られ、正常に動作していることがわかる。 低温での特性 ガイガーモードでは、APDをブレークダウン電圧を超える
動作点で使用するため、冷却して暗電流を抑制する必要
がある。図8は評価装置を恒温槽に入れて-­‐40°まで冷却し
て取得した検出感度と検出タイミングの特性を示している。
横軸は入射光量の減衰器による調整量、縦軸はレーザパ
ルス入力からデバイスによるタイミング検出パルスまでの
遅延時間である。この結果から、低温にするにしたがって、
感度が上がり検出タイミングの遅延も少なくなっていること
がわかる。しかし、光量によって遅延が変化していることか
ら、APDの感度が不足していることが予想され、今後の改
善点である。
図7 実験設定と得られた距離画像
図8 検出タイミングの温度特性
10
Fly UP