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43.職業紹介事業に係る規制の見直し 43−1.

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43.職業紹介事業に係る規制の見直し 43−1.
43.職業紹介事業に係る規制の見直し
43−1.有料職業紹介事業に係る規制の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【改正職業安定法の内容】
◇労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図ること、民間の行う職業紹介、労働者の募集、労働者供給事業又は
労働者派遣事業を指導監督することを、政府の業務として規定(改正職業安定法第5条)。
◇有料の職業紹介事業を行おうとする者は、労働大臣の許可を受けなければならない(同法第30条第1項)。
◇許可をする場合には、あらかじめ中央職業安定審議会の意見を聴かなければならない(同法同条第5項)。
◇労働大臣は、法定の許可基準に適合していると認めるときは、許可をしなければならない(同法第31条)。
◇許可の有効期間は、新規3年、更新5年とする(同法第32条の6)。
◇有料職業紹介事業者は、港湾運送業務に就く職業、建設業務に就く職業その他有料の職業紹介事業においてその
職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるものとして命令で定める
職業を求職者に紹介してはならない(同法第32条の11)。
政府の対応(規制緩和 ◇有料職業紹介事業の更なる取扱職業の拡大について、ネガティブリスト化の施行状況、ILO第181号条約等
推進3か年計画)
を踏まえ、基本的方向を決定の上、法改正とともに同条約の批准を行い、その具体化を図る。
◇国外にわたる有料職業紹介事業の取扱職業の在り方、およびその更なる拡大について検討を進める。
◇有料職業紹介事業の許可及び更新許可に係る有効期間について、ILO第181号条約等を踏まえ、所要の改正
法案を提出するとともに同条約の批准を行い、その延長を図る。
◇有料職業紹介事業の許可要件について、ILO第181号条約等を踏まえ、その要件を見直す。
◇職業紹介事業と労働者派遣事業の兼業に係る有料職業紹介事業等の許可要件について、引き続き検討を進め、速
やかに所要の措置を講ずる。
◇有料職業紹介事業の許可制度について、ILO第181号条約等を踏まえ、所要の改正法案を提出するとともに
同条約の批准を行い、具体化を図る。
◇有料職業紹介事業の手数料に係る規制について、ILO第181号条約等を踏まえ、所要の改正法案を提出する
とともに同条約の批准を行い、具体化を図る。 (以上、改正法施行
時)
進捗状況、検討状況
◇ 民間の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割にかんがみ、その適正
な運営を確保することを法目的に追加することなどを内容とする、職業安定法等の一部を改正する法律(平成1
1年7月7日法律第85号)が公布された。
2 論点整理
【ネガティブリストの範囲】
論点1: 市場原理を通じた労働力の需給調整機能を強化する観点から、有料職業紹介事業が取り扱うことができない職業の範囲を必要最小
限にとどめるべきではないか。このため、命令でネガティブリストに含まれる職業については、これを必要最小限にとどめるととも
に、特定の職業を取扱職業の範囲から除外するに当たっては、その理由を具体的に示すこととすべきではないか。
◇改正職業安定法により、有料職業紹介事業者は、1)港湾運送業務に就く職業、2)建設業務に就く職業、3)その他有料の職業紹介事業
においてその職業のあつせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれのあるものとして命令で定める職業、を除き
取り扱うことができるようになる。しかし、市場原理を通じた労働力の需給調整機能を強化する観点から、有料職業紹介事業が取り扱うこ
とができない職業の範囲はこれを必要最小限にとどめるべきではないか。また、特定の職業を命令でネガティブリストに含めるに当たって
は、当該職業について有料職業紹介事業を認めるとなぜ「労働者の保護に支障を及ぼすおそれ」があるのか、その理由を具体的に示すこと
とすべきではないか。
◇なお、国外にわたる職業紹介についても、現在は取扱職業を①科学技術者、②経営管理者、及び③通訳に限定したポジティブリスト方式が
採用されている(職業安定法施行規則第24条第1項)が、改正法施行後はこれがネガティブリスト方式に移行することになる。その際、
ネガティブリストの範囲が無原則に拡大されることのないよう、リストの範囲を必要最小限とするとともに、国内における職業紹介と異な
る扱いをする場合にはその理由を具体的に示すこととすべきではないか。
◆有料職業紹介事業の除外職業を定めるに当たっては、公労使三者構成の中央職業安定審議会において、改正職業安定法第32条の11に基
づき「有料の職業紹介事業においてその職業のあっせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該
当するとされた職業を除外する考えである。
【許可基準とその解釈運用】
論点2: 有料職業紹介事業の許可基準については、許可制の名の下に参入規制が行われることのないよう、パブリック・コメントを経て、
明確で合理的な内容の審査基準を定めることとすべきではないか。
◇有料職業紹介事業について改正職業安定法が許可基準を法定したことは、許可制の透明性を高めるものとして評価できるが、「申請者が、
当該事業を適正に遂行することができる能力を有すること」(同法第31条第1項第4号)等、法律で定められた許可基準にはなお不明確
なものがみられる。それゆえ、許可基準の解釈及び運用に当たっては、許可制の名の下に参入規制が行われることのないよう、許可基準を
具体化した明確で合理的な内容の審査基準の案を前もって一般に公表し、パブリック・コメントを経た上でこれを定めることとすべきでは
ないか。また、当委員会としては、その許可基準及び審査基準に基づく解釈・運用を注視していく。
◆許可基準については、改正職業安定法の施行に向けて、中央職業安定審議会での審議、パブリック・コメントを経て、定める考えである。
3 参考資料
<参考1> 制度の沿革
職業安定法制定時の取扱職業は11職種。
昭和22年
省令の改正により取扱職業を29職種にまで拡大。
平成2年
平成8年4月
平成9年4月
平成11年
通達の改正により、有料職業紹介事業の許可の申請等に係る添付書類を簡素化。
・省令の改正により、有料職業紹介事業の取扱職業の範囲を大幅に拡大し、実質的にネガティブリスト化。紹介手数料につ
いても、労働大臣の承認を受けることなどにより徴収額の設定を事実上自由化。
・許可等の手続について、明確かつ簡素で裁量の余地の少ないものとすることとし、マニュアルを作成し周知。
・通達の改正により、許可の申請等に係る添付書類を簡素化。
・有料職業紹介事業責任者の職務経験要件(10年)を3年に短縮。
職業安定法の改正により、有料職業紹介事業の許可制度を透明化。
・許可申請手続き、許可条件、変更届、事業の廃止、許可の取消し、名義貸しの禁止等、制度を明確化。
・申請に必要な書類、許可基準、許可の欠格事由について明示。
・紹介手数料については上限付き又は届け出た手数料表により行うことの選択制に移行。
・許可の有効期間(1年)を、新規3年、更新5年に延長。
・取り扱うべき職種の範囲等(労働大臣が有料職業紹介事業者の申出に基づき定める)、手数料、苦情処理等について明示
を義務化。
・職業紹介責任者の選任、帳簿の備付け、事業報告を義務化。
<参考2> 各国の状況
区 分
ア メ リ カ
有 料 職 業 紹 介 ・ 一般的に許可制(州により
異なる)。
についての事
業 規 制 等 の 状 ・ 経営者の資質、相談員の配
置、適切な事務所の保持、
況
保証金の供託など。
・ 職業紹介機関が人種等を理
由として紹介を行わないこ
との禁止(公民権法)
・ 州による許可制の下で、求
職者保護の観点から、契約
内容、手数料、広告内容等
を規制。
イ ギ リ ス
ド イ ツ
フ ラ ン ス
・ 許可制はなし。
・ 許可制(有効期間3年、更 ・ 国営が原則。民間の有料職
・ 取扱職種や手数料に係る規
新可、更新による無期限化
業紹介は認められていな
制もなし。
が可能)。
い。
・ 労働者からの手数料徴収の ・ 適性、信頼性を有すること ・ 現実には、管理職、専門職
禁止(芸術家、モデル等は
等の許可要件有り。
のヘッドハンティング業が
例外)。
・ 法令に違反する報酬の支払
ある(法律上は違法)。
・ 広告、手数料の表示義務
に関する契約、公共職業安
・ 職業紹介所が人種、性、障
定所及び民間職業紹介所へ
害等を理由に差別すること
の求職の申込みを行えなく
の禁止。
するような契約の締結は無
・ 求人、求職の目的以外で労
効。
働者及び使用者に関する情
報開示の禁止
<参考3> 有料職業紹介事業の許可事業所数(各年度末現在) (単位:事業所)
年 度 区 分
6年度
7年度
8年度
9年度
10年度
有料職業紹介事業所数
3,273
3,227
3,187
3,375
3,498
(注)有料職業紹介所の取扱職業別事業所数をみると、家政婦が最も多く、次いで看護婦、マネキン、芸能家、配膳人などとなっている。
<参考4> 就職経路別の就職者数 (単位:千
人、%)
就 職 経 路 区 分
平成4年
平成9年
就職者数
(構成比)
就職者数
(構成比)
公 共 職 業 安 定 所
1,042
( 17.2)
1,068
( 19.0)
学 校
668
( 11.0)
530
( 9.4)
広 告
1,901
( 31.4)
1,764
( 31.4)
縁 故
1,889
( 31.2)
1,629
( 29.0)
出向・出向先からの復帰
91
( 1.5)
156
( 2.8)
その他(民営職業紹介所等) 464
( 7.7)
470
( 8.4)
合
計
6,055
(100 )
5,616
(100 )
(注)雇用動向調査による。
<参考5> ILO条約の概要
【ILO第96号条約】
第2部
○営利目的の有料職業紹介所を漸進的に廃止し、労働力需給調整についてはすべて公共職業安定機関が行う。
○批准国は、フランス、イタリア、スペイン等25か国(1999年6月30日現在)。
第3部
○営利を目的として経営される有料職業紹介所を一定の規制の下に認める。
○批准国は、日本、メキシコ、オランダ等13国(1999年6月30日現在)。
その他
○米国、英国、カナダ等は、ILO第96号条約を批准していない。
【ILO181号条約(民間職業仲介事業所に関する条約)】
批 准 国
1997年6月の第85回ILO総会において採択。1999年3月から5月にかけてエチオピア、モロッコ、フィン
ランドの3か国が批准(2000年5月10日発効)。
日本においては、1999年7月7日国会承認。7月28日ILO事務局登録予定。
主な規定の内容
加盟国は、許可又は認可に係る制度に従い民間職業事業所の運営を規律する条件を決定する。ただし、それらの条件
が適当な国内法及び国内慣行によって別途規制され又は決定されている場合は、この限りでない(第3条第2項)。
43−2.無料職業紹介事業に係る規制の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【改正職業安定法の内容】
◇ 労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図ること、民間の行う職業紹介、労働者の募集、労働者供給事業又は
労働者派遣事業を指導監督することを、政府の業務として規定(改正職業安定法第5条)。
◇ 無料の職業紹介事業を行おうとする者は、労働大臣の許可が必要。また許可を行う場合には、労働組合等に許可
する場合を除き、中央職業安定審議会の意見を聴くことが必要。許可の有効期間は5年(同法第33条第1項∼第
3項)。
◇ 無料職業紹介事業については、許可基準、許可手続、許可の取消し等、取り扱うべき職種の範囲等(労働大臣が
無料職業紹介事業者の申出に基づき定める)、取り扱うべき職種の範囲等の明示、職業紹介責任者、事業報告そ
の他に関して、有料職業紹介事業の規定が準用される(同法第33条第4項)。
◇ 学校教育法第1条に規定する学校や専修学校(以下「学校等」という。)については、労働大臣に届け出て無料
の職業紹介事業を行うことが可能。(同法第33条の2)
政府の対応
◇ 無料職業紹介事業の許可及び更新許可に係る有効期間(3年)について、法改正を行いその延長を図る。
(規 制 緩和推 進3 か ◇ 無料職業紹介事業の許可要件について、これを見直し、緩和する。
年計画)
◇ 無料職業紹介事業の許可制度について、ILO第181号条約等を踏まえ、所要の改正法案を提出し、具体化を
図る。 (以上、改正法施
行時)
進捗状況、検討状況
◇ 民間の行う職業紹介事業等が労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割にかんがみ、その適正な
運営を確保することを法目的に追加することなどを内容とする、職業安定法等の一部を改正する法律(平成11
年7月7日法律第85号)が公布された。
2 論点整理
【許可基準とその解釈運用】
論点1:無料職業紹介事業の許可基準については、許可制の名の下に参入規制が行われることのないよう、パブリック・コメントを経て明
確で合理的な内容の審査基準を定めることとすべきではないか。また、労働大臣の行う取扱職種等の制限があくまで事業者の申出に
基づいてなされることを明確にするとともに、その趣旨を周知徹底すべきではないか。
◇学校等以外の者が行う無料職業紹介事業については、現在、許可要件の中で事業主体ごとに取扱職種等取扱の範囲が厳しく制限されている。
改正職業安定法第33条第4項により無料職業紹介事業については有料職業紹介事業の許可基準が準用されているが、「申請者が、当該事
業を適正に遂行することができる能力を有すること」(同法第31条第1項第4号)等、許可基準にはなお不明確なものがみられる。それ
ゆえ、許可基準の解釈及び運用に当たっては、許可制の名の下に参入規制が行われることのないよう、許可基準を具体化した明確で合理的
な内容の審査基準の案を前もって一般に公表し、パブリック・コメントを経た上でこれを定めることこととすべきではないか。また、改正
法が定めるように、労働大臣による取扱職種等の制限はあくまで事業者が申し出た場合に限定されることを明確にするとともに、許可の運
用に当たってもこのような申出を勧奨するようなことがないよう、その趣旨を周知徹底すべきではないか。
◆許可基準については、改正職業安定法の施行に向けて、中央職業安定審議会での審議、パブリック・コメントを経て、定める考えである。
取扱職業等の限定については、改正職業安定法第32条の12及び第33条第2項により、労働大臣は職業紹介事業者の申出に基づき取り
扱うべき職種の範囲その他業務の範囲を定めることができる旨定められているところであり、この趣旨を踏まえ対処する考えである。
【許可制の見直し】
論点2: 学校等以外の者が行う無料職業紹介事業についても、学校等の行う無料職業紹介事業と同様に許可制から届出制への移行を検討す
べきではないか。
◇職業紹介制度については、ピンハネの防止、職業情報集中の原則、誤った紹介による被害の防止等の観点から、今日まで許可制が採用され
てきた。しかし、無料職業紹介制度については、ピンハネは起こらないこと、改正職安法による職業安定所による無料の職業紹介事業の運
営についての援助規定が追加されたことから、誤った紹介による被害の防止施策を整備することに併せて、現在の許可制から届出制にする
ことについて、検討を進めるべきではないか。
◆無料職業紹介事業に係る許可制については、本年3月の中央職業安定審議会の建議において、不適格な業者の参入を排除することにより、
事業運営の適格性を確保し、求職者の利益を保護する観点から、許可制を維持することが必要であるとされているところであり、今回の改
正職業安定法においても許可制を維持することとしたものである。
3 参考資料
<参考1> 制度の沿革等
昭和22年に職業安定法に無料職業紹介事業の規定が設けられて以降、特に大きな制度改正は行われていない。
平成8年4月
通達の改正により収支予算書等の添付の廃止など許可手続を簡素化
平成9年4月
通達の改正によりナースセンターの指定を受けている支所を許可の対象化、また、福祉人材センターの許可対象とな
る職業に保育所の保母・保父を追加。
平成11年7月
職業安定法の改正により、無料職業紹介事業の許可制度を透明化。
・許可申請手続き、許可条件、変更届、事業の廃止、許可の取消し、名義貸しの禁止等、制度を明確化。
・申請に必要な書類、許可基準、許可の欠格事由について明示。
・許可の有効期間(3年)を、5年に延長。
・取り扱うべき職種の範囲等、苦情処理等について明示を義務化。
・職業紹介責任者の選任、帳簿の備え付け、事業報告を義務化。
・公共職業安定所による援助を追加。
<参考2> 各国の状況
区 分
ア メ リ カ
無 料 職 業 紹 介 に なし
ついての事業規
制の状況
イ ギ リ ス
ド イ ツ
フ ラ ン ス
許可制はなし。
許可制(有効期間3年、更 管理職、専門職の職業紹介
慈善団体、教育機関、労働組 新可、更新による無期限化 を 行 う 民 間 の 非 営 利 協 会
合等の無料職業紹介は職業紹 可能)
APECがある(州の許可)。
介所法の適用が除外。
APECは、求人情報の提供、
職業訓練、助言等を実施。
<参考3> 無料職業紹介事業の許可・届出事業所数
年 度 区 分
6年度
無料職業紹介事業の許可事業
所数(各年度末現在)
475
学校等が行う無料職業紹介事
業の届出数(各年4月1日現在)
4,862
7年度
8年度
9年度
(単位:事業所)
10年度
492
499
514
505
4,917
4,958
5,050
5,248
44.労働者の募集に係る規制の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【委託募集】
◇ 労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者を労働者の募集に従事させようとするときは、労働大臣の
許可が必要(職業安定法第37条第1項)
◇ 法律に基づいて設立された団体に所属する中小企業の事業主がその所属する団体(団体の連合体を除く。)を通
じて労働者の募集を行う場合に限り許可。なお、法律に基づき設立された団体とは、中小企業団体の組織に関す
る法律、中小企業等協同組合法、農業協同組合法、水産業協同組合法、環境衛生関係営業の適正化に関する法
律、商店街振興組合法、その他法律に基づき設立された団体をいう(局長通達)。
◇被用者以外の者を労働者募集に従事させようとする者が、その被用者以外の者に報酬を与えようとする時は、労
働大臣の許可が必要。(職業安定法第37条第2項)また、委託募集に従事する者に支払われる報償金の額は総
額で月3千円を超えてはならないとされる(同法施行規則第28条第6項)。
【文書募集】
◇ 文書募集については、改正職業安定法により「自由にこれを行うことができる」とあった旧第35条が削除され
ることになったが、募集時期について制限措置が新たに設けられたわけではない。これまで、新規高等学校卒業
者を対象とする文書募集については、卒業年の1月末まで禁止され、また2月以降に文書募集を行う場合にも、
1)公共職業安定所の求人受付を行ったものであること、2)高校生からの応募の受付は学校又は公共職業安定
所を通じて行うことが必要(局長通達)との取扱いがなされてきたが、これについては現在、規制の在り方を検
討中である。
政府 の 対応( 規制 緩 ◇ 通勤圏外の直接募集に係る届出制について、その在り方を見直す。
和推進3か年計画)
◇ 委託募集の許可制について、その在り方を見直す。
◇ 委託募集に係る報償金の規制について、委託募集の許可制と併せて、その在り方を見直す (以上、改正法施行
時)。
◇ 新規高卒者を対象とした文書募集の規制の在り方について見直しを検討する(平成11年度中)。
進捗状況、検討状況
◇ 通勤圏外の直接募集に係る届出制を廃止し、委託募集に係る報酬(報償金)の許可制を認可制に改めること等を
内容とする職業安定法等の一部を改正する法律(平成11年7月7日法律第85号)が公布された。
◇ 新規高卒者を対象とした文書募集の在り方については労働省において検討中。
2 論点整理
【委託募集】
論点1:委託募集の許可基準を定めるに当たっては、これが恣意的に運用されることのないよう明確で合理的な基準を定めるとともに、広
く第三者に労働者募集を委託できるものとなるよう、注視していく。
◇委託募集については労働大臣の許可制とされているが、許可の基準については法律上規定がなく、従来、通達により事実上禁止に近い許可
制が採用され、中小企業がその所属する法律上の中小企業団体に委託する場合にのみこれを許可するという運用がなされてきた。今回の職
業安定法の改正においては、結果として委託募集についての許可制度が維持されることとなったが、その許可制の内容については、今後は、
募集主の規模のいかんを問わず、原則として誰に対しても募集を委託できるよう、全面的に改める必要がある。このため、委託募集の許可
に係る審査基準を全面的に見直し、恣意的な解釈・運用がなされることのないよう明確で合理的かつ必要最小限の規定とすべきではないか。
また将来、許可制を届出制に改めることについても、その可能性を引き続き検討していくべきではないか。
なお、中央職業安定審議会の建議は、次のように述べており、建議にもあるように、事業主の規模を問わず、広く第三者に労働者募集を委
託できるようにすることが必要である。
イ 許可制(委託募集)
(ロ)委託募集は、中小企業事業主がその所属する法律に基づく団体に委託して行う場合にのみ許可されるものとされているが、委託募
集を行う事業主及び募集の委託を受ける者について法令違反がなく、募集に係る労働条件が適正であることや、募集従事者について
労働関係法令や事業内容に関して十分な知識を有していること等の要件を満たす場合には、どのような事業主についても、広く第三
者に労働者募集を委託できるように改めることが適当である。
許可基準の具体的内容については、引き続き検討するものとする。
◆委託募集に係る許可制については、本年3月の中央職業安定審議会の建議において、労働者保護の観点からその適格性を事前にチェックす
る必要があり、このための許可制は引き続き維持することが必要であるとされたところであり、今回の改正職業安定法において、許可制を
維持することとしたものである。
委託募集に係る許可基準については、同建議において、委託募集を行う事業主及び募集の委託を受ける者について法令違反がなく、募集に
係る労働条件が適正であることや、募集従事者について労働関係法令や事業内容に関して十分な知識を有していること等の要件を満たす場
合には、どのような事業主についても、広く第三者に労働者募集を委託できるように改めることが適当であるとされたことから、そのよう
な要件を満たす場合には、どのような事業主についても、広く第三者に労働者募集を委託できるように改める考えである。
【新規高卒者を対象とした文書募集】
論点2:高等学校の新規卒業者を対象とした文書募集の規制の在り方については、学校教育に与える影響等を勘案しつつ、見直しのための
検討が進められており、その検討状況を注視していく。
◇新規高等学校卒業者を対象とする文書募集の規制により、自由応募が認められ同時に数社の会社訪問ができる大学生等に比べて就職先を決
定する上で不利な状況となっている。一方、就職活動が学校教育に与える影響にも大きなものがある。現在、新規高卒者を対象とした文書
募集の規制の在り方について、見直しのための検討が進められており、その進捗状況、検討状況を注視していく。
◆引き続き、学校教育に与える影響などを踏まえつつ、労働省、文部省、全国高等学校長協会等により、文書募集の在り方の見直しを検討す
る。
3 参考資料
<参考1> 制度の沿革等
昭和22年に職業安定法に労働者募集に係る規定が設けられて以降、特に大きな制度改正は行われていない。
平成7年4月
省令改正により、1)直接募集に係る募集の終了・中止の届出の廃止、2)委託募集の許可を受けた者の身分を証明す
る認証の廃止、3)委託募集に係る募集の終了・中止の届出の廃止等を実施。
平成11年
職業安定法の改正により、労働者の募集についての規定が改正された。
・文書による募集は自由に行うことができるとされていた旧第35条は削除。
・通勤圏外の直接募集について、労働大臣への届出制を廃止。
・委託募集について、労働大臣の許可制度を維持。
・報酬額については許可制を認可制に変更。
<参考2> 各国の状況
我が国と同様の委託募集等に関する規制は、韓国においてしか行われていない。
なお、イギリスでは求人広告等についても、職業紹介所法の規制対象となるが、許可制等は採用されていない(現在、改正案を審議中。新
施行規則では、求人情報誌の料金等について規制が行われる見込み)。
<参考3>委託募集及び報償金に係る許可件数 件)
区 分
5年度
委託募集の許可件数
31
報償金に係る許可件数
0
(単位:
6年度
32
0
7年度
32
0
8年度
47
0
9年度
19
0
45.労働者派遣事業に関する法規制の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【労働者派遣事業】
◇ 労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人の
ために労働に従事させることをいう。ただし、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約して
するものを含まない(労働者派遣法第2条1号)。
◇ 労働者派遣事業は、派遣労働者が派遣元の常用雇用労働者に限られる特定労働者派遣事業と、それ以外の主に登
録スタッフをその都度雇用して派遣する一般労働者派遣事業とに区別され(同法第2条4・5号)、一般労働者
派遣事業については労働大臣の許可が、特定労働者派遣事業については労働大臣への届出が必要とされる(同法
第5条、第16条)。
◇ 労働者派遣法の適用対象業務は、これまで事務用機器操作等26業務に制限されてきた(昭和61年の同法施行
時は13業務)が、対象業務のネガティブリスト化により、改正法施行後は以下の業務を除き、労働者派遣事業
を行うことができるようになる(同法第4条、附則第4項[改正規定])。
・港湾運送の業務
・建設の業務
・警備の業務その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事
させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務
・なお、当分の間、物の製造の業務(物の溶融、鋳造、加工、組み立て、洗浄、塗装、運搬など物の製造工程に
おける作業に係る業務)であって労働省令で定める業務についても労働者派遣事業を禁止。
◇ ネガティブリスト化の下で新たに認められる業務については、派遣先が「同一の業務」について派遣サービスの
提供を受けることのできる期間が原則として1年に制限され、派遣先が派遣労働者の希望に基づき、「同一の業
務」に引き続き派遣労働者を従事させる場合には、雇用の努力義務を負う (同法第40条の2、第40条の3
[改正規定])ほか、労働大臣による雇入れの指導・勧告に従わなかった派遣先に対しては労働大臣が雇入れを
勧告することができ、派遣先が当該勧告に従わなかった場合にはその旨を公表することができる(第49条の2
[改正規定])。
政府 の 対応( 規制 緩 ◇ 労働者派遣事業について、対象業務の範囲のネガティブリスト化、派遣期間、労働者保護のための措置等を図
和推進3か年計画
る。
等)
◇ 労働者派遣事業の適用対象業務の範囲について、改正法の成立を受けて、ネガティブリストを客観的、合理的な
内容に限定した政省令の策定を行う。 (以上、改正法施行
時)
◇ 労働者派遣事業の派遣期間の在り方については、改正法成立後、労働者派遣事業の進展の実態等を踏まえ、必要
な検討を行う。
◇ 一般労働者派遣事業の許可制度の在り方については、改正法成立後、労働者派遣事業の進展の実態等を踏まえ、
進捗状況、検討状況
必要な検討を行う。 (以上、改正法施行3年後)
◇ 上記の改正規定を含む、労働者派遣法等の一部を改正する法律(平成11年7月7日法律第84号)が公布され
た。
2 論点整理
【ネガティブリストの範囲】
論点1: 市場原理を通じた労働力の需給調整機能を強化する観点から、労働者派遣事業を行うことができない業務の範囲を必要最小限にと
どめるべきではないか。このため、政令でネガティブリストに含まれる業務については、これを必要最小限にとどめるとともに、特
定の業務を対象業務の範囲から除外するに当たっては、その理由を具体的に示すこととすべきではないか。
◇改正労働者派遣法により、労働者派遣事業は、1)港湾運送の業務、2)建設の業務、3)警備の業務「その他その業務の実施の適正を確
保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として政令で定める業務」を除
き(当分の間、物の製造の業務も除く)、これを行うことができるようになる。しかし、市場原理を通じた労働力の需給調整機能を強化す
る観点から、労働者派遣事業を行うことができない業務の範囲はこれを必要最小限にとどめるべきであり、特定の業務を政令で適用除外業
務に含めるに当たっては、当該業務がなぜ「業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる」のか、
その理由を具体的に示す必要があるのではないか。
◆労働者派遣事業の適用除外業務を定めるに当たっては、公労使三者構成の中央職業安定審議会において、改正労働者派遣法第4条に基づき
「業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務」に該
当するとされた職業を除外する考えである。
【兼業要件の緩和】
論点2: 職業紹介をする手段として労働者派遣を行わないことを労働者派遣事業と職業紹介事業を兼業する際の要件として定めた現行許可
要件(審査基準)の部分は、これを削除すべきではないか。
◇派遣労働者のなかには、ジョブサーチ型派遣(職業紹介を目的とした派遣)により、常用雇用への転換を望む者もいる。そのような者の期
待に応えるためにも、派遣労働者が希望した場合にはこれを積極的に認めるべきである。その意味で、職業紹介をする手段として労働者派
遣を行わないことを労働者派遣事業と職業紹介事業を兼業する際の要件として定めた現行の許可要件(審査基準)の部分は、これを削除す
べきではないか。
◆この問題の取扱いについては、本年3月の中央職業安定審議会の建議において、今後における有料職業紹介事業、無料職業紹介事業及び労
働者派遣事業の許可基準に係る議論の中で検討することとされており、その検討結果を踏まえ対処する考えである。
【派遣期間制限の例外】
論点3: 派遣労働者の多様な要望に応じて、派遣労働者が希望した場合は、改正法の下で新たに認められる業務についても1年を超えて派
遣労働者のまま就業を継続することができるよう、派遣期間の制限に例外を認めることを検討すべきではないか。
◇派遣労働者の中には、常用雇用への転換を望む者がいる一方、派遣労働者として長期間継続して就業することを希望する者も数多く存在す
る。このような現状にかんがみ、派遣労働者が希望した場合には、改正法の下で新たに認められる業務についても1年を超えて派遣労働者
のまま就業を継続することができるよう、派遣期間の制限に例外を認めることを検討すべきではないか。
◆今回の改正労働者派遣法においては、常用雇用の代替防止の観点から、派遣先は「同一の業務について派遣元事業主から1年を超える期間
継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない」としていたものであるが、衆議院における与野党共同の修正により、派遣期間1年
の制限に違反した派遣先に対し雇入れ勧告が行われることとされるとともに、1年を超えて労働者派遣を行った派遣元に対しては罰則が科
されることとされたところであるので、派遣期間の制限に例外を認めることは不適当であり、困難である。
【専門的業務(従来型派遣業務)の拡大】
論点4: 派遣労働者の多様な要望に応えるために、「専門的業務」として従来どおりの取扱いが認められる業務についても、その範囲を拡
大することを検討すべきではないか。
◇現行適用対象業務(26業務)以外にも、「専門的業務」として改正法施行後もこれと同等の扱いをすることが望ましい業務はなお存在す
るものと思われる。このような「専門的業務」として位置づけることができる派遣業務の範囲の拡大について、その余地がないかどうか、
検討すべきではないか。派遣労働者の中には派遣就業を長期間継続することを希望する者が多数存在することを考えても、その必要性は大
きいといえよう。
◆現行の26業務の追加の在り方については、中央職業安定審議会における審議が必要であり、同審議会では、今回の改正労働者派遣法に係
る参議院労働社会政策委員会の附帯決議において、この法律の施行3年経過後における労働者派遣法の規定の検討に際し、現行26業務の
在り方を含め総合的に検討を加えることとされたことを踏まえた検討が行われることとなるので、この検討結果を待って対処する考えであ
る。
3 参考資料
<参考1> 制度の沿革等
労働者派遣事業は、従前の職業安定法第44条により、労働組合が労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、全面的に禁止されてい
た労働者供給事業の中から、供給元と労働者との間に雇用関係があり、供給先と労働者の間に指揮命令関係しか生じさせないような形態を取
り出したものであり、労働者派遣法の制定に伴い昭和61年から施行。
昭和60年7月
昭和61年4月
昭和61年7月
昭和61年7月
平成2年9月
労働者派遣法の公布。
労働者派遣法施行令の公布(適用対象13業務)。
労働者派遣法の施行。
政令改正により、適用対象業務に機械設計等の3業務を追加。
政令改正により、博覧会場における受付・案内業務等を追加。
平成6年6月
平成8年6月
平成8年12月
平成9年4月
平成11年7月
高年齢者雇用安定法の改正により、高年齢者に係る労働者派遣事業の特例制度を創設。
法改正により、更新の有効期間を延長(3年→5年)、育児・介護休業取得者の代替要員に係る特例制度を創
設。
政令改正により労働者派遣事業の適用対象業務の範囲を16業務から26業務に拡大。
省令改正等により許可及び更新許可手続の明確化、簡素化等を図った。
法改正により、ネガティブリスト化。
<参考2> 各国の状況
区 分
ア メ リ カ
イ ギ リ ス
労 働 者 派 遣 ・連 邦レベル では 特 に ・許可制はなし
に 係 る 事 業 規制を設けていない。
・派遣期間、事由の制限な
規制の状況
し
・派遣以前6月以内に派遣
先に雇用されていた派遣労
働者の派遣の禁止
・派遣労働者が派遣先に雇
用されることを妨げること
の禁止
ド イ ツ
フ ラ ン ス
・許可制(届出で可の場合
有)
・許可期間は1年(3年連続
事業を行った場合は無期限許
可)
・建設業を除き対象業務の規
制はなし
・信頼性、使用者責任履行能
力等の許可基準あり
・派遣期間は最長12か月
・期間制限違反の場合、職業
紹介したものと推定
・届出制
・対象事業については原則無制
限
・派遣対象業務は臨時的業務
(欠員社員の補充、一時的追加
業務、季節的補充、ホテル等の
限定された業界の職員の補充)
・派遣期間は更新を含め最長1
8か月
・期間制限違反の場合、みなし
雇用制度
<参考3> 適用対象業務
・適用対象業務は、労働者派遣法制定時の昭和61年に13業務、同年3業務を追加して16業務となり、平成8年に26業務まで拡大。
・現行の適用対象26業務(ポジティブリスト)は次のとおり。
ソフトウェア開発、機械設計、放送機器等操作、放送番組等演出、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財
務処理、取引文書作成、デモンストレーション、手配旅行に係る添乗、建築物清掃、建築設備運転・点検・整備、案内・受付・駐車場管
理等、研究開発、企業における事業の実施体制に関する企画・立案、図書の制作及び編集、広告デザイン、インテリアコーディネータ、
アナウンサー、OAインストラクション、テレマーケティングの営業、セールスエンジニアの営業、放送番組等に係る大道具及び小道具
の業務
<参考4> 労働者派遣事業の許可・届出事業所数(各年度末現在) (単位:事業
所)
区 分
6年度
7年度
8年度
9年度
10年度
一般労働者派遣事業(許可)
2,276
2,292
2,502
3,009
3,584
特定労働者派遣事業(届出)
10,527
10,769
11,058
11,457
11,949
<参考5> 一般労働者派遣事業登録者数 人)
区 分
5年度
6年度
7年度
8年度
一般労働者派遣事業登録者
436,336
437,000
469,339
572,421
(単位:
9年度
695,045
<参考6> 派遣労働者数 (単位:人)
区 分
5年度
6年度
7年度
8年度
9年度
一般労働者派遣事業
常用雇用
68,416
69,996
73,087
82,886
93,957
常用雇用以外
97,630
99,421
112,240
146,703
179,774
特定労働者派遣事業
69,934
68,883
69,630
68,941
66,328
(注)常用雇用以外の労働者数は常用換算(常用雇用以外の労働者の年間総労働時間数の合計を常用雇用労働者の1人当たりの年間総労働時
間数で割ったもの。)としている。
<参考7> 派遣先件数 件)
区 分
一般労働者派遣事業
特定労働者派遣事業
(単位:
5年度
154,098
22,052
6年度
150,039
21,023
7年度
158,838
22,990
8年度
198,197
23,688
9年度
256,606
22,695
<参考8> 労働者派遣事業の売上高 (単位:億
円)
区 分
5年度
6年度
7年度
8年度
9年度
一般労働者派遣事業
5,433
5,449
6,269
7,751
9,368
特定労働者派遣事業
4,055
3,870
3,903
4,076
3,967
<参考9> 派遣料金(平成9年度平均)
区 分
派 遣 料 金
一般労働者派遣事業
27,633円(通訳・翻訳・速記) ∼ 13,474円(建築物清掃)
特定労働者派遣事業
28,709円(ソフトウェア開発) ∼ 11,273円(建築物清掃)
(注)上記金額は、派遣先から派遣元会社に支払われる料金である(8時間換算額)。
<参考10> 派遣業務(平成9年度、上位3業務)
区 分
1位
一般労働者派遣事業
常用雇用労働者
事務用機器操作
常用雇用以外の労働者
事務用機器操作
登 録 者
事務用機器操作
特定労働者派遣事業
常用雇用労働者
ソフトウェア開発
2位
3位
財務処理
財務処理
ファイリング
ファイリング
取引文書作成
取引文書作成
事務用機器操作
機械設計
<参考11> 登録型派遣労働者の希望する働き方と派遣期間
今後希望する働き方
派遣スタッフとして働きたい 52.6%
正社員として働きたい
38.4%
派遣労働者の希望する派遣期間(一つの職場で働きたい期間)
1年以下
27.8%
1年超
1年超2年以下
62.9%
26.1%
2年超
2年超3年以下
36.7%
13.9%
3年超
22.9%
資料出所)大阪府・平成10年度労働経済部門別調査「労働者派遣事業の実態と派遣労働者の就労状況に関する調査」
(類似の調査がないため、特定地域の調査結果を利用)
46.労働基準関係規制の見直し
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【労働契約期間】
◇ 労働契約に期間の定めをおく場合は、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は、1年(60歳以上の
高齢者等については3年)を超える期間について締結してはならない。(労働基準法第14条)
【裁量労働制】
◇みなし労働時間制の一種。業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必
要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととした業
務が対象となる。専門職を対象とする現行裁量労働制(労働基準法第38条の3)と平成10年9月の法改正に
より創設された事業活動の中枢業務を対象とする新裁量労働制(同法第38条の4)とに分かれる。
◇現行裁量労働制の対象業務は、従前、1)新商品、新技術の研究開発等、2)情報処理システムの分析、設計、
3)記事の取材、編集、4)デザイナー、5)プロデューサー、ディレクターの5業務に限定されていたが、平
成9年4月に、6)コピーライター、7)公認会計士、8)弁護士、9)一級建築士、10)不動産鑑定士、11)
弁理士の6業務が追加されて現在11業務となっている(同法施行規則第24条の2の2第2項及び同項第6号
に基づく労働省告示)。一方、新裁量労働制の場合は、本社レベルの事業場における企画、立案、調査及び分析
の業務が対象とされる。なお、現行裁量労働制については労使協定の締結が、新裁量労働制については労使委員
会の委員全員の合意による決議及びその届出が、それぞれの制度を導入するに当たって必要となる。
【解雇規制】
◇ 期間の定めのない雇用契約については、民法が解雇自由を原則とする定めをおいている(同法第627条。ただし
同条に定める解雇の予告期間は、労基法20条により14日から30日に延長された)。また、労働関係法令も
一定の場合に解雇を制限禁止する規定をおくにとどまっており、解雇一般について正当理由を要求した法令上の
定めはないが、判例上、解雇権濫用法理が確立するに至っている。
政府 の 対応( 規制 緩 【労働契約期間】
和推進3か年計画)
◇ 労働契約期間の上限について、以下に掲げる場合は3年とする。
・新商品、新役務若しくは新技術の開発又は科学に関する研究に必要な高度の専門的な知識、技術又は経験を有
する者が不足している事業場において当該者を新たに確保する場合
・事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって、一定の期間内に完了することが予定されてい
るものに必要な高度の専門的な知識、技術又は経験を有する者が不足している事業場において、当該者を新たに
確保する場合
・60歳以上の労働者に係る場合
【裁量労働制】
◇ 裁量労働制について、事業運営上の重要な決定が行われる事業場における事業の運営に関する事項についての企
画、立案、調査及び分析の業務であって、その性質上適切に遂行するためにはその遂行の方法を大幅に労働者の
裁量にゆだねる必要があるため、時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務を、労
使の代表者からなる委員会を設置し、対象労働者の具体的範囲、健康及び福祉を確保するための措置、苦情の処
理に関する措置等を決議した場合においては、対象とできることとする。(平成12年4月施行予定)
進捗状況、検討状況
◇ 平成10年9月の改正労働基準法は原則として平成11年4月1日施行。ただし、新裁量労働制については、平
成12年4月1日施行。
2 論点整理
【有期労働契約】
論点1: 新規事業の創出を促進する観点から、新たにベンチャー企業を立ち上げる等の場合には最長3年の有期労働契約を誰とでも締結す
ることができるよう、検討すべきではないか。
◇労働基準法の改正により、新商品・新技術の開発、事業の開始・転換等の場合には、高度の専門的な知識等を有する者について、最長3年
の有期労働契約を締結できるようになったことは評価する。しかしながら、ベンチャー等の立ち上げに当たって必要となる人材は必ずしも
高度の専門的な知識等を有する者に限られるものではない。このため、雇用を新たに生み出す新規事業の創出を促進するためにも、ベン
チャーを立ち上げる等の場合には、60歳以上の高齢者と同様に、最長3年の労働契約を高度の専門的知識等を有する者に限らず誰とでも締
結することができるよう、現行規制を緩和することを検討すべきではないか。その場合、現在の雇用をめぐる状況にもかんがみ、時限立法
という形式を採ることも選択肢としては考えられよう。
◆有期労働契約の契約期間の上限については、先般の労働基準法の一部を改正する法律により一定のものについて上限が3年に延長されたと
ころであるが、改正時の国会審議においても、「労働大臣が定める基準を設定するに当たっては、若年定年制や有期雇用のいたずらな拡大
につながることを避けるため、客観的に判断しうるものとなるよう慎重に対処すること」との附帯決議が附される等したところであり、こ
のような国会審議等の経緯を踏まえると、さらに上限規制を緩和することについて、国民のコンセンサスを得ることは困難であり、先ずは
改正労働基準法の適切な施行に努めていくこととすべきである。
【裁量労働制】
論点2: 新たな裁量労働制の対象となる業務の具体的範囲等を指針で定めるに当たっては、これが過剰規制とならないよう、また労使自治
を十分に尊重したものとなるようにすべきではないか。
◇新たな裁量労働制は事業活動の中枢業務をその対象としているが、同制度が労使協定方式よりもさらに厳格な労使委員会方式を導入の前提
としていることを踏まえ、対象業務の具体的範囲等が指針で定められるに当たっては、これが過剰規制とならないよう、また労使自治を十
分に尊重したものとなるようにすべきではないか。
◆指針については、国会審議及び附帯決議を踏まえ、学識経験者からなる研究会において専門的な検討を行った後、中央労働基準審議会にお
ける審議を経た上で制定することとしている。なお、附帯決議では、政府は「中央労働基準審議会において、労使の意見を尊重しつつ、合
意が形成されるよう努めること」とされているところである。
【裁量労働制】
論点3: 現行裁量労働制の対象業務について、その範囲を拡大する可能性を検討すべきではないか。
◇現行裁量労働制(労基法第38条の3)については、平成9年の労働省告示により、その対象業務が11業務に拡大されたとはいえ、その
折に拡大をみた業務は、コピーライターの業務を除けば、いずれも資格職(いわゆる「士」職)にとどまっている。しかし、専門職的な業
務は他にも多数あり、これを11業務に限る必然性はない。働き方の選択肢を増やすという意味においても、その範囲を拡大する可能性に
ついて検討すべきではないか。
◆現行裁量労働制の対象業務については、省令で列挙するものの他、「中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する業務」が挙げられ
ている。これに基づき、中央労働基準審議会の調査審議と答申を経た上で、コピーライターの業務等6業務について追加したところである
(平成9年労働省告示)。
なお、現在、新たに追加すべき業種に係る具体的な要望等については出ていない。
【解雇規制】
論点4: 判例による解雇規制についての立法化、また不当な解雇に対する規制をも含めて、立法による手当てとしてはどのようなものが可
能か、検討を開始するべきではないか。
◇解雇権濫用法理はもはや判例として確立した感がある。しかし、裁判所は整理解雇を含む解雇を容易には認めない傾向にあり、これが企業
の採用意欲を削いでいる(解雇が困難な場合、企業が正社員の採用を避ける傾向にあることは国際的にも認められている)という一面があ
る。他方、判例にのみ依拠する状況の下では、裁判に訴える資力に欠ける者はいかに不当な解雇が行われようと救済を受けることができな
いという問題もある。こうした現状を踏まえ、解雇をめぐる紛争についてどのような解決方法がベストなのか。立法化の可能性を含めて、
検討を開始するべきではないか。
◆解雇については、いわゆる整理解雇の4要件や合理的な理由を必要とするという裁判例があり、事業主の行き過ぎたリストラを抑制する一
定の効果を持っているものと考えており、これを緩和すべき特段の理由は見当たらない。
また、解雇に当たっては、このような裁判例の考え方を踏まえ、具体的な事情に応じ、労使間で十分話し合っていただくべきものと考えて
おり、一律に解雇を規制することは適切ではないと考える。
このため、このような解雇に係る裁判例の考え方等の周知を図ることが先ずは重要であるが、労働基準法の改正により、労働基準法第10
5条の3が新たに規定され、解雇等労働条件に関する労働者と使用者との間の個別紛争について、紛争当事者から解決の援助の申出があれ
ば、都道府県労働基準局長が適切な助言又は指導を行う制度が設けられたところであり、その積極的な活用等を図ることが解雇を巡る紛争
の簡易かつ迅速な解決の方法として有効であると考える。
3 参考資料
<参考1> 裁量労働制の制度の沿革、旧計画の関連措置事項
昭和60年12月 労働大臣の懇談会である労働基準法研究会が「今後の労働時間法制の在り方について」を報告
昭和63年 4月 ○週40時間労働制を目標に法定労働時間を段階的に短縮
法定労働時間を「1日8時間・週48時間」から「週40時間・1日8時間」に改正
○労働時間に関する法的規制を弾力化
変形労働時間制(1週間・1か月・3か月単位、フレックスタイム制)の導入、事業場外労働及び裁量労働に関
するみなし労働時間制の整備
※ 裁量労働制の対象業務については、通達により、新商品又は新技術の研究開発等の業務など5業務を例示。
平成6年4月
3か月単位の変形労働時間制を1年単位に拡充(労働基準法第32条の4)
裁量労働制の対象業務の明確化を図るため、労働基準法の改正により、通達で示していた5業務を労働省令で限定
列挙するとともに、新たに「中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する業務」を追加(労働基準法施行規
則第24条の2第6項)。
平成9年4月
労働省告示により裁量労働制の対象業務について、コピーライター、公認会計士等の6業務を追加し、適用対象業
務は11業務になった。
同 上
通達により1年単位の変形労働時間制について休日振替の要件の弾力化等を実施。
<参考2> 裁量労働制に係る各国の状況
裁量労働制に類似する制度としては、アメリカのホワイトカラー・イグゼンプション、フランスのカードル等の制度があり、一定の要件を
満たすホワイトカラー(アメリカ)や上級幹部職員(フランス)については、労働時間規制が適用除外されている。
<参考3> 法令により解雇が禁止される場合
・業務上の負傷または疾病の療養のための休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
・産前産後の休業期間及びその後30日間(労働基準法第19条)
・国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
・労働基準法または労働安全衛生法などの違反の事実を労働基準監督官に申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条)
・労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
・女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業 をしたことを理由とする解雇 (男女雇用機会均等法第8
条)
・育児休業の申し出をしたこと、又は育児休業を取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第10条)
・介護休業の申し出をしたこと、又は介護休業を取得したことを理由とする解雇(育児・介護休業法第16条)
<参考4> 解雇に係る裁判例の考え方
1 解雇が合理的な理由を欠き無効とされた例
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用と
して無効になると解するのが相当である。」(最高裁 昭和50年4月25日判決 等)
2 整理解雇の要件が示された例
整理解雇する場合には、次のものが必要とされた(東京高裁 昭和54年10月29日判決 等)
① 人員削減の必要性(特定の事業部門の閉鎖の必要性)
② 人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(配置転換などをする余地がないか)
③ 解雇対象者の選定の妥当性(選定基準が客観的、合理的であること)
④ 解雇手続きの妥当性(労使の協議など)
<参考5> 平成10年9月の労働基準法改正の概要
○経済社会の変化に対応した主体的な働き方のルールづくり
1)現行は契約期間を定める場合は1年が上限であるが、一定の条件下で労働契約期間の上限を3年に延長。
2)本社等の中枢部門で企画、立案、調査及び分析を行い、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定するホワイトカラーについて、
労使委員会の決議に基づき裁量労働制を適用。
○職業生活と家庭生活との調和、労働時間短縮のための環境づくり
1)労働大臣は、労働時間の延長の限度等に関する基準を定めることができることとされた。
2)育児や介護を行う女性労働者について、女性保護規定の解消に伴う時間外労働の激変緩和を措置。
3)現行では6か月継続勤務した日から起算して継続勤務年数が1年増えるごとに1日ずつ増加する年次有給休暇日数を、3年6か月継
続勤務した後は1年ごとに2日ずつ増加するように見直し。
4)1年単位の変形労働時間制に関し、休日の確保等に係る措置を講じつつ、1日及び1週間の所定労働時間の延長や、これまで対象期
間を通じて使用される者に限られていた対象労働者の範囲に対象期間中途の採用者等を加えるなどの見直しの実施。
○労働契約の複雑化、個別化に対応したルールづくり
1)現行制度による賃金のほか、就業場所、従事する業務、労働時間等を労働契約の締結時に書面で労働者に明示。
2)退職労働者から請求があったときは、退職の事由について書面で労働者に明示。
3)労働条件紛争の解決援助のため、都道府県労働基準局長が簡易、迅速な解決のための助言、指導を実施。
4)就業規則、労使協定等について、掲示、備付け、書面交付のいずれかの方法により労働者に周知。
○労働者の最低年齢
現行の15歳、軽易な労働に係る許可年齢12歳を、国際的動向に沿って、それぞれ15歳の学年末、13歳に改定。
47.労働市場におけるセーフティーネットの整備
1 規制の現状と進捗状況
制度の概要
【罰金額の適正化】
◇ 労働条件の最低基準については、労働基準法 (昭和22年法律第49号)のほか、賃金については最低賃金法
(昭和34年法律第137号)、家内労働関係については家内労働法(昭和45年法律第60号)に規定されて
いる。
◇ 労働時間について労働基準法違反となれば6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金となるが、最低賃金につい
て最低賃金法違反となっても1万円以下の罰金(最低賃金額以下の賃金支払い)又は5千円以下の罰金(最低賃
金額を周知しなかった等)にしかならない。家内労働法違反においても1万円以下の罰金(最低工賃額以下の工
賃支払い)が最高罰金額である。
◇ 最低賃金法は、労働基準法から分離独立した法律であり、家内労働法は、最低賃金法から分離独立した法律であ
る。最低賃金法の制定当時は労働基準法と同等の罰金額であったが、労働基準法の罰金額が随時実効性のある額
へと改正される一方、最低賃金法、また家内労働法においては罰金額の見直しは行われてこなかったため、格差
が生じている。
◇ 罰金等臨時措置法によりこれらの罰金額は現在は一律2万円となっている。
【労働・社会保険の適用の見直し】
◇ 労働保険は労災保険と雇用保険、社会保険は健康保険、国民健康保険、厚生年金保険、国民年金の総称である
が、賃金労働者を対象としない国民健康保険、国民年金についてはここでは触れない。
◇ 労災保険については、保険料は賃金総額×業種ごとの料率×事業場ごとのメリット料率により決まり、事業主が
全額負担する。業務上負傷等をした場合に給付金が支払われ、全ての労働者が対象となる。
◇ 雇用保険については、失業給付に係る保険料は賃金総額×保険料率により決まり、事業主と労働者が折半する。
ただし、1)1週間の所定労働時間が20時間未満、2)雇用期間の見込みが1年未満、3)年収の見込みが9
0万円未満、の短時間/短期間労働者は対象とならない。
◇ 健康保険・厚生年金保険については、全ての法人、5人以上の雇用者をもつ個人事業所が適用事業所となる。適
用事業所と常用的雇用関係にある者(1日又は1週間の所定労働時間、1か月の所定労働日数が通常の就労者の
おおむね4分の3以上である者)は収入の多寡によらず被保険者となり、被保険者の標準報酬に対して一定割合
の保険料率により保険料が賦課され、事業主と折半で負担する。
【相談窓口の整備】
◇ 労働委員会は、団体的労使紛争を扱う扱う機関であり、労働争議の調整のほか不当労働行為(正当な労働組合活
動を行ったことによる不利益取扱い等)の審査を行っている。
◇ 都道府県労働基準局では、労使紛争の相談等を受け付け、解決援助を行っている。
◇ 都道府県女性少年室では、雇用の場での男女均等な取扱に関する苦情相談、セクハラ相談等を受け付け、解決援
助を行っている。
◇ 各労働基準監督署では、労働基準法等の違反の申告を受け付け、監督等必要な対応を行う。
◇ 地方公共団体の労政事務所においては、様々な労働問題の相談を受けている。
◇ 労働保険については、労災保険については都道府県労働基準局・労働基準監督署、雇用保険については都道府県
雇用保険徴収担当課・公共職業安定所で相談を受けている。
◇ 相談窓口は各法令ごとに用意されているが、個々の労働者からみてどこに相談するのが適当か、わかりづらい。
また、必ずしもその場で解決に結びつかないことも多い。
政府 の 対応( 規制 緩 ◇ 記載なし。
和推進3か年計画)
2 論点整理
【罰金額の適正化】
論点1: 最低賃金法等に定める罰金額については、法違反に対する抑止効果を伴った実効性のある額への引き上げを検討するべきではない
か。
◇最低賃金法や家内労働法に定める罰金額は、それが最初に定められた時期から全く引き上げられていないため、長期間の物価上昇のなかで、
実効性を失っている。例えば、最低賃金法の場合、最低賃金額以上の賃金を支払わなかった者に対してはこれを「1万円以下の罰金に処す
る」ことを定め(第44条)、最低賃金の周知義務や報告義務違反についてはこれを「5千円以下の罰金に処する」と規定している(第45
条)。その額は罰金等臨時措置法により、現在ではいずれも「2万円以下」と読み替えられるとはいえ、この程度の罰金額では法違反を抑
止できるとはおよそいえず、また、立法者の意思に反し、違反行為の内容によって罰金額に差がつかないことにもなる。このように長らく
改正作業が放置されてきた法令の見直しについては、検討の対象とすべきではないか。
◆最低賃金法違反の状況や最低賃金未満の賃金を受ける労働者の割合をみると、長期的にはそれぞれ、やや減少・低下の傾向にあり、今日の
厳しい経済情勢の中でも特段増加しているという状況にはないこと、また、最低賃金法第44条については、原則として、最低賃金額以上の
賃金の支払いを受けなかった労働者ごと及び各賃金支払期ごとに一罪が成立するものと解されており、罰金額はケースにより相当な額とな
り得るものであることから、当該規定が実効性を失い、法違反を抑止できていないとは言えないものと考える。
◆家内労働法上の罰金額については、平成3年の罰金等臨時措置法の改正によりその多額が2万円とされたところであり、その後における消
費者物価等の状況に鑑みても、刑罰としての意義は維持されているものと考える。
【労働・社会保険の適用の見直し】
論点2: 労働・社会保険について、非常用労働者(短時間/短期間労働者、派遣労働者等)ヘの適用の拡大について、その可能性を検討す
るべきではないか。
◇パートタイム労働者や派遣労働者の多くは被用者を対象とする社会保険の適用対象外となっており、常用労働者と比べて生活保障機能が弱
体なものとなっている。また、非常用労働者の雇用主は社会保険負担を免れる(派遣労働者の場合には、派遣先が保険料に相当する額の派
遣料金の支払いを免れる)ことから、常用労働者からの代替を過度に促進させる制度上のバイアスが生じる。もっとも、現行の専業主婦世
帯を前提とした厚生年金制度を、直ちに非常用労働者へ適用することは困難である。しかし、これと関連の深い女性の年金権の見直しが行
われる際に、合わせて非常用労働者についても、できるかぎり社会保険の適用対象とすることで、常用・非常用労働者間の選択の中立性を
維持することの可能性を検討していくべきではないか。また、雇用保険でも、労働者派遣法の改正を契機として、非常用労働者への適用要
件の見直しを早急に行うべきではないか。
◆現行制度上、パートタイム労働者及び派遣労働者については、既に、一定の基準に基づき被用者保険が適用されている。現在被用者保険が
適用されていない非常用労働者に、適用・被適用の区分を変更して、社会保険適用を拡大することについては、
① 妻の厚生年金の給付額が増加するに伴って世帯単位での年金給付額は増加することから、世帯単位での給付設計を見直し給付水準を引
き下げるべきではないか、
② 低賃金パートタイム労働者に対して一般の被保険者と同じ保険料率で負担を求めても良いか、その場合一般の被保険者と同じ保険料率
とすると、国民年金保険料よりも低い保険料負担で基礎年金に加えて報酬比例部分の年金を受けることとなり、第1号被保険者との均衡
を逸するのではないか、
③ 新たな区分について引き続き就労調整が行われるのではないか、
④ パート労働者本人及び企業の負担が増えることについて理解が得られるか、
などの問題が多々あり、困難である。
◆雇用保険制度については、短時間労働者や派遣労働者に対する適用の在り方を含め、制度の在り方全般について、現在、中央職業安定審議
会において、議論されているところである。
【相談窓口の整備等】
論点3: 雇用関係全般について相談のできる窓口の整備や、関係法律の遵守をより効果的にする仕組みの在り方について検討するべきでは
ないか。
◇労働組合組織率の低下や就業形態の多様化、労働条件決定の個別化に伴って、個別的労使間紛争が拡大する傾向にある。しかし、既存の紛
争処理メカニズムは、例えば、国においては、中央労働委員会、都道府県労働基準局と労働基準監督署、都道府県女性少年室等があるほか、
地方公共団体においては、地方労働委員会や労政事務所等があるなど分立しているところから、機動的な対応が困難となっている面がある
のではないか。
労働委員会は、全国的に設置されており、不当労働行為や争議調整など労使間の紛争解決を目的とした行政的機関で、裁判所に比べれば迅
速な紛争解決機能をもっている(あっせんの場合、平均調整期間は52.5日[平成9年])。他方で、労働委員会は、これまでは労働組合を
主たる対象としており、労働者個人の訴えには原則として対応していなかった。
都道府県労働基準局においては、申告にまで至らない個別的労使紛争の拡大に対応するため、平成10年9月に改正した労働基準法第105
条の3に基づく紛争解決援助制度の運用を行い、労働条件紛争担当官を置くなどの措置を取っているものの、設置窓口は都道府県単位にと
どまるとともに、十分な要員を確保することはできていない。
労働基準監督署は、労働基準法の遵守を図るための監督機関であり、労働基準関係法令違反の申告を受け、監督権限をもって事業主等を指
導することができるが、であるがゆえに中立的立場を求められる個別労働紛争の仲介役としては、本来、望ましくない面もある。また、申
告を受けることができるのは労働基準関係法令に限られるため、雇用関係全般についての相談には対応できない。
◆労働委員会は団体的労使紛争の解決機関として、不当労働行為の救済や、労働争議のあっせん、調停及び仲裁等を行う機関である。
したがって、個別的労使紛争を取り扱う都道府県労働基準局、労働基準監督署、女性少年室及び労政事務所と並列に扱うことは誤りであり、
団体的労使紛争については、労働委員会によって機動的な対応が図られていると考えている。
また、雇用問題に関連する相談等については、実態として、そのほとんどが労働契約や就業規則等と密接に連動しており、労働基準監督署
においては、労働基準関係法令に係る相談・申告の処理だけではなく、リストラ、解雇等の雇用問題に関する相談等についても、労働契約
や就業規則等との関連など相談事案に応じて、適切な処理を行っているものである。
労働基準監督機関では、労働基準関係法令の遵守という観点から、常に中立公正な立場に立ち労使の信頼の下に行政を推進しているもので
あり、この結果、平成10年10月の紛争解決援助制度の発足以来6か月間に、労働条件に係る紛争であって、労働基準関係法令違反が認
められないものの、何らかの具体的な処理を求められた事案は5,537件あり、このうち指導等を行い解決に至ったのは1,478件となっている。
◇このため、労働者が、一箇所で、雇用関係全般に関して相談できるような、公的機関のワン・ストップ・サービスの提供が必要となる。公
的機関によるワン・ストップ・サービスの提供を早急に検討すべきではないか。
◆平成10年10月、労働大臣の私的研究機関である労使関係法研究会から、個別的労使紛争処理制度の整備について、ワン ・ストップ・
サービスと簡易なあっせんサービスの必要性を指摘しつつ、労働委員会活用案・民事調停制度活用案・都道府県職業安定主務課、都道府県
労働基準局及び都道府県女性少年室を統合して新たに設置する都道府県労働局案など様々な選択肢を提示し、その長所と課題を検討した報
告がなされた。
これを受けて現在労働省において、雇用・労働関係全般に係る相談体制及び個別的労使紛争処理制度の在り方について検討を進めていると
ころである。
3 参考資料
<参考1> 社会保険の被保険者となるための要件
・厚生年金の被保険者の適用には、①2か月以上の継続就業、②労働日数・時間が一般社員の4分の3以上、等の要件がある。なお、これら
の条件を満たさない者のうち、被保険者の被扶養配偶者(年収130万円未満の者)については、個人としての保険料の支払いなしに基礎
年金を受給できる(基礎年金の第3号被保険者)。
・雇用保険の被保険者の適用には、①1年以上の継続就業、②週20時間以上の就労、③年収90万円以上、等の要件がある。なお、改正派
遣法では、原則として同一業務への派遣は1年に制限されることとなったため、現行規定のままでは、登録型の派遣労働者への適用が困難
となる場合が生じる。
<参考2>
労働基準法第105条の3に基づく紛争解決援助制度の運用状況(平成10年10月1日∼平成11年3月31日)
労働条件に係る
解 決
申出受理件数
紛争の相談件数
当事者間の話合い
解 決
解雇事案
2,105
562
29
労働条件の引き下げ 1,002
247
7
その他
2,430
634
11
合 計
5,537
1,478
1,443
47
35
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