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気象情報センサモジュールと H8 マイコンで気温・湿度
気象情報センサモジュールと H8 マイコンで気温・湿度・気圧を測る − 携帯型体調把握支援システムの開発 その4 − 山形大学工学部技術部 基盤技術室 水沼 充 1.はじめに 団塊世代の大量退職時代を迎え、中高年者 が屋外で軽作業(ガーデニングや家庭菜園 等)や軽スポーツ(ウォーキング、ジョギング、 ハイキング、軽登山等)に接する機会も増え ている。そのような状況のもと健康維持・管 理は重要で、生体(身体)情報を無侵襲(非侵 襲ともいう、人体に傷をつけないで痛みを伴 わないで行うこと)的にかつリアルタイム (常時)に計測し、異常時には本人はもとより 家族やかかり付けの医師等に知らせるシス テムの開発が望まれている。筆者の所属する 研究室で進めている「いつでも・どこでも、 いつまでも、安全・安心通信」を目指したユ ビキタス健康管理システムの開発[1]の一環 として、筆者らは携帯電話による通信機能を 付加したユビキタス体調把握支援システム の開発を進めている[2]。中高年者が屋外で 軽作業や軽スポーツに接する時の気象条件 が体調に影響を及ぼす場合が多々ある。生体 情報を計測する際その場所の気象条件も同 時に計測し活用すれば健康維持・管理の一助 となる。本稿では、試作した気象情報センサ モジュールと H8 マイコンを用いて気温・湿 度・気圧を計測するシステムについて紹介す る。 2.ユビキタス体調把握支援システム 図1に開発を進めているユビキタス体調 把握支援システムを示す。本システムは、生 体情報センサモジュール(脈波(脈拍)、皮膚 表面温度の各センサ)、気象情報センサモジ ュール(気温、湿度、気圧の各センサ)、入出 力制御・信号処理用マイコン、液晶表示部、 警報ブザー、乾電池電源から成る腕輪型体調 把握センサ、および携帯電話から構成され、 身体に装着する。軽作業や軽スポーツ中はリ アルタイムに生体情報(脈拍、皮膚表面温度) や気象情報(気温、湿度、気圧)を計測して表 示し、必要な時(例えば、一定の時間間隔等)、 必要な相手先に生体情報および気象情報デ ータを携帯電話メールで送信する。警告を発 した場合にも警告メッセージおよびデータ を携帯電話メールで送信する。 脈波 センサ マイコン(H8/3052F) 皮膚温度 センサ 外気温 センサ 制御部 A/D 変換部 データ 処理部 ・ メモリ 液晶表示 D/A 変換部 I/Oインター フェイス部 湿度 センサ 警報 ブザー 外気圧 センサ NTT ドコモ 携帯電話 NTTドコモ N503iS 図1 携帯電話 NTT au A5518SA ユビキタス体調把握支援システム 3.気象情報センサモジュール 気象情報センサモジュール(図2)として、 気温、湿度、気圧の各センサをそれぞれ設 計・試作した。 図2 試作した気象情報センサモジュール 気温センサには、温度センサ素子 LM35DZ(NS 製、0∼100℃、公称精度±2.0%、 +10mV/℃)を用い、増幅回路を設計・試作し た(図3)。-50℃∼+50℃に対応した直流電圧 を出力する。デジタル温度計 TX10-02(横河 Vbias(2.481V) 5V 295.9k +VS 温度センサ LM35DZ VOUT LMC6482IN/1 5V VT + 74.9k Vbias(2.481V) + 2 295.9k 74.9k 1S1588 LM385Z-2.5 - 15k 図3 10k - GND ビット分解能×8CH の A/D 変換器を持ち、計 測には 3CH を使用した。計測値はマイコン I/O ボード上の液晶表示器に表示される。 5V 1 試作した気温センサ回路 5V 5V 22n 湿度センサユニット CHS-UGS (TDK製, 計測範囲5∼95%RH @5∼+45℃, 公称精度±5%RH, 供給電圧 4.75∼5.25V) VRH 3.9k 1チップ集積化 圧力センサ XFPM-115KPAR (フジクラ製, 絶対圧15∼ 115kPa, 精度±2.5%F.S., 供給電圧5V) VOUT 680p (a)湿度センサ回路 (b)気圧センサ回路 図4 試作した湿度、気圧センサ回路 図5 試作した腕輪型体調把握センサに組 込まれた気象情報センサモジュールと H8 マ イコン 5.まとめ 試作した気象情報センサモジュールと H8 マイコンを用いて気温・湿度・気圧を計測す メータ&インスツルメンツ(株)製、K 熱電対 るシステムについて紹介した。気象情報セン プローブ 900-30 付き)と比較した実験では サモジュールを組込んだ腕輪型体調把握セ 1.0℃以内(18.3℃∼26.4℃)の誤差であった。 ンサの開発を進めている。 湿度センサ回路(図4(a))には、湿度センサ 謝辞 ユニット素子 CHS-UGS(TDK 製、計測範囲 5∼ 日頃ご指導頂いております大学院理工学 95%RH、公称精度±5%RH)を用いることにより 研究科応用生命システム工学分野・横山道央 計測された相対湿度が直読できる直流電圧 准教授、お世話になっております応用生命シ として出力される。市販の温湿度・気圧計 ステム工学分野・新関久一教授に深く感謝致 BA-9116 と比較した実験では 2%RH 以内の誤 します。また実験にご協力頂きました横山道 差であった。気圧センサ回路(図4(b))には、 央研究室・杉山真二郎君に感謝致します。な 集積化圧力センサ XFPM-115KPAR(フジクラ製、 お、本研究の一部は、平成 18 年度米沢市研 計 測 範 囲 15 ∼ 115kPa ・ abs 、 総 合 精 度 ± 究奨励補助金事業(研究課題:雪国・寒冷地 2.5%FS/0∼85℃)を用い、入力圧力に対応し 域向けユビキタス体調把握支援システムの た直流出力電圧を使った計算式で気圧(絶対 開発)および平成 19 年度科学研究費補助金 圧)を算出する。上記の温湿度・気圧計と比 (奨励研究、課題番号:19928019)の助成を受 較した実験では 7hPa・abs 以内の誤差であっ け実施した。 た。 4.マイコンによる気温・湿度・気圧計測 参考文献 [1]山形大学大学院理工学研究科応用生命システム工 試作した腕輪型体調把握センサに組込ま 学分野・横山道央研究室ホームページ(URL:http:// れた気象情報センサと H8 マイコンを図5に ceyoko.yz.yamagata-u.ac.jp/yokoyama/index.html) 示す。使用したマイコン(AKI-H8/3052F)[3] [2]水沼,横山, 雪国・寒冷地域向けユビキタス体調把 のプログラム開発は Best Technology 社の 握支援システムの開発 ,平成 18 年度米沢市研究奨 励補助金事業研 究 課 題 成 果 報 告 書 ,200703. GCC Developer Lite[4]を用い、マイコンに [3](株)秋月電子通商ホームページ 書き込む ROM ライターソフトには付属の (URL:http://akizukidenshi.com/) H8WriteTurbo を用いた。AKI-H8/3052F は 5V [4]Best Technology 社ホームページ 動作でフラッシュメモリ 512kB、RAM8kB、10 (URL:http://www.besttechnology.co.jp/)