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糖質と抗菌剤処理によるバラ切り花の花持ち延長
TX テクノロジー・ショーケース in つくば 2009 農林水産 P-53 糖質と抗菌剤処理によるバラ切り花の花持ち延長 ■ はじめに バラ切り花の花持ちが短い主因は、糖質の不足と 細菌の増殖による水分収支の悪化です。そのため、 糖質と抗菌剤の連続処理により、バラ切り花の花 持ちを延ばすことが可能です。糖質は呼吸基質とし て消費されてしまうため、糖質による品質保持効果 は処理期間が長いほど大きくなります。近年普及し つつあるバケット輸送では、輸送中に品質保持剤を 処理することが可能です。そこで、生産者段階での 処理を想定して、ショ糖と抗菌剤の出荷前およびバ ケット輸送中の処理によるバラ切り花の品質保持 技術開発を試みました。 ■ 研究内容 1. バラ切り花に対する品質保持効果 イソチアゾリノン系抗菌化合物と硫酸アルミニ ウムを抗菌剤とし、それに 2% または 4% ショ糖を 組み合わせた処方がバラ切り花の品質保持に適し ていました。 バラ ローテローゼ 切り花に、抗菌剤および 2% または 4% ショ糖と抗菌剤を組み合わせた品質保持 剤溶液を、出荷前の処理を想定して 10℃で 24 時間、 および輸送中の処理を想定して 15℃で 48 時間処理 しました。処理後、切り花を蒸留水に生け花持ちを 調べたところ、蒸留水で前処理し、乾式輸送した場 合には 2.0 日、蒸留水のみで処理した場合は 2.1 日、 抗菌剤処理では 3.5 日しか持ちませんでした。それ に対して、2% および 4% ショ糖と抗菌剤処理では それぞれ 7.4 日および 9.4 日となり、花持ちを著し く延長できることがわかりました(図 1)。ショ糖 と抗菌剤処理により花径も増大しました。 他のバラ品種に対しても効果があるか確認する ため、 サフィーア 、 シャネル 、 ニューブライダル および マイスノー 切り花に対する品質保持効果 代表発表者 所 属 問合せ先 を調べました。その結果、いずれの品種においても、 2% ショ糖と抗菌剤処理により花持ちは延長し、花 径も増大しました。 2. 薬害回避方法 秋冬季に生産したバラ切り花では、ショ糖処理 により葉に薬害が発生することがあり、ローテロー ゼ ではそれが顕著でした。薬害の発生は糖濃度を 2% 以下とし、処理時の相対湿度を 90% 程度とする ことで防ぐことができました。 3. 品質保持効果の実証 出荷前および輸送中のショ糖と抗菌剤処理の実 用性を検討するため、北海道、和歌山県および千葉 県から、実際の流通ルートで東京およびその近郊の 市場にバラをバケット輸送した後、花持ちを調べま した。その結果、出荷前および輸送中のショ糖と抗 菌剤の処理により、花持ちは延長することが実証さ れました。 ⫳⇐᳓㸢ੇᑼ ⫳⇐᳓ ᛫⩶㩷 㪋㩼䉲䊢♧䋫᛫⩶ 図1 バラ切り花の花持ちに及ぼすショ糖と抗菌剤処理の効果 市村 一雄(いちむら かずお) ■キーワード : (1)バラ切り花 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 〒 305-8519 茨城県つくば市藤本 2-1 TEL: 029-838-6801, FAX: 029-838-6841 [email protected] – 55 – (2)品質保持剤 (3)バケット輸送