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第4講 緩和ケアにおける 臨床薬理学 ある日の午後‥ モルヒネ

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第4講 緩和ケアにおける 臨床薬理学 ある日の午後‥ モルヒネ
第4講
緩和ケアにおける
臨床薬理学
医療法人社団慈成会東旭川病院
緩和薬物療法認定薬剤師
がん専門薬剤師・がん指導薬剤師
里見眞知子
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
ある日の午後‥
モルヒネを使おうと思っているA医
師がこんな説明をしました
「病状が進んで、痛みが極めて強くなってきました。普通の痛み止
めで抑えることが出来なくなっています。今の痛み止めに変えて、
いよいよ最後の手段としてモルヒネを始めようと思います。モルヒ
ネを使い出すと、徐々に効かなくなって量がどんどん増えていくこ
とが予想されます。また、途中で止めることは出来ないので、最後
まで使い続けることになります。麻薬中毒になったり、呼吸が弱く
なって、命を縮めることになるかもしれません。眠気が強くでて意
識がなくなっていきますが、痛みがわからなくなるのでその方がご
本人は幸せかもしれません。モルヒネを始めるので今している抗が
ん剤の治療は中断しましょう。強い薬なので、胃がすごく荒れるこ
ともありますし、他にも様々な副作用がありますが、今は痛みをと
るのが最優先なので我慢してもらうしかありません。いろいろと危
険を伴う治療ではありますが、苦しみをとる唯一の方法ですのでど
うかご理解下さい。心配させてもいけないのでご本人には内緒にし
ておきましょう!」
あさひかわ緩和ケア講座 2013
A医師:麻薬中毒
になって・・・
あさひかわ緩和ケア講座 2013
国民
行政
法律
覚せい剤
大麻
幻覚発現薬
コカイン
モルヒネ(オピオイド鎮痛薬)
は麻薬ですか?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
医療従事者
医療用麻薬
麻薬性鎮痛薬
麻薬性鎮咳薬
あさひかわ緩和ケア講座 2013
1
Q)覚せい剤や大麻も麻薬である。 Yes:約20%
【広辞苑】
「麻薬は麻酔作用を持ち、常用すると習慣性となって中毒作用を
起こす物質の総称」
麻薬はオピオイドのみならず覚せい剤や大麻までも含む依存性薬
物全体を指す用語として使用されている
医療用麻薬も大変危険な依存性薬物であり、その使用により中毒
になり、さらには廃人になってしまうという誤解(20~50%)
オピオイドはどうして
効くのでしょうか?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
薬は受容体と結合して効果をあらわす
受容体は細胞にあって
外界や体内からの刺激(薬も)
を受け取り、情報として
利用できるように変換する
仕組みをもった構造
薬は受容体と結合することで
効果をあらわす
では、オピオイド受容体は
どうなっているのでしょう?
刺激(薬も含む情報伝達物質)=「鍵」
受容体(レセプター)=「鍵穴」
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
痛み
オピオイド受容体の種類
皮膚・骨格系な
ど
表
オピオイド受容体タイプの特徴
μ受容体
β-エンドルフィン
内因性リガンド エンドモルフィンⅠ
エンドモルフィンⅡ
δ受容体
メチオニン-エンケファリン
ロイシン-エンケファリン
κ受容体
炎症
ダイノルフィン
脳
PG
作動薬
モルヒネ,コデイン,ペチジン
フェンタニル、オキシコドン
メチオニン-エンケファリン
ロイシン-エンケファリン
ケトシクラゾシン
生理機能
鎮痛、鎮咳、多幸感、身体
精神依存、徐脈、神経伝達
物質の遊離抑制
鎮痛、情動、身体、精神依
存、神経伝達物質の制御
鎮痛、鎮咳、鎮静、
縮瞳、徐脈、利尿、
嫌悪感
大脳皮質、視床、扁桃核、
青斑核、弧束核、黒質など
大脳皮質、側坐核など
脊髄、線条体、側坐
核、弧束核、視床下
部など
脳内分布
がん組織
オピオイド
受容体
BK
侵害受容器
オピオイド
鎮痛薬
脊髄
知覚神経
脊髄後角
μ受容体
癌
κ受容体
成田 年他:月刊薬事2007.Vol.58.No.11から一部改変
あさひかわ緩和ケア講座 2013
PG:プロスタグランジン
BK:ブラジキニン
あさひかわ緩和ケア講座 2013
2
上位中枢ならびに脊髄における
モルヒネの鎮痛作用発現機序
:痛覚伝導系
:下行性抑制系
大脳知覚領域
青斑核(LC)
視床
中脳水道周囲灰白質
(PAG)
モルヒネ
モルヒネ
中脳
ミュー受容体
大縫線核(NRM)
モルヒネ
モルヒネはどこにどのような
作用をおこすの?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
視床
脊髄後根
神経節(DRG)
後角
組織
:2次ニューロン
:オピオイド神経
:GABA神経
:セロトニン神経
モルヒネ
脊髄
あさひかわ緩和ケア講座 2013
モルヒネの末梢作用
モルヒネの代表的薬理作用(1)中枢作用
PGE₂
細胞膜
脳幹にある呼吸中枢のCO2に対する反応を減弱させ、
呼吸衝動(respiratory drive)を抑制
鎮咳作用
Gs
AC
一部は延髄の咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制
嘔気/嘔吐作用
延髄最後野にある化学受容器引き金帯
(chemoreceptor trigger zone)のドパミンD2受容体
の直接刺激により起こる
縮瞳作用
瞳孔を支配している副交感神経が動眼神経を興奮させ
起こる。耐性はほとんど形成されない
cAMP
μ
Gi
AC:アデニル酸シクラーゼ
P:リン酸
PKA:プロテインキナーゼA
+
呼吸抑制作用
EP₂
+
鎮痛作用
大量では催眠を起こすが、低用量できわめて選択的に
強度の鎮痛作用を示し、多くの痛みに有効
PKA
-
P
K⁺
P
モルヒネ
侵害受容線維自由終末
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
モルヒネの代表的薬理作用(2)
2.末梢作用
鎮痛作用:炎症組織におけるPGの発痛増強作用に拮抗
平滑筋への直接作用:腸管、膀胱等の平滑筋緊張亢進
A医師:
便秘や腹満、排尿困難
モルヒネが徐々に効かなくなって
量がどんどん増えていく?
3.痒みを引き起こす作用
肥満細胞からのヒスタミン遊離による
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
3
投与量と耐性について
薬物耐性とは
 疼痛の増強に伴いオピオイドも増量されるため、十分
な説明を行わないと「どこまで増えるだろうか?」と
不安を抱かせることになる
 「オピオイドが効かなくなったら、どうするのか?」
という疑問を持つ患者や家族
 これらの不安や疑問を解消するため、オピオイドは他
の鎮痛薬とは異なり、有効限界(ceiling effect)のな
い薬物であり、鎮痛が得られなくなっても増量により
再び鎮痛効果は得られる事
 実際の症例で投与されたオピオイドの投与量を具体的
に紹介すると増量に対する抵抗感が少なくなる
『薬物を反復投与することにより効果が減弱し、目的の
効果を得るためには次第に投与量を増加しなければな
らなくなっていく現象』
1.代謝耐性:チトクロムP450誘導に基づく薬効の減弱
(代表例;フェノバルビタール)
2.組織耐性:受容体の脱共役(結合できなくなる)
受容体の減少(ダウンレギュレーション)
オピオイド耐性の原因は受容体のリン酸化による構造変
化で細胞表面から受容体がなくなる
あさひかわ緩和ケア講座 2013
症例2 59歳,女性,直腸癌・肺転移
症例1 55歳,男性,直腸がん
近
医
受
診
当
院
紹
介
低
位
前
方
切
除
術
3
/
7
吻
号
部
再
発
直
腸
切
断
術
12
月
会
陰
部
再
発
巣
摘
出
7
月
人
工
肛
門
部
皮
下
再
発
切
除
術
5
月
フル
ツロ
ン
6/19
~
数日
近医による
訪問看護
5/18~~1/5
再発
10m
g
8/10
X年3月・・X+3年12月X+5年7月X+6年5月
MSコ
ンチン
20
mg
11/6
~
11月
MS
MS
コン
コン
チン
チン
40
30 mg
mg 1/6
12/
~
13
~ 1月
12月
M
Sコ
ン
チ
ン
60
m
g
1/
17
~
M
Sコ
ン
チ
ン
15
0
m
g
5/
13
~
5月
近医から疼痛コントロー
ル紹介入院
1/6‐2/12
M
Sコ
ン
チ
ン
36
00
m
g
モヒ注
200mg
1/6
1/6~
モヒ注
400mg
1/8~
あさひかわ緩和ケア講座 2013
退
院
在
宅
療
養
2/
13
排
便
時
出
血
で
近
医
受
診
直
腸
切
断
術
人
工
肛
門
造
設
術
4/
26
mFOLFOX
7コース
11/30~2/1
骨
盤
内
局
所
再
発
骨
盤
内
内
臓
全
摘
・
回
腸
導
管
1/
30
Cmab+
FOLFIRI コース
1/25‐4/
Bmab+
FOLFIRI
33コース 腫
8/19~ 瘍 12/19
摘
出
術
デュロテッ
デュロテップ プパッチ
30mg
パッチ
12/20
20mg
~
10/18~
Bmab+
FOLFIRI 9コース
7/8‐11/
8/
31
再
々
発
ピーガー
ピ
ガ
ド
180mg
ピーガード
ピ
ガ ド
60mg
オキ デュロテップ
シコ パッチ15mg
ドン
11/29~
2月3月 4月
両
尿
管
ス
テ
ン
ト
8
/
3
再発
モヒ注
1000mg
1/10~
12月 1月
イ
レ
ウ
ス
解
除
術
2
/
1
3
デュロテッ
プ15mg
2/~
デ ロ
デュロ
テップ
20mg
6/19
~
MTパッチ
33.6mg
7/19~
ピーガード
900mg
10
00
800 mg
mg
11/
600
mg 10/1 ~
モヒ注400mg 10/1 ~
7/8~
~
MTパッチ50.4mg
10/13~
MTパッチ
42mg
1/24~
8月・・4月・・11月・・2月・・8月・・1月・・ ・・6月・・・・・・12月1月・・・・・ 4月5月・・7月 8月 9月 10月11月
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
正常および炎症性疼痛時における生体内μおよび
κ神経系の生理的バランスの概念図
A医師:麻薬中毒
になって・・・
通常、生体内においてμとκ神経系は
相互に調節し合い、バランスを保持
非疼痛下でモルヒネ投与
↓
バランス崩れ、依存形成
なぜ、がん疼痛治療時においてモル
ヒネの依存性はあまり問題にならな
いのでしょうか?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
*炎症性疼痛下では
ダイノルフィンが遊離
↓
κ神経系が活性化
↓
ドパミン過剰遊離抑制
*神経障害疼痛下ではミュー受容体低下
↓
ドパミン過剰遊離抑制
痛みがある時
痛みがない時
μ
κ
μ
κ
モルヒネ投与
モルヒネ投与
μ
κ
μ
κ
あさひかわ緩和ケア講座 2013
4
神経障害性疼痛下における
モルヒネ精神依存不形成のメカニズム
炎症性疼痛下における
モルヒネ精神依存不形成のメカニズム
μ受容体の
機能低下
神経障害性
疼痛
炎症性疼痛
ダウノルフィン神経
側坐核
側坐 核
モルヒネが抑制性
GABA介在神経上
に分布のμ受容体
に結合できない!
μ受容体
刺激
刺激
抑制性GABA
介在神経
βエンドルフィン
含有神経
ドパミン
受容体
腹側被蓋野
GABA受容体
κ受容体
κ受容体
ドパミン抑制
腹側被蓋野
ҡ受容体
活性化
ドパミン神経
GABA受容体
ドパミン神経
:ドパミン
:ダウノルフィン
:GABA
:モルヒネ
:GABA
あさひかわ緩和ケア講座 2013
疼痛治療でも身体依存は弱く形成される
自己休薬しないよう説明が必要
昭和38年麻薬取締法改正時に厚生省が決めたオピオイドの
退薬症状の分類
第1度
眠気、あくび、全身違和、発汗、流涙、流涎、鼻漏、
倦怠、ふるえ、不眠、食欲不振、不安など
第2度
神経痛様の疼痛、原疾患の疼痛の再現、鳥肌、悪寒、
戦慄、嘔気・嘔吐、腹痛下痢、筋クローヌス、皮膚
の違和知覚、苦悶など
第3度
もうろう感、興奮、暴発、失神、痙攣、心臓衰弱、
虚弱など
通常、休薬後5~8時間後に退薬症状が出現し始め、
1~3日後が最大となり、5~7日で消失する。
症例3 42歳 男性 直腸癌・多発骨転移
 X年09月:A病院で直腸がんと診断され、切除術
 X+1年03月:疼痛出現し、CT・MRI検査でリンパ節再発・肝転移・
骨転移と診断され、NSAIDs開始も疼痛改善なくオキ
シコドン40mg2×で疼痛コントロール。
アバスチン・mFOLFOX6療法開始
 X+1年07月:入院化学療法希望で当院に紹介され、アバスチン・
mFOLFOX6療法(6コースから)を継続
 X+1年08月:疼痛悪化し、オキシコドン増量もコントロール不良
 X+1年09月:オキシコドンにフェンタニル貼付剤を併用も、疼痛コ
ントロール不良
 X+1年10月:PETCTで多発骨転移と診断され、B病院で放射線療法
開始
 X+1年12月:化学療法再開予定となるが、受診困難となる。
 X+2年1/19:オキシコドン徐放錠、フェンタニル貼付剤なくなる
も、当院受診できず。(オキシコンチン120mg・MT6.3/日)
 X+2年1/21:当院に救急車搬送。オキシコドン80mg2×で再開。
 X+2年1/23 :「身の置きどころがない。辛い。痛い。」
モルヒネ塩酸塩注80mg/日持続静注開始。NRS10→7
あさひかわ緩和ケア講座 2013
症例4 73歳 女性 大腸がん再発、肝転移
• Rpオキシコンチン5mg3T3×6・14・21時
• X年1月8日 外泊
• X年1月9日 18時 全身違和感、ふるえ
「14時のオキシコンチンを
飲み忘れたことに気づき、
あわてて服用、横になる。
1時間後には症状消失。」
あさひかわ緩和ケア講座 2013
:βエンドルフィン
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
減量・中止する場合
2~3日毎に20~30%程度減量した後、中
止する。
減量例:オキシコンチン®100mg2×(12時
間毎)服用していた患者が腫瘍の切除術と放射
線療法を行い、疼痛の改善が見られた。
100mg→80mg→60mg→40mg→30mg→
20mg→15mg→10mg→5mg→中止
あさひかわ緩和ケア講座 2013
5
オピオイドって危ない薬なの?
A医師:
呼吸が浅くなる?
眠気が強くて意識がなくなる?
使い方がよくないんじゃない?
オピオイドの剤形別の特徴は?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
症例5:男性 肝臓がん 70歳 50kg
疼痛残存、日中傾眠、反応鈍い
処方 MSコンチン40mg2× 8時20時
マグミット330mg3T3×
疼痛時 オプソ5mg 1包 1×
血液・生化学検査結果
白血球4500 赤血球400万 血小板16万
アルブミン(g/dL)3.0
血清クレアチニンmg/dL 1.28
Ca(mg/dL)8.5
NH3(μg/dL)50
あさひかわ緩和ケア講座 2013
剤形別オピオイドの薬物動態の特徴
オピオイドの薬物動態の特徴を十分に理解して
いると、いろいろな病態、患者の状態(腎機能
低下時、肝血流量の低下時など)に合わせてオ
ピオイドを使い分けできる。また、剤形が違う
と薬物動態も変わってくる。剤形別にみた特徴
も十分につかんでいるとオピオイドローテー
ション時にも役立つ。
症例5の眠気の原因は何?処方変更は?
あさひかわ緩和ケア講座 2013
注意)製剤の違いで体内動態が違う!
最高
血中濃度
到達時間
最高
血中濃度
(ng/mL)
10
0.9±0.1
16.6±3.3
39.6±6.2*1
MSコンチン(10mg12hr毎3回) 30mg
90
2.7±0.8
29.9±13.3
165.5±78.3*2
ピーガード(5日間反復投与)
60mg
120
6.3±4.1
16.5±4.1
487.0±151*3
アンペック(8hr毎1日3回3日)
10mg
20
1.5±0.3
25.8±2.1
120.7± 8.4*4
1回の 効果発現
投与量 時間(約 分)
オプソ内用液(1回のみ投与)
*1:AUC0-∞時間
10mg
*2: AUC 0-12時間
*3:AUC 0-72時間
*4:AUC 0-8時間
血中濃度曲線下
面積(ng・hr/mL)
各インタビューフォームから
あさひかわ緩和ケア講座 2013
薬物動態って?
• 吸収:absorption→A
• 分布:distribution→D
• 代謝:metabolism→M
• 排泄:excretion→E
薬の血中濃度concentration (C)を
規定する因子
ADME(アドメ)
参考:外科手術に耐え得る鎮痛効果は平均65ng/mLを要するとされる。
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
6
薬効の個人差
薬の吸収
効果
薬物動態(pharmacokinetics:PC)
経口
静注 静脈内のみが吸収率100%
皮下
筋注
直腸
舌下
分布
静注
吸収
Rx
薬物濃度
経口
薬 効
有害反応
作用
部位
筋注
直腸
内
感受性
(pharmacodynamics:PD)
組織
血中
濃度
肝臓
生体内利用率
(バイオアベラビリティ)
代謝
受容体
腎臓
排泄
処方量-効果関係
投与量-効果関係
血中薬物濃度-効果関係
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
生体内利用率
各オピオイドの薬物動態パラメータ
錠剤
モルヒネ
フェンタニル
オキシコドン
トラマドール
68%
70-80%
食道
生体内利用率
徐放錠:
20~40%
経皮吸収:
92%
口腔内崩壊
錠:50%
蛋白結合率
20~36%
80~86%
45%
19.5~
21.5%
89.4%
分布容積
1~6L/kg
3.2~4L/kg
2.6L/kg
2.7L/kg
3.6L/kg
クリアランス
29~
43L/kg
46L/kg
48L/kg
47L/kg
4-6L/hr
尿pH上昇
で低下
半減期
2.2±0.3hr
5.7±1.1hr
6.3 ± 0.9hr
8.5~65hr
(デュロテップMTパッチ
2.1mg)
経皮投与
メサドン
速放錠:
60~87%
徐放錠:
50~87%
22.9±7.7hr
舌下投与
酵素誘導・阻害
経口投与
小腸上皮
初回通過効果
胃
薬物代謝
酵素
CYP3A4
併用薬
吸着
GFJ
P-糖
蛋白
併用で血中濃度上昇する薬あり
あさひかわ緩和ケア講座 2013
 三・四環系抗うつ薬:トリプタノール、
トフラニール
 コントミン
 ワソラン・ヘルベッサー
 5-FU
 ニトログリセリン
 モルヒネ
 インデラルなどベータブロッカー
あさひかわ緩和ケア講座 2013
作用
部位
分解
不活化
代謝体
GFJ:グレープフルーツジュース
肝初回通過効果を受けるため
生体内利用率が低い代表的薬物
肝臓
=薬の受容体
あさひかわ緩和ケア講座 2013
生体内利用率の違いで
薬の効果・副作用はどうなる?
わずか
モルヒネ生体内利
モルヒネ生体内利
20%の違い
用率40%のひと
用率20%のひと
が100mgを服用
が100mgを服用
体循環に入り作用部位に
到達する薬の量
2倍の差
40mg
20mg
あさひかわ緩和ケア講座 2013
7
分 布distribution(D)
生体内利用率
 生体内利用率とは経口投与された量に対して循環血中に
入った量の割合
 生体内利用率の小さい薬物は吸収が悪いか、肝臓で代謝
(初回通過効果)を受けて消失しやすい
 モルヒネ徐放錠の20~40%に比べてオキシコドンは50~
87%と大きく、血中濃度はモルヒネに比べて安定
 モルヒネの経口剤と注射剤を比較した場合の効力比は
1/2~1/3
 オキシコドンにローテーションの際には経口オキシコドン
は経口モルヒネの約70%の用量
(例:モルヒネ60mg⇔オキシコドン40mg)
1. みかけの容積(Vd)で実容積でない
2. 薬物に固有
3. 組織移行性大きい→分布容積は大きい
血液
血中濃度=10mg/L
薬Aを100mg
血液
薬Bを100mg
組織
血中濃度=1mg/L
あさひかわ緩和ケア講座 2013
例:テオフィリンの分布容積は約20L
テオフィリン400mg服用:400mg÷20L
血中濃度約 20mg/L(20μg/mL)
喘息発作で受診
ネオフィリン250mg1A点滴
(テオフィリンとして200mg)
血中濃度200÷20= 10mg/L(10μg/mL)
テオフィリン血中濃度20+10=30mg/L(30μg/mL)
中毒量!!!
血漿たんぱく
モルヒネ
分布容積
は10L
100÷10
分布容積
は100L
100÷1
あさひかわ緩和ケア講座 2013
分布容積
 分布容積(L)=投与量(mg)÷血中濃度mg/L
(血中濃度mg/L=投与量(mg)÷分布容積(L))
 薬物が見かけ上、血中濃度と等しい濃度で均一に分布
するような体液の容積
 どのオピオイドも大きく、約200Lくらい
 組織中に比べて血液中には非常に少なく、血液透析や
一時的な出血ではほとんど抜けない、また腹水などの
サードスペースへの体内貯留分はあまり考えなくて良
い
あさひかわ緩和ケア講座 2013
蛋白結合率
遊離している薬のみが作用する
組織
あさひかわ緩和ケア講座 2013
蛋白結合率
フェンタニル
蛋白結合率が低いモルヒネの場合 蛋白結合率が高いフェンタニルの場合
 蛋白に結合していない薬が受容体と結合し効果
 モルヒネやオキシコドンは蛋白結合率が低いので問題
ない
 フェンタニルが80から86%と大きく、低栄養など蛋
白濃度が低くなった時に血液中にフェンタニルが遊離
してフェンタニルの血中濃度が上昇
血漿タンパクの低下
血液中の遊離モルヒネ量は変わらない
効き方は変わらない
血液中の遊離フェンタニルが増える
効きすぎ
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
8
その薬の半減期が2時間とすると10時間経ったら授乳可
例2)デュロテップMTパッチ2.1mgの半減期は約23時間。
フェントステープ2mgの半減期は約27時間
定常状態になるには115~135時間(約4.7~5.4日)
毎回・毎日、増量すると過量となる。
腎機能正常な人のモルヒネの半減期 t1/2
0時間
2時間後
4時間後
6時間後
8時間後
10時間後
血中濃度
10
5
2.5
1.25
0.625
0.3125
消失%
0%
50%
75%
87.5%
93.8%
96.9%
モルヒネ血中濃度
半減期( t1/2) キーワードは5倍
 その薬が体の中で満ち足りる(定常状態)のはその薬の
半減期の5倍の時間が経ってから
 その薬が体の中からなくなるのはその薬の
半減期の5倍の時間が経ってから
例1)授乳婦がどうしても飲まなくてはならない薬があっ
てその薬は乳汁に血中濃度の4倍の量が出てしまう。
10
5
0
1
2
3
4
あさひかわ緩和ケア講座 2013
腎機能障害者・高齢者のモルヒネの半減期
0時間
4時間後
8時間後
12時間後
16時間後
20時間後
血中濃度
10
5
2.5
1.25
0.625
0.3125
消失%
0%
50%
75%
87.5%
93.8%
96.9%
モルヒネ血中濃度
10
5
時間
半減期t1/2
あさひかわ緩和ケア講座 2013
腎機能正常な人のモルヒネの排泄
モルヒネ
モルヒネ代謝物M-6G
モルヒネ
5
腎臓からM6Gは排泄
0
1
2
3
4
5
時間
半減期t1/2
あさひかわ緩和ケア講座 2013
腎機能障害者・高齢者のモルヒネ排泄
モルヒネ
モルヒネ代謝物M-6G
モルヒネ+M6G
腎臓からの排泄が低下
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
クリアランス
 クリアランスとは、どのくらい体から薬を排泄するこ
とができるか(肝での代謝+腎での代謝)
 クリアランスの大きい薬ほど体内から消失速度が大き
い
 どのオピオイドも非常に大きく、肝血流量の変化に対
して影響が大きい
 肝機能低下時、血中濃度上昇
あさひかわ緩和ケア講座 2013
9
オピオイド製剤の剤形別特徴
AUC(血中濃度下面積)
モルヒネ徐放剤
モルヒネ血中濃度
モルヒネ速放製剤
(モルヒネ錠・末・水・オプソ内服液)
①
②
③
④
⑤
②
⑥
AUC=①+②+③+④+⑤+⑥
レスキュードーズに関する知識
服薬指導
レスキューの意義を患者とその
家族に説明し、疼痛増強時には
躊躇することなく、レスキュー
ドーズを使用するよう指導する
使用判断 患者自身
使用目的 1)突出痛への対処
2)基本投与量の不足分
の推定
処方間隔(hr)
3~5
4時間、ただしレ
スキューでは1時
間
1
1時間
2~4
8~14
12
1
30分~1時間
6~8
24
24
(パシーフカプセル)
経口
1
30分以内
≦1
24
24
直腸内
2/3
20分
1~2
6~10
8
持続静注
1/3
直ちに
11
8~12
-
持続皮下注
1/3
数分
11
持続硬膜外
1/18
30分
1≦
オキシコドン速放製剤(オキノーム散)
経口
2/3
15分以内
1~2
3~6
6,ただしレスキューで
は1時間
オキシコドン徐放剤(オキシコンチン)
経口
2/3
10~20分
2~4
8~14
12
持続静注、
持続皮下注
2
直ちに
数分
11.55
11.46
8~12
経口
1/5~
1/20
2.5~4.4
4-12
経皮
1/100
2時間
17~48
持続静注
1/100
直ちに
18
メサドン塩酸塩
フェンタニル貼付剤(デュロテップMT・フェントス)
持続皮下注
あさひかわ緩和ケア講座 2013
オピオイド鎮痛薬が定時
投与されている状態にお
いて、疼痛の増強時に追
加で用いる速放性オピオ
イド製剤を指す。
効果持続時間(hr)
30分~1
フェンタニル注射薬
AUC:Area Under the Concentration-time curveの略
レス
キュー
ドーズ
とは
最高血中濃度到達時
間(hr)
10分以内
経口
モルヒネ注射薬
⑤
吸収開始時間
1
経口
⑥
④
変換比
経口
(カディアン、ピーガード錠)
オキシコドン注射液(オキファスト注)
③
投与経路
(MSコンチン錠・細粒・MSツワイ
スロンカプセル)
モルヒネ坐薬(アンペック坐剤)
投与後の経過時間
①
薬剤名
突出痛があるにもかかわらずレ
スキュードーズを使用しないと、
突出痛を軽減できないだけでな
く、基本投与量の不足分を推定
できず、至適投与量の把握が困
難で疼痛治療が進まない原因に
なることを理解してもらう
1/100
数分
T1/28.5~65hr
72
72
8~12
-
ー
あさひかわ緩和ケア講座 2013
加賀谷 肇:がん疼痛緩和ケアQ&A p70,じほう、2006より引用,一部改変
痛みを波に例えると
小さい波は基本のオピオイドで防げる
大きな波は大きい防波堤すなわちレスキュードーズ
でないと防げない。
1日に何度もレスキュードーズ使用時は基本用量を
増量しなければならない
無制限に投与すると過量になる
服用間隔
・モルヒネ:1時間あけて1回1日量の1/6
・オキノーム散:1時間あけて1回1日量の1/8~1/4
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
モルヒネの主な薬理作用の
50%有効用量の比較
357.50
行動抑制(
眠気)
0.0
便秘
鎮痛
0.1
0.02
カタトニー(
緊張病)
2.6
1.0
1.0
3.4
呼吸抑制
10.4
嘔気
嘔吐
有効かつ安全に使うためには
どうすればいいの?
注)上記の50%有用用量は、
研究施設、実験動物の種類、飼
育飼料などによって変化するこ
ともあるので、絶対的ではない
ということを著者らは断ってい
る。
1000.
0
死亡
便秘、嘔気・嘔吐といった副作
用は、鎮痛用量よりも低用量で
発現する。
一方、行動抑制(眠気)、呼吸
抑制などは鎮痛用量よりも高用
量で発現することがわかる。
(鈴木勉、武田文和:オピオイド治療-課題と新潮流.鎮痛薬・オピオイドペプチド研究会編.25-34.エルゼピア・サイエンスミク
ス.2000.一部改変)
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
10
腎障害によって鎮痛効果・副作用に
影響をうけるオピオイドについて
代表的オピオイドの特徴
トラマドール
徐放・散・注射
貼付・注射
カプセル
注射
錠剤
肝
肝
肝
肝
肝
○ M-6-G
M-3-G
○オキシモルフォン
極微量
ノルオキシコドン
ノルフェンタニル
○ M1
EDDP
CYP2D6
CYP3A4
CYP3A4
CYP2D6
CYP3A4
CYP3A4
CYP2B6
++
±
+++
±
代謝物
(○活性有)
主な代謝経路 グルクロン酸抱合
腎障害
の影響
+++
CH₃
Q)腎障害患者には十分注意が必要なオピオイドは?
嘔気・嘔吐
+++
+++
++
+++
+++
便秘
+++
+++
±
+++
+++
A)モルヒネ
H
理由)モルヒネは肝臓で代謝
M-3-G:鎮痛作用なし
M-6-G:モルヒネより強い鎮痛作用
O
H
腎不全患者
(nmol/L)
1000
1000
モルヒネ3グルクロニド(M3G)
モルヒネ6グルクロニド(M6G)
モルヒネ
100
100
モルヒネ3グルクロニド(M3G)
血中濃度
血中濃度
モルヒネ6グルクロニド(M6G)
モルヒネ
1
0 2 4 6 8 1012
時間(hr)
1
24
0 2 4 6 8 1012
代謝
せん妄
など
副作用
増強
モルヒネ100mg
生体内利用率
40%
代謝物
60mg
カプセル
錠剤
40mgが体に
いきわたる
心臓
モルヒネを腎機能障害
患者や高齢者が服用
血中薬物濃度
心臓
24
時間(hr)
あさひかわ緩和ケア講座 2013
分布
40mgが体に
いきわたる
モルヒネ血中濃度
分布
代謝物
60mg
CH₃
健常人と腎不全患者におけるモルヒネ
M-3-GおよびM-6-Gの血中濃度推移
薬効の出現
モルヒネ100mg
H
H OH
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
経口モルヒネ100mgを
生体内利用率40%の
腎機能正常患者が服用
OH
O-Glu
O
HO
H H
モルヒネ­6­グルクロニド
(M­6­G)
健常人
参考文献
1)Ando Y, Br J Cancer,1997;75:1067-71
2)プラチナ製剤の臨床薬理;第7回日本臨床腫瘍学会教育セミナー
H
H
(nmol/L)
注意!
Cockcroft法のsCr値はJaffe法による測定値であり、
日本ではほとんどの施設で酵素法で測定。
Jaffe法sCr値=酵素法sCr値+0.2
H
モルヒネ­3­グルクロニド
(M­3­G)
モルヒネ
Ccrは蓄尿しなければわからない?
例 85歳女性体重40kg sCr1.0mg/dL(Jaffe法)
Ccr=[(140-85)×40/72×1.0]×0.85
=約26mL/min
O
Glu-O
H
HO
両者とも腎臓から排泄
CH₃
H
あさひかわ緩和ケア講座 2013
• Cockcroft&Gaultの式による概算
男性:(140-年齢)×体重/72×sCr
女性:(男性の式)×0.85
H
N
代謝臓器
メサドン
N
フェンタニル
剤形
オキシコドン
N
モルヒネ
末・液・錠
徐放・注射
代謝
投与後の経過時間
肝臓
胃
吸収
100mg
投与後の経過時間
肝臓
100mg
溶出
溶出
崩壊
崩壊
小腸
小腸
少しだけ糞便中に排泄
胃
吸収
100mg
ほとんどが尿中排泄されどんどん体からなくなる
あさひかわ緩和ケア講座 2013
少しだけ糞便中に排泄
M-6Gが尿中排泄できず体の中にどんどんたまる
あさひかわ緩和ケア講座 2013
11
健常人と腎機能障害者( Ccr60mL/min未満)
におけるオキシコドンの血中濃度推移
オキシコドンの代謝経路
N
CH₃
H
H
O
CH₃
ノルオキシコドン
CH₃
H
N
CYP2D
6
O H
OH
O
H
H
O
O H
O
HO
O
・
gluuronide
H
O
血漿中オキシコドン濃度
H₃CO
H
約20%が
腎臓から排泄
↓
健康成人と比較
腎障害者で約1.6倍の
AUC
↓
腎障害者、高齢者に
は少量から投与
40
OH
CYP3A4
N
約80%が肝臓で代謝
O
オキシコドン
H
↓
O H
ノルオキシコドン H₃CO
O
(鎮痛活性なし)
オキシコドン
(ng/mL)
HN
オキシコドン
健康成人(n=13)
30
腎機能障害者(n=12)
Cmax
(ng/mL)
20
10
AUC
(ng/hr/mL)
健康成人
21.4±6.2
247.9±89.5
腎機能障害者
30.9±9.8
396.2±167.9
オキシモルフォングルクロニド
オキシモルフォン
0
図
0
オキシコドンの代謝経路
6
12
18
24
30
36
42
48
時間(hr)
オキシコンチン®錠インタビューフォーム
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
フェンタニルにおける腎障害時の体内動態
肝機能障害患者のオピオイド鎮痛薬の
使い方で注意は?
フェンタニル
フェンタニル
O
N
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、
トラマドール、メサドンは
肝血流量依存性薬物
H₃C
N
約90%が肝臓で代謝
フェンタニル
↓
ノルフェンタニル(活性なし)
CYP3A
4
肝血流量が低下
ノルフェンタニル
O
NH
H₃C
半減期の延長とクリアランスが低下
N
約10%が腎臓から
未変化体で排泄
経口投与の場合、初回通過効果減弱で生体内利用率が増大
図
血中濃度上昇
フェンタニルの代謝経路
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
オキシコドン徐放錠単回投与による血中濃度
30
オピオイドによる便秘
肝障害者(n=12)
血漿中オキシコドン濃度
健康成人(n=12)
25
mean±S.D
半減期
(hr)
最高血中濃度
(ng/mL)
健康成人
5.4±2.3
16.9±4.7
195.5±74.2
肝機能障害者
7.7±2.3
24.8±9.0
378.5±174.4
20
15
AUC
(hr・ng/mL)
10
5
0
0
6
12
18
24
30
36
42
48
•
•
•
•
肛門括約筋の収縮力増強作用
腸管の輪状筋を収縮させて腸運動低下作用
静注や皮下注で中枢のμ2受容体を介して便秘
経口投与では中枢μ2受容体と腸管のμ2受容体への
直接作用で静注、皮下注に比し強い便秘
• フェンタニルはμ1受容体に選択性が高いので便秘は
軽度、高用量で便秘
• モルヒネ、オキシコドンからフェンタニルにオピオイ
ドローテーション時の下剤用量に注意
時間(hr)
オキシコンチン®錠インタビューフォーム
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
12
便秘・下痢
止痢薬
便秘の治療戦略
下剤
蠕動抑制
オピオイド受容体刺激薬
蠕動亢進
モルヒネ
コデイン
ロプラミド(ロペミン)
腸運動促進薬
メトクロプラミド(プリンペラン)
ドンペリドン(ナウゼリン)
膨張性下剤 ①
CMC-Na(バルコーゼ)
便秘誘発
抗コリン作用
抗コリン薬
3・4環系抗うつ薬
ジソピラミド(リスモダン)
浸透性下剤②
ラクツロース
刺激性下剤
セロトニン5HT3拮抗薬
グラニセトロン(カイトリル)
オンダンセトロン(ゾフラン)
パロノセトロン(アロキシ注)
その他
③
センナ、センノシド
ピコスルファートNa(ラキソベロン)
ピサコジル(テレミンソフト坐)
コレスチラミン
リチウム
浣腸
直腸刺激薬
下痢を起こす抗がん剤
グリセリン
セツキシマブ・パニツムマブ
イリノテカン 他
治療戦略
① 腸管内容積の
増加
代表的薬剤
食事療法;植物繊維の多い食事
膨張性下剤;CMC-Na(バルコーゼ
®)
② 腸内浸透圧増加 浸透圧下剤;ラクツロース(適応外)
塩類緩下剤;酸化Mg(マグミット
®)
③ 腸管蠕動直接
刺激性下剤;センノシド
刺激
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
便秘対策薬剤
目的
分類
塩類下剤
用法・用量
カマ
1~3g(2~3回)
マグミット
1~3g(2~3回)
水酸化マグネシウム
ミルマグ
3~6錠(2~3回)
カルメロースナトリウム
バルコーゼ
1.5~6g(2~3回)
糖類
ラクツロース
モニラック
カロリールゼリー
10~60mL(2~3回)1
~3個
センナエキス
アローゼン
1~3g(2~3回)
センノシド
プルゼニド
1~4錠(眠前/起床時と眠
前)
大黄末
大黄末
0.3~0.5g/回
大腸刺激性下剤
大腸刺激性下剤
排便刺激
商品名
膨張性下剤
硬さの調節
大腸の蠕動刺激
一般名
酸化マグネシウム
ピコスルファートNa
ラキソベロン
(1錠=5滴)
5~30滴/2~6錠
(1日2~3回)
ピサコジル
テレミンソフト
1日1~2回(頓用)
新レシカルボン
1日1~2回(頓用)
複合剤
消化管全体の
蠕動刺激
セロトニン受容体刺激
モサプリド
ガスモチン
3~6錠(1日2~4回)
PGE1誘導体
ミソプロストール
サイトテック
4錠(1日4回)
どうしても出ない
塩類下剤
クエン酸Mg
マグコロールP
50g(頓用)
今朝お通じがありましたか?
午前中に下剤を
追加してください
寝る前までに
お通じがありましたか
寝る前に下剤をさら
に増やして下さい
これからは
下剤を朝と
寝る前に飲
んで下さい
今まで通り
下剤をのん
で下さい
便は普通の硬さでしたか
硬くて排便の
時痛みが
あった
下痢では
ないが軟
便だった
今晩から下
剤を増やして
下さい
今晩から下
剤を減らして
下さい
下痢になり
トイレに何
回か行った
今日は下剤を
飲まないで明
日から下剤を
減らして下さい
国立がんセンター中央病院薬剤部作成図を一部改変
あさひかわ緩和ケア講座 2013
オピオイドによる難治性便秘治療薬
•
•
•
•
•
進行疾患におけるオピオイド誘発性便秘に対するメチルナルトレキソンの効果
Methylnaltrexone for Opioid-Induced Constipation in Advanced Illness
J. Thomas and others
背 景 便秘は,オピオイド治療による副作用であり苦痛を伴う.μ オピオイド受容体拮抗薬のメチルナルト
レキソン(methylnaltrexone)は第 4 級アミンであるため,血液脳関門の通過能が限られている.進
行疾患患者において,オピオイド誘発性便秘に対するメチルナルトレキソン皮下投与の安全性と有効性に
ついて検討した. 方 法 オピオイド投与を 2 週間以上受け,安定用量のオピオイドと下剤の投与を 3 日
以上受けてもオピオイド誘発性便秘の軽減がみられない患者計 133 例を,メチルナルトレキソン皮下投
与群(用量 0.15 mg/kg 体重)とプラセボ群のいずれかに無作為に割り付け, 1 日おきに 2 週間投与
した.共通主要転帰は,試験薬初回投与後 4 時間以内の便通(排便),および最初の 4 回の投与のう
ち 2 回目以降の投与後 4 時間以内の便通とした.この段階を完了した患者を,3 ヵ月の非盲検延長試
験に適格とした. 結 果 初回投与後 4 時間以内に便通があった患者は,メチルナルトレキソン群で
48%,プラセボ群で 15%であった.また,最初の 4 回の投与のうち 2 回目以降の投与後 4 時間以内
に,応急的な下剤なしで便通があったのは,メチルナルトレキソン群で 52%,プラセボ群で 8%であった
(両比較について P<0.001).奏効率は,延長試験期間中も一定していた.便通までの時間の中央値
は,メチルナルトレキソン群のほうがプラセボ群よりも有意に短かった.中枢神経系オピオイド受容体を介
した離脱症状の所見,および疼痛スコアの変化は観察されなかった.もっとも頻度の高かった有害事象
は,腹痛と鼓腸であった. 結 論 メチルナルトレキソンの皮下投与は,進行疾患でオピオイド誘発性便秘
を有する患者において,便通を急速に誘発した.この治療による中枢性鎮痛薬の効果への影響はないと
みられ,オピオイド離脱症状を促進することもないようであった.(Clinical Trials.gov 番号:
NCT00402038)
(N Engl J Med 2008; 358 : 2332 - 43 : Original Article)
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
オピオイドによる嘔気・嘔吐
 主に化学受容器引き金帯(CTZ)を介して嘔吐
中枢を刺激することで起こる。
 体動時の嘔気・嘔吐は前庭神経・前庭神経核
への作用。めまい・ふらつきを伴う。
 便秘が二次的に嘔気・嘔吐の原因となりうる。
 投与開始から2週間程度で耐性形成
 頻度 経口モルヒネ:30~50%
デュロテップMTパッチ:30.3%
オキシコンチン:56.9%
トラマール:49.7%
あさひかわ緩和ケア講座 2013
13
オピオイドによる嘔気・嘔吐と制吐剤の選択
嘔気・嘔吐
モルヒネ
感情の動き
内耳 ②
前庭器
乗り物
酔い
経過状況
ex)暗示・連想・情動
大脳
大脳皮質
モルヒネ
モルヒネ
①
求心性神経
⑤ 胃内容物停留
→胃内圧の上昇
胃
5‐HT産生
→5‐HT₃受容体刺激
小腸
モルヒネ
便秘
③
第四脳室
CTZ ①
延髄
求心性神経
遠心性神経
嘔吐
機序・対策など
代表的薬剤
服用してか
ら、何時間
後に吐き気
生じたか?
各製剤の最高血中濃度到達時間 抗ドパミン薬:プロク
前後に吐き気を生じた場合には、ロルペラジンノ(ノバ
オピオイドが化学受容器引金帯 ミン)、ハロペリドー
を刺激すること原因の可能性
ル(セレネース)
どのような
状況で吐き
気を生じた
か?
自動車などの乗り物に乗った時、抗ヒスタミン薬:ジ
あるいはその後
フェンヒドラミン・ジ
体動時:前庭器からの刺激によ プロフィリン合剤(ト
る吐き気と考えられる
ラベルミン)
食事との関
係は?
食後に吐き気を生じた場合:モ 消化管運動促進薬:メ
ルヒネが胃内容物排出を抑制し、トクロプラミド(プリ
噴門括約筋の緊張を高めるため。ンペラン)、ドンペリ
対策:食事の時間とモルヒネの ドン(ナウゼリン)
最高血中濃度到達時間が重なら
ないようにする。
治療戦略①CTZのドパミン受容体遮断:ノバミン
②ヒスタミン受容体遮断:トラベルミン、ドラマミン
③CTZおよび腸管5-HT3受容体遮断:カイトリル他
④機序不明:ステロイド(デカドロン)
⑤胃内容排出促進:プリンペラン、ナウゼリン
⑥便秘対策
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
統合失調症治療薬の作用と副作用
嘔気・嘔吐の対策薬の薬剤
一般名
商品名
剤形
1回投与量
錠・散
プロクロルペラジン
①
ノバミン
ドンペリドン
①⑤
①⑤
クロルプロマジン
①
ハロペリドール①
プリンペラン
注
ナウゼリン
コントミン
セレネース
鎮静
錐体路
8時間
5mg
錠・散・液
メトクロプラミド
投与間隔
持続
コメント
第1選択薬 中枢作用
弱
少
まれ
まれ
注
錠・細・DS
5~10mg
坐剤
60mg
錠・散
5~12.5mg
8~24時間
注
10~50mg
持続
錠・顆粒
0.75mg
12~24時間
注
2.5~5mg
持続
錠
1錠
8時間
持続
8~12時間
まれ
まれ
強
少
強
高
ジフェンヒドラミン
ジプロフィリン②
トラベルミン
注
1A
頓用
ジメンヒドリナート②
ドラマミン
錠
50mg
6~8時間
ペロスピロン塩酸塩①
ルーラン
錠
4mg
8時間
弱
小
フマル酸クエチアピン①
セロクエル
錠
25mg
8時間
弱
小
なし
なし
ムスカリン受容体
遮断作用
用法上は筋注
αアドレナリン受容体
遮断作用
8~12時間
5~10mg
•口渇
•排尿困難
•便秘
•視力調節障害
効果が弱い
(中枢移行が少ない
+消化管運動亢進)
鎮静に注意する
アカシジアなど
の副作用あり
第2選択薬
前庭障害、めまい、体動
時の嘔気・嘔吐
高血糖に注意
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オピオイドによる眠気
(1)機序
 オピオイドによる中枢抑制作用により、催眠作用が生じ
る
(2)時期
 オピオイド開始後数日間、急激なオピオイドの増量
(3)オピオイド以外の原因
 脳転移、高Ca血症、感染症、水腎症
(4)対策
 通常は1週間程度で耐性形成
 腎機能低下の場合はモルヒネの減量やローテーション
あさひかわ緩和ケア講座 2013
受容体遮断作用
5­HT受容体
遮断作用
-
-
-
抗精神病薬
•起立性低血圧
-
ヒスタミン受容体
遮断作用
•ハロペリドール(セレネース)
•クロルプロマジン(コントミン)
•プロクロルペラジン(ノバミン)
D₂受容体
遮断作用
•鎮静作用
錐体外路症状
•パーキンソン病
•ジストニア
•ジスキネジア
•アカシジア
•遅発性ジスキネジア
-
-
-
抗精神病作用
鎮静作用
中脳辺縁系
非定型抗精神薬
•クロザピン
ドパミンD₂
受容体
•顆粒球減少症
内分泌障害
•抗プロラクチン血症
•女性化乳房
•月経障害
•体重増加
視床下部・下垂体系
黒質・線条体系
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④オピオイドによるせん妄
オピオイドによるせん妄
軽度から中等度の意識障害(よく診ないと捉え難い)に、錯覚や幻覚、
精神運動興奮、または活動性の低下を伴い、一日のうちで変動するもの
モルヒネによるせん妄出現率は投与初期約2%
(高齢者、全身衰弱患者)
原因
腎機能低下によりモルヒネ活性代謝物M-6-G蓄積
(※高Ca血症、感染、環境要因などせん妄の他の原因を除外)
<対応>① オピオイドの減量 ② オピオイドローテーション
③ リスペリドンの定期投与(0.5~1mg1X就寝前、適応外)
④ 規則正しい生活リズムの確保
⑤ 不安・心配事を減らす
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14
オピオイドによる呼吸抑制
モルヒネは直接脳幹の呼吸中枢に作用しCO2
の蓄積に対する呼吸反応を抑制
がん患者:鎮痛効果を確認しながらモルヒネ増量
重症の呼吸抑制は生じない
オピオイドによるその他の副作用
排尿障害
尿管平滑筋緊張収縮、膀胱括約筋緊張亢進による
症状:排尿障害、尿閉
対応:排尿筋収縮力↑:ベサコリン、ウブレチド
膀胱出口の圧↓:αブロッカー
病状変化や過量投与対応:ナロキソン注・ロルファン注
ナロキソン塩酸塩静注0.2mg
ロルファン注射液1mg
1.通常成人1回0.2mgを静脈内注射する。
効果不十分の場合、さらに2~3分間隔で
0.2mgを1~2回追加投与する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減する。
2.ナロキソン1A1mLを生食で10倍に
希釈、1回1mL(0.02mg)を静注→
呼吸数が10回/min以上を維持するように、
それ以下になる毎に同じ量を追加投与
麻薬及びその過剰量がわかっている場合 :
適当な比率で静脈内注射し、必要があれば次
いで3分間隔でその1/2量ずつ1~2回投与
する。
モルヒネ/ロルファンを50:1 で皮下又は静
脈内注射例・・・モルヒネ15mg及びロル
ファン0.3mg
かゆみ
肥満細胞刺激によるヒスタミン遊離
対応:抗ヒスタミン薬の投与
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
トラマドール
WHO方式がん疼痛治療法
成分
Ⅲ
Ⅱ
経度から中等度の
痛みに用いる
コデイン・トラマドール
Ⅰ
中等度から強度の
痛みに用いる
フェンタニル
モルヒネ
オキシコドン
NSAIDsまたはアセトアミノフェン(カロナール)
トラマールカプセル25・50mg
トラムセット配合錠
トラマドール塩酸塩25mg・50mg
トラマドール塩酸塩37.5mg・
アセトアミノフェン325mg
効能・効果
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な
下記疾患における鎮痛
疼痛を伴う各種癌
慢性疼痛
非オピオイド鎮痛剤で治療困難な
下記疾患における鎮痛
非がん性慢性疼痛
抜歯後の疼痛
用法・用量
通常、成人にはトラマドール塩酸塩と
して1日100~300mgを4回に分割
経口投与する。なお、症状に応じて適
宜増減する。ただし1回100mg、1日
400mgを超えないこととする。
75歳以上の高齢者では、本剤の血中
濃度が高い状態で持続し、作用及び副
作用が増強するおそれがあるので、1
日300mgを超えないことが望ましい
非がん性慢性疼痛 通常、成人には、
1回1錠、1日4回経口投与する。
投与間隔は4時間以上空けること。
なお、症状に応じて適宜増減する
が、1回2錠、1日8錠を超えて投
与しないこと。また、空腹時の投
与は避けることが望ましい。
必要に応じて鎮痛補助薬
抗うつ薬,抗てんかん薬,抗不整脈薬,NMDA受容体拮抗薬,
ステロイド等
半減期
約6時間
トラマドール塩酸塩:約6時間
効力比
モルヒネ:トラマドール=1:5
左に同じ
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
てんかん
感情障害(うつ病、躁病)
抑制性
GABA神経
抑制性5­HT 神経
NA神経終末
MAOによる
NA・セロトニンの
不活化を防ぐ
MAO阻害薬
セレギリン(エフピー)
-
NA
α₂受容体
MAO
複素環系抗うつ薬
アミトリプチリン(トリプタノール)
アモキサピン(アモキサン)
ミアンセリン(テトラミド)
-
IP
IP₃
IP₂
MAO:モノアミン酸化酵素
SNRI
興奮性
Na⁺チャネル
NA:ノルアドレナリン
5­HT:セロトニン
治療戦略
①ノルアドレナリン再吸収阻害
②選択的セロトニン再吸収阻害
③MAO阻害
SSRI:選択的セロトニン再吸収阻害薬
あさひかわ緩和ケア講座 2013
+
-
:刺激
:抑制
抑制性
Cl⁻チャネル
バルビタール酸
結合部位
不活化遅延
PIP₂
後シナプス神経
①電位作動性Na⁺チャネルの抑制
②抑制性GABA作動性神経刺激↑
③興奮性Ca²⁺チャネルの抑制
GABA
結合部位
Na⁺
NA
α₁受容体
治療戦略
バルプロ酸
Cl⁻
SSRI
フルボキサミン(デプロメール)
パロキセチン(パキシル)
ミルナシプラン(トレドミン)
-
?
-
5‐H
T
-
NA再吸収ポンプ
GABA
分解酵素
-
-
フェニトイン
カルバマゼピン
バルプロ酸?
?=臨床的意義が不明である作用
Ca²⁺
BZD結合部位
+
+
フェノバルビタール
脳神経細胞
ジアゼパム
クロナゼパム
-
バルプロ酸
エトスクシミド
興奮性T型
Ca²⁺チャ
ネル
BZD:ベンゾジアゼピン
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15
炎症(副腎皮質ステロイド)
不整脈
内因性カテコールアミン
+
電気的除細動
Na⁺チャネル阻害薬(Ⅰ群)
ⅠA:キニジン、ジソピラミド
ⅠB:リドカイン、メキシレチン
ⅠC:フレカイニド
+
Β遮断薬(Ⅱ群)
プロプラノロール
アテノロール 等
(mV)
0相
多チャネル阻害薬(Ⅲ群)
アミオダロン
ソタロール
3相
4相
-80
Na⁺
Ca²⁺
強
副腎皮質
半減期
ヒドロコルチゾン 短
プレドニゾロン
メチルプレドニゾロン
トリアムシノロン
デキサメタゾン
ベタメタゾン
長
アルドステロン
Na⁺再吸収↑
浮腫
高血圧
K保持↓
抑制
-
2相
0
憎悪因子
鉱質ステロイド作用
抗炎症効果
弱
負の
フィードバック
-
-
活動電位
治療戦略
①不整脈誘発要因除去
②Na⁺チャネル阻害
③β受容体遮断
④K⁺チャネル阻害
⑤Ca²⁺チャネル阻害
ACTH
分泌抑制
ACTH
電解質異常
低酸素血症
心不全
心筋刺激薬
1相
糖質ステロイド作用
脳
-
Β₁受容体刺激
頻脈
興奮性増加
Ca²⁺チャネル阻害薬(Ⅳ群)
ベラパミル
ジルチアゼム
Na⁺ K⁺
受容体
蛋白
コルチゾール
ホスホリパーゼA₂
阻害
クッシング症候群
糖利用↓
蛋白異化↑
脂肪異化↑
骨吸収↑
組織修復反応↓
中枢機能↑↓
眼圧↑
炎症
特異的
蛋白合成
抗炎症作用
細胞外
心筋細胞膜
免疫抑制作用
細胞内
易感染性
血液凝固能
あさひかわ緩和ケア講座 2013
糖尿病
糖尿病
成長遅延
成長遅延
骨粗鬆症
消化性潰瘍
消化性潰瘍
躁・うつ状態
躁・うつ状態
緑内障
白内障
白内障
血液凝固能
腎臓
あさひかわ緩和ケア講座 2013
炎症~ステロイドの種類と作用の比較
一般名
商品名
ヒドロコルチゾン
コートリル®サクシ
ゾン®
抗炎症作用
生理的一日
分泌相当量
(mg)
鉱質ステロイ
ド作用
生理学的
半減期
(時間)
1
20
1
8~12
コルチゾン酢酸エステル
コートン®
8
25
0.8
8~12
プレドニゾロン
プレドニン®
4
5
0.3
18~36
メチルプレドニゾロン
メドロール®
5
4
0
18~36
トリアムシノロンアセトニド
ケナコルト-A®
5
4
0
18~36
デキサメサゾン
デカドロン®
30
0.75
0
36~54
ベタメタゾン
リンデロン®
35
0.6
0
36~54
患者情報による剤形の選択
あさひかわ緩和ケア講座 2013
薬が飲み込めなくなったら
あさひかわ緩和ケア講座 2013
抗がん剤の皮膚障害で貼付剤も使えない
経口薬
オキシコドン錠
モルヒネ徐放剤
経口
貼付剤
各種注射剤・貼付剤・坐剤
モルヒネ注
オキシコドン
注
フェンタニル
注
フェンタニル
貼付剤
モルヒネ坐剤
注射剤
(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン)
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
16
症例6 62歳,男性,S状結腸癌・頭蓋低転移
下
血
で
当
院
受
診
手
術
12
/
16
P
E
T
傍
大
動
脈
領
域
リ
ン
パ
節
転
移
FOLFIRI
mFOLFOX
U
2コース
F P
6コース
4/28・
T E
1/19~4/14
5/12
T
頭
蓋
低
転
移
放
Bmab+
射 mFOLFOX6 線
5コース
10 11/24‐1/19
/
28
~
11
/
11
Cmab+ Pmab+
CPT‐11 CPT‐11 32コース 25コース
8/31‐ 8/29‐
8/5
12/5
皮膚障害
Grade2
Bmab+
FOLFIRI
13コース
2/3‐8/17
オキシ
コドン5
mg10/7
10mg10
/14~10/
26
食
摂
困
難
入
院
1
2
/
1
2
セ
カ
ン
ド
オ
ピ
ニ
オ
ン
12
/
16
在
宅
療
養
3/
15
~
フェンタニル貼付 フェンタニル貼付
剤2.1mg10/26 剤8.4mg
4.2mg 11/29
6.3mg12/6
12/15~
モヒ注
注
10mg
12/22~
12/22
2月 3月4月5月6月・・10月11月12月1月2月3月・・8月・・・・・・7月・・・12月・・・3月・・5
12月・・・1月
月
あさひかわ緩和ケア講座 2013
症例3 62歳 男性 直腸癌・頭蓋低転移
 X年8月頃~:反回神経麻痺による誤嚥性肺炎で入退院繰り
返し。 頭蓋低転移による頭痛のためオピオイ
ド導入(オキシコド ン)も嚥下が困難なた
め、
早期にフェンタニル貼付剤へオピオイドロー
テーション。分子標的薬セツキシマブによる
皮膚症状でフェンタニル貼付剤の効果不安定
 X年11月下旬:気管切開
 X年12月~フェンタニル貼付剤にモルヒネ注10mg/日を
併用し、疼痛コントロール良好
 X年12月16日:セカンドオピニオンを受診
「予後は雪が溶けるまで」
 X+1年3月15日:ペインブロッカーポンプを装着し
在宅療養開始
あさひかわ緩和ケア講座 2013
患者の経済的要件からみた選択
販売名
規格
薬価(¥)
1日薬価
1か月のコスト
オキシコンチン錠
20mg
523.00
40mg/日
等鎮痛用量
分2
1046.00
31380円
MSコンチン錠
30mg
706.8
60mg/日
分2
1413.6
42408円
41109円
ピーガード錠
60mg
1370.3
60mg/日
分1
1370.3
カーディアンスティック
60mg
1384
60mg/日
分1
1384
41520円
パシーフカプセル
60mg
1440.3
60mg/日
分1
1440.3
43209円
MSツワイスロンカプセル
30mg
559.6
60mg/日
分2
1119.2
33576円
モルペス顆粒
6%1g
1088.3
6%1包
(0.5g)×2
分2
1088.3
32649円
デュロテップMTパッチ
4.2mg
3467.80
4.2mg/3日
3467.80
34678円
フェントステープ
2mg
1063.6
2mg/日
1063.6
31908円
メサペイン錠
5mg
178.3
15mg/日
534.9
16047円
分3
A医師:今の痛み
止めに変えて
NSAIDsをオピオイド開始時に中
止してはいけないのはなぜですか?
*添付文書上ではモルヒネ:デュロテップMTパッチ・フェントステープ=1:150であるがこの表では1:100として計算
*薬価;2012度新薬価で計算
あさひかわ緩和ケア講座 2013
オピオイド開始時
NSAIDsを中止してはいけない理由
あさひかわ緩和ケア講座 2013
癌発生メカニズムとNSAIDsの鎮痛作用点
PGによる受容器の
過敏化(感化)
 オピオイドにはないNSAIDsのがん疼痛鎮痛メカニズム
『進行がんが周囲組織に浸潤しその細胞膜から遊離した
アラキドン酸にシクロオキシゲナーゼ(酵素)が働き、
プロスタグランジン(PG;痛覚過敏形成)が発生
NSAIDsはシクロオキシゲナーゼの働きを阻害』
 NSAIDs中止により疼痛悪化しオピオイドを急速増量す
るとオピオイドの副作用対策が必要
 NSAIDsによる腎血流量の低下、消化管障害に注意
あさひかわ緩和ケア講座 2013
ブラジキニン、H⁺等の発熱物
質による受容器刺激
NSAIDs
末梢性作用
:COX阻害作用に
よる過敏化抑制
大脳皮質
視床
刺激インパルス発生
腫瘍周囲
炎症
後策
後角
癌組織
NSAIDs
中枢性作用
:モルヒネ鎮痛作用
を増強
:鎮痛耐性を抑制
2次ニューロン線
維
痛覚繊維
(1次知覚線維)
前角
1次ニューロン細
胞体
受容体への直接刺激
または痛覚刺激への浸潤
前策
脊髄
:発痛物質(ブラジキニン、H⁺等)
:侵害受容器(痛覚神経終末)
:疼痛関連PG(プロスタグランジン):PGE₂、PGI₂
:シナプス構造 あさひかわ緩和ケア講座
2013
17
テキスト疾患編P7
COX-2阻害薬:COX-2を選択的に阻害するため、
消化管、血小板に対する副作用を減らすことができる。
細胞膜
リン脂質
COX-2選択性
アラキドン酸
ステロイド
ホスホリパーゼA2(PLA2)
COX-1
アラキドン酸
シクロオキシゲナーゼ
構成酵素:ほとんどの細胞に常
に発現
NSAIDs
(COX-1,COX-2)
誘導酵素:主に炎症部位の細
胞に発現
非選択的NSAID
プロスタグランジン(PG)G2
高
セレコックス
ハイペン
モービック
ボルタレン
ロキソニン
クリノリル
ブルフェン
ナイキサン
インダシン
ロピオン
エパテック
低
COX-2
両方を非選択的に阻害する
COX-2阻害薬
COX-2を阻害し、
COX-1に影響しない
PGH2
PGEs
PGA2
PGF2α
血管拡張
発熱、発赤
炎症性疼痛
胃粘膜保護
PGIs
TXs
PGAs
PGE2
トロンボキサンA2
PGI2
血小板凝集
痛覚刺激
血管拡張
腎血流維持
抗血栓作用
プロスタグランジン
胃粘膜保護
血小板凝集
腎機能維持
プロスタグランジン
炎症、発痛、浮腫
炎症反応に関与?
生体保護に関与?
横田敏勝:臨床医のための痛みのメカニズム 改訂第2版. 東京, 南江堂, 71-90, 1997より作図
あさひかわ緩和ケア講座 2013
あさひかわ緩和ケア講座 2013
消化性潰瘍の治療戦略
腫瘍の血管新生阻害作用あり?→エビデンスが弱
い→判定保留
国内で使用可能なCOX-2阻害薬:選択性強い順
セレコキシブ(セレコックス)>メロキシカム
(モービック)>エトドラク(ハイペン)
消化性潰瘍リスクは低いが、腎障害リスクについ
ては未確定
血栓形成、心毒性など未知の面あり
あさひかわ緩和ケア講座 2013
消化性潰瘍治療薬
粘膜保護剤
スクラルファート
制酸剤
マーロックス®
アルミゲル
H⁺
H⁺
H⁺
粘液分泌
ピロリ菌除菌
タケプロン® +
アモキシシリン+
クラリスロマイシン
H⁺
H⁺
H⁺
粘膜筋板
アセチルコリン
ヒスタミン
H⁺逆拡散
+
壁細胞
H⁺
H⁺
H⁺ポンプ
-
腹痛
ムスカリン
受容体
H₂ヒスタミ
ン受容体
-
プロスタグランジン製剤
ミソプロストール
プロトンポンプ阻害薬
タケプロン®
オメプラゾール
H₂受容体遮断薬
シメチジン
ファモチジン
代表的薬剤
胃酸の中和
制酸剤;マーロックス®
②
胃酸分泌刺激の遮断 H2受容体拮抗薬;ファモチジンほか
抗コリン薬;ピレンゼピン
③
胃酸産生の抑制
④
胃粘膜損傷部の保護 粘膜保護剤;スクラルファート
プロスタグランジン誘導体;ミソプロストー
ル(サイトテック®)
⑤
粘膜傷害因子の除去 ピロリ菌の除去療法;タケプロン®+クラリ
スロマイシン+アモキシシリン
プロトンポンプ阻害薬;ランソプラゾール
(タケプロン®)
あさひかわ緩和ケア講座 2013
症例5の眠気の原因と処方変更
H⁺
ピロリ菌
H⁺
粘液バリア
重炭酸イオン
治療戦略
①
-
抗コリン薬
プロパンテリン
選択的抗ムスカリン薬
ピレンゼピン
あさひかわ緩和ケア講座 2013
案
• Cockcroft & Gault式から推定クレアチニンクリアラ
ンスを求める
• (140-70歳)×50kg
72×(1.28+0.2)
=32.8mL/min.
*腎機能障害あり→モルヒネ代謝物M-6G体内蓄積の可
能性大→傾眠、反応鈍い
*高Ca血症の可能性は? 血清Caを補正すると
8.5-3.0+4=9.5mg/dL 高Ca血症はなし
*肝性脳症の可能性は?
アンモニアは正常値
MSコンチンをオキシコンチンまたはMTパッチへ変更
あさひかわ緩和ケア講座 2013
18
剤形別オピオイド製剤 覧
剤形別オピオイド製剤一覧
Take Home Message!
 くすり(オピオイド鎮痛薬)は、受容体と結合
してはじめて効果や副作用をあらわすことがで
きる
 くすり(オピオイド鎮痛薬)の効果や副作用に
は個人差がある
 上記の2点を踏まえて、患者のQOLを高めるく
すり(オピオイド鎮痛薬)の使い方は医療者の
責務である
剤形
一般名
性状
速効性
モルヒネ塩酸塩
経口製剤
モルヒネ硫酸塩
オキシコドン
モルヒネ塩酸塩
貼付製剤
フェンタニル
キャンディタイプ
フェンタニル
モルヒネ塩酸塩
注射製剤
フェンタニル
オキシコドン塩酸塩
あさひかわ緩和ケア講座 2013
規格
10mg
速効性
モルヒネ塩酸塩末(第一三共、武田、シオノギ)
現末
速効性
オプソ内服液(大日本住友)
5mg/2.5mL、10mg/5mL
持続性
パシーフカプセル(武田)
30mg、60mg、120mg
持続性
MSコンチン錠(シオノギ)MSツワイスロンカプセル(日本化薬)
10mg、30mg、60mg
持続性
モルペス細粒(藤本)
持続性
カディアンカプセル(大日本住友)
20mg、30mg、60mg
持続性
カディアンスティック(大日本住友)
30mg、60mg、120mg
持続性
ピーガード錠(田辺三菱)
20mg、30mg、60mg、120mg
持続性
オキシコンチン錠(シオノギ)
5mg、10mg、20mg、40mg
速効性
オキノーム散(シオノギ)
2.5mg、5mg
メサドン塩酸塩錠
坐剤
商品名(会社名)
モルヒネ塩酸塩錠(大日本住友)
10mg、30mg
メサペイン錠(テルモ)
5mg、10mg
持続性
アンペック坐剤(大日本住友)
10mg、20mg、30mg
持続性
デュロテップMTパッチ(ヤンセン)
2.1mg,4.2mg,8.4mg,12.6mg,16.8mg
持続性
フェントステープ(協和キリン、久光)
1mg,2mg,4mg,8mg,12mg
速効性
アクレフ(田辺三菱)未発売
200μg、400μg
モルヒネ塩酸塩注(シオノギ、武田、田辺三菱)
アンペック注(大日本住友)
10mg/1mL、50mg/5mL
200mg/5mL
プレペノン注(テルモ):プレフィルド製剤
10mg/1mL、50mg/5mL。200mg/5mL
フェンタニル注(第一三共、ヤンセン)
0.1mg/2mL、0.25mg/5mL
オキファスト注(シオノギ)
10mg/1mL, 50mg/5mL
あさひかわ緩和ケア講座 2013
麻薬の管理 Q&A(1)
参考文献
1)各モルヒネ,フェンタニル,オキシコドン製剤,トラマールカプ
セル,メサペイン錠インタビューフォーム
2)日本緩和医療学会:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン,
東京,金原出版,2010
3)鈴木勉他:がん疼痛管理はじめの一歩,薬局,2861-2941,2007
4)WHO編,武田文和訳:がんの痛みからの解放-第2版,金原,2003
5)越前宏俊:図解薬理学,医学書院,2008
6)加藤隆一:臨床薬物動態学,南江堂
7)加藤隆一・田中千賀子:New薬理学,南江堂
あさひかわ緩和ケア講座 2013
麻薬の管理 Q&A(2)
Q2)入院中の患者に処方された麻薬は誰が保管・管理する
のですか。
A2)入院患者自身が服薬管理できる状況であれば、患者
に必要最小限の麻薬を保管させることは差し支えありませ
ん。患者自身が麻薬を保管する際には、看護師詰所等で保
管する場合のような麻薬保管庫等の設備は必要ありませが、
紛失等十分注意するように指導してください。また、病状
等からみて患者が服薬管理できないと認めるときは、麻薬
管理者は、交付した麻薬を病棟看護師詰所等で保管・管理
するようにして下さい。看護師は施用の状況を把握するた
め患者に確認するなどして、施用毎に診療録へ記録する必
要があります
あさひかわ緩和ケア講座 2013
Q1)麻薬の保管は鍵をかけた堅固な専用金庫で行うことと
されていますが、坐薬が溶ける恐れがある場合、薬剤保管
庫室内の冷蔵庫に保管してよいですか。
A1)麻薬の保管は、麻薬及び向精神薬取締法34条におい
て、その業務所内で鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行
うことと規定されており、設問のような冷蔵庫は鍵をかけ
た堅固な設備とはいえません。したがって、設問のような
ケースでは坐薬が溶けないように麻薬保管庫の場所を変更
するか、設置している場所の室内温度を管理できるよう改
善するなどの方法をとって下さい。
あさひかわ緩和ケア講座 2013
麻薬の管理 Q&A(3)
Q3)麻薬診療施設でない病院に入院している患者が他院で交付
を受けた麻薬を服用する場合、病院内においては誰が保
管・管理したらよいのですか。
A3)患者本人若しくは患者の看護に当たる職員または患者の家族
等が保管・管理してください。
Q4)麻薬診療施設でない介護老人施設(介護保険法に規定)に
入所する者が、他の医療機関において処方された麻薬を持
ち込む場合、認知症などの理由で自ら麻薬を服用管理でき
ない時は、施設側で麻薬を管理しても差し支えありませんか
A4)患者自身が麻薬を管理できない状況にあるときは、施設内に
おいて患者の看護に当たる看護師やヘルパーが、患者等の意
を受けて麻薬を保管・管理しても差し支えありません。
あさひかわ緩和ケア講座 2013
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麻薬の管理 Q&A(4)
Q5)入院患者に交付された麻薬を病棟看護師詰所で保管する場合は、麻薬保管庫
等に保管しますが、患者自身が管理・保管する際にも同様な保管庫の設置は
必要ですか。
A5)入院患者自身が処方された麻薬を保管する際には、麻薬保管庫等の設備は必
要ありません。しかし、紛失等の事故防止を図るため、患者に対しては保管
方法を助言するとともに、服用状況等を随時聴取したうえで施用記録等に記
録する必要があります。
Q6)介護が必要なグループホームの入居者に対し、医師が往診等により麻薬を処
方した場合、自ら麻薬を保管・管理できない入居者に対しては、介護を行う
職員(看護師・介護福祉士・ヘルパー等)が麻薬を管理し、患者に服薬させ
ることは可能ですか。可能であれば、麻薬の管理にあたっては、麻薬業務所
と同様の基準で保管・管理させ、帳簿も記載させる必要はありますか。
A6)グループホームの職員が患者の意を受けて麻薬を保管・管理することは差し
支えありません。保管・管理する麻薬について、紛失事故等がないように保
管庫の設備や帳簿による数量管理を行うと便利です。
あさひかわ緩和ケア講座 2013
麻薬の管理 Q&A(5)
Q7)在宅の患者が死亡し、飲み残した麻薬が遺族(相続人等)から
返却された場合、どうすればよいですか。
A7)麻薬及び向精神薬取締法第24条第1項第3号の規定における、
遺族(相続人等)から譲り受けた麻薬として廃棄することにな
りますので、麻薬処方せんにより調剤された麻薬として、麻薬
管理者(または麻薬施用者)が他の職員の立会いの下で廃棄
し、30日以内に知事に調剤済麻薬廃棄届を提出してください。
Q8)他の病院に通院していた患者が来院し、飲み残した麻薬を持参
してきた場合、どのように扱えばいいですか。
A8)患者が持参した麻薬を引き続き施用する必要がある場合は、麻
薬受払簿のその口座の譲受数量欄に数量を( )書で記載し、
残高には加えず、備考欄に麻薬を譲り受けた患者の氏名および
入院後施用した旨を記載してください。
あさひかわ緩和ケア講座 2013
麻薬の管理 Q&A(6)
Q9)末期がんの患者が死亡し、残された未使用の持続注入器に詰め
られた麻薬について、どのような処理をすればよいですか。
A9)持続注入器に詰められた未使用の麻薬は、調剤された麻薬です
ので、麻薬管理者(または麻薬施用者)が麻薬診療施設の他の
職員の立会いの下で廃棄し、30日以内に知事に調剤済み麻薬
廃棄届を提出してください。
Q10)再入院・転院により患者が持参した麻薬を引き続き服用させ
る場合、服用の都度、診療録への記載が必要ですか。
A10)病棟における患者の麻薬の服用は、医師の指示のもとに行わ
れるものであることから、診療録に記載することが必要です。
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