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住宅に関する税制優遇制度 ~住宅ローン控除~

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住宅に関する税制優遇制度 ~住宅ローン控除~
2011 年 3 月
住宅に関する税制優遇制度 ~住宅ローン控除~
CFP 1級ファイナンシャル技能士
宅地建物取引主任者
金子 千春
現在は、景気対策の一環として、住宅ローンを組んだ際の減税、住宅を取得した際の登録免許税の減税、
住宅保有時にかかる固定資産税の減税など、様々な住宅取得に対する優遇制度が設けられています。これら
の制度は、根本的には景気対策として政府が制定しているものですので、期間が定められているものがほと
んどです。今後住宅取得を考えている人は、制度をうまく活用しつつ、計画的に住宅取得したいものですね。
◆住宅ローン控除ってどんな制度?◆
皆さんが良く耳にする住宅ローン控除はどんな制度でしょうか?
これは住宅ローン等を利用して、マイ
ホームを購入・新築・増改築等した場合で一定の要件を満たしたときに、その住宅ローンの年末残高のうち
一定割合を、マイホームに居住した年以後 10 年間、所得税額から控除できる制度です。
仮に平成 23 年に入居、平成 23 年 12 月末時点での住宅ローン残高が 3,000 万円とすると・・・・・・
例)一般住宅の場合は控除率1% ⇒ 所得税から控除できる控除枠は 30 万円
でも、実は 30 万円すべてが戻ってくるわけではありません。支払った所得税額が限度となるので、仮にこ
の年に支払った所得税が 25 万円であった場合には、25 万円が還付され、残りの5万円の枠は使えないこと
になります。
とはいえ、それではちょっと困りますよね。もし、所得税から控除しても控除しきれなかった場合には、
残りの枠については、住民税から一定額(課税総所得金額等の 5%か 97,500 円どちらか少ない金額まで)を
控除してもらえます。
ちなみに、適用を受けられる割合等は、認定長期優良住宅と一般住宅によって異なり、認定長期優良住宅
については、一般住宅と比較して優遇されています。
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<平成 21 年から平成 25 年までに居住を開始した場合の控除額>
居住年
一
H21 年
~5,000 万円
1~10 年
1%
50 万円
500 万円
般
H22 年
~5,000 万円
1~10 年
1%
50 万円
500 万円
住
H23 年
~4,000 万円
1~10 年
1%
40 万円
400 万円
宅
H24 年
~3,000 万円
1~10 年
1%
30 万円
300 万円
H25 年
~2,000 万円
1~10 年
1%
20 万円
200 万円
H21 年
~5,000 万円
1~10 年
1.2%
60 万円
600 万円
H22 年
~5,000 万円
1~10 年
1.2%
60 万円
600 万円
~5,000 万円
1~10 年
1.2%
60 万円
600 万円
H24 年
~4,000 万円
1~10 年
1%
40 万円
400 万円
H25 年
~3,000 万円
1~10 年
1%
30 万円
300 万円
長
期
優
良
住
宅
H23 年
控除期間
10 年間
10 年間
年末借入金残高
控除率
各年の最高控除額
10 年間の最高控除額
種類
上記表の 10 年間の最高控除額ですが、これはあくまで 10 年間ずっと年末の住宅ローン残高が 5,000 万円以
上(平成 23 年認定長期優良住宅に入居の場合)ありつづけたら・・・の話です。必ずこの金額の控除が受け
られるわけではないのでご注意を。10 年間、年末のローン残高が 5,000 万円以上ありつづける住宅ローンを
組む人は、そんなに多くはいないですから、この最大控除額の恩恵を受けられる人は実は意外に少ないはず。
◆どんな場合に受けられるの?◆
この制度、どんな場合にでも受けられるわけではありません。受けられる人、対象となる住居など、規定
があるので確認してみましょう。
<適用が受けられる主な要件>
・借入金によって一定の住宅の購入、新築、一定の増改築、大規模修繕等をした場合。
・借入金について年末に残高があること。
・日本国内に居住していること。
・取得等の日から 6 ヶ月以内に自己の居住の用に供し、適用をうける年の各年末まで引き続き居住すること。
また、適用を受ける年の合計所得金額が 3,000 万円以下であることも要件のひとつです。高収入の人には、
減税は必要ない、ということですね。ただし、3,000 万円を超えた年だけ適用が受けられないだけで、3,000
万円以下の年については適用可能です。
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<適用対象となる住宅など>
この制度は、新築住宅の購入、新築した場合だけでなく、中古住宅を購入した場合や増改築、大規模修繕
を行った場合でも適用を受けることができます。ただし、住宅購入・新築の場合には、
・登記上の床面積が 50 ㎡以上で、その建物の 2 分の 1 以上が居住用であること。
・中古住宅の場合には、その建物が取得の日以前 20 年以内(耐火建築物は 25 年以内)に建築されたもの
であること、または一定の耐震住宅であること。
といった条件を満たしていることが必要です。特に、登記上の床面積が 50 ㎡以上という点には注意が必要
です。というのも、マンションの物件パンフレット上の床面積は、通常、壁の中心線を基準とした壁芯計算
で出されたもの。一方、登記上の床面積は、壁や柱の内側の線を基準に計算する内法計算で出したものです。
ワンルームマンションなどを住居用として購入した場合、パンフレット上の床面積が 50 ㎡でも、登記上の床
面積が 50 ㎡なくて住宅ローン控除が使えなかった、ということになっては大変ですから、しっかり確認しま
しょう。
増改築・大規模修繕の場合の要件は、以下のとおりです。
・増改築後の床面積が 50 ㎡以上で、かつ建物の床面積の 2 分の 1 以上が居住用であること。
・増改築等または一定のバリアフリー改修工事の工事費、一定の省エネ改修工事の工事費が 100 万円以上、
かつ居住用部分の工事費が全体の 2 分の 1 以上であること。
◆親戚から借りたお金でも控除の対象になる?◆
住宅を購入等するためにしたローンであれば、どんなローンでも控除の対象となるわけではありません。
まず、親や親族からの借入ではなく、金融機関、勤務先などからの借入であることが条件です。ちなみに、
勤務先からの借入の場合には、年1%以上の金利がついていることが必要なので、利子補給が多く、1%未
満になってしまうケースでは、
「ローン控除を受けることで得られる効果」と「金利差によって得られる効果」
とを比較したうえで、どちらを利用するのが良いか、判断することになります。そのほかにも、以下のよう
な要件があります。
・償還期間が 10 年以上であること。
(繰上げ返済や借換えをした場合で、結果的に、最初の返済日から借入
金完済までの期間が 10 年未満になるときには、以後の期間は適用不可なので要注意)
・借入金の返済は、1年以下の期間を単位として定期的に返済を行うものであること。
・建物の取得等のための借入金、または建物とその敷地を取得するためのものであること。
(敷地のみの取得に関わる借入金については適用不可)
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◆手続きを受けるには?◆
この制度の適用を受けるためには、適用を受ける年ごとに必要な書類を添付して確定申告をしなければな
りません。ただし、年末調整で申告・納税が終了するサラリーマンの場合には、適用を受ける最初の年だけ
確定申告を行えば、翌年以降については、年末調整でこの控除の適用を受けることができるのでご安心を。
では、住民税からも還付を受けられる人についてはどうでしょうか? 実は、以前は別途、住民税につい
て手続きをしなければなりませんでしたが、平成 22 年からは、サラリーマンは年末調整で(初年度は所得税
の確定申告必要)、確定申告者は所得税の確定申告をすることで、自動的に住民税についても還付が受けられ
るようになっています。
ここで注意点。住民税からの控除もしてもらえる人は、手続きが必要なくなったため、住民税が自動的に
少なくなっています。ただし、住宅ローン控除の期間終了後は、住民税ももとに戻り、増えることになりま
す。手続きが不要になったことで、住宅ローン控除で住民税が少なくなっているという自覚が薄れてしまい
がちですので、必ず内容は把握し、11 年目からは所得税・住民税が増える可能性がある、ことは忘れずに!
◆転勤したら住宅ローン控除は受けられない?◆
せっかくマイホームを購入しても、転勤等で住めなくなった、ということは良くあるケースですよね。で
は、住宅ローン控除の適用期間中に転勤命令が出て、その住宅に居住しなくなった場合にはどうなるのでし
ょうか?
そんな場合でも、再びその住宅に住むことになり、かつ住宅ローン控除の控除期間がまだ残っているとき
には、再居住年以後の残った期間について、住宅ローン控除を受けることができます。
ただし、単身赴任となり、家族がその住宅に住み続けている場合には、単身赴任期間中も終了後も、要件
を満たしていれば、控除の適用を受けることが可能です。ちなみに、海外に単身赴任等をして、その年の 12
月 31 日現在、非居住者になっている場合には、適用を受けられないのでご注意を。
また、家族全員で転居し、将来、住宅ローンの再適用を受けるためには、転出前(居住の用に供しなくな
る日まで)に、
「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」と、税務署から交付された「年末調
整のための住宅借入金等特別控除証明書」
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」の未使用分を税務署
に提出しなければなりません。
さらに、実際に、再適用を受ける最初の年には、改めて所定の書類を添付して確定申告を行うことも条件
となります。転居があった場合には、転居前、転居後で手続きが複雑になるので、実際に利用する際には、
きちんと税務署等に手続きを確認したうえで、漏れのないようにしたいものですね。
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※ 本レポートは、平成23年4月1日現在での制度に基づいております。
情報提供を目的としているものですので、実際の利用や詳細については、最寄りの税務署や税理士など
の専門家にご確認ください。
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