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スチュワードシップ活動の概要 2015 年

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スチュワードシップ活動の概要 2015 年
スチュワードシップ活動の概要 2015 年
2015 年 9 月 30 日
りそな銀行
信託財産運用部
アセットマネジメント部
はじめに
当社は、2014 年 4 月「責任ある機関投資家」の諸原則《日本版スチュワードシップ・コ
ード》(以下、本コード)の趣旨に賛同し、信託財産等の運用業務において本コードの受
け入れを表明しました。以前より国連責任投資原則(PRI: Principles for Responsible
Investment)への署名を通して責任投資に対する取組みを実施してきましたが、本コード
を受け入れることにより、「責任ある機関投資家」として活動する姿勢を明確化するとと
もに、その活動を確固たるものとするために設置した「責任投資会議」を通して、本取組
みの更なる改善を図っています。
当レポートは、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきと定められている原則 6
を踏まえ、スチュワードシップ活動について報告するものです。2015 年 2 月に「スチュワ
ードシップ活動の概要 2014 年」を初めて公表、今回は 2 回目となります。主に 2014 年
7 月から 2015 年 6 月末までのスチュワードシップ活動の概要を説明しています。前回の報
告内容と大きな変更はありませんが、ESG の分析例、建設的な対話内容などを付加してい
ます。
本報告を通して、顧客・受益者や投資先企業の間で当社のスチュワードシップ活動内容
へのご理解を少しでも深めていただくことができれば幸いと考えています。
1
1. スチュワードシップ・コードの諸原則に対する方針
本コードでは 7 つの原則が示されており、これら原則に対する方針は以下の通りです。
原則1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、
これを公表すべきである。
当社は、信託財産等の運用にあたり、中長期的な観点からお客さまの利益の拡大を図
る姿勢を明確化するために、「責任投資にかかる基本方針」を定めています。
-責任投資にかかる基本方針-
1. 基本方針
信託財産等の運用にあたっては、環境・社会・企業統治(ESG : Environmental,
Social and Corporate Governance)にかかる課題を含む投資対象の状況を十分に
把握・検討し、中長期的に安定した付加価値の追求に努める。
2. 目的
本方針は、専ら受益者の利益のため、信託財産等の価値の増大を図るための運用
戦略上の手段として適切な行動を促すことを目的とする。
3. 具体的行動
本方針を具体化する行動として、以下の取組みを実践する。
・投資の意思決定プロセスへのESGの組込み
・投資先企業との建設的な対話
・受託者として適切な議決権行使
この「責任投資にかかる基本方針」に沿った具体的行動・取組み状況は「責任投資会
議」に報告されます。同会議では企業価値向上に資する行動ができているかどうか継続
的にモニタリングを行うと同時に、取組みのさらなる工夫・改善を検討し、実行に移し
ていきます。
2
原則2. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反に
ついて、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
当社は、責任投資の取組みを、専ら受益者の利益のため、信託財産等の価値の増大を
図るための運用戦略上の手段として位置付けています。責任投資の取組みにあたり受託
者として予め想定される利益相反については、規定・体制両面を整備し適切に管理しま
す。
りそなグループではグループ利益相反管理方針を定めています。当社は同グループ方
針の主旨に則って「利益相反管理方針」を定めるとともに、利益相反のおそれがある取
引等を特定・類型化し、あらかじめ管理方法(部門の分離、お客さまへの開示、取引条
件の変更、その他)を定めて管理することにより、当社およびグループ会社とお客さま
との間、あるいはお客さまと他のお客さまとの間で発生する利益相反を防止する体制を
整えています。
<参考> 利益相反管理方針の概要
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/util/souhan.html
当社は、信託財産等の運用業務において、グループ会社株式の売買や信託財産で保有
する株式の議決権行使などを利益相反のおそれがある取引等として特定・類型化し、当
社およびグループ会社と受益者との間、あるいは当社およびグループ会社の取引先企業
と受益者との間で発生するおそれがある利益相反を適切に管理するため、信託財産運用
部署と他の部署を組織的に分離するなどの対応をしています。
責任投資の取組みとの関連においては、信託財産等からの投資先企業にかかる議決権
行使について、信託財産運用部署内に設置した「責任投資会議」で行使基準および議案
の審議を完結させることにより、当社およびグループ会社と受益者との間、あるいは当
社およびグループ会社の取引先企業と受益者との間の利益相反を防止する体制を整えて
います。
当社親会社(りそなホールディングス)株式の議決権行使にあたっては、当社が定め
る「議決権行使基準」に基づき第三者の助言を受けて行使します。
原則3. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を
適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
(投資の意思決定プロセスへのESGの組込み)
国内株式運用の投資意思決定プロセスにおいて、個別企業の調査・分析を行う際に
は、企業戦略・業績・リスク・資本構造等に加え、環境・社会・企業統治(ESG)にかか
る課題の把握に努めています。
個別企業の投資推奨を行う際には、ESGの観点からの調査・分析結果を踏まえて、総合
的な判断を行っています。
3
原則4. 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資
先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
(投資先企業との建設的な対話)
国内株式への投資を行う際には、投資先企業との建設的な対話に努めています。
対話にあたっては、投資の意思決定プロセスにおける調査・分析を通じて把握したESG
にかかる課題のほか、議決権行使のプロセス上重要視している企業統治体制や企業によ
る社会的責任の遂行状況等について意見交換を行い、投資先企業との認識の共有化を図
っています。
また、定期的な対話を通して、共有化した認識や課題に対する企業の取組みについて
確認を行っています。
これらの対話は国内株式運用における公正な投資の意思決定と、受託者としての適切
な議決権行使を目的としたものであり、投資先企業に対して未公開の重要情報の提供を
求めるものではありません。また万一、未公開の重要情報を投資先企業より取得した場
合は、当社の社内規程に則り情報管理・行動管理を厳正に行います。
原則5. 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つと
ともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるの
ではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきであ
る。
信託財産等で保有する株式のうち、当社が運用者として株主議決権を行使できる株式
については、原則としてすべての議決権を行使しています。
議決権行使に際しては、投資先企業との対話および投資判断にかかる調査・分析を踏
まえて、受託者として適切な判断に努めています。
信託財産等において保有する株式について貸株取引を行う際には、議決権行使を行う
権利を担保するために、一定の限度額を定めて行っています。
<参考>議決権行使の考え方
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/nenkin/sisan/giketu/index.html
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原則6. 機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果
たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を
行うべきである。
当社は、「投資の意思決定プロセスへのESGの組込み」、「投資先企業との建設的な対
話」、「受託者として適切な議決権行使」を中心とする責任投資の取組み状況につい
て、定期的に公表します。また、その公表にかかる方法や内容についても、継続的に工
夫・改善を図って参ります。
原則7. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業
環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活
動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
当社は、信託財産等運用部門の知見を結集して、責任投資に関わる協議を行う場とし
て「責任投資会議」を設置しています。同会議を通じて、当社の責任投資の方針・取組
みが、「責任ある機関投資家の諸原則」および「国連責任投資原則」に照らして適切か
どうかを検証し、継続的に工夫・改善を図って参ります。
5
2. スチュワードシップ活動内容
2-1. 責任投資会議の役割と活動
責任投資会議では、責任投資にかかる基本方針にある3つの具体的な取組み状況や行動内
容を協議・報告することで、「責任ある機関投資家の諸原則」及び「国連責任投資原則」に
照らして行動内容が適切かどうか検証し、継続的に工夫・改善を図っています。
(具体的な取組み)
1.
投資の意思決定プロセスへの ESG の組込み(原則 3 に対応)
2.
投資先企業との建設的な対話(原則 4 に対応)
3.
受託者として適切な議決権行使(原則 5 に対応)
責任投資会議は、信託財産運用部署の担当役員および部・室長のほか、内部統制管理の観
点から信託財産運用管理部署の担当役員および部・室長が参画し構成しています。出席者は
積極的かつ適切な関与を行い、それぞれの経験知、知見を活用しています。
6
責任投資会議は、2014 年 4 月に設置、2015 年 9 月末まで 19 回開催しました。会議では、
主に上記 1 から 3 の具体的な取り組みについて、協議、報告を行いました。
具体的には、議決権行使基準の変更協議、明確に判断できない議案の審議、アクティブ運
用における投資の意思決定プロセスへの ESG の組込み状況や企業との対話内容とその成果等
について報告し、今後の取り組みの改善につながる議論を行いました。そこでの協議内容や
改善への意見をもとに、今後の対話の取り組みや議決権行使等の活動の改善を図り、より高
いレベルでのスチュワードシップ責任を果たして参ります。
2-2. 投資の意思決定プロセスへの ESG の組込み
当社では 2008 年 3 月に国連責任投資原則への署名を通して責任投資に対する取り組みを
進めてまいりました。その具体的な取組みの一つとして、アクティブファンドにおける「投
資の意思決定プロセスへの ESG の組込み」を掲げ、中長期的に安定した付加価値の追求に努
めています。
当社では、長年にわたるこれまでの運用経験から、ESG 情報は短期的には必ずしも株価に
織り込まれないものの、中長期の視点では株価水準を決定する要因の一つであると考えてい
ます。そうしたなか、これまでは ESG を主にリスクチェック項目として捉え、それらを考慮
したうえで投資の可否、投資比率の決定を行ってきました。加えて、2014 年 4 月にスチュワ
ードシップ・コードの受け入れを表明したのを機に、ESG を売上・利益の持続的成長を背景と
した企業価値の拡大に資する要因として捉え、その評価結果を投資銘柄・比率決定に反映さ
せるべく、様々な検討・試行を行っています。
当社には複数のストラテジーのアクティブファンドがあります。ESG 情報のどの部分に力
点を置いて分析するのか、銘柄選定で利用するのか、あるいはウェイト付けで利用するのか
は、各ストラテジーのコンセプトで異なっています。ここでは、4 つの代表的なストラテジー
について、どのように ESG 情報を投資の意思決定に活用しているか概略についてご紹介しま
す。
「市場型」ファンドでは、投資判断の確度を高めてファンドリターンを拡大するために、
ESG 要因を整理し独自の ESG 評価プロセスを構築しています。そのなかで、特に S(Social)
の視点から「社会的効用の実現を通じた株主利益の持続的創出力」にフォーカスした分析・
評価にウェイトを置き、事業活動を通じて社会の健全な発展に貢献する対価として安定的に
利益を獲得できる企業の選別に努めています。
「社会的効用」とは①顧客満足、②顧客以外のステークホルダーの満足、そして③社会に
及ぼす好影響の相乗効果と捉えています。社会的効用の創出力が高い企業はこの3要素のル
ープを活発にする能力が高く、社会と共に持続的な成長を遂げることが期待できます。この
ような社会的効用の創出に優れた企業に対しては通常よりも高い投資ウェイトを付与するな
どして、ポートフォリオに反映させています。
7
一例として、総合物流企業の A 社についての分析を紹介します。
物流業界においては、複数の荷主に代わり効率的な物流戦略を企画、物流システムを構築
し受託運営する(3PL:サード・パーティー・ロジスティックス)動きがあります。3PL は、そ
の効率的な物流システムにより、①顧客満足:荷主の物流費の抑制、②ステークホルダーの
満足:従業員や消費者の満足度向上、③社会的好影響:人手不足の緩和など、社会の各方面
に利益をもたらします。
A 社は、M&A を通して多様な業界の業務フローに対する知見や従業員・物流施設などのリ
ソースを獲得、業容を拡大する中で顧客の信頼をさらに得る、この相乗効果によって高い成
長を遂げています。その要因のひとつが M&A ですが、なぜ多くの M&A が成功しているのか
を、対話を通じて探り明らかにした結果、今後も持続的な成長を遂げる可能性が高いと判断
しています。
[社会的効用のループ:A 社の例]
M&Aによる
専門的ノウハウ
顧客満足
需要にマッチしたM&A
⇒ 買収先従業員の活用
物流費の抑制
サプライチェーンの安定化
(在庫適正化・品質向上)
効果的な物流戦略の立案、
物流システムの提案
社会的効用
ステークホルダー満足
社会的好影響
従業員↑
買収先企業↑
協力会社↑
人材・資産の
有効活用
全国規模の3PL専業
⇒ 効率的な物流システム
親会社に依存しない独立経営
⇒ 強い顧客ニーズ開拓意識
「グローバル企業」ファンドでは、企業の競争力を維持、向上させるために企業の意思決
定プロセスが有効に機能しているかどうかを、G(Governance)を中心に分析・評価していま
す。具体的には、①「どのような状況下」で、②「どのようなプロセス」でもって、③「ど
ういった人たち」が、④「どのような意思決定」をしてきたのかを調査し、各企業がどのよ
うなガバナンス体制で過去の環境変化に対応してきた、または今後対応していくのかを把握
8
します。これにより、企業の意思決定や戦略構築上の強みや弱みをあぶり出し、企業経営へ
の信頼性(確からしさ)を判断、その評価結果を投資銘柄のウェイト付けに反映させていま
す。
「割安型(リサーチ(α))」ファンドでは、投資対象企業を選定する際に、株価が割安
に陥っている原因を経営層が正しく認識しており、かつ実現可能性の高い施策を計画・実行
することで、株価割安の原因を払拭できるのかという点に焦点を当て調査・分析を行ってい
ます。よって、企業との企業価値を高める対話とともに、G(Governance)を中心とした評価
が重要な投資判断材料となります。
「小型株」ファンドでは、時価総額が小さく上場間もない企業や創業者一族が大株主とい
う企業が投資対象となるケースがあります。それら企業の組織体制は大企業に比べ脆弱であ
る場合がしばしば見られ、創業者一族の強引な経営判断で、思わぬ企業価値の毀損を招く可
能性が考えられます。このため、リスク面から G(Governance)を中心とした分析・評価に注
力し、銘柄選定に臨んでいます。そのなかで、銘柄を絞って集中的に投資する「小型株(集
中投資)」ファンドでは、ガバナンス面でのリスクチェックに留まらず、一歩進んで「企業
は社会の公器」との意識を持った、信頼できる優れた経営者の率いる企業に対し、高いウェ
イト付けを行っています。
このように当社では、中長期的に安定した付加価値を追求するため投資の意思決定プロセ
スをより洗練したものへと日々取組んでいます。ESG 情報を組込むことは有力なソリューショ
ンの一つであると考えており、今後も効果的な ESG 情報の活用に尽力して参ります。
2-3.投資先企業との建設的な対話
投資先企業との建設的な対話を継続して実施する目的は、投資先企業の企業価値向上ある
いは保全につながり、それが顧客の中長期的なリターンの拡大に資すること、そしてより適
切に議決権行使を判断するためと考えています。
アナリストやファンドマネジャーが投資先企業とどのような問題意識を持ちながら対話を
しているのかを紹介します。
【事業戦略等】
ある分野で圧倒的なプレゼンスを持つ B 社ですが収益性が低いという課題があります。販
売管理費が高いことは自明ですが、なぜ高いのか、改善するにはどうすればよいかを議論し
ました。当社独自の分析や他企業での取り組み実例を示しながら、販売促進費の構造改革を
強く促しています。
場当たり的な戦略変更により業界地位を下げ続けてきた C 社に対して、自社の強みを認識
しそれを生かす戦略策定を促しました。新社長のもと自らの強みを再認識し新たな戦略が開
始され、その成果が現れてきています。
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【資本政策、株主還元】
D 社では、オーナー社長が外部から経営者を招聘、権限委譲し構造改革は順調に進捗してい
ます。経営陣は、早期に従来の配当水準に戻すことを望んでいました。当社としては、不透
明な資本政策の改善が重要であると考えており、配当性向という指標をただ公表するのでは
なく、目指すべきバランスシート、営業キャッシュフロー、設備投資などを考慮した上での
株主還元の考え方を公表することの重要性について議論しました。
借り入れのない E 社に対し、企業としてのステージやビジネスモデルの変容に則して資金
調達手段は変化していくことが健全であり、企業価値最大化のためにも借入金導入など合理
的な経営判断の必要性について議論しました。
【ガバナンス】
血縁者で意思決定ができてしまう特殊な取締役会構成の F 社に対し、意思決定プロセスが
有効に機能しているかを確認するため対話を複数回実施しました。現在は有効に機能してい
ると評価しましたが、将来も有効に機能する可能性を高めるためにも社外取締役の導入の是
非など議論しました。その後の株主総会で社外取締役1名が選任されました。
次にコーポレートガバナンスグループの活動内容についてご説明します。議決権行使を行
う視点から、適切なガバナンス体制構築に向けた対話が中心となります。
【社外取締役の実効性評価】
社外取締役を導入する企業は大幅に増加しており、コーポレートガバナンス・コードが制
定されたことも影響され、複数化が進んでいます。そうした中、社外取締役を含む取締役会
の多様性、実効性について意見交換しました。
【買収防衛策の継続】
当社は、買収防衛策を導入することは、経営陣の保身につながり少数株主の利益を阻害す
る恐れがあると考えています。しかし、買収防衛策に対しすべて否定的な見解を示してはお
らず、継続する理由、企業価値向上への取組み状況をヒアリングすることで、企業価値向上
につながる経営がなされているか、発動にあたっては経営者の恣意性を排除する仕組みが構
築されているかなど、少数株主の権利が守られているかを中心として対話を実施していま
す。
【資本効率性】
ROE を含む資本効率性は主要な対話テーマとなりました。資本効率性を示す ROE 等の数値に
一定の基準を設けて対話することはしておらず、長期経営計画などで示された業績、施策が
うまく機能しているかどうか、また経営層、取締役会が事業計画の進捗状況を正確に把握、
10
軌道修正する場合にはスピード感を持って実行できているかどうか対話を通して確認してい
ます。
なお、キッシュリッチな企業、内部留保が過大で資本効率性が低い企業においては、特に
今後の投資計画、キャッシュフローの活用方法等の考え方について対話を通じて相互で理解
を深めていきます。
また、配当性向や総還元性向には数値基準を設けてはいません。企業の考え方を理解し不
明な点等は対話を通して相互で理解を深めていきます。
【監査等委員会設置会社への移行】
監査等委員会設置会社への移行に関しては、ネガティブには考えていません。企業自身が
最適なガバナンス体制であると判断した経緯が十分納得ができるものであれば、問題はない
と考えます。
【その他】
法令違反や行政処分が科された行為等の反社会的行為を行った企業に対しては、事後の対
応にアカウンタビリティと透明性があるかどうかを開示資料や対話を通じて確認していま
す。
今後の対話の方向性は、引き続き、社外取締役の実効性を高める、取締役の多様性を評価
する対話が中心となると考えます。具体的には、より独立性の高い社外取締役選任、複数の
社外取締役導入を促す、取締役会での社外取締役の役割など意見交換を進めていきたいと考
えています。
また企業のコーポレートガバナンス・コードに対する方針が示される中でその方針内容を
対話の出発点として、企業との相互理解を深めながら、より効果的なガバナンスに結び付く
ように対話をしていきたいと考えます。
コーポレートガバナンスグループの対話の対象はパッシブ運用を含めたすべての投資先企
業で、その数は非常に大きなものになり、すべての企業と対話することは困難です。そうし
た中、投資先企業からの申し出による対話のほかに、ガバナンス改善余地があると判断した
企業に対し対話を実施するなど能動的な活動強化に着手しました。そのほか、ガバナンスに
先行的な企業からガバナンス向上の経緯、効果などヒアリングするなどして、ガバナンス体
制のベストプラクティスをイメージすることで、企業との対話に役立てています。
このような取組みを通じて従来は議決権行使のみでしかガバナンス改善を促すことができ
なかった企業に対しても、当社/株主の考え方をより周知し、相互に理解を深めていくことが
できるものと考えています。
11
2-4.受託者として適切な議決権行使
信託財産等で保有する株式のうち、当社が運用者として株主議決権を行使できる株式(REIT 含
む)についてはすべての議決権を行使しています。
議決権行使基準の制定・変更等は、責任投資会議での協議を経て決定します。行使基準で明確
に判断できない議案については責任投資会議で協議し賛否を決定します。
議決権行使の基本的な考え方、体制、ガイドライン等は以下をご参照ください。
http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/nenkin/sisan/giketu/index.html
2015 年 5 月、議決権行使基準を変更しました。変更は以下の 2 点です。
① 資本効率性
資本効率性は取締役選任において判断項目の一つとして利用していましたが、企業価値の
向上につなげるため、内部留保が過大で資本効率性の低い企業の代表者に対して改善を求め
ます。
② 社外役員の実効性確保
社外役員の実効性確保の観点から兼職先数が多い社外役員については、役員会等への出席
率の基準を厳しく対応します。
2014 年 7 月から 2015 年 6 月に開催された株主総会での議決権行使結果(日本株のみ、REIT を含
む)は以下の通りです。
1.会社提案
賛成
反対
棄権
白紙委任
合計
剰余金処分案等
1,299
72
0
0
1,371
取締役選任
1,334
587
0
0
1,921
監査役選任
1,374
379
0
0
1,753
定款一部変更
930
48
0
0
978
退職慰労金支給
147
114
0
0
261
役員報酬額改定
539
20
0
0
559
新株予約権発行
112
52
0
0
164
会計監査人選任
15
0
0
0
15
組織再編関連 (※1)
37
0
0
0
37
その他会社提案(※2)
92
42
0
0
134
48
42
0
0
90
5,879
1,314
0
0
7,193
内、買収防衛策
合 計
(※1)合併、営業譲渡・譲受、株式交換、株式移転、会社分割等
(※2)自己株式取得、法定準備金減少、第三者割当増資、資本減少、株式併合、買収防衛策等
2.株主提案
賛成
合 計
反対
3
棄権
151
12
白紙委任
0
合計
0
154
主要な議案について、行使の考え方をご説明します。
1. 取締役/監査役選任
議案の賛否判断の考え方は、継続的な株主価値向上のためには少数株主の立場で社内取締
役に対する監視機能が有効に機能しているかどうかを見ています。
社外取締役の独立性に関しては、取締役会全体の独立性評価から個々の社外取締役の独立
性を評価したことで昨年と比べ反対比率が増加しました。社外監査役の独立性は従前より
個々の独立性を評価していたことで反対比率はほとんど変わりません。
社外取締役の実効性を評価する一つの基準として出席率などを精査し賛否を判断していま
す。基準に達しない場合には再任に反対します。
業績が一定水準に達しないケースにおいて、企業から納得のいく説明を受けた場合には、
責任投資会議の協議を経て賛成するケースがあります。
2. 役員報酬額改定
役員報酬額の引き上げに関して明確な理由がない場合には反対します。
3. 退職慰労金支給
社外取締役や監査役には経営陣に対する監視機能が期待されており、退職慰労金支払いで
はなく役員報酬での対応が望まれるため、社外取締役や監査役への退職慰労金支払いに反対
します。但し、退職慰労金制度打ち切りに伴う支給に関してはコーポレートガバナンス強化
と判断し賛成します。
社内取締役の退職慰労金支払いについては役員報酬の水準、在任期間等を鑑みて賛否を判
断します。
4. 剰余金処分案等
具体的な要求配当水準は設けていませんが、市場からの評価が低く内部留保が過大である
にもかかわらずさらに内部留保の蓄積を図る場合には反対しています。
また株主から剰余金処分での対抗議案がある場合には、十分な情報開示があるかどうか、
株主価値につながるかどうかなど検討、責任投資会議での協議を経て決定します。
5. 新株予約権発行
業務執行を監督する監査役、取締役会での業務執行役員を監視する社外取締役は、業績連
動等に連動する報酬支払いは不適切と考えており社外取締役・監査役へのストックオプショ
ン付与には反対しています。
また行使する時期にも一定の基準を設けています。短期的な業績よりもより中長期の業績
に連動するストックオプションの設計を望んでいます。
13
6. 買収防衛策
買収防衛策の継続を評価するにあたり当社が最も注視しているのは、その発動を含めた運
営上、少数株主の立場に立って客観的かつ適切な判断を下せる体制または仕組みが担保され
ているか、という点になります。
多くの議案は招集通知等の開示内容で判断しますが、企業との対話や意見交換を通して相
互の理解を深めたうえで議案の賛否を判断しています。
7. 株主提案
株主提案については、株主価値の向上に資すると判断できる場合については賛成します
が、必ずしも株主価値向上につながると判断できない場合については反対しています。
株主総会で株主提案がある場合、企業側から当社に対話を求めるケースがあります。企業
側からの株主提案に関する説明を受けてもなお、株主価値向上に資すると判断できる株主議
案については、責任投資会議の協議を経て賛成するケースがあります。
8. 反社会的行為を行った企業
法令違反や行政処分が科された行為等の反社会的行為によりブランド価値を含む株主価値
の毀損が大きい、または今後毀損する可能性が高い企業に対して、事後の対応に透明性とア
カウンタビリティがあるかどうか企業からの開示資料や対話を通じて判断します。大幅な株
主価値の毀損があり、対応が不十分であると判断した場合、取締役選任や報酬に関する議案
で反対するケースがあります。
2-5.対外活動について
当社は 2008 年 3 月に国連責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)
への署名を通して責任投資に対する取り組みを進めており、責任投資の普及活動を行う PRI 日
本ネットワークに立ち上げ時より積極的に参画しています。現在 PRI 日本ネットワークコーポ
レートワーキンググループ議長を務めています。
そのほかにも日本社会的責任投資フォーラム(JSIF)運営委員、環境省「持続可能性を巡る
課題を考慮した投資に関する検討会」委員を務めるほか、環境省 21 世紀金融行動原則運用・
証券・投資銀行業務ワーキンググループにも参画しています。
これらの活動や講演を通して、責任投資あるいは持続可能な社会の実現に向けて運用機関と
して責任を果たしていきます。
14
おわりに
2014 年にスチュワードシップ・コード、2015 年にコーポレートガバナンス・コードと投資
家、企業双方にコードが制定され、企業価値向上に向けた対話が従来に増して促進されてきて
います。当社では、国連責任投資原則への署名を通して、早くから責任投資に関する取組みを
開始、責任ある機関投資家の諸原則<日本版スチュワードシップ・コード>を受け入れたこと
で、責任ある機関投資家として活動することを明確化し、その活動を確固たるものとするため
責任投資会議を立ち上げ、これを主体に責任投資への取り組みの更なる改善を図っています。
国内株式運用のアナリストやファンドマネジャー、コーポレートガバナンスグループが責任
投資にかかる基本方針の3つの具体的行動に対しより積極的に活動することで、投資先企業の
中長期的な成長を促し、そして最終受益者の中長期的なリターン拡大に繋がることを期待、高
いレベルのスチュワードシップ責任を果たしていきたいと考えています。
以上
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