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超高層ビル階段の3次元設計に、AutoCADを導入 APIを使用した
株式会社横森製作所 AutoCAD API によるカスタマイズ事例 会社概要 株式会社横森製作所は、1951年(昭和26年) 創業。当初は、建築金物を製造していたが、高度 成長期に入り、ある解体工事から組み立て式階 段の着想を得る。1970年代、超高層ビルが数 多く建てられ、鉄骨階段の専業メーカーとして 実績を残す。現在では、従来からのノウハウの蓄 積、大規模な階段を製造する能力を高く評価さ れ、日本の超高層ビルの約90%にヨコモリの階 段が使用されている。 http://www.yokomori.co.jp/ システム概要 ● APIを利用したAutoCADのカスタマイズに より、3次元モデルをベースとした階段製造の ための意匠・施工図システムを構築 導入製品 ● AutoCAD 2006 ● AutoCAD 2000 利用したオートデスクAPI ● ObjectARX パートナー ● 株式会社構造計画研究所 http://www.kke.co.jp/ システム導入のメリット ● 3次元モデルにデータが一元化されているた め、1回の設計変更指示で、平面図、立面図、工 作図などの異なる図面に情報が反映され、効 率的でミスのない正確な図面作成を実現 ● 意匠・施工図の承諾から工作図作成はリアル タイムで可能なため、設計期間全体で平均20 ∼30%短縮 ● 新システム “Cadys21”の利用技術者試験、 指導技術者試験(学科と実技)の実施により、 技能の修得への意欲が向上 超高層ビル階段の3次元設計に、AutoCADを導入 APIを使用したAutoCADのカスタマイズにより、 設計の精度・効率が大幅に向上 株式会社横森製作所(以下、ヨコモリ)は、ランドマークタワー、六本木ヒルズ・森タワー などの日本の超高層ビルの約90%の階段の設計・製造を行っている。同社では、従来の UNIXベースの2次元CADから3次元CADへの移行を図るにあたり、取引先とのデータ 交換にDWGファイル形式が一般的になっていたことから、AutoCADを選択。株式会社 構造計画研究所(以下、構造計画研究所)をパートナーとして、新システム“Cadys21” の開発に着手した。前工程の意匠・施工図システムでは、最も高度に AutoCAD をカス タマイズできる ObjectARX を使って、ウィザードスタイルによる基本情報の入力だけ で、3次元モデルを作成。データ連携により後工程の工作図作成も同時に行なうことが可 能なため、設計の精度向上、設計期間の大幅な短縮を実現している。 3次元化により、プログラムレスの階段設計・製造を目指す ヨコモリでは従来、ものづくりの効率化を目指して、積極的にCADを導入してきた。1998年 当時使用していたのは、UNIXベースのEWS(Engineering Workstation)に搭載した独 自開発 の2次元CADだったが、プログラムのステップ数が膨大になり、継ぎ足しの バージョン アップにより、効率が低下。新規の製品開発、既存の製品の改良も多く、ソフトウェア環境の改 善が不可欠な状態になっていた。PCの性能も向上していたことから、汎用の3次元CADへ の 移行を本格的に検討することになった。 同社取締役工場統括本部長(兼)CAD設計部長 門井由典氏は、3次元化へ の移行を計画した 原点について以下のように語っている。 「 当社の創業者の横森精文は、データが一元管理され た生産管理システムを早くから構想していました。すなわち、前工程で図面を描き、同じデー タから工作図を作成、NC加工へとつながる一貫した設計・製造システムです。しかも、従来の ようにプログラム開発を行うのではなく、オブジェクト指向の汎用3次元CADを導入する計画 を当社主導で推進しました。3次元設計環境へ の移行は、時間や教育の手間もかかる、という 社内 の意見もありましたが、金型業界などでは3次元化がすでに進み、当社も階段製造 のトッ プメーカーとして、3次元CADの導入を率先して行う必要があったのです」 AutoCADを選択した大きな理由は、取引先のゼネコン各社がDWGフォーマットによるデー タ交換をすでに行っていたことであった。また、システム開発のパートナーとして、構造計画研 究所を選んだのは、建築に詳しく、業界標準 のAutoCADをベ ースとした提案をしたこと、そ して長 年 の 取 引 関 係から生まれた 信 頼 関 係があったことが理 由だった 。構 造 計 画 研 究 所が、 10年先に陳腐化することのないシステム開発を目指し、ヨコモリの各部署にきめ細かい調査 を行った上で提案をしたことも高く評価された。 株式会社横森製作所 取締役 工場統括本部長 (兼)CAD設計部長 門井 由典 氏 ObjectARX によりAutoCADをカスタマイズ、 基本情報の入力のみで3Dモデリングが可能 ヨコ モリの 新 階 段 設 計 支 援システム“ C a d y s 2 1 ”で は 、まず 、 ウィザード形式により、基本情報の入力が行われる。基本情報は、 共 通 情 報 定 義( 階 段 の 形 状・種 別・本 数・段 数など)、平 面 情 報 定 義( 階 段 の 長さ、幅など)、各 階 情 報 定 義( 階 の 名 称、高さなど)、 板 厚 情 報 定 義( サ サラの 板 厚・高さなど)などを 画 面に従って 入 力する。 旧 来 のシステムでも、データ入 力はウィザ ード形 式になってい た が、項目数が約350もあった。 “ Cadys21 ”では、大幅に項目数 が削減され、約1/5程度になっている。 基本情報の入力により、即座に階段やササラなどがカスタムオブ ジェクトとして3次元モデルが作成される。さらに、施工図と呼ば れる平面図、立面図が3次元モデルのデータに基づいて自動作成 される。設計変更が生じた場合は、3次元モデルを修正すれば、平 面図・立面図へも反映することができる。 A u t o C A Dを 使っているのは、ここまで の 過 程 の 意 匠・施 工 図シ ステムだが、そ の 後は、施 工 図システムと工 作 図システムをつ な ぐインタフェース ファイルを 介して、スムーズにデータが受け 渡 され 、工 作 図が 作 成される。工 作 図からは、各 部 品 の N C 加 工 用 データが生成され、生産ラインに引き継がれる。 AutoCADをベースとした3次元設計により、 設計精度の向上、リードタイムの短縮を実現 “ C a d y s 2 1 ”を 利 用するユー ザは、設 計 部 門では約 8 0 名おり、 全社ではAutoCADが150台程度導入されている。新システム が稼働して、さまざまな面から導入のメリットが報告されている。 「 旧 来 のシステムでは、数 値 入 力を ベ ースにしてい た ので、平 面 図 の 一 部を 修 正しても、立 面 図を 直すのを 忘れる、といったこと が起こりました。 “ Cadys21 ”では、3次元データを直せば、平面 図・立面図 の情報も自動的に連携して修正されるため、ミスのな い図面作成、間違いのない製品づくりが可能になりました 」と、同 社CAD設計部 課長 宮田和宏氏は述べている。 また、意匠・施工図から工作図へ のデータ連携が、ほぼリアルタイ ムに可能なことから、設計期間全体 の短縮につながっている。従 来は、顧 客 の 意 匠・施 工 図 の 承 諾 後 、スケジュー ル 調 整も含 めて 工作図を作成するのに数週間∼1ヵ月かかっていたが、現在は、承 諾後即座に工作図を作成することが可能だ。設計期間全体では、 平均して従来の20∼30%の短縮が可能になった。 教育面でも大きな成果が生まれている。2次元では、階段図面 の 作成作業には熟練が必要だったが、3次元化により、立体化した階 段モデルをさまざまな角度から視覚的に把握できるため、理解し にくい部分でも説明しやすくなった。3次元モデルから、平面図・ 立面図・側面図を一気に作成できるのも設計者には魅力だ。さら に、ヨコモリでは、2003年秋から年2回、 “ Cadys21 ”の利用技 ●ウィザードによる基本情報の入力 術者試験(学科・実技、3∼1級)、指導技術者試験(学科・実技、2 ∼1級 )を行っている。設計技術者だけでなく、営業・管理部門な どからも受験者が増えているということだ。 A P I で A u t o C A D を 最 適 に カ ス タ マ イズ す る こ と に より 、 “ C a d y s 2 1 ”にはヨコ モリの 階 段 設 計 の 知 識 が 集 約 され て い る。これにより、設計者の工夫で、いままで想定外だったものまで 設計できるようになっている。さらに将来にわたるシステムの革 新が期待されている。 ●3次元による階段モデルの作成 ●施工図(平面図・立面図・側面図など)の作成 株式会社横森製作所 AutoCAD API によるカスタマイズ事例 AutoCAD 2000から2006への移行を推進 “ Cadys21 ”の改良は常に行われている。たとえば、特殊な構造 の階段についても、プログラム自体の修正を行なわずに対応でき るよう、検討や開発が続いている。 「新システムでは、NC加工用データばかりでなく、仕訳・納品書な どの生産関連 の帳表類にも対応しています。また、工作図に加え て、一目でわかる組立図の作成も可能になりました。 さらに、近い将来、3次元CADデータから見積を可能にして、既存 の積算システムの検証を行えないかと考えています。また、顧客 企業との間で、3次元データによるコミュニケーションを実現した いですね」 (門井氏) 「“ Cadys21 ”の3次元モデルにより、数値ではなく立体で判断 することができ、干渉チェックなども視覚的に行えるようになりま した 。今 後、3 次 元モデルを 作 成するスピードを、もっと上げられ ないかと常に考えています。発注者側からのデータを読み込むな 株式会社横森製作所 CAD設計部 課長 宮田 和宏 氏 どの 手 法により、さらにデータ入 力を 簡 略にして、迅 速 な 施 工 図 の作成を実現したいものです」 (宮田氏) ヨコモリで は、市 場 からの より厳しい 要 求 に応 えて いくた めに、 2006年2月∼6月にかけて、AutoCAD 2000から2006へ のアップグレードが進 められた 。これにより、さらに、製 品 の 滞 留 時間、 リードタイムの短縮を図っていく予定だ。 ObjectARXによりAutoCADの高度なカスタマイズを実現、 3次元CADを使用した大規模なシステムを初めて構築 株式会社構造計画研究所 CPCソリューション営業部 マネージャー 高木 淳一 氏 株式会社構造計画研究所 デザインソリューション部 岡村 峠 氏 ヨコモリの“ C a d y s 2 1 ”は、構 造 計 画 研 究 所にとって 、3 次 元 CADをベ ースとしたものとしては、初めての大規模なシステム 開発だった。階段 の設計には、膨大かつ 特有 のノウハウがあり、 いかにシステムに反映するかが課題だった。このため、どういっ オートデスク株式会社 www.autodesk.co.jp 〒104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号館3F TEL : 03-5992-7878(オートデスク インフォメーション センター) たかたちでシステム化できるか、調 査と検 討に多くの 時 間をか け、お客様が望む完成度の高いシステム仕様の構築を実現でき たという。 システムには、当時最新の バージョンだったAutoCAD 2000 を採用。基本設計 の段階を慎重に進めて、最終的にシステムの レスポンス向上を目指した。 「 AutoCADでは、AutoLISP、VBAなどの他 のAPIも選択す ることができますが、もっとも高い 技 術 力が 必 要とされるの は ObjectARXです。階段の設計には、ササラ、踏板などに挙動を 持たせる必要があり、約500 のクラスを持つクラス ライブラリ を構築しました。このようなオブジェクト指向 のカスタマイズを 行うためには、ObjectARXが最適であると判断し、結果として 大きな成功を収めることができました」と、構造計画研究所 デザ インソリューション部 岡村峠氏は振り返る。 「 3次元CADのこれほどの大規模な開発は、当社では初めての 試みでした。 “ Cadys21 ”の導入により、AutoCADのメリット を 活かすノウハウを 大 量に蓄 積することができました 。そ の 後 のシステム開 発や 営 業 活 動にも役 立てています 」と、構 造 計 画 研究所 CPCソリューション営業部 マネージャー 高木淳一氏も 意欲的に語っている。 ※Autodesk、AutoCAD、DWF、Design Web Formatは、米国Autodesk, Inc.の米国およびその他の国における 商標または登録商標です。その他記載の会社名、ブランド名および商品名は各社の商標または登録商標です。 ※記載事項は、予告なく変更することがございます。予めご了承ください。 © 2006 Autodesk, Inc. 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