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第1部 自主防災組織活動の活性化に向けて
第1部 自主防災組織活動の活性化に向けて Ⅰ 平常時における防災活動 1 自主防災組織の活動のために (1)自主防災組織の必要性 自主防災組織は、昭和34年の伊勢湾台風による甚大な被害を教訓として「災害対 策基本法」が制定され、この法律によって生まれた、隣保協同の精神に基づく地域住 民による自発的な防災組織です。 防災対策で重要なのは「自助」努力だと言われていますが、救出、消火など自助努 力だけでは解決できないことには、行政からの支援「公助」が必要です。 現在、発生が危惧されている東海地震などの大規模な災害が起きた場合、行政をは じめ防災関係機関は全力を注ぎますが、同時多発火災やライフラインの破壊などによ り、防災活動が一時的にマヒすることがあります。 そこで、注目されるのが、隣近所が協力してお互いを守る「共助」という考え方で す。地域住民の皆さんの初期消火、負傷者の救助など、自主的な防災活動が被害を軽 減させるために極めて大きな力となるのです。 このための組織が「自主防災組織」です。 −地域社会のつながりが防災機能を高める− 多くの犠牲者を出した平成7年1月の阪神・淡路大震災では、普段からの近隣や地域 社会のつながり結びつきが、きわめて重要であることが再認識されることとなりました。 (社)日本火災学会の報告書によれば、自力または家族や近所の住民によって救出され た割合は90%を超えていました。 また、旧北淡町富島地区(現淡路市)では、甚大な被害を受けたにも関わらず、普段 からの見守りネットワークが機能し、発災当日の午後3時過ぎには、全員の安否確認が 終了していました。 こうした例からも、普段から支え合う関係をつくり、地域社会とのつながりを持つこ との重要性がみてとれます。 −自主防災組織を地域の核に− 「自分達の地域は自分達で守ろう」という地域防災のための住民活動は、さまざまな コミュニティ活動の核となれるものです。 防災訓練への参加など、地域防災活動を通じてコミニュティ活動が活性化するなど、 地域の連帯感の醸成に役立っているケースも見受けられます。 -1- (2)自主防災組織の役割 組織の編成は、会長、副会長をリーダーとして、その下に役割ごとに下記の自主防 災組織の体制(例)に示されているように班長を置きます。ここまでが、自主防災組 織の本部となります。 そして、各班は班長、副班長及び班員で構成されます。いざ災害が起こった時、又 は起こりそうな時に誰が何をするべきかがわかるよう、誰が何をやるかを決めておき ましょう。 しかし、場合によっては、班という組織の形をとらない活動になることもあります 。 これは、災害が発生した場合、集まった人だけで直ちに必要な活動(消火活動等)を 行い、さらに時間の経過とともに果たすべき活動も新たなもの(給食・給水活動等) へと変化していくことも十分考えられるためです。 (情報の収集・伝達・広報) (班長・副班長・班員) (火災予防・初期消火) (班長・副班長・班員) (避難訓練・避難誘導) (班長・副班長・班員) (救助訓練・救出救護) (班長・副班長・班員) (給食・給水活動) (班長・副班長・班員) −確認してみましょう− 規約や防災計画、自主防災台帳が作成してある場合には、内容を確認してみましょう。 作成されていない場合には、町の防災担当課に相談してみましょう。 (→P57【様式1:○○自主防災会規約(例)】 ) (→P60【様式2:○○自主防災会防災計画(例)】) (→P62【様式3:自主防災台帳(例)】) −班編成のポイント− ○勤務先が地域の外にある人などを考慮しましょう。 災害はいつ起こるかわかりません。災害の発生した時間帯によって、班の人員に偏り がでない配置になるよう工夫が必要です。 ○専門家・経験者などを優先した班編成をしましょう。 (→P63【様式4:人材台帳(例)】 )を作成し、消防団員・消防職員・医師・看護師 ・大工など、専門的な知識がある人を、適当な班に振り分けましょう。 -2- (3)自主防災組織の活動 自主防災組織の役割は、平常時と災害時の二つに大きく分けられます。 平常時の役割は、日頃から、地域内の安全点検や防災知識の普及・啓発などの予防 的活動を行うとともに、被害を想定した防災訓練の実施など、地域防災力が最大限発 揮できるような準備活動を行います。 一方、災害時には、その時々の状況に応じて、被害の軽減のために、初期消火、救 出・救護、避難誘導などを行うことが役割となります。 平常時と災害時の活動は、概ね次のとおりです。 各活動班 平常時 -3- 災害時 (4)自主防災組織リーダーの役割 自主防災組織のリーダーとは、会長・副会長など自主防災組織において中心となっ て防災活動を行う人のことです。 多くの世帯が参加する自主防災組織において、円滑な活動を進めるためには、リー ダーの存在はとても重要です。 平常時には、自主防災訓練など災害に備えた活動の企画・実施などを行い、災害時 には各班を指揮して、被害の軽減のための防災活動を行います。 また、リーダーには、あらたな人材を発掘していくことも大切な役割となります。 −リーダーの役割− ○平常時の役割 ・自主防災組織の組織維持・運営 ・緊急時の活動方針の策定、活動体制の構築 ・平常時の防災訓練、防災活動の主導 ・地域住民の防災意識の高揚 ・自主防災組織の活動の評価、改善 ○災害時の役割 ・災害現場における的確な状況判断 ・組織構成員への適切な情報提供 ・組織構成員への的確な行動指示 −その場にいる人の中からリーダーを− ・発災後、その場に自主防災組織のリーダーがいるとは限りません。ガレキの下敷きに なっているかもしれません。 ・その時、誰がリーダーになるのか?その場にいる人の中にしかいません。 ・誰がどのようなリーダーシップをとれるかということは、普段の地域行事の中で、本 人が知らないうちに、周囲には十分に伝わっています。 (5)助成制度の活用 町によっては、独自に自主防災組織の防災資機材に対する助成制度を設けていると ころがあります。また、(財)自治総合センターによる補助制度もあります。詳しい ことは、お住まいの町役場総務課防災担当にご確認ください。 【例】 対 象 資 機 材 情報伝達用資機材 携帯用無線機、ハンドマイク、トランジスタラジオ、メガホン等 消火用資機材 消火器、バケツ、可搬式ポンプ等 救出・救助用資機材 発電機、投光機、ジャッキ、バール、掛矢、のこぎり、チェーン ソー、スコップ、つるはし、一輪車、折たたみはしご、ロープ等 救護用資機材 救急医療セット、車椅子、担架、テント、毛布、防水シート等 避難用資機材 リヤカー、誘導旗、腕章、ヘルメット等 給食・給水用資機材 炊き出し用炊飯装置、ガスバーナー、給水タンク、浄水装置、燃 料、食器、鍋、釜、受水そう等 備蓄倉庫 資機材等収納庫 -4- (6)地域の様々な団体との連携 地域防災力の向上のためには、中核を担う自主防災組織が住民の防災意識を高め、 自発的な参加を促す活動を行うことが重要です。 加えて、地域の様々な団体と連携した幅広い活動を展開することによって、地域社 会とのつながり、結びつきを強め、人的ネットワークの構築を図る必要があります。 また、自主防災組織の活動課題の解消、活動の活性化においても、こうした取り組 みは有効な手法となります。 なお、他団体との連携にあたっては、地域によって様々な組み合わせが考えられま すが、主なものとして、次のような連携が考えられます。 団 体 と の 連 携 連携による活動・機能例 小・中学校・高校・大学等 避難所運営・防災教育・人材育成 ・若い世代の協力(即戦力) ・防災知識、技術の支援 社会福祉協議会・福祉団体等 災害時要援護者対策 自 主 災 害 ボ ラ ン テ ィ ア 発災後の対応に必要な活動の補完 婦人(女性)防火クラブ 家庭における安心・安全活動 日中の防災活動 防 災 組 企 業 マンパワー(人的協力) 物資・資機材による協力(応援協定) (事業所等) 織 医 療 機 関 救護・搬送への協力 −連携とは− それぞれの団体が普段行っている 活動(得意分野)と自主防災組織の 活動(地域防災力)とを結びつけ、 相互の得意分野で地域の防災力を補 完し合うことです。 -5- −自主防災組織で大切なこと− 自主防災組織は、会社のように厳密に組織化されたものではなく、また、それを生業 としているものでもありません。自主防災組織は、地域の中の防災に関する取りまとめ 役、地域の防災コミュニティといったところです。 災害発生時に効果的な活動ができるよう、日頃から組織としての実効性を高めること も勿論大切ですが、それ以上に大切なことは、いざとなったらお互いに助け合う、お互 い様という共助の意識を日頃から持つことです。 例えば、地震発生時に、自分は他人を助けようと常々心がけていても、いざとなった ら家がくずれ、逆に助けられることもあるかもしれません。 災害に同じものはありませんので、災害発生時に誰がだれを助けることになるのかは、 起こってみないと分かりません。 したがって、災害発生時には、お互い様、自分が助けることもあるし、その逆もある ので、お互いに助け合うという意識を持ち、いざというときに連携が取れるよう、日頃 から、隣近所と顔の見える関係を作っておくことが大切なのです。 -6-