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狂気の家

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狂気の家
人間 心理 と創 造性 の 相 互 関係
2010HP024
日高詩 織
問題 ・ 目的
狂 気 が もた らす の は 、必 ず し も人 間 に とって悪 い 影 響 ば か りで は な い 。精神 を病 み 、
底 の な い 沼 に落 ちた よ うな感 覚 に 陥 つ た り、 自我 が 崩 壊 しそ うに な った り した とき 、
狂 気 が 生 む エ ネ ル ギー は計 り知 れ な い も の で あ る。 人 間 は時 に ス トレス や 悲 しみ か ら
脱 しよ うと し、そ の 手 段 や 結 果 と して 、新 しい も の を つ く り出す 力 を持 つ こ とが あ る。
これ が 狂 気 に よ る創 造 性 の 開発 で あ る。
創 造 は人 に何 か を伝 え よ うとす る。自己表 現 の 一 つ で もあ る。治療 場 面 にお い て は 、
患者 が 信 頼 の お け る治 療 者 に 対 し 自発 的 に絵 を描 い て 渡 す こ ともあ る とい う。
そ の よ うな性 質 を持 った 「創 造 」 を探 り、 そ の 過 程 を見 つ め る こ と、 また精 神 を病
ん だ 状 態 、 つ ま り極 限 の 状 態 を見 つ めて い く こ とで 、人 間 の あ りか た に 対 して 根 源 的
な理 解 を深 め る こ とが 出来 る と考 え られ る。
さ らに人 が 創 造 をす るに あた っ て 、狂 気 だ けで な く正 気 の 介 入 も必 須 で あ る。 そ こ
で本 研 究 で は狂 気 ・ 正 気 。創 造 の三 者 関係 を明 らか にす る こ とを 目的 と した 。
考察 。結 論
第 一 章 を問題 ・ 目的 と し、第 二 章 で は創 造 と狂 気 の 関係 に つ い て述 べ た 。 狂 気 が創
造 にそ の 原 動 力 や 作 品 の 独 自性 を与 えて お り、 また創 造 が狂 気 に働 く と、人 々 の心 は
救 済 され る とい う関係 が 成 り立 っ て い る と言 え る。 エ ドヴァル ド・ ム ン ク らの 作 品 に
はそ の 病 に よ る心理 状 態 が 独 自の 表 現 と して あ らわれ て い るが 、 こ こか ら分 か る よ う
に悪 い 側 面 しか な い よ うに 思 われ る狂 気 が 芸 術 の 原 動 力 や 作 品 と して の 価 値 を高 めて
い る と考 え られ る。 また 治療 場 面 にお い て芸 術 療 法 が 用 い られ る こ とか ら分 か る よ う
に 、創 造 は狂 気 の 心 に救 済 を もた ら して い る と考 え られ る。
第 二 章 で は正 気 と創 造 の 関係 に つ い て述 べ た 。 創 造 が 行 われ る際 、 と りま とめ る正
気 の 介 入 は不 可欠 で あ る。 また 創 造 が正 気 に働 い た とき 、私 た ちは 自己理 解 や アイデ
ンテ ィテ ィ の 確 立 を手 助 け され 、人 生 の 質 の 向上 が もた らされ る と言 え る。 マ ク ニ フ
の 分類 よ り、創 作 は創 作者 に対 して 美 的 な喜 び を与 えた り、 それ に よって 自己イ メー
ジの 向上 を もた ら した りす る働 き を持 っ て い る。
第 四章 で は正 気 と狂 気 の 関係 に つ い て述 べ て い る。 正 気 と狂 気 は互 い に影 響 しあ っ
てお り、私 た ち の 心 の 中 に 表 裏 一 体 とな つて 存 在 して い る。 一 見 正 気 が 前 面 に 出 て い
る よ うに見 えて もそ の 裏 に は必ず 狂 気 が 潜 ん で い る し、逆 に狂 気 が 目立 って 見 えて も、
正 気 の 部 分 は確 実 に 存 在 して い る と言 え る。
以 上 よ り、狂 気 。正気 ・ 創 造 の三 者 に は 相 互 関係 が 存在 して い る と言 え る。
虐 待 を 受 け た 子 供 達 の 心 理 と彼 ら へ の 支 援
∼ 児 童 養 護 施 設 職 員 の 観 点 か ら∼
2010HP030堀 江 亜委
【問題・ 目的 】 日本 で は年 々児童虐 待 の 数 が上 昇 し、児童虐 待 は社会 問題 となって い る。虐待
を受 けた子供 は 、家庭 で生 活 す る こ とが 困難 と判 断 され た場 合 、社 会的養護 を受 け る。現在 日
本 の被虐 待児 は 、児童菱護施 設 に入 所す るこ とが 一 般 的 で あ るが 、虐 待 を受 けて きた子供達 に
とつて 、どの よ うな支援 が 一 番適切 な の だ ろ うか 。虐 待 が子 供 達 に与 え る心理 的影響 を踏 ま え 、
直接被虐 待児 と関 わ つてい る児童 養護 施設職員 の視 点 か ら、理想 の 支援 体制 につ いて 考察 して
い く。
【被虐 待児 の 心理 的特徴 】文献研 究 で得 られ た 、虐 待 に よ つ て生 じるだ ろ う子供 達 の心 理・ 行
動特性 を 5つ あげ る。外 界 へ の 不信感 、 自己評価 の低 下 、否認・ 解 離 、共感性 の 低 下、被虐 待
的人 間関係 の 再現 で あ る。虐 待 に よ っ て養 育者 との 愛着 の形成 が 阻害 され る と、以 上 の よ うな
心理 的影 響 が起 こ り得 る。しか し過 去 の研 究 か ら、虐待 に よ つ て愛着 の 不形成 に 陥 つた子供 も、
周 りか ら適切 な支援 が 施 され る と、新 た な愛着 関係 を形成 で き る と捉 え られ 、被虐 待児 の心 理
的影響 も改善 され る と言 える。
【施 設職員 へ の イ ン タ ピュー 】心的影 響 を被 つ た被虐 待児 に とって 、理想 の 支援体制 を確 立 し
た い と考 えた。 そ の た めに 、 日本 では主 流 の 支援 先 、児 童養護施設 の 支援 体制 の 特徴や 、今後
の課題 に つ い て 明確 に知 る必要 が あ る。 一 方 、支援 の 現場 には 直接 関係 しな い 地域 、 ボ ラ ンテ
ィア 、さ らには我 々 も被虐待 児 との接 し方 を考 えて い く必 要 が あ る。 これ らの 点 につ い て知 見
を得 るた めに 、子供 達 と密 に接 して い る児童養 護 施設職員 4名 ヘ イ ン タ ビュー を行 つ た。
【結 果・ 考 察 】児童養護 施設 で働 く職 員 達 は 、子供 達 に とっ て適切 な支 援 を 目指 し、施 設 の デ
メ リッ トも改善す べ く 日々子供 と接 して い た。 しか しどの 支援先 に も、出来 る こ との限 界 はあ
る。子供 の 特徴 、意 向 に合 わせ た 支援先 を吟 味、選択 で きる よ う、児童養護 施設 以外 の 支援 先
を普及 させ つつ 、他 の 支援 先 も開発す るこ とが必 要 だ と考 え る。
直接支援 の 現場 で働 いてい な い 我 々 に も出来 る こ とは あ る。被虐待 児 と関わ る際 は相 手 を一
人 の 尊重す べ き人間 と して接す るこ とだ。現場 で働 いてい な い 人 は被虐 待 児 に対 して 偏 見 の 目
を も つてい る か も しれ な い 。 しか し、子供 の 支援 が 前 に進 まな い。彼 らを可哀想 だ と捉 え るの
ではな く尊重 して 、 出来 な い こ とも一 緒 に解 決 してい く、前 向 きな姿勢 が 大切 だ と言 える。
“支援先 の 強化・ 発 展 "と “我 々 の被虐待 児 に対す る意識 の 変化 "こ の 2方 向 の働 きか けに
よ つ て 、 よ り子 供 の 目線 に立 っ た 支援 体制 が 完成す る と考 え る。
性 同 一性 障害 の正 しい理 解 と受容
2010HP076
椴 山陽
本研 究 は 、性 同一性 障害 とい う問題 につい て 、 自らも当事者 である研 究実施者 自身 が 、様 々 な
視 点か ら理 解 を促 してい くた めの もので ある。性 同一 性障害 (gender identity disorder:GID)
とは 、セ ックス (生 物学的性 )と ジェンダー (心 理的性 )と が一 致 しないために、 自らの生物学
的性別 に持 続的 な違和感 を持 ち、 自己意識 に一 致す る性 を求 め 、時 には性別学的性別 を 自己意識
に近 づ けるた めに性 の適合 を望む こ とさえある状態 をい う、医学的 な疾患名 である。 これ らの 問
題 にお ける非 当事者 に よる 「当事者理 解」 は 、限界 が指摘 され てい る
(岡 村 ,2013)。
そ の ため、
性 同一性 障害 の 当事者 である研 究実施者 が 、 自分 自身や他 の 当事者 を理解す る こ とを通 して研 究
を進 めてい く ことに大 きな意 味が ある。
研 究では、KJ法 を用 いて 当事者 へ のイ ンタ ビュー を分析 、さらに 自らが研 究対象 とな って行 う
当事者研 究 を用 い た。 当事者研究 の一 環 として 、研 究実施者 の家族 へ のイ ン タ ビュー も行 つた。
当事者研 究 とは、 主に精神 障害 当事者 を対象 と して 、北海道 にある浦河 べ て るの家 と浦河赤十字
病院精神科 では じまった 、 当事者 自身 が 自らの抱 える障 害 と向き合 い 、 どの よ うに して 自分 自身
を助 けて い くかを研究す る もので ある。 自分 自身で向 き合 い なが ら、 さらに同 じ問題 を抱 える仲
間 と支 えあ う、「自分 自身で、共 に」 してい く研 究である (向 谷地 ,2005,p3‐ 5)。 つ ま り当事者研
究 は 、仲 間 と経験 を分 か ち合 い 、専門家や家族 とも連 携 しなが ら、 自分 にや さ しい生 き方や暮 ら
し方 を模 索 してい く営み とい う共同的 な研 究活動 な ので ある (い と う,2011)。
当事者研 究 の一 環 として行 つた家族 へ のイ ン タ ビュー では 、初 めて家族 の本 心 を聞 き、家族 の
心の葛藤や私 自身 が家族 に どの よ うに見 えて い た のか を知 るこ とがで きた。 さらに、 当事者研究
で 、 自分 が苦 しんできた こ とを見 える化す るこ とに よ つて 、繰 り返 してきた葛藤 を整理す るこ と
がで き、 これ か ら自分 にや さしい 生 き方 を してい くためには何 が必 要な のか とい うことを模 索す
ることがで きた のだ。 また、 当事者 へ のイ ン タ ビュー は、 当事者理解 とい う面で も大 きな意味 を
成す もので あ った。私 一 人 の 内省報告 では一例 に過 ぎな いが 、共通点 を探す ことで 当事者 に多 く
共通す るであろ うこ とを見 つ けることがで きた。 イ ンタ ビュー を終 えて私が問題 に思 うの は 、 自
分 は受 け入れ られ ていな い と思 つて しま う当事者 がい る こと、そ して受 け入れ る努力 を しない非
当事者 がい る ことである。 この問題 の解決法 は 、理 解 ある人 の小 さな理解 か らで も、少 しず つ広
めて い く ことで あ り、本研 究 はその第 一 歩 であ る。性 同一性障害 とい う問題 にお い て 、 当事者 自
身、 当事者 の親や家族 、友人や周 囲にい る人 、それ ぞれ感 じるこ とも、 で きる こ とも、越 えなけ
れ ばな らな い 問題 もまた異 な るだ ろ う。 生 きづ らい期 間を過 ご してきた当事 者 だか らこそ訴 え ら
れ る言葉 に、耳を傾 けて いただ けた ら嬉 しく思 う。
発 達障害 を もつ 子 の母親 へ の心理 的支援 につ いて
2010HP105
佐 瀬 江理
本 研 究 は 、発 達 障 害 を もつ 子 の 母 親 へ の心 理 的 支 援 の 現 状 と課 題 を検 討 し、 今 後 必 要 と
され る母 親 へ の心 理 的 支 援 を様 々 な観 点 か ら考 察 し、 明 らか に した 。
1章 で は 、発 達 障 害 の 定 義 や 特 性 、年 代 別 の 症 状 に つ い て 取 り上 げ た 。 そ の 結 果 、 乳 幼
児 期 の 子 ど もにお い て 、発 達 障 害 の 症 状 が 顕 著 に表 れ る こ とが分 か っ た 。
2章 で は 、 自分 の 子 ど もが 障 害 を も つて い る と分 か つ て か ら、母 親 は どの よ うに 自分 の
子 ど も の 障 害 を受 け入 れ て い くの か とい う障 害 受容 に つ い て 調 べ た 。 障 害 受 容 過 程 に 関す
る理 論 と して 、段 階 説 ・ 慢 性 的悲 嘆 説 ・ 螺 旋 型 モ デ ル が 代 表 的 な も の と して あ げ られ 、 そ
れ ぞ れ に問 題 点 が あ り、 障 害 を受 け入 れ て い く過 程 は 複 雑 で あ る こ とが 分 か つた 。
3章 で は 、母親 へ の 支 援 の方 向性 を明 らか にす るた め に も、障 害 を もつ 子 の 母 親 が どの
よ うな 心 的 状 況 を経 験 しな が ら子 育 て を して い る の か に つ い て理 解 を深 め た 。 母 親 に と つ
て 、身 近 に どれ だ け相 談 しや す く信 頼 で き る人 が い るか と い う こ とが 重 要 で あ る と考 えた 。
4章 で は 、 なぜ 障 害 を もつ 子 の 母 親 へ の 支 援 が必 要 だ と考 え る の か を法 律 、社 会 状 況 、
ス トレス と い う観 点 か ら明 らか に した 。 法 律 が で きて い て も、支 援 が整 っ て い な い こ とが
分 か り、母 親 へ の 支 援 を広 げ て い く こ とが今 後 に求 め られ る こ とで あ る と考 えた 。
5章 で は 、 障 害 を もつ 子 の親 た ちが 望 ん で い る こ とを 6つ の 項 目に ま とめ 、情 報 を くれ
る 専 門家 の 存 在 とカ ウ ンセ リ ン グ と い った 心 理 的援 助 を必 要 と して い る こ とが 分 か つ た 。
気 軽 に 相 談 で き親 身 に な つ て くれ る 専 門家 の 存 在 が重 要 に な つ て くるだ ろ う。
6章 で は 、発 達 障 害 特 有 の 悩 み や 、 辛 さを明 らか に した 。 そ の 結 果 、発 達 障 害 とは 、非
常 に 分 か りに く く、最 近 に な つ て 注 目 され 始 め た障 害 で あ る こ とが 分 か つ た 。
7章 で は 、 実 際 に現 在 行 われ て い る発 達 障 害 を もつ 子 の 母 親 へ の 支 援 に つ い て 調 べ た 。
ソー シ ャル サ ポー トに 注 目 し、 そ の 種 類 と して 、支 援 機 関 、配 偶 者 。近 隣者 、 セ ル フ ヘ ル
プ グル ー プ とい う 3つ に 分 け て 、 そ れ ぞれ の 現 状 と課 題 を明 らか に した 。
以 上 よ り、 ソー シ ャル サ ポ ー トして あ げ た
3つ の 支 援 を母 親 が気 兼 ね な く利 用 で き、頼
れ る こ とが 重 要 で あ る と考 えた 。 発 達 障 害 の 子 を もつ 母 親 が 受 けた い と思 う時 に受 け る こ
との で き る支 援 の 充 実 が 今 後 必 要 に な つて く る。 気 軽 に受 け る こ との で き る支 援 が 充 実 し
て い けば 、 障 害 を もつ 子 が 原 因 で 、母親 が 抱 く心理 的 負 担 も和 らぎ、 障 害 を もつ 子 や 母 親
に と つ て プ ラ ス の 効 果 が 期 待 で き るだ ろ う。
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