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エッセイ 7 ウォッシング

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エッセイ 7 ウォッシング
エッセイ 7
ウォッシング
泉大津市立戎小学校
実際に子どもたちに指導すると、一番楽しいのは、やはり最後
のウォッシングです。
ある子が言います。「あ、もうちょっと水かけたら?」ある子
が言います。「あぁっ、そこ置いといたらよかったで。」
墨が残っているから美しいのですが、どのバランスが良いかを
判断するのは、刻々と見守る「その人の感性」ということになり
ます。
校 長 谷尾 好貞
昨年、平成24年の夏は美術一色でした。
府美研(図工、美術の教育研究組織)からの依頼で絵の技法の講
座の講師をお引き受けし、小学校の先生方に技法をお教えするた
め、そのサンプルを事前に用意させていただきました。
7月末の講習会のために、校長室に絵の具とパレットを置いて、
少しずつ作業を進めていました。その技法は、「ウォッシング」
と言います。通常、絵の作品は、絵の具を塗って完成となります
が、彩色した上から墨汁をかけて真っ黒にして乾燥させ、もう一
度あらためて水で墨を洗い流すという方法です。
上の絵は同じ画用紙を撮影したものです。左の絵は通常に彩色
したもの、中間はお花を残してすべて墨汁をかけたもの、右は墨
を水で洗ったものです。
さて、右の絵は、同じ
く私の描いたものです。
映画「コクリコ坂か
ら」の一場面を描いたも
のです。学生の頃の気持
ちを大変懐かしく思い
出した映画でした。
その映画の中で、ほん
の一場面だったのです
が、心に焼きついたシーンがありました。タグボートでしょうか、
小型の船で船体にタイヤを装備した赤っぽい煙突のある船が、港
に停泊している場面です。「ここが描きたい。」と思うやいなや、
四つ切の画用紙に向かっていました。
彩色をていねいにして、墨汁をかけて、いよいよウォッシング。
図工室で顔から汗が滴り落ちる中で作業をしました。墨を少しず
つ洗うのですが、つい気を抜くと全部流れてしまいます。
昨年夏の講習会の先生方からも、
「ああ!!」とため息があちこち
から聞こえてきました。
楽しいですよ。一度、やってみませんか?
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