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USAA貯蓄銀行のビザ
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
*1
北村行伸*2
大森真人*3
西田健太*4
要 約
電子マネーの普及実態としては,全国で電子マネーを保有している世帯は 4.4% 程度で
あり,地域別には関東が突出して高く 44.% に達している,利用者は 5-49 歳の世代が中
心であり交通機関の利用に用いる場合が最も多いこと,また電子マネーが決済手段として
選択されるのは主として 000 円以下の支払いであることがわかった。さらに,貨幣需要
関数を推計した結果,50 円硬貨以下の小額貨幣需要が電子マネーの普及により低下して
いることが明らかになった。しかしその弾力性は極めて低く,電子マネーが貨幣需要に与
える影響は,現在のような急速に利用が拡大している時期でも,限定的であることがわ
かった。電子マネーは,交通機関の自動改札やコンビニエンスストアで時間節約的な決済
などに限らず,高齢化社会で小銭の扱いに煩雑さを感じる老人にとっても利便性の高い決
済手段となる可能性は高い。さらに,電子マネーは,小額貨幣の資源節約になったり,価
格設定の自由度を広げる意味でも有効な手段でもある。これらの新技術を積極的に利用し
ていくことは望ましいだろう。そのための法制度の整備や会計基準の設定は必要である。
また,電子マネーを巡る実態を把握するためには,電子マネー関連の統計を整備し,公開
していくことも重要であろう。
キーワード:電子マネー,小額決済,小口決済手段,貨幣需要関数
JEL Classification:E4, E4
*1 本稿は大森,西田が財務省財務政策総合研究所に研究員として在籍し,北村が同研究所特別研究官として所
属している期間中行った研究に基づいて書かれたものである。財務省財務総合政策研究所のランチ・ミーティン
グ(009 年 月 8 日)での出席者からは有益なコメントをいただいた。記して感謝したい。なお本稿の内容は
すべて執筆者の個人的見解であり,財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではない。言うま
でもなく,あり得べき誤りは執筆者に帰するものである。
*2 一橋大学経済研究所教授。
*3 元財務省財務総合政策研究所研究員。現在,日本通運株式会社。
*4 元財務省財務総合政策研究所研究員。現在,西日本旅客鉄道株式会社。
-129-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
Ⅰ.はじめに
近年,Suica,ICOCA,PASMO,SUGOCA,
Kitaca,Edy,nanaco,WAON など電子マネー
と称されるプリペイド方式の IC 型電子決済手
段が急速に普及してきている。その名称に「マ
ネー」が含まれているために,現金通貨とりわ
け小額貨幣と代替的に用いられる民間発行の
「マネー」が増加してきており,政府・日本銀
行が通貨発行によって得ているシニオレッジ
(通貨発行益)が民間発行の「マネー」によっ
て毀損される,あるいは民間会社がシニオレッ
ジを得ることが可能になるかのような議論がな
されることがある。現状を見る限り,電子マ
ネーは現金をチャージして使う決済手段の一種
であり,現金そのものの代替物ではないことは
明らかである。
しかしながら,近年,電子マネーが小額貨幣
を代替する影響によって,小額貨幣の流通残高
が減少したという報道があることも事実であ
る。一方,小額貨幣の減少は電子マネー以外に
も「銀行 ATM の有料化」など日本の構造変化
によっても影響を受けているという見方もあ
る。
本稿は,このような状況を踏まえ,消費税率
引き上げなどの政策変更,銀行 ATM 有料化な
どの金融制度の変更等の構造変化を出来るだけ
考慮しながら,金種別の貨幣流通量に電子マ
ネーが与えた影響を実証的に検討することを目
的としている。
また,電子マネーが実際にどの程度普及し,
全国的に見た場合にはどのような特徴があるの
か,そして将来の見通しはどうなのか,さらに
は,電子マネーを巡る政策的な課題は何なのか
ということについても議論したい。
本稿の構成は以下の通りである。第2節で電
子マネーの概要とその普及について説明し,第
3節において日本において利用可能な電子マ
ネーに関する調査を含んだミクロデータを用い
てその実態を概観する。第4節では,貨幣需要
関数の実証を行う。第5節では結果の解釈を行
い,第6節では政策含意について,とりわけセ
キュリティ問題,資源問題,法制度・会計基準
などについて論じる。第7節では結論を導く。
Ⅱ.電子マネーの概要とその普及
00 年 月のビットワレット社による Edy
4月にセブン&アイホールディングスによる
のサービス開始によって,日本の IC 型電子マ
nanaco の サ ー ビ ス 開 始, 及 び イ オ ン に よ る
WAON のサービス開始,と IC 型電子マネーの
発行が相次ぎ,007 年は電子マネー元年と呼
ばれるようになった。
電子マネーのマクロ統計に関しては日本銀行
決済機構局が『決済システム等に関する調査レ
ポート』の一つとして「最近の電子マネーの動
向について」(007 年度,008 年度)を発表し
ネーは本格的に開始された。004 年3月には
JR 東日本がそれまで乗車券利用のみであった
Suica に電子マネーサービスを開始した。005
年 0 月に JR 西日本も,乗車券利用のみであっ
た ICOCA に対し,電子マネーサービスを開始
した。さらに 007 年には,3月に首都圏の私
鉄・バス会社による PASMO のサービス開始,
-130-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
表1 わが国における電子的小口決済手段のサービス例
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(出典)
日本銀行決済機構局「最近の電子マネーの動向について」,008 年8月。
ている。以下ではこのレポートの最新情報に基
拡大してきている。また全国各地域に新たな交
づいて実態を見てみたい。
通系 IC 型電子マネーが発行されるようになっ
電子マネーは表1で示すように,IC 型電子
てきている。
マネーとサーバ型電子マネーの2つに分類する
表2によって電子マネー全体の発行枚数を確
ことが出来る。そのうち,現在の電子マネーの
認しておくと,009 年1月には1億枚を超え
拡大は IC 型電子マネーの増加によるものであ
たことがわかる。3月末には1億 50 万枚と前
る。また,表1は類似した小口決済手段として
年比で 0.% も伸びていることがわかる。小売
用いられているクレジットカードやデビット
店に設置された決済端末台数を見ると 009 年
カードの特徴についてもまとめてある。
3月末で 48. 0万台に達しており,電子マネー
IC 型電子マネーは発行主体の違いによって
の増加率より高い前年比 4.% 増加している。
3つに大別することができる。Edy を発行する
その背景には流通系電子マネーがグループを超
ビットワレット社のような電子マネー発行専業
えた相互利用を認めるようになり,また電子マ
系,nanaco や WAON のように流通会社の発行
ネーに対応した自動販売機の設置も 008 年 0
している流通系,Suica,PASMO,ICOCA の
月より始まったことがあるとされている。
ように交通会社の発行している交通系である。
表3は電子マネー決済件数が 008 年度には
こ の う ち 電 子 マ ネ ー 発 行 専 業 系 IC 型 電 子 マ
億 百万件(前年比 +7.8%)となり,決済
ネー及び流通系電子マネーは,利用可能店舗さ
金額も 87 億円(前年比 +45. 0 %)と急増し
えあれば,日本全国で使用することができる。
ている。これを1件あたりの決済金額に計算す
それに対して,交通系 IC 型電子マネーは当初,
ると 008 年度で 7 円となっている。この1件
発行会社の各事業地域でしか使用することが出
あたりの決済額は過去3年にわたり 700 円前後
来なかった。しかし,現在では Suica と ICOCA
で比較的安定的に推移してきている。電子マ
による相互利用(008 年3月より電子マネー
ネーの平均的な決済は 000 円以下の小口決済
の相互利用開始)
,Suica と PASMO の相互利用
であり,その額もほぼ 700 円前後で安定してい
(007 年3月より電子マネーの相互利用開始)
ることを確認しておきたい。
など交通系 IC 型電子マネー間での相互利用が
-131-
電 子 マ ネ ー の 発 行 残 高( 未 使 用 残 高 ) は
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
009 年3月で 9 億円(前年比 +8. 0 %)と発
の 0.% にすぎない。電子マネーが決済システ
行枚数の増加に応じて増えている。ただし,発
ムや金融政策に影響を与える状況にはないこと
行された電子マネー・カードがすべて活発に利
は明らかである。
用されているわけではなく,休眠状態のカード
電子マネーと代替的な小口決済手段としては
も同時に増加していることには注意しなければ
クレジットカードやデビットカードがある。表
ならない1)。
4は小口決済手段の利用状況を比較したもので
また電子マネーの発行残高を現金通貨流通高
ある。この表によれば,年間決済件数はクレ
と比較するとまだまだ微々たるものであること
ジットカード,電子マネー,デビットカードの
がわかる。すなわち,009 年3月末で電子マ
順になっている。決済額も電子マネーはデビッ
ネー発行残高は貨幣(硬貨)流通残高の .0%,
トカードを上回るようになっている。1件あた
銀行券(紙幣)発行高の 0.%,現金通貨流通
りの決済額は電子マネーが際だって小さい。
高合計(貨幣流通残高と銀行券発行高の合計)
表2 電子マネー発行枚数等
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(出典)
日本銀行決済機構局「最近の電子マネーの動向について(008 年度)」
,009 年7月。
1)実際,カード1枚あたりの平均残高は 009 年3月末で 88 円と前年比で 9.% 減少している。
-132-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
表3 電子マネー決済件数・金額
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* 表示桁未満の端数を四捨五入している関係で,期間合計が合わない場合がある。
(出典)
日本銀行決済機構局「最近の電子マネーの動向について(008 年度)」
,009 年7月。
-133-
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電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
表4 小口決済手段の利用状況の比較
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(* 1)
ただし,他行
ATM からの引出のみ。
(* 2)
008 年 月末の計数。
(* 3)
007 年3月末の計数。
(出典)日本銀行決済機構局「最近の電子マネーの動向について(008 年度)
」,009 年7月。
Ⅲ.ミクロデータに基づく電子マネーの利用実態
これまでマクロ集計データを概観することに
人であることも想定できる。これら個人属性の
よって,電子マネーの利用が急速に拡大してい
違いが電子マネーの保有や利用状況にどのよう
ることがわかった。しかし,経験的な実感とし
な違いをもたらしているかは個人や家計に対し
ては電子マネーの利用は,電子マネーを積極的
て調査したミクロデータによって確認すること
に導入している地域や交通手段の利用,コンビ
が大切である。
ニエンスストアーやスパーマーケットでの利用
可能性に依存している。また,このような新型
Ⅲ-1.電子マネーの保有状況
の決済手段を積極的に利用するのは若い世代で
総務省統計局の『家計消費状況調査』は,個
あり,しかも通勤・通学などで交通手段を使う
人消費動向のうち,近年増加が著しい IT 関連
-134-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
の消費や購入頻度が少ない高額商品・サービス
地方が .9% と最も高くなっている。また,そ
などの消費実態を捉えることを目的として平成
の利用先として最も多いのが交通機関の
年 0 月より毎月実施調査されているもので
.5%,コンビニエンスストアーの .% となっ
ある。『家計消費状況調査』の「IT 関連項目」
ている(図2参照)
。関東地方では同様の傾向
では平成 9 年度(平成 0 年1月)から電子マ
が見られるが(それぞれ 0.5%,.7%),他の
ネーの保有状況についての調査を行うように
地域では近畿,中国を除けば,コンビニエンス
なった。
ストアーでの利用の方が交通機関での利用より
この調査は全国全世帯を対象に層化3段無作
も高い。それらの地方では交通機関で電子マ
為抽出法によって選ばれた約 0000 世帯を対象
ネーを利用する体制に移行していない駅が多
に行われており,平成 年度の実績で2人以
く,また,交通機関間の電子マネーの互換性が
上世帯が 784 世帯,単身世帯が 9 世帯,合
促進されていないからであろう。
計 955 世 帯 が カ バ ー さ れ て い る( 回 収 率
次に年齢5歳階層別に保有状況を見てみよう
5.%)
。同一世帯に ヶ月調査を継続しても
(図3)。保有割合が高いのは 5-9 歳で 4.%,
らい,1ヶ月毎に 分の1の世帯が交代してい
0-4 歳で 40.0%,5-9 歳で 4.5% となってお
くローテーションパネルの構造をもっている。
り,これらの年齢階層は最も頻繁な利用者でも
詳細について情報が公開されいてる平成 0
ある。利用場所はやはり交通機関,コンビニエ
年度(008 年)の報告書を見ると,電子マネー
ンスストアの順になっている。このことから見
を保有しいてる世帯員がいる世帯の割合は全国
えてくることは,勤労者が通勤に使う交通手段
平均で 4.4% であり,関東地方が 44.% と最も
で電子マネーを利用しはじめ,その周辺でのキ
高く,近畿地方が 8.8% で続いている(図1参
オスクやコンビニエンスストアでも利用するよ
照)
。しかし,関東地方と他の地域には大きな
うになってきたということであろう。逆に定期
普及ギャップがある。
的な通勤をしなくなった 5 歳以上の階層では
電子マネーを利用した世帯員がいるかという
質問に対しては全国で 8. 0 % で,やはり関東
電子マネーを利用する機会が限定されていると
いうことであろう。
図1 電子マネーの保有状況(平成 20 年)
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(出典)総務省統計局『家計消費状況調査』平成 0 年度報告書
-135-
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電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
図2 電子マネーの利用回数が最も多かった場所(平成 20 年)
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(出典)総務省統計局『家計消費状況調査』平成 0 年度報告書
図3 世帯主の年齢階級別電子マネーの保有状況(平成 20 年)
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(出典)総務省統計局『家計消費状況調査』平成 0 年度報告書
-136-
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<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
図4 年間収入階級別電子マネーの保有状況(平成
20 年)
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(出典)総務省統計局『家計消費状況調査』平成 0 年度報告書
年間収入階層別に電子マネー保有状況を見る
平成 9 年度から調査している。
と,収入が高いほど電子マネーも保有している
この調査は全国全世帯を対象に選ばれた
ことが明らかである(図4参照)
。電子マネー
0500 世帯を対象に行われており,平成 年度
を通勤・通学の交通機関で利用する人が大半で
の実績で2人以上世帯については,層化2段無
あるとすれば,収入の差はそれほど関係が無い
作為抽出法によってが選ばれた 8000 世帯から
はずだが,ここでは明らかに電子マネーの保
回 答 を 得 た 40 世 帯( 回 収 率 50 . %)
,イン
有・利用状況が収入階層と相関している。もち
ターネットモニター調査によって回答を得た単
ろん,収入は年齢や職業とも相関しているの
身世帯が 500 世帯含まれている。注意すべき
で,これは見せ掛けの相関かもしれないので,
点は,この調査は,2人以上世帯のみについて
この点については更に詳しい分析が必要にな
通常の無作為抽出を行い,訪問・郵送により調
2)
る 。ちなみに,電子マネーの保有状況を職業
査を実施しており,単身世帯には事前に登録し
別に見ると,被雇用者,会社役員などの勤労者
ているインターネットモニターを使った調査に
で高く(0% 超)
,自営業主,無職者では低い
なっているということである。後に見るよう
(0% 以下)ことがわかっている。
に,2人以上世帯と単身世帯では電子マネーの
利用状況が有意に違うのは,この調査方法の違
Ⅲ-2.小口決済手段の選択
いを反映しているものと思われる3)。
小口決済手段の選択に関しては金融広報中央
平成 年度の調査では,「あなたのご家庭で
委員会『家計の金融行動に関する世論調査』で
は,日常的支払い(買い物代金等)について,
2)Suica や PASMO などの交通系電子マネーは安価で購入可能であり,発行に信用情報なども必要ではないので,
収入格差が保有状況の違いを反映するとは考えられない。
3)この調査の調査方法の違いが回答にどの程度の違いをもたらしているかは検証に値する問題である。
-137-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
金額に応じて資金決済手段をどのように使い分
査についてまとめたものが表5(年齢階層別)
けていますか。金額ごとによく利用している決
と表6(地域別)である。
済手段を選んでください。
(○は2つまで)
」と
ここで観察される点は以下の通りである。
いう質問(問 (a)
)をしており,2人以上
(1)電子マネーが決済手段として選択される
世帯では000円以下の決済に関して電子マネー
のは 5000 円以下の支払い,とりわけ 000 円以
を選ぶ人が .%,5000 円以下では .% とそれ
下の支払いである。(2)年齢的にみると 5 歳
ほど高くないが,単身世帯では 000 円以下で
から 49 歳までの勤労者層が主たる利用者であ
5.%,5000 円以下で 4.% と極めて高くなっ
る。
(3)地域的には関東での利用が多いが,
ている。
北海道でも利用者が比較的多い。
先に総務省統計局『家計消費状況調査』で見
先にも見た通り,単身世帯の電子マネー利用
たように,地域・年齢別に保有状況に大きな違
が高いのは明らかに調査方法の違いによるもの
いがあるように見受けられたので,ここでも問
であると考えられるので,ここでの結果を単純
(a)の回答を地域別,年齢階層別に集計し
に比較することはできないが,単身世帯の電子
てみた4)。その結果を平成 9 年度と 0 年度調
マネー利用率は相対的に高いと言える5)。
表5 年齢階層別金額範囲毎の決済手段割合
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(注)単身世帯のデータはインターネットモニター調査によって集計されている。インターネット調査プログラムの設定により,
無回答は不可能になっている。
(出典)金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』
(平成 9 年・0 年度)より筆者が集計。
4)北村は 009 年7月より金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』の個票データの利用許可を得
ている。同委員会に対して感謝の意を表したい。
5)少なくとも,単身世帯の特定のグループでは 000 円以下の決済に 0% 近い割合で電子マネーを利用している
ことが明らかになっているという解釈はできる。
-138-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
表6 地域別金額範囲毎の決済手段割合
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(注)単身世帯のデータはインターネットモニター調査によって集計されている。インターネット調査プログラムの設定により,
無回答は不可能になっている。
(出典)金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査』
(平成 9 年・0 年度)より筆者が集計。
この調査の結果は,第2節で既に見たように
という場合に電子マネーが選択されるというこ
1件当たりの平均決済額は 7 円であり,000
とも考えられる。例えば,00 円の支払いであ
円以下の支払いに対する電子マネーの使用が大
れば現金を用いることにそれほどの煩雑さはな
半であることと整合的である。
いが,7 円の支払いに対しては,支払額は
ところで,北村(005)によれば,決済手段
00 円より多いが,やり取りに使う小銭の量は
のすみ分けは図5のように表すことが出来る。
こちらの方が多く煩雑なので電子マネーで決済
数万円以上の決済にはすでにクレジットカード
するということは大いにあり得る。すなわち,
や電子決済など,現金ではなく電子的な媒体を
電子マネーと現金による決済の選択は単に総額
用い情報の受け渡しをすることで決済を行なっ
でおおよその分岐点が決まるわけではなく,ど
ている。現金の利用枠であった,超小口決済に
れぐらいの小銭の交換が必要とされるかによっ
も電子マネーのような電子的な決済手段が導入
ても決まってくるはずである。そうであれば,
されることで,いよいよ現金の利用が限定され
1円単位,5円単位の価格付けがされているコ
るようになってきた可能性を示唆している。
ンビニエンスストアーやスーパーマーケットで
しかし,より厳密に考えると,小口決済の総
の支払いには主として電子マネーが利用され,
額だけで決済手段が現金,電子マネー,クレ
00 円単位や 000 円単位の価格付けがされてい
ジットカード等の間で決まるわけではなく,1
るデパートや高級小売店では電子マネーよりも
円単位,5円単位の支払いに対して現金の授受
現金やクレジットカードが利用される可能性が
よりも電子マネーでの支払いの方が簡便である
高いということも考えられる。
-139-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
図5 決済手段のすみわけの概念図
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(出典)
北村(005)図1
Ⅳ.貨幣需要に関する研究
Ⅳ-1.先行研究
い暮らしをしているという計算になる。
これまでの議論で電子マネーによる決済がか
計量経済学では,このような場合,電子マ
なり急速に拡大してきたこと,その1件あたり
ネーを保有している世帯と保有していない世帯
の平均決済額は 000 円以下の小額であること
の貨幣需要に差があるかどうかを調べるべきで
が明らかになった。また,利用者は地域や年
あると考える。また電子マネーを現在保有しい
齢,職業などによって偏りがあり,全国の消費
てる世帯についてもパネルデータが取れれば,
者が一様に電子マネーという新しい決済手段を
保有前と後で貨幣需要に違いが生じたかどうか
保有している訳ではなく,また,利用できる環
を見ることも可能になる。一般にミクロデータ
境にある訳でもないことも明らかになった。大
が利用可能であれば,個人の決済手段選択行動
まかな計算をすれば電子マネーの発行枚数が
をモデル化し,実証することで,より厳密な行
1億枚を超えており,その保有世帯が 4.4%で
動パラメータが推定できる。
あるとすれば,全国の世帯総数は 009 年で約
実際,海外ではミクロデータを用いた実証研
5000 万世帯なので,約 0 万世帯が電子マネー
究が活発に行われている。例えば,Attanasio,
を複数枚(平均1世帯で8枚)保有しており,
Guiso and Jappelli(00)では,新技術として
ATM カードの普及を取り上げ,その影響を考
残りの 780 万世帯は電子マネーとは関係のな
-140-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
慮した Baumol-Tobin 型の貨幣需要関数の推計
ら家計の貨幣需要の利子弾力性を求めている。
を 989-95 年のイタリアの家計所得資産調査
彼らは利子率の低い場合には利子弾力性も低
(Survey of Household Incoem and Wealth by the
く,有利子金融資産の保有は総金融資産額に比
Bank of Italy)を用いて行っている。ATM カー
ド保有者は貨幣需要に関する利子弾性値が非保
有 者 に 比 べ て 高 い こ と を 示 し て い る。Lippi
and Secchi(007)では,Attanasio, Guiso and
Jappelli(00)と同じデータを 004 年まで拡
張して用い,ATM カードの使用条件や近距離
での ATM 機器の有無を考慮して,貨幣需要の
利子弾力性について考察している。ATM 機が
身近にある人ほど利子弾性値は低下し,ほとん
ど ゼ ロ に 近 づ く と 論 じ て い る。Alvarez and
Lippi(009)もイタリアの家計所得資産調査
(99-004 年)を用いて Baumol-Tobin 型の現
金 需 要 モ デ ル を 動 学 的 な 枠 組 み に 拡 張 し,
ATM カードの普及などの技術進歩が現金の予
備的需要をどのように変化させるかを,厳密な
モデルを用いて検証している。
Stix(004)はオーストリアの電子的決済シ
ステム(Electronic-Fund-Transfer-at-the Point
Of Sale; EFT-POS)と ATM カードの普及が貨
幣需要に与えた影響をオーストリア国立銀行が
4000 人(実際に用いたサンプルは 800 人)に
対して 00 年に2回行った調査に基づいて,
実証的に検証している。EFT-POS も ATM カー
ドもともに,貨幣需要を減少させることが明ら
かにされている。
Duca and Whitesell(995)では,98 年の
消費者金融調査(Survey of Consumer Finances
(SCF)by the Federal Reserve Board,USA)と
いうクロスセクションデータを用いて,クレ
ジットカード保有が貨幣・資産選択に与える影
響をプロビット推定で検証している。Mulligan
and Sala-i-Martin(000)も 989 年の SCF を用
いて,クロスセクションでの資産保有の違いか
例しており,年金プログラムに参加している人
ほど有利子金融資産を保有する参加コストは低
いこと,などを明らかにしている。
第3節で見たように,日本の電子マネーに関
するミクロデータもようやく蓄積されつつある
が,まだ2-3年分のデータしかなく,しか
も,上述の欧米の実証研究のように貨幣需要や
資産選択を包括的に分析できるほど調査項目が
そろっている訳ではない。これまでのところ,
日本における電子マネーを巡る実証研究は全国
レベルでの貨幣発行残高を用いて金種別貨幣需
要関数に電子マネー普及度を示す変数を加えて
その影響を検証するというアプローチが主であ
る6)。例外としては,Fujiki and Tanaka(009)
がある。この論文では先に見た金融広報中央委
員会の『家計の金融行動に関する世論調査』の
平成 9 年度(007 年)のクロスセクションデー
タを用いて,現金保有に電子マネーが与える影
響を検証している。彼らは電子マネーの導入に
よって現金保有が減少したという代替効果は見
られず,むしろ増加したケースが散見されると
報告している。また中田(009)は福岡県在住
の消費者に対して電子マネーの普及実態につい
てのアンケート調査を実施し,その結果をまと
めている。電子マネーを頻繁に利用する消費者
は現金決済の回数を削減しており,一部には保
有現金額も削減していることが明らかにされて
いる。
日本での電子マネーの研究としては,金融調
査研究会による「電子マネーの発展と金融・経
済システム」がある。その中の齊藤(005)で
は,実質貨幣需要関数を推計した上で電子マ
ネーの需要を推測し,マーシャルの k を通じた
6)日本銀行の支店別金種別貨幣流通残高が判れば,金融広報中央委員会『家計の金融行動の関する世論
調査』や総務省統計局『家計消費状況調査』を用いて地域別の電子マネー普及度とマッチさせて,電子
マネーが貨幣需要に及ぼす影響を地域別あるいはパネルデータとして推定できるはずである。そうなれ
ば全国マクロレベルで計測するよりは,さらに厳密に貨幣需要を推定することができると考えられる
が,現状ではデータの制約があり推定できていない。
-141-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
電子マネーの影響を述べている。具体的には小
Ⅳ-2.貨幣需要関数の定式化
額決済媒体と代替性が高く,使用が煩雑な硬貨
貨幣需要はもっとも広範に実証研究されてい
利用を節約するような電子マネーを発行してい
る 分 野 の 一 つ で あ る。 歴 史 的 に は Friedman
けば,その発行者はゼロ金利環境で発行基盤を
(95,99)によって現代的に定式化された貨
確立することで,将来の名目金利上昇によって
幣数量説に基づくモデル,Keynes(9)に
確固とした収益機会を確保することができると
基づく流動性選好モデル(Liqudity Preference
論じている。
電子マネーと貨幣需要の関係についての先行
研 究 に は 中 田(007 , 009) が あ る。 中 田
(007,009)は本稿と同様に金種毎の貨幣需要
関数を推定しており,関数定式化は本稿のモデ
ルとは多少異なるが,電子マネーの普及が貨幣
流通伸び率との間に有意に負の相関があること
が確認されている。また,中田(007,009)
では金種別の貨幣需要関数と電子マネー普及度
指標の2本の VAR 式を推定しインパルス応答
関数を見ることで電子マネーの金種別通貨需要
への影響を見ている。表7は日本における電子
マネーに関する貨幣需要関数に基づく実証研究
の手法をまとめたものである。
既に論じたように,現状では,ミクロレベル
の個別決済額等に関する詳細な電子マネー・通
貨統計情報は無いので,集計した貨幣の金種別
の需要関数を推計することで電子マネー決済の
増加が小銭の需要に与える影響を検討する。こ
こでの関心は,電子マネーが小口決済手段とし
て利用されているということではなく,1円硬
貨,5円硬貨,0 円硬貨といった小銭の需要
をいかに減らしているかということを検証する
ことにある。
Model),Baumol(95) と Tobin(95) に
基づく取引費用を考慮した在庫モデル(Inventory Model)7),それをさらに発展させた Sidrauski(97)の買物時間モデル(Shopping Time
Model),Clower(97) の 現 金 制 約 モ デ ル
(Cash-in-Advance Model)
,Tobin(958) の
ポートフォリオモデル(Portfolio Model)など
様々な理論モデルが提案され,実証されてい
る8)。
本稿ではこれらのモデルを比較検討するので
はなく,一般的な貨幣需要関数を考え,それに
人口構造の変化や電子マネーという新しい決済
手段の増加の効果を加えることにする9)。
人口増加は集計された貨幣需要を増加させる
ことは容易に想像がつく。1人当たりの貨幣保
有額が一定であっても,人口が増えることに
よって,財の取引需要は増え,貨幣需要もそれ
に応じて増える。電子マネーは逆に,あらゆる
額の小額決済も可能になり,小銭の保有動機は
低下する。もちろん全ての経済取引で電子マ
ネー決済が可能であるほど,電子マネー決済が
できるインフラストラクチャーは整備されてい
ない。しかし,人口密度の高い,大都市圏で経
済取引が集中するところでは,決済スピードが
迅速化され,また現金決済に伴う釣り銭計算ミ
7)最近の新しい金融技術導入を考慮した貨幣需要に関する実証研究の多くは,この Baumol-Tobin 型モ
デルに基づいている。このモデルは利子付き金融資産と貨幣との間のポートフォリオ選択を金融資産売
却手数料と逸失金利収入との間のトレードオフ関係の下で最適化したもので,貨幣需要の所得弾力性と
利子弾力性が理論的に導出されている。このモデルの実証では,貨幣需要の期間の取り方によって貨幣
在庫調整のパターンが違ってくることに注意する必要がある。所得が月次で払われており,貨幣需要に
関するデータや利子率が月次であれば,月内の貨幣在庫調整の様子はデータ上からは確認できない。こ
の場合,年間所得や年間金融資産保有が月次でどのように調整されるかを見ていると考えるべきであ
る。同様に年次データによって年内の調整は確認できない。実証研究での期間設定と解釈には注意を払
う必要がある。
8) こ れ ら の モ デ ル の 理 論 的 な 解 説 は Serletis(2007), McCallum(1989), Tobin and Golub
(1998),Walsh(2003)などを参照されたい。最近の実証研究のサーベイとして Sriram(2001)がある。
-142-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
表7 日本における電子マネーを考慮した貨幣需要関数の実証研究
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スなども回避されるなどの理由から,電子マ
似し,整理すると次のようになる。
ネーによる決済は,消費者側の貨幣保有動機の
みならず,小売店側の費用節約動機からも,増
ln mjt = a0 + a1 ln yt + a2 it + a3 ln(emt + 1) +
a4 ln zt + SDMt + εt
加する傾向にある。
(2)
以下では次のような貨幣需要関数を考える。
ln
Mt
Pt
= f (yt , it , emt , zt )
(1)
ここで,Mt は貨幣需要,Pt は物価水準(金
ここで mjt = Mjt/Pjt であり,j は金種 j であるこ
とを意味している。従って mjt は金種別の貨幣
あるいは紙幣の流通量を表す。SDMt は季節ダ
種別貨幣の場合はそれぞれの貨幣の額面),yt
ミーである。
は実質経済活動(モデルの定式化に応じて実質
消費水準 ct を用いる場合もある)
,it は利子率,
循環要因について考慮していないので,近年の
しかし,式(2)は推計期間中の構造変化や
emt は電子マネー要因,zt は人口要因を表して
時系列分析の標準的な手法に従い,原データか
いる。
ら季節調整や景気循環要因を取り除く作業を行
この(1)式をさらに実証モデル用に線形近
い,さらに1階階差をとり定常性を確保した 0)。
9)本稿では通常の貨幣需要関数を用いるが,本来ならば,電子マネー普及期における貨幣需要は Rochet and Tirole(009)や Rysman(009)が論じているような two-sided markets の要素も考慮する必要がある。すなわち,
決済手段として電子マネーを受け入れる小売店と受け入れない小売店が共存する時期には,その両方で決済が出
来るためには,電子マネーと貨幣を両方保有する必要が出てくる。この場合,小売店の決済手段の選択問題と消
費者の決済手段の選択問題があり,両者の決済手段がマッチした場合にのみ,決済ができることを意味している。
言うまでもなく,貨幣決済の場合は常に受容されるので,貨幣保有動機は電子マネーが相当普及しても低下しな
いと考えられる。消費者の決済手段の選択は,単純に決済手段に対する選好によって決まるのではなく,小売店
での各種決済手段の受容性と決済が出来ないことに対する消費者のリスク回避度に応じて決まると考えられる。
長期的に電子マネーが全ての小売店で受容されるようになると,貨幣需要は普及期よりも低下するが,最終的に
は電子マネーは貨幣需要に対して影響を与えないという意味で中立的になるだろう。
-143-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
ln mjt = a0 + a1 ln yt + a2 it +
a3 ln(emt + 1) + a4 ln zt + εt � ln mjt = a0 + a1 � ln yt + a2 � it + a3 � ln(emt + 1)
+a4 � ln zt + a5 (ln mjt − a1 ln yt − a2 it ) + ε(4)
t
(3)
このモデルはダイナミックな貨幣需要関数で
ここで a5 の後にあるのが誤差修正項である。
あるが,さらに,貨幣流通高とその説明変数間
もし誤差修正項の係数である a5 の符号が負で
の長期的均衡関係を考慮にいれるため,誤差修
あれば,乖離が生じた場合,翌期以降長期均衡
正項を導入する )。これは均衡値と実現値の乖
に戻る動きがあることを示している。
離幅を,長期的均衡からの乖離と見なし,それ
式(4)が本稿で用いる実証モデルである。
を推計式に含めるという推計方法である。この
このモデルに対して,実際のデータを当ては
推計により長期的均衡からの乖離が生じた場合
め,最終的なモデル選択を行った )。推計期間
に均衡へ戻る力が働いているかが確認できる。
は 994 年 月から 008 年 月〔標本数:70〕
誤差修正項の作成については二つの方法が考え
である )。最終的に用いられた変数は次の通り
られる。一つは乖離幅として基本推計式(2)
の残差を用いたもの,もう一つは貨幣流通高を
である。mjt は「貨幣及び日本銀行券流通量」
,
yt は「鉱工業生産指数」,ct は実質「商業販売額
経済活動水準と利子率によって推計し,その残
(億円)
」,it は「一年未満定期店頭金利(パー
差を乖離幅として用いたものである。ここでは
セント)
」
,emt は「Edy+Suica 累積発行枚数(億
後者を用いている。
枚)」,zt は「人口(億人)
」である。
10)原データを以下のように加工した。(1)1985 年 10 月以降の各種通貨データを米国センサス局 X12 法
によって季節調整する。(2)名目貨幣価値で表示されている変数は CPI 総合指数で割り実質化を行な
う。金利の実質化は金利指標から「CPI 総合指数の対前年同月比変化率」を引いている。
(3)HodrickPrescott フィルターを用い,循環的変動を取り除く。
(4)自然対数化する。定常性に関しては Augmented Dickey Fuller 検定,Philips and Perron 検定を行った。これらの検定を通して1階階差をとる
ことで定常性が確保されていることを確認した。
11)誤差修正モデルについては岩田(1992,第5章)や Serletis(2007, Chapter 12)等を参照。
12)(2)式から(4)式までのモデル選択の過程では貨幣需要に影響を与えていると考えられる以下の
各種ダミー変数を含めて推定を行った。(1)消費税5%化ダミー(1997 年4月1日から消費税がそれ
までの3%から5%へと引き上げられた)。(2)消費税の総額表示化ダミー(2004 年4月1日から消
費税がそれまでの外税方式から総額表示方式へと変更された)
。
(3)銀行 ATM 有料化ダミー(2003 年
2月 17 日から大手行としては始めて東京三菱銀行にて銀行 ATM による 51 枚以上の大量両替が有料化
された)。(4)新 500 円貨発行ダミー(旧 500 円貨の偽造が増加したために,2000 年8月から新 500 円
貨が発行された)。(5)新紙幣発行ダミー(2004 年 11 月から新様式の1万円券,5千円券及び1千円
券が発行された)。(6)ゼロ金利ダミー(ゼロ金利政策は 1999 年2月から開始され,2000 年8月に一
端解除されたが,再び 2001 年3月から開始され,2006 年7月に解除された。また 2008 年 12 月からはゼ
ロ金利が導入されている)。(4)式の誤差修正モデルでは,これらの制度変更の効果はモデル変換の過
程で有意でなくなり除去されており,ダミー変数は含まれていない。
13)推定期間には電子マネー導入以前の期間,金利がある程度変動していた時期を含んでいる。
-144-
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Ⅴ.実証結果の解釈
表8に推定結果がまとめてある。この結果
イナスで1円硬貨を除いて有意な結果となって
は,貨幣需要関数の理論が要求する符号条件を
いる。しかし,00 円硬貨,500 円硬貨ではマ
ほぼ満たしていることがわかる。すなわち,実
イナスではあるが有意ではなくなり,000 円
質経済活動水準の係数は大部分がプラスで有意
札についてはプラスで有意な結果となってい
となり,一年未満定期店頭金利も大部分がマイ
る。5000 円札,0000 円札では有意でなくなっ
ナスで有意となっている。
ている。
また人口要因の係数は,ほぼ全ての金種にお
誤差修正項に関しては1円硬貨,0 円硬貨,
いてプラスで有意なとなっている。このことは
50 円硬貨,00 円硬貨についてマイナスで有意
人口の増加が貨幣需要を増加させていることを
である。逆に 000 円札,5000 円札ではプラス
意味している。
で有意になっている。つまり,小額貨幣につい
電子マネーの普及は,1円硬貨,5円硬貨,
ては,長期均衡から乖離した場合には,翌期に
0 円硬貨,50 円硬貨において全ての係数がマ
均衡に戻る動きがあることがわかった。
表8 貨幣需要関数の推定結果
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(注1)
上段は係数,下段は t 値を示す。*** は1%,** は5%,* は 0%棄却域の下,統計的に有意な係数であることを示す。
(注2)
t 値には robust standard error を使用している。
-145-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
(4)式は対数の1階差を取ったモデルで
また Lippi and Secchi(007)が ATM 機が身近
あったので,その推定係数が,そのままその変
にある人ほど,利子弾力性が低くなることを指
数の貨幣需要弾力性を表している。情報として
摘したように,電子マネーの普及が利子弾力性
は表8に加えて商業販売額を説明変数に入れた
に影響を与える可能性もあることを指摘してお
推定結果も含んでおり,弾力性としてまとめた
きたい。
4)
ものが表9である 。
本稿における推計では人口成長率を考慮して
実質経済活動に対する弾力性は係数が 0.5 近
いるがその弾力性は5~0 程度と推定されて
辺である。利子弾力性については- 0.~- 0.5
おり,きわめて弾力的となっている。人口成長
程度になっている。電子マネーについては,さ
率が桁外れに弾力的になっている理由は,この
らに桁数が下がり有意な金種に対しても
変数が何か他の変数の代理変数になっている可
- 0.000~- 0.0007 程度である。これらの値の
能性も含めてさらに考える必要がある。
桁数を比較してみると,電子マネーの貨幣需要
次に,金種間の弾力性について比較してみよ
に与える影響は他の変数の影響に比べ軽微であ
う。経済活動に対する弾力性は1円硬貨から
ることが明らかである。
0000 円札になるに従って大きくなっている。
ところで,電子マネーを新しい決済手段の追
これに対して,利子弾力性は- 0.~- 0.5 あた
加であると考えると,現在は電子マネーの普及
りで各金種による違いにはそれほど差がない。
が急速に進んでいるため,貨幣需要にそれなり
電子マネーに関しては小額貨幣における弾力性
に有意に影響を与えているが,その普及が一段
が比較的大きく,高額になるほど弾力性が低く
落すればさらに影響は低下すると考えられる。
かつ有意でなくなっている。
Ⅵ.政策含意
Ⅵ-1.電子マネーの技術進歩とセキュリティ
上はより安全ではあるが時間がかかりすぎ,交
問題
通機関の自動改札やコンビニでの認証・決済に
現在の日本における電子マネーの主流は非接
は向いていない。現在は電子マネー内に保蔵し
触 IC カード型のもので,その技術はフェリカ
ておける残高に限度があり,非接触 IC カード
(FeliCa)と呼ばれ,ほぼ全ての電子マネーが
の暗号を解読して,他人に接触することなく電
この技術を利用している。このカードの利点は
子マネーの残高を盗んだという事例は無いと思
交通機関の自動改札やビルの入館,コンビニや
われるが,電子マネー発行体が残高限度額を将
キオスクのレジなどで高速認証・決済処理がで
来引き上げるようなことになれば,暗号解読の
きることにある。接触型 IC カードであれば ID
インセンティブが高まる可能性もある。
やパスワードを入力することでセキュリティー
現行の非接触 IC カードのセキュリティを高
4)中田(007,009)では VAR 推定を行い,そのパラメータを用いてインパルス応答関数を求めている。これは,
電子マネーに関するショックが硬貨や紙幣の需要にどのような影響をもたらすかをダイナミックに追ったもので
あり,本稿のように弾力性をスナップショットとして見たものより長期的な影響を知ることができる。しかしな
がら,我々の判断では,電子マネーが急速に普及している現時点では貨幣需要関数のパラメータ自体が安定的で
あるとは考えられず,パラメータが一定期間安定的であることを前提にしたインパルス応答関数を使うことは適
切ではないと考えている。
-146-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
表9 貨幣需要の各種弾力性
定式化の種類
齊藤(2005)
鉱工業生産/商業販売額
鉱工業生産指数
金種
中田(2007)②
商業販売額
商業販売額
―
-0.03400
―
―
-0.01500
―
5千円 券
1.37300
―
-0.03100
―
1万円 券
1.73700
―
-0.05900
―
0.00120 ***
-0.00040 ***
0.00003 ***
5円貨
-0.00040
-0.00060 ***
0.00001
10円貨
-0.00180 ***
-0.00030 ***
-0.00001
50円貨
-0.00230 ***
-0.00020 ***
0.00001
100円貨
-0.00100 ***
-0.00020 ***
0.00000
500円貨
-0.00670 ***
-0.00100 ***
-0.00006
1千円 券
-0.00550 ***
-0.00060 ***
5千円 券
-0.00010
-0.00009
0.00000
-0.00002
1万円 券
0.00600 ***
1円貨
0.00070 ***
-0.00010 ***
0.00000
5円貨
0.00410 **
-0.00070 ***
-0.00003
10円貨
0.00090
-0.00040 ***
-0.00001
50円貨
0.00560 ***
-0.00080 ***
-0.00004 *
100円貨
1万円 券
-0.00010
0.01300 **
0.01490 ***
-0.00410
-0.00300 ***
0.00015 *
-0.00020 ***
0.00000
-0.00250 ***
-0.00011
-0.00240 ***
-0.00013 ***
-0.00240 *
0.00000
0.00720 *
-0.00170 ***
1円貨
0.03445
-0.00052
3.88227 ***
-0.49649 ***
5円貨
0.05344
-0.00074 **
7.29332 ***
-0.30557 ***
10円貨
0.16297 ***
-0.00022 *
3.66476 ***
-0.23338 ***
50円貨
0.04903
-0.00052 **
5.37939 ***
-0.50251 ***
100円貨
0.12079 ***
-0.00016
2.95466 ***
-0.26161 ***
500円貨
0.15031 ***
-0.00016
12.29443 ***
-0.62862 ***
1千円券
0.11891 ***
0.00015 *
5千円券
0.32693 ***
0.00009
6.58673 ***
-0.00026
27.88154 ***
1万円券
商業販売額
機会費用(半弾力性)
その他
0.70100
5千円 券
本稿②
利子率
1.13500
1千円 券
鉱工業生産
人口
1千円 券
500円貨
本稿①
電子マネー
5百円札を含む硬貨
1円貨
中田(2007)①
弾力性
経済活動水準
-0.06870
-0.00005
5.8417 ***
-0.05357
0.14748
-0.53753 ***
1円貨
0.0569
-0.0007 **
4.3873 **
-0.5147 ***
5円貨
0.1146 **
-0.0008 **
10.9498 ***
-0.2284 **
10円貨
0.2196 ***
-0.0002 *
6.3890 ***
-0.3047 ***
50円貨
0.0835
-0.0007 **
6.9198 ***
-0.4987 ***
100円貨
0.1648 ***
-0.0003 *
500円貨
0.2548 ***
-0.0003
1千円券
0.1525 ***
0.0004 **
9.6999 ***
-0.0747
5千円券
0.4146 ***
0.0007 **
13.0871 ***
-0.0379
29.9680 ***
-0.3921 **
1万円券
-0.1025
-0.0002
6.1308 ***
-0.2698 ***
19.8933 ***
-0.5341 ***
める努力を民間会社に求める一方 5),電子マ
ベースの技術進歩のイニシアチブを阻止するよ
ネーの残高限度額は一定水準に止めておくべき
うなことがあってはならない。
であろう。しかし,同時に,過度に危険回避的
電子マネーを新たな決済手段であると考えれ
になりセキュリティ問題を強調しすぎて,民間
ば,決済総額に占める割合が 0.% 程度にとど
5)電子マネーを巡るセキュリティ対策については鈴木・廣川・宇根(008)を参照されたい。
-147-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
まっている現状では,決済システムや金融シス
硬貨,5円硬貨,0 円硬貨などの小額貨幣の
テムには影響をほとんど与えていないという判
需要は確実に低下するだろう。このことは,貴
断がされている。では,民間ベースで進められ
重な金属資源の節約にもなるという側面を指摘
ている電子マネー事業に対して,政府が関与す
しておきたい。
ることはないのだろうか。これを決済手段に関
また,将来の消費税率が丸まった数字ではな
する一種の技術革新であると考え,それが中立
い場合,内税にしても支払額が端数になる場合
的な機能をはたしているのであれば,民間ベー
が多く出てくる可能性がある。この場合も,電
スでの普及を見守るのが筋ではないだろうか。
子マネーでの決済を選択する人が増え,それが
また,現金決済や銀行振り込み,郵便振り込
また,硬貨に使われている金属資源の節約につ
み,クレジットカードという他の決済手段が広
ながる可能性も出てきた。実際,989 年消費
範に利用可能である限り,電子マネーの普及に
税導入時,997 年消費税率引上時では1円硬
地域差があっても,これを政府が是正したり,
貨,5円硬貨の需要が増えたことが記録されて
補助したりする必要はないだろう。
いるが,今後,電子マネーの普及に従い,例え
消費税率が引き上げられても,貨幣需要には影
Ⅵ-2.小額貨幣の資源節約
響は出にくくなるのではないだろうか。
電子マネーの利用は 000 円以下の少額決済
加えて,電子マネー上では1円以下の決済も
というだけではなく,1円や5円単位の端数の
可能であり,価格設定の自由度が広がることも
つく支払額に対する決済に多く使われているこ
考えられる。さらに言えば,電子マネー決済
とがわかった。アメリカの1ペンスコインは亜
は,時間節約になることも知られており,決済
鉛で作られているが,近年の金属価格の高騰に
が集中的に発生する首都圏の主要駅やキオス
より,1ペンスコインを作るのに約 .4 ペンス
ク,コンビニエンスストア,大企業の食堂など
かかっており,基本通貨単位の1ドルを補助す
では時間節約の観点からも導入が広がっている
る硬貨としての1ペンスは廃止してもいいので
ようである。
はないかという議論が繰り返しなされている。
実際,日本の貨幣である1円硬貨の材質がアル
Ⅵ-3.法制度と会計基準
ミ,5円硬貨が銅と亜鉛の合金(黄銅)
,0 円
これまで電子マネーを規制する法律は前払式
硬貨が青銅(銅と錫の合金に亜鉛を含んだも
証票規制法(プリペイドカード法)があり,基
の)であり,金属資源としては次第に高価なも
準日の未使用残高が 000 万円を超えた場合に
のになりつつあり,小額貨幣,少なくとも1円
は残高の半分以上を供託する義務が課されてい
硬貨については原材料費およびその生産コスト
た。これまでこの法律は IC 型電子マネー(ス
は額面を超えていることが想定される )。
トアバリュー型)のみに適用され,サーバー型
既に見たように電子マネーの利用者分布は都
電子マネーには適用されてこなかった。そこで
市部に偏っており,全国規模で電子マネーが利
009 年6月より「資金決済に関する法律」(平
用されることは,現時点では想定できないし,
成 年法律第 59 号)が公布され,サーバー型
その意味では小額貨幣の流通は続くと考えられ
電子マネーも IC 型電子マネーと同様の規制を
る。本稿での実証結果が正しいとすれば,1円
受けることになり,プリペイドカード法は廃止
)ヨーロッパ中世の小額貨幣が額面以上の価値を持つことで,それを保蔵したり,他の利用目的に使ったりした
結果,小銭が不足した事実が Sargent and Velde(00)で議論されている。もし,小額硬貨の金属価値が額面よ
り高くなるようなことが続けば,ヨーロッパ中世と同じようなことが起こるかもしれない。しかし,現在我々は
電子マネーという決済手段を持っているので,中世の人ほど決済に苦労することはないだろう。また釣り銭が不
足した場合の商取引や貨幣単位の設定に関しては北村(999,004)を参照されたい。
-148-
<財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 21 年第5号(通巻第 97 号)2009 年 12 月>
された。
なっているが,この方式では繰延収益(負債)
本稿では議論の対象とはしなかったが,企業
が膨らみ,企業の収益率指標が低下することが
が販売促進の目的でつける景品や値引きに相当
予想され,企業側の反発が大きく,ポイントの
するポイントが電子マネーと交換できたり,ポ
会計処理に関しても合意は得られていない。
イント交換サイトで一つのポイントにまとめて
ポイントと類似したものに地域通貨というも
商品購入したり,ネット銀行を通して現金化す
のがある。これは地域内だけで財やサービスを
ることも可能になって来ている。現状ではポイ
交換する手段として用いられているもので,経
ントは景品表示法や独占禁止法によって消費者
済効果だけではなく,地域のボランティア活動
保護,競争政策の枠組みで議論されており,電
や交流の活性化の手段として用いられている。
子マネーとの関連で「資金決済に関する法律」
近年ではこの地域通貨が Suica や PASMO といっ
に含めるまでには議論が収斂しておらず,今後
た電子マネー上に記録できるようになってきて
も検討すべき課題として残っている。
いる 7)。現状では,これは電子マネーとは別の
また,ポイント発行企業の会計処理に関して
情報として保蔵されているが,航空会社のマイ
も大きな議論がある。すなわち,国際会計基準
レージや量販店のポイントが,いつのまにか電
ではポイントは「将来の売り上げの繰り延べ
子マネーと交換可能になったように,地域通貨
分」であるとの解釈から,ポイントの発行は負
が民間ベースの交換市場を通して全国区の通貨
債として計上し,そのポイントの「公正価値」
になる場合も想定しておくべきかもしれない。
を売り上げから除外しなければならないことに
Ⅶ.おわりに
本稿では,電子マネーの概要とその普及実態
により低下していることが明らかになった。逆
を見た後,さらに詳しいミクロデータに基づく
に 000 円札は電子マネーの普及により,チャー
利用実態を検証した。そこでは,全国で電子マ
ジなどの目的でより利用されるようになって需
ネーを保有している世帯は 4.4% 程度であり,
要が増加しており,電子マネーが貨幣と一方的
地域別には関東が突出して高く 44.% に達して
に代替している訳ではないことがわかった。こ
いる,利用者は 5-49 歳の世代であり交通機関
こでは実証していないが,Fujiki and Tanaka
の利用に用いる場合が最も多いことなどが明ら
(009)の結果などを見る限り,電子マネーの
かになった。また電子マネーが決済手段として
普及期には,電子マネーの受容性に不確実性が
選択されるのは主として 000 円以下の支払い
あるために,貨幣と電子マネーを両方保有する
であり,単身者の利用率が高そうだということ
必要が出てくるので,一時的には貨幣需要が増
がわかった。
加する可能性もある。また,電子マネーの貨幣
さらに,貨幣需要関数を推計した結果,50
需要弾力性は極めて低く,電子マネーが貨幣需
円硬貨以下の小額貨幣需要が電子マネーの普及
要に与える影響は,現在のような急速に利用が
7)一橋大学のある国立市では「くにたちポイント」という地域通貨が国立市商工会によって発行されており,加
盟店での買い物に対してポイントが付き(05 円で1ポイント)
,そのポイントを使って加盟店での買い物ができ
る(1ポイントが1円)
。このポイントは Suica および PASMO 上に電子マネーとは別途記録されるようになって
いる。
-149-
電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
拡大している時期でも,限定的であることがわ
動改札やコンビニエンスストアでの時間節約的
かった。
な決済に限らず,高齢化社会で小銭の扱いに煩
このような結果を見る限り,電子マネーは決
雑さを感じる老人にとっても利便性の高い決済
済方法の一つであり,長期的には実体経済に対
手段となる可能性は高い。さらに,電子マネー
して中立的なものと考えられ,貨幣需要にも長
は,小額貨幣の資源節約になったり,価格設定
期的には影響を与えなくなるものと予想され
の自由度を広げる意味でも有効な手段でもあ
る。電子マネーの普及は一種のインフラ整備で
る。これらの新技術を積極的に利用していくこ
あり,それに関わりのある企業にとってはビジ
とは望ましいだろう。
ネスチャンスとなるかもしれないが,実体経済
そのための法制度の整備や会計基準の設定は
のありかたを変えるようなインパクトのあるも
必要である。また,電子マネーを巡る実態を把
のではないだろう。
握するためには,電子マネー関連の統計を整備
しかしながら,電子マネーは,交通機関の自
し,公開していくことも重要であろう。
参 考 文 献
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-151-
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電子マネーが貨幣需要に与える影響について:時系列分析
付録 A データ
本稿で用いたデータの出所,単位,調査時点
等は以下の通りである。
期店頭金利【月次平均】」,
「普通預金金利
【月次平均】」
(全てパーセント)
(日本銀行,
・通貨データ
日経ニーズ)
貨幣及び日本銀行券流通量(億円)
(日本
銀行)
・期待物価上昇率
「CPI 総合指数の対前年同月比変化率」(総
・物価
務省)
消費者物価指数の総合指数(接続指数)
(CPI 総合指数)
(総務省)
・電子マネー普及度
「Edy+Suica 累積発行枚数(億枚)
【月末】
」
・経済活動
(中田(007)及び日経 MJ)
「商業販売統計(億円)
【月次】」,
「鉱工業
生産指数【月次】
」
(経済産業省)
・その他指標
「人口(億人)【次月1日付】
」
(総務省)
,
・金利
「日経平均株価【月次終値】」
(日経 needs)
,
「無担保コールレート【月末】
」
,
「郵便貯金
「平均残日銀当座預金(億円)
」
(日本銀行),
金利【月次平均】
」
,「一年満期定期預金の
「円ドルレート【月次終値】」
(日本銀行),
新規預入金利【月次平均】
」,「一年未満定
「日経平均株価【月次終値】」
(日本銀行)
-152-
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