Comments
Description
Transcript
かけがえのない自分、かけがえのない健康(中学生用)第4章 薬物乱用と
第4章 薬物乱用と健康 薬物乱用って どういうことだろう? 日本における薬物乱用の実態を知ろう! 薬物乱用とは、覚せい剤などの禁止されている薬物やシンナーなどの化学物質を不正な 目的や方法で使用することです。また、医薬品の本来の治療目的からはずれた用法、用量で の使用も薬物乱用です。一度だけでも「乱用」と言い、犯罪です。近年、教育や取締りの強 化により減少傾向にありますが、大麻やMDMAなどの薬物乱用が急増しています。 大麻取締法による検挙人数 2500 2000 検 挙 1500 人 数 1000 (人) 500 0 検挙者総数 うち未成年者 1525 1224 1224 1873 2173 2312 2063 MDMA等合成麻薬による検挙者数の推移 2423 2375 500 検 挙 300 者 数 200 (人) 100 127 105 188 192 191 123 182 197 184 11年 12年 13年 14年 15年 83 54 0 0 平成11年 12年 138 113 29 7 0 13年 14年 67 検 挙 150 者 数 (人)100 50 0 7.3 6.4 5.6 5.4 93 17 43 42 40 13 平成5年 6年 6.3 103 19 7年 21 8年 9年 81 24 10 9 8 7 6 5 4 中学生 高校生 未成年者の比率 6.2 32 (薬物乱用対策推進本部調べ) 250 200 66 15年 16年 17年 18年 19年 中・高校生覚せい剤事犯検挙者数及び未成年者の比率 219 8.0 409 312 (薬物乱用対策推進本部調べ) 220 472 272 0 16年 17年 18年 19年 450 検挙者総数 うち未成年者 400 6.0 5.3 105 54 83 4.4 3.6 66 3.2 3.2 55 2.5 44 2.5 未 成 年 者 の 比 率 3 (%) 2 28 1 4 0 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 39 24 45 44 16 41 36 7 23 11 (薬物乱用対策推進本部調べ) ●近年、青少年による覚せい剤事犯の検挙者数は減少傾向にありますが、大麻、MDMA 等錠剤型合成麻薬事犯の検挙者の6割∼7割を未成年及び20歳代の若者が占めているこ とから、青少年を中心に乱用されている状況が懸念されています。MDMA等錠剤型合成 麻 薬は、その形 状等から使 用に対する抵 抗 感が希 薄になることなどから、これからも 乱用の拡大には注意が必要です。 ●最近では違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の拡がりも心配されています。 違法ドラッグとは麻薬などには指定されていないものの、麻薬などと類似の有害性があ ることが疑われている薬物で、人に乱 用させることを主な目的として製 造され、販売さ れているものを言います。 乱用される薬物はいずれもとても危険な薬物です! 23 第4章 薬物乱用と健康 乱用される薬物を見てみよう! ●薬物は大切な脳の働きを変えます ●依存という“やめられない”状態になります。 ●覚せい剤 ちゅうすう 中枢神経が興奮し、気分が高揚して、 疲労がとれたように感じますが、薬がきれるとその反 けんたいかん 動で、強い疲労感や倦怠感、 脱力感が襲ってきます。繰り返し使 用していると中枢神経に もうそう 異常をきたし、幻覚や妄想を伴う覚せい剤精神病になります。大量に摂取すると死んでしま うこともあります。 ●シンナー等有機溶剤 めいてい 急激に酩酊状態となり、大量に摂取すると、 呼吸困難に陥り死に至ります。情緒不安定、無 ゆうきようざいせいしんびょう 気力となり、幻覚や妄想が現れて、有機溶剤精神病になります。 ●大麻(マリファナ) 感覚が異常になり、幻覚や妄想が現れます。乱用を続けていると無気力になり大麻精神病 になります。生殖機能の低下、月経異常を引き起こすとの報告もあります。 ●MDMA ●ヘロイン ●マジックマッシュルーム 覚せい剤とほとんど同じ作用とLSD の ような幻覚作用があります。急性中毒 で、死んでしまうことがあります。 落ち着いたような気分を味わいますが、 おうと けいれん 薬がきれると嘔吐や痙攣などの激しい たいやく りだ つ 退 薬 症 状( 離 脱 症 状)に襲われます。 大量に摂取すると、呼 吸困難に陥り、 死んでしまうこともあります。 サイロシン、サイロシビンなどの 幻 覚 を引き起こす麻薬が成分として含まれ ており、L SD と似 た 作用を示します。 麻薬原料植物として規制されています。 ●コカイン ●LSD ま ひ 覚せい剤とほとんど同じ作用を示しま 幻覚が 現れます。色 彩 感覚が麻痺し、 すが、効 果 が 迅ほっさ 速 で 強 烈 で す。大 量 空間が歪んだような感覚に襲われます。 摂取すると痙攣発作が繰り返し起こり、 転落などの事故死の原因になります。 死 んでしまうこともあります。幻 覚や 妄想が 現れて、コカイン精神 病になり ます。 薬物は別の呼び名(隠語)で 呼ばれている場合があります。 ●覚せい剤 (スピード、エス、シャブ) ●大麻 (チョコ、ハッパ、ハッシシュ) ●シンナー (アンパン、ジュントロ) ●MDMA (エクスタシー、エックス、バツ) (写真:関東信越厚生局麻薬取締部 近畿厚生局麻薬取締部) 24 第4章 薬物乱用と健康 薬物乱用の悪循環の おそろしさを知ろう! 乱 用 正常な脳の働きを変えてしまいます。 急性中毒 量によっては、急激に心身に異常 をもたらし、最悪の場 合、死んで しまいます。 依 存 やめられなくなります。 薬 物が 欲しくてたまらなくなり、 がまんできなくなった状態を依存 と言います。薬物の最も恐れられ ているところです。 たんさく 慢性中毒 どんなことを しても薬物を 手に入れよう とします。 薬物の量をさらに 増 やさないと、き かなくなります。 たい せい 中毒性精神病になります。 幻覚や妄想に支配され、人格に異 常をきたします。このため、疑 い 深くなったり、恐怖感にとらわれ、 犯 罪を起こすこともあります。ま た、心臓や肝臓など全身の臓器が 影響を受けます。 薬物をやめていても、脳には薬物 の記憶が残っていて、少量の薬物 でも幻覚や妄想が現れることがあ り ま す。ま た 、スト レス な ど に よって突 然、幻覚、妄想などの中 毒性精神病が再発することがあり ます。これをフラッシュ バックと 言い、とても恐れられています。 薬がきれると薬が欲しくて たまらなくなります。身 体 全 体がだるいとか、震えが くるなどの身体的な苦痛を 感じ、これを退薬症状(離 脱 症 状 )と言います。これ が苦しくて次の薬物探索行 動を引き起こします。 25 第4章 薬物乱用と健康 薬物乱用によって こんなことにも! 薬物乱用の社会的影響 家庭問題 友人問題 ❶生活の乱れ ❶けんかを起こしやすくなり、友人、知 ほうかい ❷家庭内暴力、家庭の崩壊など 人から離れ、孤立 ❷薬物乱用仲間の形成 学校での問題 犯 罪 ❶欠席、学習不適応 きょうかつ ❶薬物を手に入れるために起こす恐喝 ❷校内暴力 せっとう ❸他の生徒への薬物乱用の拡がり や窃盗などの事件 ❷乱 用した薬 物 の 作用に 基づく凶 悪 な犯罪 ❸暴力団の資金源となり、健全な社会 そが い を阻害 colum n 未成年者の喫煙、飲酒はゲイトウェイ じょうしゅう 未成年者の薬物乱用は、常習喫煙者や飲酒者がほとんどであるため、また、喫煙や飲酒行動が薬物乱 用より早い時期に起きているため、たばこやアルコールは、ゲイトウェイドラッグと呼ばれています。 喫煙経験とシンナー遊び経験の関係 シンナー遊び経験と覚せい剤乱用経験の関係 喫煙経験なし シンナー経験なし 喫煙経験あり 4.5 4.1 4 4 シ ン 3.5 ナ ー 3 経 験 の 2.5 あ る 2 人 の 割 1.5 合 1 (%) 0.6 0.5 0 シンナー経験あり 35 0.4 30.9 覚 30 せ い 剤 25 経 験 の 20 あ る 人 15 の 割 合 10 (%) 5 26 0.2 男 女 0 男 0.1 女 (和田清ら2006) 26 第4章 薬物乱用と健康 薬物乱用に対する 社会的対策を知ろう! 薬物乱用は法律で厳しく取り締まられています。 大麻 大麻取締法 懲役5年 覚せい剤 麻薬及び 向精神薬取締法 覚せい剤取締法 懲役10年 シンナー等 毒物及び 劇物取締法 懲役1年 ヘロイン 懲役10年 ●持っているだけでも 罰せられます ●懲役刑など厳しい 罰則があります MDMA あへん あへん取締法 懲役7年 コカイン 麻薬及び 向精神薬取締法 違法ドラッグ 懲役7年 (いわゆる脱法ドラッグ) 薬事法 懲役5年 麻薬及び 向精神薬取締法 懲役7年 ※規制法律と最高刑 (非営利目的の所持・譲渡) 見たことがありますか? 日本では、政府全体で薬物乱用問題に取り組むため、平成15年度からは「薬物乱用防止 新五か年戦略」を立ち上げて取り組んでいます。 (麻薬・覚せい剤乱用防止広報啓発キャラバンカー) (麻薬探知犬) (埼玉県平成20年度薬物乱用防止 ポスターコンクール中学生の部 最優秀賞) 27 第4章 薬物乱用と健康 薬物乱用 Q & A Q1 A Q4 絶対にそんなことはありません。 一度でも乱 用すると、依存 症になってし まう危険があります。一度でも死 んでし まうこともあります。 Q2 A 脳や神経はシンナーの害を受けや すく、正 常な 働きが できなくなり ます。 大量に吸うと死ぬこともあります。依存 症になりやすく、乱 用を続けると脳細 胞 を溶かし、「 脳 の 萎 縮 」が 起きます。破 壊された脳細胞は一生回復しません。 Q5 絶対にそんなことはありません。 覚せい剤は、一時的に心身をだまして食 欲をなくすだけで、作用がなくなると異 常に食欲が 強くなります。覚せい剤を乱 用すると、依存 症や中毒になり、心 身に 悪い影 響を与えます。もちろん疲れがと れたり、勉 強に良いなどということは、 絶対にありません。 A きっぱり『いやだ』と言いましょう。 「友だちに 嫌われるから」と思っても、 はっきり『 N O! 』と言うべきで す。友だ ちからどう思われても、自分 の 心 身、自 分の一生を大切にしましょう。危険な場 所・場面に近づかない、危険を感じたら 立ち去ることが大 切です。少しでも危な いと思ったら、“ きっぱり断る”“ 逃 げ る”勇気をもちましょう。 Q6 Q3 A A 一生、やめ続けなければもとに 戻ってしまいます。 依存症に治るという言葉はありません。 何年やめていても再び 乱用してしまえば もとの状 態に戻ってしまいます。一 生や め続けることが必要です。 A 担任 や 養 護 教諭、家 族、警察など に相談しましょう。 薬物を乱 用している友だちのことや、薬 物をすすめられたりした場 合は、一人で 悩まず、きちんと助けを求めることが大 事です。まわりの信頼できる大人に相談 しましょう。 もっと詳しく知りたい人は、下のホームページを見てみましょう! 財団法人 日本学校保健会 http://www.hokenkai.or.jp/3/3-1/3-1.html 28