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特別支援学級担任 ガイドブック

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特別支援学級担任 ガイドブック
平成 21 年度
特別支援学級担任
ガイドブック
新潟市教育委員会
1
は
じ
め
に
平成 19 年 4 月の学校教育法の一部改正により,特別支援教育が本格的に開始されました。文
部科学省からは,特別支援教育の推進について基本的な考え方や留意事項等が示されました。そ
こでは,特別支援教育は,幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,
生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うものであること,
これまでの特殊教育の対象の障がいだけでなく,知的な遅れのない発達障がいも含めて,特別な
支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものであること,さら
に,障がいのある幼児児童生徒への教育にとどまらず,障がいの有無やその他の個々の違いを認
識しつつ様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであることの3点
が基本理念として示されました。
このような新しい流れを踏まえ,新潟市では教育ビジョンを策定し,その一つの柱に「自立と
社会参加を目指した特別支援教育の推進」を掲げました。また,学校教育実践上の努力点にも「可
能性と個性を伸ばす特別支援教育の推進」を定め,校内支援体制の充実などについて各校に取組
をお願いしています。
この教育ビジョン具現の具体的な方策として,学校を地域や市全体で支援するための特別支援
教育サポートネットワークに取り組んでいます。
平成19年6月に開設した「特別支援教育サポートセンター」は,このサポートネットワーク
の核となり,学校からの相談や研修,検査等の支援を行っております。また,特別支援学校と連
携し,様々な方面から学校を支援できる体制作りを進めています。
この度,サポートネットワークの取組の一つとして,特別支援学級を担任されている先生方の
日々の教育実践に役立つことを目指して「特別支援学級担任ガイドブック」を作成しました。
この「特別支援学級担任ガイドブック」は,特別支援学級を担任されて経験の浅い先生方を対
象とし,日ごろご質問を多くいただく内容や教材教具を精選して内容構成しましたが,経験を重
ねている先生方や特別支援学級設置校の先生方にも幅広くご活用いただきたいと思っております。
平成21年6月
2
新潟市教育委員会学校支援課長
<
目
次
>
1 教育課程等について
Q1 教育課程の編成と届け出はどのようにしたらよいですか。
P4
Q2 授業時数と時間割はどのようになっていますか。
P5
Q3 特別支援学級における教育課程編成のポイントはどのようなことですか。
P6・P7
Q4 学習指導要領のポイントは何ですか。
P8
Q5 特別支援学級で編成できる特別の教育課程とは,どのような教育課程で
すか。
P9
Q6 特別支援学校の知的障がい小学部の生活と小学校低学年の生活はどのよ
うに違うのですか。
P10
Q7 各教科等を合わせて指導を行う形態を教育課程にどのように取り入れた
らよいですか。
P11
Q8 教育課程の中に,特別支援学級独自の活動と通常学級と共通の活動とを
組み合せるほうがよいですか。
P12
Q9 作業学習の趣旨及び指導上の配慮事項について説明してください。
P12
Q10 「自立活動の時間」における指導をどのように進めたらよいですか。
P13
Q11 特別支援学級でも個別の指導計画を作成しなければならないのですか。
P14
Q12 個別の指導計画を作成するための手順はどのようにしたらよいですか。
P15・P16
Q13 特別支援学級において「個別の教育支援計画」はどのように扱えばよい
ですか。
P17・P18
Q14 交流教育及び共同学習の意義と,進めていく際の配慮事項はどのようなこと
ですか。
P19
Q15 交流及び共同学習を総合的な学習の時間に実施してよいですか。
P20
2 学級経営等について
Q16 特別支援学級の編制基準はどのようになっていますか。
Q17 特別支援教育コーディネーターは,どのような役割を担うのですか。
Q18 全教職員による支援体制はどのように築いたらよいでしょうか。
Q19 就学時健康診断の内容や方法、実施時期等は,どのようになっています
か。
Q20 特別支援学級在籍児の教科書はどのように採択すればよいですか。
Q21 指導要録の記入の要点は何ですか。
Q22 特別支援学級の教室配置や施設・設備、備品の整備にはどのような配慮
が必要ですか。
Q23 保護者への就学奨励費の支給制度とはどのようなものですか。
Q24 宿泊学習や調理実習等の活動での事故防止について特に気を付けること
は何ですか。
3
P20
P21
P22
P22
P23
P24
P25
P25
P26
1
教育課程について
Q1 教育課程の編成と届け出はどのようにしたらよいでしょうか。
A1
〔特別支援学級〕
特別支援学級は,小学校又は中学校に設置された学級ですから,小・中学校学習指
導要領に基づいて教育課程を編成することが原則です。
しかしながら,特別支援学級は,通常の学級で学習することが困難な児童生徒のた
めに編制された学級ですので,対象となる児童生徒の障がいの種類,程度等によって
は,障がいのない児童生徒の教育課程をそのまま適用することは必ずしも適当でない
場合があり,児童生徒の障害の状態や程度に応じた教育課程が必要となります。
そこで,学校教育法施行規則第138条では,「特別支援学級に係る教育課程につ
いては,特に必要がある場合は,特別の教育課程によることができる」と規定してい
ます。
特別支援学級における教育課程の編成は各学校の創意工夫に負うところが大きい
だけに,責任も重大ということになります。
なお,特別支援学級において特別の教育課程を編成する場合には,学級の実態や児
童生徒の障がいの程度等を考慮の上,特別支援学校小学部・中学部の学習指導要領を
参考にするなど実情に合った教育課程を編成する必要があります。
各教科等の時数については,児童生徒の障がいの状態や程度に応じて適切に定める
ことができます。しかし,総授業時数については,同学年の通常の学級と同じにする
必要があります。
〔通級による指導〕
小・中学校の通常の学級に在籍している比較的軽度の障がいのある児童生徒に対し
て,主として各教科等の指導を通常の学級で行いながら,児童生徒の障がいに応じた
指導を特別の指導の場(通級指導教室)で行う場合にも,特別の教育課程によること
ができます。
このことにより,障がいによる学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とする
「自立活動」を主として,特に必要があるときは,各教科の補充指導を行うことがで
きます。通級による指導の授業時数は,年間 35~280 時間(週1~8時間)を標準と
していますが,学習障がい者及び注意欠陥多動障がい者については年間 10~280 時間
までを標準にしています。
これらの通級による指導を行う場合は,この特別な指導を小・中学校の教育課程に
加え,又はその一部に替えることができます。
また,在籍校以外の他校で通級による指導を受けた場合にも,特別の教育課程に係
る授業と見なすことができます。
特別支援学級並びに通級による指導において,特別の教育課程を編成する場合には,
市町村立の小・中学校にあっては,市町村教育委員会にあらかじめ届け出なくてはな
りません。年度初めに所定の様式で届け出を行ってください。
4
Q2
A2
授業時数と時間割はどのようになっていますか。
小学校と中学校の各学年における各教科・領域及び総合的な学習の時間,外国語
活動の授業時数並びに各学年の総授業時数の標準は,学校教育法施行規則で示されて
います。特別支援学級の場合も総授業時数は小・中学校の各学年の標準によることに
なります。
各教科等の時数については,学校や児童生徒の実態に即して適切に定めることと
なっています。時数配当に当たっては,児童生徒の実態に即して,各領域,各教科等
を合わせた指導及び総合的な学習の時間のバランスを考えることが大切です。
1単位時間は,各学校において適切に定めることができます。その場合にあっても,
授業時数をカウントする単位時間は小学校45分,中学校50分であることに留意す
る必要があります。
次に時間割編成上の留意点を示します。
・特別支援学校の学習指導要領を参考にする。
・児童生徒の障がいの種類及び程度を十分考慮する。
・ 学級の児童生徒数に応じた時間割の編成をする。
・時間割を年間で固定しないで,弾力的に組み替える。
・通常の学級との交流及び共同学習を適切に行う。
・校内の他の特別支援学級及び隣接地区の特別支援学級との合同学習の有無をあら
かじめ検討して編成する。
・全教職員の共通理解を図り通常の学級と時間割を調整する。
・保護者の希望を考慮し,理解を深める。
・児童生徒の生活のリズムや流れを大切にして編成する。
・児童生徒に,1週間,1日の時程を分かりやすく表現する。
5
Q3 特別支援学級における教育課程編成のポイントはどのようなこ
とですか。
A3
1
教育課程編成の特例,自立活動,個別の指導計画について
教育課程編成の特例
特別支援学級は学校教育法施行規則第138条に定められてあるように,それぞれ
の学級がもっている役割や機能から一人一人の児童生徒の実態に応じて特別の教育
課程を編成することが認められています。このことは,特別支援学級における教育課
程の編成 が学校の 創意工夫に任せられている側面が極めて強く,それだけに責任も
大きいということになります。図は,知的障がい者を教育する特別支援学校の教育課
程を参考にした編成の一例を図式化したものです。
<特別な教育課程の編成例>
生活
国語
教科別の
国語
社会
指導
特
算数
数学
特
別
音楽
理科
別
支
支
図画工作
音楽
援
援
体育
美術
学
学
(小) 保健体育
校
領域別の
校
職業・家庭
(外国語)
(中)
道徳
特別活動
自立活動
(外国語活動)
(総合的な学習
の時間)
2
の
指
導
内
容
(
小
中
学
部
)
指導
を
参
考
に
し
た
教
育
課
程
教科等を
合わせた
指導
国語
算数
音楽
図工
体育
国語
社会
数学
理科
音楽
美術
(小)
保健体育
道徳
特別活動
自立活動
(外国語)
(中)
日常生活の指導
生活単元学習
遊びの指導
作業学習
(外国語活動)
(総合的な学
習の時間)
自立活動
特別支援学級等においては,児童生徒の実態に応じて自立活動を組み入れた教育課
程を編成することが可能です。
自立活動は「個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害に基づく学習上又は生活上
の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度及び習慣を養い,も
って心身の調和的発達の基盤を培う」ことを目標としています。
自立活動の内容は,6つの区分と26の項目で示されていますが,児童生徒の実態
により,必要となる内容をいくつか選び,組み合わせて指導することになります。
6
指導の場面として,特別支援学級等に在籍する児童生徒は障害が軽度であることか
ら,「自立活動の時間」を設定するより,領域・教科及び外国語活動,総合的な学習
の時間における指導,あるいは,生活単元学習,作業学習等のような教科等を合わせ
た指導の形態の中で行うことが多いといえます。
3
個別の指導計画
近年,児童生徒の障がいの多様化・重度化によって,一人一人の実態に応じた指導
がこれまで以上に必要となってきました。このような指導を行っていくためには,
個々の児童生徒の的確な実態把握を行うとともに,それに応じた指導目標を設定し,
指導内容・方法を工夫するなどして,適切かつ具体的な個別の指導計画を作成する必
要があります。
特に特別な教育課程を編成する場合は,各教科や指導の形態で個々の児童生徒に,
どのような目標を持ってどのような内容を指導していくのかを明らかにして計画を
立てることが必要になってきます。個別の指導計画は,一人一人に応じた指導を教職
員が共通理解し組織的に進めるために作成することが大切です。作成された個別の指
導計画は,計画(Plan)実践(Do)評価(Check)改善(Action)の過程において,
適宜評価し,効果的な指導を行う必要があります。
7
Q4 学習指導要領の改訂のポイントは何ですか。
A4
この度の学習指導要領の改訂の基本的な考え方は,教育基本法改正で明確になった
教育の理念を踏まえ「生きる力」を育成すること,知識・技能の習得と思考力・判断
力・表現力等の育成のバランスを重視すること,道徳教育や体育などの充実により,
豊かな心や健やかな体を育成することが挙げられています。
これらを受け,特別支援学校学習指導要領では,障がいの重度・重複化、多様化に
対応し,一人一人に応じた指導を一層充実すること,自立と社会参加を推進するため,
職業教育等を充実することが,改訂の基本的な考え方になっています。
具体的な改善事項としては
①
一人一人に応じた指導の充実
○
一人一人の実態に応じた指導を充実するため,すべての児童生徒に「個別の
指導計画」及び「個別の教育支援計画」の作成を義務付ける。(特別支援学校)
②
自立と社会参加に向けた職業教育の充実
○
③
地域や産業界と連携し,職業教育や進路指導の充実を図る。
交流及び共同学習の推進
○
障がいのある子どもと障がいのない子どもとの交流及び共同学習を計画的・
組織的に行う。
④
障害の重度・重複化、多様化への対応
○
発達障がいを含む多様な障がいに応じた指導を充実させるために「自立活動」
の指導内容として,「他の人とのかかわりに関すること」を規定した。
などが改められました。
小学校は平成23年度から全面実施,中学校は平成24年度から全面実施となりま
す。なお,総則及び自立活動については,21年度から先行実施,知的障がいの各教
科については平成21年度から新学習指導要領によることも可能になりました。
8
Q5 特別支援学級で編成できる特別の教育課程とは、どのような教
育課程ですか。
A5
特別支援学級では,
「特に必要がある場合」,学校教育法施行規則で規定する小・中
学校の各教科・領域や標準授業時数及び教育課程の基準(学習指導要領)によらない
特別な教育課程を編成することができます。
特別な教育課程を編成する場合には,地域や学校・学級の実態や児童生徒の障がいの
状態,発達の程度を考慮しながら,創意工夫をして編成することが大切です。
【特別な教育課程とは】
○ 各 教 科 の 内 容 :下学年の 内容 に替 えた り , 知 的障 がい の特 別支援 学校 の内 容
に替えたりすることができる。
○時 数 の 取扱い:各教科の時数や1単位時間など弾力的な取扱いができる。
○ 教 科 等 を合 わ せ た 指 導 :生活単 元学習 ,作業 学習等 の「 教 科等を 合わせ た指
導」を行ったり,教科の一部又は全部を合わせて指
導したりことができる。
○自立活動の指導 :領域「自立活動」の指導を取り入れることができる。
○教 科 用 図書:実態によって特別な教 科用図書を使用できる。
このように,特別支援学級では,実情に合わせて教育課程を編成することがで
きます。しかし,「教科等を合わせた指導」で合わせられるのは各教科・領域で
あ り,「総合的な学習の時間」と小学校の「外国語活動」は活動自体がねらいと
なり,合わせることができないので注意が必要です。
9
Q6 知的障がい特別支援学校小学部の「生活」と小学校低学年の「
生活」はどのように違うのですか。
A6 どちらも生活を中心とした教科ですが、下表のような相違点があります。どちらを
取り入れるかは、児童の実態によります。
相違点
特別支援学校小学部「生活」
対象学年
1~6年
指導内容
小学校
「生活」
1~2年
(1)基本的生活習慣
(1)学校と生活
(2)健康・安全
(2)家庭と生活
(3)遊び
(3)地域と生活
(4)交際
(4)公共物や公共施設の利用
(5)役割
(5)季節の変化と生活
(6)手伝い・仕事
(6)自然や物を使った遊び
(7)きまり
(7)動植物の飼育・栽培
(8)日課・予定
(8)生活や出来事の交流
(9)金銭
(9)自分の成長
(10)自然
(11)社会の仕組み
(12)公共施設
授業時数
各校が適切に定める
週3時間
指導の形態 主に「教科等を合わせた指導」の 「教科による指導」として取り扱う。
中で取り扱うことが一般的
10
Q7 教科等を領域・教科を合わせた指導を教育課程にどのように取
り入れたらよいでしょうか。
A7
知的障がいのある児童生徒の特性として,学習によって得た知識や技能が断片的に
なりやすく,実際の生活の場で応用されにくいことや,成功経験が尐ないことなどに
より,主体的に活動に取り組む意欲が十分に育っていないことなどが挙げられます。
そのために,従来から知的障がいのある児童生徒の教育では,
「日常生活の指導」
「遊
びの指導」
「生活単元学習」
「作業学習」などの,教科等を合わせた指導を大切にして
きました。特別支援学級の児童生徒の指導においても,指導内容を経験や活動のまと
まりとして組織し直し,地域・学校や児童生徒の実態に応じて,教科等を合わせた指
導,教科別の指導,領域別の指導との組み合わせを工夫して,教育課程を編成する必
要があります。
これらのことを図に表すと次のようになります。一般的に特別支援学校では「国語」
や「算数・数学」を「教科別の指導」として,
「社会」
「理科」
「生活」
「家庭(職業・
家庭)」などの内容は「教科等を合わせた指導」として取り扱うことが多いようです。
中学校
小学校
日常生活の指導
生活単元学習
遊びの指導
生活単元学習
作業学習
教科別・領域別の指導
総合的な学習の時間
11
Q8 教育課程の中に特別支援学級独自の活動と通常学級と共通の
活動を組み合わせる方がよいですか。
A8
特別支援学級は,障がいがあるために,通常学級における教育では十分な教育効果
を上げることが困難な児童生徒のために,特別に編成された学級です。
したがって,教育課程を編成する際は,基本的には児童生徒個々の障がいの程度や
状態に応じて工夫することが大切です。
児童生徒によっては,特別支援学級独自の教育課程を編成する方がよい場合と通常
学級と共通する活動を多く設定した方がよい場合とがあるでしょう。
例えば,学校行事においては,特別の事情がないかぎり,全校児童生徒が参加でき
る内容や方法を工夫しましょう。また,朝の会や給食の時間を同じ時程にして,交流
の機会を設定することも一つの方法です。
総合的な学習の時間については,相互の交流を図る上でも,共通の活動を設定する
工夫が望まれます。しかしながら,安易に共通の活動にすることは避けなければなり
ません。特別支援学級独自の総合的な学習の時間も大切にしてほしいものです。
総合的な学習の時間のねらいや児童生徒の実態を考慮して,共に活動することが可
能な内容については,積極的に取り組んでほしいものです。また,その際には,特別
支援学級の担任と通常学級の担任とが連携し,効果的な指導を行う工夫も大切です。
Q9 作業学習の趣旨及び指導上の配慮事項について説明してくだ
さい。
A9
作業学習は,作業活動を学習の中心に据えて,働く力や生活する力を高めることを
意図しています。
作業学習の指導は,領域・教科を合わせた指導ですから,単に職業・家庭の内容だ
けでなく,各教科,道徳,特別活動及び自立活動に関する諸々の内容を統合した形で
扱うものです。
目標設定の観点は,作業態度や習慣の形成に関するものと,作業に必要な知識,技
能の獲得に関するものが考えられます。
作業種目選定に当たっては,教育的価値の高いもの,段階的指導が可能なもの,製
品の利用価値が高いものなどに配慮してください。作業学習の時間数は特に規定され
ていません。
12
Q10 「自立活動の時間」における指導をどのように進めたらよいでし
ょうか。
A10
従来,養護・訓練と呼ばれていた領域が,児童生徒のより主体的な活動を目指し
て,平成 12 年度から「自立活動」という名称変更になりました。
自立活動の内容は,1健康の保持,2心理的な安定,3環境の把握,4身体の動き,
5コミュニケーション,他の人とのかかわりに関することの6つの区分と各区分が4
~5項目で全26項目からできています。
自立活動は,特別支援学校の場合は,実施しなければならない領域です。また,知
的障がいの特別支援学校の場合は自立活動の時間とするか,あるいは領域・教科を合
わせた指導の中で取り扱います。個別の指導計画も義務付けられています。
特別支援学級の場合は,このような教育課程を参考にするとしても,必ず実施する
義務はありません。個別の指導計画の作成も同様です。しかしながら,児童生徒の障
がいに基づく種々の困難を主体的に改善・克服するための活動はぜひ設定したいもの
です。また,そのためにも児童生徒の実態に基づいた個別の指導計画の作成が望まれ
ます。
「自立活動の時間」における指導は,他の領域・教科の指導と関連付けながら,次
のように進めるとよいでしょう。
<自立活動の時間における指導を実施する手順>
1
自立活動の時間の必要な児童生徒を選出する。
2
実態把握に基づく短期・長期の指導目標を設定する。
①
専門的・医学的診断結果等も参考にする。
②
言語、運動、情緒、行動等からみた指導目標を設定する。
3
4
指導内容及び方法の指導仮説を立てる。
①
学級または個別の指導計画を策定する。
②
課題によって個人別や小集団別のグルーピングを行う。
③
必要教員数を決定し,週時間割を作成する。
指導を実施し,評価し,修正をする。
自立活動の指導をより充実させるため,保護者や教職員との共通理解を深めるよ
う努めてください。
13
Q11
A11
特別支援学級でも個別の指導計画を作成しなければなりませ
んか。
個 別の 指 導計 画は , 一 人一 人 の 児 童生 徒 の 的確 な 実 態 に基 づ き ,教 育 的 ニ ー
ズに応じた指導目標,指導内容や方法等を工夫し,継続的,発展的な指導を行
うための教育計画の一つです。各学校では,教科,領域等のそれぞれの指導目
標,指導内容等を書き込んだ年間指導計画,単元計画を作成してい ることと思
います。個別の指導計画は,この年間指導計画,単元計画に基づき,一人一人
の児童生徒のニーズに応じた,個別の指導目標,指導内容,配慮事項等を明確
に示したものです。
特 別 支 援学校では,これまで 重複障がい者の指導及び自立活動の指導に 際し
て個別の指導計画を作成することとなっていましたが,平成 20 年3月に告示さ
れた特別支援学校小学部・中学部学習指導要領では,各教科の指導に当たっても,
個別の指導計画の作成が義務付けられました。
特別支援学級については,義務付けはされていませんが,学級の人数が尐人
数 であったり,一人一人の障がいの状態が異っていたりすることから,これま
でも,各教科・領域や自立活動の指導に当たっては,個別の指導計画を作成し
てきました。
平 成20 年3月に告示された 「小学校・中学校学習指導要領 」にも「指導の
計画又は家庭や医療,福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計
画を個別に作成すること」と示されてあり,具体的には「小学校学習指導要領
解説
総則編」にある,障がいのある児童の指導において,(個別の指導計画)
や(個別の教育支援計画)を作成するなどが考えられると示されています。
し た が って,特別支援学級に おいても ,児童生徒 一人一人のニーズに応じた
適切な指導・支援を行うためにも,個別の指導計画を作成するように努めるこ
とが大切です。
14
Q12 個別の指導計画を作成するための手順はどのようしたらよいで
しょうか。
A12
特別支援学級の児童生徒は、障がいの状態や発達段階が一人一人異なっているので,
指導内容や指導方法も一人一人で違ってきます。そのために,一人一人の指導目標、
内容,方法,評価方法等を明らかにする上で個別の指導計画は必要なものです。
○ 作成の手順
実態把握
①保護者からの情報
生育暦,家庭環境,家庭での様子,本人・保護者の願い,現在困っているもの
などを調査票や面談などで聞き取る。
②医学的な情報
診断,障がいの特性,身体機能,服薬状況,医学的な配慮事項などを保護者
を通して,又は主治医から情報を得る。
③教育的な情報
基本的生活習慣の自立度,学習上の特性や学力,WISCⅢ等の知能検査,
チェックリスト,対人関係,コミュニケーションの状況など
④その他の情報
手帳の有無,福祉制度の活用状況,障がいの受容の状況など
目標の設定
①長期目標の設定
個々の児童生徒の将来の可能性を広い視野から見通した上で,現在の発達段
階において育成すべき具体的な目標を設定する。小学校・中学校在学期間,学
年などの期間で達成したい姿を記述していく。目標の選定に当たっては「自立活
動」の項目を参考にする。
②短期目標の設定
学期,月などを指導期間として,達成可能な目標を具体的に設定する。長期目
標を,スモールステップ化し,具体的な子どもの姿で示されることが多い。
15
指導計画の作成
①指導内容の選定
各教科・領域の指導内容を参考にして,「指導の形態」や時数等を設定する。
「指導の形態」については,教科による指導,教科等を合わせた指導等のバラン
スを考慮していく。
②指導計画の作成
指導計画は「指導の形態」に沿って記述されるのが一般的である。それぞれの
場面で,具体的な目標を持ち,誰が,どのような手だてで指導していくかを具体
的に書いていくことが必要である。また,学級全体の年間指導計画の教科等の
題材・単元の計画と対応させながら,個々の目標や内容を挙げていくことも大切
である。
指導の展開
実際の指導
指導計画を基に単元・題材の指導計画を立て,支援の方法や評価の観点など
を職員間で共通理解を図る。また,メインテーチャーとサブテーチャーの役割を
明確にし,具体的な場面を想定し,支援のポイントを押さえておく。また,1時間
の授業についても,記録と評価を行い,次時への改善や個々の目標の達成度の
見極めに活用する。
評 価
定期的な評価
月,学期などの評価期を設定し,定期的に評価する。評価項目はできるだけ数
値や具体的な姿で表し,複数の職員で評価するようにする。その中で,児童生徒
の成長の様子を確認するとともに,指導方法や手だてが適当であったかという視
点も持つようにする。
改 善
指導目標,指導計画の修正,改善
評価に基づいて短期目標が達成されたかを判断し,場合によっては次のステッ
プへ目標を修正する。また,達成されない場合は,指導方法を見直す,さらに継
続し目標に近付けるなど改善策を立てて,次期への指導計画につなげていく。
P(Plan)
D(Do)
C(Check)
A(Action)
実態把握,目
標設定
計画に基づい
た実践
指導の評価,
個々の目標に
対する評価
目標の修正
指導法の改善
保護者への説明・同意・情報提供
16
Q13 特別支援学級において「個別の教育支援計画」はどのように
扱えばいいのでしょうか。
A13 「個別の教育支援計画」は,特別支援学校では義務化されましたが,特別支援学級
においては,努力事項となっております。
「個別の教育支援計画」は,児童生徒のことについて,教育のみならず,福祉,医療,
労働等の様々な側面の連携・協力を生み出すための大切なものです。これは,本人,
保護者の直接的な支援だけではなく,学校にとっても,困難な状況が出てきたときに
力になるものです。
それでは,具体的に連携先や収集する情報はどのようなものがあるのかを下の表に
まとめてみました。
情報の種類
具体的な内容例
家庭生活に関する情報 ・家族構成,保護者の勤務先,平日の下校後または休日の世話人
・兄弟の学校,担任
・在宅支援ヘルパー等の活用
余暇・地域生活に関す ・放課後支援サービスの活用状況
る情報
・スポーツクラブ・音楽教室,塾など
・送迎サービス,休日のガイドヘルプの活用
・地域でよく行き来している友だち
・障害者サークル,ボランティア等の活用
医療に関する情報
・受診暦、診断暦(乳児健診、3歳児検診、療育センターの活用暦等)
・主治医(小児科、精神科等)
福祉に関する情報
・児童相談所の相談,手帳の有無,種類,等級
・ショートステイ,レスパイサービス等利用先
・市区障がい福祉担当,福祉センター,広域生活支援センターの担当者
就学前に関する情報
・幼稚園・保育所,幼児相談機関の担当
・担当保健師
教育に関する情報
・個別の指導計画
・就学指導委員会の判断,サポートセンターの活用状況
・就学奨励費の活用
・進学・進路希望
就労・労働に関する情 ・現場実習先
報
・プレジョブ支援機関担当
その他
・NPO法人,親の会などの所属
・地域の子育て支援サークル
・研究機関,大学,心理学専門家との連携
17
ここに挙げたものはあくまでも例であり,書かれてくる内容は個々によって違いま
す。
なぜ,この教育支援計画を学校で作成するのかというと,学齢期は「主たる支援者」
が学校だからなのです。毎日通う学校が児童生徒にとっても保護者にとっても一番身
近であり,一番状況を把握している場なのです。児童生徒は,将来,教育機関から労
働や福祉の機関の支援を受けながらの生活になります。学校にいる間の支援情報につ
いては学校で集約作成し,確実に次の機関に引き継いでいくことが望まれています。
新潟市では平成19年から,特別支援教育を利用する小学校入学生に「入学支援フ
ァイル」を配付し,保護者から学校への情報伝達に活用していただいています。入学
支援ファイルの提出は保護者の「主たる支援者」としての学校への期待が込められて
います。場合によっては各機関の担当者が集まって支援会議を開いたり,学校が持っ
ている情報を共有したりすることによって,支援の方向が広がることも期待できます。
簡単な様式で結構だと思いますので,在学期間中に,各機関と情報交換をしながら,
尐しずつ書き加えながら作成を進めていただきたいと思います。
18
Q14 交流及び共同学習の意義と進めていく際の配慮事項は,
どんなことですか。
障がいのある子どもとない子どもとが共に活動することは,双方の子どもにとって
A14
意義のある活動として,様々に工夫され実施されてきています。また,平成16年6
月に障害者基本法が改正され,交流及び共同学習を積極的に進め,相互理解を促進す
ることが規定されました。
障がいのある子どもとない子どもが一緒に参加する活動は,相互のふれ合いを通じ
て豊かな人間性をはぐくむことを目的とする交流の側面と,教科等のねらいの達成を
目的とする共同学習の側面があるものとして捉え,推進していく必要があります。
具体的な方法としては,通常の学級での給食や清掃,帰りの会への参加,音楽や図
工・美術,体育,総合的な学習,外国語活動などの授業への参加,または,委員会活
動やクラブ活動,学校行事等の特別活動や中学校の部活動への参加などが考えられま
す。
交流及び共同学習を進める際の配慮事項としては,次のような点が挙げられます。
①
全校体制で計画を立て,通常の学級担任をはじめ関係者が,児童生徒の障がい
の特性や支援の方法についての理解を深める。
②
障がいのある児童生徒の活動の状況や周囲の児童生徒の様子を把握し,円滑に
活動できるように指導助言する。
③
事故防止に努めるとともに,活動が児童生徒にとって過重な負担にならないよ
う留意する。
交流及び共同学習の推進にあたっては,授業の中での活動だけではなく,学校生
活全般を通しての日常的なふれ合いや,休憩時間に特別支援学級を開放する,特別
支援学級の活動に通常の学級の児童生徒を招待するなど学校ぐるみで様々な機会を
作っていくことが大切です。
19
Q15 交流及び共同学習を総合的な学習の時間に実施してよいです
か。
A15
交流教育に関して,特別支援学校ばかりではなく小・中学校の学習指導要領にお
いても明記され,各学校の積極的な取組が期待されています。
特に,総合的な学習の時間との関連は深く,この時間を活用して実施する例が多く
なっています。
従来は,特別活動や領域・教科を合わせた指導形態である生活単元学習の中で実施
されていました。現在もそのようにして実施しているところもあります。
交流教育は,障がいのある児童生徒にとって,経験を広め,社会性を培い,豊かな
人間性を養う上で,大きな意義があります。自校及び近隣の小・中学校の通常学級や
特別支援学級の児童生徒との交流活動,あるいは地域の人々と触れ合う機会を積極的
に設定したいものです。
実施に当たっては,直接的な交流ばかりではなく,手紙やビデオ,作品の交換,情
報通信ネットワークを活用した活動などの間接的な交流も考えられます。
今までの教育課程を見直し,特別活動や生活単元学習で実施していた交流教育を総
合的な学習の時間に位置付け,より総合的な単元を構成して,創意工夫を生かしなが
ら,特色ある教育,特色ある学級づくりを図ることも一つの方法です。
2
学級経営等について
Q16
A16
特別支援学級の編制基準はどのようになっていますか。
特別支援学級の編制基準は,学校教育法施行規則第120条で,「小学校又は中学
校における特別支援学級の1学級の児童又は生徒の数は,15人以下を標準とする」
と示しています。
さらに「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の第
3条第2項において「同表の下欄に掲げる数を標準として,都道府県の教育委員会が
定める」とし,標準の数を8人と規定しています。
これを受けて,新潟県教育委員会は1学級の児童生徒数を8人と定めています。
市町村の教育委員会は,毎学年、学級編制についてあらかじめ都道府県教育委員会
の認可を受けなければならないとされています。このことから,特別支援学級の設置
は市町村教育委員会が行いますが,開設や認可に当たっての1学級の児童生徒数は,
国の基準を基に,都道府県教育委員会が定めます。
20
Q17 特別支援教育コーディネーターは、どのような役割を担う
のですか。
A17
一人一人の特別な教育的ニーズに適切に対応し,質の高い教育的な支援を可能
にするためにも,特別支援教育コーディネーターの役割は重要になります。
この主な役割として次のようなことが挙げられます。
1
学校内の連絡調整
(特別支援学校の場合)
・医療的ケアの必要な児童生徒への対応などにおいて,医療機関や福祉機関と
の連携協力
・学校外の専門家を非常勤講師に活用する際の連絡調整
・センター的役割を果たすための調整の中核
(小・中学校の場合)
・特別支援学校や医療・福祉機関との連携協力
・区の教育事務所やサポートセンターなどの関係者や関係機関との連携
・校内の教員の相談窓口
・校内研修の企画や運営
・保護者等との情報・意見交換の中核
2
個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成と活用
・作成を担当する者の明確化と作成者への支援
・個別の教育支援計画作成における教育・医療・福祉・労働等の関係機関との
連携
・指導や支援の具体的な内容,方法等の計画,実施,評価(Plan-Do-See) におけ
る中核
特別支援教育コーディネーターの養成は,新潟市では平成18年度からはじめ,
20年度に全市立幼稚園,小・中学校,高等学校に1名指名しています。
21
Q18
全教職員による指導体制はどのように築いたらよいですか。
学習指導要領には,特別支援学級又は通級による指導については,教師間の連携に
A18
努め,効果的な指導を行うことが明記されています。
障がいのある児童生徒が,生き生きとした学校生活を送るために,校長の運営方針
に基づき,職員会議等で特別支援学級の目標や指導方針・方法等について共通理解を
図り,全教職員で特別支援教育を支援する体制を確立することが大切です。
そのためには,特別支援教育コーディネーターを中心として,校内委員会を活用す
ることが考えられます。この組織は,全教職員や地域,保護者の特別支援教育に関す
る理解・啓発をリードしていく中心的機能を果たすことになります。
通常学級の教員とチームを組んで指導を進めることにより,指導法や理解等での交
流が深まり,一人一人の障がいの状態に応じた教育を推進することができるでしょう。
通常学級の教員にも特別支援学級に入ってもらい,得意分野を生かしたティームティ
ーチングによる指導を工夫することによって,児童生徒の活動がより活発になること
が期待されます。
Q19 就学時健康診断の内容や方法、実施時期等は、どのように
なっていますか。
A19
就学時健康診断は,学校保健法に基づき,就学を予定している幼児の心身の状態を
的確に把握し,義務教育諸学校への就学に当たって,保健上必要な勧告,助言を行う
とともに,適正な就学を図ることを目的として,市町村教育委員会が行うものです。
[内容・方法について]
学校保健法施行規則(平成 14 年 3 月 29 日 文科省令 12 号)の要点は次のとおり
です。
1 知能検査については,標準化された知能検査方法に限定することなく,医師等の
専門家による面接や行動観察など適切な方法であればよいこととしたこと。
2 色覚の検査を必須の項目から削除したこと。
3 就学時健康診断票の様式について改正したこと。
・ 「就学義務の猶予又は免除」,「盲学校・聾学校又は養護学校への就学」,「その
他の疾病及び異常(知能)」の(知能)を削除したこと。
22
・
様式(注)において,「その他の疾病及び異常」欄には知能程度の区分を記載
することになっていたが,知的障がいの疑いがあり検査が必要と認められる者に
ついては,その旨を記載するように改めたこと。
[実施時期等について]
学校保健法施行令の要点は,次のとおりです。
1 就学時の健康診断について,就学に関する手続の実施に支障がない場合にあって
は,三月前までの間に行うことができるように改めたこと。
2 就学時の健康診断を実施した後に,当該健康診断を受診していない者が転入した
場合,すみやかに健康診断を行うという趣旨を明確化したこと。
さて,新潟市では,下記に該当する場合においては,記入要領に従って学校支援課や
区の教育事務所に速やかに報告をお願いしています。
○ 就学基準に該当し,学校からの報告に基づいて,市教育委員会が秋季就学相談会
の参加及び就学指導委員会の審議を受けることを該当保護者に勧めることが適当
であると校内就学指導委員会で判断したもの。
○ 心身の障がい等の理由により,就学時健康診断を欠席したもの。
※ 記入要領は,毎年9月の中旪ころに学校に配布しています。
なお,障がいのある児童の就学に当たっては,早期相談の充実に努めるなど,適切な
就学指導を実施することが大切です。
そこで,就学時健康診断終了後には,就学時健康診断当日の様子から,市教育委員会
への報告が必要と思われる場合,または,保護者が持参した「保健調査票」に相談事項
が記載されている場合には,できる限り教育相談を行い,就学時健康診断の様子を説明
した上で,保護者の悩み・心配ごとを聞き取り,学校支援課及び区の教育事務所で主催
する「秋季就学相談会」についての理解を図ってください。
Q20 特別支援学級在籍児の教科書はどのように採択すればよいで
しょうか。
A20
特別支援学級で使用する教科書は,原則として検定教科書又は文部科学省著作教科
書を使用しなければなりません。しかし,特別支援学級においては,知的障がい児等
の教育をはじめとして特別の教育課程を編成する場合においては例外が認められて
おり,児童生徒の実態に応じた教科書を使用してもかまいません。
特別支援学級で採択できる教科書は以下の3点です。
①
小・中学校の通常学級で使用される検定教科書
23
同学年のもので実態にそぐわない場合は,下学年のものを使用
②
文部科学省著作の特別支援学校用教科書
☆印教科書…国語、算数、数学、音楽
③
学校教育法附則第9条による一般図書(特別支援学級・学校用)
教科書の採択に当たっては,教科書無償措置法との関連で,一教科一教科書が原
則になっていることから,児童生徒の実態に即した十分な配慮が必要です。
また,児童生徒によっては,通常学級のように教科書に沿って学習を進める方法
は困難な点が多い上,学習効果もあまり期待できない場合もあります。
そこで,領域・教科を合わせた指導の形態による生活単元学習や作業学習等が多
く編成されています。特別支援学級での教科書の使用は生活に密着した学習課題を
達成していく過程で,適切に活用していくことが重要です。
Q21 指導要録記入の要点は何ですか。
A21
指導要録の取扱い及び要点は,基本的には通常の学級も特別支援学級も同じです。
通級による指導を受けている児童生徒については,「総合所見及び指導上参考とな
る諸事項」欄に,通級指導教室の学校名,通級による指導の授業時数,指導期間,指
導の内容や結果等を記入します。
特別支援学級の「学籍に関する記録」は,通常の学級と同じものを使用し,「指導
に関する記録」は,以下の点に留意した上で特別の教育課程に対応した様式を使用し
ます。
○
特別の教育課程を編成し,教科等を合わせた指導などを行っている場合には,
必要に応じて「指導に関する記録」欄の様式を工夫し,その状況を適切に記入で
きるようにする。
○
年度途中に通常の学級から特別支援学級に入級した場合は,「学籍に関する記
録」の学級・整理番号欄は二重見え消しで,横に新学級名と新整理番号を書き加
える。学級担任名欄には,新しい担任名と期間を記入する。
「指導に関する記録」は,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄に,変更理
由,変更先学級種別,変更期日を記載する。以後は,特別支援学級用の「指導に関す
る記録」に記載する。
24
Q22 特別支援学級の教室配置や施設・設備,備品の整備にはどの
ような配慮が必要でしょうか。
A22
障がいのある児童生徒が自己の可能性を最大限に伸ばし,「生きる力」を育むため
には,よりよい環境を整えることが基本です。教室配置の条件として,学級の性格に
より教室の選定条件は異なりますが,一般的に考えられることは次のとおりです。
①職員室,保健室,トイレ,洗面所,給食室に近接した教室
②体育館やグランド,中庭にすぐ出られる教室
③通常学級の児童生徒と交流しやすい教室
④保護者控室などを併設し,自由に来校し懇談しやすい教室
⑤通風、採光が良く,静かな落ち着いた雰囲気の教室
特別支援学級等の施設・設備,備品の整備は,対象となる児童生徒の障がいの種類
や程度、指導内容や方法によって異なります。知的障がい学級や自閉症・情緒障がい
学級の場合は,次の配慮が必要です。
教室の他に,畳やカーペットが一部施されたプレイルーム,手洗い場やトイレの設
置が必要です。さらに,中学校では多様な作業ができる作業室,男女別の更衣室の設
置も必要です。
また,設備・備品として,示黒板,個別ロッカー,教材・絵本・図書管理庫,木
工・紙工・陶芸設備,清掃用具,湯沸器,洗濯機,時計,鏡,パソコン,プリンタ,
テレビ,ビデオデッキ,カメラ,電話,CDラジカセ,オルガン,楽器,トランポリ
ン,飼育水槽,調理用具,文字カード,絵カード等が必要です。
Q23 保護者への就学奨励費の支給制度とはどのようなものです
か。
A23
特別支援学級在籍の児童生徒の保護者に対し,市町村で就学奨励費が支給されてい
ます。これは特別支援学級及び特別支援学校への就学を奨励し,保護者の経済的負担
を軽減するために支給されているものです。就学奨励費の支給対象は次のとおりです。
①学校給食費
②交通費(通学費・職場実習費)
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③修学旅行費(修学旅行・校外活動費)
④学用品購入費(文房具等)
⑤新入学児童生徒学用品費等(ランドセル・通学服等)
⑥通学用品購入費(上記⑤の対象者を除く)
就学奨励費の支給対象経費は児童生徒全員に一律に支給されるわけでなく,保護者
等の前年度の収入額に応じて3段階に支弁区分されています。支弁区分決定のために
は,保護者等から収入額・需要額調書等を提出してもらう必要があります。
特別支援学級の場合,第Ⅰ・Ⅱ段階では,各対象経費の半額(通学費,職場実習費
は全額)が,第Ⅲ段階では,通学費は全額,職場実習費については3/4の額が支給
されます。
また,通級による指導を受けている児童生徒には,通学に係る特別に必要な交通費
のみが通学費として支給されます。
Q24
A24
宿泊学習や調理実習等の活動での事故防止について特に気
を付けることは何ですか。
生活単元学習や総合的な学習の時間等を活用して,内・校外宿泊学習や調理実習が
積極的に実施されていると思います。その際に,特に留意しなければならないのが事
故防止です。
主な事故は,火災,けが,食中毒です。事故が起きないように,児童生徒の障がい
の状態に応じた配慮と対策が必要です。
特別支援学級の児童生徒は,危険を予測したり,危険を適切に回避したり,あるい
は清潔に対して細心の注意を払ったりすることは難しいことを念頭におく必要があ
ります。そのため,担任はきめ細かな安全及び清潔への配慮や対策を心掛ける必要が
あります。
そこで,次のような点に留意して事故防止を図ってください。
①事前・事後における学習環境の安全点検
②児童生徒の障がいや性格に応じた安全対策
③事故発生等の緊急事態における対応マニュアルの整備
④児童生徒への安全や清潔に関する指導
⑤児童生徒の情緒の安定を図る日常的な指導と対応
⑥保護者への事故防止に関する理解と啓発
⑦児童生徒の健康面に関する事前・事後調査
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