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動物性集合胚の作成に関する安全性及び臨床応用に係る技術的問題点
資料3 動物性集合胚の作製に関する安全性および 臨床応用にかかる技術的問題点 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 窪田宜之 1 動物性集合胚の作製に関して 懸念される事項 バイオハザード(生物学的危害)の観点から • 動物の細胞を用いることにより人獣共通感染症等に感染して、実験 従事者が被害を受けることがないか。 • 動物の体内でヒト臓器等を作製して、それをヒトに移植することに より移植されたヒトへの感染がないか。(医薬品としての安全性) バイオハザード以外の観点から ・動物の体内でヒトの細胞が正常に機能するのか。 →動物種が異なれば、持っている遺伝子セットが異なる。 2 病原体の種類 種類 ・ウイルス:動物、植物等の細胞内でのみ増殖する。核酸とタンパク質等からなる。 (動物ウイルス、植物ウイルス、魚類ウイルス、昆虫ウイルス、細菌のウイルス) ・細菌: 人工培地、環境中で増殖可能。(リケッチアなどを除く) 動物、植物の内部で増殖するものも存在する。(病原細菌、腸内細菌、内生菌) ・真菌: 多くは常在菌として自然界に存在。動物、皮膚粘膜の正常細菌叢としても 存在。(クリプトコッカス、アスペルギルス等) 輸入真菌症には強毒なものが存在する。(コクシジオイデス、ヒストプラスマ) ・原虫: 単細胞性真核生物。水中で自由生活をする種や動物に寄生する種がある。 (マラリア、クリプトスポロジウム等) ・寄生虫: 動物に寄生する。環境中にも存在する。(エキノコッカス、日本住血吸虫等) ・プリオン: 動物、植物の体内に存在するタンパク質。 牛では異常型がウシ海綿状脳症等を起こす。 3 感染の成立要件 3つの要件:感染症一般に対して ・病原体 病原性は宿主と病原体の相互の関係で発揮される。 ・宿主 ・感染経路 ・ウイルスや細菌等も多くの属・種にわかれる。 属・種により感染宿主が異なり、病原性も異なる。 ・Strain(株、菌株) 微生物の分類で同じ属、種にふくまれても、遺伝的に均一でなく、多少の違いがある。 そのため、病原性の強い株や弱い株が存在する。ワクチンには病原性がほとんどなく、 免疫源性があるものを使用する。 病原体には様々な種類があり、その中では同じ区分に入るものでも、病原性 は必ずしも均一ではない。 4 宿主 感受性宿主: 動物ごとに感受性の種差がある。 ・口蹄疫ウイルスは、牛,水牛,豚,めん羊,山羊など39種の偶蹄目および11種の齧 歯類に感染する。ヒトには感染しない。 ・腸管出血性大腸菌の主な生息場所は、ほ乳動物、鳥類の腸管内とされており、 牛、豚、鶏、猫、犬、馬、鹿、野鳥などから分離される。家畜の中では特に牛の腸管や 糞便からの分離が多く報告されているが、牛に対して症状は示さない。 ・同じ動物種であっても系統によって、感染抵抗性が異なることが存在する。 センダイウイルスに対するマウスの感受性、マレックウイルスに対する鶏の感受 性。 ・病原体に対する感受性は系統差以外に、年齢、基礎疾患の有無等も関与する。 一般的に、幼弱や老齢動物、ストレスを受けている動物、先天的後天的を問わず免 疫不全動物は感受性が高いといった傾向がある。 感染のしやすさを感受性といい、感染可能な範囲を宿主域と呼ぶ。 5 病原体の地域性 ・エボラ出血熱 アフリカ中央部(スーダン、コンゴ民主共和国、ガボン)および西アフリカで発症し ている。自然宿主は不明。コウモリが有力とされている。 ・重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルス) 中華人民共和国広東省で発生し、2003年7月に新型肺炎制圧宣言が出されるま での間に8,069人が感染し、775人が死亡。 ・ニパウイルス感染症 1997年から1999年にかけてマレーシアで3回の原因不明の脳炎の流行が確認さ れた。森を切り開いて農場を開設、コウモリ→豚→ヒト? 新興感染症は病原体と未感染の感受性宿主が、新しく出会うことで発生する。 また、従来の疾病も宿主の生息域が限られたり、国間の検疫のために感染症の広域 流行が妨げられる。→感受性宿主の地域性、感染経路の寸断により地域性が生じ る。 6 人獣共通感染症 病原体別 細菌性 疾病名 炭疽 ペスト 結核 仮性結核 パスツレラ症 サルモネラ症 リステリア症 カンピロバクター症 レプトスピラ病 ライム病 豚丹毒 細菌性赤痢 エルシニア・エンテロコリティカ 感染症 野兎病 鼠咬症 ブルセラ症 感受性宿主、由来等 牛、馬、めん羊、山羊、豚、水牛、シカ、イノシシ 齧歯類、サル、ウサギ、猫 牛、山羊、水牛、しか 豚、犬、猫、タヌキ、ネズミ、サル、シカ、イノシシ、ウサギ 犬、猫、牛 牛、水牛、しか、豚、いのしし、鶏、あひる、七面鳥、うずら 哺乳類、鳥類、昆虫、水、土壌に広く分布 牛、ニワトリ ネズミ、牛、豚、犬 ノネズミ、シカ、野鳥、犬、馬、牛(マダニによる媒介) 豚、牛、羊、鶏、七面鳥 主な感染源はヒト、サルにも感染する。 ほとんどすべてのほ乳類(特に豚、犬、猫)、鳥類 ウサギ、齧歯類、馬、めん羊、豚、いのしし ネズミ 牛、羊、犬、齧歯類 7 病原体別 疾病名 感受性宿主、由来等 ウイルス性 インフルエンザ 鶏、あひる、うずら、七面鳥、豚、馬 SARS コウモリ、ハクビシン等 狂犬病 犬、牛、馬、めん羊、山羊、豚、水牛、鹿、イノシシ ウエストナイル熱 エボラ出血熱 マールブルグ熱 Bウイルス感染症 ニューカッスル病 日本脳炎 ダニ脳炎 腎症候性出血熱 鳥、イエカ、ヤブカ コウモリ、猿 ミドリザル、(金鉱労働?) アカゲザル 野鳥、鶏 豚、犬、馬、サギ類、コガタアカイエカ マダニ 齧歯類 ハンタウイルス肺症候群 齧歯類 サル痘 b) ネズミ、猿 8 病原体別 疾病名 リケッチア・コクシエ Q熱 ラ・バルトネラ性 ツツガムシ病 猫ひっかき病 原虫性 睡眠病 シャーガス病 リーシュマニア症 クリプトスポリジウム感染症 寄生虫性 エキノコックス症 日本住血吸虫症 肺吸虫症 旋毛虫症(トリヒナ症) 肝吸虫症 肝蛭症 アニサキス症 真菌性 クリプトコッカス症 カンジダ症 アスペルギルス症 皮膚真菌症 プリオン性 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 感受性宿主、由来等 ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、鳥類 ノネズミ、ツツガムシ 猫、ネコノミ ツエツエバエ、豚 イヌ、ネコ、サルなど多数、サシガメ 犬、サシチョウバエ 牛・ヒツジ・ヤギ、感染者の糞便 イヌ科、猫、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウサギ、トナカイ ミヤイリガイ、牛 モクズガニ、サワガニ クマ、豚、イノシシ モツゴ、ホンモロコ、タナゴ 反芻類、豚、ヒメモノアラガイ、コシガタモノアラガイ 海産魚介類、クジラ、イルカ、アザラシ、オキアミ 犬、猫、鳥類 牛 牛 9 実験者に対しての安全性 インフルエンザの流行様式に関する学説 インフルエンザウイルス(鳥)・流行型 インフルエンザウイルス(豚)・ほ乳類への感染力あり 豚に感染・遺伝子セグメントの組換え ほ乳類への感染かつ流行型の発生 豚の細胞 鶏の細胞 混合するとヒトへ感染するインフルエンザウイルスが発生する。 このようなことはありません。 実験室で気をつけるべき、人畜共通感染症は存在するが、異種の細胞を混合すること による新たな疾病が発生は通常起こりえない。従って、動物性集合胚を作成することに よる新たなリスクは発生しないと考えられる。 10 感染症または微生物に関する法的規制 感染症法 1類感染症 :ただちに届出。 (1)エボラ出血熱 (2)クリミア・コンゴ出血熱 (3)痘そう (4)南米出血熱 (5)ペスト (6)マールブルグ病 (7)ラッサ熱 2類感染症 :ただちに届出。 (1)急性灰白髄炎 (2)結核 (3)ジフテリア (4)重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属 SARSコロナウイルスであるものに限る) (5)鳥インフルエンザ(H5N1) 3類感染症 :ただちに届出。 (1)コレラ (2)細菌性赤痢 (3)腸管出血性大腸菌感染症 (4)腸チフス (5)パラチフス 4類感染症 :ただちに届出。 (1)E型肝炎 (2)ウエストナイル熱 (3)A型肝炎 (4)エキノコックス症 (5)黄熱 (6)オウム病 (7)オムス ク出血熱 (8)回帰熱 (9)キャサヌル森林病 (10)Q熱 (11)狂犬病 (12)コクシジオイデス症 (13)サル痘 (14)重症熱性血小板減少症 候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る。) (※平成25年3月4日より追加) (15)腎症候性出血 熱 (16)西部ウマ脳炎 (17)ダニ媒介脳炎 (18)炭疽 (19)チクングニア熱 (20)つつが虫病 (21)デング熱 (22)東部ウマ脳炎 (23) 鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く) (24)ニパウイルス感染症 (25)日本紅斑熱 (26)日本脳 炎 (27)ハンタウイルス肺症候群 (28)Bウイルス病 (29)鼻疽 (30)ブルセラ症 (31)ベネズエラウマ脳炎 (32)ヘンドラウイルス 感染症 (33)発しんチフス (34)ボツリヌス症 (35)マラリア (36)野兎病 (37)ライム病 (38)リッサウイルス感染症 (39)リフトバ レー熱 (40)類鼻疽 (41)レジオネラ症 (42)レプトスピラ症 (43)ロッキー山紅斑熱 5類感染症の一部 :7日以内に(麻しん・風しんはできるだけ早く)届出。 (1)アメーバ赤痢 (2)ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA 型肝炎を除く) (3)急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳 炎及びリフトバレー熱を除く) (4)クリプトスポリジウム症 (5)クロイツフェルト・ヤコブ病 (6)劇症型溶血性レンサ球菌感染症 (7) 後天性免疫不全症候群 (8)ジアルジア症 (9)侵襲性インフルエンザ菌感染症(平成25年4月より追加) (9-1)侵襲性髄膜炎菌感 染症(平成25年4月より追加) (9-2)侵襲性肺炎球菌感染症(平成25年4月より追加) (10)先天性風しん症候群 (11)梅毒 (12)破 傷風 (13)バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 (14)バンコマイシン耐性腸球菌感染症 (15)風しん (16)麻しん 指定感染症 :ただちに届出。 (1)鳥インフルエンザ(H7N9) 厚生労働省ホームページより改変 11 感染症または微生物に関する指針・規則等 国際機関 Laboratory biosafety manual (実験室バイオセーフティ指針)・・・・WHO {OIEコード (SPS協定と国際基準)など 地域主義をとる} 国内での自主的な規制 病原体等安全取扱・管理指針・・・・・・・・・・ 日本細菌学会 国立感染症研究所 病原体等安全管理規程 動物衛生研究所 動物衛生研究所微生物等管理要領 ○○大学研究用微生物安全管理規則 など 以上の規則とって、当該疾病の発生のない地域で得た健康な動物の材料は 実験室レベルの病原体の取扱に関する規制に該当しない。 12 臓器移植の際の感染症の問題 ・動物の体内でヒト臓器等を作製して、それをヒトに移植することにより 移植されたヒトへの感染がないか。医薬品としての安全性に該当するか。 生物由来原料基準での規制 第2 血液製剤総則 1輸血用血液製剤総則 2血漿分画製剤総則 第3 人由来製品原料総則 1人細胞組織製品原料基準 2人尿由来原料基準 3人由来原料基準 第4 動物由来製品原料総則 1反芻動物由来原料基準 2動物細胞組織製品原料基準 3動物由来原料基準 平成17年厚生労働省告示第 177号 (2005年 3月 31日改正 ) 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構HPより 13 反芻動物由来原料基準 (1)反芻動物に由来する原料又は材料(脂肪酸、グリセリン、脂肪酸エステル、アミノ酸、合成オリゴペプチドその 他高温及びアルカリ処理により製するものを除く )については、反芻動物由来原料基準によるものとする。 (2)芻動物の次に掲げる部位を医薬品等の原材料に用いてはならない。 下垂体、下垂体、胸腺、硬膜、三叉神経節、松果体、せき髄、せき柱骨、胎盤、頭骨、腸、脳、脳せき髄液、 背根神経節、脾臓、副腎、扁桃、眼、リンパ節 (3) 反芻動物に由来する原材料(乳を除く )を医薬品等に用いる場合には当該反芻動物の原産国は次に掲げる 国でなければならない。ただし、羊毛、ラノリン並びに皮由来ゼラチン及びコラーゲンについては、この限りではな い。また、乳を原材料として用いる場合には当該反芻動物の原産国は、英国及びポルトガル以外の国でなけれ ばならない。 ア アルゼンチン~ ヌ モーリシャス (4) 反芻動物に由来する原材料についての、品質及び安全性の確保上必要な情報が確認できるよう、次に掲げ る事項が記録され、保存されていなければならない。 ア 原産国 イ 原材料を作製した年月日 ウ 原材料の由来となる反芻動物の飼育又はと畜の状況 エ 原材料について伝達性海綿状脳症を防止するための処理及び作業の経過 オ 原材料のロットの番号 (5) 医薬品、医薬部外品及び医療機器については、治療上の効果が当該原材料を用いることによるリスクを上回 る場合その他必要な場合において、(2)又は(3)に適合しない原材料をやむを得ず使用する場合は、その妥当性 について、薬事法に基づく製品の製造販売の承認の際に交付される承認書に記載することとする。 (6) 化粧品については、(3)に適合しない原材料をやむを得ず使用する場合は、厚生労働省医薬食品局長が定め る必要な条件に適合するもののみを使用することができる。 14 動物細胞組織製品原料基準 (生物由来原料基準) (1) 動物細胞組織製品(人以外の動物に由来する原料又は材料から構成される医薬品又は医療機器を いう。以下同じ )の原材料となる細胞又は組織の採取に当たっては、採取の過程における病原微生物 その他疾病の原因となるものの汚染を防ぐために必要な措置を講じなければならない。 (2) ドナー動物は、次のいずれにも該当し、動物細胞組織製品の原料又は材料となる細胞又は組織を 提供するに十分な適格性を有するものでなければならない。 (3) 動物の生きた細胞又は組織を用いる場合にあっては、ウイルス感染リスクの検証を行わなければな らない。 (4) (3)以外の場合にあっては、無菌性が担保されていること及びウイルス感染リスクの検証が行われて いることを確認しなければならない。 (5) 動物細胞組織製品の原料又は材料となる動物の細胞又は組織についての、品質及び安全性確保 上必要な情報が確認できるよう、次に掲げる事項が記録され、保存されていなければならない。 (6) 動物細胞組織製品の原料又は材料として用いる細胞及び組織については、採取するために必要な 衛生管理を行うのに十分な人員及び設備を有する施設で採取されたもの でなければならない。 15 動物由来原料基準 (1) 動物細胞組織製品の原材料以外の動物に由来する原料又は材料(細菌又はウイルスの感染リスクが 否定されていることが科学的に公知のものとされるものを除く。以下動物由来原料基準において同じ )の 原材料は、薬事法に基づく製品の製造販売の承認の際に交付される承認書に別に記載されている場合 を除き、健康な動物に由来するものでなければならない。健康な動物に由来することが確認できない場合 にあっては、無菌性が担保されていること及びウイルス感染リスクの検証が行われていることを確認しな ければならない。 (2) 原材料について、動物の原産地、使用部位等を明らかにするとともに、細胞又は組織の入手方法につ いて明らかにしなければならない。 (3) 特性解析された動物(哺乳類、鳥類及び昆虫類)に由来するセル・バンクを出発基材とした細胞培養に より生産される製品については、ヒトに対して感染性や病原性を示す可能性のあるウイルスの存在の有 無を確認するために、細胞株や培養終了後の細胞については、ウイルス試験を少なくとも一度は行わな ければならない。さらに、未加工又は未精製バルクの段階において、適切にウイルス試験を実施しなけれ ばならない。ただし、工程をごく一部進めることによってウイルス試験がより高感度に行える場合にはこの 限りではない。本試験において、外来性ウイルスが検出された場合には、原則として、製品を製造するた めに用いてはならない。 (4) 生きた動物全体を出発基材として生産される製品については、(3)及び2 動物細胞組織製品原料基準 (2)の規定を準用する。 (5) 細胞、組織又は体液から得られた原材料について、製造工程において、細菌、真菌、ウイルス等を不活 化又は除去する処理を行わなければならない。 (6) 原材料についての、品質及び安全性の確保上必要な情報が確認できるよう、次に掲げる事項が記録さ れ、保存されていなければならない。 ア 原材料を作製した機関名 イ 原材料を作製した年月日 ウ 原材料の検査等の結果 エ 原材料を作製する作業の経過 オ 原材料のロットの番号 (7) 生物由来製品に指定された製品以外の製品については、(2)から(5)までの規定を適用しないものとする。 16 微生物汚染の可能性例 E型肝炎 (1) 定義 E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。 (2) 臨床的特徴 途上国では主に水系感染であるが、我が国では汚染された食品や動物の臓器や肉の生食による経 口感染が指摘されている。潜伏期間はA型肝炎より長く、平均 6週間といわれている。臨床症状はA 型肝炎と類似しており、予後も通常はA型肝炎と同程度で、慢性化することはない。しかし、妊婦(第3 三半期)に感染す ると劇症化しやすく、致死率も高く20%に達することもある。特異的な治療法はなく、 対症療法が中心となる。 (3)患者に対する診断 検査方法 PCR法による病原体の遺伝子の検出 IgM抗体若しくはIgA抗体の検出 検査材料 血液 血清 (4)保有動物 豚、イノシシ、シカ 厚生労働省ホームページより改変 17 内在性レトロウイルス ・「太古に感染したレトロウイルスが、胎盤の多様性の原動力だった!」 ウシ科のうち、ウシ亜科とヤギ亜科だけに「胎児側の細胞と母体側の細胞が融合 する」ことにレトロウイルスが関与。 京都大学 ウイルス研究所 Nature Japan 2013年9月12日 より ・動物の遺伝子上でジャンクと言われる反復配列等はゲノム内の転写因子によっ て増幅している。転写因子のうちヒトでは7%がレトロウイルスlong terminal repeat(LTR)型である。 ・レトロウイルスの活動を抑制するものはLTRのメチル化であり、メチル化レベルが 低下するとプロウイルスの発現が上昇する。 ・胚性腫瘍、胚性幹細胞から樹立した細胞株ではヒストンリジンメチル化酵素 (ESET)が関係してプロウイルス化を抑制している。 メチル化レベルの低下やESETの低下が起こると、レトロウイルスがプロウイルス 化する可能性が存在する。通常のキメラでは起こらないと思えるが、それ以上は 不明である。 18 サイトメガロウイルス(CMV) ヘルペスウイルスに属する。移植の場合に要注意。妊婦も。 Human CMV (HCMV) Simian CMV (SCCMV) Rhesus CMV (RhCMV) Chimpanzee CMV (CCMV) Herpesvirus aotus 1 Herpesvirus aotus 3 ヒト アフリカミドリザル アフリカアカゲザル チンパンジー、オラウータン 夜猿 夜猿 移植患者における感染症 ・臓器移植では、ドナー陽性、レシピエント陰性の場合に初感染のハイリスク者 となり、定期的なモニタリングが必要。また、ドナー、レシピエント共に抗体陽性の 場合でも、免疫抑制剤の投与により潜伏していたCMV が再活性化し、感染症を 発症することが多いため、同様のモニタリングは重要である。早期診断、早期治 療がなされない場合は、発熱、間質性肺炎、腸炎、肝炎、網膜炎、脳炎を発症し、 移植臓器を失うことにもつながる。 ・骨髄移植の場合はドナー陰性、レシピエント陽性の場合がハイリスクである。 すなわち、再活性化したウイルスを抑制する細胞がドナー由来であり、CMV に対 するメモリーを有さないため重篤な感染症を発症する。症状は同様であるが、そ の他、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少)を認めることが多く、臓器移植よりも 重篤である。 国立感染症研究所感染症情報センターより 19 動物の体内でヒトの細胞が正常に機能するか ・ヒトと動物では当然違いが存在し、遺伝子のセットも異なる。 ・進化の過程で、遺伝子は塩基置換による変異、重複(挿入)、欠損を起こす。 遺伝子A 遺伝子B 置換 遺伝子A 遺伝子B‘ 重複 遺伝子A 遺伝子B 遺伝子B 置換 遺伝子A 遺伝子B’’ 遺伝子B 種が分化したのち、時間がたつほどに遺伝的な差が大きくなる。 20 おおざっぱにいうと 上野から霞ヶ関に来るのに ある動物では日比谷線で来ます。 東京駅は使いません。(ありません) ヒトではJRと丸の内線を使います。 東京駅乗り換えです。 だから、ヒトと同じように東京駅から新 幹線を使って、と動物に言うと「東京駅 がないから無理です。」 といったことが生じます。 特に核酸修復酵素の遺伝子は、基質が決まっているので、大きく変化すると機能を果 たせず、生物が生き残れませんが、細胞表面分子のような分子間の相互作用をつかさ どる分子の遺伝子は、より自由に変化できます。 21 種による違いの例 ・ヒトのT細胞レセプターα鎖の遺伝子ファミリーは100個ほど、β鎖でも50個ほど。 ニワトリはα、βともに2つ個。 ・ニワトリはIL-5が発現していない。クラスもIgM、IgG、IgAのみ。 ・キメラ動物では全ての分子の相手が種を超えて見つかることが期待できない。 また、分子の形が異なり、相互作用が起こらない場合もある。 それでも ・従って運良く、動物の体内で成長、分化ができても機能を完全に補完できているか は、わからない。その場合でも動物体内で成長したヒト細胞への抗ウイルス剤の作 用の検証等には使えることがある。 ・ある程度の機能を補完できると、価値は非常に高い。 今後の研究に期待。 22