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ステンレス鋼板の低温成形性 - 北海道立総合研究機構 工業試験場
IRI 技術情報 研究成果報告 ステンレス鋼板の低温成形性 オーステナイト系ステンレス鋼板の低温塑性加工(平成23年度職員研究奨励事業) ものづくり支援センター 中嶋 快雄、宮腰 康樹 製 品 技 術 部 櫻庭 洋平、鶴谷 知洋 1.はじめに オーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性の他 びSUS316は低温にすると加工性がよくなると言え ます。 に、低温でもじん(靱)性が低下しないという優れた 性質があり、北海道のような寒冷地では、加工用・ 構造用材料として有用です。代表的なステンレス鋼 (3) 塑性ひずみ比 各材料の塑性ひずみ比を図3に示します。小さい 値を示した順にSUS304、SUS316、SUS310Sで であるSUS304は、低温での機械的性質に関する 報告例がありますが、他のステンレス鋼についての 報告は多くありません。本研究では、SUS304よ す。一般に、この値の絶対値が小さいと深絞り容器 の耳が出にくいと言われるため、この点で、上記の 順に成形性がよいと言えます。 り耐食性に優れるステンレス鋼板(SUS310S及び SUS316)の低温における塑性加工性を把握する ため、低温引張試験を行い、諸特性値を測定しまし た。 2.実験方法 試験片は、厚さ2mmの薄板からJISに規定され る13B号試験片を製作しました。実験装置は、新た に考案した機構を有するジグ(実用新案登録出願予 定)を断熱槽内に設置して構成しました。実験は、 試験片を実験装置に取付け、液化窒素を断熱槽に注 入し、槽内を低温の気体で充満することにより試験 片を冷却し、試験片近傍の雰囲気温度(これを試験 温度としました)が安定したところで、試験(ひず み増加率50%/ min)を開始しました。この引張 試験の結果から、伸び、加工硬化指数及び塑性ひず み比を測定しました。 図1 伸び 図2 加工硬化指数 3.結 果 (1) 伸 び 各 材 料 の 伸 び を 図 1 に 示 し ま す。 各 材 料 と も 試 験 温 度 が 低 い ほ ど 小 さ い 値 を 示 し ま す。 ま た SUS310S及 びSUS316は、SUS304よ り 大 き な 値を示しています。一般に、伸びが大きい材料は 変形の限界が大きいので、低温で加工する場合、 SUS310S及びSUS316はSUS304に比べ、大きな 変形が期待できることがわかります。 (2) 加工硬化指数 各 材 料 の 加 工 硬 化 指 数 を 図 2 に 示 し ま す。 SUS310Sは試験温度によらずほぼ一定の値を示し ますが、SUS304及びSUS316は試験温度が低いほ ど高い値を示しています。一般に加工硬化指数が大 きいほど加工性がよいと言われるので、SUS304及 6 工業試験場技術情報 Vol . 5 No . 2 図3 塑性ひずみ比 4.おわりに 本研究では、3種類のステンレス鋼板について、 低温における成形性に関する知見を得ました。 TEL:011−747−2969(ダイヤルイン) E-mail:nakajima-yoshio@hro.or.jp