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ドイツにおける子ども虐待に関する保護制度・ソーシャルワーカーの刑事
Nara Women's University Digital Information Repository Title ドイツにおける子ども虐待に関する保護制度・ソーシャルワーカー の刑事事件・法改正について Author(s) 丸岡, 桂子 Citation 人間文化研究科年報, Vol.24, pp.225-238 Issue Date 2009-03-31 Description URL http://hdl.handle.net/10935/1117 Textversion publisher This document is downloaded at: 2017-03-28T20:09:54Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace ドイツにおける子ども虐待に関する保護制度・ ソーシャルワーカーの刑事事件・法改正について 丸 岡 桂 子* 1.はじめに 厚生労働省の報告(厚生労働省2008参照)によると2007年度に、全国の児童相談所が対応した 児童虐待の件数が40,618件に上り、過去最高となった。2003∼06年に心中を除く身体的虐待によ り児童(1)が死亡した件数は175件、死亡児童数192人であり、そのうち児童相談所が介入してい たのは48件であったこと(朝日新聞2008)を考慮すると、2007年度の児童虐待の件数は、児童相 談所が対応しなかった件数を含めると4万件の数倍となると思われる。 ドイツにおいても子どもの虐待件数が増加しており、問題となっている。特にネグレクトによ る子どもの死亡事件がマスメディアにより大きく報道されるようになってきた(2)(3)。そうした 事件において親などの養育義務者の責任が問われることは日本と同様である。しかし虐待により 死亡した子どもの家族と関わっていたソーシャルワーカー(4)の専門的な介入方法そのものが問 題にされ、彼らの刑事責任が問われることが、日本ではまだないが、ドイツにおいては発生し始 めているのである。実際にソーシャルワーカーが起訴された件数は多くないものの、専門家とし ての介入の仕方そのものが問われることにより、ドイツにおけるソーシャルワークの現場に大き な不安がもたらされるようになった。同時に子どもの虐待事件でのソーシャルワーカーの責務の 明確化が要請されるようになった。 本稿では、ドイツにおける子ども虐待に関する保護制度を明らかにし、ソーシャルワーカーに 関わる刑事訴追事件について事実確認がどのように行われたか、,それに対する議論にどのような ものがあったかを示し、その後に行われた法改正について日本の「児童虐待防止法」に関する法 改正との比較を通して考察する(5)。 2.子ども虐待に関する保護制度 ドイツにおける子ども虐待に関する保護制度について、一般的な対応モデルを例に説明する (平場2004、岩志・高橋2007参照)。 虐待された子どもの保護も含めて少年援助給付の担い手としての中心的機関が、各自治体に設 置されている少年局(Jugendamt)(6)であり、日本の児童相談所にあたる。少年局は子どもの虐 待やネグレクトが疑われるケースについて情報を得ると、まず複数の専門家が子どもの危険状況 や問題を調査した上で、問題解決の方法として、家族に対する養育援助給付(Erziehungshilfe)(7) をとるか、あるいは、親の配慮権(elterliche Sorge)(8)の制限等の措置をとるか判断する。前者 をとった場合、まず親に働きかけて必要な援助申請をさせる。子どもの身体的、知的、精神的危 険があると判断したら、家庭裁判所(9)に「民法」1666条の配慮権の制限手続きを開始するよう *社会生活環境学専攻 一225一 求める。家庭裁判所は職権で調査し、援助給付では不十分と判断すると、事案ごとに必要な範囲 で配慮権を制限し、制限した事項についてその権利を保護人に委譲する。保護人には通常少年局 の職員が選任される。公的援助などの他の方法では子どもに対する危険を回避できない場合、家 庭裁判所は親子の分離もしくは包括的な配慮権剥奪を決定出来る。配慮権剥奪の場合には未成年 後見人が選任される。通常、選任された後見人又は保護人は、親に代わって養育援助の請求を行 い、子どもは里親へ預けられたり、ホーム施設に入所したりすることが多い。 少年局は、親の申請に基づきどのような援助が適切かを専門家によるチームで検討し、身上配 慮権者(父母、後見人、保護人)と子ども自身の同席の場で援助計画を作成する。子どもが里親 やホームで暮らす間、少年局は、子どもの家庭復帰を目指して実親の支援と援助を行う一方で、 里親に助言と相談を行うことが義務づけられている。また少年局は措置後の状況について家庭裁 判所へも報告を行う。子どもの実親家庭への復帰の見込みがない場合、養子縁組が考慮され、手 続きを経た後、後見裁判所により養子判決がなされる。家庭裁判所の決定が待てない緊急状況の 場合、必要に応じて警察の出動を要請し子どもを緊急一時保護しなければならない。そしてその 後の措置については、家庭裁判所が判断するのである。 ドイツにはこうした保護制度の法的根拠となる、日本の「児童虐待防止法」にあたる子ども虐 待に関する統一した法律はなく、いくつかの法典に分散した形で根拠となる条文が存在す る。特に重要な役割を果たす法律は3つあり、「児童および少年援助法(「少年援助法」と略す)」 (KJHG)(10)である「社会法典第8編」(SGB V皿)と、「民法」(BGB)(11)と、「刑法」(StGB)(12) である。その他に「非訟事件法」(FGG)、「刑事訴訟法」(StPO)などが関係法として挙げられる。 これらの法律は、日本の憲法にあたる「基本法」(GG)の拘束を受ける。日本と異なり、この憲 法レベルの基本法に親の養育責任とそれに対する国家の監視義務が明記されている。「基本法」は 第6条2項1文で、「子の養育と教育は、親の自然の権利であり、また何よりも親に課せられた義 務である」と規定し、子どもの養育について父母の優先的権利と自己責任を保障する。さらに同 項2文で「親の行動については、国家共同体が監視する」として、国家には親がその義務を果た すかどうかを監視する役割が与えられていると規定している。従って父母を通り越して国家が子 どもに直接働きかけることはできない。ただし連邦憲法裁判所は、親の権利と子どもの福祉が対 立する場合には子どもの福祉の優i先を認めている(BverfGE1984:68,176−188)。つまり国家は子ど もの福祉を、まず親による養育責任能力を強化、支援、補完することによって実現しようとする。 これは加盟国に、国民の個人生活および家族生活についての権利の保護を義務づける「ヨーロッ パ人権規約」(EMR)8条からの要請でもある。 子どもの虐待事件では虐待を受けた子どもの保護がなされると同時に、虐待を行った保護者に 対して刑事法上の責任が問われる。刑事手続きは直接的な子どもの保護制度ではなく、逆に子ど もにとっては大きな負担となるにすぎないとして、少年援助の従事者の間には子ども虐待の問題 に関する刑事司法介入に否定的な見解も多い(Burg 1997:192)。少年局には原則として刑事告発の 義務はなく、死亡事件以外の子ども虐待事件において刑事告発がなされるかどうかは慎重に協議 される。しかし子どもの福祉(生命、身体、自由など)も、当然ながら刑法の保護法益であり、 その法益侵害に対する可罰性は否定することができない(Bringewat 2007:230)。近年の子ども虐 待事件の増加と虐待による子どもの死亡事件への社会の関心の高まりとともに、刑法による厳罰 一226一 化がなされてきた。また一方で、19SO∼90年代に環境、警察、司法等の行政行為上の不作為に対 する刑法上の責任問題が問われるなかで、ソーシャルワーカ・・一一・一が仕事として事例を担当している ときの過失および不作為に対してもその刑事責任が問われる事件が生じた(Albrecht 2004:185)。 3.ソーシャルワーカーの刑事責任 子ども虐待事件におけるソーシャルワーカーの活動に対する刑法上の非難の核心は、ソーシャ ルワーカーが義務に反して子どもの死亡ないし傷害を阻止する措置を怠った点にある。そもそも 刑法において不作為、つまり何かをしなかったことに対して刑事責任が問われるのは、被害の発 生を防ぐことを怠った者が、被害が生じないようにすることについて法的に義務を負っていて、 かつ、不作為が作為による犯罪の構成要件を満たす場合に限られる。すなわち犯罪の構成要件の 結果の発生を回避すべき法律上の義務(道義的、倫理的義務でない)を負う者に対してのみ刑事 責任が問われるのであり、その義務を負う者の地位を刑法理論において“保障人的地位” (Garantenstellung) という (13)。 この“保障人的地位”概念がソーシャルワーク活動においてどのように適用されるのかという 問題について様々な議論を巻き起こし、また現場のソーシャルワーカーに刑法上の責任がどこま で自分の専門的な仕事にリスクをもたらすのかといった不安を引き起こすきっかけとなった(1) 「オスナブリュック(Osnabr直ck)事件」について検討する。これは、子どもとその家族の世話を 担当していたソーシャルワーカーが、ソーシャルワーカーとして適切な措置をしなかったことに より子どもが餓死したとして、その刑事責任を問われた事件である。この判例に対するいくつか の見解を(2)で検討する。“過失犯における注意義務”や“結果の予見可能性”といった複雑な 法議論は本論の目的から外れるので、ここでは扱わない(14)。 (1)オスナブリュック事件について(LG・Osnabrtick 1996,0LG OIdenburg 1997参照) 1994年5月7日、7ヶ月に満たない女児しが衰弱と乾きにより死亡しているのが発見された。1993 年から0市の少年局/総合社会サービス部(ASD)のソーシャルワーカ・一 Sが、若いシングルマ ザーT、その娘L、18ヶ月の息子Pの三人の世話を担当していた。Sは、同居していた男性やT の母親、さらに近隣…の人から、Tの家事能力および育児能力の欠如について幾度も指摘を受けて いた。Sは、 Tへの家庭訪問で、床に犬の糞や汚れたおむつが散らばり、食事の残りやカビで覆 われた食器が居間に広がり、汚れたままのベッド、詰まったトイレなどの状況を確認し、片づけ を手伝った。SはTと話し合い、子どもの養育と家事について社会教育上の家族援助を請求する よう提案したが、Tは拒絶した。その間に1994年3月、明らかに母親Tの世話不足のため生じた 重度の皮膚病のため女児Lは入院しなければならなくなった。その時点で、しの栄養状態は問題 にならなかった。退院にあたりしの担当医師は、ソーシャルワーカーSの同席する話し合いの場 で、しに対する少なくとも2時間ごとの介護ならびにおむつ交換をTに指示した。退院後の母子 の世話は4月中旬から0市との合意に基づき社会教育上の家族援:助を引き受けた民間団体(15)の 新人ソーシャルワーカーHに引き継がれた。Hは、母親Tとの接触に明らかに困難を感じてい た。Hは、予約した医師診療のためTを訪問した5月2日、3日にTと会うことが出来なかっ た。5日にはTと話をすることが出来たがしの様子を確認することはなかった。そして7日に Tが自ら医師を呼びしの死亡が確認された。ソーシャルワーカーSは、4月29日からの長期休暇 一227一 に入る前、22日にHにT母子の様子を問い合わせてしの世話は問題がなくなされていると聴い ていた。 0区裁判所は1995年5月17日、ソーシャルワーカーSを過失致死により有罪として罰金刑を科 した。専門家は、この事件では社会教育上の家族援助を提案するのが適切な措置であったと鑑定 した。しかし裁判所は、そうした提案をするよりも、母親Tの配慮権と居所決定権の制限を求め て家庭裁判所に通知すべきであったが、社会教育上の家族援助の間違った、あるいは少なくとも 不十分な措置に頼ろうとしたことがしの死亡に繋がったとした。それまでの経緯からすると専門 家であるSには乳児であるしの死亡の予見可能があったと理由づけた。この判決に対し被告人は 控訴した。 それに対して0地方裁判所は、Sにはしの死亡の責任を負わせる根拠となる作為犯としての注 意義務違反も、不作為犯としての“保障人的地位”ないし“保障人的義務”も存在しないと判断 し、0区裁判所の判決を破棄して無罪とした。 検察の上告に基づき高等裁判所はその無罪判決を破棄し、次のように指摘して0地方裁判所に 差し戻した。介入ではなく給付を目的とする社会法典8編(児童および少年援助法)の理念から、 少年局/ASDのソーシャルワーカーの“保障人的地位”と“保障人的義務”を否定することは できない。また家族援助を民間団体に委託することにより、家族に対する保護責任義務が完全に 民間団体に引き継がれる訳ではないとした。 差し戻し後1996年12月11日、0地方裁判所は被告人、弁護i人、検察官の同意により刑事訴訟法 153条に基づき“軽微な罪”を理由に訴訟手続きの中止を決定した。 (2)判例をめぐる議論 その後のいくつかの判例において見解の一致がみられないソーシャルワーカーの“保障人的地 位”の根拠について、断固たる主張を繰り返しているのがブリンゲヴァートである(Bringewat 1997,2006,2007)。彼によると少年局の専門家には、法規定(GG 6条2項とSGB田1条2項)と “現実の保護引き受け”により“保障人的地位”が生じるとする。最初の家庭訪問や子どもとの 初めての接触を現実の引き受けとみなすことから、ソーシャルワーカーはその職業活動の開始に よって自動的に“保障人”機能を負うことになるとする。これに対してメルスベルガー、マイセ ン、アルブレヒト、ヴィースナー等が異論を述べている。 メルスベルガーは、少年局の活動についての判決がいわゆる“保障人的地位”についての複雑 で不適切な刑法論理と結びつけられている事を非難する。彼は、そもそも少年局の責務は援助で あり親に対する直接の介入権限が無く、さらにそれを管轄する家庭裁判所の決定は想定できない という。またSGB田1条2項は一般的フ.ログラム規定であり、少年局の具体的“保障人的地位” を規定するものではない。“保障人的地位”は個別ケースごとの具体的合意において生じ、その合 意から義務が生じるとする。さらに少年局の措置の適性は、社会教育学的専門職の指標とSGB 皿の法的責務により専門的に判断すべきであるとする(M6rsberger 2004:84−111)。これに対する反 論に、そもそも刑法の法益保護機能の補完性を前提にした上で、あらゆる生活領域を包括する刑 法の保護法益は専門職の指標による制限を受けないし、社会教育学的指標を優先することは医師 などの他の専門職に対する特権化を意味することになるという主張がある(Beulke・ Swoboda.2002:8 1 ) o 一228一 またマイセンは行政法の観点からブリンゲヴァートに対する異論を述べている。地方自治体の 少年援助は行政行為であり、少年局によりなされた(またはなされなかった)援助が原則的に適 正な行政行為であるかどうかの審査は、少年援助における職員の可罰性の“先行問題”であると いい、基本的に“保障人的地位”を認めることに消極的な立場を主張する。行政行為の適法性は 少年援助においても、もっぱら刑法の規定によって判断されるのではない。刑法は行政行為の適 法性の前提条件に何ら影響しない。適法な行政行為に可罰性がないとすると、逆の、違法な行政 行為は可罰性が有るとなるかといえば、必ずしもそうはならない。また、行政法が認める裁量は 刑法も尊重すべきであるというのである(Meysen 2001:408−411)。ただし少年局における継続的 援助の間に子どもの被害が生じ、事後の問題究明において例えば管理義務(SGB皿37条3項1文) あるいは関与義務(SGB㎜36条2項2文)の違反が確認されたときに、担当専門官および指導官 の刑法上の責任ならびに少年局の当局責任の問題が生じると考える。刑法は個人を対象としたも のであるから少年局のすべての専門官に“保障人的義務”はなく、子どもの福祉のための少年援 助における専門官の“保障人的地位”は、援助ケースを引き受けた場合にのみ現実のものとなる。 従ってこうした領域で違法な怠慢が犯罪の構成要件上の結果に対する原因となるのは、適法な別 の行為がなされれば“ぎりぎり確実とされうる蓋然性でもって”(“an Sicherheit grenzender Wahrscheinlichkeit”)子どもの福祉に対する危険の阻止に繋がっていたとされる場合だけであると いう (Meysen 2003:3359)。 アルブレヒトも、ソーシャルワーカーに一般的な刑法上の“保障人的地位”を認める根拠は無 く、個別ケースにおいてのみ認められると考える(Albrecht 2004:183−213)。 またヴィースナーは、刑事訴訟における指標がソーシャルワーカーの活動の指標となるべきで はなく、こうした刑事事件をきっかけに少年援助の専門家自身が、その活動の指標について議論 すべきであると主張する(Wiesner 2004:169)。 このようにみてみると、成立条件についての違いはあるが、多くの見解がソーシャルワーカー の“保障人的義務”を原則的に肯定していることがわかる。ソーシャルワー一・一ク辞典のなかにも新 たに“保障人的義務”の項目が登場し、専門家の中では“保障人的義務”が前提とされるように なった(M6rsberger.2002,:372−373)。つまり世話を引き受けていた,あるいは子どもの危険につい て報告を受けていたソーシャルワーカーには,子どもに対する保護義務があり、その義務に違反 すれば刑法上の責任が問われるとする見解は概ね一致している。 こうした法的議論以外に、事件の背景にある問題も指摘されている。例えばソーシャルワーカ ーの過剰負担について、オスナブリュック事件の被告人は、問題を抱える41家族(100人近くの子 どもを含む)を世話していたことが報告されている(Bringewat 1997:132)。人的資源の問題以外 にも専門家世の関係者に対する研修制度(Filsinger 2004:295−298)や少年局と家庭裁判所の協力関 係の欠如(Merchel 2005:466−467)が挙げられている。また、刑事責任リスクをおそれて間違った ことをしないように努めるあまり、官僚主義に陥ることを懸念する意見もある(Hefendehl 2005:476)。 4.法改正 少年援助活動におけるソーシャルワーカーの刑事訴追の可能性は、実際の訴追事件件数からみ ると非常に少なく、さらに有罪判決の可能性はごくわずかであると言える。しかしオスナブリュ 一229一 ック事件をきっかけに、子ども虐待におけるソーシャルワーカーの“保障人的地位”をめぐり上 記のような議論が展開され、また専門家の間に広がった職務活動に伴う不安を軽減するために、 少年援助団体などからその責務の内容を明確にする複数の提言が行われた。提言の中で特に影響 を持ったのが2003年のドイツ都市会議の『子どもの福祉の緊急かつ重大な危険に対する少年局に おける専門的手続きの基準を確定するための提言』(Deutscher Stadtetag 2004)である。ドイツ都 市会議においてこの種の提言がなされるのは極めて珍しいことであることから、少年援助の責務 を担う自治体や専門家における危機感の高さが伺える。こうした関心に応え、ソーシャルワーカ ーの責任リスクを軽減する目的で、2005年にSGB田の部分改正が行われ、子どもの福祉が危険に 陥る際の少年局の責務が次のように明確化された。 (1)改正内容(Schellhorn・Fischer・Mann 2007参照) 2005年10月1日施行の「児童ならびに少年援助の発展に関する法律」(KICK)により、改正さ れたSGB㎜のおもな内容は、以下のとおりである(岩志・高橋、2007参照)。 ●8条a(子の福祉に危険が及ぶ場合における保護の任務)の導入と内容の重複する50条3項削 除 ●42条(児童ならびに少年の緊急一時保護)の改定 ●65条(個人的、教育的援助における特別の信頼保護)における委託データの転送権限の拡大 ●72条a(人的適合性)の導入による少年援助で働く人員の人格的適性審査の厳格化 この中で特に重要な8条aの内容について詳しく見てみる(Salgo2006,2007参照)。 まず、1項は少年局が子どもの福祉の危険について手がかりを得ると、複数の専門家でその危 険リスクの評価をしなければならないとする。ここでその保護任務と一致する限りで、「身上配慮 権者ならびに児童もしくは少年を関係者として含めなければならない」とし、さらに危険回避の ために必要な援助を親又は養育者の請求を通じて提供しなければならないと規定する。リスク評 価の基礎となる少年局の情報入手手続きにも、裁判所手続きと同様に職権探知主義が適用される。 2項では、1項の保護任務を合意により民間援助団体に委託することが出来るが、民間団体に 危険リスクの評価に応じて経験のある専門家を関与させなければならないと規定している。また 民間団体の「専門職には、援助が必要であると考える場合には身上配慮権者もしくは養育者に援 助の要求を働きかけること」と、「受給している援助が危険を除去するには不十分であると認めら れる場合には少年局に通知すること」の義務を規定している。1項は公的援助団体である少年局 にのみ適用されるが、民間団体も法的保護責務の担い手に含まれる以上、1項の責務執行のため に公的団体との合意が必要とされる。同時にこの合意は保護責務の質的コントロール手段でもあ る。 また3項では、親が危険リスクの評価に協力しない又は出来ない場合、あるいはその他少年局 が必要とする場合には、家庭裁判所の活動を要請しなければならないとされる。さらに「緊急の 危険があり、かつ裁判所の判断を待つことが出来ないときは、少年局は児童もしくは少年を一時 保護する義務を負う」ことを規定している。この規定は新しい内容ではなく親が危険リスクの評 価に協力しない又は出来ない場合という条件を加えて旧法50条3項を踏襲したものである。家庭 裁判所の活動が必要とされるのは、民法1666条と1666条aによる措置が不可欠な場合である。こ の1666条の措置には注意、命令、禁止命令から配慮権の一部又は全部剥奪まで多様な内容が含ま 一230一 れ、家庭裁判所にその選択的裁量が認められていると解されている。ただし親の権利へ介入する 措置が選択される場合には、他の援助等の方法では危険が回避できない場合に限られる。またこ の規定で義務づけられた緊急一時保護については、その具体的要件と効果が42条で定められた。 旧法では少年局が民法1666条の手続きなしに直接子どもを引き離すことは出来なかった。 最後に4項で、「危険除去のために他の給付団体、保健援助の機関または警察の活動が必要であ る場合には、少年局は身上配慮権者もしくは養育権者による請求を働きかけなければならない」 とする。さらに親の協力が得られないか、緊急の場合には少年局が自らそれらの他の機関を介入 させることが出来ると規定している。 この8条aの導入によって、基本法上の国家の“監視役割”に基づく少年局の保護責務が明確 化され具体化された。しかもこの規定が少年援助全体の指導原理を示すSGB皿の第1章総則に おかれたことで、公的少年援助の保護責務について関係者の意識を高めるねらいが読み取れる (Merchel 2005:469) o (2)日本の「児童虐待防止法」との比較から 日本の「児童虐待防止法」は、2007年に二度目の改正がなされた。おもな改正内容は、調査・ 介入に関する児童相談所の権限拡大と親の権利の制限についてであり、具体的には、親が立ち入 り調査を拒否した場合、都道府県知事が“出頭要求”を出し、それにも応じなければ裁判所の令 状を持って警察の援助により強制的に立ち入りが出来るようになった。また悪質な場合には児童 相談所が立ち入り調査拒否罪で刑事告発し、警察の捜査がなされる。強制施設入所や一時保護さ れた子どもに対する接近禁止命令や、親の面会や通信の制限範囲も拡大した。 ドイツとの比較から言えることは、親の権利義務関係とのちがいである。ドイツでは親が子ど もを危険な状況に陥らせた場合でもなお、まず親にそうした状況を即時に変えるよう求めなけれ ばならないと規定されている。さらに専門家による子どもの危険評価の場合にも、原則として子 どもとともに親を関与させなければならない。これは憲法レベルで明示された親の優先的養育権 (義務)と国家の“監視役割”に基づくものであり、その内容はSG酬m条2項においても再度 確認されている。出来る限り親に自らの責任で、子どもの福祉のために必要な決定をさせること を目指している。親の権利は、子どもの福祉のために保護されていることを明確に制度化してい るのである。親の権利を高めることは少年援助を“援助給付”として理解することと一致し、そ うした理解からすると親の権利への介入は“援助”とは対立するとされる。他方、日本において は、親権が虐待から子どもを保護する場合の強い障壁として受けとめられている。 次に司法機瀧の違いが挙げられる。子どもの福祉の保護iについては少年局と家庭裁判所に共同 責任があるとされる(“子どもの福祉の危険の評価と除去についての責任共同体”Wiesner 2007:8)。 そこからもし親が子どもの危険の評価において協力する用意が無いか又は出来ない場合には、少 年局は家庭裁判所の活動を要請できるだけでなく、そうしなければならないという結果になる。 しかし自らのリスクを避けるため予防的に家庭裁判所が要請されることで、少年局の専門的判断 による援助の可能性が低下するという危惧も指摘されている(Merchel 2005:466)。少年局は予防 的動機から絶えず裁判所の活動を要請するべきではないが、また他方で裁判所の要請を“最後の 手段”と見るべきでないとされる(Salgo 2007:15)。 日本でも親権に介入する場合は、児童相談所等が民法上の親権喪失宣告を家庭裁判所に請求す 一231一 る必要があり、親権停止の保安処分の決定には通常数ヶ月かかるとされる。しかも家庭裁判所に は子ども虐待に関してドイツのような広い権限も責務も無い。ただし現在、日本でも親権すべて ではなく一部の監護権のみを一時的に停止できる法制度が検討されている。またドイツでは子ど もを独立した権利主体として、自己に関わる措置についてその意見表明の機会を年齢に応じて保 障していることも重要な相違点の一つである㈹。 5.おわりに 子ども虐待の取り組みは公権力の家族への介入と、家族と子どもの支援という2つの逆方向の 側面を併せ持つ。先進諸国における児童虐待の取り組みには2つのタイプが見られる。ひとつは 英米に代表される懲罰的な取り締まり重視型であり、もう一つは多くのヨーmッパ諸国における 家族支援型である(小林・松本、2007:75)。ドイツも日本もこれまで家族支援に重点をおいてき た。ドイツの「少年援助法」の歴史を見ると、戦前の「帝国少年援助法」から1961年の「少年援 助法」へ、そして1990年に大改正が行われ「児童および少年援助法」として「社会法典」の中に 組み入れられその第8編を構成することになった。この流れは貧民救済と治安維持目的から援助 制度への転換がなされ、さらにその性格を強めていったことが示されている(Gries・Ringler,2005:13− 60)。しかし近年日本と同様に、深刻な虐待事件がメディアを騒がすたびに世論の後押しを受け て、介入強化の方向に進んでいる。 日本でも、児童相談所などが関与しながら状況認識の甘さと対応の遅れから重大な結果に繋が った児童虐待事件が明らかになると、刑事訴追までは至らないものの、公的機関への非難が高ま る。現場からは、法改正による介入の権限強化だけでなく、子どもの保護の実効性を担保するた めの行政施策、例えば、専門職員の増加とスキルアップ、子どもの受け皿としての児童養護施設 の増加、里親制度の改革、関係諸機関の連携など求められている。しかし、どのように法改正や 制度改革がなされても、子ども虐待の現場でどこまで家庭生活に踏み込むべきか、介入と支援の 狭間でのソーシャルワーカーの苦悩は解消することはないだろう。 ソーシャルワーカーの責務を明確にすることは国家の保護i責務を明確にすることであり、その ためには国家と家族の関係を問い直す必要がある。その際、変動する社会状況のなかで、多様化 する家族の問題を考慮しなければならない。言い換えれば問題を抱えた親と子の関係に国家がな すべきことは何か、またはなし得ることは何かを考えることである。日本の社会では,子どもを 独立した権利主体としてみるより、まだ“私物的わが子観”が支配していることは親子心中事件 に現れていると思われる。国家の役割とともに、子どもの福祉、つまり子どもの最善の利益につ いて社会のコンセンサスを形成することも必要であると考える。 一232一 注 (1)日本の「児童虐待防止法」における“児童”は、18歳未満の者であるが、ドイツの「児童お よび少年援助法」ではKind(14歳未満)とJugendliche(14歳以上18歳未満)の区別がなされ ているので、本稿ではKindを“児童”と訳している。 (2)ドイツでは、児童虐待のみに関する全国的統計はない。日本での児童相談所にあたる自治体 の少年局への虐待通報を集計した統計もない。家族・高齢者・女性・少年関連問題省の2005 年の統計によると緊急一時保護の件数は25,664件で、2005年12月31日に実親家庭以外で養育 を受けている子どもは131,005人であった。刑事事件となったものについては全国的な警察統 計があり、虐待による事件は性犯罪や障害、殺人等の項目の中に分散して含まれていて、虐 待についてのまとまった統計はない。 (3)近年メディアで大きな話題になった虐待事件として、2007年の2歳男児(Robin)の餓死事 件、2005年半5歳女児(Lea−Sophie)の餓死事件、2006年に冷蔵庫の中で発見された2歳男 児(Kevin)の虐待死亡事件などがある (4)日本では児童虐待ケースを担当するのは地方公務員である専門職の児童福祉司であるが、ド イツでは、狭義のソーシャルワーカー資格者のみならず国家資格取得者である社会教育学士 や心理学士、教育学士、障害児教育学士、児童精神科医、心理療法士などが少年援助を担う 少年局や民間団体に勤務する。ここではこれらの専門家がすべて含まれる。 (5)外国の子ども虐待の救済制度についての研究の多くが、アメリカ、イギリス、カナダなどを 対象とする。この分野でドイツを対象とする研究は比較的少ないが、制度の概説として岩井 (2002)、鈴木博人(2001)などが挙げられる。また関係機関の実地調査の報告書として平場 真人他 (2004)がある。しかし法制度の観点から、さらに多角的な研究が必要であると思わ れる。ソーシャルワークなどの実践的研究分野では、ドイツの研究者自身もアメリカの研究 から多くの影響を受けている。また刑事法分野では制度的に日本と類似するドイツの例が特 に参考になると思われる。 (6)少年局は、公的少年援二助の担い手である自治体(郡か、郡に属さない都市)ごとに設置され、 その上部機関として各州に州少年局が設置されている。少年局の内部組織はそれぞれ異なる が、多くの少年局には緊急一時保護や虐待調査などを行うASDと呼ばれる総合社会サービ ス部署が地区ごとに設置されている。少年局の中心的任務は、子どもと家族のための教育援 助として支援的な援助給付サービス提供と、「基本法」6条2項の国家の“監視役割”の遂行 である。 (7)ここで“養i育”と訳している“Erziehung”は、早世・高橋の研究では“教育”の訳語を使用 しており、単なる養育や知識・技術の習得のみならず、全人格的発達を目指す教育を意味す るとされている。しか本稿では、日本の「児童福祉法」において類義語として“養育”の語 が用いられているので、教育学的アプローチも含めた意味での“養育”という訳語を使用す る。 (8)ドイツ語で“親権”という語はelterliche Gewaltという。1979年の親権法の抜本的改正によ り、このelterliche Gewaltがelterliche Sorgeという用語に置き換えられた。 elterliche Sorgeは 日本法での“監護i権”、“親権”と全く同じ内容ではないため、一般に“親の配慮権”と訳さ 一233一 れる。それに応じてここではPersonensorgerechtを“身上配慮権”、 Personensorgeberechtigteを “身上配慮権者”と訳す。 (9)ドイツの裁判権は民事・刑事の通常裁判所、行政裁判所、税務裁判所、労働裁判所、社会裁 判所といった5つの系列に分かれ、各系列に連邦最高裁判所が設置されている。他に憲法問 題のみを扱う連邦憲法裁判所がある。下級審裁判所は連邦特許裁判所と連邦懲戒裁判所を除 き州の裁判所であり、高等裁判所、地方裁判所、区裁判所がある。刑事事件の一部と大部分 の民事事件の第一審は区裁判所であり、区裁判所には家事事件を扱う家事部としての家庭裁 判所と、後見裁判所、破産裁判所、遺産裁判所、また刑事部の専門部として少年裁判所がお かれている。日本のように家庭裁判所として独立しているわけではない。また日本の家裁調 査官に相当する裁判所内の職員は存在しない。従って家庭裁判所が「民法」1666条ならびに 1666条aの要件で必要な措置をとらなければならない場合には、少年局との緊密な協力が不 可欠となる(SGB皿§50)。なお裁判所には即応体制が整備されている。(ドイツの司法制度 については村上(2008)を参照) (10)公的i援助(いわゆる少年援:助給付)を定めているのが、「社会法典8編」(SGB皿)の「児童 および少年援助法」(「少年i援助法と略す」)(KJHG)である。これは、日本の「児童福祉法」 に概ね相当する。「少年援助法」は、児童保護法制の中心であり、1922年の「帝国少年福祉 法」以来、度重なる改正を経て1990年の抜本的改正により「社会法典」のなかに8編「少年 援助法」として編入された。その過程で治安維持を重視した警察法的性格から、介入権限を 放棄し援助給付に焦点を当てた予防法的性格へと転換された。まず1条2項では「基本法」 6条2項1文を引用し、子どもの養育についての親の優越的権利と自己責任さらに国家の “監視役割”を確認している。少年援助は、まず家族機能の維持・強化・再生を目指して親 の援助を行い、従来の施設入所から子どもをできるだけ家庭にとどめる在宅支援二給付を重視 する。 (11)「基本法」の国家の“監視役割”が「民法」1666条と1666条aにより具体化されている。1666 条によると、家庭裁判所は子どもに精神的あるいは身体的危険が及ぶ可能性がある場合に、 親がその危険を回避できないときや、そうする意思がないときには危険防止のための必要な 措置を職権で講じなければならないとされている。この措置については具体的に列挙されて いないが、注意、命令,禁止から子どもの引き離し,親の配慮権の剥奪(一部も含め)まで 幅広い裁量権がある。 (12)刑法規定のなかで虐待事件に関係する犯罪構成要件として特に挙げられるのは、保護義務又 は教育義務違反(§171)、傷害罪(§223)と危険な障害(§224)、謀殺(§211)、故殺(§ 212)、遺棄(§221)、強要(§240)、不救助(§323c)と、さらに性的虐待の関係では親族 との性交(§173)、保護を委ねられている者に対する性的虐待(§174)、14歳未満の者に対 する性的虐待(§176)、未成年者の性行為の援助(§180)、16歳未満の者に対する性的虐待 (§182)である。なお刑事告発(通報を含め)は、専門職に就いている者にも一般人にも義 務とされておらず、犯罪が疑われる場合の刑事告発は裁量によるものとされている。 (13)ドイツの刑法理論では、従来“保障人説”を中心とした不真正不作為論が展開されてきた。 “保障人的地位”は、作為犯と不作違犯との構造的差異を補い、不作違犯と作為犯との同値 一234一 を基礎づける不作為犯独自の二丁要件であると考えられている。この“保障人説”は、中谷 (1957)、中森(1969)を初めとして多くの刑事法研究者により論じられている。 (14)少年援助におけるソーシャルワーカーの刑事責任に関する刑事法の観点からのまとまった研 究として、DieBne.(2008)を参照。直接の担当ソーシャルワーカーのみならず、その上司や 同僚、さらに民間団体の担当者なども含めた包括的な刑事責任の検討がなされている。 (15)ドイツでは社会福祉活動が教会とその関連団体によって担われてきた歴史があり、現在の少 年援助においても民間団体の活動によるところが大きい。国家は民間団体の活動を助成し、 その活動が競合するときには民間団体の原則を妨げてはならないとされている(助成原則)。 「少年援助法」(SGB阻§3,§4)も、公的少年援助と民間団体のパートナーとしての協力義 務と、助成の原則を定めている。公的少年援助の助成を受けるためには、公益目的や人材能 力の要件を満たした民間の担い手として承認を受ける必要がある(SG酬皿§75)。認可された 民間団体は、養育援助サービスの提供以外に、緊急一時保護、裁判協力、後見人や保護人へ の助言、団体後見などの少年局の任務の実施に加わったり、それらの任務の代行をすること もできる(SGBV皿§76)。これらの任務やサービスにかかる費用は少年局から取り決めにより 支払われる。 (16)国連子どもの権利条約第12条(「自分の考えを表現できる子ども達はすべて,その考えを自由 に表明し、年齢と成熟度に応じ、真剣に取り上げてもらう権利を有する」)に対応して子ども の意見表明の機会保障を規定するだけでなく、手続き保護人(Verfahrenspfleger)の制度によ ってその意思が実質的に反映されるように配慮されている。 引用文献 Albrecht, H.一J.(2004). 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The aims of this paper are to outline the legal child protection activities fbr child abuse based on血e comparison of the legal systems in Germany and Japan, and to examine the criminal case against a social worker in 1996, and to delineate contents of new Child and Youth Welfare Act. In Germany, the child abuse has been analyzed in the broader context from the viewpoint of social pathology and the child’s protection activities have been made as much as possible in collaboration with the parents by supporting the bringing−up of children. However, the child protection system from abuse has been inclined towards streng血ening punitive sanction since血e 1980s. Furthermore some criminal actions have been taken to the social workers who took charge of a child abuse case since the 1990s. Criticism against social workers,.“If experts had, intervened steadily, such a thing might be prevented.” was made. The j udgment in the Oldenburg High Court in 1996 brought substantial unrest to many staffs of the Youth Office. In order to guarantee the welfare of the child with the best care method and simultaneously to minimize a risk of criminal liability for the social worker, new rules were introduced into the Child and Youth Welfare Act in 2005. 一238一