Comments
Description
Transcript
高真空ダイカスト技術の特徴と動向
特集 高品質化・薄肉化が進む ダイカスト生産技術の最前線 高真空ダイカスト技術の特徴と動向 日産自動車㈱ 神戸 洋史* 1994 年に発売されたドイツ Audi 社の Audi A 8 これを契機に、国内のメーカーも高品質が得られる はオールアルミニウム合金のスペースフレームと呼ば 高真空ダイカストの適用部品や技術開発を模索し始め れる車体構造であった。アルミニウム合金の板と押出 た。本格的に高真空ダイカストが導入され、量産され し材をアルミニウム合金ダイカストのノードと呼ばれ てから 10 年以上が経過し、国内の高真空ダイカスト る継手部品で接合して車体を形成していた。このノー 技術も欧州と肩を並べるほどに向上した。 ドに適用されたのが高真空ダイカストであり、従来の ダイカストと比較して薄肉で高品質のダイカストが得 られ、熱処理や溶接が可能であることが特徴であった。 Audi A 8 では、この高真空ダイカスト部品を中心に 47 部品のダイカストや鋳物部品を適用していた。 本稿では、高真空ダイカスト技術の進歩と適用部品 の状況と今後の課題、期待について述べる。 高真空ダイカストの技術と特徴 高真空ダイカストは、溶湯射出時にモールドキャビ ティ内の空気を巻き込まなくすることにより製品内の *Hiroshi Kambe:パワートレイン技術開発試作部 エキスパ ートリーダー 〒230−0053 横浜市鶴見区大黒町 6−1 TEL(045)505−8468 ガス量を減らし、熱処理や溶接が可能な高品質なダイ カストを得ることのできる工法である。したがって、 モールドキャビティを 3 kPa 程度の高真空状態に保 つ必要がある。このため、モールドキャビティの真空 度を保つための金型合わせ面や射出ス リーブの突き当て面などのシール技術 固定金型 真空吸引 バルブ 固定ブラテン 可動金型 射出ピストン や溶湯を遮断するための真空バルブが 必要となり、種々の技術が実用化され ている。 射出スリープ キャビティ 給湯パイプ 図 1 にドイツの Muller−Weingarten 社の Vacural 法を示す。Vacural 真空吸引用 電磁弁 保持炉 真空ポンプ 法は、Audi A 8 のダイカスト部品に も適用された工法である。保持炉の溶 湯中に給湯パイプを挿入し、射出スリ ーブと連結されている。モールドキャ 真空タンク 図 1 Vacural ダイカストマシン 024 ビティを真空吸引するとともに、保持 炉中の溶湯を吸引し、射出を行う。長