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ファルマバレープロジェクト 第3次戦略計画
静岡県 ファルマバレープロジェクト 第3次戦略計画 平成 23 年3月 静岡県 目 次 1 策定の趣旨 …………………………………………………………………………… 1 2 基本理念 ……………………………………………………………………………… 1 3 基本方向 ……………………………………………………………………………… 2 4 戦略1 ベッドサイドのニーズに応える ものづくり 戦略2 医療と産業を担う 戦略3 健康サービスが充実し高次都市機能が集積した 戦略4 世界展開の推進 ………………………………………………………… 8 ひとづくり …………………… 4 …………………………………… 6 まちづくり … 7 推進方針 ……………………………………………………………………………… 9 (1)推進体制の充実 (2)広報活動の充実 (3)弾力的な推進 ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画 構成概要 ……………………………10 参考1 戦略・戦術ごとの具体的な展開 戦略1 ベッドサイドのニーズに応える 戦略2 医療と産業を担う 戦略3 健康サービスが充実し高次都市機能が集積した 戦略4 世界展開の推進 ひとづくり ものづくり ………………11 ………………………………16 まちづくり 19 ……………………………………………………22 参考2 ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画検討委員会委員 ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画検討経過 ……………24 ……………………24 参考3 ファルマバレープロジェクト第2次戦略計画評価報告書の概要 参考4 ファルマバレープロジェクトのあゆみ …………25 ………………………………………27 1 策定の趣旨 ファルマバレープロジェクトは、平成 12 年度に策定した「富士山麓先端医療産業 集積構想(富士山麓ファルマバレー構想)」、 「第1次戦略計画(平成 14 年度∼18 年度)」 及び「第2次戦略計画(平成 19 年度∼22 年度)」に基づき事業を推進してきました。 現在、世界トップクラスのがん診療拠点である静岡がんセンターを中心に、先端医 療の実践と高度な研究開発を展開するとともに、(財)しずおか産業創造機構 ファル マバレーセンターを中核支援機関に、我が国でも稀な、医療機関を中心とした産業ク ラスターの形成を進めており、地域企業の医療健康分野への参入も相次いでいます。 これらの成果は、種から生まれた若芽が育ち始めた状態であることから、プロジェ クトのより一層の推進を図り、これらの芽をさらに大きく育てる戦略を明確にするた め、第3次戦略計画を策定します。 2 基本理念 プロジェクトの基本理念は、引き続き、「世界一の健康長寿県の形成」とします。 プロジェクトでは、これまで、この理念を達成するため、「健康増進・疾病克服」 と「県民の経済基盤の確立」を両輪として施策を推進してきました。 今後、「健康増進・疾病克服」については、静岡がんセンターを中心に世界レベル の研究開発をより一層充実し、患者・家族のために臨床現場への応用を図ります。 「県民の経済基盤の確立」については、地域企業の医療健康分野への参入や、市町 のプロジェクト参加などの動きを発展させて、患者や臨床現場のニーズ(ベットサイ ドニーズ)に応える製品や技術を開発し、国内・世界に販売することにより、医療の 質の向上につなげます。 また、今後とも計画の推進に当たっては、プロジェクトの開始時から関係者の行動 規範となっている「ファルマバレー宣言」を引き続き関係者が共有し、 医療・健康 をキーワードに、「住んでよし、訪れてよし」、「生んでよし、育ててよし」、「学んで よし、働いてよし」の我が国のモデル地域となることを目指します。 《ファルマバレー宣言》 『私たちは、患者・家族の視点に立ち、 叡智を育み結集し、 共に病と闘い支えあい、 健康社会の実現に貢献することを宣言します。』 1 3 基本方向 ファルマバレープロジェクトは、これまでの始動期(第1次戦略計画期間)、成長 期(第2次戦略計画期間)を経て、今後の 10 年間が自律的発展に向けた期間になる ことを想定しています。 また、県では、本プロジェクトに加えて、中部地域を中心としたフーズ・サイエン スヒルズプロジェクト、西部地域を中心としたフォトンバレープロジェクトにも取り 組んでおり、今後は、各プロジェクト間の連携がますます重要となり、これらを踏ま え、第3次戦略計画では、 ものづくり 、 ひとづくり 、 まちづくり 、 世界展開 の4つの視点から、富士山麓において、医療機関を中心とした「医療健康産業クラス ターの形成」を図ります。 【ファルマバレーの 10 年後の姿】 ○ものづくり 医療健康産業を中心とした産業構造に転換し、地域企業が元気になり、地域経済 の持続的な発展がなされています。 このため、プロジェクトに参画する大学や研究機関は、患者・家族及び医療従事 者のニーズに基づいた最先端の研究開発をより一層推進します。 また、研究成果を活用した製品化を進め、世界市場への販売に取り組む企業の支 援を強化します。 これにより、これまでの事業化・製品化の実績が倍増し、これらの製品の多くが 世界市場で評価され、活用されることを目指します。 ○ひとづくり 患者・家族が満足できる質の高い医療サービスや、専門性の高い医療技術を提供 し、真に医療現場が必要とする製品を創出する優秀な人材がこの地域で活躍してい ます。 このため、静岡がんセンターが実践してきた、患者・家族の視点に立った質の高 い医療従事者の育成に加え、県内への医科大学等の設置について検討を進めます。 また、地域の大学等との連携を進め、研究者、技術者の育成を図り、プロジェク トに関係する高度な産業人材の育成人数が倍増することを目指します。 2 ○まちづくり 健康サービスが充実するとともに、高次都市機能が集積し、住む人も訪れる人も 快適な魅力ある都市圏が形成されています。 このため、市町と協働して、企業や研究施設の誘致を積極的に進めるとともに、 コンベンション機能の充実などにより、人が集い、賑わう都市空間の創出を図り、 温泉や食材などの観光資源を組み合わせた健康サービスと癒しの提供など、健康を テーマとした地域づくりを目指します。 ○世界展開 世界の基準を考慮した製品開発を行う地域企業が増大し、 Made in Mt. Fuji の製品や仕組みが世界に広く行き渡っています。 このため、世界に向けた展開を進め、人・モノ・情報が世界から集まるとともに、 プロジェクトから生まれた製品、システムやノウハウが世界に広がるような、日本 の医療健康産業クラスターのモデル地域となることを目指します。 上記の 10 年後の姿を実現するため、以下のとおり、具体的な戦略を展開します。 3 戦略1 ・戦術1 ベッドサイドのニーズに応える ものづくり 研究開発の推進 静岡がんセンターを中心に、県内外の大学や研究機関と連携し、創薬探索から 臨床試験までの一貫した大規模な創薬プラットホームを積極的に活用したトラ ンスレーショナルリサーチ1の推進、医療現場のニーズを実現するためのニッチ技 術2の開発及び大手企業との包括的共同研究協定等による製品開発に取り組みま す。 ・戦術2 地域企業の世界展開の支援 これまでにファルマバレーセンターが構築してきた医療機器等の開発・販売支 援のプラットホームの充実を図り、患者・家族の視点に立った医療スタッフと地 域企業の研究者とのイコール・パートナーシップ3による製品開発や、戦略的な医 療健康分野への異業種参入・第二創業や既存企業の規模の拡大を促進するととも に、意欲ある者が起業しやすい環境を整えるため、インキュベーションセンター 4 などを活用して、円滑に事業を開始できるよう支援します。 また、これらの企業が開発した製品を国内、世界に向けて販売することを支援 します。 1 大学などの研究室で発見された基礎的な知見や技術について、臨床応用の可能性を積極的に評 価しなおして、臨床の場に使われるまでに育てること。基礎の場である大学等と実業との橋渡し をする研究。 2 ニッチとは「隙間」を示し、 「ニッチ市場」は、 「潜在的なニーズがあるにもかかわらず、他の 企業が気付かない(若しくは市場規模が小さいため採算が合わない) 「隙間」となっている市場」 を意味する。 「ニッチ技術」は、このようなニッチ市場に参入し、高い市場シェアを確保し、収 益を上げるための技術。 3 対等な関係で行う協力や提携。 4 新規に独立開業しようとする創業者や創業間もないベンチャー企業に対し、必要な事業用スペ ースを提供し、技術支援や販路開拓、経営診断・指導など、起業に係る一連の活動を支援するこ とを目的とした創業者支援施設。 現在、県では沼津、富士、浜松各工業技術支援センターに設置している。 4 《数値指標》 項目 ファルマバレーセンターコーディネートに よる共同研究実施件数(累計) 静岡の創薬プラットホームを活用した医薬 品開発件数(累計) 治験ネットワーク病院による年間の治験実 施件数(新規) ファルマバレーセンターによるがん領域の 臨床研究支援件数(開始件数) ファルマバレープロジェクトによる事業 化・製品化件数(累計) 医薬品・医療機器合計生産金額 平成 23∼25 年度 平成 23∼32 年度 30 件 100 件 − 2剤 (治験実施件数) 130 件/年 130 件/年 3件(1件/年) 10 件(1件/年) 18 件 60 件 8,400 億円 10,000 億円 (平成 25 年) (平成 32 年) 15 事業所 50 事業所 医薬品又は医療機器製造業許可新規取得事 業所数(県内全域)、医療健康産業への異業 種からの参入・第二創業した事業所数(累計) 5 戦略2 ・戦術1 医療と産業を担う ひとづくり 質の高い医療人材の育成と研修システムの充実 患者・家族が安心して質の高い医療を享受できるよう、認定看護師などのコ・ メディカルスタッフ5の育成に努めるとともに、大学等と連携してトレーニング指 導者等の健康関連人材を育成します。なお、医師確保を図るため、県内への医科 大学等の設置について検討を進めます。 また、多職種チーム医療6の取組を活用した医療人材の研修システムの構築や 「がん よろず相談」などにより患者や家族の悩みや負担を和らげるケアの普及 を図ります。 ・戦術2 医療現場のニーズを事業化する産業人材の育成 プロジェクトにおける新たな事業化・製品化を促進するため、患者・家族の視 点や医療現場のニーズを理解し、実現することができる医療健康分野に精通した 高度な技術者や研究人材及び経営者を養成します。 また、コーディネータやインキュベーションマネージャー7など、産業支援人材 の育成や人材間のネットワークの強化を図ります。 《数値指標》 項目 平成 23∼25 年度 専門看護師・認定看護師資格の新規取得者数 149 人 (県内全域)(累計) ファルマバレープロジェクトによる産業人 144 人 材の育成人数(富士山麓医用機器開発エンジ ニア養成プログラム、経営者セミナー等) 5 平成 23∼32 年度 500 人 480 人 通例として、医師、歯科医師と協同して医療を行う、看護師を含む医療従事者(検査技師・放 射線技師・薬剤師・理学療法士・栄養士など)の総称として用いられる。 6 患者に最善の治療とケアを提供するシステムの構築を目的として、医師、看護師、薬剤師、理 学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなどによって構成され、各々の高い専門性を前提に、目 的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した 医療を提供すること。 7 事業を始めようとする経験の少ない起業家に、事業の知識、経営資源など不足するものを幅広 く速やかに補うことを支援する人のこと。 6 戦略3 ・戦術1 健康サービスが充実し高次都市機能が集積した まちづくり 医療健康分野の産業集積 高規格幹線道路や工業団地などの産業インフラの整備を促進し、富士山麓地域 の工業団地等に、国内外から医療健康分野の企業や研究施設を積極的に誘致する とともに、茶やワサビなど豊富な農林水産物を活用した機能性の高い新製品の開 発を進めるなど、医療健康産業の活性化と集積を図ります。 ・戦術2 健康をテーマとした地域づくり かかりつけ湯など、温泉や食材などの観光資源を組み合わせた健康サービスと 癒しの提供や、市町の健康づくりプログラムの普及を支援するとともに、食育の 推進を図り、健康をテーマとした地域づくりを進めます。 ・戦術3 人が集まる地域づくり 東部コンベンションセンターの整備などにより、コンベンション機能を充実し、 人が集い、賑わう都市空間の創出を図るとともに、富士山の世界文化遺産登録の 実現、伊豆文学フェスティバルの開催などによる多彩な地域文化の振興及び芸術 鑑賞の場の提供や創作の場の充実を図り、住む人も訪れる人も快適な魅力のある まちづくりを進めます。 《数値指標》 項目 平成 23∼25 年度 企業立地件数(県内全域) 100 件/年 日ごろ生活を営んでいる範囲において、都市 60% 機能が充足していると感じている人の割合 (21 年度:52.8%) 7 平成 23∼32 年度 100 件/年 60% 戦略4 ・戦術1 世界展開の推進 世界展開に向けた取組の充実 世界への製品や企業情報の発信、海外展示会への出展支援など、販売ネットワ ークの形成に取り組むとともに、国内外のクラスターとの連携を充実し、相乗的 な効果による製品化・事業化を促進することにより、プロジェクトから生まれた 製品、システムやノウハウを世界に広げます。 今後、ファルマバレーセンターの組織体制の充実など、世界に向けて展開する ための体制の整備を図ります。 《数値指標》 項目 平成 23∼25 年度 平成 23∼32 年度 3社 10 社 10,000 件/年 30,000 件/年 新たに医療健康関連の製品(部品・部材を含 む)・技術を海外に販売した地域内の企業数 (累計) 製品等の紹介ホームページの閲覧件数(ペー ジビュー) 北海道地図㈱ 富士山麓から世界へ ! 北海道地図㈱ 8 4 推進方針 (1)推進体制の充実 効率的かつ効果的に計画を推進するため、市町や国内外のクラスターとの連携 強化を図るとともに、ファルマバレーセンターがプロジェクトの中核支援機関と しての機能を持続的に発揮できるよう、その組織体制の充実などを図ります。 (2)広報活動の充実 世界レベルの研究開発の成果をはじめ、企業を育て成功に導く強力なサポート 体制、優れた製品(部品・部材を含む) ・技術を有する地域企業の集積、質の高い 医療人材養成システムなど、 ファルマバレー の持つ魅力を世界に向けて発信 します。 (3)弾力的な推進 社会経済環境の変化を的確にとらえるとともに、計画の進捗状況等に応じて、 計画される施策、事業の内容や進め方等は必要な都度見直すものとし、戦略計画 の弾力的な推進に努めます。 【計画期間】 第3次戦略計画は、静岡県総合計画の計画期間との整合を図り、今後 10 年間 (平成 23 年度∼32 年度)を見据えたものとし、ホップ、ステップ、ジャンプで 実現していくため、事業の進捗状況を毎年検証するとともに、3年ごとに中間評 価を実施します。 静岡がんセンター 9 ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画 ■基本理念 ■基本理念 ■戦略的な施策の展開 世界一の健康長寿県の形成 世界一の健康長寿県の形成 「健康増進・疾病克服」と「県民の経済基盤の確立」を両輪として 「健康増進・疾病克服」と「県民の経済基盤の確立」を両輪として 施策を推進 施策を推進 ■ファルマバレー宣言 ■ファルマバレー宣言 『私たちは、患者・家族の視点に立ち、 『私たちは、患者・家族の視点に立ち、 叡智を育み結集し、 叡智を育み結集し、 共に病と闘い支えあい、 共に病と闘い支えあい、 健康社会の実現に貢献することを宣言します。』 健康社会の実現に貢献することを宣言します。』 ■基本方向 ■基本方向 ものづくり 、 ひとづくり 、 まちづくり 、 世界展開 の4つの視 ものづくり 、 ひとづくり 、 まちづくり 、 世界展開 の4つの視 点から、富士山麓において、医療機関を中心とした「医療健康産業 点から、富士山麓において、医療機関を中心とした「医療健康産業 クラスターの形成」を図る。 クラスターの形成」を図る。 【ファルマバレーの10年後の姿】 【ファルマバレーの10年後の姿】 ○ものづくり 10 ○ものづくり 医療健康産業を中心とした産業構造に転換し、地域企業が元気になり、 医療健康産業を中心とした産業構造に転換し、地域企業が元気になり、 地域経済の持続的な発展がなされている。 地域経済の持続的な発展がなされている。 ○ひとづくり ○ひとづくり 患者・家族が満足できる質の高い医療サービスや、専門性の高い医療技 患者・家族が満足できる質の高い医療サービスや、専門性の高い医療技 術を提供し、真に医療現場が必要とする製品を創出する優秀な人材がこ 術を提供し、真に医療現場が必要とする製品を創出する優秀な人材がこ の地域で活躍している。 の地域で活躍している。 ○まちづくり ○まちづくり 健康サービスが充実するとともに、高次都市機能が集積し、住む人も訪 健康サービスが充実するとともに、高次都市機能が集積し、住む人も訪 れる人も快適な魅力ある都市圏が形成されている。 れる人も快適な魅力ある都市圏が形成されている。 ○世界展開 ○世界展開 世界の基準を考慮した製品開発を行う地域企業が増大し、 Made in Mt. 世界の基準を考慮した製品開発を行う地域企業が増大し、 Made in Mt. Fuji の製品や仕組みが世界に広く行き渡っている。 Fuji の製品や仕組みが世界に広く行き渡っている。 ■推進方針 ■推進方針 (1) 推進体制の充実 (1) 推進体制の充実 市町や国内外のクラスターとの連携強化と推進体制の充実 市町や国内外のクラスターとの連携強化と推進体制の充実 (2) 広報活動の充実 (2) 広報活動の充実 ファルマバレー の魅力を世界に向けて発信 ファルマバレー の魅力を世界に向けて発信 (3) 弾力的な推進 (3) 弾力的な推進 計画は、必要な都度見直し、弾力的に推進 計画は、必要な都度見直し、弾力的に推進 【計画期間】 【計画期間】 静岡県総合計画の計画期間との整合を図り、今後10年間を見 静岡県総合計画の計画期間との整合を図り、今後10年間を見 据えたプロジェクトとし、事業の進捗状況を毎年検証するとともに、 据えたプロジェクトとし、事業の進捗状況を毎年検証するとともに、 3年ごとに中間評価を実施。 3年ごとに中間評価を実施。 構成概要 戦略 戦術 具体的な展開 戦略1 1 研究開発の推進 ベッドサイドの ニーズに応える “ものづくり” (1) トランスレーショナルリサーチの推進 (2) ニッチ技術の開発 (3) 大手企業との連携による製品開発 2 地域企業の 世界展開の支援 (1) 異業種参入、第二創業、起業、ベンチャー 企業などの支援 (2) 販売促進ネットワークの形成 1 質の高い医療人材 の育成と研修シス テムの充実 (1) 質の高い医療従事者の育成 (2) 新しい医療連携システムの構築 2 医療現場のニーズ を事業化する 産業人材の育成 (1) 高度な技術者・専門分野に通じた人材の育成 (2) 高度な研究人材の育成 (3) 医療と産業をつなぐネットワークづくり 1 医療健康分野の 産業集積 (1) 国内外からの企業誘致の推進 (2) 豊富な農林水産物などを活用した産業振興 健康サービスが充 実し高次都市機能 が集積した “まちづくり” 2 健康をテーマとした 地域づくり (1) 特色ある健康サービスによる癒しの提供 (2) 地域の食材や食文化の活用 (3) 健康づくりプログラムの普及 3 人が集まる地域 づくり (1) コンベンション機能の充実 (2) 地域文化の振興 戦略4 1 世界展開に向けた 取組の充実 (1) 世界への販路開拓に向けた取組(1-2-(2) 再掲) (2) 国内外のクラスターとの連携充実 (3) ファルマバレーセンターの組織体制などの充実 戦略2 医療と産業を担う “ひとづくり” 戦略3 世界展開の推進 【数値指標】 ○戦略1 ○戦略2 ・専門看護師・認定看護師新規取得者数 ・共同研究実施件数 ・産業人材の育成人数 ・医薬品開発件数 ・新規治験実施件数 ○戦略3 ・がん領域の臨床研究支援開始件数 ・企業立地件数 ・事業化・製品化件数 ・都市機能が充足していると感じている人の割合 ・医薬品・医療機器合計生産金額 ○戦略4 ・医薬品・医療機器新規許可事業所数等 ・医療健康関連製品等を海外販売した地域内企業数 ・製品等紹介ホームページの閲覧件数 10 参考1 戦略・戦術ごとの具体的な展開 戦略1 ベッドサイドのニーズに応える ものづくり (基本方向) 医療健康産業を中心とした産業構造に転換し、地域企業が元気になり、地域経済の 持続的な発展がなされている。 このため、プロジェクトに参画する大学や研究機関は、患者・家族及び医療従事者 のニーズに基づいた最先端の研究開発をより一層推進する。 また、研究成果を活用した製品化を進め、世界市場への販売に取り組む企業の支援 を強化する。 これにより、これまでの事業化・製品化の実績が倍増し、これらの製品の多くが世 界市場で評価され、活用されることを目指す。 戦術1 研究開発の推進 静岡がんセンターを中心に、県内外の大学や研究機関と連携し、創薬探索から臨床 試験までの一貫した大規模な創薬プラットホームを積極的に活用したトランスレー ショナルリサーチ の推進、医療現場のニーズを実現するためのニッチ技術 の開発及 び大手企業との包括的共同研究協定等による製品開発に取り組む。 (1) トランスレーショナルリサーチの推進 ア 静岡がんセンターを中心とした研究開発 静岡がんセンターは、新しく開発した腫瘍 マーカー探索基盤技術を活用して、肺がんの 腫瘍マーカー候補を発見し、製品化に向けた 取組を進め、この基盤技術により、胃がん、 大腸がんについてもマーカー候補物質を発 見しており、今後、それらの製品化を進める 静岡がんセンター とともに、がんの早期発見や治療法の選択に つながるバイオマーカー開発を目指す。また、容易に、短期間に、安価で 完全 ヒト型モノクロナール抗体 を作成する技術を開発しており、今後、この技術を 活用し、抗がん剤や感染症治療薬の開発を進める。 また、東京工業大学、東京農工大学、早稲田大学、慶應義塾大学との協定に基 づき、産学官連携による医看工連携共同研究を進め、より優れた診断、治療法な どの研究開発を推進しており、その取組をより一層充実する。 さらに、国立遺伝学研究所、静岡県立大学、東海大学、日本大学、沼津工業高 等専門学校、県工業技術研究所(沼津・富士工業技術支援センター)との医療健 康分野における研究開発の交流・連携をより一層充実するほか、地域の企業とと もに、電子カルテを始めとした地域医療へのITの活用を図る。 これらに加え、「地域イノベーションクラスタープログラム(グローバル型、 重点支援枠)」(平成 22∼24 年度、文部科学省助成事業)において、国立遺伝学 研究所や東京農工大とともに、染色体異常の解析、腫瘍マーカー開発、免疫療法、 がん治療・早期診断ツール開発の4つの研究を実施する。 ファルマバレーセンターは、これらの取組を積極的にコーディネートする。 【県担当課】新産業集積課 11 イ 創薬・診断薬開発 県は、ファルマバレーセンタ ー、静岡県立大学、静岡がんセ ンターを中心に、創薬探索から 臨床試験までの一貫した大規模 な創薬プラットホームを構築し ており、このプラットホームは、 体外診断用医薬品の研究開発に ファルマバレープロジェクトの も活用している。 創薬探索から臨床試験までのプラットホーム ファルマバレーセンターは、 静岡県環境衛生科学研究所に整備した静岡独特の化合物ライブラリー(平成 23 年1月末現在約9万個)をさらに充実し、静岡県立大学の創薬探索センターは、 ライブラリーの活用により、抗がん剤などの効率的な創薬探索研究を行う。 【県担当課】新産業集積課 ウ 治験・臨床研究の推進 がん領域において、国内トップ 海外との連携 クラスの治験の実績を誇る静岡 がん領域の治験・臨床研究の実施拠点 がんセンターは、2008年に世界的 SCC な製薬企業と抗がん剤開発によ る基礎研究、臨床試験の共同研究 PVC 臨床研究 治験 の包括契約を締結し、日本人・ア 治験・臨床研究支援拠点 JASPAC01(膵癌) JASPAC01(膵癌) ジア人に適した抗がん剤や治療 創薬・医療機器開発支援拠点 全国34 病院 全国34病院 静岡県治験ネットワーク 法の開発を目指しており、この取 29病院 29病院 JASPAC02(胆道癌) JASPAC02(胆道癌) 全国9病院 組をより一層充実する。 がん領域グループ 11病院 11病院 また、静岡がんセンターは、8 全国10 病院 全国10病院 年前から完全に電子カルテ化し 治験・臨床研究のネットワーク ており、製薬企業が極めて容易に 治験業務を効率化できるシステムが確立している。今後とも、これらの取組を充 実・強化していくとともに、医師主導治験に積極的に取り組むなど国内における 治験・臨床研究拠点を目指し、これまでに構築した がんネットワーク を柱と した治験・臨床研究の取組を充実させ、がん領域に強いネットワークを維持する。 がん領域以外では、ファルマバレーセンターが、県内29病院約14000床が参画 する 静岡県治験ネットワーク を構築し、国内トップクラスの実績を上げてお り、県民が身近な場所で先進的医療にアクセスできる環境が整っている。 今後、地域治験ネットワークとしての魅力を一層高めるために、症例集積性の 向上、中央治験審査委員会の設置など治験の効率化、人材の育成、情報公開に向 けた取組の充実を図るとともに、医薬品の治験だけでなく医療機器、体外診断用 医薬品にも対応できるようネットワーク病院への支援を実施し、大規模な病院の ネットワークの特徴を生かした多種多様の依頼に対応できる魅力あるネットワ ークを構築する。 また、これらの取組を積極的に推進するため、より効率的かつ効果的な運営体 制の構築を図る。 【県担当課】薬事課 静岡がんセンター ファルマバレーセンター ProGRP(肺癌マーカー) ProGRP(肺癌マーカー) 12 (2) ニッチ技術の開発 ファルマバレーセンターは、患者・家族、 医師、看護師などの医療スタッフの経験に 基づき、静岡がんセンターを始めとした地 域の病院から、医療現場(ベッドサイド) 医療現場のニーズから生まれた のニーズを収集し、地域企業が製品化・事 「直腸脱気チューブ」 業化するための「ニッチ技術の開発」シス テムを構築しており、このシステムから具体的な製品が生まれてきていることから、 引き続き、このシステムを最大限に活用することにより、地域企業の医療健康分野 への参入を支援していく。 また、地域企業の特許等の知的財産については、「静岡県知的財産創造・保護・ 活用指針」に基づき、革新的な技術の創造、保護のための管理体制の整備、戦略的 活用の促進支援を行う。 【県担当課】新産業集積課 (3) 大手企業との連携による製品開発 静岡がんセンターは、約千名の医療スタ ッフを活用し、大手企業と包括的共同研究 契約を締結し、 「画像診断支援ロボット」や 「陽子線治療の次世代機」などについて、 従来の製品の問題点を積極的に指摘しつつ、 新機種開発を進めており、この取組をより 一層強化し、共同研究件数の増加を図る。 【県担当課】新産業集積課 静岡がんセンターの陽子線治療施設加速器 戦術2 地域企業の世界展開の支援 これまでにファルマバレーセンターが構築してきた医療機器等の開発・販売支援の プラットホームの充実を図り、患者・家族の視点に立った医療スタッフと地域企業の 研究者とのイコール・パートナーシップ による製品開発や、戦略的な医療健康分野 への異業種参入・第二創業や既存企業の規模の拡大を促進するとともに、意欲ある者 が起業しやすい環境を整えるため、インキュベーションセンター などを活用して、 円滑に事業を開始できるよう支援する。 また、これらの企業が開発した製品を国内、世界に向けて販売することを支援する。 13 (1) 異業種参入、第二創業、起業、ベンチャー企業などの支援 ア 異業種参入・第二創業の促進 ファルマバレーセンターは、積極的に異業種参 入・第二創業を図り、特に高い意欲と技術力を持 つ企業の個別訪問により、医療健康分野への進出 可能性を秘めた企業の発掘、後発医療機器(既承 認医療機器と構造等が実質的に同等である医療 機器)製造分野への参入を市町とともに促進する。 また、静岡がんセンター等の医療従事者と 異 業種参入・第二創業 企業のコンソーシアムに 自動車用ネジから医療用ネジへの参入 よるワークショップを企画し、ベッドサイドの ニーズに基づく新製品の開発を推進する。 さらに、高い技術力を有する複数の企業を組み合わせることにより、医療健康 分野の高度なサプライヤーの形成を促進するとともに、その中から、医療機器製 造許可を取得する企業を育成する。 【県担当課】新産業集積課 イ 既存企業の規模拡大 ファルマバレーセンターは、医療機器製造業 者との連携をより一層強化し、ベッドサイドの ニーズに基づく製品開発を促進するとともに、 地域企業に県内外の大手製薬、医療機器メーカ ー等への部材供給等のための きっかけ を提 供し、地域企業の売上高拡大を促進する。 また、医療機器製造業者による後発医療機器 製造を促進し、売上高の拡大を図る。 【県担当課】新産業集積課 医療機器製造業者との連携構築への取組 ウ 起業、ベンチャー企業の支援 ファルマバレーセンターは、プロジェクトの中から生まれた 有望な成果 を もとに、個別サポートによる起業を促進する。 また、豊富な実務経験を有し、強力なネットワークを有する、大手企業を退職 した シニア人材 や フロンティアスピリット旺盛な若手 、さらには、我が 国において今後多くの誕生が期待される 企業からのスピンアウト人材 による ベンチャーに対し、個別相談・指導を行うなど、新規創業を支援する取組を進め る。 県は、こうした意欲ある者が起業しやすい環境を整えるため、引き続き起業相 談等を実施するとともに、インキュベーションセンターなどを活用して、円滑に スタートアップできるよう支援する。 さらなる飛躍を目指すベンチャーに対しては、プロジェクトに関心を持つ金融 機関やファンド等との連携を促進し、ベンチャーの育成に努める。 【県担当課】商工振興課、新産業集積課 14 (2) 販売促進ネットワークの形成 ファルマバレーセンターは、地域内の企業で製造された製品(部品・部材を含 む)・技術の販売ネットワークの形成を促進し、国内外への販売展開を図る。 具体的には、コーディネータが、地域企業の製品等を目利きし、日本中、世界中 で通用する魅力ある商品( Made in Mt. Fuji マーク)づくりをアドバイスした り、国内(薬事法)及びFDA(米国食品医薬品庁)認証の取得、CEマークの取 得等の手続きについて情報収集・提供するほか、地域企業の製品等を国内外の大企 業の調達部門に紹介するとともに、世界中からアクセスできる製品等の紹介ホーム ページを整備する。また、海外展開に向けて、地域企業者に対し、海外の商習慣へ の対応や言語力向上をサポートする。 【県担当課】新産業集積課 ものづくりから販売促進へ! クラスターの成長には、販売戦略が必要!! ビジネスモデルとしての クラスターからの提案 1 売込先 2 目利き 3 紹介ホームページ 4 認証取得 1 貴社製品を日本の大企業に、全世界へ売り出します! ① 大企業の調達部門を案内 ② 世界への販売拠点を形成 2 世界で活躍したコーディネータ軍団が貴社技術を目利きします! ① 貴社の製品・部品・技術を目利きし、商品の魅力を大企業にアピール ② 日本中、世界中で通用するための商品づくりをアドバイス ③ Made in Mt.Fuji トレードマーク 3 商品紹介ホームページを開設します! ① 世界からアクセスできる製品・部品・技術紹介システムホームページを整備 ② 全国の医療関係クラスターを集めた全国大会を開催、システムへの参加を呼び掛け 4 世界の認証取得を支援します! 国内(薬事法)から FDA 認証の取得、CE マークの取得等の手続きについて情報収集・情報提供 Mt. Fuji PharmaValley Center が 医療用部品のトップに押し上げます! (財)しずおか産業創造機構ファルマバレーセンター 電話 15 055-980-6333 http://www.fuji-pvc.jp 戦略2 医療と産業を担う ひとづくり (基本方向) 患者・家族が満足できる質の高い医療サービスや、専門性の高い医療技術を提供し、 真に医療現場が必要とする製品を創出する優秀な人材がこの地域で活躍している。 このため、静岡がんセンターが実践してきた、患者・家族の視点に立った質の高い 医療従事者の育成に加え、県内への医科大学等の設置について検討を進める。 また、地域の大学等との連携を進め、研究者、技術者の育成を図り、プロジェクト に関係する高度な産業人材の育成人数が倍増することを目指す。 戦術1 質の高い医療人材の育成と研修システムの充実 患者・家族が安心して質の高い医療を享受できるよう、認定看護師などのコ・メデ ィカルスタッフの育成に努めるとともに、大学等と連携してトレーニング指導者等の 健康関連人材を育成する。なお、医師確保を図るため、県内への医科大学等の設置に ついて検討を進める。 また、多職種チーム医療の取組を活用した医療人材の研修システムの構築や「がん よろず相談」などにより患者や家族の悩みや負担を和らげるケアの普及を図る。 (1) 質の高い医療従事者の育成 ア コ・メディカルスタッフの育成と医師確保 静岡がんセンターは、質の高い看護師を養成す るため、新人看護師研修や認定看護師の教育課程 など、キャリアアップのための研修を実施する。 県は、安定的にコ・メディカルスタッフを確保 するため、看護師、歯科衛生士等養成機関の整備、 及び看護師養成所の運営に対し支援を行うとと もに、再就業準備講習会や病院派遣型研修等によ る潜在看護師(資格を持つが離職中の看護師)の 認定看護師教育の実施 再就業を支援する。 また、県は、海外からの英知を結集し、日本の免許を有しない外国人医療従事 者を医薬品や医療機器の開発に活用できるよう、特区申請等、国に対して積極的 に働きかける。 なお、県は、医師確保を図るため、県内への医科大学等の設置について検討を 進める。 【県担当課】健康福祉部政策監、地域医療課、新産業集積課 イ 大学等と連携した健康関連人材の育成 県は、認知動作型トレーニングマシンなどを活 用した科学的トレーニングに精通した人材を育 成する講座を大学等と連携して実施し、トレーニ ング指導者等の健康関連人材を育成する。 【県担当課】健康増進課、新産業集積課 認知動作型トレーニングマシンを活用 した大腰筋等トレーニングの展開 16 (2) 新しい医療連携システムの構築 静岡がんセンターは、患者・家族を中心に置 き、医師、看護師などすべての医療スタッフが、 自らの役割に沿ったサービスを積極的に提供す る「多職種チーム医療(multi-professional team approach)」を実践しており、この取組を活用し、 医療人材の研修システムを構築する。 また、全国の相談業務担当者を対象とする研 修会のより一層の充実を図るとともに、 「がんよ 多職種チーム医療概念図 ろず相談所」、 「Web版がんよろず相談Q&A」、 「情報イーゼル」など、患者や家族の悩みや負担を和らげるシステムの普及を図る。 【県担当課】新産業集積課 戦術2 医療現場のニーズを事業化する産業人材の育成 プロジェクトにおける新たな事業化・製品化を促進するため、患者・家族の視点や 医療現場のニーズを理解し、実現することができる医療健康分野に精通した高度な技 術者や研究人材及び経営者を養成する。 また、コーディネータやインキュベーションマネージャーなど、産業支援人材の育 成や人材間のネットワークの強化を図る。 (1) 高度な技術者・専門分野に通じた人材の育成 ア 高度な技術者の育成 県は、沼津工業高等専門学校が実施する「富士 山麓医用機器開発エンジニア養成プログラム」に よる医用機器開発エンジニアの育成を引き続き 支援する。また、同プログラム終了後に設置が予 定されている「医用機器開発システムコース(仮 称)」に対して、ファルマバレーセンターなどプ ロジェクト参画機関が支援を行い、医用機器開発 富士山麓医用機器開発エンジニア に精通した高度な技術者を育成する。 養成プログラムの実施 また、地域企業の医療健康分野への参入を促 進するため、参入に必要な知識の習得ができるセミナーを開催し、医療健康分野 に精通した人材を育成する。 【県担当課】新産業集積課 イ 専門分野に通じた経営者の育成 ファルマバレーセンターは、地域資源を新しい視点で組み合わせて活用する製 品開発のケーススタディによる経営者セミナーを開催し、 ものづかい を意識 した経営者を育成する。 【県担当課】新産業集積課 17 (2) 高度な研究人材の育成 静岡がんセンターは、医看工連携協定を締結した大学 との共同研究を実施するとともに、同研究所に受け入れ た若手研究者の育成を支援する。 また、県立大学創薬探索センターは、創薬探索研究を 通じた実践的な創薬科学教育を引き続き実施し、製薬企 業等で即戦力として活躍できる創薬研究者を育成する。 県立大学創薬探索センターでの 【県担当課】新産業集積課、大学課 創薬探索研究 (3) 医療と産業をつなぐネットワークづくり ア コーディネータネットワークの形成 (財)しずおか産業創造機構は、「静岡県コーディネータネットワーク会議」を 定期的に開催し、産業支援機関等の各コーディネータが持つ経営支援ノウハウの 共有や地域の企業の情報交換の場を提供する。 また、コーディネータの育成やコーディネータ間のネットワークの強化により、 医療健康産業における新たな事業化・産業化を促進する。 【県担当課】新産業集積課 イ ニーズとシーズを熟知したコーディネータの育成 (財)しずおか産業創造機構は、地域企業やベンチャ ー企業が抱えるさまざまな経営課題の解決をサポー トするインキュベーションマネジャーや産業化コー ディネータ等の産業支援人材を育成するため、豊富な 経験・技術・ノウハウを有する企業OBや企業をスピ ンアウトした若手人材を積極的に活用する。 【県担当課】商工振興課、新産業集積課 企業OBを活用したセミナー ウ 学校教育における産業人材の育成 県は、小・中・高校生に対する職業講話・職場見学・ 職場体験・就業体験等のキャリア教育を実施する。 また、高校生の科学に対する興味関心を高めるため 理数科設置高校で実施しているニュートンプロジェ クトを推進するとともに、ファルマバレープロジェク ト参画機関の協力を得て、カリキュラムの充実を図る。 さらに、医学部進学を目指す高校生に対し、医療 ニュートンプロジェクトの実施 現場や医療従事者と接する機会を設けることにより、医師を目指すことの意義を 再認識させ、将来の本県の医療を支える人材を養成する。 【県担当課】学校教育課、地域医療課、新産業集積課 18 戦略3 健康サービスが充実し高次都市機能が集積した まちづくり (基本方向) 健康サービスが充実するとともに、高次都市機能が集積し、住む人も訪れる人も快 適な魅力ある都市圏が形成されている。 このため、市町と協働して、企業や研究施設の誘致を積極的に進めるとともに、コ ンベンション機能の充実などにより、人が集い、賑わう都市空間の創出を図り、温泉 や食材などの観光資源を組み合わせた健康サービスと癒しの提供など、健康をテーマ とした地域づくりを目指す。 戦術1 医療健康分野の産業集積 高規格幹線道路や工業団地などの産業インフラの整備を促進し、富士山麓地域の工 業団地等に、国内外から医療健康分野の企業や研究施設を積極的に誘致するとともに、 茶やワサビなど豊富な農林水産物を活用した機能性の高い新製品の開発を進めるな ど、医療健康産業の活性化と集積を図る。 (1) 国内外からの企業誘致の推進 ア 医療健康分野等の企業誘致 県は、市町と連携し、企業訪問や立地環境説 明会などによる本県の立地優位性のPR、ワン ストップ体制による企業からの立地相談に対 する迅速な対応、誘致支援策の積極的な活用等 を行い、富士山麓地域の工業団地等への、医療 健康分野の企業・研究所の立地促進や既存企業 の投資促進を図る。 【県担当課】企業立地推進課 ファルマバレー長泉工業団地 イ オーダーメード方式による工業用地の整備 県は、工業用地について、新東名高速道路等を活用した新たな開発適地を検討 するとともに、市町や企業の要望に的確に対応するオーダーメード方式を拡充し、 整備を進める。 【県担当課】企業局事業課 ウ 高規格幹線道路の整備促進 県は、産業インフラの整備を促進するため、国や中日本高速道路㈱などに、新 東名高速道路、伊豆縦貫自動車道などの高規格幹線道路の早期完成を働きかける。 【県担当課】道路企画課 19 (2) 豊富な農林水産物などを活用した産業振興 静岡がんセンターは、ゲノミクス、プロテ オミクス、メタボロミクス等の解析技術を駆 使して、茶、ワサビ、タチバナ等の香気成分 や代謝物を分析し、科学的な根拠を集め、そ の活用に向けた取組をより一層充実させる。 また、企業と連携し、一部のがん医療現場 で発生する特異な 病臭 の原因物質の収 集・分析を進めるとともに、バラの香り等を 活用するなど、患者の苦痛を和らげる研究を 地域資源として活用が期待されるバラ 推進する。 県は、特色あるスポーツ関連企業や施設等の地域資源を、産学官民が連携して活 用することにより、新たなサービスや新製品の開発を促進することとしており、東 部地域においてもその展開を図る。 【県担当課】新産業集積課、商工振興課 戦術2 健康をテーマとした地域づくり かかりつけ湯など、温泉や食材などの観光資源を組み合わせた健康サービスと癒し の提供や、市町の健康づくりプログラムの普及を支援するとともに、食育の推進を図 り、健康をテーマとした地域づくりを進める。 (1) 特色ある健康サービスによる癒しの提供 県は、市町と連携して、かかりつけ湯など東部地域の 豊かな自然や、温泉、食材など、富士山麓から伊豆半島 にかけての観光資源を組み合わせた体験型・目的指向型 の新たな特色ある健康サービスや癒しを提供する取組の 拡大を支援する。 【県担当課】観光政策課、観光振興課、健康増進課、 新産業集積課 健康と癒しの宿 「かかりつけ湯」 (2) 地域の食材や食文化の活用 県は、箱根西麓の野菜や機能性が注目されるわさび等、地域の食材を活用した健 康メニューの開発と観光資源を結びつけた「食」をテーマとした商品造成を支援す る。 また、 「ふじのくに食育推進計画」に基づき、市町と連携して、子どもの頃から、 生涯にわたり望ましい食生活を実践する力を身につける取組を推進するとともに、 栄養に関する知識、地域の特色ある食文化や食材等、食に関する知識や関心を高め るための広報活動を行う。 【県担当課】新産業集積課、観光政策課、観光振興課、マーケティング推進課、 健康増進課 20 (3) 健康づくりプログラムの普及 県は、科学的手法による健康づくりトレーニングや、かかりつけ湯による健康増 進プログラム等、地域資源を組み合わせた市町やプロジェクトに賛同する団体など の健康づくりプログラムの作成及び普及を支援する。 【県担当課】健康増進課 戦術3 人が集まる地域づくり 東部コンベンションセンターの整備などにより、コンベンション機能を充実し、人 が集い、賑わう都市空間の創出を図るとともに、富士山の世界文化遺産登録の実現、 伊豆文学フェスティバルの開催などによる多彩な地域文化の振興及び芸術鑑賞の場 の提供や創作の場の充実を図り、住む人も訪れる人も快適な魅力のあるまちづくりを 進める。 (1) コンベンション機能の充実 県は、東部地域における広域的な都市拠点 を形成するため、沼津市とともに沼津駅周辺 総合整備事業を推進する。特に、沼津駅北地 区において民間活力を導入し、会議場施設、 展示イベント施設、宿泊施設等からなる「東 部コンベンションセンター」を整備するなど、 都市機能を充実する。 作成:長谷川逸子・建築計画工房株式会社 東部コンベンションセンター 完成イメージ また、静岡県東部地域コンベンションビューロー等と連携し、医療健康を始めと した国際会議、展示会、見本市などを積極的に誘致するなど、交流人口の増大を図 る。 【県担当課】観光政策課、市街地整備課、新産業集積課 (2) 地域文化の振興 県は、富士山の世界文化遺産登録の実現、伊豆文学フェスティバルの開催、富士 山の日の普及促進などを通じ、多彩で魅力的な地域文化の振興、県民一人ひとりが 何らかの文化活動を行うための芸術の発表・鑑賞の場の提供や創作の場の充実を図 る。 【県担当課】文化政策課、世界遺産推進課 21 戦略4:世界展開の推進 (基本方向) 世界の基準を考慮した製品開発を行う地域企業が増大し、 Made in Mt. Fuji の 製品や仕組みが世界に広く行き渡っている。 このため、世界に向けた展開を進め、人・モノ・情報が世界から集まるとともに、 プロジェクトから生まれた製品、システムやノウハウが世界に広がるような、日本の 医療健康産業クラスターのモデル地域となることを目指す。 戦術1 世界展開に向けた取組の充実 世界への製品や企業情報の発信、海外展示会への出展支援など、販売ネットワーク の形成に取り組むとともに、国内外のクラスターとの連携を充実し、相乗的な効果に よる製品化・事業化を促進することにより、プロジェクトから生まれた製品、システ ムやノウハウを世界に広げる。 今後、ファルマバレーセンターの組織体制の充実など、世界に向けて展開するため の体制の整備を図る。 (1) 世界への販路開拓に向けた取組(1-2-(2)の再掲) ファルマバレーセンターは、地 域内の企業で製造された製品(部 品・部材を含む) ・技術の販売ネッ トワークの形成を促進し、国内外 への販売展開を図る。 具体的には、コーディネータが、 製品・部品・技術の紹介ホームページ 地域企業の製品等を目利きし、日 本中、世界中で通用する魅力ある商品( Made in Mt. Fuji マーク)づくりをア ドバイスしたり、国内(薬事法)及びFDA(米国食品医薬品庁)認証の取得、C Eマークの取得等の手続きについて情報収集・提供するほか、地域企業の製品等を 国内外の大企業の調達部門に紹介するとともに、世界中からアクセスできる製品等 の紹介ホームページを整備する。 また、海外で開催される世界的規模の展示会への出展や、地域企業者に対する海 外の商習慣への対応や言語力向上のサポートを行う。 【県担当課】新産業集積課 22 (2) 国内外のクラスターとの連携充実 県は、ファルマバレー、フーズ・サイエン スヒルズ、フォトンバレーとの連携の強化を 図るとともに、国内の他の地域や、既に交流 が始まっているフランス(パリ、トゥールー ズ、ナントのクラスター)をはじめ、米国、 中国、韓国など、海外のクラスターとの連携 により、相乗的な効果を生み出し、人材の育 成、製品化、事業化につなげる。 【県担当課】新産業集積課 フランス・バイオクラスターとの交流 (3) ファルマバレーセンターの組織体制などの充実 今後、ファルマバレーセンターの組 織体制の充実など、世界に向けて展開 するための体制の整備を図る。 【県担当課】新産業集積課、薬事課 ファルマバレーセンター 23 参考2 ○ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画検討委員会委員 (五十音順、敬称略) 氏 名 職 赤池 敏宏 東京工業大学大学院 宇田 倭玖子 THE OKAMI 大坪 静岡産業大学 檀 会長 名 備考 卓越教授 天城湯ヶ島「白壁荘」 女将 学長 大野 ゆう子 大阪大学大学院 加藤 久豊 富士フイルムメディカル株式会社 木苗 直秀 静岡県立大学 小原 雄治 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 兼 国立遺伝学研究所 所長 佐藤 三武朗 日本大学 竹内 財団法人静岡総合研究機構 辻 宏 邦郎 教授 取締役会長 学長 国際関係学部長 横浜薬科大学 理事長 教授 中嶋 壽志 財団法人静岡経済研究所 西島 昭男 サンフロント 21 懇話会(TESS 委員長) 株式会社シード 代表取締役 廣部 雅昭 東京大学 松田 久一 株式会社JMR生活総合研究所 矢作 恒雄 慶応義塾大学 山口 県立静岡がんセンター 建 理事 専務理事 名誉教授(元静岡県立大学学長) 代表取締役 名誉教授 総長 山崎 達美 中外製薬株式会社 取締役副社長執行役員 山村 善敬 財団法人しずおか産業創造機構 副理事長 ○ファルマバレープロジェクト第3次戦略計画検討経過 検討委員会は、下記のとおり3回の会議を開き、今後、対応すべきプロジェクトの 内容を検討し、第3次戦略計画(案)をとりまとめました。 ・第1回(平成 22 年 11 月5日) 「富士山麓先端健康産業集積(ファルマバレー)プロジェクト」のこれまでの取 組状況について、質疑及び意見交換 ・第2回(平成 22 年 12 月 24 日) 第3次戦略計画(案)の素案について、質疑及び意見交換 ・第3回(平成 23 年2月9日) 第3次戦略計画(案)について、質疑及び意見交換 24 参考3 ファルマバレープロジェクト第2次戦略計画評価報告書の概要 ○評価の結果(総括) ・世界トップクラスのがん診療拠点である静岡がんセンターを中心とし、世界的な 研究機関や企業、地域企業など幅広い分野の参加者を得て、着実な成果をあげて いる。 ・これは、県が戦略を明示してプロジェクトを主導し、地元の自治体が積極的に参 加したこと、中核支援機関であるファルマバレーセンターが、医療現場と地域企 業を結んだ新製品開発、経営者や高度産業人材の育成などに対し的確に支援した ことなどによると考えられる。 ・ファルマバレーセンターのコーディネートにより、医療機器分野に参入する地域 企業が相次いでおり、数十億円を超える売上を記録する製品を含め、34 もの新製 品が誕生している。 ・静岡がんセンターが病院立で全国初となる認定看護師教育機関となったほか、プ ロジェクトの進展の中で看護師養成学部が三島市に設置されるなど、今後の地域 医療にとって大きな力となることが期待される。 ・県東部地域の 12 市町は、このプロジェクトをそれぞれのまちづくりにいかして おり、富士山麓に医療・健康で我が国を代表する地域の形成を進めている。 ・本プロジェクトは、日本の国家戦略の一翼を担うものでもあり、世界に向け開か れた視点を失うべきでなく、平成 22 年 12 月の nature 誌への掲載は、その姿勢 を示すものである。 ○3次戦略計画策定に向けた提言 プロジェクトは、各分野で順調に進んできているが、これらの成果は「種から生ま れたばかりの若芽」の状態であり、これを大きく育て、富士山麓に医療・健康の理想 郷をつくるために、第3次戦略計画の策定に向けて以下のとおり提言する。 ・世界トップレベルと評価される静岡がんセンターが実践する先端医療を今後も一 層充実し、着実に実施することが必要である。 ・ものづくりの分野では、現在の取組を一層充実し、より多くの地域企業が医療健 康産業に参入して、国内のみならず、海外の市場も視野に入れた経済活動を行う ことを期待するとともに、食をテーマに実施されているフーズ・サイエンスヒル ズプロジェクト、光技術を医療等に活用するフォトンバレープロジェクトとの連 携をより一層深めていくことが重要である。 25 ・ひとづくりの分野では、質の高い医療従事者や、医療健康産業で活躍する高度な 研究者、技術者の育成施策を充実させるほか、広く外部人材を求めることにも積 極的に取り組むべきである。 ・まちづくりの分野では、住民、市町、県が一丸となって温泉や食材などの地域資 源を活用した健康地域づくりに取り組むことを期待する。また、今後早期に、国 際学会を開催できる、地域の特色を生かしたコンベンション施設が整備されるこ とを期待する。 ・プロジェクトにおける取組は、世界の医療や健康に貢献するものであることから、 地域における取組に止まらず、海外との連携を一層進めるとともに、県東部で生 まれた先進的な取組を世界に普及させることが必要である。 ・プロジェクトの推進にファルマバレーセンターが果たしてきた役割は非常に大き く、第3次戦略計画を効率的かつ効果的に推進するには、同センターの役割がま すます重要であるため、政策の選択と集中を図るとともに、中核支援機関である ファルマバレーセンターの充実・強化を図ることを望む。 ・これらの取組により、富士山に抱かれた東部地域が、 医療・健康 をキーワー ドに、住んでよし、訪れてよし、働いてよし、学んでよしの我が国のモデルとな る地域となることを期待する。 ファルマバレーと富士山 26 参考4 ファルマバレープロジェクトのあゆみ 平成 13 年2月 平成 14 年3月 平成 14 年9月 平成 15 年4月 平成 15 年4月 平成 16 年4月 平成 16 年4月 平成 16 年6月 平成 17 年 11 月 平成 18 年6月 平成 18 年9月 平成 19 年3月 平成 19 年3月 平成 19 年4月 平成 20 年4月 平成 20 年8月 平成 20 年 11 月 平成 21 年5月 平成 22 年2月 平成 22 年6月 平成 22 年6月 平成 22 年6月 平成 22 年 10 月 平成 22 年 11 月 平成 22 年 12 月 平成 22 年 12 月 平成 22 年 12 月 富士山麓先端医療産業集積構想(富士山麓ファルマバレー構想)策 定(推進期間:平成 13∼22 年度) 第1次戦略計画策定(計画期間:平成 14∼18 年度) 静岡がんセンター開院 ファルマバレーセンター開設 静岡県治験ネットワーク構築 県立大学創薬探索センター設置 都市エリア事業(一般型)に採択(実施期間:平成 16∼18 年度) 東京工業大学、東京農工大学、早稲田大学と包括的事業連携協定を 締結 静岡がんセンター研究所(研究棟)開設 広域的新事業支援ネットワーク拠点重点強化事業に採択(計画期 間:平成 18∼21 年度) 第1次戦略計画評価報告 第2次戦略計画書策定(計画期間:平成 19∼22 年度) 都市エリア事業(発展型)に採択(実施期間:平成 19∼21 年度) 大手分析機器メーカーが、ファルマバレー長泉工業団地で操業開始 静岡がんセンターが多職種がん専門レジデント制度創設 静岡がんセンターと世界的製薬企業が、抗がん剤の基礎研究・臨床 試験に関わる非独占的包括契約を締結 静岡がんセンターが認定看護師教育機関に認定(病院立で全国初) 地域再生人材創出拠点の形成に採択(実施期間:平成 21∼25 年度) ファルマバレー訪問団が、仏バイオクラスター・研究所等を訪問 川上・川下ネットワーク構築事業に採択 地域イノベーションクラスタープログラムに採択(実施期間:平成 22∼24 年度) 東京工業大学、東京農工大学、早稲田大学との包括的事業連携協定 の更新 静岡がんセンターが、世界トップレベルの米国腫瘍放射線治療グル ープに加盟(国内の放射線治療施設として初) モンゴル大統領夫人が静岡がんセンターを視察、夫人が代表を務め るNGOと同センターの間で、がんに関する相互協力の覚書に署名 総合科学誌 nature に掲載 第2次戦略計画評価報告 慶應義塾大学と包括的事業連携協定締結 27