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第1章 序論
第1章 1-1 序論 研究の背景 現在、都心部においては渋滞の解消、環境への配慮等の観点から公共交通機関の利用が重 要視され、それに伴い、よりよい公共交通機関の整備が進んできている。しかし、地方部で は、自家用車の持つ利便性の高さから、自家用車主体の交通が最も重要な交通手段となって いる。また、少子化による人口の減少や高齢化によるモビリティの縮小なども起こっている。 このため地方部では、バスや電車等の公共交通機関を利用する人が年々少なくなり、それを 運営・維持していくことが非常に困難な状況になってきている。 一方で、地方部で住民のモビリティを確保してきた路線バスは、たとえ赤字路線であった としても、バス会社の経営上の都合で撤退や廃止することができない反面、赤字路線を抱え ていたバス会社には路線維持のために行政より補助金が交付されてきた。しかし、道路運送 法の一部改正により新規路線への参入や、赤字路線からの撤退をバス会社の判断で比較的自 由に行えるように緩和された。 このように、法律の一部改正によって事業者の判断でバス路線の撤退・縮小がある程度自 由に行われた場合、高校生や免許を持っていない、いわゆる交通弱者など公共交通を利用し ている人にとって、生活を維持することが困難になることが予想される。 1-2 研究の目的 公共交通が衰退し、モビリティ確保が困難になりつつある現在,地域住民が充実した生 活を送ることができる交通のあり方が模索されている。そのためには,バス等の公共交通 を含めて,人が人間らしく生きるためには,さまざまな交通手段によって,どのくらい外 出が必要となるかを知る必要がある。 そこで本研究では、外出回数がその人の生活の質と密接な関連があると考え、外出目的 別に次のような 3 つのグループに分類した。 グループⅠ:生命や健康を維持するために最低限度しか外出しないグループ グループⅡ:生活を維持するための外出が中心のグループ グループⅢ:生活を豊かにするために積極的に外出を行うグループ 1 それぞれのグループ内にはもっと外出したい人、あるいは外出を増やさなくても良いと 考える人が存在している。これらのことを踏まえて、生活の質を維持し,向上させるため の外出回数水準の把握を目的の一つとする。 また,交通サービスを維持しながら,より効率的で利用者ニーズに対応した今後の公共 交通のあり方を検討するため,秋田市東部地区における住民の交通利用状況を把握すると 共に,今後の公共交通に関するさまざまな施策について,住民の評価や利用意向を明らか にすることを目的とする。 2 1-3 研究の構成 (1)本研究における調査の構成 研究の目的にそって,本研究では次の3つの調査を行った。 1.バス乗降調査(調査A) 2.バス利用者アンケート調査(調査B) 3.公共交通に関する世帯アンケート調査(調査C) バス乗降調査(調査A)は,調査区間の各バス停で乗り降りする人(路線バス利用者) の人数をカウントすることで、そのダイヤの利用状況を把握し,バス車両の大きさや路線 の経路変更等、変更を検討するための資料とするものである。 バス利用者アンケート調査(調査B)は,路線バスを利用している人のバス利用状況や 外出機会の充足度,公共交通に対する要望等について把握することを目的としている。な お、調査 A と調査 B は同時に行った。 公共交通に関する世帯アンケート調査(調査C)は,主としてバスを利用する人や,主 として同乗交通やタクシーを利用している人を対象に,今後の公共交通施策を検討するた め,バスの乗換システムや需要対応型交通(DRT)導入の諸条件等に対する意向を把握 することを目的としている。 32 つの調査の構成を以下に示す。 調査A 調査B • バス利用の実態 • 乗降者数の把握 • 交通サービスの充足 状況 バス車両の検討 乗り継ぎ地点の検討 生活の質を維持するた めに必要な外出回数 調査C • • 地域特性に対応した 公共交通の代替案 図1-1 調査の構成図 3 バス乗り継ぎの利用意向 デマンド交通の利用意向 (2)バス停番号の設定(一覧表) 本研究の調査では、全調査共通のバス停番号を設定した。表1-1にバス停番号とバス 停名の一覧を,図1-2にバス停番号図を示す。 表1-1 バス停番号一覧 No バス停番号 バス停名 自然学習センター前 1 101 森林学習センター前 2 102 クアドーム・ザ・ブーン前 3 103 スキー場前 4 104 ピクニックの森入口 5 105 仁別 6 106 中島橋 7 107 仁別リゾート公園入口 8 108 藤倉上台 9 109 釣センター前 10 110 藤倉 11 111 藤倉下丁 12 112 丸木橋 13 113 松原上丁 14 114 松原 15 115 補陀寺前 16 116 17 117 長田 蓮田上丁 18 118 蓮田 19 119 湯沢 20 120 添川上丁 21 121 添川 22 122 境内川原 23 123 温泉入口 24 124 古城苑二丁目 25 125 古城苑入口 26 126 旭川団地前 27 127 新藤田 28 128 29 129 旭川小学校前 扇田 30 130 からみでん 31 131 田中入口 32 132 東中学校 33 133 手形休下町 34 134 住吉町 35 135 36 201 木曽石 木曽石下丁 37 202 分校前 38 203 堂ノ前 39 204 和岱入口 40 205 仁部上丁 41 206 仁部下丁 42 207 藤崎 43 208 44 301 小平岱回転地 小平岱上丁 45 302 生活改善センター 46 303 小平岱下丁 47 304 下小平岱 48 305 49 306 川原琴 台入口 50 307 ユフォーレ 51 308 ユフォーレ入口 52 309 No バス停番号 53 310 54 311 55 312 56 313 57 314 58 315 59 316 60 317 61 318 62 319 61 318 60 317 63 320 64 321 65 322 66 323 67 324 68 325 69 326 70 327 71 328 72 329 73 330 74 331 75 332 76 333 77 334 78 335 79 336 80 337 81 338 82 339 83 340 84 341 85 342 86 343 87 344 88 345 89 346 90 347 91 348 92 349 93 350 94 351 95 352 96 353 97 354 98 355 99 356 100 357 101 358 4 バス停名 丸舞口 河辺町資料館前 わたのは 萱森 萱森下丁 上三内入口 留見瀬 貯水場前 野崎 岩見三内連絡所 野崎 貯水場前 繋沢 繋沢上丁 繁沢入口 開拓前 牧場入口 登山入口 野田 十三岱 細越 青葉台 貝の沢口 山谷 小学校前 地主 下野 皿見内上丁 皿見内下丁 寿橋 勝手神社 黒沢上丁 黒沢下丁 舘越 稲荷上丁 稲荷 寺庭 寺庭下丁 寺中 太平中学校前 平形 下館 八幡神社前 川原 地域センター前 学校前 本町 本町下丁 神田 古町入口 大曲 No バス停番号 101 401 102 402 103 403 104 404 105 405 106 406 107 407 108 408 109 409 110 410 111 411 112 412 113 413 114 414 115 415 116 501 117 502 118 503 119 504 120 505 121 506 122 507 123 508 124 509 125 510 126 511 127 512 128 513 129 514 130 515 131 516 132 517 133 518 134 519 135 520 136 521 137 522 138 523 139 524 140 525 141 526 142 527 143 528 144 529 145 530 146 531 147 532 148 533 149 601 150 602 151 603 バス停名 宝川上丁 宝川公民館 宝川中丁 宝川下丁 種ヶ崎 上前田 下前田 寒川入口 柳舘 農協前 谷崎中央 谷崎 谷崎入口 前谷地 松崎 古野回転地 古野 後古野 大山田入口 寺村 寺沢入口 開拓入口 南寿園入口 上北手小学校前 地域センター前 JA上北手倉庫前 日赤病院前 上北手幼稚園入口 遊学舎前 上荒巻 中荒巻 荒巻 一ツ森公園南入口 牛島東七丁目 牛島小学校入口 牛島小学校前 南部公民館前 牛島東五丁目 牛島東一丁目 新屋敷小路 牛島橋 楢山共和町 登町 登町上丁 有楽町 北都銀行前 中通一丁目 中通二丁目 上小山田 中小山田 下小山田 No バス停番号 151 604 152 605 153 606 154 607 155 608 156 609 157 610 158 611 159 612 160 613 161 614 162 615 163 616 164 617 165 618 166 619 167 701 168 702 169 703 170 704 171 705 172 706 173 707 174 708 175 709 176 710 177 711 178 712 179 801 180 802 181 803 182 804 183 805 184 806 185 807 186 808 187 809 188 810 189 901 190 902 191 903 192 911 193 921 5 バス停名 大杉沢 百崎 関上 大戸公民館 大戸 袖ノ沢 横森三丁目 横森二丁目 横森一丁目 一ツ森公園入口 太田町 才八橋 楢山大元町 築地下丁 築地北丁 明田地下道入口 八田上丁 八田中丁 八田下丁 八田入口 清和病院前 石神 柳田上丁 柳田神社前 柳田中丁 柳田下丁 柳田入口 石動神社前 谷内佐渡上丁 谷内佐渡中丁 谷内佐渡 大学病院前 広面幼稚園 三吉神社入口 赤沼入口 野崎 若葉町 手形東町 手形山崎 明徳小学校入口 千秋久保田町 買い物広場 秋田駅西口 101 ①仁別リゾート公園線 201 ②木曽石線 701 901 801 301 401 921秋田駅 ④下北手線 601 ⑥中北手線 911買い物広場 501 ⑤上北手線 図1-2バス停番号図 6 ③太平線 1-4 交通施策例 以下では,バス等の通常の公共交通機関に対して,代表的な代替交通について整理した。 (1)STS STS とは Special Transport Service の略であり、地域で生活する高齢者・障害者等の移動手 段として、利用者の住居近くから目的地までの送迎サービスを提供するものである。おも に身体的状態の制約により、バスや鉄道などを利用することのできない人や利用困難な人 を対象としている。 運行主体は行政・NPO などの非営利団体であり、一定の資格(移動困難を持つ)個人を 送迎する。また個人のインフォーマルな送迎は含まれない。 STS の種類としては、ダイヤル・ア・ライド(英国)や、コミュニティ・トランスポート (英国、米国、豪州)などが挙げられる。 ①ダイヤル・ア・ライド ダイアル・ア・ライド(マンチェスターでは Ring&Ride と呼ばれる)は、ある程度のルート を決めた上で、ディビエーション(定路線を外れて運行する)運行される、ドア・ツー・ドア のシステムである。利用には予約が必要である。 アメリカのパラトランジットを模して、1970 年代初頭にイギリスに登場し、隆盛を迎え たが、コスト面から固定ルート化されたり廃止が相次いだ。1980 年前後に高齢者・障害者 および車いす対応という点で復活した。病院等への送迎も行うが、一部で他の移送サービ スと複合して実施されている。ボランティアによる運行が一般的であり、多くが自治体か らの財源補助を受けている。 今後は需要増への対応、高齢化への対応が重要と考えられており、人口の 15%程度がこ うした送迎サービスによるモビリティの確保が必要になると考えられる(CTA による予想)。 利用方法や距離の制約等で不満を持っている利用者も多く、サービス改善の余地がある。 また、大きな課題として、有給スタッフを抱えている場合は、ドライバーの資金の問題 が深刻である。マンチェスターの事例では、1 回の送迎で平均 1.2~1.4 マイル走行するが、 運賃が£3.5 である。経費は年間 700 万ポンドかかっており、運賃収入だけで経費をカバー するのが難しい。ロンドンでは年間 2,000 万ポンド程度かかっていると思われるが、1 回あ たりの運賃は£8 を徴収している。 公共交通手段はアクセシブルになってきているが、依然としてそれらを乗り継いで外出 するには体力的に困難な人が多い。したがって、ダイアル・ア・ライドの役割は今後もあ ると考えられる。 7 ②コミュニティ・トランスポート コミュニティ・トランスポート(以下 CT)は、英国で地域の住民、グループ、自治体等に より運営されているバスやバンなどの車両を用いた交通システムで、地域やグループのニ ーズに基づいて計画され、運行されている。国内で広く普及しており、その地域やグルー プに必要な交通サービスを、関係者が中心となって運営していると考えればよい。多くは ミニバスやバン車両を使用しているが、個人所有の自家用車によるソーシャル・カー・サ ービスも行われ、実施形態は多様である(図1-3)。零細な事業者や NPO 的な組織が運行 する場合が多く、住民やグループ関係者がドライバーをしている場合もある。 自動車を所有できない層などにとっては生活上、欠く事のできない交通手段である。ま た、公共交通がアクセシブルでないために、利用できない高齢者・障害者のための交通サ ービスも含まれる。さらに、地方自治体による交通不便な過疎地域や、通勤、通学、ショ ッピングセンターへの定期運行なども実施されている。 図1-3 ロンドンにおけるコミュニティ・トランスポート車両 (2)DRT DRT とは、Demand Responsive Transport の略で、需要応答型交通のことである。近年の我 が国では、デマンドバスや、CCS(Community Car Scheme)など事例がある。 運営主体は、行政、商工会、ボランティア団体などであり、今後 DRT の必要性は増して いくものと推測される。 ①デマンドバス(タクシー) デマンドバスの事例として、福島県小高町の「e-まちタクシー」を挙げる。 福島県小高町の「e-まちタクシー」の運行主体は、小高町商工会で、ジャンボタクシー(9 人乗り)2 台(図1-4)と小型車(4 人)乗り 2 台の計 4 台で運行している。運行区間は、 中心市街地の巡回と、商店街の東西の郊外を結ぶ区間の 3 区間である。 料金は、中心市街地巡回(まちなか線)は 100 円、商店街と郊外を結ぶ路線は 300 円と 8 なっており、定額制である。「e-まちタクシー」は国土交通省の「交通不便者のシビルマム 確保のためのデマンド交通システムのモデル実験事業」に採択され、平成 14 年 1 月~3 月 まで実証実験を行い、その後施行されている。 現在の利用客数は1ヶ月あたり2000人前後であり、平日のみの運行であるので、1 日あたり約100人となっている。利用者の8割が70歳以上の高齢者である。 今後の課題としては、利用者の降車地についての調査は行われているが、実際の商店街 の利用客数がどのくらい伸びるかと、1ヶ月平均70万円の補助を継続して維持していけ るかである。 図1-4 e-まちタクシー ②CCS(コミュニティ・カー・スキーム) CCS とは、ボランティアによる自車を用いた送迎サービスである。 カムデンの CCS の例では、9 人のボランティアドライバーが登録され実施されている。 うち一人はスケジュール管理を担当している。自車またはカムデンの所有の車を使用して いる。利用者は 1 週間で 15 名程度である。料金は月単位で集計して利用者から徴収してい る。自車仕様の場合、ドライバーに対して 1 マイルあたり 35 ペンスが支払われる。大型車 の場合、1 マイルあたり 45 ペンスが支払われる。カムデンの車を使用する場合は、事務所 までの交通費が実費支給される。いずれの形態においてもドライバーには昼食が提供され る。利用に際しては通常は 2 日前までに予約を行う。また、大学の講義に半年間通うなど、 長期利用の予約が可能であり、ダイアル・ア・ライドにはない細かいサービスが利用でき る利点がある。 CCS の特徴は立上げが容易なことである。しかし、近年の渋滞やガソリン代の高騰により、 ボランティアの確保が難しくなっている。そのため利用者の負担が大きくなり、利用者数 が減少するという悪循環が見られる。 9 (3)その他の事例 その他の代表的な事例として次の2つがある。 地域を定期的に運行している車両を活用したもの (例)①千葉県船橋市:自動車学校、教習所、老人福祉センター送迎バスの活用 自分の目的地と同方向へ行く車両への同乗をするカープール (例)②愛知県豊田市:豊田市交通円滑化実験 T3 サンフランシスコ:RIDES(ライズ) ④フランス:ヒッチハイクセンター「アローストップ」 ①~④の事例の概要は次のようである。 ①千葉県船橋市(交通不便地域支援事業) 船橋市内で企業が有する送迎バスの空席を利用するものである。まずは、市内教習所 の送迎バスで試験運行を実施する。送迎バスは空きがあることが多く、目的地まで送迎 してくれることから、その空きをカープール(相乗り)として利用し、さらに交通不便 地域の解消にも役立てることができる。 また、老人福祉センターの送迎バスについては、空き時間が多くあることから、その 空き時間に注目し、高齢者がよく利用する医療センターへの送迎などを行う。老人福祉 センターに行き、医療センターにも行くことができるという交通不便地域の人にとって は移動しやすく、そのほかの高齢者の移動手段も増えることになる。 1) 自動車学校・教習所送迎バス 事業内容としては、船橋市内で各種企業が有する送迎バスの空席を利用し、交通 不便地域の高齢者を対象に移動支援を行う事業の試験運行を実施するものである。 各種企業が船橋市内で運行する送迎バスに着目し、TDM(交通需要マネージメン ト)の一環であるカープール(相乗り)を励行し、同時に交通不便地域の解消およ び高齢者の移動支援を行うことを目的とし、まず市内教習所の協力を得て送迎バス の試験運行を実施するものである。 効果として以下が挙げられる。 ①交通不便地域の解消 → ②高齢者の移動手段の拡充 官民協力による市民サービスの向上 → ③カープール(相乗り)の励行 高齢者の積極的な社会参加 → 10 地球環境負荷の軽減 対象事業者は、①船橋自動車学校、②船橋第一自動車教習所、③津田沼自動車教 習所、④船橋中央自動車学校。 利用対象者は、①船橋市に居住している方、②満65歳以上の方、③送迎バスに 一人で乗降できる方、④利用規約に掲げる同意事項に同意した方。 利用方法は、各教習所の停車位置(通過ポイント)にて乗降を行うものとする。 乗降に際しては、挙手によりバスを停車させ運転者に市が発行したパスカードを提 示するものとする。当該事業の利用料金は無料である。 2) 老人福祉センター送迎バス 事業内容としては、船橋市内の各老人福祉センターが有する送迎バスの空き時間 を利用し、高齢者等を対象に医療センターへの送迎ならびに交通不便地域の移動支 援を行うものである。 各老人福祉センターが所有する送迎バスの空き時間に着目し、自主的交通手段を 持つことが難しい高齢者を対象に、様々な地域から特に要望の多い医療センターへ のアクセスを確保するとともに、交通不便地域の移動支援を行うことを目的とする。 効果としては、以下が挙げられる。 ⅰ 医療センターへのアクセス ⅱ 高齢者の移動手段の拡充 → ⅲ 交通不便地域の解消 市民サービスの向上 → 高齢者の積極的な社会参加 ・対象老人福祉センター ①西老人福祉センター ②北老人福祉センター ・利用対象者 ①船橋市に居住している方 ②満65歳以上の方 ③送迎バスに一人で乗降できる方。ただし、介助者1名により、送迎バスの乗 降が可能となる利用者については、利用者1名と介助者1名の乗車を認める。 ※介助者については、身分を証明できるものを携帯するものする。 ④利用規約に掲げる同意事項に同意した方 利用方法については、各停車位置(通過ポイント)にて乗降を行うものとする。乗降に 際しては、挙手によりバスを停車させ運転者に市が発行したパスカードを提示するものと する。当該事業の利用料金は 無料 である。 11 ②愛知県豊田市の事例について これは、低公害車を使用しての共同利用とカープールを行うものである。自宅付近の コミュニティーセンターから市役所までの相乗り、そして市役所、土木事務所、中央公 民館の 3 つの公共事業所間で共同利用という形で行う。同じ目的地なので相乗りがしや すく、3 つの公共事業所間で共同利用しているから、どこにいてもすぐ車を利用できる。 そして共同利用駐車場は通常自動車の駐車場よりはるかに近いという利点もある。 1) 豊田市交通円滑化実験 自動車利用の効率化の視点に立ち、都市空間における自動車の占有率の減少や低 公害車の利用・普及による環境保全を図るため、新しい自動車利用の導入に向けた システムの評価や利用者意向の把握を行う。 ⅰ) 実験について 個々のシステム(カープール、共同利用、短距離交通)の実験計画に加え、車 両をより効率的に利用するため、システム間の移行に対する確実性、連続性を考 慮し、実験計画を立案した。 予約・管理センターにオペレータを配し、きめ細かな対応をしたことで円滑に 共同利用が実施された。さらに、学識経験者、関係行政機関、民間等からなる実 行委員会を組織し、協力体制のもとに実験を実施した。トヨタ自動車㈱との位置 管理システム等でも協力のもとに実験を実施した。 12 図 1-実施に伴い導入したシステム、配慮した点 ⅱ) 施策の導入効果検証 平日・カープールでは、4 日間で延べ 98 台、304 人に利用され、参加者各 位が個別に自動車通勤を実施する場合に比べ、総走行台数で 206 台、総走行台 時で 84 台・時、総走行台キロで 1,527 台・キロの削減効果があった。平日・ 共同利用では、公用車の 17%の削減が可能と推計された。 ・合意形成 平日・カープールや平日・共同利用は、市職員により円滑に実施され、満 足度は概ね良好であり、実験の継続に向けての意識づくりが図られた。 ・施策の成立可能性 平日・カープールや平日・共同利用は円滑に実施され、また、3 システム とも利用者の満足度は概ね良好であり、導入可能性が示された。 ・利用条件や改善課題の把握 車両保険料の負担、システムの高度化等が今後の対応課題として抽出され た。共同利用システムの事業化に際し、車両の共同利用に対する許可申請手 続きなどが、現行の法令等における問題点として抽出された。 13 ・本格実施への展開 3 つのシステム(カープール、共同利用、短距離交通)からなる社会実験の 評価により明らかになったシステムの課題を改善する中で、今後、市民に認 められる交通システムとしての確立を図るため、3 つのシステムを一体化した 形で規模を拡大し、一般市民の参画のもとでの社会実験を実施(平成 13 年 3 月~)するとともに、管理運営体制の検討を継続。 2) その他の豊田市の実験 ⅰ)基幹バスの運行・運賃に関する実験 ・名鉄バス(藤岡線)の運行本数を約 2 倍にする。従来の 6 時~20 時台、24 本を 6 時 ~22 時台、41 本にする。運賃はこれまでと同じ。 ・さなげ足助バスを分かりやすい運賃にする。従来の 100 円~600 円をゾーン運賃制に し、同一ゾーンは 200 円均一でゾーンを越えるごとに 200 円加算。ゾーンは旧豊田 市旧足助市に分け、それぞれのゾーン内で乗り降りすれば、200 円均一。旧豊田市、 旧足助市をまたぐ場合は 400 円。 実験期間は、平成 18 年 9 月 1 日~12 月 28 日。 ⅱ)デマンドバス運行実験 火曜、木曜の週 2 日運行で、時間は午前 8 時~午後 7 時まで。利用者の予約に応じ て運行。バス停で乗降し、バス停は 2 ケ所増設する。高齢者に限定せず、誰でも利用 可能で料金は 100 円。 予約を 1 週間前~1 時間前までに予約センターに「利用日、時間、乗降のバス停」を 告げる。行き帰りは同時予約でもその都度予約でもどちらでもよく、キャンセルは予 約センターへ電話をする。 実験期間は、平成 18 年 7 月 1 日~9 月 30 日 14 ③サンフランシスコ:RIDES(ライズ) RIDES は、渋滞緩和と交通環境の改善を目的にした NPO。相乗り希望者、相乗り車 提供希望者のマッチリストをデータベース化し、相乗りを組織化している。この NPO の 理事には、行政機関、電話会社、自動車会社のメンバーも入っていることから、オペレ ータなどしっかりとした組織によって行われており、安心感や信頼度が高いものである。 理事に広域行政機関、電話会社、自動車会社のメンバーも入っている。車を使わない運 動を展開するとともに、相乗り希望者をデータベース化してマッチングさせ、相乗りを 組織化する。予算は年 270 万$。フリーダイヤルを持ち、専任職員は 38 人。年間約4万 人の問い合わせ、2万 5000 件のマッチリストをコンピュータシステムで作成。過去 15 年間に 36 万人の通勤者を援助し、1600 以上の相乗りを組織してきた。これにより「ガ ソリン 8700 万ガロン(3億 3000 万リットル)を節約し、汚染物質4万 2000 トンの排 出を防いできた」という。人口 600 万人といわれるサンフランシスコ圏の推定通勤人口 は 300 万人。その内、一人で自動車に乗っているのが約 64%、公共交通は 13%、カープ ール(相乗り)は 17%。 ライズのシステムについては、相乗りを希望する者、相乗り車提供を希望する者が「マ ッチリスト」と呼ばれる用紙に出発地、行先、時間など必要事項を記入する。これをコ ンピュータにインプットしデータベース化する。 マッチングは、出発地(家)から 1 マイル周辺、目的地(会社など)は 1/2 マイル周辺を範 囲にリスト化し、うまくマッチングしたら、相乗りを希望する人と車を提供する人が連 絡を取り合い、ガソリン代、車のメンテナンス料などを計算して支払額を決める。うま く交渉が成立すれば OK。 ライズのもう一つの事業はコミュータチェック(通勤小切手)の発行。月 60$まで無 税の特典があるこのチェックを企業が購入し、それを従業員が受け取って公共交通のパ スや切符と交換するシステム。日本の通勤手当のような物だが、市場による公共交通へ の乗換えを促進するという事業である。 また、サンフランシスコ市との契約で、車を使わないで公共交通を使って空港へ行くた めの情報提供(SF2008)を行っている。 ・カープールレーン 通勤時間帯のクルマの台数を少しでも減らすために、都市部の高速道路には「カープ ール・レーン」が設けられている。これは、通常、フリーウェイの一番左側のレーン(つ まり、追い越し車線)で、朝夕の交通量の多い時間帯には、運転手を含めて2人(場所によ っては3人)以上乗っている自動車とバスしか通行できない。通勤時間帯にはほとんどのク ルマが1人しか乗っていないことが多いため、他の車線が渋滞していてもカープール・レ ーンはスイスイ行けることが多い。また、2~4人で乗り合いをすれば、ガソリン代も割 り勘にできるなど、得なシステムでもある。 15 カープール・レーンをより多くの人に利用してもらうために、同じ目的地へ向かうクル マと相乗りしたい人たちのマッチングを仲介している機関もあります。 ライズでは、アラメダ郡に15ヶ所の待ち合わせ場所を設けており、自動車を持たない人 でもそこまで行けば他の人のクルマで通勤することができるようになっています。待ち 合わせ場所のほとんどは「カープール・パーキング」といわれる大きな駐車場で、そこ まで自家用車で来る人たちも、一日中、安心して駐車しておけるようになっています。 ④ ヒッチハイクセンター「アローストップ」 (フランス) フランスのアローストップは同じカープール(相乗り)でもヒッチハイクという考え で、車を探している人と、人を乗せたい運転手を登録して紹介する NPO である。これは、 長距離だけでなく日常の通勤、通学のためのヒッチハイクも提案している。こちらも、 登録の際に慎重な検査を行っており、今まで事件がないという安全性の非常に高いもの になっている。ヒッチハイクという利用しやすい軽さの裏にはしっかりとした安全性が ある。 1983 年にフランスで生まれた、車を探している人と、人を載せたい運転手を登録して 紹介してくれる実用的な NPO である。 保険については、フランスでは、来車の中に乗り合わせた人ならば、他人でも、親友 でも最低限の保証をされるシステムになっている。ヒッチハイクセンター側も、法的に すべてをクリアしていることを証明できる車だけを登録している。 ヒッチハイカーとして登録できるのは、16 歳以上。ヒッチ・ハイカーは、10 キロにつ き 33 ユーロ・セント(約4円)のガソリン代を運転手に負担するのが規則。例えば、パ リからドイツのハンブルグ(約 900km)に行く場合は、29.70 ユーロ(約 3500 円程度) を運転手に払えばいいことになる。この他に、センターにも年会費を払う必要があるが、 そういったすべての費用をひっくるめても、電車や飛行機で行く場合の 1/3 以下になる計 算である。 センターは、長距離だけでなく、通勤・通学のための「日常ヒッチハイク」も提案し ている。パリの中心地にはメトロもバスも沢山あるが、パリの郊外には公共交通手段が 非常に少ない。隣町なのに、一度パリの中心地を通過しないと辿り着けないシステムに なっている。こうした事情により、郊外には、嫌でも自家用車を買わねばならぬ人たち が多い。「日常ヒッチハイク」では、通勤・通学の足を「乗り合い」にすることで、交通 渋滞を緩和させようとするのが目的である。 ヒッチハイクセンターのシステムとしては、ヒッチハイクセンターに登録をし、利用 したい日、場所をセンターに知らせると、センターがリストの中から目的地に行くドラ イバーを探し、名前と電話番号を教えてくれる。そして、待ち合わせるというシステム 16 である。以下のようなやり取りが行われる。 「水曜日にパリからリヨンまで行きたいのですが。」 「水曜日ならば、毎週トラック運転手の Y 氏が午後にパリ 20 区から出発します。2人 載せることができるそうですよ。」 17 1-5 既往研究 公共交通に替わる代替交通に関する研究について整理する。 (1)タイトル:不採算路線バスの現状と代替交通策定に関する研究 17 年度 東北支部技術研究発表会pp524-525 バス乗降調査より乗客数、バス利用者アンケート調査よりバス時刻・待ち時間・料金・ などの分析結果よりデマンドバス(タクシー)という代替交通案を提案した。そして、世帯ア ンケート調査では提案した代替交通案とバスの乗り継ぎなどついて住民の方に評価しても らっている。それより、 ① バスの乗り継ぎに関しては住民の利用意向も高く、利用実態特性からも非常に有効で あり、実用可能 ② ダイヤ統廃合に関しては統合レベルによっては差がでるものの、確実に必要のないダ イヤが浮き彫りになるので、コストの削減が図れる ③ 新規路線の設定に関しては新しく路線設置することによって、住民の利便性を上げる ことが出来る ④ デマンド対応型交通に関しては住民の利用意向は高いものの、いろいろな条件次第で 利用意向が大きく変化する可能性を持っている という結果が得られている。 (2)タイトル 出版 :過疎地域における生活交通サービスの調達方策に関する研究 :平成 14 年度 IATSS Review 国際交通安全学会誌 道路運送事業の規制緩和が施行され、不採算路線を多く抱える過疎地域ではバス事 業者の撤退が加速することが懸念されている。路線を維持するにしても多くの自治体 は厳しい財政事情の下で多額の補助を余儀なくされ、今後いかにして生活交通を確保 するかという問題に苦慮している。過疎地域の住民も、路線バスサービスを享受する ためには、それなりの努力が必要だという自覚を持たざるを得ない状況となっている。 本研究は、地域が本当に必要とする生活交通サービスとは何かを住民自身が考え、 自治体等の支援も受けながら、自らが主体的に維持可能な生活交通システムをデザイ ンする仕組みを構築することを目的に実施したものである。 まず、昨年度までの研究成果に基づき、バス利用により行うことのできる活動の水 準に着目してバスサービスの利便性を評価する「対話型ソフトウェア」を開発した。 これをもとに、住民が自分たちの手でもっとも望ましいバスサービスを見出すための 手順を「集団選択支援システム」として取りまとめ、試行実験によりその有効性を確 認した。また、バスサービス需給問題の全体構造を「住民の活動水準を軸とする検討 フレーム」としてとりまとめ、提案した一連の手法の位置づけを明らかにした。 18 (3)タイトル 出版 :過疎地域における生活交通サービスの提供システムに関する研究 :平成 13 年度 IATSS Review 国際交通安全学会誌 過疎地域では需要密度が低いため、路線バスなどの公共交通サービスの維持・確保 が容易でない。しかし、利用者が少なくかつ利用パターンの特定が比較的容易である ため、個々のニーズに沿ったきめ細かなサービスが提供できる可能性もある。また、 住民が主体的に公共交通システムの計画に携わる体制づくりも可能である。本研究で は、過疎地域における生活交通確保のための検討手法の開発を目的として、利用者の 立場から公共交通のサービス内容を検討し、自ずと利用したくなるような交通システ ムを維持可能な形で作るための方法論を提案する。 具体的には、(1)バスを取り巻く環境の変化、(2)生活交通の確保に向けての地域の取 り組み、(3)地域コミュニティによるバスサービスの調達可能性、(4)住民によるバスサ ービスの自己調達の動き、(5)路線バスの運行形態とダイヤに関する住民の選考分析、 (6)住民による路線バスサービス評価の支援モデルについて調査・分析を行い、 「個々の 住民の交通ニーズと移動コストを住民が相互に認識しあうこと」がコミュニティとし てサービスを調達する上での出発点であることを指摘し、その道具として「生活交通 のサービス水準評価法」を開発した。 (参考:http://www.iatss.or.jp/news/theme/14/theme1.html) (4)土木計画学研究・講演集 28 2003 年,CD-ROM タイトル:地方都市におけるサポート交通システムの導入に関する研究 著者 岸邦宏、金家めぐみ、日野智、佐藤馨一 この研究では、新たな交通システムとして、サポート交通システムを提案する目的と する。すなわち、住民個人が所有する自動車を用いた相乗りシステムを提案するもの である。北海道長沼町を対象として、交通特性、サポート交通システムの問題点と住 民のシステムへの参加意識を分析することにより、サポート交通システムの導入可能 性について検討する。 研究の内容としては、以下の2つがあげられる。 Ⅰ 無料実施代替案としてのエコマネーの可能性 Ⅱ サポート交通システムに対する住民の評価 19 28 2003 年,CD-ROM (5)土木計画学研究・講演集 タイトル:中山間地域におけるバス交通の利用実態と運行形態の検討 著者 宮本佳和、今野美輝子、湯沢昭 本研究では群馬県の北端に位置する利根郡新治村を対象とし、中山間地域におけるバ ス交通の利用実態を把握した上で、デマンドタイプのバス利用意向を考慮し今後のバ ス路線整備の検討を行うことを目的としている。 研究の内容としては、以下の 2 つがあげられる。 Ⅰ バス交通の利用実態 Ⅱ 新しいバスシステムの検討 ・運行形態の提案 ・選択結果と利用意向 ・AID 手法による分析 32 2005 年,CD-ROM (6)土木計画学研究・講演集 タイトル:地方都市におけるモビリティ格差とその生成要因に関する分析 著者:吉田樹・秋山哲男 本研究では、地方都市である青森県八戸市を例にとり、自由車(自分で自由に利用でき る自動車)の有無や路線バスのサービスの質の違いによってもたらされるモビリティの格 差について、外出回数に代表される量的な側面を中心に分析を行っている。 研究方法は、まず交通実態調査を行い、その次にモビリティの格差分析、外出の充足度へ の影響要因の分析を行っている。 交通実態調査では、八戸市民の日常の移動手段を把握するため、アンケート形式の交通 実態調査を実施している。調査内容は、2日間の外出回数や移動目的別外出頻度や主な外 出先と利用交通手段、また、回答者の家族構成や自由車の保有状況、移動困難の状況など である。 モビリティの格差分析では、モビリティの不均等度をジニ係数の概念を援用して定量的 に示すとともに、外出目的別の外出回数による外出目的別のモビリティ格差を分析してい る。また、外出の充足度への影響要因の分析では、交通実態調査で得られた結果をもとに 数量化Ⅱ類分析を行っている。 研究の結果、バスサービスの質の低い(便数が少ない)地域住民では、自由者の有無に よって外出回数の不均等が大きくなる傾向があることをジニ係数を援用して定量的に明ら かにしている。また、外出の充足状況に影響を与える要因を数量化Ⅱ類モデルで分析し、 移動手段がどの程度整っているかが日常の外出が充足する最大の要因であるとしている。 20 (7)土木計画学研究・講演集 32 2005 年,CD-ROM タイトル:地域類型からみた移動制約者に対する交通施策の特徴 著者:谷内久美子・宮崎貴久・新田保次・猪井博登 本研究では、地方公共団体が実施している移動制約者に対する交通施策として、コミュ ニティバス、移送サービス、タクシー運賃の助成、公共交通運賃の助成に着目し、地方公 共団体を地域特性に応じて分類した上で、地方公共団体が実施している移動制約者に対す る交通施策の現状を分析し、課題をまとめている。 調査対象地域は兵庫県内の 88 市町村(2004 年度末現在)で、コミュニティバスに関する データは「コミュニティバスの導入状況調査」(兵庫県県土整備部県土企画局、2003 年実 施)を用い、移送サービス、タクシー運賃助成、公共交通運賃の助成に関するデータは「高 齢者・障害者に対する交通施策に関するアンケート調査」(著者ら、2003 年実施)を用い ている。 分析は、はじめに数量化Ⅲ類手法を用いて地域特性に応じた地方公共団体の分類を行い、 その後に分類されたクラスターごとに、地域特性別の交通施策の実施率、コミュニティバ スの実施状況、移送サービスの実施状況、タクシーおよび公共交通運賃助成の実施状況に ついて考察している。 研究の結果、兵庫県内 88 市町村を「大都市」「中都市」「山間部①」「山間部②」の4 つに分類し、それぞれのタイプにおける課題を抽出している。 (8)土木計画学研究・講演集 32 2005 年,CD-ROM タイトル:高齢社会におけるモビリティ確保のための乗合タクシーの適用可能性に関する 研究 著者:山下浩行・中村文彦・岡村敏之・矢部努 本研究では、関東における乗合タクシーの制度、位置付け、分類、事例を整理し、また、 モビリティ確保策としての適用可能性を利用者側の使い勝手に関する面、運営側のコスト と需要の面の両方から検討し、今後のモビリティ確保の際、行政の政策判断の一考となる ことを目的としている。また、本研究では乗合タクシーを「乗員定員 10 人以下の自動車に より乗合旅客を運送する一般旅客自動車運送事業」と設定している。 研究の方法は、まず、乗合タクシーを様々な角度から分類し、ケーススタディとして多 摩ニュータウンでの運行実験について分析している。 乗合タクシーの分類では、導入目的による分類と運行ルート方式による分類の2種類の分 類を行っている。 ケーススタディでは多摩ニュータウンでの運行実験について、利用低迷の原因について、 乗合タクシーのコスト面での特徴、将来需要の見込みについての分析を行っている。 研究の結果から、利用者の視点、行政の視点、事業者の視点の3つの視点かたの考察を述 べている。 21 (9)土木計画学研究・講演集 32 2005 年,CD-ROM タイトル:フィーダー路線としてのDRT適用事例の評価 著者:山崎基浩・増岡義弘・伊豆原浩二・赤川鈴治 愛知県三好町では、民営バス路線の廃止代替を目的として平成 13 年度から「三好町さん さんバス」の運行を行っている。比較的、行政区域の狭い同町では、このバスを町の基幹 公共交通として位置付けて全町民に対するバスサービスの提供を目指してきたが、町人口 の約 4%が公共交通機関の利用が困難な地区として取り残されていた。これを補うために、 平成 16 年 10 月からさんさんバスのフィーダー路線としてDRT(乗合タクシー)が導入 されたが、そのような形態のDRTは他の事例がみられない。 本研究では、この乗合タクシーサービスをDRT活用事例として紹介するとともに、そ の効果について分析を行っている。研究の方法は、乗合タクシーの利用実態と乗合タクシ ーの評価を行っている。乗合タクシーの利用実態では運行実績と利用者属性について分析 している。乗合タクシーの評価では、利用者からの評価、運行費用からみた効率性の評価、 さんさんバス本線のDRT運用との比較を行っている。 (10)土木計画学研究・講演集 32 2005 年,CD-ROM タイトル:地方都市におけるサポート交通システムの策定プロセスの構築 著者:岸邦宏・佐藤馨一 本研究では、地方都市におけるサポート交通システムの策定プロセスを提案することを 目的とする。すなわち、公共交通を維持すべき地域なのか、サポート交通システムで対応 すべきかについて、住民の立場から策定するための手法を構築するものである。 本研究で提案するサポート交通システムは、住民の自家用車相乗システムであり、基本的 な条件を以下のように設定している。 ・サポートされる側(送迎してもらう人)は普段自家用車を利用できない人とする ・送迎はあらかじめ日時の決まっている生活行動目的に対してのみ行う ・対象は生活交通圏域(原則として自治体内)とする 研究の方法は、サポート交通システムの策定プロセスの構築と、北海道士別市への適用 した場合のケーススタディである。策定プロセスではまず交通機関の評価が行われ、その 結果から交通手段が決定した後にモビリティマップを作成する手順となっている。交通機 関の評価方法は三段階になっており、第1段階:既存公共交通機関の評価、第2段階:デ マンド型公共交通機関の評価、第3段階:サポート交通システムの導入の検討の手順を踏 む。士別市への適用事例では、策定プロセスに沿って地区ごと交通機関の評価が行われ、 モビリティマップが作成されている。 以上をまとめると,公共交通サービスの質や地域間格差について分析したものや,バス 22 の乗り継ぎや統廃合を考えながら、デマンド型の交通の可能性を分析するものや,地域が 本当に必要とする生活交通サービスとは何かを住民自身が考え、自治体等の支援も受けな がら、自らが主体的に維持可能な生活交通システムをデザインする仕組み,論を検討して いるものなどがあり,本調査研究においても分析方法や代替案の策定において参考にすべ き点がある。 23