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企業組織と業務の流れ 業務のモデル化
初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □企業組織と業務の流れ 企業とは、利潤を得るための組織であり、各部門がそれぞれの業務を分担しています。 自部門の役割を知るために、企業における組織全体を理解し、仕事の流れを把握しておく必要がありま す。 [販売流通業における業務の流れ] 企 業 ライン 仕入先 購 入 生 産 顧 客 販 売 支援部門 経理部・総務部・企画部 技術部・人事部・営業部など スタッフ ・ライン : 「資材を買う、製品を作る・売る」など、企業活動を直接遂行する部門 ・スタッフ:ラインの仕事をする部門 □業務のモデル化 システムを構築するにあたり、業務内容の問題点などを考えるために、業務の流れ等を分かりやすく整 理しておく必要があります。その作業が「業務のモデル化」であり、実際の事柄を抽象化して、本質的な 部分を抜き出す事です。代表的な方法として「DFD」と「E―R図」などがあります。 ◆DFD(Data Flow Diagram) 業務をデータの流れに注目して視覚的に表したもの(Data:データ、Flow:流れ、Diagram:図) 。 次の記号を用いて表します。 記号 → ○ = □ 名 称 データフロー プロセス(処理) データストア(ファイル) データの源泉と吸収 意 味 データの流れ データの処理 ファイル データの始まりと終わり <医師から検査依頼を受けてからの検査伝票の流れ> ② ①医師から検査依頼を受ける ① ②依頼情報の入力を行う 依頼 医師 入力 ③依頼情報が登録される ④依頼伝票が検査担当者へ ③ ⑥⑦ ⑤検査担当者が受領 依頼情報 医事科 ⑥料金伝票が医事科へ 料金伝票 ⑦医事科が受領 - 1/12 - ④⑤ 検査伝票 検査担当者 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 ◆E−R図(Entity-Relationship Diagram) E−Rには、実体(E,Entity)と関連(R,Relationship)という意味があります。 E−R図は、データの構造を「実体」と「実体間の関連」という概念を用いて視覚的に表したもので す。実体を長方形の箱で表し、各実体の関連を矢印で表します。 実体間の関連の種類には、次の4種類があります。 1対1 エンティティ エンティティ 1対多 エンティティ エンティティ 多対1 エンティティ エンティティ 多対多 エンティティ エンティティ <ある病院で、患者さんが、どの病棟に入院(所属)しているか?> 患 者 病 棟 実体 実体 ◆1人の患者さんから見れば、所属している病棟は1つ【1対1の関係】 患 者 病 棟 ◆1つの病棟から見れば、所属している患者さんは複数【多対1の関係】 患 者 病 棟 ◆合わせると「患者」と「病棟」の関連は多対1の E-R 図として表記出来る 患 者 病 棟 □データの集め方 業務の流れを整理したら、次に現状を把握する必要があります。その場合、出来るだけ多くのデータを 収集する必要があります。 収集するデータには種類によって「定量的データ」と「定性的データ」があります。 定量的データ → 人件費や諸経費など数値で表せるもの 定性的データ → 企業イメージなど、数値では表しにくいもの ★データ収集の方法 アンケート調査:アンケートに答えてもらう 資 料 調 査:帳簿や書類を念入りに調べる 面 接 調 査:担当者と直接面接する 直 接 間 接 法:現場に行って、実際に現状を視察する ブレインストーミング :自由な話し合い形式でデータを収集する ◆ブレインストーミングのルール 批判禁止 質より量 自由奔放 結合・便乗 他人の意見の良い、悪いを判断しない たくさんの意見を出す どんな奇抜なアイデアでも歓迎する 他人のアイデアを大いに活用して、新しいアイデアが生まれる - 2/12 - 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □データ整理の技法 ◆KJ法 カードを用いてデータを整理する技法で、川喜田二郎さんのイニシャルからきています。 次のような手順で、データを整理していきます 情報収集 テーマに対する情報を集める ↓ カード作成 一つの情報を1枚のカードに記入する ↓ グループ化 共通性があるカード同士をグループ化する ↓ 見出し作り グループごとに見出しを付ける ↓ 図 解 グループごとに関係を図解する ↓ 文書化 図解をもとに文書化する ◆決定表(デシジョンテーブル) 条件の組合せによって行動を決定する表です。表は大きく4つの要素に分かれます。 行動を決定する 条件を列挙する 条件を満たす場合に「Y」 (Yes) 、 満たさない場合に「N」 (No)を記入する 条件表題欄 条件記入欄 行動表題欄 行動記入欄 条件の組合せによって、 取るべき行動を列挙する こんな感じ… 30歳未満 男性 既婚者 帳票1を出力 帳票2を出力 帳票3を出力 帳票4を出力 条件の組合せぶよって 取るべき行動に「×」 、 無関係な行動に「−」を記入する Y Y N − − × − Y N Y × − − − - 3/12 - N Y Y − − − × N N N − × − − 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □データ解析の技法(QC7つ道具) ◆特性要因図(フィッシュボーン図) 特定の結果と、それに影響を及ぼすと思われる原因の関係を、体系的に表した図です。 その形から「魚の骨」のように見えるので、 「フィッシュボーン図」とも呼ばれています。 ◆散布図 X軸とY軸の座標上にプロットした点のばらつき具合から、二つの特性間の相関関係を判断するもの です。 相関関係には、 「正の相関」 「負の相関」 「相関なし」があります。 ◆パレード図 現象や原因などの項目を大きい順に並べ替えた棒グラフと、 件数の累積和を示す折れ線グラフを組み合わせたものです。 どの項目が重要か判断するのに適しています。 100 90 80 ︵ 累 70 積 比 60 率 50 40 ︶ % 30 20 10 E項 目 D項 目 C項 目 B項 目 ◆ABC分析 ある項目の件数を降順に並べた結果、全体に対する比率に よってA群(70%) ・B群(20%) ・C群(10%)の ようにクラス分けをし、それによって重要項目を把握する ものです。 A項 目 0 100 90 80 ︵ 累 70 積 比 60 率 50 40 ︶ % 30 20 10 B群 70% 20% E項 目 A群 D項 目 C項 目 B項 目 - 4/12 - A項 目 0 C群 10% 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 ◆ヒストグラム データの存在する範囲をいくつかの区間に分け、各区間に入るデータ数(出現度数)を棒グラフで表 した図です。 データの分布の形、データの中心位置、データのばらつきなどが把握できます。 ◆管理図 中央と上下の基準となる線(管理限界線)を引き、折れ線グラフの変化から、行程などの異常の発生 や、品質の不良を判断するグラフです。 ◆チェックシート あらかじめ項目を列挙したシートを作っておき、チェックマークを付けて確認するもの。 点検などで利用されます。 ◆層別 集計したデータや調査結果をグループに分けて分析し、 グループごとの特性を明らかにする手法です。 たとえば、データを人為的要因、行程別要因などに分け、問題発生の違いを比べます。 通常は、各層別に他のQC7道具を使って分析します。 □アローダイアグラム プロジェクトの日程管理や進捗管理を行う手法で、次の記号を使って表します。 記 号 意 味 作業を表す。矢印上に作業名、下に所要日数(所要時間)を記入する 作業と作業の結合点を表す。先行するものから順に番号を付ける ダミー作業で、作業の順序関係だけを表す。所要日数が0の作業 書き方 基本形 作業名 14 応用形 B A C D Aの作業が終わったら BとCを並行して進められる F E DとEの作業が終わらないと Fの作業に進めない - 5/12 - 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 作 業 作業日数 先行作業 A 基礎の工事 30 B 柱の工事 20 A C 壁・床の工事 20 A D 電気・水道の工事 20 B E 仕上げ 15 B F 最終確認 20 C,D,E たとえば、次のようなプロジェクトの日程計画があるとすると… 作業Aは、作業Bの先行作業です。逆に、作業Bは作業Aの後継作業です。 先行作業が完了してから、後継作業を開始することができます。 つまり、作業Aが完了してから作業Bが開始できるということです。 また、作業Fは、すべての作業が完了してからではないとできません。 これをアローダイアグラムで記述すると次のようになります。 5 作業Aが完了してから、 作業Bが開始できる 1 A 30 2 B 20 20 3 D E 15 F 20 6 C 20 7 作業C,D,Eのすべて が完了してから 作業Fが開始できる 4 ◆最早開始日 最早開始日とは、その作業において最も早く後続作業が開始できる時点のことです。 最早開始日は、前の最早開始日+作業日数で求めることができます。 複数の作業が集まる結合点の最早開始日では、最も遅い作業に合わせる必要があります。 0 日+30 日 0 最も日数のか かる作業に合 わせる 50 30 50 5 20 1 A 30 2 B 20 3 E 15 C D 6 20 4 30 最早開始日を求める方向 - 6/12 - 70 90 上段:最早開始日 下段:最遅開始日 F 20 7 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 ◆最遅開始日 すべての後続作業が遅れないように、先行作業が完了していなくてはならない時点をいいます。 最遅開始日は、後続作業の最遅開始日−作業日数で求めることができます。 複数の作業が分岐する結合点での最遅開始日は、最も早い作業に合わせる必要があります。 最も日数のか かる作業に合 わせる 50 50 0 30 50 0 30 50 1 A 30 2 B 20 5 20 3 E 15 C 70 90 上段:最早開始日 70 F 6 20 90 下段:最遅開始日 D 20 7 ⑥⇒③=70-15=55 ⑤⇒③=50-0(ダミー作業)=50 しかがって、結合点③の 最遅開始日は50日となります 4 30 50 最遅開始日を求める方向 ◆クリティカルパス(Critical Path) 最早開始日と最速開始日が等しい結合点を結んだ経路(パス,Path)をクリティカルパスといいます。 クリティカルパスには「危険な経路」 「余裕の無い経路」という意味があります。 50 50 0 30 50 0 30 50 1 A 30 2 B 20 5 20 3 E 15 C クリティカルパス ① ⇒ ② ⇒ ③ ⇒ ⑤ ⇒ ⑥ ⇒ ⑦ 4 30 50 - 7/12 - 70 90 70 F 6 20 90 D 20 7 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □損益分岐点 ◆費用(総費用) 費用には、売れても売れなくても一定の費用がかかる「固定費」と 売れば売るほど費用がかかる「変動費」があります。 また、それらを総合したもの(固定費+変動費)を「費用(総費用) 」といいます。 例えば、人件費や光熱費は「固定費」で、材料費などは「変動費」になります。 ◆損益分岐点 損失も利益も出ない売上高のことです。つまり、利益がゼロとなる売上高の事です。 費 用 売上高 変動費 費用 固定費 固定費 売り上げに関係なく 売上高 損益分岐点のイメージ 費用 変動費 売り上げ比例した費用で、売り 上げがなければ発生しない。 売上高 《損益分岐点の計算式》 固定費 固定費 固定費 損益分岐点 = = = 変動費 限界利益率 1−変動費率 1− 売上高 《損益分岐点のグラフ》 費用 売上高 利益 損益分岐点 変動費 固定費 損失 売上高 - 8/12 - 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □在庫評価 ◆在庫評価の方法 商品を仕入れてお客さんに販売する場合、お客さんからの注文にすぐに対応する為にある程度の在庫 を持つのが普通です。しかし、同じ商品でも仕入れ時期によって仕入れ単価が異なることがあります。 いくらで仕入れたものが売れたのか?また倉庫にあるのはいくらの分なのか?それを計算する方法を 決めておく必要があります。 先入先出法 先に仕入れた商品から先に出庫するとみなして計算する方法 後入先出法 後に仕入れた商品から先に出庫するものとみなして計算する方法 移動平均法 商品を仕入れた都度、その時の残高とその商品の購入金額を加算 し、それを残量と購入量の合計数量で割って、単価を求める方法 例えば、Aという商品を先入先出法で評価した場合の4月末の在庫の評価額は? 日付 4月1日 4月4日 4月5日 4月7日 4月10日 4月30日 A商品の取引内容 繰越在庫 購入 払い出し 購入 購入 払い出し 個数(個) 単価(円) 10 100 40 120 30 30 140 10 110 30 <解説> ○は10個分購入、●は10個分払い出しとする 4月1日現在 繰越在庫が10個・4月4日に40個購入 日付 A商品の取引内容 個数(個) 単価(円) 4月1日 繰越在庫 4月4日 購入 10 40 状態 100 ○ 120 ○○○○ 4月5日に30個払い出し。 先入先出法なんで、先に入った商品から払い出し! 4月1日 繰越在庫 4月4日 購入 10 40 100 ● 120 ●●○○ 4月7日に30個、4月10日に10個、それぞれ購入 4月1日 4月4日 4月7日 4月10日 繰越在庫 購入 購入 購入 10 40 30 40 100 120 140 110 ● ●●○○ ○○○ ○ 4月30日に30個払い出し。 4月末の在庫は… ・4/7に購入した 単価140円の20個 ・4/10日に購入した 単価110円の10個 先入先出法なんで、先に入った商品から払い出し! 4月1日 4月4日 4月7日 4月10日 繰越在庫 購入 購入 購入 10 40 30 40 100 120 140 110 ● ●●○○ ●○○ ○ - 9/12 - つまり… 140 円×20 個+110 円×10 個 =3,900円 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □減価償却 車やパソコンなどの資産は、時間の経過とともにその価値が減ってきます。 減価償却は、資産の購入にかかった金額(取得価格)を、一定方法にしたがって利用した年度ごとに 減価償却費として配分し、資産の評価額を減らしていく方法です。 資産の購入にかかった金額は、取得した年度に全額計上するのではなく、その資産の使用可能期間(こ れを「耐用年数」といいます)にわたって配分して計算します。 減価償却費を求める計算方法には「定額法」と「定率法」があります。 ◆定額法 毎年度同じ額の減価償却費を計上する方法で、次の式で求まります。 定額法による減価償却費 = (所得価格 − 残存価格)÷ 耐用年数 取得価格:資産の購入価格 耐用年数:資産の寿命年数 残存価格:耐用年数経過後の資産の価値。 税法では取得価格の10% 減価償却費は 毎年同じ額 取得価格 残存価格 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 ◆定率法 毎年度一定の割合で減価償却費を計上する方法で、次の式で求まります。 定率法による減価償却費 = 未償却残高 × 償却率 未償却残高:取得価格 − 前年度までに計上した減価償却累計額 償 却 率:本来は計算で求めるが、税法で決まっている 取得価格 減価償却費は毎年度一定の割合 ↓ 減価償却費は年々減少する 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 - 10/12 - 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □統 計 データを集計するとき、データ全体の傾向を知るために使う手法です。 ◆平均値 各データの合計をデータの個数で割ったものです。 (45+55+55+55+65+65+70+70)÷8=60 ◆メジアン 「中央値」ともいい、データを順番に並べたとき中央に位置する値です。 データの個数が偶数の時は、中央の二つの値の平均値です。 下の例では、 (55+65)÷2=60 となります。 45 55 55 55 65 65 70 70 ↑ 「60」がメジアンです ◆モード 「最頻値」ともいい、出現頻度の最も高い値です。 45 55 55 55 65 65 70 70 ⇒ モードは55となります。 ◆レンジ 「範囲」ともいい、データの最大値と最小値の差です。 45 55 55 55 65 65 70 70 ⇒ 70 − 45 = 35 ◆分 散 平均値のばらつきを表したものです。偏差(平均値との差)の2乗の総和の平均値で求まります。 {(45-60)2+(55-60)2+(55-60)2…(70-60)2}÷8 = 68.75 ◆標準偏差 分散の平方根で求まります。 68.75 ≒ 8.29 ◆正規分布 平均値を中心とした左右対称の釣り鐘型の分布をいいます。 - 11/12 - 初級シスアド講座(第4回)業務のモデル化・ビジネス分析手法 □グラフ 数値の大小を図形に置き換えて表したもので、数値の変化や比較を把握するのに適しています。 グラフには次のような種類があります。 ◆内訳・構成比・比率を表しやすいグラフ 帯グラフ 円グラフ 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1992 1993 ◆大小や順位の比較をあらわしやすいグラフ 棒グラフ 複合棒グラフ 積み上げ棒グラフ 200 250 200 180 180 160 140 200 120 150 160 140 120 100 100 80 100 60 40 50 80 60 40 20 20 0 0 2000 2001 2002 2003 0 2000 2004 2001 ◆経過や推移をあらわしやすいグラフ 2002 2003 2004 2000 2001 2002 2003 ◆分布状況・相関関係をあらわしやすいグラフ 折れ線棒グラフ 分布図(散布図) 200 45 180 160 40 140 120 30 100 80 20 35 25 15 60 40 10 5 20 0 0 2000 2001 2002 2003 0 2004 ◆複数項目間のバランスをあらわしやすいグラフ レーダーチャート 大阪 100 京都 50 和歌山 0 兵庫 2004 奈良 滋賀 - 12/12 - 20 40 60 80 100 120