...

05001141_001_BUP_3.

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

05001141_001_BUP_3.
第 2 章 北海道における
北海道における観光
における観光の
観光の状況
1 観光の
観光の概況
(1)観光産業の社会効果
北海道庁がまとめた『北海道の観光の概況(H16)』 によれば、統計は多少古くなる
が、1999 年度の調査の結果、北海道内で観光行動に伴い消費された金額は約 1 兆 2,160
億円と推定され、生産波及効果も含めれば 1 兆 8,800 億円に上るものと見られる。また、
観光消費による経済効果に相当する就業者数は約 14 万人と推計され、北海道の就労総
人口(約 290 万人)の約 4.8%に当たることになる。
1
図表2-1:北海道観光の経済効果(3 回目調査=1999 年)
(2)北海道における観光客の動向
『北海道観光の概況(H16)』によれば、2004 年に北海道内を旅行した道内外客の総
計はおよそ 4,939 万人となっている。 道外客は約 635 万人(13%)、道内客は 4,304
万人(87%)と道内客の割合が極めて高い。地域的には、札幌を中心とした道央圏への
来訪が全体の半分以上を占めており、その他、主要都市では、道南の函館市、小樽市、
ニセコ地域に含まれる喜茂別町、旭川市などへの来訪者が上位を占めている。季節別割
合を見ると、観光客入り込みの半分は夏季(6~9 月)に集中しており、冬季(12-3 月)
の約 2.5 倍となっている。
1
本章は主資料源を、北海道経済部観光振興課、(2004)『北海道の観光の概況(H16)』、および、北海道(2005『北
海道外客来訪促進計画 国際観光推進プログラム -ようこそ北海道―』とし、統計資料(図表)はすべてこの2つ
の文献から引用した。
6
図表2-2:北海道観光入り込み推移
図表2-3:季節別入り込み数
道庁が行った来道観光客の実態調査によると、旅行日程は年度により変動はあるもの
の、H12 年度以降は、2 泊 3 日、あるいは、3泊 4 日という日程が最も多く、併せて全
体の 6 割以上を占めている。また、来道者の 7 割が北海道を2回以上訪れたことのある
「リピーター」となっている。団体パッケージツアーの利用状況については、年々減少
傾向で、代わりにフリーのパッケージツアーなど個人客の増加が見られる。また、道内
観光の交通手段を見ると、主な交通手段として「貸切バス」の減少に伴い、「レンタカー」
「鉄道」利用者の割合が増えている。
図表2-4:来道客の滞在日数推移
図表2-5:来道客の来道経験推移
図表2-6:来道客の道内観光利用交通機関推移
一方、道内観光客の動向を見ると、旅行日程では、H10 年には 4 割以上が「日帰り」
だったが 2003 年には日帰り客は 3 割強となっており、「1 泊2日(36%)」「2 泊 3 日
(19%)」と宿泊を伴う旅行の割合が増加している。旅行形態では「家族旅行」が全体
の 6 割程度を占めており、次いで「小グループ旅行」が 2 割強となっている。利用する
交通手段については、8 割が「自家用車」を利用している。
7
図表2-7:道内客滞在日数推移
図表2-8:道内客旅行形態推移
図表2-9:道内客利用交通機関推移
本調査の対象となっているニセコ地域に関して特記すべき点は、修学旅行受け入れ地
としてのランキングが高いことであろう。2003 年度には、来道修学旅行生の学校数では
札幌、富良野に続いて 3 位(191 校)、宿泊生徒数述べ人数では、札幌に次いで 2 位(約
6 万 6 千人)となっている。
図表2-10:2003 年主要市町村修学旅行受け入れ(延べ人数)
(3)デスティネーションとしての北海道についての評価
(財)日本交通公社が毎年発行している『旅行動向』によれば、同財団が隔年で行っ
ている「日本人が行ってみたい旅行先」として、北海道は 1999 年から 2003 年まで連続
3回とも 1 位にランキングされている。これは、ハワイ(米国)や沖縄県、京都府など
を抜いての数字であり、調査対象の 1 割以上が北海道を最も訪れたい旅行先として選択
している。 また、国土交通省が 2003 年に東アジア 4 カ国・地域(台湾、韓国、香港、
中国)においても、「日本の訪問希望先」として、北海道は東京に逼迫して第2位にラン
キングされている。このように、北海道は「行きたいデスティネーション」として、国
内外からの評価が極めて高い。
北海道観光への期待としては、国内客からは「景観・自然資源」「おいしい食材」「温
8
泉」などが高く、海外旅行客(主にアジアからの来訪者)からは、「広大な大地」「ヨー
ロッパ的な景観」「四季の明確さ」「食文化」などに対する期待が高い。
イベントに関して言及すれば、冬のイベントとしては全国最大級の入り込みを誇るさ
っぽろ雪祭り(毎年 2 月開催、2005 年入り込み 219 万人)や、今では雪祭りの入り込
みを凌ぐアトラクションとなっているよさこいソーラン祭り(6 月開催、2005 年度入り
込み約 230 万人)などが全国的知名度を上げると同時に、デスティネーションとしての
北海道の評価を上げているといえよう。
2 観光促進に
観光促進に向けての施策
けての施策
観光振興の総合的、かつ、計画的施策の推進をはかるために、北海道庁は 2001 年 10 月
に「北海道観光のくにづくり条例」を制定した。根底には、地域資源を見直し、地域住民
の誇りと資源への理解に基づく持続的な資源運営を理念とした「サスティナブル・ツーリ
ズム」の基本概念の推進がある。同条例は、北海道観光の目指す姿を
・北海道を誰もが安心して快適に滞在することができる国際的にも通用する観光地とする
・観光にかかわる産業を北海道経済のリーディング産業とする
とし、観光の振興に関する道民、観光事業者、観光関連団体、行政機関の協働を前提に、
① 自然・景観などの環境への保全の配慮とその活用
② 食の魅力を生かす
③ 全ての人が安心して快適に観光できる配慮
④ 道民と観光客がともに楽しめる地域特性を生かした観光地形成
⑤ 観光関連産業を地域経済の牽引力とする
の5つの基本理念の実現を目指した。
翌 2002 年には、目標達成の指標として、観光入り込み客数、外国人来道者数、および、
観光消費額などについて具体的な目標値を定めている。
図表2-11:北海道観光に関する指標目標値(2007 年までに)
また、これらの目標・理念達成のための具体的施策として、アウトドア活動に関するガ
イド資格としては全国初となる「北海道アウトドア資格制度」(2002 年)や、北海道独自
の観光資源の保全と持続的な活動を目的とした「北海道遺産」(2001 年)、景観保全とドラ
イブ観光の促進を目指した「北海道シーニックバイウェイ制度」(2005 年より本格導入)
など、全国でも先駆的、かつ、独自の具体的プログラムを導入実施してきた。また、外客
誘致に関しても、わが国のインバウンド促進政策であるビジット・ジャパン・キャンペー
ンと連動しながら、2005 年には新たな国際観光振興策として「国際観光推進プログラム‐
9
ようこそ北海道‐」を策定し、具体的施策の推進を実施している。
その他、近年、地域独特の資源活用や宣伝方法によって、北海道の観光地や観光施設が
全国的な話題をさらった例も複数ある。倉本聰氏によるテレビドラマのロケ地として知ら
れ、地域の特産であるラベンダーとともに独自のデスティネーションイメージを確立した
道央の富良野地域や、既存資源の有効利用と巧みな展示方法とインタープリテーション機
能(資源についての解説)の成功例として全国に名を馳せた旭川市の旭山動物園、2005
年 7 月に世界遺産に登録された知床地域などは、今後も観光客入込みの増大が期待できる。
また、2005 年には、長年期待されていた新幹線の函館までの伸張工事が着工され、開通後
の経済効果の増大に期待がかかっている。
3 観光関連事業の
観光関連事業の現状
前述のとおり、観光産業関連産業は道内の就労人口の約 5%のシェアを占めるものと推
定されるが、『北海道の観光の概況(H16)』に掲載された主要各産業の現況は次のとおり
である。(以下抜粋)
(1)宿泊施設
2003 年度末現在、道内で旅館業法の許可を受けている宿泊施設総計は 4,979 施設で、
内訳は、ホテルが 586 施設、旅館が 3,310 施設、簡易宿所が 1,083 施設、である。
宿泊者数(延べ数)は、2003 年度で約 3,450 万人となっており、過去 5 年間ほぼ横
ばい状態である。
図表2-12:全国および北海道の宿泊施設収容力
図表2-13:北海道主要都市の宿泊施設概要
10
(2)交通機関
旅客運送に関しては、2002 年度、道内と道外を結ぶ旅客輸送総数は 2,647 万人だった。
交通機関別に見ると、航空機が増加し、船舶、および、JR による旅客輸送が減少して
いる。一方、海外―道内を結ぶ旅客輸送については、定期便、チャーター便で、チャー
ター便については、2001 年度から、帯広や旭川などの地方空港からの発着が増えている。
図表2-14:新千歳空港発着の国際路線一覧
図表2-15:道内空港のチャーター便実績推移
(3)旅行会社
道内の登録旅行業者数を見ると、第 1 種から第 3 種までの旅行会社で道内に本社営業
所のある登録旅行業者の総計は、2004 年 4 月現在で 245 社となっている。
図表2-16:道内の登録旅行会社数推移
11
(4)その他
観光関連産業の道内企業が全国でどのような位置付けにあるかに目を向けると、東洋
経済の『日本の会社 72,000(2004 年度版)』によれば、「旅館ホテル」部門では、野口
観光やカラカミ観光などの道内企業が近年売上高全国ベスト 10 に入っている。また、
「パ
ン・菓子部門」では石屋製菓、ロイズコンフェクト、六花亭製菓などの道内企業が全国
ランキング 20 位以内に名前を載せており、道内観光関連産業の進出は注目に値するも
のがある。
4
外客誘致の
外客誘致の施策と
施策と現況
(1)小泉政権による外客誘致政策、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)
小泉政権は、観光立国ニッポンを実現するための具体的な施策として、2010 年までに
訪日外客数を 1,000 万人にすることを目標とした観光政策「ビジット・ジャパン・キャ
ンペーン(以下、VJC)」を 2003 年度から本格的に実施している。わが国へのインバウ
ンドは貿易収支上、
「輸出」となり、インバウンド促進は貿易収支の黒字増加につながり、
経済活性化の一手段となることは明白である。VJC は、国土交通大臣を長とし、官民一
体となって組織された VJC 実施本部事務局を中心に、全国規模で外客誘致に向けた各種
活動を展開している。VJC は当初、韓国、中国、台湾、香港、欧州(英国、ドイツ、フ
ランス)の5つのマーケットを重点マーケットとして位置付けていたが、2005 年度から
は、潜在マーケットの大きさから、オーストラリア、カナダ、シンガポール、および、
タイを新たに加え、重点市場として位置付けている。
(2)来道外客の概要と北海道の外客誘致政策
北海道においては、VJC と連携した外客誘致施策として、重点マーケットとして台湾
と香港からの安定した入り込みを維持・拡大する取り組みを行っているほか、今後飛躍
的に拡大されることが予想される中国本土や、北海道事務所がある韓国などの東アジア
地域からの誘客施策に力を入れている。とりわけ、2004 年には、従来の外客来訪促進計
画を見直し、「国際観光推進プログラム‐ようこそ北海道‐」を策定し、2005 年度~2007
年度までの 3 年間を対象として、2007 年度末までに、
① 外国人来道者数を 54 万人とする。(2003 年度実績 29 万人)
② サービスに満足したとする観光客の割合(含む国内客)を 80%とする。
③ また北海道に来たいと思う旅行者の割合を 80%とする。
(2002 年度調査では 47%)
などの具体的目標を掲げ、外客誘致促進を図っている。
北海道を訪れる外国人客の動向をまとめると、来道外客の最も大きなシェアを占める
のは台湾からの観光客(2003 年度 40.8%)で、次いで韓国(20.8%)、香港(19.3%)
となっている。日本全体への外客のマーケットシェアを見ると、2003 年度の 1 位は韓
国(28.0%)、2 位が台湾(15.1%)、3 位が中国(8.6%)となっており、台湾からの来
訪者のシェアが大きいことは、北海道へのインバウンドの特徴といえよう。
12
図表2-17: 2003 年度訪日外客内訳、および、来道外客内訳
また、本稿の主旨である、オーストラリアからニセコ地域を訪れるスキー客の急増は
全国的にも注目を集めており、同国から北海道全体への来訪者は 1999 年度の 3,000 人
弱から 2003 年度には倍以上の約 8,000 人まで増えており、道の外客誘致政策の重点マ
ーケットとして位置付けられている。
図表2-18:来道外客数推移
加えて、新聞報道などによれば、道東地域に最近、バードウォッチングを目的に訪れ
るイギリスからの来訪者も増加を見ているという。オーストラリアとイギリスは、VJC
でも重点市場の一つとなっており、今後のプロモーション活動が期待される。一方、団
体旅行者へのビザの規制緩和が進む中国も潜在力の大きなマーケットで、今後は中国本
土からの来訪者の増加も十分見込まれる。
(3)今後の課題
JVC に見られるように、外客誘致は国策として位置付けられており、北海道を含めた
各地方自治体もその推進に当たっている。それに伴い、法的整備を含めた外客誘致に関
するインフラ整備も進められている。日本人の海外旅行市場の拡大に伴い整備されてき
た現行の旅行業法と照らし合わせると、インバウンドに関しては例えば取り扱い旅行業
者の登録制度などは整備されておらず、事実上、インバウンドは旅行業法外のビジネス
とも言われている。外客誘致をビジネスとして発展させるためには、業務遂行に関する
さまざまな法的整備も必要となってくる また、外国人観光客を案内するのに、現在は
通訳ガイド資格の取得と併行して、地域限定で通訳案内ができる「通訳案内士」制度の
13
導入も国土交通省で検討されており、北海道でも H19 年度を目処に導入実施を目指して
いるという。
また、2003 年より海外旅行に関する規制緩和を段階的に導入し始めた中国などにみら
れるように、発地(外客の出身地)の海外旅行に関する各種の規制緩和などとも連動し
てマーケティングを行う必要があり、海外における旅行需要に関する調査も必要となっ
てくる。
こうした状況をふまえながら、北海道では、外国人向けの北海道観光情報の発信の方
法や、優良な観光資源の有効活用、国際交流イベントの促進などを柱に外客誘致促進に
つとめようとしている。
<参考文献>
国土交通省(2004)『観光白書 H16 年度版』
国土交通省(2005)『観光白書 H17 年度版』
北海道(2005)『北海道外客来訪促進計画:国際観光推進プログラム‐ようこそ北海道‐』
北海道経済部観光振興課(2004)『北海道の観光の概況 H16 年度』
㈱北海道リクルートじゃらん(2005)『北海道の観光力‐現在と未来‐』
14
Fly UP