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道路施策における地球温暖化対策
─ 道路施策における地球温暖化対策 国土交通省道路局地方道・環境課道路環境調査室 1 我が国における地球温暖化対策 1─2 京都議定書目標達成計画 京都議定書の温室効果ガス6%削減約束の確実な達成 1─1 温暖化をとりまく状況 と、それ以後の更なる長期的・継続的な排出削減を目的 1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3 として、2005年4月に京都議定書目標達成計画が閣議決 回締約国会議(COP 3)において、先進各国が数値目 定された。 標を伴う温室効果ガスの削減を約束する京都議定書が採 我が国の CO2総排出量のうち運輸部門からの排出は約 択され、日本は第一約束期間(2008年度∼2012年度)の 2割を占め、そのうち約9割は自動車からの排出であ 温室効果ガス排出量を5年間の平均で基準年(1990年 る。運輸部門の CO2排出量は、道路整備等による交通流 度)比6%削減することとなった。 対策や自動車単体の対策等により、2001年度をピークに 2008年度は、京都議定書の第一約束期間がいよいよ始 目標達成に向け着実に減少している。 まる我々人類にとって大きな節目の年である。また、7 しかしながら、政府全体の目標達成が厳しい状況を踏 月には我が国においてG8洞爺湖サミットが開催され、 まえ進捗が十分でない対策の加速化、更なる削減の可能 環境が主要テーマとなる予定である。 性が見込める対策の一層の強化に向けて、早急に検討を 我が国の温室効果ガスの2006年度(速報値)の総排出 進め、実施する必要がある。 量は、前年度と比べると1.3%(1,800万トン)の減少と なっているが、依然として基準年比で6.4%(8,000万ト ン)上回っており、6%削減の目標を達成するために は、12.4%の削減が必要な状況である。 図1 京都議定書の6%削減約束と我が国の温室効果 ガス総排出量 ⊖ਁ䊃䊮㪄㪚㪦㪉㪆ᐕ 䋫㪍㪅㪋㩼 㪈㪊ం㪋㪈㪇㪇ਁ㫋 㪈㪃㪊㪇㪇 㪈㪉ం㪍㪈㪇㪇ਁ㫋 㪈㪉㪅㪋㩼䈱ᷫ䈏ᔅⷐ 㪈ం㪌㪍㪇㪇ਁ㫋 ᑄ᫈‛ 䈠䈱ઁㇱ㐷 㪇㪅㪇㩼 㪉㪅㪏㩼 Ꮏᬺ䊒䊨䉶䉴 ㆇ ャ ㇱ 㐷 㪉㪌㪎⊖ਁ ㋕ 㪋㪅㪉㩼 㪈 㪐 㪅㪐 㩼 㫋㪄㪚㪦㪉㪆ᐕ ኅᐸㇱ㐷 ౝ⥶ᶏㆇ 㪈㪊㪅㪌㩼 ✚ឃ㊂ 㪈㪃㪉㪎㪌⊖ਁ 㫋㪄㪚㪦㪉㪆ᐕ 䉣䊈䊦䉩䊷 ォ឵ㇱ㐷 ᬺോ䈠䈱ઁ 㪍㪅㪈㩼 ㇱ㐷 㪈㪏㪅㪌㩼 ↥ᬺㇱ㐷 㪊㪌㪅㪇㩼 ⥶ⓨ ⥄േゞ ⚂ 䋹ഀ 㪈㪇㪇㩼 㪐㪇㩼 㪏㪇㩼 㪎㪇㩼 㪍㪇㩼 㪌㪇㩼 㪋㪇㩼 㪊㪇㩼 㪉㪇㩼 㪈㪇㩼 㪇㩼 図3 運輸部門の CO2排出量の推移 㪚㪦㪉ឃ㊂䋨⊖ਁ㫋䋩 㪄㪍㩼 㪎㪍㪇㪇ਁ㫋 㪈㪃㪉㪇㪇 図2 部門別 CO2排出量(2005年度) 㪉㪎㪇 ੩ㇺ⼏ቯᦠᷫ⚂᧤ 㪈㪈ం㪏㪌㪇㪇ਁ㫋 㪈㪐㪐㪇ᐕᐲᲧ䂦㪍㪅㪇㩼 ⴕ䈱⋡ᮡ㆐ᚑ⸘↹ ⥄ὼ䉬䊷䉴 ⚂㪉ం㪎㪃㪋㪌㪇ਁ㫋 㪉㪍㪏 ㆇャㇱ㐷䈱 ឃ㊂ታ❣ ㆇャㇱ㐷䈱ኻ╷䈮䉋䉎ᷫലᨐ 䊶䊶䊶ว⸘㩷⚂㪉㪃㪋㪌㪇ਁ䌴 䊶⥄േゞනኻ╷䈶 䇭ⴕᒻᘒ䈱ⅣႺ㈩ᘦൻ 㪉㪍㪇 㪈㪃㪈㪇㪇 㪉㪌㪎 㪉㪌㪋㩿ㅦႎ୯㪀 㪉㪌㪇 䋨⋡ᮡ䋩 䊶ㅢᵹṖൻኻ╷ 䊶‛ᵹ䈱ല₸ൻ 䊶ㅢᯏ㑐䈱↪ଦㅴ╬ 䌾 䌾 䌾 䌾 㪈㪐㪐㪇ᐕᐲ 㪉㪇㪇㪍ᐕᐲ 㪉㪇㪈㪇ᐕᐲ 䋨㪟㪉䋩 䋨㪟㪉㪉䋩 䋨㪟㪈㪏䋩 䇼ၮḰᐕ䇽 䇼ㅦႎ୯䇽 䇼⋡ᮡ䇽 㪉㪈㪎 ⅣႺ⋭⾗ᢱ㧔㧕ࠃࠅᚑ ̉ ੩ㇺ⼏ቯᦠ䈮 䉋䉎ၮḰᐕ ̉ ̉ ̉ ̉ ̉ ̉ ̉ ̉ ̉ ⋡ᮡ୯ 䇭㩷㪉ం㪌㪃㪇㪇㪇ਁ㫋 ̉ 䋨ᐕᐲ䋩 1 01-03責_道路_特集1_地球温暖化対策.indd 1 2008/03/18 8:22:15 䋨ᐕᐲ䋩 㩾㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 ⋡ᮡ୯㩷 8+%5᥉₸㧔㧑㧕 ⋡ᮡ୯㩷 '6%↪₸㧔㧑㧕 ᢛᑧ㐳㧔ਁMO㧕 䋨ᐕᐲ䋩 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 䋨ᐕᐲ䋩 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 䋨㪭㪠㪚㪪䈱᥉ଦㅴ䋩 䋨㪜㪫㪚䈱↪ଦㅴ䋩 䈀⥄ォゞ↪ⅣႺ䈱ᢛ䈁 ⋡ᮡ୯㩷 MOᒰࠅᐕ㑆〝Ꮏᤨ㑆 㧔JMO㨯ᐕ㧕 図4 現行の目標達成計画に位置づけられている道路施策の実績 る道路施策の推進 ⋡ᮡ୯㩷 䋨ᐕᐲ䋩 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 㩾 ネック踏切等の対策のスピードアップ、③路上工事の更 なる縮減を推進する。 3 道路施策における CO 排出量削 2 減の推進 2─1 これまでの道路施策の成果 䈀〝Ꮏ䈱❗ᷫ䈁 䈀㪠㪫㪪䈱ផㅴ䈁 2 京都議定書目標達成計画におけ 現行の目標達成計画に位置付けられている道路施策と 走行速度と CO2排出量の関係を示している図5より、 して、①自転車利用環境の整備、② ITS の推進(ETC 自動車の走行速度が向上すると実効燃費が改善すること の利用促進、VICS の普及促進) 、③路上工事の縮減の が言える。このため、道路においては、交通流を円滑化 3つがある。これら3施策の合計で、約340万 t CO2/ することを目的とした各種施策を実施している。具体的 年の排出量削減を目標としているところであるが、各施 には、首都圏三環状道路等の幹線道路ネットワークの整 策のこれまでの実績を表した図4に示されるとおり、現 備、主要渋滞ポイント対策等の自動車からの CO2排出量 在、各施策とも目標の達成に向け着実に進捗していると 図5 走行速度と CO2 排出量 㪚㪦㪉ឃ㊂䋨㪾㪄㪚㪦㪉㪆㫂㫄䋩 ころである。 2─2 更なる追加対策 現行の道路施策は着実に進捗しているが、運輸部門の 目標達成を確実にするとともに、政府全体としての目標 達成が厳しい状況であることも踏まえ、追加対策とし 㪌㪇㪇 㪋㪇㪇 䂥㪋㪇㩼 㪊㪇㪇 㪉㪇㪇 㪈㪇㪇 て、①多様で弾力的な高速道路の料金施策、②ボトル 㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 ᐔဋᣏⴕㅦᐲ䋨㫂㫄㪆㪿䋩 ࿖ᛛⴚ╷✚ว⎇ⓥᚲ⾗ᢱࠃࠅᚑ 表1 道路施策のメニュー ⑴人と車のかかわり方の再考 ・自転車利用環境の整備 ・公共交通のシステム改善と運用改善 ・エコドライブの推進 ・環境に優しい自動車の開発 ・ 普及 等 ⑵渋滞がなくスムーズに走れ ・環状道路整備等の渋滞対策 る道路の実現 ・開かずの踏切等を除却する対策 ・多様で弾力的な料金施策 等 ⑶道路空間の活用・工夫によ ・道路緑化の推進 る二酸化炭素の削減 ⑷自動車交通の運用の効率化 ・道路空間における新エネルギーの活用(太陽光など)等 ・ITS の活用等による道路交通情報の提供の充実 等 2 01-03責_道路_特集1_地球温暖化対策.indd 2 2008/03/18 8:22:17 を削減する対策や、排出された CO2を吸収する樹木を増 な導入が求められている。 やすための対策等を引き続き体系的かつ集中的に実施す また、中長期的な視点に立った場合、世界的に CO2排 る。これら道路施策の実施により、2007年度を基準とし 出量の大幅な削減が求められており、抜本的な CO2削減 て、2017年度までに約1,600万 t CO2/ 年削減すること 対策が必要となる。このため、CO2排出量を大幅に削減 を目指すこととしている。 できる経済・社会システム等のさらなる検討が求められ る。 4 今後の取組み 京都議定書目標達成のために、来年度から始まる第一 約束期間においても着実に道路施策を推進していくとと もに、更なる CO2削減の可能性が見込める対策の積極的 3 01-03責_道路_特集1_地球温暖化対策.indd 3 2008/03/18 8:22:17