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新たなエネルギー政策への提言と 石油業界が目指すこと

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新たなエネルギー政策への提言と 石油業界が目指すこと
新たなエネルギー政策への提言と
石油業界が目指すこと
2013年11月
石 油 連 盟
◎本日申しあげたいこと(ポイント)
国の
重点施策
(成長戦略)
石油産業が
目指すべき
方向
産業競争力強化
国土強靭化
◎石油産業の成長戦略(競争力強化)
石油資源の
高度利用
海外展開 構造改善
総合エネルギー産業化
石油産業政策
への提言
エネルギー政策
への提言
石油の
安定供給
◎石油産業の強靭化
災害対応力強化
精製からSS・需要家まで
一体となった石油サプライ
チェーンの維持
官民の取り組み
① 資源外交など産油国との関係強化
② 石油火力燃料の国家備蓄の開始
③ SSネットワークの維持(SS過疎地対策)
各種支援措置
① 石油サプライチェーンの維持に対する政策支援強化
② 国際競争力強化・構造改善に資する政策支援強化
③ 石油利用システム・機器の導入支援強化
エネルギーシステム改革
① 電力システム改革の着実な実行、ガスシステム改革
の早期検討・実施
② LNG関連設備の第三者への公平な利用促進
③ バックアップ電源としての石油火力の位置付け
1
新たなエネルギー政策への提言
(1)エネルギー産業の競争力強化と緊急時対応力強化の両立
 低廉なエネルギーを安定的に供給するため、国際競争力を強化し、エネルギー産業
を「成長産業」に発展させていくことが重要です。
 首都直下地震・南海トラフ地震を想定した災害対応力を強化し、緊急時のエネルギー
セキュリティに万全を期すことが重要です。 (東日本大震災では、被災地において、生命維
持、救援活動、復旧活動など広く市民生活を支え、分散型エネルギーの強みを発揮)
石油会社による成長産業への取組み(主なもの)
(例)石油化学コンビナート
の新規建設
資源開発
海外展開
(投資・輸出)
東日本大震災における被災地への供給実績
被災地からの要請への対応内訳
石油化学
一般物資
3590件
71%
高性能潤滑油
石油
(精製・卸売・販売)
燃料
(石油)
1456件
29%
石油供給の要請先内訳
その他(通信・
運輸・マスコミ等)
26%
(379件)
高機能素材
石油販売業者
29%
(422件)
電力事業
ガス事業
再生可能
エネルギー
病院・避難所
25%
(364件)
警察・消防・
地方自治体・
自衛隊等
20%
(291件)
(出所)総合資源エネルギー調査会第13回基本問題委員会
2
新たなエネルギー政策への提言
(2)石油の位置付け明確化
 「石油」を、災害対応力に優れた分散型・自立型の基幹エネルギーとして、さらに石化
製品・潤滑油など国民生活に欠くことのできない資源として位置付けることが重要です。
 シェールオイル革命に伴う中長期的な原油需給の改善・安定を見据え、今後は石油
の有効活用・高度利用を促進することが重要です。
石油の資源量と可採年数
石油の主な用途
可採年数
兆バレル
6.0
エネルギー
利用
5.0
4.0
動力
石化製品
熱
石油=資源
超重質油・オイルサンド・
シェールオイル等の
資源賦存量
87年
※非在来型石油資源
3.0
原油の資源賦存量
2.0
高付加価値製品 アスファルト
としての利用(一例)
2011年末資源量÷
2011石油供給量
(約0.032兆バレル)
1.0
※在来型石油資源(コンデンセート含む)
44年
確認可採埋蔵量
経済的・技術的に生産可能と
評価される資源量
53年
0.0
潤滑油
2011年末時点の石油資源量
計 約200年
(出所)IEA World Energy Outlook 2012。可採年数は石油連盟にて計算
3
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(1)国民の安全・安心を守るエネルギーセキュリティの強化 ①
石油産業の目指す方向
石油産業政策への提言
 中東産油国との更なる関係強化に取り組み
ます。
 シェールオイル革命や非在来型原油の供給
増加などを踏まえ、原油調達の多様化・分散
化を進めます。
 官民一体での資源外交、産油国との共同
備蓄などの強化が重要。
原油生産量の見通し(2011年と2035年の比較)
 石油需要の増加が見込まれるアジアの新興
国に対し、将来の市場参入を見据えた石油
備蓄協力の可能性の検討。
石油共同備蓄の事例
百万バレル/年
100
93.3
90
80
70
83.8
1.0
2.2
80.6
+240%
+191%
3.4
シェールオイル
6.4
超重質油※2
+4%
83.5
原油(在来型)※1
変化率
(2011年→2035年)
600
2011
年
(出所)経産省 独立行政法人評価委員会 資源分科会
石油天然ガス・金属鉱物資源機構部会 2013.6.20
2035
年
※1 コンデンセートを含む
※2 オイルサンド、オリノコタール
(出所) IEA World Energy Outlook 2012 (New Policies Scenario)より石油連盟作成
 主要な産油国へ国内タンクを貸与する(平時は商業利用)
 緊急時には、備蓄原油の優先供給を受けることで、
4
エネルギーセキュリティ向上に資する
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(1)国民の安全・安心を守るエネルギーセキュリティの強化 ②
石油産業の目指す方向
石油産業政策への提言
 新たな大規模災害※の減災対策として、BCP
の作成や施設整備を進め、分散型・自立型
エネルギーである「石油」の災害対応力を
一層強化します。 ※首都直下・南海トラフ地震
 内需減少等で維持困難な石油サプライチェー
ン(精製〜SS・需要家までの)について、
①地域の供給拠点として必要な油槽所を維持
します。
②SSネットワークの維持にも官民一体となっ
て取り組みます。
 石油サプライチェーンの維持にあたり、災害
対応力強化も念頭においた政策支援の強化。
 政府として、各省庁(防衛、国土交通、警察、消
防、等)が一体となった支援体制作りが必要。
 SS過疎地対策は、最終消費者への安定供
給確保のため、社会政策の観点からも取り
組む必要。
 国家製品備蓄を拡充する場合には、遊休資
産(タンク等)の活用と、石油火力燃料※の国
家備蓄の開始。 ※電力用原油・重油
石油の災害対応力強化策の事例
情報収集
体制整備
出荷基地の
災害対応化
耐震・液状化
対策
BCPの作成
●主要出荷基地への通信・連絡手段の確保・強化
●災害時情報収集システムの構築 等
●電気設備の防水対策・緊急用電源の配備
●ドラム出荷設備の維持・強化 等
防水扉を設置したポンプ設備
津波対策のため高所に移設した出荷設備
●製油所の製品タンク・桟橋等の耐震・液状化対策
(地盤改良・護岸強化等)
●事業継続計画(BCP)を作成し、「ソフト」と「ハード
(設備対策)」の両面で災害時の出荷体制を確保
ドラム缶出荷設備
出荷基地に設置した緊急用電源
5
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(1)国民の安全・安心を守るエネルギーセキュリティの強化 ③
石油産業政策への提言
石油産業の目指す方向
 緊急時対応を念頭に置いた石油利用
システム・機器の導入について、地方
自治体・ユーザーへの働きかけを強化
します。
 災害発生時を考慮し、病院や学校などへ石油利用
システム・機器の導入に対する政策支援の強化。
 災害発生初期の混乱回避のため、最終需要家へ
の燃料備蓄の働きかけが重要。
緊急時対応をふまえた学校への石油機器設置モデル
③屋外スペース(灯油貯蔵)
FF式温風暖房システム
①体育館
ホームタンク
②教室等
地下タンク
③屋外スペース(灯油貯蔵)
床暖房システム
給湯
高効率
給湯器
(連結型)
非常用
発電機
燃料→
灯油
タンク
(蓄電池)
高効率温水
ボイラー
石油ストーブ
煮炊きバーナー
(給湯器)
リモコン(台所・浴室)
商用
電源
(100V) 電源ユニット
遠赤外線暖房方式
自立防災型
エコフィール
停電時も灯油と
停電時も灯油と
蓄電池で給湯可能
蓄電池で給湯可能
自立防災型高効率給湯器
6
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(2)石油産業の成長戦略 ①
石油産業の目指す方向
石油産業政策への提言
 石油資源の有効利用・高度利用に徹底的に取り
組みます。
◇エネルギーと石化製品・潤滑油など高付加価値製品への生産シフト
◇省エネ、重質残渣の有効利用、特殊原油の処理等
 国際競争力強化に向けた製油所・コンビナートの
構造改善に取り組みます。
 国際競争力強化に向けた 製油所・コ
ンビナートの構造改善を進める取組み
への政策支援の強化。
 構造改善に資する事業再編を促進す
るための税制等の見直し。
 製油所の保安・安全体制を強化します。
(石油連盟にて自主行動計画を作成)
製油所・コンビナート構造改善のイメージ
(出所)総合資源エネルギー調査会 第4回基本政策分科会
7
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(2)石油産業の成長戦略 ②
石油産業の目指す方向
石油産業政策への提言
 高付加価値製品の輸出拡大やアジア新興国
への市場参入など本格的な海外展開を目指
します。
 消費者が求めるエネルギーを供給する総合
エネルギー産業化への取り組みを進め、石油
コア事業を強化することで、石油の安定供給
を図ります。
総合エネルギー産業への取組みイメージ
電 力
発電事業
石 油
ガ ス
油田開発
ガス田開発
(石油・ガス・石炭
・再生可能エネルギー)
電力卸売
・小売
化 学
 アジア新興国等への市場参入に向けた
官民一体の取り組み。
海外展開の取組み事例
ベトナム・ニソンでの製油所新規建設
①ニソン経済区に新規製油所・石油化学工場を建設
(常圧蒸留装置能力:20万バレル/日)
②出資比率:出光興産35.1%、クウェート石油公社
35.1%、ペトロベトナム25.1%、三井化学4.7%
③2017年 商業運転開始予定
韓国でのパラキシレン生産(装置新増設) ※原料の一部は国内より輸出
①運転中(2013年1月商業運転開始)
石油精製・元売
コア事業
 コスモ石油・ヒュンダイオイルバンク(韓国)
 能力80万トン/年をデサン製油所に建設
ガス卸売
・小売
基礎製品
高機能製品
(パラキシレン・
プロピレン等)
(液晶用フィルム・
有機EL等)
②建設中(2014年8月運転開始予定)
 JX日鉱日石エネルギー・SKグローバルケミカル(韓国)
 能力100万トン/年をウルサン石油化学工場に建設中
③検討中(基本覚書締結済)
 昭和シェル石油・太陽石油・GS-Caltex(韓国)
 能力100万トン/年を麗水市に建設検討中
デサン製油所に完成した
パラキシレン製造装置
(出所)コスモ石油HP
8
石油産業の目指す方向と石油産業政策への提言
(3)環境対策の推進
石油産業政策への提言
石油産業の目指す方向
 石油製品のライフサイクル全体
(製造・消費段階)のCO2削減対
策に積極的に取り組みます。
◇低炭素社会実行計画の確実な達成
◇持続可能性に配慮したバイオ燃料の着実な導入
◇高効率石油利用機器の導入拡大
 2020年以降の地球温暖化対策目標は、実現可能性を
踏まえて目標を設定。
 バイオ燃料の利用にあたっては、
①食料競合などの課題の多い第一世代から、持続可能
性に優れた第二世代の利用へのシフト
② 「数値ありき」の目標ではなく、原料確保や生産技術
の開発動向等を踏まえた目標設定
※ 欧州は第一世代バイオ燃料に関しては慎重になっている
石油業界の省エネ・バイオ燃料に関する取り組み
(1)製油所の省エネルギー対策
(2)バイオ燃料の利用(現在の取り組み)
2012年度までの取り組み(自主行動計画)
目標:エネルギー消費原単位の90年度比13%改善
(2008~12年度の5ヵ年平均)
実績:90年度比15%改善し目標達成
2020年度に向けた取り組み(低炭素社会実行計画)
 2007年度よりバイオガソリン(バイオETBE配合)の導入を開始
 エネルギー供給構造高度化法で示された目標量である2017年度
原油換算50万KL*4の着実な導入に向けた取り組みを推進
*4 約130万tCO2の貢献
目標:2010年度以降の省エネ対策により、2020年度において
原油換算53万klの省エネ対策量を達成*1,2,3
*1 約140万tCO2に相当
*2 政府の支援措置が必要な対策を含む
*3 想定を上回る需要変動や品質規制強化など業界の現況が大きく変化した場合、
目標の再検討を視野に入れる。2015年度には目標水準の中間評価を行う
9
【 参考 】 EUにおけるバイオ燃料政策見直しの動き(持続可能性基準)
【目的】 ① 土地利用変化による食料価格の高騰、GHG排出量の 増加に歯止めをかけるため
② 第一世代(穀物由来)から次世代バイオ燃料へのシフト
現行
改訂後
(2013.9.11 欧州議会採決)
第一世代(穀物由来)
バイオ燃料の制限
なし
2020年 10%目標のうち、
穀物由来燃料比率を6%に制限
サブ目標
なし
次世代バイオ2.5%
次世代バイオへの
インセンティブ
間接的土地利用変化*
(ILUC)
・廃食油、獣脂、残さ物、非食用セルロース
次世代バイオ燃料
は2倍カウント
(廃棄物、残さ物、非食用セルロース)
・藻類、産業廃棄バイオマス、麦わらなどは
は2倍カウント
4倍カウント
考慮せず
考慮する
*バイオ燃料用作物の生産によって、これまで生産されていた作物が、別の土地で生産されることに伴って生じる影響のこと
(例:エタノール原料のサトウキビ増産→大豆畑を転換→大豆畑を開墾→森林伐採)
10
新たなエネルギー政策への提言
(3)エネルギーシステム改革の推進(エネルギー間の公平な競争促進)
 国民負担の軽減(消費者利益の拡大)のため、総合エネルギー産業化に向けて、送
配電線網の強化を含む電力システム改革の着実な実行、ガスシステム改革の早期検
討・実施を行い、公平な競争を促進する環境整備が必要です。
 ガスパイプライン網に加え、LNGターミナル・LNGタンクの第三者の公平な利用(オー
プンアクセス)を促進し、多様な事業者間の競争を促進することが重要です。
 猛暑等による電力需給の大幅な変動、再生可能エネルギー増加による出力変動への
バックアップ電源として、供給弾力性に優れた「石油火力」を位置付けることが必要です。
第3次EUガス指令(2009年)の概要
〜オープンアクセス、輸送部門の分離について〜
東日本大震災以降の火力発電燃料消費
火力燃料消費(千KL・千ton)
6,000
改革前のガス事業者
生産・輸入
基幹パイプ
ライン・
輸送
LNGターミナル
LNGタンク等
最終需要家
向けパイプ 配 送
ライン等
垂直統合型
ガス事業者
①ガスパイプライン・LNGター
ミナル・LNGタンク等は、原則、
第3者に公平な条件で開放
(オープンアクセス) ※1
5,000
②輸送部門の分離を推進
(所有分離・機能分離など)※2
2,000
2,500
LNG需要1.4倍
2,000
4,000
3,000
石油
(原油+重油)
1,500
石炭
石油需要3.1倍
1,000
新規事業者の参入促進
原子力発電量(千万kWh)
0
1,000
500
0
LNG
原子力
小売
※1 配送部門の設備もオープンアクセスの対象とすることを
定めている
※2 配送部門についても垂直統合型事業者からの機能分離
等を定めている
(出所)電力調査統計
(注)石油・LNG需要の倍数は何れも2011年3月対比
11
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