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本当に子どもを愛するなら - 公益財団法人タカタ財団

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本当に子どもを愛するなら - 公益財団法人タカタ財団
効果の高いチャイルドシート着用促進コンテンツ
「本当に子どもを愛するなら」の
作成・効果評価・社会周知
― 平成 26 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ―
ISSN 2185-8950
研究代表者
北村 光司
研究実施メンバー
研究代表者
産業技術総合研究所 デジタルヒューマン工学研究センター
主任研究員
北村光司
報告書概要
平成26年度チャイルドシート使用状況の全国調査によると,6歳未満全体の子どものチャイル
ドシートの使用率は61.9%であり,未だ40%の子どもの命が危険にさらされている。チャイルド
シートの保護者教育には,正しい知識の普及と同時に交通事故の怖さを伝え,チャイルドシート
使用に対する心理的バリアを乗り越えさせる必要があるが,未だ,効果的な教育方法は確立され
ていない。
本研究では,チャイルドシート着用を促進する効果の高い教育コンテンツを作成し,社会に普
及させることを目的とし,平成25年度は、1)2種類のWeb調査,2)調査結果に基づく教育コン
テンツの作成,3)子どもの行動観察研究を実施した。今年度は、昨年度の調査結果をふまえて、
啓発コンテンツの開発を行い、その効果評価を行うとともに、啓発コンテンツを使用した啓発活
動を実施した。その結果,開発した啓発コンテンツには、チャイルドシートなしで事故が起きた
場合に子どもに起こる傷害の重症度の認知レベルや,保護者のチャイルドシート使用に対する自
己効力感を高める効果があることが明らかとなった。また、衝突実験映像との比較では、開発し
た啓発コンテンツの方が、重症度の認知や自己効力感を高める効果があることが示唆された。ま
た、開発した啓発コンテンツを使った啓発活動を1件実施、来年度実施する具体的な計画が2件、
その他、今後の連携を見据えた関係構築を行った。
1
目次
効果の高いチャイルドシート着用促進コンテンツ「本当に子どもを愛するなら」
の作成・効果評価・社会周知
第1章
はじめに .......................................................................................................... 3
1.1
社会背景.............................................................................................................. 3
1.2
本研究の目的 ...................................................................................................... 3
第2章
啓発コンテンツの作成 ..................................................................................... 4
第3章
保護者の行動・意識の実態調査及び啓発コンテンツの評価............................ 6
3.1
本研究の目的 ...................................................................................................... 6
3.2
調査対象.............................................................................................................. 6
3.3
調査項目.............................................................................................................. 6
3.4
自己効力感の調査方法 ........................................................................................ 7
3.5
調査結果.............................................................................................................. 8
3.6
調査結果に関する考察・まとめ ........................................................................ 34
第4章
啓発コンテンツを使った教育の実施 ............................................................. 37
4.1
今年度の実施状況 ............................................................................................. 37
4.2
今後の実施計画 ................................................................................................. 38
第5章
本研究の結論と今後の展開 ............................................................................ 39
参考文献 ........................................................................................................................ 39
2
第1章
1.1
はじめに
社会背景
平成24年度の自動車乗車中・年齢別死傷者数を見てみると、6歳以下の死傷者数は11,027人(死
者:18人,負傷者:11,009人)であり1、昨年度の11,002人から25人増加しており、自動車事故
が発生したとしても、死亡したり重傷な怪我を負わないためには、チャイルドシートを適切に着
用することが重要である。一方、現在、道路交通法によって、6歳未満の子どもは「チャイルド
シートの使用」が義務づけられているにも関わらず、警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)
が、平成26年4月20日から4月30日に実施したチャイルドシート使用状況の全国調査の結果によ
ると、6歳未満の子どものチャイルドシートの使用率は61.9%であり、昨年よりも微増しており
ものの、未だ40%の子どもの命が危険にさらされている2。現在、チャイルドシート着用を向上
させるため、企業や行政が主体となり、啓発運動、取り付けチェック、無料貸し出し、補助金制
度など、さまざまな活動が展開されている。しかしながら、未だ十分な効果は出ておらず、過去
10年以上チャイルドシートの着用率はほぼ横ばい状態にあり、子どもの年齢が上がるにつれて着
用率が低くなる傾向も変わっていない。
保護者がチャイルドシートを使用しない理由には、「かわいそうだから」、「赤ちゃんが嫌が
るから」、「同乗者が抱いていてくれるから」などが挙げられている3。また、「チャイルドシ
ートを着用している時と、着用していない時とでは、それほど死亡率は変わらない」、「近所に
買い物などで出かける程度であれば、チャイルドシートを装着しなくてもかまわない」など、保
護者の知識や認識レベルも、チャイルドシート着用率に深く関わっていると言われている4。日
本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会が運営する「自動車乗車中の子どもの安全推
進合同委員会」によると、チャイルドシート使用が普及しない一因として、わが国には、米国の
ようなチャイルドシート着用推進・装着指導の公認インストラクター教育制度がなく、米国と比
べると、保護者がチャイルドシートの重要性を学ぶ機会が少ないこと、産婦人科・小児科内にチ
ャイルドシートに対する知識がある医療従事者が非常に少ないことを指摘している5。保護者が、
チャイルドシートについて正しい知識を学ぶ機会を増やし、チャイルドシート着用を促す教育を
継続的に展開していくことが重要である。
1.2
本研究の目的
チャイルドシートの保護者教育には、正しい知識の普及と同時に交通事故の怖さを伝え、「子
どもがかわいそう」、「面倒だから」などの、チャイルドシート使用に対する心理的バリアを乗
り越えさせる必要があるが、未だ、効果的な教育方法は確立されていない。本研究では、チャイ
ルドシートの着用を促進する効果の高い教育コンテンツを作成し、社会に普及させることである。
平成25年度は、チャイルドシート使用に関する保護者の行動・意識の実態調査を実施し、チャイ
3
ルドシートの法律、子どもの身長と着用義務の関係などの知識レベル、交通事故の怖さに対する
認識レベル、子どもが泣く、かわいそうに感じる、家族から同意が得られないといったさまざま
な状況下でのチャイルドシート使用に対するに自己効力感(できる感:Self-efficacy)などを把握
した。平成26年度は、昨年度の調査結果を元に、啓発コンテンツを開発し、そのコンテンツの効
果評価を行う。また、開発した啓発コンテンツを用いた啓発活動の実施や、実施に向けた関連機
関・団体等との関係作り・連携を行う。
第2章 啓発コンテンツの作成
昨年度の調査では、主に以下の点が明らかとなった。

約40%の保護者は、チャイルドシートに乗せた時に子どもが嫌がることを経験したこ
とがある。

子どもが嫌がった時に、約30%の保護者はチャイルドシートから子どもを降ろしてい
る

衝突実験映像には、チャイルドシートを使用せずに、事故が起きた場合の傷害の重
症度の認知と、チャイルドシート使用に対する自己効力感を高める効果がある
これらの点に着目し、昨年度は図1に示すアニメーションを作成した。
図 1 啓発用映像
アニメーションは、チャイルドシートの着用を子どもが嫌がったために、チャイルドシートか
ら降ろして自動車を運転していたところ、事故に遭った場合を再現したものとなっている。アニ
メーションの流れを図1に示した番号に沿って以下に示す。
4
① 母親が子どもを後部座席のチャイルドシートに座らせる
② 子どもは、チャイルドシートに着座するのを嫌がる
③ 母親は、チャイルドシートから降りようとする子どもを、きちんと座らせようとする
④ 結局、チャイルドシートに座らせないまま発車
⑤ 父親が、子どもに大人しく座るように注意する
⑥ 父親が子どもに話しかけている時、母親が信号が赤に変わるのに気づく
⑦ 信号が赤のまま交差点に進入してしまう
⑧ 右側から来たトラックを避けようとハンドルをきる
⑨ トラックに衝突
⑩/⑪ チャイルドシートに座っていなかった子どもが、フロントガラスを突き破り飛び出
してくる。運転席と助手席に座っている両親のエアバックが作動する
⑫ 母親が、外に投げ出された子どもに駆け寄る
このアニメーションを中心に、従来の調査で分かっている事実や、昨年度の調査で明らかとな
った内容を含めた啓発コンテンツを開発した。図2に開発した啓発コンテンツを示す。
図 2 開発した啓発コンテンツ
開発した啓発コンテンツの流れは、以下の通りになっている。
① チャイルドシートの着用に関する法律の情報
② 実際の着用率の情報
③ 事故状況再現アニメーションにつなげるための問いかけ
5
④ 事故状況再現アニメーション
⑤ 子どもが嫌がることは普通であることを伝える情報
⑥ 抱っこでは傷害を防げないことを示す動画につなげるための問いかけ
⑦ ダミー人形を抱っこした状態で急ブレーキを掛けた様子の映像
⑧ 抱っこをしていた場合に起きた事故事例の紹介
⑨ 自分は大丈夫という楽観バイアスを解消する問いかけ
⑩ チャイルドシートの有無による事故時の死亡・重症に関する情報
⑪ チャイルドシートに乗せないことがかわいそうである、というメッセージ
このように、法律の情報や実情、実態にあった状況がもたらす結果、チャイルドシートを使う
ことの効果といった情報を2分弱の動画で見せるものとなっている。
第3章 保護者の行動・意識の実態調査及び啓発コンテンツ
の評価
3.1
本研究の目的
本調査では、チャイルドシートの法律、子どもの身長と着用義務の関係などの知識レベル、交
通事故の怖さに対する認識レベル、子どもが泣く、かわいそうに感じる、家族から同意が得られ
ないといったさまざまな状況下でのチャイルドシート使用に対するに自己効力感などを調査す
る。また、開発した啓発プログラムによる効果について検証する。
3.2
調査対象
6歳未満の子どもを持つ20-49歳の保護者(男女不問)で、車に子ども乗せて運転する頻度が
週に1回以上の人。
3.3
調査項目

チャイルドシートの着用状況

以前は着用していたが、今は着用しなくなった理由

使用しているチャイルドシートのタイプ

シートベルトでチャイルドシートを固定するタイプを使用している方:
チャイルドシートをしっかり取り付けられている自信があるか

チャイルドシートの入手方法

チャイルドシート着座に対する子どもの抵抗レベル(必ず嫌がる⇔まったく嫌がらない)
6

子どもが嫌がり始めた時期

子どもが嫌がった時にとる行動の種類

チャイルドシートに関する法律

チャイルドシートの設置場所

チャイルドシートなしで事故が起こった場合に起こる傷害の重症度(認知レベル)

啓発プログラムを視聴後のチャイルドシートなしで事故が起こった場合に起こる傷害の重
症度(認知レベル)

さまざまな状況下でのチャイルドシート使用に対する自己効力感

チャイルドシート未使用によるケガの経験
3.4
自己効力感の調査方法
自己効力感を調査するため、独立行政法人自動車事故対策機構から提供して頂いた2種類のチ
ャイルドシート衝突試験映像(図3)と、開発した啓発プログラムの映像との効果の比較を行っ
た。
【提供映像 1】
【提供映像 2】
図 3 チャイルドシート衝突実験映像
7
回答者は、無作為に「衝突実験映像を見る群」と「開発した啓発プログラムの映像を見る群」
に振り分けられる。すべての回答者は、どちらの映像を見るかに関わらず、傷害の重症度と自己
効力感に関する同じ質問に回答し、映像による効果を検証した。自己効力感の調査には、日常生
活でおこり得る8つのシチュエーションを提示し、各シチュエーションに遭遇した場合の、チャ
イルドシート使用に対する自信を10段階で評価してもらった(図4)。傷害の重症度については、
どちらの映像を見る群も、回答者は映像の前後に、チャイルドシートなしで事故が起こった場合
に子どもに生じる傷害の重症度の認知に対する質問に回答し、重症度の認知レベルの違いと映像
視聴前後の変化を比較した。また、この調査は昨年度行った調査と同様の内容とし、昨年度の調
査結果との比較も行う。
図4
3.5
自己効力感の質問例
調査結果
回答者数は、男性が501名、女性が507名の合計1008名であった。調査地域と回答者の人数を表
1に示す。
表 1 調査地域と回答者数の詳細
地域
人数
地域
人数
地域
人数
北海道
50
中部
202
四国
36
東北
75
近畿
137
九州
74
関東
368
中国
56
沖縄
10
回答者の年齢階級別人数を図5に示す。35-39歳が最も多く、次いで40-44歳、30-34歳であった。
また、回答者の同居の子どもの年齢階級別人数を図6に示す。2人以上子どもがいる場合は、全員
の年齢を回答してもらっているため、6歳以上の子どもも含まれている。子どもを自動車に乗せ
8
る頻度は、図7に示す通り、週に1~2回程度が約半数を占め、ほぼ毎日が約3割、週に3~4回程
度が約2割であった。
400
365
311
300
185
200
101
100
0
43
3
図5
800
700
600
年齢階級別人数
672
565
500
400
300
255
200
87
100
40
0
図 6 同居の子どもの年齢区分別人数
9
14
図 7 子どもを自動車に乗せる頻度別人数
チャイルドシートの着用状況に関する質問では、自動車に乗せる時、チャイルドシートを「必
ず着用させる」と回答した人が全体の71%(719名)でもっとも多く、次いで「ほとんどいつも
着用させる:13%(131名)」、「着用させることもあるが、着用させないことも多い:5.5%(55
名)」の順になった(図8)。
10
0%
20%
40%
131
ほとんどいつも着⽤する
着⽤することもあるが、
着⽤しないことのほうが多い
ほとんど着⽤しない
全く着⽤しない
以前は着⽤していたが、
今は着⽤していない
80%
719
必ず着⽤する
2回に1回は着⽤する
60%
18
55
30
18
37
図 8 チャイルドシートを着用する頻度
チャイルドシートの着用状況に関する質問の回答で、「以前は着用させていたが、今は着用さ
せていない」理由についてたずねたところ、「子どもが大きくなって、サイズが合わなくなった
から」がもっとも多く、次いで、「大人のシートベルトを着用し始めたから」、「子どもが着用
するのを嫌がり始めたから」、となった。「その他」の回答には、“ジュニアシートに変えたた
め”といった回答も見られたが、“チャイルドシートは場所を取るから”という回答も見られた。
チャイルドシートのタイプは、シートベルトで固定するタイプを使用している人が78%(789
名)、ISOFIXを使用している人が11%(115名)、両方を使っている人が5%(45名)、チャイ
ルドシートを持っていない人が6%(59名)であった(図9)。
11
チャイルドシート
を持っていない
59
6%
両⽅のタイプ
ISOFIX
115
45
5%
11%
シートベルトで固
定するタイプ
789
78%
図9
使用しているチャイルドシートのタイプ
シートベルトで固定するタイプを使用している人に、正しく、しっかり取り付けられている自
信があるかをたずねた質問では、69%(578名)が「自信がある」と回答し、残り31%(256)は、
「しっかり取り付けられているか不安である」と回答した。
チャイルドシートの入手方法は、「新規購入した」人が77%(779名)、「親族からもらった」
人が9%(86名)、「他人からもらった」人が8%(76名)、「中古を購入した」人が5%(52名)
であった。
子どもが、チャイルドシートを使用するのを嫌がるかをたずねた質問には、全体の5%が「必
ず嫌がる」と回答し、11%が「よく嫌がる」と回答した。また、28%が「たまには嫌がる」と回
答した。このことから、44%が“嫌がる”ことが分かる。(図10)。
また、子どもの年齢とチャイルドシートの嫌がりの関係を把握するために、嫌がりに関する回
答ごとに、子どもの年齢が占める割合を整理したグラフを図11に示す。「必ず嫌がる」は、2歳
の割合が最も高く、次いで5歳が高い。「よく嫌がる」は、1歳の割合が特に高い。「たまには嫌
がる」、「ほとんど嫌がらない」は、6歳以外の年齢はほぼ同程度の割合である。「まったく嫌
がらない」は、1歳の割合が最も低く、その後は成長するとともに割合が高くなっている。これ
らのことから、1,2歳児は嫌がる傾向が強く、3,4歳児になるとある程度嫌がりが落ち着いてく
るが、5歳児は“嫌がる子ども”と“嫌がらない子ども”に二極化することが分かる。
12
0%
5%
10%
52
必ず嫌がる
よく嫌がる
15%
20%
25%
107 11%
282 28%
ほとんど嫌がらない
188 19%
まったく嫌がらない
チャイルドシートを持っていない
図 10
35%
5%
たまには嫌がる
チャイルドシートを着⽤していない
30%
36 3%
321
32%
22 2%
チャイルドシートの嫌がり状況
図 11
年齢別の嫌がりの傾向
「チャイルドシートに座らせて、ベルトをしめずに運転することがありますか?」という質問
に対しては、28%の回答者が「結構ある」(71名)、「時々ある」(208名)と回答(図12)し
ており、チャイルドシートに座らせていても、ベルトを締めないという、チャイルドシート本来
の機能が発揮されない状態で使用している状況が多くいることが分かる。
13
結構ある
71
7%
時々ある
208
絶対ない
21%
(必ずベルトを
しめる)
729
72%
図 12 ベルトをせずにチャイルドシートに座らせる頻度
子どもが、チャイルドシートに着座することを嫌がった時に取る行動に一番近いものをたずね
た質問では、「いくら泣いても、チャイルドシートに乗せ続ける」が58.8%(593名)でもっと
も多く、次いで、「少し様子を見て(10分程度)、それでも嫌がったら、チャイルドシートから
降ろして発車する」が15.4%(155名)、「泣きやむまで発車させない」が8.6%(87名)、「嫌
がったら、かわいそうなので、すぐにチャイルドシートからおろして発車する(誰かに抱っこし
てもらう)」が7.9%(80名)、「いつも嫌がるので、仕方なく、チャイルドシートには乗せて
いない」が4.8%(48名)となった(図13)。「その他」の回答には、“DVDをかける”や“お菓子
をあげる”といった着座させるための対処もあるが、中には、“いつも乗せていたが運転中に抜け
出して運転席に来たりするので余計に危険だと思って乗せなくなった”など、適切な着用ができ
ていなことが問題であるにも関わらず、使用しないという対処をしてしまう回答も見られた。
14
0
200
いくら泣いても、いつもチャイルドシート
に乗せ続ける
400
600
58.8%
8.6%
泣きやむまで発⾞させない
少し様⼦をみて(10分程度)、それでも
嫌がったら、チャイルドシートから降ろし
て発⾞する
15.5%
嫌がったら、かわいそうなので、すぐに
チャイルドシートから降ろして発⾞する
(誰かに抱っこしてもらう)
8%
いつも嫌がるので、仕⽅なく、
いつもチャイルドシートには乗せていない
4.8%
その他
4.5%
図 13 チャイルドシートに着座することを嫌がった時に取る行動の種類
次に、チャイルドシート着用が法律で義務付けられている年齢に関してたずねたところ、「6
歳未満」と回答している人が全体の34%でもっとも多く、約8%の回答者は3~5歳未満と、実際
に義務化されている年齢も低い年齢までが義務であると考えている人がいることが分かった(図
14)。また、「分らない」と回答している人が15.4%(155名)もおり、法律の認知も未だ低い
ことが分かる。
15
3歳未満
30
4歳未満
21
5歳未満
31
6歳未満
341
7歳未満
213
8歳未満
30
9歳未満
11
10歳未満
41
11歳未満
10
12歳未満
96
13歳未満
29
分からない
155
0
100
図 14
200
300
400
着用義務年齢に関する理解
子どもの年齢が6歳に達しても、身長が140㎝になるまでは、チャイルドシートの使用が推奨さ
れていることを知っていたかをたずねた質問に対し、78%の回答者が「知らなかった」と答え、
子どもの安全のためにチャイルドシートを使うことに関する情報の発信がまだ不十分であるこ
とが分かる。
チャイルドシートの設置場所に関する質問には、運転手側の後部座席に設置している人が、全
体の45.5%(459人)、助手席側の後部座席に設置している人が42.1%(424人)、助手席に設置
している人が7.3%(74人)、後部座席の真ん中に設置している人が4%(40人)となった。何ら
かの理由がない限り取り付けるべきではないとされている助手席に設置している人もいること
から、設置場所の情報発信もする必要がうかがえる。
ここからは、チャイルドシートなしで事故が起こった場合の傷害の重症度に関する認知とチャ
イルドシート使用に対する自己効力感を、「開発した啓発用映像を見る群」と「衝突実験映像を
見る群」とを比較した結果について述べる。以下の比較では、データに対応がある場合はWilcoxon
の符号順位検定を行い、対応が無い場合はMann-WhitneyのU検定を行って検証する。なお、本
検証の有意水準は5%とする。
まず、「もし、チャイルドシートなしで、事故が起こった場合におこる傷害の重症度は、どの
程度になると思いますか?1が全く問題ない、10が致命的としてお答ください」という質問に対
する全体的傾向を見るため、実験映像を見る前の、両群の認知レベルを合算した結果を図15に示
す。全体の46%が「10:致命的」と回答した。10段階評価で、平均認知度は8.5であった。しか
16
し、重症度認知レベルが中央の5以下を回答した人が約10%もおり、重症度に対する認識が低い
ことが分かる。
500
464
450
400
350
件数
300
250
182
200
150
100
50
7
3
12
16
1
2
3
4
0
全く問題ない
66
52
5
6
7
重症度認知レベル
図 15
117
89
8
9
10
致命的
傷害の重症度の認知レベル
また、映像を見る前に、「開発した啓発用映像を見る群」と「衝突実験映像を見る群」で、傷
害の重症度の認知に対する違いを比較し、傷害の重症度の認知レベルに差がないかを、
Mann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間に差はないことが分かった(p=0.8437)(図
16)。
17
250
啓発⽤映像を⾒る群
200
衝突実験映像を⾒る群
150
100
50
0
1
全く問題ない
2
3
4
5
6
7
8
9
10
致命的
図 16 映像を見る前の各群の傷害の重症度の認知レベル
次に各映像を見た前後で、傷害の重症度の認知レベルに差があるかをWilcoxonの符号順位検定
で確認した。啓発用の映像を見る前後では有意な差があることが分かった(p=0.000)(図17)。
また、衝突実験映像を見る前後でも有意な差があることが分かった(p=0.000)(図18)。
次に、啓発用の映像を見た後と、衝突実験映像を見た後で、傷害の重症度の認知レベルに差が
あるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、p値は有意水準の5%をやや上回る結果とな
り、今回の調査では有意な差があるとは言えない結果となった(p=0.05395)(図19)。
18
350
啓発⽤映像を⾒る前
300
啓発⽤映像を⾒た後
250
200
150
100
50
0
1
2
全く問題ない
3
4
5
6
7
8
9
10
致命的
図 17 啓発用映像を見る前後の傷害の重症度の認知レベル
350
衝突実験映像を⾒る前
300
衝突実験映像を⾒た後
250
200
150
100
50
0
1
2
全く問題ない
3
4
5
6
7
8
図 18 衝突実験映像を見る前後の傷害の重症度の認知レベル
19
9
10
致命的
350
啓発⽤映像を⾒た後
300
衝突実験映像を⾒た後
250
200
150
100
50
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
致命的
全く問題ない
図 19 啓発用映像を見た後と衝突実験映像を見た後の傷害の重症度の認知レベル
昨年度の調査では、映像を見ない群と今までに啓発に使われてきた映像を見る群に分け、傷害
の重症度の認知レベルの調査を行った。その際、今までに啓発に使われてきた映像には、今年度
の調査に使用した衝突実験映像同じ2種類の映像を使用したため、昨年度の調査データと今年度
の調査データを比較することで、啓発動画の効果を別の群と比較することができる。具体的には、
昨年度の衝突実験映像を見た群と今年度の啓発映像を見た群との認知レベルの変化の比較を行
う。
まず、両群の映像を見る前の認知レベルに差が無いことをMann-WhitneyのU検定で確認した
ところ、2群間には差が無いことを確認した(p=0.6368)(図20)。次に、両群の映像を見た後
の認知レベルに差があるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、有意な差があること確
認した(p=0.004794)(図21)。今年度開発した啓発映像は、衝突実験映像に比べると傷害の
重症度の認知レベルを上げる一定の効果があると考えられる。
20
250
昨年の2つの衝突実験映像を⾒る前
今年の啓発⽤映像を⾒る前
200
150
100
50
0
1
2
全く問題ない
3
4
5
6
7
8
9
10
致命的
図 20 昨年度の衝突実験映像と今年度の啓発用映像を見る前の傷害の重症度の認知レベル
350
昨年の2つの衝突実験映像を⾒た後
300
今年の啓発⽤映像を⾒た後
250
200
150
100
50
0
1
2
3
4
5
6
全く問題ない
7
8
9
10
致命的
図 21 昨年度の衝突実験映像と今年度の啓発用映像を見た後の傷害の重症度の認知レベル
21
図3で示した2種類の映像を今までに見たことがあったかをたずねたところ、ダミーが乗ってい
て車が衝突する映像(図1・下)を見たことある人は26.2%、大人がダミー人形を抱っこして急ブ
レーキをかけた時の映像(図1・上)を見たことはある人は6.6%、両方の映像を見たことがある
人は6.8%、どちらの映像も見たことがない人が60.3%であった(図22)。このことから、チャイ
ルドシートの映像による啓発を受ける機会があまりないことが分かり、その機会や仕組み作りも
検討する必要があると考えられる。
0
200
400
ダミーがのっていて⾞が衝突
[値]
する映像はみたことがある
26.2%
⼤⼈が⾚ちゃんを抱っこして
急ブレーキをかけた時の映像
はみたことがある
両⽅⾒たことがある
600
800
[値]
6.6%
[値]
6.8%
[値]
どちらも⾒たことがない
60.3%
図 22 見たことのある衝突実験映像の種類
次に、日常生活でおこり得る8つの状況に対し、各状況下においてチャイルドシートを使用す
る自信(自己効力感)について述べる。それぞれ、全体の自己効力感と、啓発用映像を見た群と
衝突実験映像を見た群との自己効力感の比較について述べる。
状況1:“近所のスーパーまで買い物へ:子どもの機嫌が悪く、大泣きしています。”
全体の46%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答し
た人が全体の68.1%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の5.3%であった。7割近
い人の自己効力感が高いことから、多くの人は近所のスーパーまで買い物へ行く際に、子どもが
大泣きしていてもチャイルドシートを使用することに対する自己効力感が高いことが分かる。ま
た、啓発用映像を見た群と衝突実験映像を見た群で、自己効力感に差があるかをMann-Whitney
のU検定で確認したところ、2群間に有意差が見られた(p=0.03637)(図23)。
22
500
400
300
200
100
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
300
啓発⽤映像を⾒た群
250
衝突実験映像を⾒た群
200
150
100
50
0
1
2
3
4
5
絶対できないと思う
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 23 自己効力感レベル(状況 1)
状況2:“近所のスーパーまで買い物へ:家族(祖父母、配偶者、親族)が、「チャイルドシー
トに乗せるのはかわいそう。自分が赤ちゃんを抱いているから」と言っています。”
全体の40.6%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の61.7%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の7.7%であった。6割
近い人の自己効力感が高いことから、多くの人は近所のスーパーまで買い物へ行く際に、家族が
子どもを抱いているからチャイルドシートに乗せるのをやめようと言っても、チャイルドシート
を使用することに対する自己効力感が高いことが分かる。また、啓発用映像を見た群と衝突実験
23
映像を見た群で、自己効力感に差があるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間
に有意差が見られた(p= 0.0183)(図24)。
500
400
300
200
100
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
250
啓発⽤映像を⾒た群
200
衝突実験映像を⾒た群
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 24 自己効力感レベル(状況 2)
状況3:“近所のスーパーまで買い物へ:駐車場に来たとき、昨日、チャイルドシートを取り
外したのを思い出した。もう一度、家に戻らなければチャイルドシートはない。”
全体の36.5%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の53.2%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の11.7%であった。5
割程度の人の自己効力感が高いことから、駐車場に来てからチャイルドシートを取りに戻らなけ
ればならない場合、チャイルドシートを使用することはやや難しくなることが分かった。また、
24
啓発用映像を見た群と衝突実験映像を見た群で、自己効力感に差があるかをMann-WhitneyのU
検定で確認したところ、2群間に有意差は見られなかった(p= 0.08773)(図25)。このことから、
啓発用映像では、衝突実験映像よりも、駐車場から家までチャイルドシートを取りに行く面倒さ
を感じる意識を変容させる効果はないことが分かった。
400
350
300
250
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
200
啓発⽤映像を⾒た群
衝突実験映像を⾒た群
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 25 自己効力感レベル(状況 3)
状況4:“自分の実家に戻ったとき、親に車で迎えにきてもらった。その車にチャイルドシー
トがない。あなたは、そのような場合でも、迎えに来てくれた親の車には乗らず、チャイルドシ
ートのある車に乗せて移動することができると思う。”
25
全体の22.5%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の35.8%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の25.6%であった。状
況1~3と比べて、自己効力感が高い人の割合が低く、また自己効力感が低い人の割合が高い。特
に、「絶対にできないと思う」と回答した人数が、「必ずできると思う」と回答した人数の次に
多いことが特徴的である。これらのことから、親に迎えに来てもらったという状況で、それを拒
否してまでチャイルドシートを使用することは難しいと感じていることが分かった。つまり、孫
を持つ祖父母の世代への啓発や、一時的にチャイルドシートをレンタルできる仕組みなどが必要
であると考えられる。また、啓発用映像を見た群と衝突実験映像を見た群で、自己効力感に差が
あるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間に有意差は見られなかった(p=
0.08659)(図26)。このことから、啓発用映像では、衝突実験映像よりも、親に迎えに来てもら
った状況で、それを拒否までしてチャイルドシートを使用しようと感じさせる効果はないことが
分かった。
250
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
26
6
7
8
9
10
必ずできると思う
140
啓発⽤映像を⾒た群
120
衝突実験映像を⾒た群
100
80
60
40
20
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 26 自己効力感レベル(状況 4)
状況5:“配偶者の実家に帰省した時、義理のお父さん・お母さんに車で迎えにきてもらった。
その車には、チャイルドシートがない。あなたは、そのような場合でも、迎えに来てくれた親の
車には乗らず、チャイルドシートのある車に乗せて移動することができると思う。”
全体の21.0%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の33.6%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の29.6%であった。状
況4と類似した傾向となっており、自己効力感が高い人の割合が低く、また自己効力感が低い人
の割合が高い。「絶対にできないと思う」と回答した人数が、「必ずできると思う」と回答した
人数の次に多い特徴も状況4と同様である。これらのことから、配偶者の親に迎えに来てもらっ
たという状況で、それを拒否してまでチャイルドシートを使用することは難しいと感じているこ
とが分かった。状況4と同様に、孫を持つ祖父母の世代への啓発や、一時的にチャイルドシート
をレンタルできる仕組みなどが必要であると考えられる。また、啓発用映像を見た群と衝突実験
映像を見た群で、自己効力感に差があるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間
に有意差が見られた(p= 0.0328)(図27)。状況4の結果も考慮すると、有意差が見られたもの
の、啓発用映像に特に有効な効果があるかは、さらに検討する必要があると考えられる。
27
250
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
120
啓発⽤映像を⾒た群
100
衝突実験映像を⾒た群
80
60
40
20
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 27 自己効力感レベル(状況 5)
状況6:“友達が車で迎えに来てくれたが、その車には、自分の子ども用のチャイルドシート
がない。”
全体の21.3%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の36.3%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の27.5%であった。状
況4, 5と類似した傾向となっており、自己効力感が高い人の割合が低く、また自己効力感が低い
人の割合が高い。「絶対にできないと思う」と回答した人数が、「必ずできると思う」と回答し
た人数の次に多い特徴も状況4, 5と同様である。これらのことから、自分の親や配偶者の親だけ
でなく、友達に迎えに来てもらったという状況で、それを拒否してまでチャイルドシートを使用
することは難しいと感じていることが分かった。チャイルドシートを使用する必要がある子ども
28
を持つ人だけでなく、そのような子どもを乗せる可能性がある人への啓発も必要であると考えら
れる。また、その機会が稀な人もいると思われることから、チャイルドシートをレンタルできる
仕組みも必要であると考えられる。また、啓発用映像を見た群と衝突実験映像を見た群で、自己
効力感に差があるかをMann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間に有意差が見られた
(p= 0.03654)(図28)。状況4の結果も考慮して、啓発用映像に特に有効な効果があるかは、さ
らに検討する必要があると考えられる。
250
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
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7
8
9
10
必ずできると思う
120
啓発⽤映像を⾒た群
100
衝突実験映像を⾒た群
80
60
40
20
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 28 自己効力感レベル(状況 6)
状況7:“チャイルドシートが小さくなったので、チャイルドシートを外した。まだ、新しいシ
ートは買っていない。あなたは、チャイルドシートを購入するまで、子どもを車にのせないで生
活することができると思う。”
29
全体の25.3%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の39.2%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の23.8%であった。状
況4~6と類似した傾向となっており、自己効力感が高い人の割合が低く、また自己効力感が低い
人の割合が高い。「絶対にできないと思う」と回答した人数が、「必ずできると思う」と回答し
た人数の次に多い特徴も状況4~6と同様である。これらのことから、チャイルドシートを使うこ
とが難しくなった場合に、新しいチャイルドシートを購入するまで車に乗せないで生活すること
は難しいと感じていることが分かった。チャイルドシートを買い替えるタイミングを早めに知ら
せる仕組みや、買い替えまでの間に一時的に使用可能なレンタルの仕組みなどが必要であると考
えられる。また、啓発用映像を見た群と衝突実験映像を見た群で、自己効力感に差があるかを
Mann-WhitneyのU検定で確認したところ、2群間に有意差が見られた(p= 0.01382)(図29)。
状況4の結果も考慮して、啓発用映像に特に有効な効果があるかは、さらに検討する必要がある
と考えられる。
300
250
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
30
6
7
8
9
10
必ずできると思う
160
140
啓発⽤映像を⾒た群
120
衝突実験映像を⾒た群
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80
60
40
20
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 29 自己効力感レベル(状況 7)
状況8:“今、子どもの機嫌がとても良いが、あなたは、子どもがチャイルドシートに乗るのが
嫌いなことを知っている。家までは、車で10分程度。あなたは、子どもの機嫌が悪くなる可能
性が高い場合でも、子どもをチャイルドシートに乗せて帰宅することができると思う。”
全体の47.2%が「必ずできると思う」と回答した。また、特に自己効力感が高い8~10を回答
した人が全体の66.1%で、特に自己効力感が低い1~3を回答した人が全体の5.1%であった。この
傾向は、状況1~3に近い傾向を占めてしており、多くの人が子どもの機嫌が悪くなる可能性が高
くてもチャイルドシートを使用する自己効力感が高いことが分かった。また、啓発用映像を見た
群と衝突実験映像を見た群で、自己効力感に差があるかをMann-WhitneyのU検定で確認したと
ころ、2群間には有意差が見られなかった。(p= 0.1835)(図30)。
31
500
400
300
200
100
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
300
啓発⽤映像を⾒た群
250
衝突実験映像を⾒た群
200
150
100
50
0
1
2
3
絶対できないと思う
4
5
6
7
8
9
10
必ずできると思う
図 30 自己効力感レベル(状況 8)
状況1から8まで、それぞれの状況に対する自己効力感レベルの平均値と中央値を見てみると、
状況4~7に対する自己効力感レベルが低く、状況1~3と状況8に対する自己効力感レベルが高い
という結果であった(表2)。
表 2 各状況別平均値と中央値
状況1
状況2
状況3
状況4
状況5
状況6
状況7
状況8
平均値
8.16
7.80
7.30
5.95
5.70
5.87
6.22
8.12
中央値
9
8
8
6
6
6
6
9
32
チャイルドシートに乗っていなかったことが原因で、子どもがケガをしたり、ケガをしそうに
なったりした経験があるかをたずねたところ、88.6%は「経験なし」と回答したものの、「病院
を受診したことがある」人が5名、「病院には行かなかったが、ケガをしてしまったことがある」
人が9名、ケガはしなかったが、ぶつけてしまったことがある」人が42名、「ケガをしそうにな
ったことがある」人が59名となっており、病院を受診するほどの重症なケガを経験したこと人は
少ないものの、約1割の人は軽症のケガやヒヤリ・ハットの経験があることが分かった(図31)。
0
病院を受診したことがある
病院にはいかなかったが、
ケガをしてしまったことがある
10
20
30
40
50
60
70
5
9
ケガはなかったが、
42
ぶつけてしまったことがある
ケガをしそうになったことがある
59
図 31 ケガやヒヤリ・ハットの経験
最後に、チャイルドシートなしで事故が起こった場合に、子どもにおこる傷害の重症度の認知
を、チャイルドシートの着用状況の回答によって2群に分け比較する。チャイルドシートを「必
ず着用する」、「ほとんどいつも着用する」と回答した人を「使用群」、それ以外の「2回に1
回は着用する」、「着用することもあるが、着用しないことのほうが多い」、「ほとんど着用し
ない」、「全く着用しない」、「以前は着用していたが、今は着用していない」と回答した人を
「未使用群」とし、2群間で傷害の重症度の認知レベルに違いがあるかをMann-WhitneyのU検
定で確認したところ、有意差が認められ、「使用群」の方が重症度を高く認知していることが明
らかとなった(p =0.00002136)(図32)。
33
0.6
使⽤群
未使⽤群
各群における割合
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
全く問題ない
9
10
致命的
図 32 傷害の重症度の認知の違い(着用状況別)
3.6
調査結果に関する考察・まとめ
本調査の回答者は、チャイルドシートを必ず着用すると回答した人が約71%で、昨年度の調査
と同様に、警察庁/JAFの調査結果よりも、着用率がやや高い傾向にあった。チャイルドシート
を使用しなくなった理由についてたずねた質問では、「子どもが大きくなって、サイズが合わな
くなってきたから」が最も多く、次いで「大人のシートベルトを着用し始めたから」、「子ども
が着用を嫌がり始めたから」となった。特に、「大人のシートベルトを着用し始めたから」と回
答した18名全てが末っ子の年齢が6歳未満であり、子どもが大きくなってきた際に、何となく使
用を止めてしまう場合もあることが分かる。
チャイルドシートに着座するのを嫌がるかをたずねた質問からは、「必ず嫌がる」、「よく嫌
がる」、「たまには嫌がる」を回答した人が全体の44%を占めており、子どもが嫌がることは稀
なことではなく、良く起きることであることが分かる。年齢と嫌がりの関係は、1,2歳が嫌がる
傾向が強く、3歳頃から嫌がらなくなる傾向があることが分かった。しかし、一部の5歳児では嫌
がる傾向があることが分かった。
また、チャイルドシートに着座することを子どもが嫌がった場合、約28%の人がチャイルドシ
ートから降ろしていることが分かった。また、ベルトを締めずにチャイルドシートに座らせてい
る運転する人が約29%いることが分かった。これらの結果は、昨年度の結果とほぼ同じであるた
め、チャイルドシートを設置していても、意味がある状態で使用していないユーザが一定数いる
ことが分かった。
34
今年度開発した「啓発用映像を見る群」と「衝突実験映像を見る群」に分け、チャイルドシー
トを使用せずに事故が起こった場合の傷害の重症度の認知、および、さまざまな状況下における
自己効力感の認知の違いを比較した結果からは、啓発用映像には衝突実験映像よりも傷害の重症
度の認知を上げる効果があることが示唆された。また、啓発用映像を見る前後では、重症度の認
知レベルに有意な差があることが確認され、啓発効果があることが確認できた。各状況における
自己効力感に関しては、状況3,4,8以外で、自己効力感を高める効果があることを確認した。
各状況で自己効力感が特に高いと思われる8~10を回答した人の割合を図33に示す。状況1~3
と8では、自己効力感が特に高い人の割合が50%以上となり、チャイルドシートを使うことができ
ると感じやすいことが分かった。状況4~7では、自己効力感が特に高い人の割合が50%以下とな
り、「絶対にできないと思う」と回答した人が全体の10%以上となり、チャイルドシートを使う
ことが難しいと感じていることが分かった。この結果は、概ね昨年度の結果と一致しており、自
分と子ども以外の他者に迎えに来てもらった状況では、それを拒否してチャイルドシートを使っ
て自動車に乗せることを選択することは難しいことが分かった。
80%
⾃⼰効⼒感が特に⾼い⼈の割合
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
状況1
状況2
状況3
状況4
状況5
状況6
状況7
状況8
図 33 各状況における自己効力感が特に高い人の割合
自動車事故対策機構から提供していただいた2種類の動画のうち、どちらも見たことがないと
回答している人が、全体の60.3%もおり、昨年よりも顕著に多くの人が衝突実験の映像を見たこ
とがないことが分かった。
以上のことから、チャイルドシートの着用率を上げるためには、意識・行動変容効果が高い啓
発プログラムを開発するとともに、以下の点を改善していく必要がある。
35
① チャイルドシートの着用に関する情報発信の場作り
‒
法律が知られていない点
‒
啓発に活用できる映像を見たことがない割合が高い点
‒
6歳未満の子どもを持つ保護者だけでなく、孫がいる祖父母や友人に6歳未満の子ども
を持つ人がいる人といった6歳未満の子どもを乗せる可能性がある人への情報発信の
場がない点
② チャイルドシートを必要なときにすぐ使える仕組み作り
‒
孫や友人の子どもを自動車に乗せる機会が稀にしかない人は、チャイルドシートを購
入しないことが多い点
‒
買い替え時期など、手元にすぐに使えるチャイルドシートがないが、自動車は使う必
要がある点
③ チャイルドシートの効果を分かり易くする仕組み作り
‒
チャイルドシートを使っていなくても、自分は事故に合わないという考え
①については、イベントなどで情報発信するだけでなく、日常的に情報に触れることができる
ように、テレビなどのメディアの力を使ったり、大型スーパーなどの日常的に自動車で訪れる場
所と連携して情報を発信していくなどが考えられる。②については、レンタカー事業者や自治体
などでチャイルドシートのレンタルサービスを行う、といったものが考えられる。また、チャイ
ルドシートを使うのが難しくなるほど子どもが成長してから次のチャイルドシートを購入する
のを検討するのではなく、早めに買い替えを検討できるようにメールなどで通知したり、適切な
時期にチャイルドシートを買い替えることで、割引や下取りといったサービスが受けられるとい
った売り手の協力も必要であると考えられる。③については、交通事故が1人の人に起きること
はそれほど頻繁ではないため、チャイルドシートを使っていることで得られる効果が感じにくい。
そのため、自分は事故に合わない、近所に行くだけだからチャイルドシートを使わないでも大丈
夫、といった考えが生まれてしまう。チャイルドシートによって得られる安全の価値は分かりづ
らいため、チャイルドシートを使っていると駐車料金が割引されたり、高速道路利用料が割引さ
れるといった、別の分かり易い価値へと変換する仕組みなどを考える必要がある。
36
第4章
4.1
啓発コンテンツを使った教育の実施
今年度の実施状況
今年度は、2015 年 3 月 15 日に長崎県大村市で NPO 法人 Love & Safety おおむらが主催した
「Love
& Safety フェスタ 2015」
(図 34、図 35)にて、開発した啓発コンテンツを使って来場者に啓発
活動を行った。啓発活動を行える時間が 2 時間程度であったこともあり、20 人程度への啓発活
動となった。来場者に使用実態についても聞き取り調査したところ、「常にチャイルドシートを
使っている」という回答が多かったが、中には「高速道路に乗る時は使っているが、近所の買い
物のときには使っていない」といった回答や、「使わなくてはいけないことは分かっているが、
子どもが嫌がったり、着用の手間が面倒で使わないこともある」といった回答も得られた。また、
子どもの嫌がりについては、「小さいときからチャイルドシートを使っているので、チャイルド
シートに座らせないと、子どもが座らせてくれ、と言う」といった回答が複数人から得られた。
また、啓発コンテンツについては、「子どもが嫌がってチャイルドシートから降ろしてしまった
ことがあるので、その結果事故にあったときに重大な結果になることが身近に感じられた」とい
った回答が複数人から得られた。
図 34 「Love & Safety フェスタ 2015」の告知用チラシ
37
Love & Safety フェスタ 2015 の会場の様子
啓発コンテンツを使った啓発活動の様子
図 35
4.2
Love & Safety フェスタ 2015 での啓発活動の様子
今後の実施計画
来年度以降、今年度開発した啓発コンテンツを使った啓発活動を行っていく予定である。具体
的には、2015年5月4~10日の世界交通安全週間に、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)と協
力して、JAFが実施するイベントにて、啓発活動を行う予定である。また、今年度啓発活動を実
施した長崎県大村市では、NPO法人Love & Safetyおおむらと協力して、長崎県大村市の保育園に
て、啓発活動を行う前後でのチャイルドシートの着用状況の効果検証を行う予定である。
また、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会から構成される日本小児科連絡協
議会「自動車乗車中の子どもの安全推進合同委員会」と連携して啓発活動を行うこととなってお
38
り、学会のウェブサイトなどに啓発コンテンツを掲載するなどの協力が得られることとなってい
る。
第5章
本研究の結論と今後の展開
本研究では、効果的な教育コンテンツを作成するため、昨年度実施したアンケート調査の結果
を元にして、啓発コンテンツの開発を行った。その啓発コンテンツの効果を検証するために、昨
年度使用した衝突実験映像との比較を行った。その結果、啓発コンテンツでは、コンテンツを見
る前後で、チャイルドシート無しで事故が起きた場合の傷害の重症度の認知レベルに有意差が確
認され、啓発コンテンツによって認知レベルを向上できることを確認した。また、啓発コンテン
ツを見た後と衝突実験映像の見た後の認知レベルを比較したところ、今年度のデータとの比較で
は有意差が確認できなったがp値が0.05395と僅かに有効水準を上回る程度になっており、さらに、
昨年度の衝突実験映像の見た群との比較では有意差が確認できたため、衝突実験映像より認知レ
ベルを向上させるのに有効であるという結果が示唆された。
昨年度及び今年度行った、チャイルドシートに関する知識、使用状況、自己効力感の調査から、
効果的な啓発コンテンツを開発するだけでなく、啓発を行う適切な場作り、チャイルドシートを
使おうと思ったときにすぐに使えるシステム作り、チャイルドシートを使うことが良いことであ
ることを分かり易く実感してもらうための効果の価値化のシステム作り、といったチャイルドシ
ートの使用に関係するステークホルダーを巻き込んだ社会システムも合わせて構築していく必
要があることが分かった。
今後は、研究グループのメンバーが多く参加している、子どもの安全に関する啓発活動を行う
NPO法人Safe Kids Japanを主体として、チャイルドシートメーカー、自動車メーカー、レンタ
カーサービス事業者、ガソリンスタンド、自治体、警察などの子どもの交通安全に関わるステー
クホルダーと連携して、チャイルドシート着用のキャンペーンを実施するなど具体的な活動を行
いながら、上記の社会システム作りも模索したいと考えている。
参考文献
[1] 交通事故総合分析センター:交通統計 平成24年版(2013)
[2] 警察庁/日本自動車連盟(JAF):チャイルドシート使用状況全国調査(2014)
[3] Aprica:チャイルドシートに対する意識・実態調査
https://www.aprica.jp/products/childseat/knowledge/
[4] 中田恵美,江幡芳枝:乳幼児をもつ母親のチャイルドシートに対する知識・認識と使用の有
無との関連,九州医療福祉大学学会誌Vol.18, No.1 (2013)
[5] 日本小児科学会,日本小児保健協会,日本小児科医会:日本におけるチャイルドシート普及
についての要望書(2010)
39
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