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現場設計者が描く,将来の設計工学への思い

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現場設計者が描く,将来の設計工学への思い
日本機械学会 設計工学・システム部門
第24回『A-TS12-05設計研究会』話題提供資料
自動車産業における製品開発・技術開発への取り組み
状況の紹介と,そこで働く,技術者の思いについて発表
平成20年1月22(火)15:00~16:00
トヨタ車体(株) 車両実験部
主査(工学博士) 谷本 隆一
1/341
発表の内容
1.トヨタ車体(トヨタ)の紹介・・・HPより抜粋
1−1.トヨタ車体の拠点,製品
1−2.トヨタの精神→豊田綱領(トヨタウエイ)→トヨタが大切にしてきた思い
1−3.トヨタ生産方式
2.自動車の製品開発・・・トヨタ車体の開発プロセス
2−1.車両の開発(企画→デザイン→設計→評価→生産)
2−2.車両性能評価・・・振動騒音(NV:Noise and Vibration)とは
2−3.製品技術開発の事例紹介・・・私の取組み例と思い
3.自動車の将来に向けての取り組み・・・トヨタの例(HPより抜粋)
3−1.環境 3−2.安全 3−3.ITS 3−4.パーソナルモビリテー
3−5.ロボット 3−6.UD(人にやさしいクルマ) 4.グローバル化する中での日本独創・・・トヨタの日本独創(思い)
4−1. ∼ 4−4. ・・・トヨタテクニカルレビュー Vol.52 No.2 より紹介
5.そこで働く一技術者の思い・・・将来の機械設計工学について
2
①.拠点
3
1.トヨタ車体の紹介
アルファード・ハイエース・ライトエースを生産
いなべ工場(三重県いなべ市)
工場面積836,000m2
特装車・福祉車両の架装
刈谷工場(愛知県刈谷市)
工場面積123,000m2
エステイマ・ノア・ボクシー・イプサム・プリウスを生産
EVコムスを生産
本社・富士松工場(愛知県刈谷市)
工場面積423,000m2
寿 新規開発センター(愛知県豊田市)
工場面積13,200m2
ランクル・コースターを生産
吉原工場(愛知県豊田市)
工場面積289,700m2
4
② .トヨタ車体の製品紹介(H20/1 ホームページより抜粋)
1.ミニバン・キャブワゴン
アルファード
ボクシー
アルファードHV
ノア
2.乗用車
エスティマ
イプサム
エスティマHV
3.SUV
プリウス
ランクル70ハードトップ(輸出)
ランドクルーザー200
ランドクルーザー
70ピックアップ(輸出)
レクサスLX570(輸出)
4.商用車・コミューター
ハイエース
ハイエース(欧州向け)
コースター
5.福祉車両
お出かけシート
(エスティマ)
スロープ
(アルファード)
お出かけシート
(アルファード)
ポルテ
ウエルドライブ
スロープ
(ノア)
6.積載車両
車椅子リフター
(ハイエース)
7.EV
ローリフト
荷役
省力車
冷凍車
コムス
エブリデー
8.生活関連用品
段差解消
リフター
取締役会長 取締役社長
久保地 理介 水嶋 敏夫
リニヤ
ドア
リニヤ
カーテン
オゾン
だっしゅ
ミニバン、SUVを手がけるトヨタグループの中核完成車メーカーとして、トヨタ車体は時代をリードしつつ、人々 の
生活空間を豊かにするために取り組んでまいりました。車両開発については「自ら企画・開発したクルマ」をトヨタ
に提案、クルマづくりのプロとして、潜在するニーズを具体化し、真に魅力ある製品づくりを推進しております。 海
外への事業展開をはじめ、さまざまな福祉車両・機器の企画・開発のほか、環境・快適生活をテーマに、新事業 も
積極的に展開しています。
今後とも、より一層環境にやさしい技術・製品の開発に取り組むことを大前提に、社会・環境・地域との調和をは
かり、地球社会に貢献する企業をめざしチャレンジを続けてまいります。
名実ともに「世界No.1のRVメーカー」の地位を確立するために、今後とも皆さまのご指導・ご支援がいただけます
よう、よろしくお願い申し上げます。(トヨタ車体 ホームページより抜粋)
5
6
③.トヨタグループ各社・・・トヨタの車は下記グループで共同生産
‘07/12機械学会会員数:183人
(株)豊田自動織機
トヨタ自動車(株)
192人
アイシン精機(株)
(株)デンソー
53人
35人
トヨタ車体(株)
JTECT(旧豊田工機)
102人
35人
トヨタ紡織(株)
367人
608人
日野自動車(株)
129人
(株)豊田中央研究所
45人
6人
豊田工業大学
豊田合成(株)
ダイハツ工業(株)
愛知製鋼(株)
関東自動車工業(株)
東和不動産(株)
36人
豊田通商(株)
岐阜車体(株)
トヨタテクニカルディベロップメント
総計:約1,800人 / 39,000人(全会員)
1−2.トヨタの精神→豊田綱領(トヨタウエイ)について
(トヨタ自動車HPより抜粋)
豊田佐吉(1867∼1930)
国をあげて近代化への努力が払わ
れた時代に生まれた佐吉は、18歳の
とき、発明立国を志し、数々の難関を
克服し、ついに画期的な自動織機を
完成。その技術を世界のレベルに引
き上げた。
(自働化,ジャストインタイム)
→トヨタ生産方式として展開
自動織機の発明(1890年)
豊田喜一朗(1894∼1952)
“父が織機なら、私は自動車だ”と当
時、冒険的と思われた自動車工業に
乗り出し、厳しい情勢のなかでトヨタ
自動車工業を創業して、今日のトヨタ
日本人の腕と頭で乗用車を作る
グループ発展の礎を築いた。
(トヨダAA型乗用車:1936年)
(トヨタは海外の技術支援なしで
日産← オースチン(英)
当時の,日本の
やってきた→日本独創)
日野←ヒルマン(英) 自動車産業
いすゞ ← ルノー(仏)
7
1-2-1.豊田綱領(トヨタウエイ/精神)
・・・トヨタ自動車HPより転載
<豊田 佐吉>
・そこの障子を開けてみよ.外は広いぞ
・出来ないと言う前にまずやってみろ.
・完全な営業試験を行のうにあらざれば,発明の真価を世にとうべからず.
・ものつくりを通じた社会の貢献.
・研究と創造の心を致しつねに時流に先んずべし
(私の考える)
・物をつくるのは人間であり,人間を育てることが大切.
<豊田 喜一郎>
トヨタの強さ:その1
・徹底した現地・現物主義
・日本人の頭と腕で乗用車を創る
日本人の腕と頭で乗用車を作る.→3年でアメリカに追いつけ
・お客様第一(価格はお客様が決める)
・原価低減
・創造性の発揮(ジャストインタイム)
<その後のトヨタ>
感動を与える車つくり
①初代クラウン→自前の技術による開発への挑戦
②レクサス→極限のものつくりへの挑戦 妥協しない ③プリウス→飽くなき技術開発への挑戦
あきらめない
④ものつくりは人づくり
初代RS型トヨペットクラウン
(1955年)
上記に示す精神は,トヨタウエイとして,グループ内従業員に継承
8
音圧レベル (dB・A)
(事例)私の発明:4-リンクリヤサスペンション車の低速こもり音低減
オリジナル
▲7dB
・上記改良案をトヨタに提案(入社5年目)
・M社が,3ヶ月前特許出していた(公開後判明)・・・採用困難?
20
20
改良品
・○○主査「おまえ,この技術はM社のまねをしたのか?」
40
60
80
エンジン回転2次成分 (Hz)
→私「違います.私が自分で考えました」
40
60
80
車速 (Km/h)
→ ○○主査「わかった,採用してやろう」
・トヨタはよその技術は使わない.自分達で考えて製品化
9
1−3.トヨタ生産方式(図解)
<当時の時代背景>
米国:大量生産
・・・トヨタ自動車HPより転載
10
注文が入って初めて生産指示
日本:多種少量生産
お客様の多様
な要求に答える
1-3-1.トヨタ生産方式はムダの排除がねらい ・・・トヨタ自動車HPより転載 11
(日々,身の廻りの改善を実施) 技術者も含め,全
員が愚直に実施
現場:創意工夫提案
事技:業務改善提案
(私の考える)トヨタの強さ:その2
2.自動車の製品開発
企画
企画
開発
構想
先行
約 1.5年
★モデル承認
モデル
目標値提案
量産
(更なるプロセスの改善)
スケッチ
設計
評価
試作
車両
計画
デザ
イン
12
・・・トヨタ車体の
開発プロセスを例に紹介
線図
先行設計
正式設計
先行CAE
正式CAE
技術の追求
(技術開発)
(要求水準向上)
先行試作評価
正式試作評価
監査改
良会議
(商品コスト,開発費低減)
生産
生産
試作
量産
市場不具合情報
企画
企画
開発
構想
先行
車両
計画
試作
量産
先行設計
デザインスケッチ
モデル
★モデル承認
1/1最終
モデル承認
モデル承認から
約1.5年でお客様へ
(短期開発・評価)
13
企画
企画
開発
構想
先行
車両
計画
試作
デザイン
設計
設計
試作
正式試作評価(アッパー)
シミュレーション
DA 組付けシミュレーション
14
試作
先行試作評価(アンダー)
CAE衝突シミュレーション
量産
評価が終了(合格)
すると開発完了
→量産へ移行
実車試験
振動騒音評価
実車環境試験(−30℃)
強度耐久性評価
テストコースでの走行評価
2−2.振動騒音(NV:Noise and Vibration)とは
15
(Watt/㎡)
音圧レベル SPL
主要な開発現象(ワンボックスカー)
0.03m
周 波 数 (Hz)
f=(340m/s÷0.03m)÷4≒3kHz
耳の長さの1/4波長の3KHz
の音が聞こえやすい
2−3.技術開発の進め方
・慢性不具合
→自主独創へのこだわり
成果
製品技術開発
テーマに登録
・新機構/新構造
技術開発の推進
(トヨタ車体)
・他
業務
報告
・要素W/G(1/W)
↓ ↑
・車実連(1/2W)
↓ ↑
・評価連絡会(1/2W)
↓ ↑
・技術開発会議(2/Y)
開発状況の見
える化推進
①標準化(評価プロセスヘ)
②特許(年10件以上)
・新法規
<トヨタ車体内>
16
③研究発表
支援
支援
<中研×トヨタ>
発表の場
の提供
・全豊田研究発表会(9件)
・自技会(2件)
・日本機械学会(6件)
・分野別研究会
<大学>
・気軽に(個別)相談
・高度専門教育(名古屋大学)
・鹿児島大学 熊本大学
<大学>
・実習生受入(長岡技大 他)
・名大、名工大、大阪大、
東北大、京大、東大等
大学の頭脳活用
(私の考える)トヨタの強さ:その3
2-4.技術開発例・・・ワンボックスカーのミラーびびり振動低減
ワンボックスカーのミラーびびり振動が常に問題化していた
・風の影響がありそうだとトヨタに報告→そんな馬鹿な・・・
・豊田中研のPIV技術の支援を得て証明
・豊田中研のCFD技術の支援を得て図面段階で解析可能化
・名古屋大学の指導→全豊田研究発表会→自技会発表
→機械学会論文集→ オールトヨタ内へ標準化(技術展開)
17
ミラーびびり振動低減品の開発
ミラー外側の形状を車両に平行にすると,ミラーびびりが改善することが実験的に見い出せた.
この形状がなぜ良いのか,豊田中研のPIV技術を用いて解明した.
18
2-5.コンポーネント別開発の推進:リーン開発/コンカレントエンジニヤリング 19
現状の評価法
コンポーネント評価法
評価は実車が出来た後実施
図面段階での提案
評価の直列進行
評価の同時進行
悪路・高速走行
ミ
提
−
案
コンポーネント別目標割付
ミ
風
流
れ
サ
ス
・
Eng
ラ
風
流
れ
ラ
サ
ス
・
Eng
ミラーでの評価がメイン
ミラーびびり
シート
振動 品質目標
−
ミラーびびり振動
CFD・CAE・実験
トライ&エラー的な現象対策
・解決までに時間が掛かる
・最適設計が出来ない
(コスト、質量)
提
案
短期間での目標値の達成と
車両の最適設計が可能
3.自動車の将来に向けての取り組み
20
(トヨタの例・・・H20/1 トヨタ自動車HPより引用)
トヨタの考える 3つ
のサステイナビリティ
人と社会と
共生できる
クルマへの
Ⅰ.環境技術(サステイナブルモビリィの実現向けて)
Ⅱ.安全技術(考え方,最新の技術・装備)
Ⅲ.ITS(Intelligent Transport Systems)
研究開発
自然と
人や地球と
調和する
一緒に
工場へ
幸せな明日へ
モノづくり
社会貢献
Ⅳ.パーソナルモビリティ(I-REAL他)
Ⅴ.ロボット開発(パートナーロボット他)
Ⅵ.UD
(人にやさしい クルマづくり)
(私の考える) トヨタの強さ:その4
トヨタは環境問題に真摯に取組んでいる・・・優秀な技術者を投入
3-1.事例紹介 2005年トラックショーでケナフコーナー開設
21
05年10/12∼15 トヨタ&トヨタ車体ブース
6 5 4 3 2 1ヶ月
後のケナフ展示
ケナフマット
ケナフボード
(トラック内装材)
ケナフフェンダー
次世代冷凍車
ケナフをコア
材とした真空
断熱材
2005年トラックショーのトヨタ車体ブース展示(ケナフ関連)
(1)ケナフをコア材とした真空断熱材
ケナフの束
Φ20μm
80μm
(2)ケナフボード内装材
(3)ケナフボードを用いた静音フロアー
ケナフ
ボード18t
鉄板 0.27t
オロテックス(接着剤)
22
ケナフの環境性能について紹介
(2005年トラックショーのトヨタ・トヨタ車体ブース)
23
4.グローバル化する中での日本独創
・・・トヨタの考える日本独創(自主独創)・・・
トヨタテクニカルレビュー Vol.52 No.2 より転載して紹介
4−1.豊田佐吉翁・喜一郎(創業者)の日本独創
・そこの障子を開けてみよ.外は広いぞ
・研究と創造に心を致し,常に時流に先んずべし
・日本人の頭と腕で乗用車を創る
4−2.クラウンの日本独創(加藤光久主査)
・繊細さ,品格,味わいなどクラウン特有の様式美
・日本の心・・・おもてなし
・不即不離の距離感,以心伝心の精神性,粋の文化
・日本の良さ
①あ・うんの呼吸(以心伝心) ②品質の良さ(審美眼)
③共生(協調性) ④融合 ⑤言わぬが花
24
4−3.私の日本独創(奥平総一朗主査) ・・・トヨタテクニカルレビュー Vol.52 No.2 より転載
・鉄腕アトム→日本独創
・日本では,ロボットは精神を持つ物
・西洋では(マクルーハン曰く)人工物は人間の延長
・産業革命(道具・機械)は手足の延長
・メデアは眼と耳の拡張
・コンピューターア脳の延長
・日本人は感覚や味覚の解像度に優れている
東京山手線の弁当の種類は2,000以上
・桂離宮
インタラクションデザイン(自然な導きを工夫)
・風変りな日本人(世界の中で)
→海外輸入→独自性(日本独創)
・和敬清寂・・・茶の心
・楽しさの原点は遊び
げんうん
・遊びの4要素(・競争 ・偶然 ・模倣 ・眩暈 )
25
4−4.私の日本独創(奥田孝志主査)
・・・トヨタテクニカルレビュー Vol.52 No.2 より転載
・日本の道具・・・自己完結型
・西洋 ・・・人に手を差し伸べている
・道具が魂を持つ
→日本独創・・・基本性能で自己完結型・・・人にへつらわない
・基本性能の「切れ」,「張り」を全面に表現した自己完結的な車
→「格」,「魂」・・・日本独創となり得る(ただし現在では欧米車
に負けている)
→トヨタは「日本独創」「日本の心」を大切にしながら製品を開発
26
5.企業で働く一技術者の思い
27
5-1.機械工学の過去と将来
宇宙のビックバーンから銀河系・太陽系が,さらに地球が誕生し,約50億年の長い年月を掛けて地
球環境が形成されてきた.約40億年前,最初の生命体の発生とDNAリレーによる人類の奇跡的な
進化のなか,人類は火を使い,手足の延長として道具を発明,さらに動力源を付加し機械(システム)
を発展させてきた.
安全・安心・信頼性
陰なるものの最小化
人工物
(製品)
自然の
叡智
環境
破壊
自然
環境
手足・耳 鼻・脳の延
長と工夫
人類の進化
自然の改造
事故
公害
富の生成とそれをめぐる分配競争,戦いと生産性
の向上のたゆまない工夫を通じて機械の高度な発
展,さらに,産業革命,原子エネルギー,IT革命を通
じて,機械が飛躍的に発展した.
眼と耳の拡張としてメデアの発達,脳の延長として
コンピューターの発達など,文明の進化は,場合に
よっては「イースター島の悲劇」を地球規模で引き起
こす可能性も叫ばれている.
人間の
営み
今後の機械の発展は,機能目的の達成だ
けでなく,陰なるものの最小化にも合せて努
力する必要がある.陰なるものとして,地球
規模で進んでいる温暖化,砂漠化,水不足
,水質汚染,人工爆発など,これらの課題も
解決しながら機械の研究を追及していけば
「独創」が生まれる.
5-2.3つの設計の大切さ
28
ものを作る側からの設計、デザインの課題とあるべき姿として,設計研究会でも議論されている様
に,3つの設計工学 ①Better、②Must、③Delightが大切.またこれらの3つはどれも大切であり,
バランスを取って進めていく必要があると考えられる.
①Better:早く安く良い製品を作るための設計工学の基盤(CAD、CAE、最適化、PLM)
②Must:信頼性のある製品を創るための設計工学(Systems Engineering)
③Delight:わくわくする製品を創るための設計工学(感性設計、Creative Design)
日本は,従来欧米の優れた技術に追いつけ追い越せと,一心不乱に,①②を進めてきた.いつの
まにか世界のトップランナーとなり,後を見るとBRICsの追い上げが始まっている.これからの設計工
学は,③についてもトップランナーを目指す必要がある.
平均値をあげる
分布
不具合をなくす
②Must
不良品←
①Better
感動を与える製品開発
③Delight
品質
→良い製品
29
5-3.Delight設計へのアプローチ
・走れば走るほど健康になるクルマ,空気がきれいになるクルマ.一度燃料を満タンにすれば世界一
周できるクルマ,魚の群れが衝突しないようにぶつかることがなく人を傷つけないクルマ.キントン雲
のような必要な時だけ出して,不必要な時にはポケットにしまえるようなクルマの開発が求められてい
る.しかし,これらの夢は簡単には達成出来そうにない.
・これらの夢を達成するためには,現状の技術を整理し,その中にある自然の叡智,すなわち,自
然の法則を解き明かし,夢の半分を達成するための目標を立て製品化すべきと考える.それらが
達成できたら,その製品が自然のどの法則に従っているのかを考え,更に半分夢に近づけるのが
良い.日本刀の開発にもあるように,高い目標と粘り強く創意工夫を繰り返す「熱意」と「執念」が必
要なことはいうまでもない.(日本独創)
あるべき姿
(夢)
・顧客満足度
独創性を大切に,
自然の叡智を活用
→自然に学ぶ
(競合性)
・市場クレーム
・不具合情報
・安全性
・環境性能
号口車
(現有技術)
<渡辺捷昭社長>
次期Prj.
・走れば走るほど健康(空気 がきれい)になるクルマ
・一度燃料を満タンにすれば 世界一周できるクルマ
・人を傷つけないクルマ
<豊田英二相談役>
・キントン雲のようなクルマ
5-4.あきらめずに開発を進める
30
トヨタの渡辺社長 「一回満タンにすれ地球一周できるクルマを開発したい」
・我々の受けとめ:ノアは60㍑で1,000km→地球一周は40,000km,したがって給油40回・・・困難.
そこであきらめては,思考がストップ.
・プリウスは33km/㍑ →100㍑で3,100km,給油13回.今2㍑カー( 2㍑で100km 走る車)の開
発一番乗りを各社がしのぎを削っている.トヨタの1/Xプロジェクトでは車重1,280→420kg,プラ
グインHVの開発 ・・・これだと給油8回程度になりそう.・・・それでも難しいそう
・発想を転換し,ヨットは無給油世界一周で出来たではないか.アポロ13号は一回の給油で地球∼
月∼地球への60万km(地球15周)を運行し無事生還できたではないか.
・太陽発電の効率化,飛行機の応用,超伝導の活用,などやればできる
ではないか・・・? ・・・この前向きな発想が「想像力」を生む.
・こんなことを考えているのは,飯山市での合宿のおかげ(異業種との会話)です.うまくいったから発
表するのではない.発表するからアイデアが出る.
東京大学 中尾政之 アポロ
13号(YAHOO)より引用
31
5-5.産学官+世代の連携と機械学会の役割
・企業の技術者の「閉塞感」を打ち破り夢を実現したい.私の最大のライバルはトヨタであり,最も信
頼できる相談相手もトヨタ・中研・大学です.トヨタのライバルはニッサン,ホンダ・・・.ただし,一番
信頼できるのもこれらのライバル.こういう関係が日本の「産・学・官」の連携でやれたらと言うのが
私の設計工学の初夢.
・企業では結果を出すために物をいじくりまわし,良い結果が出たら何故そうなるのか理論を後で考
える.大学の先生は理屈があって,その理屈を証明しょうと実験を行う.これらの良い関係で研究が
進めばよい.夢の実現には,長い世代にわたる研究と開発が必要となるが,そのためには「産」「学
」「官」の強い絆と信頼関係が世代を超えて培われていくのが大切である.
・さらに,モノつくりは一世代だけでなく,子供・孫・・・の代までこの自然の叡智を伝えていくことが大切
であり,こららのセンターの一つとして「日本機械学会」の存在意義もあるのではないでしょうか.
45
40
35
学
日本
・特許件数(万件)
米国
30
25
20
日本
米国
15
産
官
米国
10
5
日本
0
出願
成立
独創性
出願 成立 独創性
5-6.教育について
32
日本が低迷を続ける国際学習到達度調査(PISA),これは未来型学力テストと呼ばれ,いま何を
知っているのかではなく将来何ができるかを測る.学力世界一といわれるフィンランド.その教育の
真髄は2つある(都留文科大:福田誠治 教授).
第1に,正解を先回りして教えない.理科の授業では,まず実験.様々な現象を見させて各自が仮
説を立てる.自分と違う意見にも耳を傾け,もう一度考えてみる.教師が理論を説明するのは一番最
後.正解を教えると,その時点で思考が止まってしまう.
第2は,他人と競わせないこと.競争させると順位に関心が向いて,考えることへの興味がそがれ
る.テストは各自がどこでつまずいているのかを確認し,補うためのもの.考える力がつくとともに学
力差も少ないのはこの2つの理念と実践のたまもの.
子供は自然の中で体験し考える.ゲームは答えがわかっているがその解法を学習する.企業は理
論より実践.実際にクルマを良くして,あとで何故良くなったのか理論を考える.これも一つの方法.
昔の技術者は失敗を恐れず,実験を繰り返した.そしていろいろな現象を見てその中から1%の成
功例を見つける.いまの技術者は,失敗を恐れて上司にあれこれ言われる.これでは良い研究者が」
育たない.失敗を恐れないバイタリティのある研究者を育てる環境造りが大切.
5-7.ウサギとかめ・・・童謡の中に見る技術者の心
「ウサギ」と「かめ」の競争,どちらが勝つでしょうか・・・?
33
「かめ」が勝ちました.何故でしょうか?
<うさぎ>
「もしもし かめよ かめさんよ
せかいのうちに おまえほど
あゆみの のろい ものはない
どうして そんなに のろいのか」
<かめ>
「なんと おっしゃる うさぎさん
そんなら おまえと かけくらべ
むこうの 小山(こやま)の ふもとまで
どちらが さきに かけつくか」
<うさぎ>
「どんなに かめが いそいでも
どうせ ばんまで かかるだろう
ここらで ちょっと ひとねむり」
グーグーグーグー グーグーグー
「これは ねすぎた しくじった」
ピョンピョンピョンピョン
ピョンピョンピョン
<かめ>
「あんまり おそい うさぎさん
さっきの じまんは どうしたの」
YAHOO「なつかしい童
謡・唱歌・わらべ歌・寮歌・
民謡・歌謡」より引用
【目標】
・ウサギ・・・かめに勝つ(競争)
・かめ ・・・むこうの 小山の 麓まで
→「かめ」には明確な目標(ビジョン)があり,粘り
強く創意工夫する(日本人の美徳とする精神)が
あった.熱意と執念でモノづくりをすることが大切
5-8.私個人のライフスタイル(最後に)
<私の心がけていること>・・・LOHASな生き方
・通勤は徒歩(自宅∼会社間5km)
・昼休みのジョギング
→・年3回以上の全国のハーフマラソン大会出場
・「弓道}の練習(2/W)で気分転換
・カーエヤコンは使用しない
→・窓を開け,自然の風を活用
・ゆっくり発進,早めのブレーキ,高速道路は80km/h
→・交通事故は絶対起さない
・早寝・早起き
→光熱費の低減・・・もったない精神
・
・
・ ・燃費が50%向上しても,2倍無駄使いしては何にも
ならない.燃費を半分にする自動車メーカーの努力
と,ユーザーがエコ走行に心掛け燃費を半分にする
意識により,環境負荷は1/4に低減
・機械(設計)工学も最後は人の心を変えるモノ(製品)
づくり,個人のライフスタイルを豊にするモノづくりが
大切. ・・・そんなことを考えながら発表を終了します
34
<LOHASな生き方>・・・YAHOOより抜粋
①健康的な暮らし
人の暮らしは「食べる」「動く」「考える」「眠
る」といった活動の繰り返し。その循環が
健康的であること
②自然環境への配慮
暮らしが健康的であると同時に、暮らしを
取り巻く自然環境もまた健康であることが
不可欠
③五感を磨く
情報や数値による判断だけでなく、自分
自身の感覚でほんものを見つけること
④古いものと新しいもの
最先端の技術と、伝統的な知恵。新しい
発想と、古くからの習慣。どちらかひとつ
ではなく、新旧それぞれの良いところ、必
要なものをバランスよく選びとる
⑤つながりを意識する
食べたものはどこから来たのか。捨てた
ゴミはどこへ行くのか。買ったり使ったり
すると、地球にどんな影響を及ぼすのか
。その先に何があるのかをイメージする
⑥持続可能な経済
便利で楽しい、ハイセンスでカッコいい、
そんなモノやサービスによって、人にも環
境にもやさしい持続可能な経済システム
をつくる。ロハスは経済から、社会の在り
方を変えていきます。
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