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ワシントン自動車保険

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ワシントン自動車保険
■ 研修受入れ団体 (部署名 ・所在都市)
N onprofit R isk M anagem ent C enter (N O R M A C )
W ashington , D .C.
■ 研修実施期 間
2 0 0 0 年 2 月 2 8 日∼2 0 0 0 年 8 月 2 5 日
■ 研修テーマ
N PO
の リス ク ・ マ ネ ジ メ ン トとは何 か、 どの よ うに N
PO
が 自 らの リス ク を管 理 で き
る のか につ いて学 ぶ。 また、 コ ンサ ル テ ィ ング ・ サ ー ビス を提 供 す るた め の手続 きや 手
法 につ いて も学 び、 日本 で の N
PO
の リス ク ・ マネ ジ メ ン トや コ ンサ ル テ ィ ング ・ サ ー
ビス手法 のひ とつ を開発す る助 け とした い。
■ 研修概要
・N P O
の リス ク ・ マネ ジメン トとは何か、 ス タ ッフへ の ヒア リングや資料、 そ して研修全
般の中で学ぶ。
・ 企 業 の ボ ラ ンテ ィ ア 制 度
ト作成 。
にともな うリスク と
リ
スク ・マネ ジ メ ン ト について のブ ッ ク レッ
・ N P O の危機 管理 に 関す る本 の作 成 。
・ リスク ・ マネ ジメ ン トに関 す る電 話 や電子 メール
による問 い合 わせ お よびそ の対 応 について学 ぶ。
・ リスク評価や リスク ・ マネジメン ト手法 に関す る
コンサルティング ・ サー ビスをどのよ うに提供 し
ているかを学ぶ。
事務局長 のメラニー ・ ハーマン氏へのヒアリング
のため、フェローの市川 ・ 青木 両氏が来訪
El
M ik d N d k a b a ra
N onprofit R isk M an agem en t C en ter (N O R M A C )
団体名
住所 . 連絡先 .
URL
100 1 C onnecticut A Venu e, Suite 4 10 W ashington , D .C .
20008
Phone (202)785-389 1 / F ax (202)296-0349
年 間予算額 (U s S )
$ 900 ,000 強
収入源
財 団および行政か らの助成金 . 補助金 :38 % 、 企業か らの寄付お よ
び広告収入 :22% 、 会議参加費 : 16 % 、 出版物販売 : 12% 、 サー ピ
(1999 年度)
ス対価 : 11% 、 利子およびその他雑収入 : 1%
組織 の構成 (役員 .
理事 : 15 名、 スタ ッフ :
6 名 (内訳 : フルタイム3 名、 パートタイム3 名)
スタ ッフ . 会員数 等)
会員数 : ゼ ロ (会員制をとっていないため)
組織 の使命
地域社会で活動す る非営利組織 に対 して、 調査研 究や啓発活動、 ア
ドポカ シー を通 じて保 険そ の他 の リス ク . マネ ジメ ン トに関す るニ
- ズに応 えるo
の発行 (年 3 回)
・ リスク . マネ ジメン トに関す る トピック ごとにコンパ ク トにまと
めたR iskfactsの発行
・ 年 に一度 3 日間、 ワシン トンD
トに関す るワークシ ョップ
.C .で開催す る リスク . マネジメン
(Ⅰ
nstitutes) の開催
・ リスク . マネ ジメン トに関す るワークシ ョップ (全米各地)
・ 各組織 に適 した リスク . マネジメン ト計画の策定および実行 に関
す るコンサルティング . サー ビス
・ N P O の リス ク評価や加入 して いる保険評価
N・o Stri
ngs A ttached :U ntangling the R isks of Fundraising and Collaboration
出版事業
T aking the H igh R oad :A G uide to L egal and E ffectiVe E m ploym ent Practices for N onprofits
D & 0 :W hat Y ou N eed to K now
LeaVing N othing to C hance :A chieVing Board A ccountability T hrough
R isk M anagem ent
M anaging SpecialE Vent R isks :T en Steps to Safety
M ission A ccom plished :A PracticalG uide to R isk M anagem ent for N onprofits (2nd edition)
その他
主な出版物
活動 内容
特記事項
あるいは法律などの専門的なサービスを提供
M保険商品の販売や保険会社、
han a Mレター
atter of(cT om
rustm :M
R iagem
sks ofen
M entori
・ore
ニTュース
u nanagi
ity Rng
iskthe
M an
t an dng
Ⅰ
n su ran ce)
する特定の組織への斡旋はしないo リスク . マネジメントに特化 して活動
研修詳細
1 . N o n p ro fit R is k M a n a g e m e nt C e n te r (N O R M A C ) での研修
当初の研修応募動機は、 戦略立案や組織評価な どを中心 としたN P O マネジメン トの手法 とコ
ンサルティング手法を学びたいということであった。 N O R M A C ではこのような分野における
独 自の手法を確立 してはいない。 しか し、 リスク ・ マネジメン トという、 マネジメン ト全般 にま
たがる非常に重要な、 N P O の存続に直結する分野に触れることができた ことは一番の成果であ
った。
日常的には、 オフィスの一員 としての日常業務 もこな しなが ら、 N P O の リスク ・ マネジメン
トとは何か、 そ して N O R M A C が どのように技術支援をしているのかを見ることになった。
リスクとは団体の存在あるいは特定の事業の目標達成を妨げ得る要因が発生する可能性であ り、
リスクを特定 し、 優先順位をつけて、 リスク発生の防止および発生 した場合の対処法をみいだ し
実施 していくのが リスク ・ マネジメン トである。 保険商品の購入にとどまらず、 N P O の活動お
よびマネジメン ト全般に関わる。 リスク ・ マネジメン トは重要だが、 なかなか しっか りとりくむ
時間や予算、 スタッフの労力を割けるN P O は少ない。 大きな団体は リスク ・ マネージャーや リ
スク ・ マネジメン ト担当者を設置 しマニュアルを作成 しているが、 それ も本部の話であ り、 支部
レベルでは本部で決定 した リスク ・ マネジメン ト ・ マニュアルを受け取 り、 研修を受けて実施す
る程度であるという。 私が話をした多くの人たちもリスク ・ マネジメントについて知 らないか、
「わ
かっているけどなかなか とりくむ時間がな くて」 と返答 した り 「本部で作ったものがある」 と見
せて くれた りすることがほとんどであった。 N P O 運営支援を行な う中間団体でも、 保険のこと
や理事が私的利益のためにN P O を利用することを禁 じるcon flict of in terests といった倫理面
そ して差別などを含む法律面についてのア ドバイスはするが、 リスク ・ マネジメン ト全般にわた
る知識があるところは少ない。 そ こで N O R M A C のように、 リスク ・ マネジメン トに関する専
門知識や技術を提供する組織が必要なのである。
1 ) 形として残 るものの作成 に関わる
① 小冊子の作成
N O R M A C での初めての課題は、 企業のボランティア制度におけるリスク ・ マネジメン トに
ついての小冊子を作成することであった。 企業のボランティア制度でいえば、 リスク ・ マネジメ
ン トとはボランティア制度を実施する目的を達成することを不可能にさせるあらゆる要素を考え、
またその結果を推定 し、 できるだけ備えるということである。
「リスクが ともな うか らボランテ
ィア制度を実施するのはやめよう」 というのではな く、 リスク ・ マネジメン トをきちんと行ない
なが らボランティア制度を推進 してほしい、 というメッセージを企業のボランティア活動担当者
や リスク ・ マネージャーに伝えるのが このブックレッ ト作成の趣旨である。 また、 N P O にも企
業か らボランティアを受け入れることで 自分が背負 うリスクを理解 し、 リスク ・ マネジメン トを
してはしいというメッセージもある。
ブックレット作成に際 し、 企業やボランティア ・ セ ンター、 N P O などに電話や電子メールを
El
M ik a N d k a b a ra
中心 とした取材を行なった。 具体的な調査の方法は、 まず N O R M A C スタッフか ら聞いた り、
また自分で知っていたボランティア制度を行なっていることがわかっている、 あるいはフィラン
ソロピーが活発で従業員へのボランティア活動を奨励 していそ うな企業のウェブサイ トを探 し、
ボランティア制度について下調べをした。
このブックレッ トは無料で配布されるものとして作成された。 もちろんハーマン事務局長をは
じめ としたスタッフの支援を受けて完成 したので、 自分 1 人で作ったものと言い切れない部分 も
ある。 しか し、 取材の中の会話か ら、 会議の中で企業のボランティア制度についての分科会を、
このブックレッ トを教材にして N O R M A C のスタッフが講師をした り、
「口コミで聞いた」 と
企業のボランティア制度担当者が 「自分たちの研修会に使いたい」 と申し出てきた りしたという
意味で、 少 しは研修先にも貢献できたのではないか、 と内心少 し嬉 しかった。 また、 読者か らも
よい評価をいただ くなど、 いきな りの課題で手探 りだったものの努力が報われた思いが した。
② N PO の危機管理 (C risis M anagem ent) についての本 を作成
研修の中で このような調査をし、 様々な人にインタビューを試みるなかで リスク ・ マネジメン
トは何かを説明する必要もあり、 リスク ・ マネジメントの概念を頭に入れるのには大変役に立った。
同様に、 このブックレッ トの後はN P O の危機管理 (C risis M anagem en t) についての本を作成
した。 これは 1996 年にN O R M A C が出版 した N P O 危機管理の本の改訂版ではあるが、 コン
セプ トや構成は自由でよいということだった。 また新たな分野の仕事で 「できるだろうか」 と思
ったが、 とにか くインターネ ッ トでのリサーチや本をとりよせて読むなどして、 改訂への準備を
はじめた。 この危機管理 も、 企業の危機管理、 とくに広報の側面に焦点をあてた文献はインター
ネ ッ トあるいは書籍でかな り見つかったのだが、 N P O に向けたものがな く困った。
この本を執筆するための調査の中で得たことは、 いくつかある。 例えば、 企業の危機管理の中
で危機的状況に立たされたときのメディア対応が重要であること。 クライシス ・ コミュニケーシ
ョンと呼ばれるこの分野で言われることの主流は、
「ノー ・ コメン ト」 とは言 うな、 誠実に対応
しろ、 その場で答え られない質問には後で答えると明言 し実行せよ、 メディアを通 じて関係者や
社会に対 して誠実なイメージを持たせよ、 というようものである。 日本での警察不祥事や食品会
社の異物混入事件への対応は、 これに照 らし合わせると貧困なものであることがわかる。
2 ) コンサルティング ・ サービス
前半は、 リスク ・ マネジメン トとは何か、 N O R M A C スタッフへの質問や N O R M A C 出版
の本な どを中心に学び、 また実際にN P O や N P O とパー トナーシップを組む企業が、 N P O と
関わる部分においていかにリスク・マネジメン トを行なっているか (あるいはいないか) を、 イ
ンターネットによるリサーチや電子メール ・ 電話によるヒアリングを中心にして学んだ。 後半は、
よ り積極的に外に出て、 研修応募のもともとの動機であるコンサルティング手法や組織力強化の
助けとなる活動をしているN P O を訪問 して彼 らが何をしているか聞いた り、 リスク ・ マネジメ
ン トについて どれほど他のN P O が意識 しているか聞いてみた りすることにした。
(N P O のマ
ネジメン トあるいは効果的に事業を遂行 しミッションの達成のために社会で活動を続けていける
能力を私はN P O の 「組織力」 と呼んでいる。 )
① コンサルティング手法
コンサルティング手法に関 しては、 クライアン トへのヒア リングやそれをもとにした報告書、
提案の作成について詳 しく学べる機会がほしかったが、 本当に学ぶための時間的、 知識的制約が
あ り、 ほとんどできなかった ことは残念であった。
N O R M A C は、 電話や電子 メールによるリスク ・ マネジメン トに関する相談業務 と、 よ り個
別で専門的な内容についてのコンサルティング業務を行なっている。 前者については、 スタッフ
が共有できる問い合わせ対応は報告 リス トとしてまとめ られてお り、 L A N で共有できる。 スタ
ッフが定期的に日にちと問い合わせ者、 対応者、 質問内容 と対応を簡単に記入するようになって
いる。 とくに質問内容の分類や問い合わせ数な どの統計を出した りはしていない。
後者について、 もっとスタッフについてコンサルティングの場 を見学 したかったのだが、 私が
想定 していたものと違ってお り難 しかった。 私が想定 していたのは、 単発の リスク評価のための
ヒア リングと、 提案作 りだったのに対 し、 N O R M A C では継続 したコンサルティングが多 く、
また リスク ・ マネジメン ト計画策定 というよ りもむ しろ定期的に連絡をとった り、 クライアン ト
の理事会な どに参加 した り、 という感 じのようだった。 また、 クライアン トが ワシン トンD .C .
外 にいて、 たいていのコンサルテーションが電話で行なわれることもあ り、 あまり体験すること
はできなかった。
2 . 評価 ・ 表彰プログラムを通 じたN P O の組 織 力 改善効 果
N P O の組織力を高める手法 として、 評価関連プログラムや表彰プログラムもある。 研修開始
前はあま り意識 してはいなかったが、 コンサルティングもある意味では外部の事業 ・ 組織評価で
はないか と考えるようになった。 外部 による評価への関心は、 ワシン トンD .C .およびその近郊
のN P O を対象にマネジメン トの側面にのみ焦点をあて優れたマネジメン トを実施 しているとこ
ろを表彰するW ash in gton C ou n cil of A g en ciesのN on profit A w ard の表彰式に参加 した とき
に強 くなった。 このような表彰プログラムも、 ある意味では外部評価だ と考えたか らだ。 他人か
ら判定されることで、 応募者 も改めて組織や事業のあ り方を見直す。 この見直 し作業は評価 にお
ける目的と同じである。 知 らないうちに評価 されるのではな くて、 判断は主催者にゆだね られて
いるものの、 自分で応募するのだか ら結局 N P O 自身が表彰 されるに足る基準に達 しているか 自
らの事業やマネジメン トな どを評価 し、 そ して足 りなければ改善 しようと思 うだろうか ら結局は
自己評価 と同様の効果があ り、 その先に主催者か ら表彰され、 賞金を獲得 した り社会的認知度が
高まった りすると言 う 「ごほうび」 があると考えることができるのだろう。
そ こで、 外部による評価や表彰プログラムを実施 しているN P O を訪問することにした。 彼 ら
は独 自の視点 とアプローチを持ってお り、 評価対象は全米の N P O か らある特定の地域の N P O
だけを対象にしているものまで様 々である。 表彰するN P O はたいてい受賞 しない限 り何度で も
応募を受け付けているし、 団体 によっては評価の結果や どこを改善するべきかがわかるような通
知を行な うので、
「次回はもっと足 りないところを改善 しよう」 と努力をして次回応募 して くる
のだ という。 このような手法や考え方を今まで した ことがなかったので、 インスピレーションや
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M ik a N a k a b d ra
手法を得た ことは大きな学び となった。
3 . 最後 に : 研 修から得 たこと
半年の研修を通 じて得たものは、 なんといって もリスク ・ マネジメン トに関する大まかな知識
を得 られた ことである。 リスク ・ マネジメン トは、 これか らの 日本のN P O には不可欠な とりく
みであると実感 した。 リスク ・ マネジメン トは、 ボランティア団体なのか、 スタッフが何百人も
いるN P O なのかにかかわ らず、 また活動内容や地理的範囲にかかわ らずあまね く必要である。
毎 日のように保険やボランティア選定、 理事の責任な どについての質問が N O R M A C に寄せ ら
れていて、 電話でそのような質問をうけるだけで も勉強になった。
そ して、 実地研修の場は少なかったもののコンサルティング手法についても触れることができた。
私がマネジメン トやコンサルティングに関心があったのはの N P O の組織力を高める手法や理論
を身につけることで 日本の非営利セクターに貢献したいということがあったか らだが、 新たに組織 ・
事業評価 について も関心 を持つようにな り、 ワシン トンD .C .やニュー ヨークな どで N P O の事
業や組織 を評価 しているN P O を訪問できた こともよかった。 そ して、 ブックレッ ト等の作成が
できた ことは、 成果が 目に見える形で残るだけでな く、 インタビューする際にN O R M A C のこ
とや リスク ・ マネジメン ト、 ブックレッ トを作成する目的な どについて繰 り返 し口頭や書面で説
明することとな り、 理解や洞察を深める助けとなった。
それだけでな く、 そ しておそ らく一番大きな ことは、 N O R M A C はもちろんの こと、 訪問 し
た N P O な どとのネ ッ トワークを築けた ことだ と思っている。 ワークショップをともに受講 した
人たちや、 訪問 した先のN P O スタッフな どとの交流をこれか らも続けていきたい。 半年間のワ
シン トンD .C .での研修 を単なる過去のでき ごと、 想い出 として胸 にしまうのではな く、 常 に自
らの活動や思考の糧 として常に想起 し、 そ して継続 した交流の中で新たな刺激を相互に与えつづ
けていくつもりである。
ヽ∫
ー
∃
巨
1 . リスク・マネジメントをめぐる背景
リスク ・ マネジメン トがマネジメン ト全般 にかかわるものであることは、 まだまだアメリカで
も十分に認知されているところではない。 しか し、 アメリカにおけるN P O が加入できる保険の
多さは 日本 とは完全に異なっていることを挙げなければな らない。 保険の適用範囲について、 N
P O の活動にあわせて柔軟に定款を書き換えることができるし、 保険会社によって、
「 (一般に)
この種類の保険商品はこの会社が N P O 向けにいいものを出している」 という評判や実績があり、
たいていのN P O は複数の保険会社か ら自分が必要な保険商品 (包括的責任保険や 自動車保険、
役員賠償責任保険な ど) を購入 している。 「アメリカは訴訟社会だか ら、 N P O も訴え られるこ
とがないわけではない」 という言葉を、 今回何度 も耳にした。
アメリカでN P O のリスク ・ マネジメン トについての文献できちんと本としてまとまったものは、
N O R M A C 以外か らはほとん ど出ていない。
2 . 高いマネジメントに対 する認識 と専 門家 による実践 的な支援
アメリカでは、 N P O にマネジメン トは必要な ものだ という意識が根づいている。 ただ し、 こ
のような事情 とは裏腹 に、
よいのだろう」 とか、
「こういうことをしないといけないと聞いたが、 いったいどうした ら
「一体何 をどうした らよいのだろう」 というレベルでの疑問や問題に遭遇
している人たちが多いようだ。
一方で このようなニーズに応えるべ く、 マネジメン ト手法 も多 く打ち出されている。
ただ し、 アメリカのN P O でのマネジメン トをとりまくいわば 「素人」 と 「専門家」 の二分化
とも呼べるこのような実情は、 そのまま互いの接点がないまま学術的あるいは技術的にマネジメ
ン ト手法を極めようとする専門家 と、 それを 「実務離れ している」 と見放す素人 という二集団を
作 り出す ことには必ず しもなっていない。 N P O 運営支援が浸透 しているため、
「使える」 手法
を作 り出し実践 していく専門家が評価 される傾向にあることが影響 していると思われる。
コンサルタン トを起用できるだけの予算がないN P O はアメリカにも多い。 しか し、 コンサル
タン トを雇 うために助成金を財団か ら得た り、 財団が 「このN P O が助成金を申請 してきた事業
はたいへんよいものだが、 実際に運営する団体の組織力は疑問だ。 是非 この事業に助成 したいし、
助成する限 りは効率的 ・ 効果的な運営をしてほしい。 ひいては運営に関 してコンサルタン トを雇
い運営改善をすることを助成条件 とする」 という決定を下す ところもある。 日本で もこのような
姿勢が財団に見 られれば、 マネジメン トの重要性 ・ 必要性が N P O によ り浸透するだけでな く、
実践的なマネジメン ト手法 もよ りよいものが開発 され、 コンサルタン トを利用することが金銭的
にもN P O にとって可能 となるだろう。 そ してそれは、 社会的に意義ある事業が世に送 り出され
成功する可能性 を高めることにつなが り、 社会にとって も利益である。 財団も、 自分の助成金が
有効 に使われた と誇れることになるか ら、 日本で も必要であると思 う。
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M ik d N d k d b d rd
3 . 多様 な専 門 的サービスとサービスを特 化 した N P O が成功する素地
N P O に提供されるサービスが実に多様であることも日米で事情がずいぶん異なる。 会計、 監査、
法律扶助、 共同購入、 保険、 コンサルティング、 アウ トソーシング、 広告、 出版 といった、 あ ら
ゆる面で営利 ・ 非営利を問わず N P O を対象にしたサービスがある。 これ らサー ビスを利用する
ことでスタッフが 自分の本来業務以外のことに時間と労力をとられることが少な くなる。
さらに日米非営利セクターで決定的に違 うのは、 アメリカではマネジメン トのある側面にのみ
焦点をあてた活動をしているN P O が成功できる (定評を得る) こと、 マネジメン ト手法 とツー
ルを確立 し評価を得るN P O も多いことである。 このような、 超専門的ないわゆる中間N P O は、
アメリカにおけるN P O 史の中では比較的新 しく登場 している。 限 られた例を挙げると、 全米 レ
ベルでアメリカ非営利セクター全体の権益擁護を行ない、 誰 もが参考 にする統計を発表 している
In depen den t Sectorでも創立20 周年、
「N P O 理事に関することを訊きたければここに訊け」
というN ation al C en ter for N on profit B oardsが 12 年、 いまやボランティア活動推進の中心的
役割を担 うP oin ts of L igh t F ou n dation に至っては10 年である。 コミュニティ ・ レベルで活動
するN P O でも同様のステータスを確立 しているところもある。
4 . 増 えるコラボレーション
アメリカの非営利セクター事情での最近の傾向として、 ①競争の激化 (彰合併 ③ コラボ レーシ
ョンが挙げ られると思 う。 これ らは互いに密接な関係を持 っている。 競争の激化 というのは、 非営
利セクター内あるいはN P O と企業な どセクター間でのサー ビス提供における競争である。 同じ
よ うなあるいは近隣の地域で同様のサー ビスを提供す るN P O 同士のせめぎあいや、 従来N P O が
提供 していたサー ビスに企業が参入 した りあるいはその逆 もある。 N P O の場合、 ある一定のサ
ー ビスを提供するのに、 営利企業を設立するケースもある。 また、 N P O が従来中心 となって提
供 しているサービス (福祉サー ビスな ど) を企業が開始する場合、 必ず しもN P O を設立するので
はないようだが、 単なるフィランソロピー という概念を越えたサー ビスを行なっているところも
ある。 このような競争の延長線上に、 合併やコラボ レーションが見受けられることがある。 クライ
アン トや助成金のとりあいの末にN P O が共倒れにな らないようにと、 あるサー ビスや地域にお
いては競争をさける、 あるいは異業種 N P O 同士が互いにないものを補い合 う形でコラボ レーシ
ョンをする場合、 あるいはいっそのこと合併 してしまおうという場合など、 その結末は様々である。
あるいは、 政府、 企業、 N P O 間でのコラボ レーションもある。 サポー トセ ンターで受講 したワー
クショップの中にもコラボ レーションに関するものがあったが、 講師 もコラボ レーションが増加
するにつれて問題 もおきてきていることを指摘 していた し、 参加者 も自らが経験 した問題や悩み
を次 々と他の参加者 と共有 していたので、 切実な問題なのだ と実感 した。 何でも文書化するのが
あた りまえというのがアメリカと思っていたが、 やは りお互いが 「コラボ レーション」 という言葉
を勝手に解釈 した り、 相手に対 して心の中に抱いていた期待 というものが後 になって相手 と共有
できていないことを認識 し問題になることが多いらしく、 日本 と似ているな と思 う面もあった。
5.
非 中央集権 制
アメリカで驚 くのは、 必ず しもワシン トンD .C .か らN P O の トレン ドが始 まって他の地域 に
ひろがるとは限 らないことだ。 ワシン トンD .C .にオフィスをお く全米規模の活動をする団体は、
他の地域で同様の活動をする団体の取 りまとめ役になっていた としても、 歴史が浅かった り、 規
模が小さかった りする。 そのような N P O の傘下 にある地域 N P O の方が大きく、 歴史 も実績 も
あるというケースも珍 しくない。 日本で も、 全国的に活動を展開する東京 にオフィスのある団体
を訪ねてみればスタッフは数人 しかいなかった、 というのは珍 しい話でないので、 意外な共通点
とも言える。 ただ し、 全ての情報や N P O マネジメン トの技術がワシン トンか らすべて普及 され
ているわけで もない。 州 ごとに大きく法律が ことなるとか、 ワシン トンにはあくまでもロビイン
グ機能 しかおいてお らず、 活動や意思決定機関は別 といういないというN P O も多いという事情
もあるか らかもしれない。 それにして も全国各地に (全米で も知 られている) コンサルタン トや
N P O マネジメン ト支援団体、 研究機関な どがあ り、 各地にN P O のみ、 あるいはN P O を中心
に法律や会計、 監査、 マネジメン ト支援を提供する営利 ・ 非営利の組織が散 らばっていることは、
アメリカ非営利セクターの層の厚 さをそのまま反映 していると言える。 日本 も地域で活発に活動
する支援団体が増えてきているが、 まだまだ東京中心にみ うけられるのとは違 うという感がある。
6 . 大海 の水も一滴 から-
集 団 になって大 きな顧客 となる
W ash in gton C ou n cil of A g en ciesや M ary lan d A ssociation of N on profit O rg an ization s
な ど、 state association と言われる州や地域の N P O (50 1 C 3 団体が中心) をとりまとめるよ
うな組織が仲介 して保険やオフィス用品な どを格安 に提供する役割を果た しているのは、 一方で
小さな N P O は単独ではマーケ ッ トでの存在はとるにた らぬものだが、 それが何百 ・ 何千 と集ま
ることで大きな存在 として認め られ単価 も安 く商品が購入できるようになるのは、 いい考えだ と
思った。 日本でも同じような状況を作 り出す ことができる土台があると思 う。 各地のN P O 運営
支援団体な どが このような役割 を果たせるように、 保険会社や各企業 とN P O との間をとりもっ
た らよいのではないかと思 う。 法人格の有無にかかわ らずオフィス用品や保険商品は必要なので、
潜在的なマーケ ッ トは、 日本で も特定非営利法人数以上の大きさがあるはずだ。 地域のサポー ト
セ ンターが企業 と交渉することも可能だ と思 う。
74
M ik a N d k a b a ra
1 . 日本でのリスク・マネジメントの普 及
まず、 日本でもリスク ・ マネジメン トの必要性 をひろめていきたい。 日本では企業に対するリ
スク ・ マネジメン トも新 しいので、 N P O に対するそれはもっと身近なものではない。 企業での
リスク ・ マネジメントとしては、 日本で何がどのようにひろめられているのかを把握すると同時に、
できれば企業セクター との提携 も含めて N P O のリスク ・ マネジメン トの普及に貢献できればと
思っている。
また、 帰国 してか らもN O R M A C と協力し、 日本でのN P O のリスク ・ マネジメン トについ
ての啓発 ・ 広報活動、 そ して技術支援や、 研修期間中に考えていたいくつかのプロジェク トにつ
いても、 日本で実施するために、 資金調達 も含めて可能性を探っていきたい。 この分野において 日
米の掛け橋にな り、 これが両国の非営利セクターに何 らかの貢献につながるのであれば幸いである。
今年に入ってかな りN P O が加入できる保険が出てきているようだが、 N P O の場合はとくに 「リ
スク ・ マネジメン ト- 保険」 だけではないということをよ りひろめていきたい。 具体的には、 私
の今までの活動分野である人権分野、 その中でも女性のシェルターや虐待をうけている女性や子
どもへのホッ トラインをもうけているところとの連携。 また、 特定非営利法人の理事や事務局長
自身の責任 とリスク・マネジメン トの必要性 に関する啓発 と、 実際の リスク ・ マネジメン ト ・ プ
ランの策定へのコンサルティングあるいはア ドバイスな どをめざしたい。
2.
N P O マネジメントに関するコンサルティングの確 立
コンサルティング業務の手法確立についても、 上記のリスク ・ マネジメン トに関するア ドバイ
スも含めて、 てがけていきたい。 日本では、 アメリカのような料金体系でコンサルティング ・ サ
ービスを提供することはまだ無理だと思 う
。
日本では、 マネジメン ト強化のためにスタッフを雇
用するだけの金銭的余裕があるN P O はまだ少ない。 日本でも実質的にはコンサルティング業務
をてがけている人たちはいるが、 ア ドバイザー としての役割だけではな く、 もっとマネジメン ト
のあらゆる側面につっこんだ形で、 場合によっては 3 ケ月か ら半年以上の調査や具体的な改革案
策定をするな どの業務が普及すればよ り各 N P O のマネジメン ト能力向上に役立つのではないか
と考えている。
しか し、 今まで N P O マネジメン トに対する 日本での関心が これだけ高まっているのに、 具体
的なマネジメン ト ・ プランを立てたところをほとんど聞いた ことがないのは (私が寡聞にして知ら
ずということもありうるが) 、 視察な どでは具体的なプランの立て方まではカバーできていないか ら
だと思 う。 そ こで、 資金調達ができれば、 まず各地のN P O マネジメン ト支援団体や行政機関を中
心 にヒアリングな どを通 じてマネジメン ト支援に関するニーズ調査 とアメリカでのコンサルティ
ング業務の提供方法や提供内容な どをもとに、 コンサルティング業務の進め方や、 実際の手法を
確立できたらと思っている。 もちろん、 この中にはリスク ・マネジメントに関するものも含まれる。
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3 . 日米および 日本 国 内でのネットワーキングのさらなる強 化
最後 に、 今 N O R M A C を含めて様々な N P O を訪問 した り関係者 と話をしてみると、 かつて
日本か らの訪問者がいるということがわかるケースがたいへん多かった。 おそ らくこれ らの訪問
の報告書 というのは作成されているはずであるがなかなか関係者以外には伝わることはない。 ま
た同様の問題意識で視察ツアーを組んでいる複数のグループが、 あまり時をおかず して同じよう
な団体を訪問することもある。 アメリカに視察に行 く前に他に訪問 した人たちがいないか、 いた
ら何をL に行ったのか、 何を学んできたのかを調べ られた り、 このような 日本国内のグループ同
士が交流することで情報共有や意見交換をできれば、 それによ りアメリカの N P O が経験 してき
た ことが 日本でよ り有効に活かされるのではないか と考える。 同時にアメリカのN P O マネジメ
ン トや行政 とのパー トナーシップ、 リスク ・ マネジメン トな ど、 日本で も関心が高い問題、 ある
いはとりくみが必要な問題に関する情報や人の交流の起点を作 り上げていければ、 日米の非営利
セクターの橋渡 しと同時に日本の非営利セクターへの貢献が何 らかの形でできるのではないか と
感 じている。 これはワシン トンD .C .で様 々な人 と話 した中で感 じたものであ り、 具体的な構想
に至っているわけではないが、 さらに構想を練 り、 日米で協力して くれる人たちを確保 して実施
していきたい。
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M ik a N d k a b a rd
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