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高マトリックス試料の残留農薬を 高速分析するための新しいツール

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高マトリックス試料の残留農薬を 高速分析するための新しいツール
高マトリックス試料の残留農薬を
高速分析するための新しいツール
アプリケーション
食品分析
著者
Mike Szelewski and Bruce Quimby
Agilent Technologies, Inc.
2850 Centerville Road
Wilmington, DE 19808-1610
USA
カラムを適切に使うことによって、これまでよりもはるかに短い
分析時間を実現しながら、従来と変わらない分離能を保つことが
できます。
しかし、食品のような複雑なマトリックスを持つ試料の残留農薬
のガスクロマトグラフィー/質量分析( GC/MS)は、このアプ
ローチがうまくいかない応用分野の 1つです。このような分析で
は、大きなマトリックスピークに対処しながら、化合物に対する
概要
検出限界を低く抑えるため、高速化する際にカラム保持容量を落
とさないようにする必要性があります。クロマトグラフィーの能
近年のGC/MSハードウェアおよびソフトウェアの発達によって、
力は速度、分離能、保持容量という3つの相関関係で決まるため、
高度に複雑なマトリックス試料でもこれまでにない速度で分析で
同じ保持容量を保ったまま速度を上げるためには分離能を犠牲に
きるようになっています。マススペクトルデコンボリューション
する必要があります。問題は、干渉成分が存在する試料中で検出
や不活性で信頼性の高いエフリューエントスプリッタ、カラム
された分析対象化合物を同定するためには、クロマトグラフィー
バックフラッシュ機能といった新しいツールを組み合わせること
の分離能を欠くことができないということです。しかし、本稿に
によって、分析時間を大幅に短縮できます。クロマト分析時間や
示すように、高速分析におけるクロマトグラフィー分離能の低下
分析後の空焼き、データ解析ステップを高速化することにより、
は同定段階においてスペクトルデコンボリューション[2]と選択的
従来のメソッドと比べて少なくとも分析時間を3分の1に短縮する
元素同時検出を行うことによって十分に補うことができます。
ことが可能です。こういったツールは、食品の不純物検査のよう
な高いレベルのマトリックスを持った試料の分析にとりわけ有効
です。食品中の残留農薬に加えて、近年ではテロリズムの脅威に
よって食品への有毒物質の意図的な混入が懸念されています。こ
本システムは、GC/MSと、リン、硫黄、マススペクトルのデータ
を同時収集するデュアル炎光光度検出器(DFPD)から成り立って
います。
の記事は、食品中の化学汚染物質をすばやくスクリーニングする
GCカラムの溶出物は、質量検出器(MSD)を2として2:1の割合
ための GC/MS システムについて、特に農薬、有機リン化合物、
で2台の検出器に分けられます。本システムはAgilent農薬ライブ
有機硫黄化合物に重点を置いて説明しています。
ラリ[1]の保持時間に対して3倍速でロックされており、このライ
ブラリには世界中で使われている 567もの農薬の保持時間および
はじめに
近年、ガスクロマトグラフィー(GC)メソッドの分析時間を短縮
スペクトルが収録されています。試料は、フルスキャン電子衝撃
イオン化(EI)モードMSによって分析されます。正確な保持時間、
元素、マススペクトルデータの組み合わせによって、特定の目的
するための技術開発が進んでいます。
成分がスクリーニングされます。また、 MSによる同定を行うた
メソッドトランスレーション[1]のようなツールによって、化合物
め、炎光光度検出器(FPD)のデータによってリン化合物や硫黄
の相対的な溶出順序を正確に保ちながら、既知のファクタを使っ
化合物といった分析対象以外の成分がハイライトされます。
て分析時間を短縮できるようになりました。短く、直径が小さい
MSデータは、保持時間(RT)、イオン比、スペクトルの相互相関
トリックス成分がMSDに入ることを防いでMSソースの汚染を減
に基づいて、標準の定量ソフトウェアを使ってスクリーニングさ
少させます。また、それによってカラムの寿命を延ばすこともで
れます。MS データはまたスペクトルのデコンボリューションソ
きます。
フトウェア(マトリックスからスペクトル干渉成分を大幅に減少
ここで使われているアプローチは、大きく分けて 3つの方法で分
させる)によって処理されます。デコンボリューションされたス
析時間を減少させます。クロマト分析時間の短縮、データ解析の
ペクトルはその後、分析対象化合物リストに対して検索がかけら
自動化、空焼き時間の短縮です。その他の注目すべきメリットは、
れます。検索でヒットした項目があれば、さらにメインNISTライ
MSDをベントせずにカラム、注入口ライナを交換できることと、
MSソースをクリーニングする必要性が少なくなることです。
ブラリが検索されて確認が行われます。このプロセスはAgilentデ
コンボリューションレポート作成ソフトウェア(DRS)によって
自動化されており、データ解析においても大幅な時間短縮をもた
システム構成
らします。
ここで説明されるシステムでは、複雑な試料の分析に大幅な時間
節約をもたらすテクニックの一つ、カラムバックフラッシュが使
ここで使用されているシステム構成が図 1に示されています。主
な構成要素は以下のとおりです。
用されています。バックフラッシュはスプリッタによって行われ
ます。このテクニックは分析の最後に実行し、従来の空焼きより
もはるかに早く、しかも低い温度で重い残留物を取り除いてくれ
ます。これによってカラムブリードが高くなるのを防ぎ、重いマ
オートサンプラ
Auto-sampler
デュアル炎光光度検出器
Dual Flame
Photometric Detector
硫黄モード
Sulfur
リンモード
Phosphorus
メークアップガス付き
Effluent Splitter
エフリューエントスプリッタ
with Makeup
AUX EPC
0.814 m ×
0.18 mm id
Column
6890N GC
図1
2
15 m × 0.25 mm id × 0.25 um HP-5MS
システム構成
1.1 m ×
0.18 mm id
5973 Inert MSD
主な構成要素
DRSは、もともと複雑な試料中の微量の化学兵器を検出するため
高速オーブン:6890N 220Vオーブン(オプション002)を使えば、
に開発されたNISTのAMDISデコンボリューションプログラムを利
15 m HP-MSカラムで農薬分析メソッドをちょうど3倍の速さ(14
分)で実行することができます。さらに220V GCがSP1 2310-0236
(後部注入口の下のオーブン背面にMSDインタフェースを設置す
る特殊改造)とG2646-60500オーブン挿入アクセサリを装備して
いる場合、さらに4.8倍(9分)という速さで分析することができ
ます。また、オーブンの冷却時間も短くなります。
用しています。DRSは、成分の同定を以下の3つのレベルで行いま
す。 (1) ChemStationによる、保持時間と4つのイオンの一致に基
づく同定。(2) AMDISによる、「クリーンスペクトル」のイオンの
完全一致およびロックされた保持時間に基づく同定。(3) NIST02
検索による、147,000以上の化合物を収録した化合物ライブラリの
検索に基づく同定。
デュアルFPD 6890N Option 241は、リンと硫黄の2つの光学検出
チャネルを持つシングルフレーム炎光光度検出器です。DFPDから
設定パラメータ
のシグナルは、MSデータと同時にMS ChemStationによって収集、
推奨される機器パラメータの一覧は表 1に示されています。これ
保存、処理されます。FPDデータは複数の目的に使えます。新規
らの条件は出発点であり、状況に応じて最適化する必要があるか
殺虫剤や合成神経剤といった分析対象化合物にリストされていな
もしれません。
い有機リン化合物をハイライトします。同定された化合物の保持
時間と同じ時間に検出された元素があれば、同定の確認のために
使うことができます。FPDでのレスポンスは、定量、半定量分析
で使うことができ、特に同定された化合物の較正標準試料がない
ときに有効です。
マイクロ流体スプリッタ 6890N Option 889は、金属カラムフェラ
ルと拡散接合技術を組み合わせて不活性で使いやすく、リークが
なく高温のカラム溶出スプリッタとなっています。このスプリッ
タは、補助( Aux )電子ニューマティクスコントロール( EPC )
を使ってメークアップガス(6890Nオプション301)の圧力を一定
に保ちます。Aux EPCメークアップガスは、分析実行の終わりに
マトリックスの量をカラム容量と一致させるため、スプリット注
入が使用されました。柑橘油は、必要以上の量が注入されたら保
持時間をシフトさせるためです。マトリックスがかなり少ない試
料ならスプリットレス注入が可能です。注入口ライナは、グラス
ウールを含まず、活性点が少ないものを使用します。試料は内部
ライナの形状によってスプリット注入に適した混合が行われます。
表1および表2で示されている昇温を行うためには6890 220Vオー
ブンが必要となりました。このオーブンプログラムがリテンショ
ンタイムロッキングされた農薬データベースをちょうど 3倍速に
するために必要です。
圧力を上げるようにプログラムすることができ、またその時に注
15 m HP-5msカラムは、従来メソッドで使われている30 mカラム
入口の圧力を大気に近いレベルにまで下げることもできます。こ
と同じ相比のものを使用します。この短いカラムは、ちょうど 3
の操作によって、カラム内の流れが逆方向になり、注入口のスプ
倍速にスケールされたメソッドの流量で分析が可能です。カラム
リットベントから重い物質をバックフラッシュします。またAux
はスプリッタに接続されているため、出口は「指定なし」として
EPCは、MSDをベントせずにカラム交換や保守を行うことを可能
示されています。スプリッタ圧力は、補助EPCモジュールによっ
にします。カラムフィッティングがスプリッタから取り外される
て3.8 psigに保たれます。
とき、メークアップラインからのヘリウムがフィッティングを
パージし、空気がMSDに入らないようにします。もしカラムをス
5973 inertパフォーマンスエレクトロニクスによるデータ収集のサ
ンプリングレートは「1」になっており、通常の設定の「2」より
プリッタにつけたままで注入口から取り外した場合、ヘリウムが
も高速に設定されています。データポイントが多ければ、波形処
カラムを逆方向に流れ、カラムを通って注入口から出ます。注入
理がより簡単になり、短いカラムを使うために起こる分離能のロ
口の保守やカラム先端のトリミングをするためにMSDを冷やした
スを補うためのデコンボリューションもうまく行えます。
りベントしたりする必要もないので、空気が高温のソースに入り
マイクロ流体スプリッタのパラメータは、使用される検出器に必
ません。
要な流量を満たしつつ、検出器の間の目標スプリット比をもたら
MSDシステム:パフォーマンスエレクトロニクス搭載 5973 inert
拡張ターボ仕様(G2579A)EI MSが使用されています。このシス
すよう選択されています。このシステムは、化合物データを採取
テム構成では、感度はそのままに、フルスキャンを高速化するこ
とに重点が置かれています。また、MSD側を2として溶出物を2:
とができます。このスキャン速度は高速クロマトグラフィーに
1に分けるのに合った設定にもなっています。これらのパラメー
よって生成された幅の狭いピークに対応しています。高性能ター
タはスプレッドシート計算ソフト(スプリッタに付属)に入力さ
ボポンプは、高速クロマトグラフィーとバックフラッシュに必要
れ、それに基づいて検出器リストリクタの長さおよび直径が計算
な流速に対応するために必要とされます。
されます。
している間にMSDへの流量が4 mL/minを越えないようにするこ
DRSソフトウェア(G1716AA):MSデータのスペクトルデコン
ボリューションによって、重なり合ったマトリックスピークの中
での化合物の同定を可能にします。この操作によって、必要とさ
れるクロマトグラフの分離能を大幅に下げることができ、その結
果、分析時間を大幅に短縮することができるようになります。
3
表1
ガスクロマトグラフおよび質量分析計の設定パラメータ
GC
ガスセーバ
Agilent Technologies 6890
EPCスプリット/スプリットレス
スプリット、注入量1.0µL
250°C
23.84 psi
10:1
44.1 mL/min
48.1 mL/min
OFF
ガスタイプ
ヘリウム
注入口ライナ
Siltek Cyclosplitter、内径4 mm、Restek部品番号20706-214.1
オーブン
220V
°C/min
次の温度(°C)
ホールド時間
昇温4
75
9
24
50
70
150
200
280
320
0.67
0.00
0.00
3.33 (農薬昇圧の終わり)
50.0 (オイル溶離の終わり)
トータル分析時間
農薬を溶出するのにかかった時間:13.96 min
トータル分析時間
柑橘油から重い成分を溶出するのにかかった時間:64.76 min
平衡化時間
0.5 min
325°C
注入口
モード
注入口温度
圧力
スプリット比
スプリット流量
総流量
オーブン昇温
初期温度
昇温1
昇温2
昇温3
オーブン最高温度
モード
Agilent Technologies HP-5MS、P/N 19091S-431
15.0 m
0.25 mm
0.25µm
圧力一定 = 23.84 psi
注入口
フロント
出口
指定なし
出口圧力
3.8 psi(スプリッタへのaux圧力)
カラム
長さ
内径
膜厚
バック検出器(FPD)
エア流量
250°C
75.0 mL/min
100.0 mL/min
エアガスタイプ
ボンベエア
モード
メークアップガス流量一定
温度
水素流量
メークアップガス流量
60.0 mL/min
メークアップガスタイプ
窒素
フレーム
ON
5.00
ON
発光オフセット
光電子増倍管
4
表1
ガスクロマトグラフおよび質量分析計の設定パラメータ(続き)
シグナル1
シグナル2
データ取込み速度
5 Hz
データ取込み速度
5 Hz
タイプ
バック検出器
タイプ
フロント検出器
データ保存
ON
0.0(OFF)
0
OFF
0
データ保存
ON
0.0(OFF)
0
OFF
0
ゼロ
範囲
高速ピーク
アッテネーション
ゼロ
範囲
高速ピーク
アッテネーション
AUX圧力5
内容
ガスタイプ
ヘリウム
初期圧力
3.80 psi
0.00 min(この値はオーブンの昇温にしたがって変化)
初期時間
チューニングファイル
MSD
Agilent Technologies 5973 inertパフォーマンスエレクトロニクス
Atune.U
モード
スキャン
溶媒遅延時間
1.00 min
Atune電圧
45 amu
450 amu
0
1
6.68
150°C
230°C
280°C
EM電圧
低質量
高質量
スレッショルド
サンプリング
スキャン/sec
四重極温度
イオン源温度
トランスファライン温度
スプリッタ
スプリット比
MSDリストリクタ
DFPDリストリクタ
Agilent 6890NオプションOption 889
2:1 MSD:DFPD
長さ1.1 m、内径0.18 mmの不活性化処理フューズドシリカチューブ
長さ0.81 m、内径0.18 mmの不活性化処理フューズドシリカチューブ
バックフラッシュの設定パラメータ
注入口圧力を1.1 psigまで徐々に下げるのと同時に、Aux EPCスプ
バックフラッシュの条件は表 2に示されています。これらの条件
リッタの圧力は徐々に23 psigまで上げられます。このカラム出口
は出発点であり、試料マトリックスに合わせて最適化する必要が
での圧力上昇と注入口での圧力降下が起こることによって、カラ
あるでしょう。この一覧で示されているのは、表 1と異なる条件
ムがバックフラッシュされます。Aux EPCのバックフラッシュ圧
だけです。
力は、MSDへの流量を8 mL/minまでに制限するように設定され
カラムを320°Cで50分間空焼きする代わりに、重いマトリックス
成分はカラム注入口へバックフラッシュされ、スプリットベント
から排出されます。この操作は300°Cで5分間の実施で完了するた
め、分析時間を45分間短縮することができ、またカラム寿命を延
ばし、冷却時間を短縮することができます。
カラム注入口の圧力は、EPCの昇圧設定機能を使うことによって
1.1 psiまで下げられます。バックフラッシュの最後に初期の状態
へ戻されます。
ています。これは、Agilent流量カリキュレータソフトウェアプロ
グラム(スプリッタキットに付属)によって計算されます。この
カリキュレータは、バックフラッシュ温度300℃でMSDスプリッ
タリストリクタ(1.1 m、内径0.18 mm)に通る際の最適な流量を
もたらす圧力を求めることができます。その結果、23.6 psigの圧
力で8 mL/minの流量となることがわかり、23 psigが使用される
ことになりました。
バックフラッシュ時間は実験によって求められるもので、試料マ
トリックスによって決まってきます。その時間を求めるプロセス
5
は、従来の長時間ホールドのブランク分析を行った後にバックフ
ラッシュ分析を実行してみて、重い成分が完全に取り除かれるか
見るというものになります。もし取り除くことができなければ、
もっと長いバックフラッシュ時間で同じプロセスを繰り返します。
おおまかな目安として、逆流の流量で空隙時間を 5倍した時間に
バックフラッシュ時間を設定することから始めます。Agilent流量
カリキュレータソフトウェアは、「注入口圧力」を23 psig、「出口
圧力」を1.1 psig、温度を300°C、ホールドアップ時間(空隙時間)
を 0.423 分に設定して使用します。この目安によれば、カラムは
2.12分間バックフラッシュすればよいことになります。たいてい
の重い成分を取り除くのにはこれで十分ですが、このケースでは
すべて取り除くには5分間が必要でした。
バックフラッシュ時間終了時に、Aux EPCは、初期条件に戻りま
す。
MSDは、1∼13.96分の範囲でデータを採取するようにタイムプロ
グラムされています。農薬はすべてこの時間内に溶出します。
表2
バックフラッシュガスクロマトグラフおよび質量分析計の設定パラメータ。ここで示されているのは表1と異なる条件だけで、そ
れ以外の条件は表1を使用。
バックフラッシュオーブン条件
°C/min
次の温度(°C)
ホールド時間
昇温4
75
9
24
50
70
150
200
280
300
0.67
0.00
0.00
3.33 (農薬昇圧終了)
5.40 (オイルバックフラッシュ終了)
トータル分析時間
農薬を溶出するのにかかった時間:13.96 min
トータル分析時間
柑橘油から重い成分を溶出するのにかかった時間:19.76 min
オーブン昇温
初期温度
昇温1
昇温2
昇温3
バックフラッシュカラム条件
モード
昇圧
昇圧
psi/min
次の圧力(psi)
ホールド時間
99
99
23.84
1.1
23.84
13.96 (農薬昇圧終了)
5.57 (バックフラッシュ時間)
0.00
psi/min
次の圧力(psi)
ホールド時間
99
99
3.8
23.0
3.8
13.96 (農薬昇圧終了)
5.61 (バックフラッシュ時間)
0.00
初期圧力
昇圧1
昇圧2
バックフラッシュAUX 5条件
昇圧
初期圧力
昇圧1
昇圧2
バックフラッシュMSD条件
MS検出器エントリ時間
時間(min)
状態(MS ON/OFF)
13.96
OFF
6
結果
25の農薬の混合物が、1倍、3倍、4.8倍の速度で分析実行されまし
た。そのトータルイオンクロマトグラム(TIC)は図2に示されて
います。
分離能にいくらかのロスが見られますが、ショートカラムの最適
条件に近い流量で分析実行されているため、そのロスは限られて
います。分離能のロスは、DRSと共にパフォーマンスエレクトロ
ニクスの高速スキャン機能を使うことによって緩和されています。
1×
30 m
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
30.00
35.00
40.00
3×
15 m
2.00
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
4.8×
10 m
1.00
図2
1.50
2.00
2.50
3.00
3.50
4.00
4.50
5.00
5.50
6.00
6.50
7.00
7.50
8.00
8.50
3つの異なる速度で分析された農薬テストミックスのTIC。すべてのカラムは同じ相比を持っています。
7
ストレートのレモン油が3倍速条件を用いて分析されました。TIC
は、DFPDリン(P)および硫黄(S)データチャネルと共に図3で
示されています。 ChemStation ソフトウェアは、 MSD データを
伴ったGCデータの2つのシグナルを採取することができます。農
薬は図で示されている14分間のウィンドウ内で溶出します。しか
しマトリックスは320°Cでさらに50分間溶出し続けます。
TIC
7.441 min
FPD (P)
7.257 min
FPD (S)
2
図3
8
4
6
8
3倍速メソッドで分析されたレモン油のMSデータとDFPDデータ。
10
12
14
PおよびSクロマトグラムは、無数の農薬が存在している可能性を
示しています。最も大きなPピーク(7.441 min)はまたSも含んで
います。 PBM リバースライブラリ検索によって、このピークは
Methidathion(C6H11N2O4PS3)であることが45の一致率で同定さ
れました。またターゲットイオンおよび3つのクォリファイアイオ
ンを用いても同定されました。
7.257 minでの、ピーク未処理の頂上スペクトルは、図4の最初に
示されています。この Pを含む化合物はライブラリ検索結果の上
位20の内では一致するものがありませんでした。またそれは範囲
外の比率のため、ChemStationのターゲットおよびクォリファイ
アイオン基準によっても同定できませんでした。
69
81
131
93
109
55
7.257 minにおける未処理スペクトル
Raw spectrum at 7.257 min
121
137
159
171
40
60
80
100
120
140
160
131
100
97
206
227 241
180
200
220
256 270 283 296
240
260
280
314
300
329
320
デコンボリューションされたスペクトル
Deconvoluted spectrum
159
86
58
187
329
296
0
76
65
100
159
97
50
図4
171
86
80
198
226
252
296
329
Library spectrum
of Mecarbam
のライブラリスペクトル
Mecarbam
131
110
140
170
200
230
260
290
320
上 ― レモン油の7.257 minでの、ピーク未処理マススペクトル。
下 ― 7.257 minピークでの、デコンボリューション後のスペクトルとNIST02ライブラリのMecarbamスペクトルとの比較。
9
DRS レポートは図 5 に示されています。 7.257 min のピークは、
DRSソフトウェアによってはっきりとMecarbamであると同定さ
れました。Agilent Pesticide AMDISデータベースとNIST02ライブ
ことができました。NIST02ライブラリ検索によって、147,000以
うち2つを、さらにChemStationが見逃した化合物を5つ発見する
ラリの両方と比べてみると、デコンボリューション後のスペクト
合わせ、発見された化合物のすべてが確認されました。DRSの結
上の化合物を収録した NIST02ライブラリを使う AMDISで照らし
ルは72の一致率となっています。また、DRSレポートは溶出時間
果は、 7つの目的化合物のロックされた保持時間において高い一
が予想時間とわずか0.5秒の差であることを示しています。さらに、
致率を示しています。
Sがかろうじて見える状態でPが存在することによってそのことが
確認できます。7.257 minピークのデコンボリューションされたス
ペクトルは Mecarbamの NISTライブラリスペクトルと共に図 4の
どのようなソフトウェアパッケージでも、化合物の同定において
下の図で示されています。
ソフトウェアパッケージをそれぞれ使って手動で処理しようとす
単体ではこのレベルの信頼性を生み出すことはできません。経験
豊かな分析者でも、このような複雑な試料をDRSが使用する3つの
DRSレポートは、通常のChemStationによる定量プロセスによっ
れば 1∼ 4時間はかかるでしょう。 DRSはこのレポートを 2分未満
て発見された化合物の量を示しています。それらの化合物は、意
で作成しました。
味のある値となるために正しく較正されければなりません。この
レモン油において、ChemStationは4つの化合物を発見しました。
DRSのAMDIS部分では、ChemStationが発見したのと同じ成分の
図5
10
レモン油のDRSレポート
図6の上で示されているように、3倍速メソッドでは320°Cで50分
バックフラッシュ
柑橘油は、最後の農薬が溶出した後も溶出し続けるかなりの量の
間かかるので、結果的に分析時間は 65 分となります。バックフ
物質を含んでいます。そのため、これまでのメソッドでは重い成
ラッシュをすれば、図 6の下で示されているようにすべての重い
分のすべてを溶出するのに320°Cで150分間かかります。したがっ
成分を 300°C で 5 分間ほどの間に取り除きます。これは 1 倍速メ
て、表3に示されているように1倍速メソッドのトータルの分析時
ソッドと比べると分析時間が9分の1になったことを意味します。
間は195分となります。
4.8倍速メソッド
表3
メソッド分析時間の比較
カラム
速度
分析時間
農薬
バックフラッシュマトリックスなし
バックフラッシュマトリックスあり
220Vオーブン(SP1 2310-0236)とオーブンインサートアクセサ
30 m
1×
min
42
195
n/a
15 m
3×
min
14
65
20
10 m
4.8×
min
8.75
40.6
12.5
リを使えば、表3に示されているように、メソッドはさらに4.8倍
速にすることができます。10 mカラムを使って減少した分離能の
ため、許容できるマトリックスの量には限度があります。しかし
ながら、柑橘油ほど複雑でないマトリックスなら4.8倍速メソッド
を使ってさらに時間を節約できます。パフォーマンスエレクトロ
ニクスは、S/N比を維持しながら高速スキャンでの分析実行を可
能にします。より高速なクロマトグラフィーでもピークにわたっ
て十分なポイントが保たれます。
Normal bakeout:
通常の空焼き
分 run
:分析時間65
65min
バックフラッシュ時間
Backflush
time range
バックフラッシュ
:分析時間
19分
Backflush: 19 min
run
10
図6
20
30
40
50
60
上 ― 320℃で50分間空焼きを行った3倍速のレモン油分析。
下 ― 300℃で5分間バックフラッシュを行った3倍速のレモン油分析。
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結論
複雑なマトリックス中の農薬分析のために新しいツールが開発さ
れています。これらのツールを組み合わせにより、分析時間と
データ処理時間を大幅に短縮することができます。
●
高速オーブン ― 高速分析に必要とされる昇温プログラム
●
短いカラム ― 3倍速の分析実行でも十分な分離能
●
マイクロ流体スプリッタ ― MSデータと同時に選択的検出を行
うことによってもたらされる信頼性のある分析結果
●
バックフラッシュ ― 分析時間をさらに3分の1に短縮し、また
カラム温度を低く保ち、カラムの寿命も延ばす。
●
パフォーマンスエレクトロニクス ― 高速サンプリングレートで
もS/N比を維持
●
DRS ― 3つのレベルでの目的化合物の同定を2分未満で実行
上記のツールを使って、レモン油の分析時間は、 195分から 20分
(9分の1)にまで短縮されました。DRSは、数時間かかるデータ解
析を数分で実行することができました。
参考文献
1. B. D. Quimby, L. M. Blumberg, M. S. Klee, and P. L. Wylie "Precise Time-Scaling of Gas Chromatographic Methods Using
Method Translation and Retention Time Locking" Agilent
Technologies publication 5967-5820E www.agilent.com/chem
2. P. Wylie, M. Szelewski, and C. K. Meng "Comprehensive Pesticide Screening by GC/MSD using Deconvolution Reporting
Software" Agilent Technologies publication 5989-1157EN
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© Agilent Technologies, Inc. 2004
Printed in the USA
October 13, 2004
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