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防腐処理杭の 10 年間の被害経過

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防腐処理杭の 10 年間の被害経過
林試研報 Bul1.
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浅川実験林苗畑の杭試験
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防腐処理杭の 10 年間の被害経過
雨宮昭二 (1)
井上
・松岡昭四郎 ω. 庄司要作(3)
衛(4)・阿部
寛( 5)
・内藤三夫(6 )
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要
旨 z 浅川実験林前畑において行なっている杭試験における防腐処理杭の 10年間の被害
経過について報告する。試験杭は 3
X 3X60cm のスギ辺材を地中に 30cm まで埋めて試
験を行なった。無処理の辺材は地中,地上ともに 3 年の耐用年数であった。クレオソート泊
処理杭は原液を%。に希釈して吸収最 15........30kgfm 3 にしたものでもまだそれほど被害を受
けていないが , 7.K溶性防腐剤では l反収益が 1 kgfm2 以下のものは大部分 10 年以下の耐周年
数であった。地中に立てておいた杭の合水平は辺材では地中部分が 40........60% ,
地上部分が
15.--.2096 であったが,心材では地中部は 100% 以上のものが多かった。各杭の縦圧縮強度
は被害経過と同じ傾向を示し,腐朽による比重減少率と相関関係を示した。室内放置した処
理材の 11 年後の圧縮強度は処理時より高めの値を示し,長期間経過後でも防腐弗l の木材強度
に対する影響はほとんどないことが明らかとなった口
1.まえがき
木材防腐剤の防腐効力は,その薬剤の殺菌効力と各環境における効力の持続性,すなわち薬剤の物理的
ならびに化学的安定性との総合的な性質として判断しなければならない η 防腐剤の使用される環境ほ多額
多様であるが,大別すれば,気象の異なる地域.屋内と屋外,地中と地上などがある。とれら各環境にお
いて防腐効力に最も影響の大きい因子は空気, 7.K,光,温度,菌類などである。水は木材ーより防腐剤の流
脱または拡散を,空気は防腐剤の分解や菌の生育を,光は防腐剤の分解を,温度の上昇は防腐剤の揮散,
溶解度や分解を,さらに菌類の発育を,菌類ば木材の分解や防腐剤の変質などを促進する。このような各
国子が自然界においてほ相互に関連し合って,非常に複雑な過程をたどって防腐剤の効力を誠退させてい
く。自然界において複雑な変化をたどる防腐効力を,し 1 かにして正しく評価するかという乙とが,つねに
問題にされており,そのひとつの手段として,室内において数か弓という短期間 lζ 防腐効力を推定する各
種の方法が提案されている。
それらの室内試験方法はいずれも,防腐剤相互間の相対的効力を評価するととはできるが,実用的な効
力持続期間すなわち処理材の耐周年数の決定を行なうととは非常に困難である。乙れに対して,野外にお
ける杭試験では,個々の因子の解析は困難であるが,自然界の各因子の総合された結果として,処理材の
耐用年数が決定できるという利点と同時に,実験室では求めえない自然界!とおける各種の変化が処理材に
現われて,防腐剤どとの特性が比較的明りようにとらえられる。しかし,野外試験は防腐効力が大きい薬
1969 年 12 月 25 日受理
(1)
.
.
(6)
木材部
林業試験場研究報告第 230 号
-106 ー
剤ほど長年月を要し,結論を短期間に出しにくい。これでは防腐剤の改良・開発を,効率よく行なうには
非常に不便である。そのため,各国とも最近室内試験において,現在の方法よりもっと適確に実用上の結
果を短期間に推定できる方法の確立をめざして,かなりの努力が払われている。われわれも本試験をはじ
めるにあたっては,室内試験の腐朽重量減少率と野外試験における耐用年数との相関を求め,今後よりよ
い室内試験方法を確立することを一つの大きな目標としている。
このような現状のため,世界各国とも,防腐剤の研究においては,かならず室内試験と野外試験とを併
行して実施しており,野外試験は地域差をも考慮して,数か所に試験地を設けて行なって L 、る。けっきょ
く,防腐剤の防腐効力は現在においては室内説験と野外杭試験,さらには各種の実用試験などの結果を総
合的に検討して,評価しなければ,実用上の諸問題に対して,正しい答えはえられない。
以上のような目的または必要性と,日本のみならず世界で使われている各種の薬剤が,わが国において
野外に使用された場合,どの程度の効力を示すか,諸外国の杭試験結果などと対比する乙とをも考えて,
各地域に同時に同一材料の抗試験を行なうべきであったが,さしあたって 1 か所ということで昭和33年 7
月浅川実験林苗畑に試験地を設けて今日まで至っている。その当時以来試験を行なっている薬剤の種類は
約 40 種,吸収量が 2"""3 種,合計すると約 80 種類となり,杭の本数は全数で約 2 ,∞0 本lζ達している。
被害調査は設置以来毎年 1 回行ない,今日まですでに 10 年を経過している。それらの調査結果をみると,
薬剤によってはかなり大きな変化も現われてきており,多くの興味ある資料もえられたので,まだ本試験
は今後も長くつづける予定であるが,
中間報告的な意味において,
10 年間の被害経過をまとめて報告す
る。
本実験を実行するにあたり,種々ご指導下さった強度研究室の諸氏,ならびに種々と協力下さった浅川
実験林の諸氏に対して深く感謝する。
2.
試験地の概況
試験地の位置は東京都の西部にあたる高尾山麓の浅川実験林苗畑内である。乙の土地は Fig. 1Iζ 示す
ように.ゆるやかな南傾斜地で,まわりには樹木も少なく,全敷地がほとんど同じように陽があたり,水
はけも良い環境で,広さは約 720m 2 である。
気象条件については,試験地で観測が行なわれていないため,近くにある実験林庁舎の観測資料によっ
た。昭和 34 年 (1959年),..,昭和 37 年 (1962 年)までの約 3 年半の観測結果を示すと Table 1 のとおり
である。
土壌は有機質に宮んだ関東ロームであっ
て,多種の菌類が繁殖している乙とはもち
ろんである。ただ,初期の段階では,菌に
よる被害すなわち席朽のみが観察された
が,
5
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6 年経過後,ヤマトシロアリの侵
入を受けて,局部的 lとは腐朽とシロアリの
被害が同時に進行して~, ")る杭も見られるよ
うになってきた。
Fig.l 浅川実験林苗畑内杭試験地
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林業試験場研究報告第 230 号
-108 ー
3.
試験方法
(1)供試杭
x3X60cm
スギ,秋田産,寸法 3
の角材である。材面はすべてプレーナー仕上げである。処理杭用に
辺材を用い,対照材として無処理の辺材および心材を用いた。
(2) 防腐剤および処理液漉度
防腐剤の種類は最初に設置したものほ 18種類,
そのあと随時追加したものは 16 種類となっていて,合
計 34 種類である。そのうち油状のもの 4 種,油溶性のもの 4 種,その他は水溶性薬剤である。
主要な薬剤の処理液の浪度は 2 ......, 3 の例外を除いて 2%,その 1/5 濃度に相当する 0.4.%,その 1/10
濃度に相当する 0.2郊の 3 種類を用いた。その他のものは 1/10 謹度のものをはぶいて 2 種類とした。乙
のように処理波の濃度を希釈するとと!とよって,薬剤吸収量を調節した。
設置本数は原則として,
1 単位最小 10 本としたが,
経年別に抜きとって,
強度試験その他の測定を行
なう予定の薬剤は 35,...,45本とした。毎年 3 本ずつ抜きとって 10 年継続できるという予定で 45 本にし,
35 本の方は抜きとる時期を毎年としないで,
剤はクレオソート油,
隔年という予定であった。
乙の抜きとる杭iと使用された薬
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ホウ砂・ホウ酸混合物,硫酸銅の 7 種類で,処理被濃度も 3 種類である。その他の薬剤については杭の本
数は 10 本とした内
(3)
処理方法
すべて加圧処理を用いて,ほとんど杭全体 !ζ薬液が浸透するようにした。そのときの処理条件は以下の
とおりであるつ
水溶性防腐剤の場合
前排気なし:加圧 5
kgfcm 2 ,
30......,60 分;後排気 600mm , 10 分。
油状,油溶性防腐剤の場合
前排気 600mm , 30 分:加圧 5 kg/cm 2 , 30"""60 分;後排気 600mm , 10 分。
ただし,蒸発しやすい溶媒の場合は後排気は行なわないで,被覆して静置期間を長くする c
(4)
吸収量
注入量が素材・重量 i乙対し, 100土 20% の範囲になるように加圧時間を調整し,少なすぎるものは再注入
を行なった。吸収量の多少を調整する手段は前記したように処理液の浪度を希釈して,注入量としてはつ
ねに上記の条件の範囲にはいるように調節した。乙の純 Uft の注入量を,木材の単位容積あたりで計・算する
と 3∞"""400 k g/m 3 に相当するものが多い。
(5)
杭の設置方法
杭の全長の半分(約30 c m) を地中に埋めて,垂直lζ立てた。杭と杭との間隔は杭の長さに等し~.\ 60cm
としたっ杭の位置は敷地の南北を 60cm どと iて 47,東西を 38 ìと割って,その各線の交点 lと杭をたてる乙
とにし,各薬剤,各濃度どとの杭は無作為化するため,すべて抽選により位置を決定した。
(6)
調査項目
a. 毎年 l 回の被害調査。
b. 抜取り杭の含水率分布。
浅川実験林苗畑の杭試験 (2)
(雨宮・松府・庄司・井上・阿部・内藤)
一 109-
C. 抜取り杭を地上部,地下部に分けて,おのおの 3 個の試片の縦圧縮強度。
d. 同試片の全乾容積重。
e.同試片中の薬剤残存量。
f.各薬剤の室内における防腐効力試験方法による防腐効力。
各項目の測定方法は各試験結果の章で説明する。
4.
被害調査結果
被害調査方式はすでに防 J育研究室で行なってきている被害程度を肉眼で観察して,つぎのような基準に
したがって 6 階扱に分類し,それを被害度として数字で表わす方法を用いた。
被害度
観察状態
0
健全。
1
部分的に軽度の虫害または腐朽。
2
全面的に軽度の虫害または腐朽。
3
2 の状態のうえに部分的にはげしい虫害または腐朽。
4
全面的にはげしい虫害または腐朽。
5
虫害または腐朽 iとより形がくずれる。
これらの被害度の評価は肉眼的観察によるため,かなり主観的要素がはいるが,多数の杭を評価し,各
被害度に区分された部分の圧縮強度減少率を求めてみると,第 1 報1 】で示したように,被害度 1 は 10"""'20
%の強度減少率であり,被害度 2 は 20.-4096 の強度減少率,被害度 3 は 30"""'505ぢの強度減少率,被害
度 4 は 5096 以上の強度減少率の範囲 ;ζ 入るようであるコこのように被害度の各区分は強度との関係!とつ
いて,大体乙れらの範聞の減少率になっているという乙とを目安にして,各杭の被害調査結果をみれば,
客観的にも理解されうるであろう。
ただ,杭の評価法 1 本の全体を総合的に評価することは困難であるので,地上部の木口面付近 (T) ,地
ぎわ部付・近 (G) ,地中部の木口面付近 (B) の 3 か所に分けて,別々に評価を行なった。えられた各杭の 3
部分の被害度を別々に薬剤ごとに平均して,平均被害度を求め,その値が 2.5 以上に述した年数を,その
集団のその部分の耐周年数とした。
被害調査結果を示すと Table 2 のとおりである。
この試験に使用されたクレオソート油の性質ならびに混合薬剤の組成を示すと,つぎのとおりである。
クレオソート担l の性質
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でもまだそれほど腐朽していない。
これに対し無処理スギ辺材は地中,地上ともに 3 年の酎周年数であ
り,地上部は心材に比べて非常!と腐朽しやすい。反対に地中部においては,心材,辺材の耐朽性の差はあ
まりみられない。屋内試験においては心材があまり腐朽しないという結果と 21 全く異なっており,
自然条
件下の腐朽現象がいかに設雑な変化を示すかをあらわしている。
クレオソート油の原被処理材はまだ全く被害は認められないが,
1/5 希釈被,
1 /1 0 希釈液は数年経過
後,わずかに被害が認められ,地中部分は 10 年後の現在かなり被害が進行しつつある。
PCP と Na-P C P とを比較してみると, jå:1性と水溶性であるから,当然 PCP がかなり良好な防
魔効力を示すと予想していたが,えられた結果によれば,それほど大きな差がなし、。 PCP の溶媒として
般油を用いたが,やはり蒸発しやすい溶媒では PCP 本来の防腐効力が発揮できないのであろう。
PF の各種,すなわち W-1 r-v 4 を比較してみると,吸収量の少ないグループで比較してみると W-3 ,
W-2 , W-4 , Wー 1 の順に防腐剤J 力が低下しているようである。 W-1 はとくに|民収量を多くして
もそれほど耐周年数はのびないが,他のものは吸収置が多いとまだ 10年経過しでもそれほど被害は進行し
ていない。
ポリデン・ソ Jレト
S ー25 は最も低濃度の 0.2% 処理材でも,
10 年後まだ耐周年数がきまらないほど
防腐効力が高い。 10 年経過の水溶性防腐剤のうちでは最も効果が大きいようである。
ホウ砂・ホウ酸混合物は野外で使用すると,耐水性がないから,ほとんど防腐効力を示さないようであ
る。
硫酸銅単独使用は,実用的には落差式処理法による電柱以外にはほとんど使用されていないが,乙の試
験結果では予想以上lζ 防腐効力を示し, 10 年後でもまだ耐用年数が決まらないほど被害が少ない。ただ,
興味がある乙とは,一般的に銅系の防腐剤で処理した杭は地上部の頂部の腐朽が,地中部 iζ 比べて非常に
早くからあらわれるコ蟻酸銅の場合においても同じ結果がえられている。
林業試験場研究報告第 230 号
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Table2
. 防腐処理杭の各位置における平均被害度 1>
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観察された状態
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部分的に軽度の被害 Partial
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全面的に軽度の被害 All
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2 の状態のうえに部分的にはげしい被害
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全面的にはげしい被苫 Al1
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2)W-:PF 系防腐剤
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TY101 , TBT-Te :有機錫化合物
TancasC :CCA 系防腐剤
Chromated
X-TR :グロルナフタリソ系防腐剤
3) T
:杭の頂部の木口面 Top
Tri・butyltin
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Chloronaphthalene
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:坑の地中部の木口面 Bottorn
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4) 耐用年数は各集団の平均被害度が 2.5 以上 iこ達した年
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林業試験場研究報告第 230 号
-118 ー
また,
CZC 処理材・は亜鉛系の防腐剤であるが,
銅系以上に地上部と地中部の被害経過が異なってい
て,地中部はまだなんら被害を受けていないのに,地上部はほとんど形がなくなるほどの腐朽を受けてい
る。
石炭酸樹脂注入材はレヅン率が低くなると,やはり被害も大きくなっている。さらにとれに Na-PCP
を添加したものは,添加量を多くしないと,効果が顕著にあらわれないようである。
T BT0 (
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noxide) は 0.2% 処理材がかなり被害を受けており,
PCP の結果と大差ないよ
うである。さらに多少地上部が被害を受けやすい傾向である。
防火剤各種はまだ 5 年しか経過していないが, R , M とも 15% という高濃度で高い股収量であるのに
かなり腐朽が進行していてほとんど防腐効力を示していない。ただ,
P のみはまだ被害も小さいので,
R , M よりは防腐効力がありそうである。
その他の防腐剤はまだあまり被害を受けていないか,経過年数が短いもので,顕著な変化があらわれて
L 、なし、。
5
.
抜取り時の杭の含水率分布
毎年抜きとってきた杭をただちに Fig.2 Iζ 示すように,地中部 3 か所,地上部 3 か所からおのおの約
6cm の長さの試片をきりとって,下から No. 2
'"7 とした。 No.2 は地中部の木口面付近の部分, No.
3 はそれにつづく部分,
No.4 {立地ぎわ付近の地中部分, No.5 は地ぎわ付近の地上部分, No.6 は地
上部の木口面付近の部分 No.7 につづく部分である。
乙れらの試片は切断後,ただちに重量を測定し,風乾して圧縮強度測定後,絶乾まで乾燥してから,抜
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浅川実験林首畑の杭試験 (2)
(雨宮・松岡・圧司・井上・阿部・内藤)
-119 ー
取り時の含水率を推定した。各値は 3 本の杭の平均値である。
その結果ば Fig. 2 ,_ 9 に示す。 Fig.2 はスギ無処理心材の,
F
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.3 はスギ無処理辺材の合水率分布
を示している。乙の両者を比較してみると,地上部はいずれも 15.-..2096 の合水率で大差ない。乙れに対
し,地中部は.C;、材の含水率が非常に高く,
3 年までは 10096 を越えているのに対し,辺材は高くとも 70%
で,大体 40.-..60% のものが多い。乙の乙とは辺材が心材より液体の浸透性が良いというととから考えれ
ば,逆の結果のような感じを与える。しかし,よく考えてみれば,地中の水分の杭への浸透性が良いとい
Fig.4 クレオソート処理杭の各
抜取り時の合水率分布
Fig.5 2 %pcp
処理杭の各抜取り
時の合水率分布
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の各抜取り時の含水率分布
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林業試験場研究報告第 230 号
-120 ー
Fig.8 2%ボリデン・ソ Jレト処理杭
Fig.9
の各抜取り時の含水率分布
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うととは,その材のなかの地中部から地上部への繊維方向の通導性も良好である。それゆえ,スギ辺材の
杭は地中で水分を吸いこんでも,ただちに地上部にまで運ばれ,そとで空中 i と蒸散していくから,地中部
における平衡合水率はそれほど向くならないものと考えられる。しかるに, ι、材の場合は,繊維方向のjffi
導性が非常に悪いので,地中部で吸収した水分は短時間!とたやすく,地上部!と移動しないため,地中部 lζ
多量に集積される。そこで,心材のとくに地中の木口面付近は, 100% をこえるような高合水率を保持し
ているのであろう。
乙のように,地中部における杭の合水率は,その杭の繊維方向の通導性と関係がありそうで,
F
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.4
のクレオソート油処理杭と Fig.5 の 2% PCP 燈袖処理杭の合水率の経時変化をみても理解される。
すなわち,両者とも油性防腐剤であるから,処理後かなりの期間は材中の細胞空腔中に,袖が充満してい
て,水分の還導を阻害しているつそのため杭を地中!と立植後のある期間は,地中部の杭の合水率は高くな
っており,時間が経過するとしだいに含水率は低下してきて 40--50% の範囲におちついてくる。これは
材中 lζ 注入された irhが時間の経過とともに,しだいに低問点部分から蒸発していき,材の通導性もそれに
反比例してよくなって,地中部の平衡含水率を低くさせていくのであろう。
水溶性防腐剤の場合は,ホウ素化合物処理材を除いて,無処理辺材とほとんど同じ傾向である。 Fig.9
のホウ素化合物の場合,多少地中部が高めに出ているのは,材の腐朽がはげしく,空げきが多くなって,
含水率を他の薬剤処理坑より高めているのであろう。
Fig.9!とおいて,
抜取り時!とたまたま雨が降ったとき,
とくに 8 年自のときに地上部が地中部よりも
杭の含水率が高円値を示しているのも,地上部の木口面付近が非常にはげしく席朽していたからである。
他の薬剤の場合も,雨が降った 5 年と 8 年のときの地上部は 20..., 30郊の範囲を示していて,ふつうの
年に比べれば 5 ---1096 高い値を示している。しかし,地中部は雨が降っても,降らなくても,ほとんど
杭の含水率には影響がない。
地上部の合水率変化からのみ考えてみれば,地上部の木口面付近の腐朽の進行は,雨が降るたびに廃朽
円,
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浅川実験林苗畑の杭試験 (2)
(雨宮・松岡・庄司・井上・阿部・内藤)
!と適した合水率になり,天気の良い日がつづけば, 2096以下という腐朽に不適な合水率となって腐朽の進
行が停止するの
このように,杭の地上部は天候の変化とともに,腐朽が進行したり,
停止したりしなが
ら,しだいにはげしく腐朽していくものと考えられる。
6
.
野外における各処理杭の圧縮強度の経年変化
4 の項で抜取り I時の含水率を測定するために,各杭から切りとられた試片を風乾し,さらに 20 C ,
0
7
0
%の関係程度を保持している恒温恒湿室に数週間放置して平衡状態に達した後,側面はかんな仕上げしな
いで,野外にさらされた面をそのままで,縦圧縮強度を測定した。試片の大きさは約 3
x3x6cm
で,
測定時の合水率はいずれの場合も J 14"""'15% であった。
各杭とも,まず,防腐処理をするまえに杭の両端からそれぞれ約 6cm の試 l十を切りとって,縦圧縮強
度を測定し,その 2 つの測定値の平均値をその杭の標準強度とした。杭を防腐処理後, Fig.10 以下に示
すように, No.2 に接していた木口部分から,やはり 6cm の試片を切りとって No.1 とし,圧縮強度を
測定して処理直後の杭の圧縮強度とした。
乙のように,各抗の標準強度と毎年抜きとって測定した No.
2 ,_, 7 の強度との差の比率を百分率であ
らわし,増加した場合は+,減少した場合はーであらわしたうこの増減率の 3 本の杭の平均値が経年別に
Fig. lO以下;乙示されている。なお,処理杭の経過年数 0 年の場合は No. 1) すなわち処理直後切断して
測定した他と,標準強度との差の比較である。
Fig.10 tま無処理のスギ辺材ならびに£材の強度変化を示している=乙の結果によると,辺材は 1 年後
で,地中部分No.2"'4 はほとんど 10"...., 20郊の減少率組問であり,地上部分 No.
範囲である。 2 年後では地中部は No.
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.
.
-7 は 5 ""10% の
2, 3
) 4 のl噴!と減少率が大きくなっていて, 20.....30% の範囲で
あるう地上部は No.5 と No.7 とがほとんど同じで)
No.6rま多少減少率は小さい。しかし,大体 10 ......,20
96 の範囲にはいっている~ 3 年後になると地中,地上部ともに急散に腐朽が進行するためか,その減少率
も地中部で 60.-.-70労,地上部で 40......60労となっている。けっきょく,地中部は地上部に比べれば,腐
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林業試験場研究報告第お0 号
朽の進行は早いが,段階的に進行するつ地上部はある時期まで,腐朽がほとんどないが,ひとたび腐朽菌
が根拠地をつくると,非常に急速に腐朽が進行するようである。
乙れに対し,心材は l 年後,地中部も地上部もともに 1096 前後の減少率を示したが,
となると地中部の腐朽の進行は辺材と大差ない。しかし,地上部は辺材と異なって,
7 は 5"""10 %の減少率範囲である=
ただ No.5 は地中部の影響をうけて,
2 年後,
3 年後
3 年後でも No.6 ,
多少他の地上部 iζ 比べれば
Table2 の被害調査の結果と大体同じ傾向を示している。
減少率が大きくなっている。とれらの結果は,
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. 11 はクレオソート油で処理した杭の圧縮強度変化を示す。クレオソート柚原被で処理した杭は 10
年間野外に放置されていても,
各部分とも強度が低下するよりむしろ多少増加する傾向にある。もちろ
ん,腐朽はしていない。しかし,燈油で 5 倍 ι 希釈したクレオソート抽で処理した杭では,地中部分は 5
年以後多少強度の低下をきたしていて,その減少率は 10....., 20% の範囲である。最も強度低下の大きい部
分は No.2 で,ついで No. 3 ,
4 のl闘である。地上部分は原液処理材ほど大きくないが, 10 年後でもや
はり増加する傾向にある。
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. 12 は PCP の澄油溶液で処理した杭の圧縮強度変化を示している。
2% 処理材は 8 年以後,
地中部分が急激に強度低下を示しているが,地上部分はほとんど低下していない。 0.2% 処理材の地中部
分は 3 年以後かなり急激に強度が低下しており
9 年後は杭が腐朽 iとよりはげしく破壊されて, 10年目の
抗!ま抜きとることができなかった~しかし,地上部分は地中部分に比べて比較的強度低下が小さく,
9年
目 lζNo.5 が急!と佳度が低下しはじめた。
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. 13 は, Na-PCP で処理した杭の圧縮強度減少率を示している。 2%処理材は 8 年以後地中部分が
多少強度低下を示しはじめたが,地上部分はほとんど強度低下を示していない。 0.4% 処理材では 7 年以
後,地中部分がかなり強度低下を示しはじめ I 10 年目では完全に近く破壊されていた。しかし,地上部分
はそれによむべて,まだほとんど強度低下を示していないのは興味ある乙とである。
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. 14 はフェノーノレ類・無機フッ化物系防腐剤で処理した杭の圧縮強度変化を示している o W-3
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5
0 1 種 1 号〉の 2% 処理材は地中部分が 3 年以後徐々に強度が低下して,
10 年目ではか
なりの減少率を示しているが,地上部分はほとんど変化がない。 0.4% 処理材もほとんど同じ傾向である
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Fig.16 ホウ素化合物処理抗の 10 年聞における圧縮強度の変化
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7 硫酸銅処理杭の 10 年間における圧縮強度の変化
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浅川実験林苗畑の抗試験 (2)
(雨宮・松、岡・庄司・井上・阿部・内藤〉
-125-
が,地中部分の強度低下は 2%処理材 iζ
比べてさらに著しい。
乙の系統の防腐剤は,地中部分の防腐
効力はそれほど大きいとは考えられない
が,地上部分においてはかなり吸収置が
少なくても,大きな防腐効力を示してい
る。
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はポリデン・ソルト
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る。 2%処理材は 10 年目でもほとんど強
度低下を示しておらず, 0 .4 96 処毘材で
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も地中部分が 10 年目で多少強度低下を
示しはじめた程度で,水溶性防腐剤とし
ては最も大きな防腐効力を示している。
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. 16 はホウ素化合物で処理した坑の圧縮強度変化を示している。この薬剤は濃度に関係なく,地中
部,地上部ともに 2 年以後,
急激に強度低下をきたし,
野外においてはほとんど防腐効力が期待できな
Fig , 17 は硫酸鏑で処理した杭の圧縮強度変化を示している。ただし,この薬剤の場合,他の薬剤のよ
うに処理前に両端から標準強度用の試片を切りとらなかったから,各杭で最も健全状態を保持していると
考えられる No.6 の圧縮強度の{直を基準として,
他の部分と比較した。そのため多少他の薬剤の場合と
値が異なる。ただ,被害調査結果でも明らかにされたように,室内試験で褐色j商朽を示す菌で試験する
と p 全く訪露効力を示さないのに,野外では地中部分が案外防腐効力が高く,強度低下も小さいという傾
向ははっきりあらわれている。さらに,この処理 i寸が地中部分では強いが,地上部とくにその木口部分で
は 5% 処理材でもかなり腐朽が進行していて,
大きな強度低下をときどき示している。乙の点は被害調
査の結果を裏付けている。
この試験において,各試片の圧縮強度測定後,全乾容慎重を測定したが,全般的な傾向としては圧縮強
度減少率と容積重減少率とは Fig. 18 のように大体比例関係にあり,
容積重減少率のキ猷す{直は圧縮強度
減少率よりは大体小さい{直である。それゆえ,容積重の経年別変化は圧縮強度の変化と大体同じ傾向を示
したので,乙乙では省略した。
以上 7 種類の防腐処理材の圧縮強度減少率を示したが,毎年異なる杭を抜いてきでは強度を測定するの
で,毎年の強度変化はかならずしも述続していない。ときには前年より減少率が小さい{直になったり,急
激に大きな値になったりして矛盾した結果を示している場合もある。しかし,大体の傾向は Table 2 の
被害度の変化と一致しているから,杭の被害の程度を定量的に知りたい場合には, F
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. 10,..., 17 に示した
圧縮強度減少率のように、強度が変化していくものと考えてさしっかえない。
7
.
室内に放置した処理杭の圧縮強度変化
野外に設置するために処理された杭のうち,強度試験を行なう薬剤の処理材のグループから,
5 本ずつ
-126-
林業試験場研究報告第幻O 号
Table3
. 長期間室内 lζ 放置されたクレオソート抽処理材の圧縮強度変化
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林業試験場研究報告
第 230 号
Table7
. 長期間室内に放置されたボリデン・ソノレト処理材の圧縮強度変化
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-129 ー
この 2 つの部分の平均値が他の部分との比較をするとき
の基準値となる。
2"'7 は処理材を室内放置後,切断した各部分。
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室内に保管しておいた。これらの材も,強度試験を行なうための杭と同じように,防腐処理前 lζ 杭の両端
から試片をきりとり,圧縮強度を測定して標準強度とした。
5 本の杭のうち,
2 年後に 3 本,
11 年後に 2 本を規定どおり切断して,縦圧縮強度,容積重を測定し
て,標準値との変化を比較した。その結果が Table
3'"8 に示してある。
処理直後の各処理材の圧縮強度変化率の金平均値をみると,クレオソート柚原被は多少増加する傾向に
あるが,他の処理材ではほとんど変わらないか,多少減少する傾向にある。
2 年後の各処理材の圧縮強度は全般的に減少しているものが多く,とくに W-3 の減少は顕著である。
しかるに 11 年後の結果をみるといずれの場合も,強度が増加している。とくに Table 3 のクレオソート
油の場合ほ顕著である。
クレオソート油処理材の強度増加の著しい乙とは,クレオソート抽中の高沸点成分が時闘の経過ととも
に重合して高分子となり,それが木材細胞空路内で国着して,木材の強度を増加させる傾向にあるという
ことは一般に知られている事実であるから, T
able3 の結果もそのような窓味で理解される。
容積重の変化については,クレオソート拙と PCP のように油性のものは,処理直後の試片では非常
!こ容積霊が増加するが,
時間の経過とともに低沸点部分が拝散して,
2 年後(乙は標準値と大差がなくな
る。しかし,クレオソート油原被は低減i点部分が少ないから, 11 年後でも 50"'8096 の容積重の増加を示
しているヲこのことは圧縮強度の増加にも関係、があるかもしれない。
その他はすべて水溶性防腐剤であるから,容積重は標準値とほとんど差がない。しかし,そのわりには
11 年後の圧縮強度の増加が著しい。
乙のように各処理材とも,
11 年という長期間室内に放置しておくと,正縮強度が増加するという乙と
は,真 lこ薬剤の影響によるものか,木材質そのものが時間の経過とともに変化するものなのか,標準値を
測定したときと杭の各部分の試片を測定したときでは時間的にあまりにも隔たりがあるため測定機械や環
境の違いによる誤差なのか,明らかでない。しかし,乙れらの原因による誤差ならばそれほど大きな値と
ならないはずなので,このような結果が生じた原因については現在はっきりした乙とはいえない。
ただ,現在使用されている防腐剤で処理された木材はたとえいかに長期間放置されてもと ~1 らの結果か
ら強度が増加すると判断するのは不適当かもしれないが,少なくともその薬剤により木材質が影響をうけ
て,機械的性質が劣化するというととはまず考えられない。
8
.
室内における木材防腐剤の防腐効力試験
杭試験を行なう大きな目的の一つに,野外における処理杭の耐周年数と室内における防腐剤の防腐効力
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林業試験場研究報告第 230 号
試験の結果との関連を明らかにして,室内試験方法の改善に役だたせるというととがある。そのため,杭
試験 l乙使用された防腐剤を 2 ,
3 の室内試験方法によって防腐効力を明らかにした。
用いられた室内試験方法は r]l S
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の方法ではスギ辺材を用いているが,
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スギの代わりにプナ辺材を用いて,
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を入れ,常圧にもどし.
5 分後 30mmHg で 10 分,ふたたび減圧して常匡にもどしてから
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取り出し,約 1 日風乾後, 24 時間 60 C で乾操する。
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実験結果は
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し, v が減圧一常圧法である。また同一表中!と対照材が数か所にはいっているのは,そとまでの薬剤が
同一時期 iζ 試験され,その対照材の重量減少率の平均値が効力値の計算に用いられている。
この試験結果と野外における耐用年数を比べてみると,スギ試験片を用いた結果と野外の処理杭の耐用
浅川実験株苗焔の杭試験 (2)
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浅川実験林苗畑の杭試験 (2)
年数とは 2 ,
(雨宮・松岡・庄司・井上・阿部・内藤〉
-139 ー
3 の例外を除いて,耐周年数の短いものは,やはり効方組も小さくなっている。耐候採作回
数 0 回,すなわち耐候操作を行なわないものは,かなり少ない政収訟でも防腐劫 jJ が十分あるが,操作回
数が 3 固または 10 固となると効力値が急激に下がるものと,企く桜響のないものとがある。
抗の被害調査結呆と効力値とを比べてみると,
3 回または 10 回の耐依操作で効:))値が 80 以下になった
ものは,大体野外の抗で 10 年以内の耐周年数のものが多い。ただ,
銅化合物〈硫酸銅,
蟻酸銅〉は室内
試験では非常に悪い結果を示しているが,野外の杭の地中部分は十分な IYjji高効力を示している。しかし,
地上部分の木口面付近が案外短期闘に腐朽しているので,乙の部分では室内試験結果と一致している。ま
た,
PF 系の W-1 は抗試験では非常に耐周年数が極く出ているが,室内試験の結呆は非常に良好で,
銅系統の薬剤と道の結果となっている。
プナ試験片を用いた場合は,
PCP , Na-PCP, ACP などのペンタクロロフェノー Jレの系統の薬剤
が,かなり多い吸収量でも全く防腐効方が認められないのは,興味ある問題で,プナ材中 i 乙政収されてか
ら,薬剤が変質して効方のない~lこ変わっている可能性がある。
耐候操作の流水法と誠正一常正法の差は,多五少少
レ、後者のJ方
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験の桔呆ではあまり大きな差はないようである。
なお,クレオソート泊ならびにそれと亘泊またはコー Jレターノレ混合物のような油状 IWíi高剤の試験結呆に
おいて,比較的孟量減少率が大きくなっており,したがって,劾jJ 値が多少低めに出ているが,試験片そ
のものはまったく蹴朽していなかったので,この場合の韮量減少は薬剤の流脱によるものと考えられる。
以上のように,室内における防踊効jJ 試験結呆と野外の杭試験結呆を比較してみると,やはり室内誌験
の結呆でかなり腐朽するような薬剤で処組された杭は,大体野外でも耐周年数が短いものが多い。しかし,
室内試験で良好なものでも野外試験ではよくないものが政収量の少ない場合に多く見られた。乙のことか
ら,室内試験における耐候操作をもっときびしくする必要がある。銅系統の薬剤の試験には褐色朽の薗と
白色朽の薗との両極を用いないと判断を誤る可能性がある。試験片の樹種は
Na-PCP と PCP !ζ 示された
ように,スギの場合とプナの場合で非常に異なった結果をえているので,必要によっては針葉樹のみでな
く,広葉樹の試験片で試験を行なう必要がある。
なお,室内試験結果と野外試験結呆との相関関係については,別な機会にくわしく検討する予定である。
9.
ま
と
め
野外において, 10 年経過した処理杭の被害経過,強度変化,容積重の変化,各杭の合水率分布などにつ
いて中間報告的にまとめてみたが,野外においては地上部と地中部と!と分けて考えないと,そこであらわ
れる結果は非常に異なることが明らかとなった。それゆえ世界各国で行なわれている杭試験も,そ後は地
上部と地中部の両者に分けて結果を評価すべきであると考えられる。
また本試験結果は一地域の結果であるから,乙こでえられた各薬剤の野外における耐周年数をもって,
わが国における野外の結果であるとする乙とはできない。ただ,たとえ気象条件のかなり異なる地域で試
験を行なったとしても,各薬剤の各吸収量における耐用年数の絶対値は多少変動があるかもしれないが,
薬剤間の相対的関係はあまり変わらないのではないかと考えられる。
室内試験結果と野外試験結果とは薬剤吸収量や耐候操作のちがいにより,かなり相関々係のある乙とが
明らかとなったが,この問題;まとくに重要なことなので別の機会に十分検討する予定である。
-140-
林業試験場研究報告第 230 号
10.
摘要
浅川実験林白畑において行なっている杭試験における,防腐処理杭の 10年間の被害経過について報告す
る。
杭はスギ辺材を月j い,す法は 3
X3X60cm
のもので, 30cm を地中に埋めて試験を行なった。被害状
態は全数の杭を毎年 1 回観察し,強度試験,含水率分布,容積重の変化などは毎年 3 本ずつ抜きとって測
定した。えられた結果の概要を示せば,つぎのとおりである。
1
. 被害経過は Table 2 のとおりであって,
無処理辺材の耐周年数は地中,地上とも 3 年に対し,心
材は地中では辺材と同じであるが,地上は 10 年後でもまだ被害はそれほど進行していない。
処理抗では,吸収量の少ないものはすでに寿命がきているものが多いが,クレオソート油の 1/10 に希
釈したもの,すなわち吸収量で 16 ......, 31 k g/m;! のものはまだそれほど被害が進行していない。jI S
の PF 系の薬剤では W-1 (3 種)のみは吸収量が 7 kg/m
その他は W-3 ,
W-2 ,
3
K1
5
5
0
以上でも 10 年以内の耐用年数である。
W-4 の順に防腐効力は低下するようであるが,
7kgJm
3
以上の吸収量の杭
は 10 年後でも被害はそれほどはげしくない 3
PCP は予想ほど効果がなく, Na-PCP と大差ない結果だった。ホウ素化合物は野外ではほとんど効
果が認められなかった。
硫酸銅,蟻酸銅など銅化合物は地中部分の被害は非命にわずかであるが,地上の木口部分はかなり被害
をうけていた。
2
.
抜取り時の含水率分布は,
F
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.2 ,...., 9,乙示すとおり無処理スギ辺材の地中部分の合水率は
40"""60
%に対し,心材では 100% 以上のものが多かった。地上部分はいずれも 15 ,...., 20% の合水率であった。
処理材については,大体無処理辺材と同じような合水率分布を示した。
3
.
縦圧縮強度の変化については Fig.
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7IC示す。大体被害経過と同じ傾向で,被害の進行とと
もに強度も減少している。容積重の変化も大体強度の変化と同じであるが,減少率の車散す値は強度減少率
より小さい c
4
.
室内に放置した処理杭の圧縮強度変化について,
に示す。いずれも,
2 年後と 11 年後に測定した結果を Table
3 ,...., 8
2 年後は標準強度より多少低下する傾向にあるが, 11 年後は増加する傾向にあった。
これらの結果の似国はり]らかでないが,防腐剤で処理されて長期間室内に放置されても,少なくとも薬剤
の影響による強度低下ということは考えられない乙とが明らかになった。
5
.
杭試験 iζ 使用された薬剤の室内における防腐効力試験結呆を Table
9,
10 に示す 3 スギ試験片を
用いた結果は大体野外の結果と一致しているが,硫酸銅は室内試験では悪く,野外の地中では良好な結果
を示し, W-1 は室内では良好な結果をえたが,野外では非常に悪い結果を示している。
PCP,
Na・PCP をプナ試験片で試験すると非常に悪い結果を示す乙とは興味ある問題である。
文献
1
)
雨宮昭二 2 浅川実験休筒畑の杭試験(1)
杭の被害程度を評価する方法,林試研報,
150, 143 ......, 156 ,
(1963) 。
2
) 松岡昭四郎・庄司要作 2 木材の耐朽性について(第 1 報) J1S による比較耐朽性試験,林試研
報, 123 , 137,...., 152 , (1960) 。
(雨宮・松岡・庄司・井上・阿部・内藤〉
44・
浅川実験体苗畑の杭試験 (2)
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