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グラウト材の異なる熱交換井の熱交換能力に関する実験的研究

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グラウト材の異なる熱交換井の熱交換能力に関する実験的研究
グラウト材の異なる熱交換井の熱交換能力に関する実験的研究
エネルギー資源工学研究室
学部 4 年 西村大輔
1. 研究の背景と目的
地中熱利用ヒートポンプシステムを利用する際に使用される熱交換井内のグラウト材は、熱交換井の熱交
換能力を考えるうえで重要な要素である。これまで、数々のフィールド試験の結果よりグラウト材の違いに
よる熱交換能力が異なることは明らかではあるが、純粋にグラウト材のみの影響であるかは明らかにされて
いない。また、粒径が大きい多孔体において熱交換能力が良いという理由も明らかではない。そこで本研究
では、グラウト材の異なる熱交換井の熱交換能力の違いを室内実験により検証し、評価することを目的とす
る。そのため、グラウト材以外は同条件に
できる模擬熱交換井を用いて温度応答試
2. 模擬地層を用いた温度応答試験と結果
実験装置の概要を Fig. 1 に示す。本実験
マノメータ
X
験を実施する。
同軸型
模擬地層(硅砂)
Z
地中熱交換器
では、模擬熱交換井に詰めるグラウト材を
模擬熱交換井
水、水飽和させた玉砂利、水飽和させた硅
砂の 3 種類を用いた。熱交換器に流入する
熱媒体温度は、「熱媒体温度」-「初期地
0.6m
層温度」(⊿T)が-10℃、+10℃、+20℃と
0.7m
なるように設定した。つまり、合計 9 種類
の条件で温度応答試験をそれぞれ 3 時間行
恒温槽
った。試験結果について、3 種類のグラウ
ト材の熱交換量を比較すると、水充填の場
Fig. 1 実験装置の概念図
ごとに比較すると、+20℃の場合が最も大きな熱交換量となった。また、試験結果より推定した熱抵抗とレ
合が最も大きな熱交換量を示した。温度差
イリー数について試験開始 1~2 時間までの平均値を Fig. 2 に示す。棒グラフが熱抵抗、点がレイリー数で
あり、レイリー数は対数軸を用いて表す。熱抵抗は、2 点間の熱の伝わりにくさを表す指標であり、レイリ
ー数は、流体中の自然対流の強さを示す無次元数である。その際にレイリー数を推定することで、熱抵抗だ
けでは判断できないグラウト部の熱伝達のメカニズムを明らかにし、熱抵抗の大小関係を裏付けることがで
きる。熱抵抗を推定した結果、最も熱抵抗が小さかったグラウト材は水であり、つづいて玉砂利、硅砂の順
であった。しかし、硅砂充填の場合、熱抵抗は⊿T による明らかな違いはなかった。また、熱抵抗の大きさ
は、水充填と玉砂利充填については、⊿T が-10℃、+10℃、+20℃の順で小さくなった。一方、レイリー数
を推定した結果、硅砂充填の場合と、玉砂利充填の⊿T が-10℃の場合、レイリー数は多孔体内で対流が起こ
る臨界値 4π²を下回った。つまり、これらの場合の熱伝達のメカニズムは伝導のみであったと考えられる。
1.E+11
10¹¹
0.12
:レイリー数
回っており熱交換井内の自然対流によって
の実験において、熱交換井内の自然対流によ
0.00
1.E-01
10 1
って熱抵抗が低下したと考えられるため、玉
⊿T
砂利充填の方が硅砂充填の場合に比べて高
充填物
い熱交換能力を持つことが明らかとなった。
水
Fig. 2
玉砂利
+2
0
1.E+01
10¹
利充填と硅砂充填を比較すると、玉砂利充填
+1
0
0.02
も小さいことから明らかである。また、玉砂
-1
0
1.E+03
10³
+2
0
0.04
からである。このことは水充填の熱抵抗が最
+1
0
1.E+05
10⁵
これは熱交換井内での自然対流が影響した
-1
0
0.06
水充填の場合、熱交換量が最も大きかった。
+2
0
1.E+07
10⁷
+1
0
0.08
3. まとめ
-1
0
1.E+09
10⁹
熱抵抗が低下したと考えられる。
Thermal resistance(mK/W)
0.10
硅砂
各実験の熱抵抗の推定結果
(実験開始後 1~2 時間の平均)
Rayleigh number(-)
その他の実験では、レイリー数が臨界値を上
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