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オープンソースを活用したECサイト構築 ソリューション

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オープンソースを活用したECサイト構築 ソリューション
特 集 [CRMの新たな視点とソリューション]
オープンソースを活用したECサイト構築
ソリューション
EC(電子商取引)サイトの成長にともない、アクセス数や取扱商品が急増し、システムの
アーキテクチャーや運用体制の抜本的な見直しを迫られる企業も少なくない。本稿では、信
頼性と拡張性が求められるECサイトを、オープンソース(プログラム内容が一般に公開され
ているもの)を活用し、低コストで素早く構築するソリューションについて紹介する。
ビジネスの成長に合わせたシステム構築
野村総合研究所(以後、NRI)による、2009
合わせて、信頼性を高めていける柔軟なソリ
ューションが求められているのである。
年までの国内IT主要 7 市場の市場規模予測
ECサイトは、一見まったく異なるように
では、BtoC EC分野(一般コンシューマ向け
思われるものでも、機能面において共通する
取引)の市場規模は、インターネット通販・
部分は決して少なくない。そこで、低コスト
旅行・チケット予約などを中心に、今後も堅
で素早いシステム構築を行うために、ゼロか
調に成長し、2004年の2.9兆円から、2009年
らシステム開発を行うのではなく、すでに開
には5.5兆円に拡大するものとみている。
発され、流用可能なひな型部品とオープンソ
一般に、ビジネスが成長し、アクセス数・
取扱商品数・取扱高が増えていくと、サイト
ダウンによる売上機会損失の割合も増大し、
ミッションクリティカル度(継続的なサービ
ースを活用する方法が有効となる。
コストと工数を大幅削減する工夫
図 1 に、システム構成のうち、「ECサイト
ス提供が求められる度合)も高まる。また、
構築ソリューション」の提供範囲を示す。①
将来のさらなるビジネスの成長にも対応でき
の業務固有部分は、業務要件に合わせて開発
るように拡張性も求められる。
することができる。太枠で囲まれた②③④の
こうしたシステムの再構築には、システム
の冗長化、データベースの二重化などの対策
部分がNRIで提供可能であり、このうち④が
オープンソースの活用範囲である。
が必要だが、それには、アーキテクチャー(構
④OS/ミドルウェアは、あらかじめNRI
造)の変更や運用体制の見直しなど、システ
が設計・検証を行ってあるもので、NRIが推
ムの全面的な再構築が迫られることも多い。
奨する構成となっている。この組み合わせを
しかし、当初から、ビジネスの成長を見越
そのまま採用すれば、方式設計の工数はほと
して、信頼性と拡張性を担保したシステムを
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ストで素早く構築可能で、ビジネスの成長に
んど不要になる。
構築しようと、多額なIT投資を行うのは必
OS/ミドルウェア以外のインフラ基盤につ
ずしも効率的ではない。むしろ、当初は低コ
いては、案件ごとに再作成が必要になる部分
2005年4月号
レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright © 2005 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
野村総合研究所
サービス・産業システム事業本部
産業システム事業三部
上級システムエンジニア
新井 朗(あらいあきら)
専門はECサイトおよびモバイルサイトの
設計・開発・コンサルティング
図1 ECサイト構築ソリューションの提供範囲
オーダーメイド開発(EJB、Servlet、JSP)
ソリューションの提供範囲
(太枠部分)
アプリケー ①業務固有
ション
②EC業務
インフラ
③共通基盤
④OS/ミドルウェア
フロント機能(EJB)
バックオフィス機能(EJB)
会員登録
購入(カート)
商品管理
受発注管理
商品表示・検索
決済
在庫管理
会員管理
UI生成支援
ビジネスロジック呼び出し 画面間データ引継
Altostratus(Strutsの拡張機能)
Struts
Tomcat
JBoss
入力チェック
ログ出力機能
分散DB対応
ミドルウェア
(オプション) Apache
mod jk2
OracleまたはPostgreSQLまたはMySQL
OS/ミドルウェアはすべて
オープンソースも可能
Red Hat Linux
と、再利用性が効く部分を分離し、後者を③
クリティカル度が高まった段階で、障害復旧
共通基盤としてフレームワーク化してある。
などの機能に優れたOracleに置き換えること
また、アプリケーションについては、EC
サイトの業務領域をモデル化し、汎用性の高
い部分を、EC業務共通のひな型部品として
用意してある。
も可能である。
パッケージソフトにはないメリット
低コストで、素早くサイトを構築するには、
このように、これらの既成のプログラム部
パッケージソフトを利用するという方法もあ
品を導入した上で、個別案件ごとに必要な機
る。しかし、パッケージソフトは、機能が実
能を、業務要件に合わせてオーダーメイドで
装済みで提供されることが多い。機能が業務
開発する、というのが「ECサイト構築ソリ
要件に合わない場合は、業務をパッケージソ
ューション」の基本の考え方である。どの案
フトに合わせて変更するか、新たな開発を加
件でもほぼそのまま導入できる部分と、個別
える必要が生じるため、かえって高コストに
案件ごとに対応すべき部分とを分離すること
なる場合も少なくない。
により、ゼロからシステム開発を行う場合に
比べ、工数は大幅に削減できることになる。
これに対し、当ソリューションは、あえて
すべての機能を実装しない「半製品型」のた
また、ECサイトにおいて最もコストがか
め、業務要件に合わせた柔軟な設計が可能と
かるとされるデータベース(DB)について、
なっている。このため、設計の自由度と、フ
オープンソースであるPostgreSQLを選択す
レームワークによる高生産性という 2 つのメ
れば、ライセンス費用および保守費用の大幅
リットを同時に追求することが期待できるの
な削減が可能となる。将来的に、ミッション
である。
■
2005年4月号
レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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