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構想(PDF形式:6889KB)
コウノトリが舞う
里づくり構想
平成 23 年 3 月
越前市
1
6. コウノトリをシンボルとした3つの方針
(19)
7. 各主体の役割
(21)
8. 構想を推進する4つのキーワードと3つの方針
(23)
9. 参考資料
1
目次
はじめに
(1)
1. 構想の趣旨
(2)
1-1 構想策定の背景
(2)
1-2 構想の目的
(2)
2. 構想の位置づけと期間
(4)
2-1 構想の位置づけ
(4)
2-2 構想の期間
(4)
3. 現状と課題
(5)
3-1 環境・食・農を巡る国、県、市、市民のこれまでの動き
(5)
3-2 越前市の里地里山
(7)
3-3 越前市の農林業
(8)
3-4 里地里山保全再生の活動
(9)
4. コウノトリと越前市
(10)
4-1 里地里山の営みとコウノトリ
(10)
4-2 コウノトリと越前市のかかわり
(11)
4-3 コウノトリをシンボルとした取組み
(11)
5. 生きものと共生する越前市の未来イメージ
(15)
未来のイメージを具体的にすると
(17)
山では・・・
(17)
水辺では・・・
(17)
農村では・・・
(17)
暮らしのなかでは・・・
(18)
子どもたちは・・・
(19)
6. 構想を推進する3つの方針、4つのキーワードと推進体制
(20)
6-1 構想の3つの方針
(20)
6-2 構想の4つのキーワード
(20)
6-3 構想の推進体制
(23)
7. 参考資料
(25)
1
はじめに
里地里山の原風景
里地里山*は、雑木林、水田、小川といった身近な自然に恵まれ、長い歴史の中で、自然と共生した暮
らしが伝えられてきたところです。
小川のほとりに集落があり、山から湧き出た水を活かして水田や畑で作物を育てる。家の母屋には囲炉
裏があり、敷地には土蔵や納屋がある。庭では子どもたちが遊び、裏庭では家畜を飼っている。四季の
変化にあわせた農作業、人の働きかけにあわせて生きてきた生きものたち、自然の力を利用した生活、
その中で自然と触れあいながら遊ぶ子どもたち。
これが、里地里山の原風景です。
(引用:2004年度 市民のための環境公開講座パート2:自然に親しむ、第1回:里地里山の復権、講師:竹田純一氏)
失いつつあるものを取り戻す
私たちの生活は便利になった分、大切な自然環境や昔ながらの里の暮らしなど、失いつつあるものが
あります。
今、私たちはそれに気づき始めました。
越前市では、アベサンショウウオなど絶滅の危機にある生きものを守る取組みが行われています。
環境に配慮にした農業にたくさんの人が取り組んでいます。
昔ながらの里の暮らしを子どもたちに伝えようとがんばる人たちもいます。
今、越前市では、失われつつある大切なものを取り戻す動きが始まっています。
*印は 29頁からの用語解説を参照
1
1. 構想の趣旨
型農業*の推進、環境学習などを通じた学びあい
1-1 構想策定の背景
●
の推進に取り組む必要があります。
本市西部地域が環境省の「里地里山保全再
このような取組みを通し、本市のイメージアップ
生モデル事業」*実施地域の一つに選定され
と農産物のブランド化・高付加価値化を進め、コ
るとともに、丹生山地南部、三里山、味真野
ウノトリが舞う里づくり活動を全市域に拡げ、そし
の3か所が「守り伝えたい福井の里地里山
て全国へと発信します。
30」に選定されるなど、誇るべき里地里山の
自然環境が残されています。
●
どうして環境の保全が大切なの?
豊かな自然が息づく里地里山とそこに住む
環境を健全で恵み豊かなものとして維持することは、人間
人々の暮らしの中で、今もさまざまな保全活
の健康で文化的な生活に欠くことのできないものです。ま
動がなされています。
●
た、生態系は、微妙な均衡を保つことによって成り立ってい
市民のさまざまな生きものを育む豊かな環境
ます。環境は、人類の存続の基盤であり限りあるものです。
引用:環境基本法
づくりへの思いから、環境調和型農業の取組
みが進められています。
●
平成22年に名古屋市で開催された「生物多
どうして生物多様性の保全が大切なの?
様性条約第10回締約国会議 (COP10)」* に
生命の誕生以来、生物は数十億年の歴史を経てさまざま
おいては、里地里山の生物多様性 * の重要
な環境に適応して進化し、今日、地球上には、多様な生きも
性が再認識され、「SATOYAMAイニシア
のが存在するとともに、これを取り巻く大気、水、土壌等の環
ティブ」* として、国際的な取組みが進められ
境の自然的構成要素との相互作用によって多様な生態系が
形成されています。
ています。
人類は、生きものの多様性のもたらす恵みを享受すること
により生存しており、生きものの多様性は人類の存続の基盤
となっています。
1-2 構想の目的
引用:生物多様性基本法
この構想は、さまざまな人々が集まり、つなが
り、行動し、そして伝えることで、生きものがたくさ
どうして環境調和型農業が大切なの?
んすむ里地里山を取り戻し、人も生きものも共生
農業における生産活動は、食料を生産する基本的な役割
する元気な越前市をつくることを目的に策定する
のほか、国土の保全や水源のかん養、自然環境の保全な
ものです。
どの多くの役割をあわせもっています。しかし、現代の農業
その推進にあたって、本市に縁のあるコウノトリ
生産においては、生産性や経済性を重視するあまり、化学
を生物多様性や自然再生のシンボルとして位置
肥料や農薬への依存が高まり、土壌微生物のバランスを崩
づけ、里地里山の自然環境と生物多様性の保全
したり、ホタルやカエルなどの身近な生きものが見られなく
再生を行い、持続可能な社会 * づくりを通じて、
なるなど、環境への影響が懸念されています。
農業生産を子や孫の世代まで末長く続けていくために
「生きものと共生する越前市」を目指します。
は、生産活動に伴う環境への負荷をできる限り低減させ、家
そして、私たちが受け継いできた歴史や文化、
畜排せつ物などの有機物の有効活用により、自然循環機
心の豊かさを守り育て、いのちを育み、次世代へ
能を維持増進する環境と調和のとれた農業生産をすること
と引き継いでいきます。
が重要となっています。
引用:福井のエコ農業推進計画
そのために、里地里山の保全活動や環境調和
2
生きものと共生する越前市を目指して
伝える
うごく
つながる
集まる
3
2. 構想の位置づけと期間
2-1 構想の位置づけ
この構想は、「越前市総合計画」に基づき、「越前市環境基本計画」(平成19年度策定)、「越前市食と
農の創造ビジョン」(平成21年度策定)、「越前市教育振興ビジョン」(平成21年度策定)などと補完しあうも
ので、本市西部地域を対象とした「人も生き物も元気な里地づくり地域再生計画」(平成17年度策定)の
希少野生生物*の保全活動や子どもたちへの環境学習等の取組みを全市域に拡げ、「生きものと共生す
る越前市」づくりを目指し、その方向性を示すものです。
2-2 構想の期間
平成23年度からおおむね10年とします。
越前市総合計画
越前市環境基本計画(平成19年度)
越前市食と農の創造ビジョン(平成21年度)
越前市教育振興ビジョン(平成21年度)など
補完
本市西部地域を対象
人も生き物も元気な里地づくり
地域再生計画 (平成17年度)
コウノトリが舞う里づくり構想
全市域に拡大
平成22年度
構想策定
平成23年度
実施計画策定
「生きものと共生する越前市」
4
3.現状と課題
3-1 環境・食・農を巡る国、県、市、市民のこれまでの動き
A類に分類されるアベサンショウウオをはじめ、
国の動き
国では、生物多様性の保全及び持続可能な
多くの希少野生生物が生息しています。これを
利用に関する国の基本計画にあたる「生物多様
受け、平成17年度から20年度まで、本市西部地
性国家戦略」を平成7年度に策定しました。この
域を中心に、地域主体で希少野生生物の保全
戦略は、おおむね5年を目途に見直され、平成
活動を進めるため、希少野生生物保全指導員制
22年3月には、「生物多様性国家戦略2010」が閣
度が実施されました。平成21年3月には、「ふくい
議決定されました。
のエコ農業推進計画」が策定され、環境にやさし
い農業を通して、安全安心な農産物の栽培が推
平成16年度から、全国の里地里山の代表的な
進されています。
タイプを選定し、里地里山の保全及び再生の取
組み方法を具体的に検討するため、里地里山保
また、同時に「ふくいの食育・地産地消推進計
全再生モデル事業を実施し、本市西部地域が全
画」が策定され、食育と地産地消が推進されてい
国4か所のモデル地域の一つとして選定されまし
ます。
た。
市の動き
地域ぐるみでの効果の高い共同活動と、農業
本市では、平成7年度に環境への負荷の少な
者ぐるみでの先進的な営農活動を支援する「農
い、持続的発展が可能な都市を創造し、これを
地・水・環境保全向上対策」* を平成19年度から
将来の世代に引き継ぐことを目指して、 「武生市
実施し、農業生産全体のあり方を環境保全を重
環境基本条例」が制定されました。また、平成16
視したものに転換していく取組みを進めていま
年度に、本市西部地域が環境省の「里地里山保
す。
全再生モデル事業」のモデル地域として指定さ
また、平成22年には、名古屋市において生物
れたことを受け、「人も生き物も元気な里地づくり
多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催
地域再生計画」(平成17年度)を策定し、市民と
され、人間活動の影響を受けて形成・維持されて
行政の協働により、先駆的な里地里山の保全活
いる二次的自然環境*の保全を通じ、「自然共生
動に取り組みました。
社 会」の 実 現 を 目 指 し た SATOYAMA イ ニ シ ア
平成17年度に「越前市食育推進計画」を策定し、
ティブが世界に提唱されました。
平成20年度には「越前市食と農の創造ビジョン
県の動き
基本構想」の策定や「越前市食と農の創造条例」
の制定により、食と農のつながりの大切さを再認
県では、平成15年度に県内の里地里山の生物
識しました。
調査を実施し、今も多様な生きものがすむ代表
さらに、「里地里山保全再生全国フォーラム」(平
的な地域として30か所を「守り伝えたい福井の里
成20年)、「呼び戻そうコウノトリシンポジウム」(平
地里山30」として選定しています。本市からは、
成21年)、「コウノトリが舞う里づくり大作戦」(平成
丹生山地南部(溜池群・山ぎわの水田)、味真野
22年)が開催され、自然環境の保全や環境調和
地区(湧水地)、三里山(里山)の3か所が選定さ
型農業の大切さを多くの市民に伝えました。
れました。
また、本市西部地域は、環境省レッドリスト(RL)*
(平成19年度)で最も絶滅の危機に瀕しているⅠ
5
里地里山再生全国フォーラ
ムでの講演(平成20年)
柳生博氏を迎えたコウノトリ
シンポジウム(平成21年)
コウノトリが舞う里づくり大作
戦ステージ1(平成22年)
コウノトリが舞う里づくり大作
戦ステージ2(平成22年)
馬借街道の整備
河川清掃作業
メダカビオトープの整備
さぎ草展の開催
有機農業実験田での田植え
地元農産物の直売
生ごみの堆肥化
生ごみ堆肥によって育てた
たまねぎの収穫
市民の動き
本市では、市内を中小河川が数多く流れ、地
域住民が、河川環境や用排水を守り育ててきまし
た。住民活動の成果で市内を流れる河川にホタ
ルが飛び交うようになった地域や、住民と地元企
業が協働して河川美化に取り組んでいる地域も
あります。小学校区単位で進められている地域自
治の中で、「地域のことは地域で」と、身近な環境
美化活動や地球温暖化防止を視野に入れた事
業などが、地域住民の創意工夫により、幅広く取
り組まれています。
また、地域住民が主体となり、メダカ、アベサン
ショウウオ、サギソウなどの希少野生生物の保護
活動やビオトープ*づくりなどを通した里地里山生
態系の保全活動が、旺盛に展開されています。
農業面では、地域の食・農・環境を生産者と消
費者が一緒に考え行動しようという市民活動団体
が誕生し、活動の一環として市・南越農業改良普
及所(現丹南農林総合事務所)・農業協同組合
(JA)と連携し、有機農業による水稲栽培の実験
田を設置(平成4年~8年)し、先進的な情報を発
信しました。その後、地域で生産された農産物を
地域で消費できるような仕組みづくりや、食の安
全に向けた活動も始まりました。平成5年には、今
立地区(旧今立町)で、有機農業の技術確立を
目指した生産者組織が誕生しました。また、平成
22年には、有機農業生産者を中心に丹南地域を
一体とした、生産者組織が発足し、平成23年に
は、日本有機農業研究会全国大会が本市で開
催されるなど、活動が活発になってきています。
6
3-2 越前市の里地里山
本市には、豊かな里地里山が残されており、西
は丹生山地、東は南条山地に囲まれ、中心部を
日野川が流れ、その周辺に平野が広がっていま
す。中心部の市街地を囲むように水田地帯が広
がり、さらに農村部を囲むように山間部が広がっ
ています。山間部では、おもに、コナラなどの群
落やスギの植林地が多くを占めています。
また、古くから米づくりが盛んで、それに伴って
溜池や用排水路が整備されてきました。このよう
人の手が加わることでつくられてきた里地里山の風景
な溜池には、フナ、メダカ、ゲンゴロウ、モリアオ
ガエルなど多様な生きものが生息しています。水
癒しや和みの効果を得るなど、さまざまな自然の
路や小河川には、ドンコ、カジカ、ナマズ、カワム
恵みを多くの市民に与えてくれます。
ツ、タカハヤなどの魚類をはじめ、ゲンジボタル
一方で、農林業従事者の減少や高齢化が進
などが多く生息しています。
み、人の手が加わらなくなった農地や山林が増
豊かな里地里山を有する本市は、サギソウ、メ
加することによって、里地里山の生きものの生息
ダカ、トミヨ、ゲンゴロウ、ハッチョウトンボなど国レ
環境が悪化しています。さらに、溜池などでは、
ベルで約40種、県レベルでは約80種の絶滅危惧
外来生物法(平成16年度)に基づき、特定外来
種が生息する希少野生生物の宝庫です。特に、
生物に指定された肉食魚のオオクチバスによる
本市西部地域では、環境省レッドリストで最も絶
捕食により、在来種が激減し、生物多様性の低
滅が危惧される、絶滅危惧ⅠA類に指定されて
下*が懸念されています。
いるアベサンショウウオが生息しており、国内最
大の生息地であることがわかっています。
このような本市の里地里山は、多くの生きものを
育むだけでなく、食料や地域性豊かな伝統文化
を伝承し、さらには、自然散策や農作業を通じて
溜池
小河川
水田
アベサンショウウオ
サギソウ
カジカ
水田にすむメダカ
外来種のオオクチバス
7
3-3 越前市の農林業
本市の農業は、稲作が中心で、園芸において
は、スイカ、トマト、キュウリ、サトイモなどが生産さ
れており、ブランド化に取り組んでいます。さら
に、平成16年度以降JAと連携し、積極的に環境
調和型農業の推進を図っており、JA越前たけふ
では、平成19年度に、種籾の農薬プールでの消
毒を全て農薬を使わない温湯種子消毒機に切り
替えました。その結果、平成22年には、減農薬な
どの福井県認証特別栽培米*の作付面積が福井
水稲栽培が中心の本市の農業
県内の4割程度を占めるに至っています。
また、生きものとの共生の取組みとして、本市西
などが認められ、生産条件が不利な中山間地域
部地域において、平成21年にコウノトリ呼び戻す
では、鳥獣被害が発生するなど、課題も多く存在
農法部会が設立され、生きものを育む自然生態
します。
系に配慮した無農薬・無化学肥料栽培などによ
林業に関しては、本市の総面積の61.5%が山
る農業が始まっています。
林で占められているものの、海外からの安い木材
このような取組みによって栽培された米は、JA
の輸入などによる県産林業資源の需要低迷や従
が主体となり、「特選しきぶ米」や「コウノトリ呼び
事者の高齢化が進み、人の手が加わらなくなっ
戻す農法米」* としてブランド化を進めています。
た山林が増えています。
今後、環境調和型農業をさらに推進し、コウノトリ
森林は林業生産活動の場としてだけでなく、地
を含む多くの生きものが生息する水田で栽培さ
球温暖化の防止、洪水緩和や豊かな水源、さら
れた米のブランド化など、経済活動と自然環境保
にはレクリエーションの場となるなど多面的な機
全の両立した農業が求められています。
能を持っており、私たちの生活と深く結びついて
しかしながら、このような稲の栽培は、現在のと
います。
ころ収穫量が不安定で、栽培技術や供給量不足
などの課題もあります。また、本市においても農
業の担い手の減少と高齢化、耕作放棄地の増加
「コウノトリ呼び戻す農法米」
と「特選しきぶ米」
除草機による除草
8
しらやま西瓜
3-4 里地里山保全再生の活動
本市西部地域は、平成16年度に環境省が実施
する「里地里山保全再生モデル事業」の実施地
域に指定され、絶滅危惧種の保全、ビオトープ
づくりなど、県内でも先駆的な里地里山の保全再
生活動が、市民と県、市の協働により行われてい
ます。これらの取組みを通じて、本市西部地域で
は、平成17年度に「人も生き物も元気な里地づく
り地域再生計画」が策定され、平成20年度には
「にほんの里100選」に選定されました。
希少野生生物保全のためのビオトープづくり
また、丹生山地南部(溜池群・山ぎわの水田)、
味真野地区(湧水地)、三里山(里山)の3か所は
がら全市域に拡げ、本市の自然環境を保全活用
「守り伝えたい福井の里地里山30」に選定されま
することの意義を多くの人々に伝えていくため、
した。
環境教育と自然体験活動をさらに推進することが
本市では、アベサンショウウオ、トミヨ、メダカ、
求められています。
サギソウなどの希少野生生物の保全活動やビオ
トープ造成などの自然保護活動が市民主体で活
発に行われています。
今後、本市における自然環境保全活動や里地
里山の保全再生の取組みを、市民の理解を得な
溜池での外来種駆除
希少野生生物保全の研修
アベサンショウウオの産卵場所整備
小中学校での生きもの調査
農業者による生きもの調査
市民によるビオトープづくり
9
4. コウノトリと越前市
4-1 里地里山の営みとコウノトリ
いた日本の野生コウノトリは、このような環境の
里地里山の自然は、人が手をかけて守ってき
変化と、巣づくりに適した松の減少、農薬の多
た自然です。人の働きかけのなかで、水田や湿
用などによって、昭和46年に絶滅しました。
地、小川、河川、溜池に多くの生きものが生息し
いのちのつながり
ていました。小川や、水田のふちに設けた水溜
生きもののいのちはつながっています。このつ
りや溝が、夏場でも干上がることのない生きもの
ながりは、私たち人間にも無関係ではありませ
のすみかとなっていました。また、水田と小川、
ん。たくさんのいのちがつながることで、私たちは
そして河川との間に段差がなく、魚類をはじめ
食料をはじめさまざまな自然の恵みを利用するこ
多くの水辺の生きものが、水田と河川を行き来
とができます。古くから里地里山では、人の営み
し、生息していました。
の中で人間がほどよく自然に手を加えることで、
しかし、今日では、河川と用排水路・水田の段
豊かな生きもの同士のつながりが生まれました。
差や乾田化などによって、生きものが少なくなり
このような、里地里山の生きもののつながりの頂
ました。
点に立つのがコウノトリです。コウノトリは肉食の
また、かつての里山は、さまざまな木が植えら
鳥類で、1日約500g (飼育下でのデータ)の餌が
れ、それらは定期的に管理され、薪などの燃料
必要です。
や建材として、落ち葉は堆肥として利用されまし
コウノトリの暮らす自然環境には、多様ないのち
た。しかし、現在、薪や炭が利用されなくなり、化
のつながる生態ピラミッドが必要です。このような
学肥料の使用により堆肥として落ち葉も利用さ
コウノトリもすめる豊かな里地里山の生態ピラミッ
れなくなるなど、暮らしの変化によって山が管理
ドを取り戻すことは、私たち人間が持続的に自然
されなくなっています。
の恵みを利用し、健康で豊かに暮らすことができ
明治時代の乱獲などにより個体数が激減して
る里を取り戻すことでもあります。
生態ピラミッドって何?
自然界の生きものは、食う、食われるの関係でつながっ
ています。この関係の中で生きものは、無機物や太陽光で
育つ生産者(植物など)、生産者を食べる消費者(動物)、
生産者や消費者の死体・排出物を分解する分解者(バク
テリア、菌類など)という3つの役割をもっています。このう
ち消費者には、生産者を食べる1次消費者、1次消費者を
食べる2次消費者など、いくつかの段階があります。
この消費者と生産者の各段階に含まれる生きものの全
体量は、一般的に段階が高いほど少なくなるので、ピラ
ミッドのように表すことができます。例えば水田では、植物
を食べるバッタ、それを食べるカエル、次にカエルを食べ
るヘビ、最後にヘビ、カエル、バッタを食べるコウノトリと、
上位に行くほど生息数は少なくなります。
コウノトリは、餌として様々な段階の生きものを大量に必
要とします。かつての里地里山の生態系は、生態ピラミッド
の各段階に位置する生きものが豊富に生息する環境でし
里地里山生態ピラミッドの例
た。したがって、コウノトリも安心して暮らしていました。
10
4-2 コウノトリと越前市のかかわり
本市には、絶滅が危惧された昭和30年以降もコウノトリとの縁があり、数回にわたり飛来した経緯があり
ます。コウノトリは、国の特別天然記念物で、翼を広げると2mにもなり、その姿は非常に優雅で縁起の良
い鳥として知られることから、多くの人々に親しまれました。
コウノトリと越前市のかかわり (絶滅が危惧された昭和30年以降)
年月
で
き
ご
と
昭和30年4月
矢船町に2羽のコウノトリが飛来
昭和32年3月
~昭和39年3月
矢船町でコウノトリが営巣し、保護活動が行われる
昭和39年5月
コウノトリが福井県の県鳥に指定
昭和42年12月
コウノトリが福井県の県鳥の指定から解除
昭和45年12月
白山・坂口地区にクチバシの折れたコウノトリが飛来。地域住民による熱心な保護活動が行
われ、「コウちゃん」と命名
昭和46年2月
衰弱した「コウちゃん」を捕獲し、兵庫県豊岡市の保護増殖施設に移送
昭和52年1月
国高地区にコウノトリが飛来
平成22年4月~7月
豊岡市から巣立った放鳥2世のコウノトリが白山地区に飛来。「えっちゃん」と命名され、王子
保地区などに滞在
矢船町で暮らしたコウノトリ (昭和30年4月~昭和39年3月)
昭和30年4月、矢船町に2羽のコウノトリが飛来
しました。矢船町は、日野山の北西側に位置する
水田地帯で、西側に日野川が流れています。当
時の水田は、土地改良事業がされておらず、小
さい水田を小川がつなぎ、フナやドジョウなど多
様な生きものが河川と水田を行き来していまし
昭和30年代の矢船町の風景
観察場所でコウノトリを
観察する人々
餌を運ぶ子どもたち
保護を呼びかける看板
電柱に巣をかけたコウノトリ
風で飛ばされた巣
た。2羽のコウノトリは、この地で、その後9年間と
いう長い間、営巣し生息していました。
矢船町では、この間子どもたちも含め住民全体
により、観察場所が取り決められ、保護活動が行
われました。豪雪の冬には、各地から餌が届けら
れ、保護活動も県下に拡がりました。また、電柱
に巣をかけていましたが、台風で飛ばされたこと
から、安全面を考慮し、矢船町により人工巣塔*が
設置されました。
11
白山・坂口地区に飛来したくちばしの折れたコウノトリ (昭和45年12月~昭和46年2月)
昭和45年12月に、白山・坂口地区に1羽のコ
ウノトリが飛来しました。地元では子どもたちが観
察を行い、「コウちゃん」という名前がつけられま
した。しかし、その後「コウちゃん」は、下くちばし
が折れており、うまく餌が捕れないことがわかりま
昭和45年頃の都辺町
した。地元の白山・坂口地区をはじめ、矢船町か
白山・坂口地区に飛来した
「コウちゃん」
らも餌が届けられ、保護活動が行われましたが、
衰弱したため捕獲され、豊岡市の保護増殖施設
に送られました。「コウちゃん」は、豊岡で「武生」
と名づけられ、34年間大切に飼育され、1羽の子
どもと4羽の孫を残しました。
子どもたちの餌捕り
捕獲された「コウちゃん」
越前市にコウノトリが戻ってきた!! (平成22年4月~7月)
平成22年4月1日、40年ぶりに越前市白山地
区に2羽のコウノトリが飛来しました。コウノトリはそ
の後、越前市南部地域に移りました。2羽のうち1
羽は、その後も王子保地区などに留まり、3か月
以上滞在をしました。滞在中、市民公募によって
「えっちゃん」という名前もつけられました。「えっ
ちゃん」の飛来によって、地域住民が主体となり、
白山地区に飛来した2羽のコ
ウノトリ(手前が「えっちゃん」)
コウノトリ情報交換会
見守り活動や観察ルールづくり、休耕田を利用し
た餌場づくりなどが行われました。
「えっちゃん」の餌場づくり
12
餌を探す「えっちゃん」
4-3 コウノトリをシンボルとした取組み
コウノトリに縁のある本市では、これまでもコウノト
リをシンボルとしたいくつかの取組みが行われて
います。昭和30年代には、夏祭りにコウノトリを題
材にした山車で地域を練り歩くなどの盛りあがりが
あり、今日の山車にも通じています。
平成21年1月には、「コウノトリ呼び戻す農法部
会」が設立され、コウノトリを呼び戻すことを目標に
昭和39年の祭りに作られた
北日野地区の山車
平成18年の祭りに作られた
北日野地区の山車
コウノトリの絵を描く王子保
小学校の児童
コウノトリが巣をかける赤松
の植樹
たくさんの生きものを育む無農薬・無化学肥料の
米づくりが始まりました。
また、平成21年には、里地里山の自然環境の
大切さを未来の世代に伝えていくため、「コウノトリ
呼び戻す田んぼサポーター事業」が始まりまし
た。
平成22年4月のコウノトリ「えっちゃん」飛来の
際には、餌場づくりを通した子どもたちへの環境
学習などの取組みが市内に拡がりをみせました。
野生のコウノトリの最後の生息地である兵庫県
豊岡市では、昭和30年から保護の取組みが行わ
れ、平成元年に人工繁殖に成功しました。現在、
コウノトリの野生復帰に向けた取組みも行われて
おり、平成17年には飼育コウノトリの放鳥が実施さ
れ、野外での繁殖も確認されています。今後、コ
ウノトリ保護・繁殖と野生復帰を行うにあたって、
生息地の拡大が求められています。
こうしたなか、平成23年には福井県と兵庫県がコ
北日野地区納涼祭の
アーチ(平成22年)
ウノトリの放鳥・定着に向けた共同研究の実施を本
王子保小学校の児童が書
いたコウノトリの絵
市において予定しており、自然再生や生物多様性
回復への取組みとして期待されています。
コウノトリ呼び戻す田んぼサポーター
王子保地区で行われた餌場づくり
13
春日野町での餌場づくり
コウノトリ呼び戻す農法の圃場
コウノトリの放鳥用ケージ(豊岡市)
放鳥へ向け始まった餌場の整備
これからの取組みに向けて
本市には、昭和30年代から今日までコウノトリに関わる大切な物語があります。コウノトリは、優雅で里地
里山生態ピラミッドの頂点に位置し、豊かな自然環境の象徴です。コウノトリをシンボルに里地里山の自
然環境を保全再生することにより、人間と多様な生きものとの関係が生まれます。
この里地里山では、安全、安心な農産物を得ることができ、人間も健康で豊かな生活を送ることができ
ます。また、農産物に付加価値を付けることで、自然環境保全と経済活動の両立も可能となります。
現状と課題をふまえ、構想では、コウノトリをシンボルに人々が集まり、連携しながら行動することで、本
市の豊かな自然環境や歴史・文化を未来の世代に伝え、自然の恵みを享受できる持続可能な越前市の
実現を目指します。
14
5.生きものと共生する越前市の未来イメージ
持続可能な自然や生態系からの恵みを得て、人間が元気で豊かに暮らすためには、多様な生きものと
共生することが必要です。そして、人間生活と自然環境の調和を図りながら、生物多様性を再生させる必
要があります。そのためには、非常に長い時間がかかります。したがって、これからの人間社会は、長期
的な視点にたって行動し、変化することが求められます。このイメージ図は、人も生きものも共生する元気
な越前市の未来の姿を示しています。
里の営みとコウノトリも住める環境を取り戻した
「生きものと共生する越前市」
15
生きものと共生していたかつての環境
現在の環境
16
未来のイメージを具体的にすると
山では・・・
●
市民との協働によって山が守られ、動物の餌
となる実のなる木が育ち、イノシシやクマなど
が人里に近寄ることなく生息している。
●
人によって手入れされた山には杉などの針葉
樹に加え、ブナやコナラなどの広葉樹がほど
森林資源の利用
管理の行き届いた混交林
よく生育する混交林が整備されている。
●
豊かな自然林や人工林が整備され、山のふも
とでは清らかな水となって湧き出ている。
水辺では・・・
●
日野川をはじめ市内の河川では、たくさんの
魚が群れ、中州や浅瀬でコウノトリや水鳥など
山から湧き出る清水
日本のトンボで最小のハッ
チョウトンボ
(福井県RL要注目種)
日野川に生息するヤリタナゴ
(環境省RL準絶滅危惧種)
アベサンショウウオの幼生
(環境省RL絶滅危惧ⅠA類)
が餌をついばんでいる。
●
溜池、用水、水田、排水と河川との水辺のつ
ながりが復活し、フナ、ドンコ、ナマズなど多様
な生きものが川や水田に生息し、行き来して
いる。
●
メダカやゲンゴロウ、ハッチョウトンボ、アベサ
ンショウウオなど絶滅に瀕している生きものの
生息地が守られている。
農村では・・・
●
人々が生産する喜びを感じながら、農業を営
む傍らにコウノトリや水鳥などが舞い降り、ゆっ
たりと餌をついばんでいる。
●
農業体験などを通じ、生産者と消費者の交流
が行われ、農業者、子どもたち、まちの人々が
農業を楽しんでいる。
●
ぬるめ *、魚道、ふゆみずたんぼ * など水田に
コウノトリの傍らで農作業
生きものを育む水田
環境に配慮した水路整備
水田につくられたぬるめ
生きものを育むしくみが、農家と地域の連携
によりつくられ、多様な生きものが生息してい
る。
●
多くの農業者が農薬、化学肥料を必要としな
い農業に取り組み、「安全」、「安心」、「美味し
い」、「信頼」の4つを付加価値とした農産物が
生産されている。
17
●
環境調和型農業による農産物が付加価値を
つけて販売され、多くの生産者がやりがい、
自信、誇りをもって環境調和型農業に取り組
んでいる。
●
農産物の付加価値によって、農業の経営環
境が向上し、若い世代も農業を行っている。
●
両翼式水田魚道
米ぬか肥料の散布
ブランド農産物の販売
体験農業でのはさがけ
囲炉裏のある市内の農家
先進地との交流研修会
里にいきづく豊かな食文化
昔ながらの里の暮らし
まちの人々が農業体験や農家民泊を楽しむ
ために農村を訪れ、自然豊かでいのちを育
む農村風景を心から味わっている。
●
農業用排水路が地域ぐるみで適正に保全・
管理されている。
●
農村がゆとりや安らぎの場となっている。
暮らしのなかでは・・・
●
地域には豊かなコミュニティーがあり、人と人
のつながりによって昔ながらの伝統や文化が
保存・継承されている。
●
環境調和型農業や自然再生活動のリーダー
が地域に育ち、里地里山の保全活動への思
いが地域の人々に伝えられている。
●
昔ながらの里の暮らしが次世代に伝えられ、
現代の暮らしと共存している。
●
さまざまな地域資源を大切にし、活用方法を
考える取組みが行われ、里地里山とまちにす
む人々がお互いに助けあう意識高揚を図っ
ている。
●
安全、安心、美味しい、信頼のコウノトリをシ
ンボルとした「越前市ブランド」の農産物が市
内の商店で販売され、多くの市民が地産池
消の大切さを理解し、購入して味わってい
る。
●
皆が健康で豊かな生活を送っている。
●
コウノトリをシンボルとした「越前市ブランド」の
伝統食文化の伝承
さまざまな商品の開発と販売が行われ、各地
から多くの人が訪れる。
●
生きものとの共生を進めている都市との交流
によって、地域づくりについて情報交換や学
びあいが行われている。
18
里地里山の自然を求め訪れる
人々
●
コウノトリとの共生を進めている豊岡市などと
●
の交流が行われ、生きものと共生する地域づ
前市産農産物が使われた学校給食を味わっ
くりについて情報交換や学びあいが行われて
ている。
いる。
●
ている。
いのちを尊び生きる喜びをもって、いかなる
人とも等しくわかちあえる心を持っている。
●
コウノトリや水鳥などが餌をついばむあちこち
の水田や川で、虫捕りや魚捕りに夢中になっ
子どもたちは・・・
●
「安 全」、「安 心」、「美 味 し い」、「信 頼」の 越
●
さまざまな市民によって保全再生された越前
郷土の伝統、文化、自然、人に誇りをもち、
市の里地里山の自然環境を、環境学習や自
広く社会に貢献できる人になることを夢に、さ
然体験活動に利用している。
まざまな事を元気に学んでいる。
日野川での生きもの調査
ビオトープでの生きもの調査
環境学習の様子
小学校での農業体験学習
中学校での田んぼの生きもの調査
田んぼで遊ぶ親子
おじいちゃんから伝えられる昔の遊び
生きものが大好きな子どもたち
地元の農産物を味わう子どもたち
19
6.構想を推進する3つの方針、4つのキーワードと推進体制
この構想の実現にあたり、コウノトリ「Stork」の頭文字「S」からはじまる3つの方針と4つのキーワードを設
け推進します。
6-1 構想の3つの方針
この構想では、「生きものと共生する越前市」の未来イメージの実現にむけて、おおむね10年間に取り
組む3つの方針を定めます。
(1) 里地里山の保全再生 (SATOYAMA Initiative)
(2) 環境調和型農業の推進と農産物のブランド化 (Sales promotions)
(3) 学びあいと交流 (Study and communication)
6-2 構想の4つのキーワード
次の4つのキーワードをもとに、豊かな里地里山を次世代に引き継ぎ、自然や生きものから持続可能
な恵みを得ることができる社会にむけ、「生きものと共生する越前市」づくりを進めていきます。
Ⅰ. 物語 ( Story )
昭和30年代から平成22年まで、本市にコウノトリが飛来した際には、それぞれの時代でたくさ
んの人々が集まり、行動してきました。越前市の人々とコウノトリには、忘れられないいくつものス
トーリーがあります。
Ⅱ. 象徴 ( Symbol )
コウノトリは、里地里山の生態ピラミッドの頂点に位置し、たくさんの生きものを餌とするため、
自然環境の豊かさを示す象徴でもあります。また、コウノトリは、縁起の良い鳥として知られ、そ
の優雅な姿から人々の注目を集める象徴種です。
Ⅲ. 共生 ( Symbiosis )
コウノトリが暮らす自然環境には、多様ないのちがつながる、豊かな里地里山の生態ピラミッド
が必要です。このような自然環境を実現するには、私たち人間の暮らしと生きものが互いにその
恵みを利用しあう共生関係が必要です。
Ⅳ. 持続可能性 ( Sustainability )
失われつつある里地里山の自然環境と人の営みを取り戻し、現代の社会システムと共生する
ことは、未来にわたり自然の恵みを利用できる、持続可能な社会であるといえます。
20
構想の3つの方針
(1) 里地里山の保全再生 (SATOYAMA Initiative)
●
生きものと共生する豊かな里地里山の生態系と生物多様性の再生を、人
●
生態系に配慮した水辺環境の整備を国や県と連携し推進します。
●
里地里山の自然環境をさまざまな主体との協働により保全・活用し、次世
(2) 環境調和型農業の推進と農産物のブランド化 (Sales promotions)
●
環境調和型農業の栽培技術の確立と普及・促進を目指します。
●
多様な生きもののいのちを育む農村環境を目指します。
●
生きものとの共生を目指す越前市産の農産物を市民が消費することを拡げていきます。
●
●
生産者がやりがい・自信・誇りをもって環境調和型農業に取り組むことができる生産環境づく
りを目指します。
市内で生産される農産物に、安全・安心・美味しい・信頼の4つを付加価値とするコウノトリを
シンボルとした「越前市ブランド」の確立を目指します。
主な取組み例
●
エコファーマー*の拡大
●
環境調和型農業の栽培技術の向上
●
生物多様性の安全性を付加価値にした農産物の販売戦略構築
●
環境に配慮した農業機械・施設の整備
●
地産地消の拡大
21
主な取組み例
の営みの中で進めます。
代へ伝えます。
(3) 学びあいと交流 (Study
●
●
●
●
●
●
●
希少生物や身近な生物の生息環境の把握
●
地域の自然環境の把握と保全
●
生態系の連続性の確保
●
外来種の駆除
●
森林環境の保全
and communication)
古くから住民が培ってきた文化の価値を改めて見直し、地域の豊かなコミュニティーや文化を
保存・継承していきます。
次世代へ越前市の自然環境の素晴らしさと、それを利用する知恵を伝えていきます。
子どもたちに、環境学習と自然体験活動を通し、応用力を養い、いのちのつながりと尊さを学
ぶ場をつくります。
子どもから大人まで、越前市の自然環境や文化を、楽しみながら学ぶしくみづくりを目指しま
す。
人と自然環境の共生に取り組む地域との都市間交流を行い、地域づくりや自然再生のノウハ
ウを学び、本市の取組みに活かします。
本市のコウノトリが舞う里づくりのさまざまな取組みを全国に発信します。
主な取組み例
●
特色ある学校づくり (ふるさと・環境教育)の推進
●
学校における豊かな体験活動の充実
●
環境学習講座の開催
●
里地里山の恵みの伝承
●
先進地との交流、情報交換
22
6-3 構想の推進体制
コウノトリが舞う里づくりを展開し、継続的に取り組むには、市民、農業者、自治組織、商工業者、
研究機関や教育機関、各種団体、行政など多様な主体の参画が必要です。各主体が3つの基本方
針を基に、それぞれの立場において連携協働(ネットワークの構築)しながら構想の実現を図りま
す。各主体が推進組織を中心に、それぞれの立場で何ができるかを考え、連携しながら行動し、取
組みを全市域に拡げていきます。
子どもたちへの環境教育の推進
市
市外の
研究機関
教育機関
自然再生のための大学や研究機関との
共同研究
コウノトリが舞う里
農業団体
行政
行政
学識経験者
生態系保全団体
林業者
森林組合
行政と市民の意見交換
森林資源の有効利用
23
環境調和型農業で栽培された農産物の購入
伝統文化の子どもたちへの伝承
民
住民
自治組織
NPO
任意団体
づくり推進協議会
地域ぐるみでの自然保護活動
農業者
自治振興会
鳥類保護団体
消費者
農業者
農業協同組合
土地改良区
商工業者
商工会議所・商工会
農業者と消費者の交流
ブランド農産物の販売
24
8.参考資料
コウノトリが舞う里づくり構想策定会議名簿
委員
氏名
所属
役職
◎
北川 太一
福井県立大学
経済学部教授
○
冨田 隆
越前たけふ農業協同組合
組合長
加藤 信之
しらやま振興会
会長
山岡 登志男
坂口地区うららの町づくり振興会代表
会長
酒田 家男
王子保地区自治振興会
会長
林 耕一
北日野地区自治振興会
会長
堀江 照夫
水辺と生き物を守る農家と市民の会
会長
恒本 明勇
コウノトリ呼び戻す農法部会
会長
林 武雄
日本鳥類保護連盟福井県支部
支部長
平澤 一広
越の国 有機農業生産者の会
会長
石田 堅幸
福井県安全環境部自然環境課
課長
白崎 逸朗
福井県丹南農林総合事務所
農業経営支援部長
◎会長
○副会長
(敬称略)
アドバイザー
氏名
菊地 直樹
団体名
役職
兵庫県立コウノトリの郷公園
25
研究員
越前市コウノトリが舞う里づくり構想策定会議設置要綱
(開催)
第1条 コウノトリが舞う里づくりに向け、有識者、関係団体等から広く意見を聴取するため、コウノトリが舞う里づくり構想
策定会議(以下「会議」という。)を開催する。
(会議内容)
第2条 会議においては、次に掲げる事項に関し意見の聴取を行う。
(1) コウノトリが舞う里づくり構想(以下「構想」という。)の策定に関すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、構想の策定に関連して必要と認められること。
(構成等)
第3条 会議は、別表第1に掲げる者のうち、市長が必要と認める者(以下「構成員」という。)の出席をもって開催する。
2 会議に座長を置き、構成員の互選によってこれを定める。
3 座長は、会議を主宰する。
4 座長に事故があるときは、あらかじめ座長の指定する構成員がその職務を代理する。
(アドバイザー)
第4条 市長は、会議における必要な助言を求めるため、別表第2に掲げる者をアドバイザーとして会議に参加させるこ
とができる。
(会議の開催)
第5条 会議は、市長が必要に応じて招集する。
2 座長は、必要があると認めるときは、構成員及びアドバイザー以外の者の出席を求め、その意見を聴くことができる。
(庶務)
第6条 会議の庶務は、産業環境部農政課において処理する。
(その他)
第7条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、市長が定める。
附 則
この要綱は、平成22年9月13日から施行する。
別表第1(第3条関係)
構成員
役職
しらやま振興会
坂口地区うららの町づくり振興会代表
王子保地区自治振興会代表
北日野地区自治振興会代表
水辺と生き物を守る農家と市民の会会長
コウノトリ呼び戻す農法部会部会長
越前たけふ農業協同組合組合長
日本鳥類保護連盟福井県支部長
福井県立大学教授
越の国 有機農業生産者の会会長
福井県安全環境部自然環境課長
福井県丹南農林総合事務所農業経営支援部長
別表第2(第4条関係)
アドバイザー
26
環境・食・農を巡る国、県、市のこれまでの動き
国の動き
年度
で
き
ご
と
平成 5年度
環境基本法制定
平成11年度
食料・農業・農村基本計画策定
平成16年度
里地里山保全再生モデル事業実施地域の指定
平成17年度
食育基本法制定
平成18年度
有機農業推進法制定
平成19年度
農地・水・環境保全向上対策の実施
平成19年度
第三次生物多様性国家戦略策定
平成22年度
生物多様性保全のための活動推進法(里地里山法)制定
平成22年度
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が愛知・名古屋で開催
県の動き
平成11年度
福井県環境調和型農業推進基本方針策定
平成13年度
特別栽培農産物認証制度の開始
平成15年度
福井県守り伝えたい里地里山30の選定
平成17~20年度
福井県希少野生生物保全指導員制度の実施
平成20年度
ふくいのエコ農業推進計画策定
平成20年度
ふくいの食育・地産地消推進計画策定
平成20年度
福井県環境基本計画策定
平成22年度
コウノトリを呼び戻す田園環境再生事業の実施
市の動き
平成 7年度
武生市環境基本条例制定
平成16年度
越前市武生地域が環境省の「里地里山保全再生モデル事業」の実施地域に指定
平成16年度
人とメダカの元気な里地づくりビジョン策定
平成17年度
越前市食育推進計画策定
平成17年度
人も生き物も元気な里地づくり地域再生計画策定
平成18年度
越前市総合計画策定(環境調和型農業の推進)
平成19年度
越前市環境基本計画改定(新たに里地里山の保全活用を盛り込む)
平成20年度
越前市西部地域がにほんの里100選に選定
平成20年度
第1回里地里山保全再生全国フォーラムの開催
平成20年度
越前市食と農の創造ビジョン基本構想策定、食と農の創造条例制定
平成21年度
呼び戻そうコウノトリシンポジウムの開催
平成21年度
越前市教育振興ビジョン策定
平成22年度
コウノトリが舞う里づくり大作戦の開催
27
コウノトリの衰退と保護
コウノトリの絶滅と保護増殖の歴史
年
で
き
ご
と
昭和31年
コウノトリが20羽に減少。特別天然記念物に指定
昭和40年
コウノトリの人工飼育スタート
昭和46年
越前市で捕獲されたコウちゃんが豊岡に移送される
昭和46年
国内最後の野生コウノトリが死亡。これにより日本の野生コウノトリは絶滅
昭和60年
ロシア(ハバロフスク地方)から野生の幼鳥6羽を譲り受ける
平成63年
東京の多摩動物公園でコウノトリの人工繁殖が成功
平成元年
兵庫県豊岡市でコウノトリの人工繁殖が成功
平成14年
飼育下のコウノトリが100羽を超える
平成15年
コウノトリ野生復帰の取組みがスタート
平成17年
コウノトリの放鳥開始
写真:福井新聞社
写真:コウノトリの郷公園
捕獲されたコウちゃんの豊岡市への受け渡し
初の人工繁殖の成功
写真:コウノトリの郷公園
平成17年に行われた放鳥式
コウノトリの生態
学
翼
体
雌
分
開
雄
の
名
長
重
差
布
:
:
:
:
:
Ciconia boyciana (キコニア ボイキアナ)
2m前後
約4~5kg
一般にオスはメスより大きい。
ロシアと中国の極東を中心に分布する渡り鳥で、日本には留鳥として一部の
グループが江戸時代ころまで各地で繁殖していた。
: 現在のコウノトリの全生息数は2000~2500羽と推定され、絶滅が危惧されている。
: 成鳥は声を出さず、くちばしをカタカタと打ち鳴らすクラッタリングをする。
生
鳴
息
き
数
声
餌
生
物
: 肉食性で、ドジョウ、フナなどの魚類を中心にカエルや昆虫類など小動物を食べる。
1日に必要な餌量は、飼育下において1羽あたり約500gと推定されている。
そ
の
他
: ヨーロッパでは「幸せを運ぶ」、「赤ちゃんを運ぶ」などの言い伝えがあり、日本
でも縁起の良い鳥として知られている。
28
用語解説
地球上の生きものは、46億年という長い歴史の中でさまざ
里地里山
まな環境に適応して進化し、現在3,000万種ともいわれる
里地里山は、奥山と都市の中間に位置し、集落とそれ
多様な生きものが生まれました。
を取り巻く二次林、それらと混在する農地、溜池、草原な
この長い進化の歴史の中で生まれた生物多様性には、
どで構成される地域概念です。
①生態系の多様性、②種の多様性、③遺伝子の多様性
農林業などにともなう、さまざまな人間の働きかけを通
の3つのレベルが存在します。
じて環境が形成・維持されてきました。里地里山は、雑木
林、水田、畑地、小川といった身近な自然が、私たち人
・生物多様性の3つのレベル
間にとって心地よい形で存在しているばかりでなく、特有
生物多様性の保全・再生には、この3つのレベルの多様性
の動植物の生息・生育地であり、生物多様性の保全の観
が同時に守られることが必要です。
点からも注目されています。
① 生態系の多様性
森林、里地里山、湿原、サンゴ礁などさまざまなタイプの自然
環境と生きものとのつながりが存在することです。
里地里山保全再生モデル事業
② 種の多様性
環境省では、平成16年度から「里地里山保全再生モデ
細菌などの微生物から動植物など、さまざまな種類の生きも
ル事業調査」を開始し、全国の里地里山の生態系タイプ、
のが存在することです。
立地特性なとを踏まえ、モデル事業実施地域として、次の4
③ 遺伝子の多様性
地域を選定しました。
同じ種類の生きものでも異なった遺伝子(生きものの設計図)
が存在することで、形や模様、生態(生き方)など、さまざまな
[1]神奈川西部地域(秦野市等)
個性が存在することです。
[2]京都北部・福井地域(宮津市、綾部市、武生市等)
[3]兵庫南部地域(三田市等)
生物多様性は、自然の恵みを通して私たち人間も含め
[4]熊本南部地域(宮原町等)
全てのいのちを支えています。酸素の供給、気温・湿度
これら4地域では、地域の特性に応じ、環境省、関係省
の調節、水や物質の循環など、全てのいのちの存在基盤
庁、地元自治体、NPO、住民、専門家等が連携及び協力
です。そして、生物多様性は、食べ物、木材などの材料だ
して、里地里山保全再生のための地域戦略が作成されま
けでなく、医薬品、技術開発への応用など、さまざまな恵
した。さらに、それぞれの役割分担に基づき、ビオトープ整
みをもたらしてくます。さらには、人が自然と共生するため
備などの保全再生のモデル事業を展開し、これらの取組み
の知恵から生まれた、個性豊かな伝統文化も生物多様性
を広く発信することによって、全国の里地里山保全再生活
があればこそできあがったものです。
また、森林があることで山地災害、土壌流出の軽減な
動が促進されてきました。
ど、私たちを含めた多くのいのちが、生物多様性の恵み
(引用:環境省ホームページ)
によって守られています。
生物多様性条約第10回締約国会議 (COP10)
(引用:環境省ホームページ)
「COP(Conference of the Parties)」とは、国際条約を
SATOYAMAイニシアティブ
結んだ国が集まる会議(締約国会議)のことです。生物多
様性の締約国会議は、平成6年11月にバハマのナッソー
国連大学高等研究所と環境省によって推進されている
から始まり、今回で10回目を迎えます。多様な生きものや
国際的な取組みのことです。日本も含めた世界中の様々
生息環境を守り、その恵みを将来にわたって利用するた
な地域において、伝統的な方法に学びながら、また現代に
めに結ばれた生物多様性条約では、10回目の締約国会
合う形で、土地と自然資源の適切な利用や管理の方法を
議「COP10」を日本が議長国となり、平成22年10月に愛
探り実践していくことで、自然を守り、人間も豊かで幸せな
知・名古屋で開催しました。
生活をおくれるようになることを目指しています。
(引用:生物多様性第10回締約国会議ホームページ)
このような考えに賛同する世界の様々な組織・団体が、
協力してSATOYAMAイニシアティブの取組みを進めていく
ための国際パートナーシップが、COP10を契機として設立
生物多様性
されました。
生物多様性とは、生きものの「個性」と「つながり」です。
日本では、SATOYAMAイニシアティブを通じて、次のこと
29
などが期待されています。
二次的自然環境
人間活動によってつくりあげられ、人が手を加えること
① 私たちのライフスタイルを見直し、持続可能な、未来につ
で管理・維持されてきた自然環境のことです。里地里山
なげられる土地や生態系サービスの利用方法の構築。
はまさにこの環境のことで、水田や溜池、雑木林、また採
② 地域のコミュニティーに昔からある、智恵の見直し。
草地や放牧地などの草原などが含まれます。
③ 里山を維持・管理し、経済を活性化することで、都市への
二次的自然は、人が手を加え続けることで維持されて
人口流出の抑止。
います。したがって、人の手が加わらなくなると遷移(生
④ 食料や燃料を自給できる、より自立した地域社会の形成。
物群集の組成が時間とともに変化する過程)が進み、二
次的自然に特有の動植物が生息できなくなります。近年
持続可能な社会
は、中山間地域の過疎化、高齢化に伴い、里地・里山の
持続可能な社会とは、自然から得られる資源量を減ら
二次的自然の放棄が進行し、メダカやタガメなどかつて
さず、また、環境再生能力を超える廃棄物を出さず、人
私たちのまわりにあたり前に生息していた生きものが絶
間の生活を持続的に継続していく社会です。持続可能な
滅の危機に瀕しています。
社会は、地球上の環境問題全てを含んでおり、私たちの
未来にとって必要不可欠な概念です。例えば、コウノトリ
環境省レッドリスト(RL)
をよみがえらせるためには、たくさんの餌となる生きもの
野生生物の保全のためには、絶滅のおそれのある種を
と、それらが生息できる環境整備が必要であるように、生
的確に把握し、一般への理解を広める必要があることか
きものと自然は循環しながら複雑につながっています。人
ら、環境省ではレッドリスト(日本の絶滅のおそれのある野
間は自然の恩恵なしでは生きられません。したがって、自
生生物の種のリスト)を作成・公表するとともに、これを基に
然の恵みをうまく利用し、私たちが存続していく方法を見
したレッドデータブック(日本の絶滅のおそれのある野生生
つける必要があります。
物の種についてそれらの生息状況等を取りまとめたもの)を
刊行しています。
環境調和型農業
(引用:環境省)
環境調和型農業とは、農地の状態に合わせた土づくりと
ビオトープ
農作物の病気や害虫の発生に応じた必要最小限の防除を
ドイツ語で生物を意味するBioと場所を意味するTope
行うことで、自然環境にやさしく、地域環境との調和を目指
す栽培方法をいいます。
の合成語です。「野生生物の生息空間」などと訳され、生
(引用:福井県安全環境部食の安全安心課、食の安全安心だより Vol.3)
きものが互いにつながりを持って生息している空間を言
います。今日では、環境が損なわれた都市部や公園、農
村部の耕作放棄水田などに、鳥類や魚類、昆虫、植物
希少野生生物
など、特定の生物群集が生息できるようにつくられた空
この構想で扱う希少野生生物は、環境省および福井県
間を指して使われることもあります。
が刊行しているレッドリストに記載されている動植物を示し
ます。
生物多様性の低下
地球の46億年という長い歴史の中で生まれた生物多様
農地・水・環境保全向上対策
性は、現在さまざまな理由により危機に瀕しています。現
農林水産省では、平成19年度から、環境保全を重視し
在、生きものの絶滅のスピードは、化石記録などから判断
農地や農業用水を保全する資源保全施策の導入を打ち出
して、推定値で年間40000種にも達します。これは通常の
しています。この政策は農業者だけでなく、地域住民、自
絶滅スピードの1000倍とも言われています。
治会、関係団体などが幅広く参加する活動組織を新たに
生物多様は、現在3つの危機によって低下が進んでい
つくり、これまでの保全活動に加えて、施設を長持ちさせる
ます。
ようなきめ細かな手入れや農村の自然・景観などを守る地
域共同活動を支援するものです。また、活動に加えて、化
生物多様性の3つの危機
学肥料と化学合成農薬の5割低減など環境にやさしい農
●
業に向けた地域での取組みを促します。
~開発や乱獲などの人間活動による種の減少~
第1の危機
道路整備やダム建設などの開発工事によって山が削られ、
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谷が水没してしまうことで、生きものの生息環境が悪化したり、
縁のあるコウノトリを呼び戻すことを目標に、コウノトリの餌を
消滅してしまうことがあります。
はじめ、多様な生きものとの共生を目指し栽培された米で
また、観賞や狩猟、商業目的で生きものが過剰に採集される
す。
ことでいなくなってしまうケースがあります。コウノトリは、明治時
コウノトリ呼び戻す農法は、多様な生きものを育むため農
代の狩猟により大幅にその数を減らしました。また、身近な例と
薬、化学肥料を使用しない、または抑えた稲の栽培を行い
して、山に生える山菜や花は、過剰採集によってなくなってし
ます。また、通常6月中旬から水田の水を抜く中干し作業
まうことがあります。
●
を、オタマジャクシがカエルに、ヤゴがトンボになる7月中旬
第2の危機
頃まで遅らせるなど、自然生態系に配慮した農法です。
~人間活動の縮小による二次的自然の荒廃~
里地里山などの二次的自然環境は、古くから人間が自然に
手をかけて維持管理されてきました。現在、里地里山では、
人工巣塔
人々の生活スタイルの変化や農林業者の高齢化によって農地
かつてコウノトリは、マツの木の頂上に巣をかけていまし
や山林の維持管理が難しくなり、放棄されることがあります。農
た。しかし、現在ではマツの高木の減少により、巣をかけら
地や山林は、いったん放棄されるとそれまであった生態系のバ
れる場所がなくなってしまいました。そのため、野外で生息
ランスが崩れ、生物多様性の低下が進行しています。
●
するコウノトリは、電柱などの上に巣をかけることがありま
第3の危機
す。しかし、電柱の上は感電事故や電気設備への影響な
~人間の持ち込んだものによる生態系のかく乱~
どから、巣づくりの場としては適していません。そこで、人工
生きものは、長い時間をかけて棲んでいる地域の環境にあわ
せ、複雑な生態系をつくりあげてきました。この生態系に本来
的に高さ11mから13mの鉄筋コンクリート柱の頂上部に、直
いなかったものが持ち込まれると、生態系のバランスが崩れ、
径約1.6mの鋼製の巣台を取り付た人工巣塔が兵庫県豊岡
人間生活に悪影響を及ぼすことがあります。特定外来種のオ
市を中心に建てられています。円台の上に木の枝や藁な
オクチバスなどは、釣り目的で日本各地の池や川に持ち込ま
どの巣材を用いて巣を作り、コウノトリが留まったり、子育て
れ、在来種を捕食することにより、水辺の生きものの多様性の
ができるようになっています。
低下を招いています。また、湖や河川の漁業に多大な被害を
与えています。
ぬるめ
(引用:環境省ホームページ)
「ぬるめ」とは、寒冷地の中山間地において水田に作
られる小さな水路です。中山間地特有の山から供給され
福井県認証特別栽培米
る冷たい湧水を田んぼに引く際、稲の成長を妨げないた
福井県では、平成13年度から、有機農産物(有機JAS
めに、田んぼの脇に小さな水路を設けて、水を温めてか
認定農産物)以外の、化学合成農薬と化学肥料の使用を
ら田んぼに入れていました。ぬるめには、常に水が流れ
極力抑えた(福井県慣行栽培の5割以上削減)農産物に
ているため、渇水時や水田を干した際に、水生生物の避
ついて、県独自の厳正なる基準を設け認証しています。
難場所として機能し、水生生物の保護・保全に効果を発
特別栽培米はこの基準を基に栽培された米で、認証1か
揮します。
ら4までが存在します。これらの認証の詳細は以下のとお
りです。
ふゆみずたんぼ
・ 認証1:無農薬・無化学肥料(有機栽培)
ふゆみずたんぼとは、平成8年ごろから始まった、収
・ 認証2:無農薬・減化学肥料(通常の50%以上減)
穫後の水田に意図的に湛水する試みで、ガン、カモ類の
・ 認証3:減農薬(通常の50%以上減)・無化学肥料
越冬地を分散させるために始まりました。 ふゆみずたん
・ 認証4:減農薬(通常の50%以上減)・減化学肥料
ぼは、ハクチョウ、コウノトリなどの鳥類の保護だけでな
(通常の50%以上減)
く、里地里山の生物多様性回復や営農面での可能性な
(引用:福井県ホームページ 福井県農林水産部食の安全安心課 特
ど、多面的機能を有しており、最近では全国に拡がりを
別栽培農産物認証制度)
見せています。
コウノトリ呼び戻す農法米
エコファーマー
コウノトリ呼び戻す農法米は、平成21年1月に本市西部
平成11年7月に制定された「持続性の高い農業生産
地域において設立されたコウノトリ呼び戻す農法部会に
方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」第4条
よって栽培された、安全、安心で美味しい米です。本市に
に基づき、農業が持つ自然循環機能を生かし、将来に
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わたって持続的に農業生産を行うため、堆肥などによる土
づくりと化学肥料・化学合成農薬の低減を一体的に行う農
業生産方式の計画を立て、都道府県知事に認定を受けた
農業者のことです。
写真提供協力者(順不同)
林 武雄氏
八田弘之氏
恒本明勇氏
長谷川巌氏
水辺と生きものを守る農家と市民の会
コウノトリ「コウちゃん」飛来40周年記念事業実行委員会
武生メダカ連絡会
NPO法人土といのちの会
大虫地区自治振興会
王子保地区自治振興会
北日野地区自治振興会
JA越前たけふ
福井新聞社
王子保小学校
越前市エコビレッジ交流センター
福井県
コウノトリが舞う里づくり構想
平成23年3月発行
編集・発行:越前市(産業環境部農政課里地里山再生推進室)
〒915-8530 福井県越前市府中1丁目13番7号
TEL: (0778) 22 3009
FAX:(0778) 23 9907
http://www.city.echizen.lg.jp/
E-mail : [email protected]
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