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教育用コンテンツのための平易な立体視 3DCG アニメーション開発手法

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教育用コンテンツのための平易な立体視 3DCG アニメーション開発手法
教育用コンテンツのための平易な立体視 3DCG アニメーション開発手法
佐藤 智明・神奈川工科大学工学部機械工学科
〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
TEL. 046-242-0030(内 3345), FAX. 046-242-8735
E-mail:[email protected]
1.はじめに
これまでの立体視3DCGシステムは,大型娯楽施設の
アトラクションや博物館の視聴覚施設など,大規模な
ものでは数千万円から数億円の予算が必要であった.
近年になり,比較的小規模の数百万円程度で立体視3
DCGが可能なものも普及してきている.しかし,立体視
3DCGを実現させるための設備はいまだ高価で誰でも
気軽にコンテンツを作成して上映することは難しい.
教育の領域においては,メディア教育開発センターな
どの大規模な機関で高額なシステムを使った研究ベー
スの報告例1)がいくつかある.しかし,小中高などの
学校単位,あるいは大学の教室(講義)単位でシステ
ムを導入するには,施設の面でもまたコンテンツ作成
能力においてもまだ敷居が高いと言えよう.その一方,
立体視3DCGコンテンツは学習者に学習対象物の構造
を認知させるためには効果的であると考えられるため,
特に工学や物理学などにおける教育には非常に有効で
あると考える.したがって,これまでより廉価な立体
視3DCGシステムが開発され,教員が比較的平易にコン
テンツを作成できるようになれば,こうしたコンテン
ツによる教育効果の向上が期待できる.このようなこ
とから,本研究では既製の視聴覚装置やPCアプリケー
ションを応用した廉価な立体視3DCGシステムを考案
した.更に,工学部機械工学科の授業で使用するため
のエンジンの動作を表現した簡単な教育用立体視3
DCGコンテンツを開発し,実際の授業において,平易に
立体視上映することに成功したので報告する.
2.従来の立体視3DCGコンテンツ開発
これまでの立体視コンテンツの開発には高度なスキ
ルが要求された.パーソナルコンピュータ上で立体視
3DCGコンテンツを作成する場合,OpenGLやDirectXと
いったグラフィックス表示のためのライブラリをC言
語などのプログラムから直接制御する必要があった.
そのため,プログラミングに関するスキルや,コンピ
ュータグラフィクスに関する知識を持ち合わせていな
い一般ユーザーにとって,立体視コンテンツを作成す
ることは難しかった.このようなことから,教育現場
においても教育用コンテンツを開発する場合,コンテ
社団法人 私立大学情報教育協会
平成20年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会
ンツの作成を外部のメーカーに委託しなくてはならず,
高価な立体視システムの購入と共に高いコンテンツ制
作費を準備しなくてはならなかった.また,コンテン
ツを外部に作成依頼した場合,その後に修正の必要が
生じた場合,その度に追加の予算が必要となるため,
運用コストも無視できないものとなる.
3.平易な立体視3DCGシステムの概要
本立体視3DCGシステムは,基本的には従来の同様なシ
ステムにおいて最も一般的に用いられてきた偏光メガ
ネ方式を採用している.図1に概要を示した.2台の
プロジェクターからそれぞれ右目用と左目用のCG画像
を別々に映写する.映写される光は,各プロジェクタ
ーのレンズの直前に設置された偏光フィルターを透し
てスクリーンへ投射される.2つの偏光フィルターの
偏光角度を90度ずらした状態で光を透過させることで
左右異なる偏光角度の光による映写が可能となる.映
写するスクリーンには偏光を偏光のまま反射すること
ができるシルバースクリーンを用いる.シルバースク
リーン上に左右別々の映像を重ねて映写する.視聴者
は偏光メガネをかけることで右の目には右用の映像,
左の目には左用の映像を見ることができる.これによ
って視聴者は映像を立体的に見ることができる.本シ
ステムの構成では市販のプロジェクター2台と偏光フ
ィルター2枚およびシルバースクリーンの合計金額約
30万円でシステムを構築した.
図1
偏光メガネ立体視法概要図
図2
図3
Maya 編集画面
アニメーションの実行(左目用画面)
Maya8.5を用いた.本ソフトウェアの価格は教育版で10
万円程度である.このソフトウェアは3DCGのモデリン
グ,レンダリングおよびアニメーションの作成を3DCG
の知識がなくても比較的簡単に作成することができる.
本ソフトウェアの機能の中に,編集時の動作確認の
ために,複数の仮想カメラを仮想作業空間上に配置し,
それぞれのカメラが撮影した画像を2つの別々のウィ
ンドウ上に再生する機能がある.本研究ではこの機能
に着目した.図2にMaya編集画面を示し,図3にアニ
メーション実行の図を示した.作業空間上でオブジェ
クトをアニメーション再生し,その様子を右目と左目
の役割を持たせた2つの仮想カメラによって撮影し,
その映像を別々のウィンドウに表示させる.これら2
つのウィンドウをデュアルディスレイ対応のPCグラフ
ィックスボードの2つの端子から独立に出力させる.
これらの端子に図1の様に2つのプロジェクターを取
り付け,左右別々に映写することで,本システムによ
る立体視3DCGアニメーションは実現される.
本システムの特徴は,一般的な市販の3DCG作成ソフ
トウェアに備わっている,アニメーション編集のため
の機能を立体視アニメーションの実演に応用したこと
にある.これによって,これまで専門的スキルを必要
とした立体視コンテンツの作成と実演をアプリケーシ
ョンの使い方を覚えるだけで誰でも簡単に行えるよう
にした.
4.立体視3DCGコンテンツの試行的実践
本システムを使用して,工学部機械工学科の授業に
おいて,エンジンの動作原理の説明時に用いるエンジ
ンの内部部品の動きを再現した3DCGアニメーション
コンテンツを作成し,授業において,立体視の実演に
成功した.立体視映写実演の様子を図4に示した.
5.おわりに
市販の3DCGアニメーションソフトウェアを応用し
た廉価な立体視システムを開発し,それによってエン
ジンの動作を再現する立体視3DCGアニメーションコ
ンテンツを作成した.更に実際の授業において,エン
ジンの原理を説明するために立体視3DCGアニメーシ
ョンを実践した.
図4
機械工学実習科目における立体視実演の様子
本システムは3DCGアニメーションコンテンツの開
発とコンテンツの上映を一種類のアプリケーションソ
フ ト ウ ェ ア で 行 う . ソ フ ト ウ ェ ア は AutoDesk 社 製
社団法人 私立大学情報教育協会
平成20年度 全国大学IT活用教育方法研究発表会
謝 辞
授業での実施等にあたり,助言を頂いた早稲田大学
人間科学学術院の永岡慶三教授におかれましては感謝
の意を表します.
参考文献
1) 近藤智嗣:日本教育工学会研究報告集, (2002),
No.02-4, pp.1-6.
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