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「百笑組合」 中家 重夫さん

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「百笑組合」 中家 重夫さん
 岩手県葛巻町からは、畜産農家が共
うになったというわけです。
同で粗飼料の自給率向上を目指してい
メンバーのひとりで、中家さんのすぐ
るきわめて珍しい、
すばらしい事例です。
上の家の上家吉勝さん(40歳)は、搾乳
農業が大規模化するということはまわり
牛38頭に加えて、新しく繁殖用和牛5頭
に仲間がいなくなることです。
ところが
を導入しました。これまで近くの町の事
葛巻町の吉ヶ沢集落(60戸)では、6戸の
務員として働きに出ていた妻が勤めをや
畜産農家が共存共栄を図っているのです。
めるためです。その減収分を搾乳牛の増
その中心人物が中家重夫さん(56歳)
頭ではなく和牛の繁殖に求めたのは、中
で集団の名が
“百笑組合”。
あえて
“百笑”
家さんの強いすすめによるものです。
を名乗るところに中家さんの強い個性と
24歳で婿に入り共同作業の中で苦労
社会に向き合うスタンスが示されています。
をし、成長もしてきた中家さんは、共同
重夫さんは、昭和49(1974)年に町内
をより合理的で強固なものに発展させて、
から中家エイ子さん(56歳)に入り婿し
次世代を育てる仕組みにしたいという強
てきました。当時の経営は水田30a、搾
い願望と夢があります。そういう先輩た
乳牛5頭、飼料畑1.2haという規模でした。
ちの中で自分も育ったからです。
▲夏の出番を待つ細断型ロールベーラと左から山下さん、中家さん、上家さん
最大限に発揮できるんです」
ない。だから個別にたくさんの機械を買
畑の条件はいろいろで、面積は1枚5a
って次々と飛び乗ってこわれるまで使わ
から5haまであるが、作業条件に大きな
なきゃならないんだよ」。
違いはないようです。
「コーンを刈る奴、
吉ケ沢集落の畜産農家の共同も、も
ロールベーラで伴走する奴、それをトラッ
ともとは機械の補助事業のための受け
クに積む奴、運ぶ奴。
まったくロスがなく
皿として作られたものです。
しかし、機械
作業は一挙に終わるんですよ。共同の力
の共同利用を超えて粗飼料を共同生産
です。
何より天候の心配をしなくてもすむ」
するところまで踏み込んだことが大きな
なーるほど。
特長で、
スタート当初は中家さんが一番
こういうやり方で、加入農家6戸のお
PTAだ、消防だ、部会だと忙しいんですよ。
の若手だったというくらいの長い歴史を
よそ300頭の牛の粗飼料は作られてい
個別対応では大変な負担になります。そ
もっているのです。
るのです。
こを共同、協同で支えてやれないか。そ
デントコーンサイレージ用の細断型ロー
細断型ロールベーラの導入で体がラ
ういう仕組みを作らないと次ぎの世代は
ルベーラ(タカキタ)も岩手県では1号機
クになり一番喜んでいるのはカアちゃん
育ちません」。
“ 百笑組合”では6戸協同
の導入です。
ところが導入に賛成したの
たちだろうと中家さんは笑います。それ
の堆肥舎を建設中で私が訪れた日、堆肥
は2人、4人が反対だったそうです。
「牧
まではサイロからサイレージを取り出し
用のホイールローダが納品されました。
草ならわかるけど、細かく刻んだデント
キャリィで畜舎まで運ぶのはカアちゃん
補助事業の名称は『平成17年度団体営
コーンを巻けるわけがないというのが反
の受け持ちだったのだそうです。
ところが、
農畜産環境整備事業』で、引き受け団体
対理由でしたよ」
と中家さんは振返って
1個が300kgの大きなロールになるとカ
名は『吉ケ沢環境保全組合』
となってい
32年後の現在は搾乳牛30頭、育成牛
笑います。
「ところがやってみると、
デント
アちゃんたちの手に負えず、置き場から
ました。
10頭、和牛繁殖牛50頭、子牛32頭、採
コーンサイレージ作りにこそ共同の力が
畜舎までは機械を使って男たちが運ぶよ
中家重夫さんの目標は法人化して構
▲和牛はビニール囲い
のなかにいる。
コスト
低減が大きな狙いだ
岩手県葛巻町
「百笑組合」
中家 重夫さん
▲高値で取引されている中家さんの牛
▲
法
人
化
を
目
指
す
中
家
さ
ん
ます。
「 それを1人でやる、やらざるを得
「30歳代、40歳代は子育て中で、やれ
草地20ha、
デントコーン3haです。
成メンバーの事業を分離独立させること
畜舎にはほとんどカネをかけていない
です。搾乳、和牛繁殖、飼料作、堆肥、資
ことがわかります。和牛が入っているの
源環境と部門ごとに分離しておけばこ
は大型のビニールハウスの骨組みの中
れから離農する人たちの分が吸収、
カバー
でした。搾乳と和牛の繁殖を組み合わせ
できると考えているのです。
たのは、
「 搾乳牛だけでは危険だ」
という
そのための準備なのか、中家さんの2
中家さんの経営哲学によるものです。
人の息子は共に削蹄師で両親と同居し
「畜産の共同とは珍しいですね」
と問うと
ています。
「 百回笑って百まで生きよう」
「そもそも畜産は仕事そのものが1人で
がキャッチフレーズだそうです。
はやれないんですよ」
と中家さんはいい
▲堆肥処理用に導入されたホイールローダ
▲繁殖和牛を経営に組み込んだ上家さん
▲細断型ロールベーラは共同作業が効率よく行える
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