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第1節 消費の動向(PDF形式:55KB)

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第1節 消費の動向(PDF形式:55KB)
第1章 最近の地域経済の歩み
第1章では、2012年末から消費税率引上げを経た足元までの最近の地域経済の動向を概
観する。
<ポイント>
○今次回復局面は、所得の改善が大都市圏で先行したことや、資産効果や観光需要
の影響が大都市圏に多くみられることから、消費の回復は大都市圏で先行してい
る。一方、雇用は全地域で着実に改善し所得改善は地方へと波及し、地方におい
ても経済の好循環に向けた動きがみられる。
○生産は足元では下げ止まっており、一部の地域で持ち直しがみられる。設備投資
については足元はおおむね横ばいであるものの、全地域で増加する見込みである。
こうした動きが、地方における更なる雇用、所得の改善につながることが期待され
る。
○また、住宅建設の動向や、公共投資の拡大は地方経済の下支えとなる一方、景気
ウォッチャーからは人手不足等への懸念も指摘されている点等に、留意が必要で
ある。
1.消費の動向
(百貨店等では大都市圏で先行して改善)
今次回復局面における消費動向を、大都市圏の動向と地方の動向を比較しつつ概観する。
大型小売店販売額(消費税込)をみると、2013年1∼3月以降、東京都、愛知県、大阪
府で全国平均に比べて先行して回復した。また三都府県では、2014年初めの駆け込み需要
でも比較的高い伸びを示すのみならず、反動からの回復も早くみられた(第1−1−1図)
。
第1−1−1図
大型小売店販売額(税込、既存店)
第1−1−1図 大型小売店販売額(税込、既存店)
10
8
6
(前年同期比、%)
2014年1∼3月
2013年1∼3月
4∼6月
4∼6月
4
2
0
7∼9月
10∼12月
△ 2
△ 4
7∼9月
全
国
東 京 都
(備考)1.経済産業省「商業販売統計」より作成。
2.税込の販売額。
1
愛 知 県
大 阪 府
足元の動向について、百貨店売上高(消費税抜)をみると、東京、大阪を始めとする都
市部で駆け込み需要の反動からの回復が早くみられた。一方、他の地域では夏の天候不順
や物価上昇の影響が相対的に強くみられたことなどから、これまで続いてきた持ち直しの
動きに足踏みがみられる(第1−1−2(1)図)
。
また、スーパー売上高(消費税込)をみると、緩やかに反動から回復する中で夏には天
候不順等を受けた生鮮食料品の値上がり等により関東のみならず北海道、東北及び九州等
で前年比プラスの伸びとなった。9月に入り伸び率が低下またはマイナスとなる地域がみ
られたが、足元では前年比プラスとなる地域がみられるなど、総じてみれば底堅い動きが
みられる。なお、四国においては大雨等により夏季に売上高が大きく減少していることに
も留意が必要である(第1−1−2 (2)図)
。
第1−1−2(1)図
地域ごとの百貨店売上高(税抜、既存店)
第1−1−2(1)図 地域ごとの百貨店売上高(税抜、既存店)
(前年同月比、%)
4
2014年8月
9月 7月
10月 8月
11月 12月
5月 6月
0
△ 4
△ 8
全国
10都市
10都市以外
東京
大阪
(備考)1.日本百貨店協会「全国百貨店売上高概況」より作成。税抜の売上高。
2.10都市は、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡の合計。
第1−1−2(2)図
地域ごとのスーパー売上高(税込、既存店)
第1−1−2(2)図 地域ごとのスーパー売上高(税込、既存店)
(前年同月比、%)
4
3
9月
2
1
0
△ 1
10月
2014年8月
△ 2
11月
△ 3
△ 4
全国
北 海道
東北
関東
中部
(備考)1.経済産業省「商業販売統計」により作成。
2.税込の売上高。
3.地域区分はB。
2
近畿
中国
四国
九 州・沖 縄
(乗用車販売は足元では持ち直し)
乗用車販売をみると、駆け込み需要とその反動の緩和等を視野に入れた自動車取得税の
引下げやエコカー減税の拡充等の措置がとられたこともあり、駆け込み需要が2013年後半
から2014年初めにかけてみられ、観光需要が旺盛な沖縄を除いては販売のはく落がみられ
たが、足元においては総じて持ち直している(第1−1−3図)
。
第1−1−3図
乗用車新規登録・届出台数の推移
第1−1−3図 乗用車新規登録・届出台数の推移
(2010年=100)
150
140
130
北海道
東北
東海
北陸
関東
120
110
100
90
80
9
10
11
12
1
2
3
4
5
2012
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
2013
6
7
8
9
10
11
7
8
9
10
11 (月)
(年)
2014
(月)
(年)
(2010年=100)
150
140
130
近畿
中国
九州
沖縄
四国
120
110
100
90
80
9
10
11
12
1
2012
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
2013
12
1
2
3
4
5
6
2014
(備考)1.(社)日本自動車販売協会連合会「自動車登録統計情報」の登録ナンバーベース及び
(社)全国軽自動車協会連合会「軽自動車新車日報累計表」より内閣府にて季節調整。
2.地域区分はA。
3
(資産効果の影響は大都市圏で大きい可能性)
このように大都市圏の消費が先行して改善する背景については後述するように現金給
与総額と就業者数の改善の影響が考えられるほか、以下の要因が考えられる。
世帯の株式保有の状況をみると、大都市圏は他の地域と比べ高くなっており(第1−1
−4図)
、株式相場上昇による資産効果を受けやすくなっている可能性がある。
第1−1−4図 1世帯あたりの株式保有額(大都市圏及び地域別)
第1−1−4図 1世帯あたりの株式保有額(大都市圏及び地域別)
120
(万円)
100
80
60
40
20
0
関
東
圏
中
京
圏
近
畿
圏
北
海
道
東
北
北
陸
中
国
四
国
九
州
沖
縄
(備考)1.総務省「平成21年全国消費実態調査」より作成。
2.2人以上の世帯のうち勤労者世帯。
3.残高は平成21年11月末時点。
4.関東圏はさいたま市、千葉市、東京都区部、横浜市及び川崎市等。
中京圏は名古屋市等。
近畿圏は京都市、大阪市、堺市及び神戸市等。
5.地域区分はC。
(観光は引き続き好調であるが、免税店や宿泊客数は大都市圏に偏り)
次に訪日外国人客数をみると、2012年10月以降は中国からの観光客が対前年比で減少に
転じていたが、約1年後の2013年9月以降は上昇に転じ、中国からの観光客の着実な回復
がみられる(第1−1−5図)
。また航空便の増加やビザ制度の改定1等もありアジア地域
を中心とした他地域からの観光客もおおむね増加傾向にあることから、全体では対前年比
で二桁を超える訪日外国人客数の伸びがみられており、国内消費の喚起につながっている
ものとみられる。
1
2013 年7月よりタイ、マレーシアからの短期滞在者に対するビザ免除、ベトナム、フィリピンに対する短期滞
在数次ビザの発給等が開始された。
4
第1−1−5図 訪日外国人客数 第1−1−5図
訪日外国人客数
5
11
(千人)
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
9
10
11
12
1
2
3
4
2012
韓国
6
7
8
9
10
12
1
2
3
4
5
2013
中国
台湾
香港
6
7
8
9
2014
東南アジア
北アメリカ
ヨーロッパ
オセアニア
10
11
12 (月)
(年)
その他
(備考)1.日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より作成。
2.2014年11、12月は推計値。
3.東南アジアはタイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、インド、ベトナム。北アメリカはアメリカ、カナダ。
ヨーロッパはイギリス、フランス、ドイツ、ロシア。オセアニアはオーストラリア。
また北海道、沖縄への入域観光客数をみると、沖縄においては天候要因により8月の伸
び率は鈍化したものの、それを除けば二桁近傍での高い伸び率で推移している。この背景
としては、国内旅行客は新石垣空港の開港やLCCの増便等、外国人旅行客は一括交付金を
活用した沖縄観光プロモーションの効果や那覇クルーズターミナルの供用開始等が挙げ
られる2。一方で北海道は、観光客数の水準そのものは高いものの、鉄道での来訪者が減少
したことや、昨年度がイベント等により高い伸びを示したことの反動から、足元では前年
。
を下回っている3(第1−1−6(1)(2)図)
2
沖縄県への 2013 年度の国内旅行客数をみると、前年比 7.4%増の約 595 万人(構成比 90.5%)
、外国人旅行客
数は前年比 64.0%増の約 63 万人(構成比 9.5%)
、合計で前年比 11.1%増の 658 万人となった。
3 北海道への 2013 年度の旅行客数は、前年比 4.7%増の約 1,227 万人となった。
5
第1−1−6(1)図 北海道、沖縄県来訪観光客数の推移
第1−1−6(1)図
北海道、沖縄県来訪観光客数の推移
25
(前年同月比、%)
北海道
沖縄県
19.7
20
17.5
16.2
8.9
10
5.7
5
15.2
14.7
15
9.6
6.0 6.1 6.5 6.7
3.5
4.4
2.1
1.9
0.8
9.6
11.2
10.0
7.8
4.1
6.1
4.1
5.1 2.7
3.7
10.8
8.6
9.5
8.6
6.3
6.3
13.9
12.0
9.9
8.4 7.9
6.8
4.5
3.6
3.8
4.8
0.2 0.1
0
△ 0.2
2.2
3.6
△ 0.1
0.4
△ 0.1
△ 2.1
△ 2.3
△ 1.9
△ 5
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
2012
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
2013
7
8
9
11 (月)
(年)
10
2014
(備考)北海道観光振興機構「来道者調査」及び沖縄県「入域観光客統計概況」より作成。
第1−1−6(2)図 沖縄県国内観光客数、国外観光客の推移
(前年同月比、%)
250.0
(前年同月比、%)
25
208.3
国内客
国外客(右軸)
20
200.0
14.8 15.0
15
9.8
10
7.5
3.2
5
2.8
1.2
20.4
2.9
0
8.9
7.5
6.7 6.8 6.1
52.2
45.5
4.8
47.4
88.3
10
11
2012
80.8
83.5
7.4 7.9
98.0
2.4
100.0
8.3 8.3
6.8
62.3
68.4
41.6 39.4
50.0
52.8
2.3 1.4 5.8
48.1
4.6
63.2
5.4 54.4
7.4
△ 2.4 △ 22.8
9
12.3
79.6 33.9
△ 4.0
△ 5
150.0
134.3
111.7
△ 21.6
0.0
0.3
△ 0.6
△ 50.0
12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
2013
11
12
1
2
3
4
5
6
2014
7
8
9
10
11
(月)
(年)
(備考)沖縄県「入域観光客統計概況」より作成。
このように外国人観光客の伸びはこのところ堅調に推移しているが、一方でその消費需
要を取り込むための外国人観光客向けの免税店は東京・大阪周辺に偏っており(第1−1
−7図)
、加えて宿泊客数は東京周辺や大阪周辺に大半が集中していることから(第1−
1−8図)
、外国人観光客の消費はこの地域の百貨店等の売上には寄与したものの、地方
への波及が限定的であった可能性がある。
6
第1−1−7図 地域別免税店数
第1−1−7図 地域別免税店数
その他
19.1%
沖縄
1.5%
愛知
3.2%
東京周辺
44.0%
福岡
5.4%
北海道
6.3%
大阪周辺
20.5%
(備考)1.観光庁「免税店(輸出物品販売場)の都道府県別分布」より作成。
2014年10月1日時点。
2.東京周辺は、東京、千葉、神奈川の合計。
大阪周辺は、大阪、京都、兵庫の合計。
第1−1−8図 外国人旅行者宿泊地割合
第1−1−8図
外国人旅行者宿泊地割合
福岡
2.7%
その他
19.4%
東京周辺
38.7%
愛知
3.4%
沖縄
4.4%
北海道
9.2%
大阪周辺
22.2%
(備考)1.観光庁「宿泊旅行統計調査」より作成。
2.期間は2013年(暦年)。
3.東京周辺は、東京、千葉、神奈川の合計。
大阪周辺は、大阪、京都、兵庫の合計。
7
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