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ベルー ・ アンデスのフォルクローレ

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ベルー ・ アンデスのフォルクローレ
青 木:ペ
ペ ル ー
ル ー ・ア ンデ スの フ ォル ク ロ ー レ
47
・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
青
木
芳
夫*
LamusicafolkloricaandinadelPeru
YoshioAoK1
旨
要
本 稿 は、 二 っ の 部 分 か ら構 成 され て い る・ 最 初 の 部 分 で は・ ペ ル ー ・ア ンデ ス の フ ォ ル ク ロ ー レの
歴 史 を 文 化 的 混 血 とい う視 点 か ら分 析 し、 特 に イ ンデ ィヘ ニ ス モ作 家 と して知 られ る ア ル ゲ ー ダ ス が
この 視 点 か ら論 じて い る こ とを 紹 介 す る。 第 二 の 部 分 で は、 具 体 的 事 例 と して チ ャ ラ ン ゴ奏 者 のハ イ
メ ・グ アル デ ィ アの音 楽CDを
、 ケ チ ュ ア語 と スペ イ ン語 の混 合 、 キ ー ・ワ ー ド、 音 楽 形 式 に分 け て
分 析 す る。
1は
本 稿 作 成 の 契 機 と な っ た の は 以 下 の3点
パ ロ ミ ー ノ の 両 名 が 音 楽CDリ
『絆 』 主 題 歌
じめ に
で あ る 。 っ ま り、 ① 青 木 と共 同 研 究 者 ア ン ヘ リカ ・
ラ ・パ ウ シ ー ナ 『伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』 お よ び 東 宝 映 画
「パ リオ ニ ー タ」 の 聞 取 り ・ 日 本 語 訳 を 担 当 した こ と 、 ② パ ロ ミー ノ が 今 年 度 奈
良 大 学 にお いて
「西 洋 史 史 料 実 習 」 で ケ チ ュ ア 語 会 話 を 教 え て い る こ と、 そ して ③ 青 木 が 参 加
して い る 国 立 民 族 学 博 物 館 の 共 同 研 究 会 の テ ー マ が ラ テ ン ア メ リカ に お け る メ ス テ ィ サ ー へ 、
っ ま り混 血(文
化 的 混 血 を 含 む)で
に 認 め られ る こ と(た
あ り、 フ ォ ル ク ロ ー レ に も ま た 文 化 的 混 血 の 要 素 が お お い
だ し、伺 研 究 会 に お け る 青 木 の テ ー マ は、 言 語 に お け る 混 血 で あ る)。
次 に 、 本 稿 に お い て 考 察 を 展 開 す る に 当 た っ て は 、 前 掲 の 『伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ』 を 中
心 資 料 と しっ っ 、 音 楽CDハ
て 補 足 す る 。 前 者 のCDで
曲 者(田
中 勝 則)が
イ メ ・グ ア ル デ ィ ア 『エ ル ・チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル ー』 に よ っ
は 、 青 木 とパ ロ ミー ノ が 全 曲 を 聞 取 り,・翻 訳 した こ と に 加 え て 、 選
原 盤 の 録 音 年 代 を 推 定 し て く れ て い る。
田 中 に よ れ ば 、 ハ イ メ ・グ ア ル デ ィ ア は 、1933年
コ ー チ ャ ス(「 フ ラ ミ ン ゴ の 湖 」 の 意 味)郡
え て 、 従 兄 の ハ シ ン ト ・ペ ベ(ギ
マ(セ
カ ン ド ・ギ タ ー)の3人
平 成10年9月25日
受 理*文
タ ー)と
ペ ル ー 南 部 山 岳 部 の ア ヤ ク ー チ ョ県 パ リ ナ
パ ウ サ の 町 出 身 の チ ャ ラ ン ゴ奏 者 で あ る 。 彼 に 加
ア プ リマ ッ ク 県 出 身 の ル イ ス ・ア ク ー ニ ャ ・ナ カ ヤ
を 中 心 メ ン バ ー と す る グ ル ー プ が リ ラ ・パ ウ シ ー ナ(「 パ ウ サ
学部史学科
48
奈
の 竪 琴」 の 意 味)で
良
大
学
紀
要
第27号
あ り、 首 都 リマで50年 代 か らプ ロ活 動 を開 始 した(当 初 は マ ン ドリ ン奏 者
を加 え た5人 編 成 の コ ン フ ン トだ ったが 、 や が て この3人 編 成 に な る)。 そ してSP時
年 に初 録 音 を し、EP時
代 を経 てLP時
代 に は計6枚
代 の53
の ア ルバ ム を残 し、85年 頃 に グル ー プ は
解 散 した と い う。 グ ル ー プ活 動 以 外 に、 グ ァ ル デ ィア は ソ ロ活 動 も積 極 的 に展 開 し、 ま た国 立
民 族 芸 術 学 校 で 後 進 の指 導 に 当 た って き た。
11文
化 的混 血 と して の ア ンデ ス の フ ォル ク ロー レ
文 化 的 混 血 の 視 点 か ら ペ ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ の 歴 史 を 眺 め る な ら ば 、 ど う な る
だ ろ う か 。 日 本 で は 浜 田 滋 郎 、 そ し て ペ ル ー で は ア ル ゲ ー ダ ス が い ち は や く こ う い う視 点 を 提
示 して い る 。
そ の ア ル ゲ ー ダ ス が 注 目 す る メ ス テ ィ ー ソ と い う の は 、 メ ス テ ィ ー ソ と い っ て も 特 に 「半 メ
ス テ ィ ー ソ」 「チ ョ ロ」 と 呼 ば れ る 人 々 で あ り、 「ペ ル ー 山 岳 部 で は イ ン デ ィ オ よ り も 上 位 の 社
会 階 級 で は あ る が 、 経 済 状 態 は す べ て の 面 で 上 と い う わ け で は な い 」 よ う な 人 々 で あ る。 彼 ら
の 音 楽 的 表 現 は 、 先 住 の 祖 先 と全 く 同 じで あ る 、 と ア ル ゲ ー ダ ス は指 摘 し て い る。
コ ー エ ン は 、 ス ペ イ ン語 で 歌 わ れ る の が メ ス テ ィ ー ソ の ワ イ ノ、 ケ チ ュ ア語 で 歌 わ れ る の が
イ ン デ ィ オ の ワ イ ノ と、 非 常 に 大 雑 把 に 分 類 し て い る が 、 世 界 フ ォ ル ク ロ ー レ週 間 の 成 果 を 公
表 し たCEPESの
パ ン フ レ ッ トは 、 ま ず ワ イ ノ の 多 様 性 ・分 化 ・複 合 性 を 指 摘 して い る 。 そ
セ ニ ョ ル
し て 、 大 き く イ ン デ ィ オ 系 ワ イ ノ と領 主 系 ワ イ ノ(そ
して これ らの 中 間 に メ ス テ ィ ー ソ系 ワイ
ノ が 位 置 す る 。)に 分 類 す る 。 両 者 の 対 照 性 を 表 に す れ ば 、 以 下 の よ う に な る 。 も ち ろ ん 、 中
心 とな る ワイ ノ は イ ンデ ィオ系 の ワイ ノ で あ る。
イ ン デ ィ オ 系 ワ イ ノ
楽器
領
アル パ 、 ヴ ィオ リ ン、 チ ャ ラ ン ゴ 、 ク
ギ タ ー(特
主
系
ワ
イ
ノ
に ア ヤ ク ー チ ョ県 ワ マ ン ガ 市 製)
ラ リ ネ ッ ト、 テ ィ ン ヤ 等
ク リャ イ に近 い)
ス ロ ー ・テ ン ポ 、 物 悲 し い 、 ハ ラ ウ ィ の 直 系
メ ロ デ ィ ー
軽 や か 、 祝 祭 的(プ
抑揚
歌詞
早 くて 、 切 る よ う に
ゆ っ く り、 行 の最 後 の音 節 で一 呼 吸 を 置 く
隠喩的な愛 清表現
告 白的 、 ロ マ ンテ ィ ック な愛 情 表 現
・そ の 他 、 地 方 間 ・共 同 体 問 の 差 や 、 歌 詞 の テ ー マ の 多 様 性 、 さ ら に 古 典 的 ワ イ ノ と 近 代 的 ワ
イ ノ と い う よ う な 分 類 例 が 提 示 さ れ て い る。
し か し、 も っ と興 味 深 い 視 点 に立 っ て い る の が 、 リ ョ レ ン ス=ア
リマ に お け る民 衆(ポ
場 末 の ア フ ロ=ペ
ピ ュ ラ ー)音
楽 を 「ク リオ ー リ ョ系 」(サ
ル ー 系 音 楽 と 出 会 う こ と に よ っ て 誕 生)と
ミ コで あ る。 彼 は、 ペ ル ー ・
ロ ン的 な ヨー ロ ッパ 系 音 楽 が
「ア ン デ ス 系 」 に 分 類 し、 別 々 に
分 析 し た 上 で 、 最 後 に 総 合 的 に 「フ ォ ル ク ロ ー レ性 か ら ポ ピ ュ ラ ー 性 へ 」 と い う 方 向 で 考 察 し
て い る。 彼 は、1940年
代 ま で は 「ク リオ ー リ ョ系 リマ 」 へ と 変 貌 しっ っ あ っ た 首 都 が 、1950年
代 以 降 は ア ン デ ス 系 民 衆 部 門 が 優 勢 な 文 化 的 表 現 の 一 大r.と
に 代 表 さ れ る ア ン デ ス系 の 民 俗 音 楽(フ
ォ ル ク ロ ー レ)が
り脱 フ ォ ル ク ロ ー レ化 す る こ と に よ っ て 民 衆(ポ
化 して い く こ と 、 そ し て ワ イ ノ
レ コ ー ド化 や ラ ジ オ 放 送 の 影 響 に よ
ピ ュ ラ ー)音
楽 の 一 部 門 と して 確 立 さ れ て い
く こ と を 立 証 して い る。
こ の よ う な 民 衆 音 楽 へ の 発 展 過 程 を 支 え た も の が 、 例 え ば ホ セ ・マ トス=マ
ー ルが
「民 衆 の
氾 濫 」 と 呼 ん だ よ う な 、 あ る い は リマ の 都 市 計 画 に長 年 携 わ っ て き た 一 研 究 者 を 嘆 か せ る ほ ど
青 木:ペ
49
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
の、 農 村 部 か ら都 市 部 へ の、 特 に首 都 リマ へ の民 衆 の大 移 動(図 版 参 照)と い う社 会経 済 的 な
一 大 現 象 で あ った だ ろ う。 実 際 、50年 代 に本 格 化 す る都 市 化 は、 山 岳 部 か ら大 量 の 人 間 を 沿 岸
部 の都 市 に移 動 させ る と と もに、 人 間 と一 緒 に文 化 を もた ら した。 そ の 文 化 の 一 っ が 音 楽 で あ
り、 山岳 部 出身 者 の増 加 と と もに音 楽 市 場 を も支 え るよ う にな った 、 と考 え られ る。 フ ォル ク
ロー レ大 会 が 開 催 さ れ る コ リセ オ(球 技 場)の よ うな と ころ に蝟 集 し、 望 郷 の 思 いを 抱 きな が
ら、 同 じよ うな境 遇 の仲 間 た ち とひ と と きを過 ごす、 そ うい う ア ンデ ス出 身 の 都 市 移 住 民 の 姿
を想 像 す る こ とは、 そ れ ほ ど困 難 で は な い。
出 典:Funther1992=37
ま た、 ア ル ゲ ー ダス は、 元 か ら都 市 に住 ん で い た 住 民 の 、 ワ イ ノ な ど の ア ンデ ス系 音 楽 に対
す る見 方 が変 化 して い った こ とを指 摘 して い る。 つ ま り、1962年6月
に 『エ ル ・コ メ ル シ オ』
紙 に掲 載 され た記 事 の 中 で、 ア ル ゲ ー ダ ス は 「25年な い し30年 前 ご ろ[1930年
代 か ら40年 代 半
ば]ま で は イ ンデ ィオ音 楽 と呼 ば れ た音 楽 は、 首 都 で は エキ ゾチ ックで け ば けば しく、 したが っ
て珍 奇 な見 本 と して受 け取 られ て い た」 と指 摘 して い る。 首 都 の俗 衆 や 「ヨー ロ ッパ かぶ れ の
ペ ル ー知 らず」 の旦 那 衆(セ
ニ ョー レ ス)に と って は、 先 住 民 の音 楽 は 「原 始 的 」 で 「野 蛮 」、
「単 調 」 な もの にす ぎず 、 舞 踏 もま た 「後 進 的 」 な伝 統 の見 本 で あ りペ ル ー の 恥 部 の よ うな も
の で あ った。(一 方 、 純 ペル ー的 な唯 一 の舞 踏 と して持 ち上 げ す ぎ る傾 向 に も ア ル ゲ ー ダ ス は
批 判 的 で あ った。)し か しなが ら、 民 衆 芸 術 や土 着 芸 術 に対 す る関心 の世 界 的 な 高 ま り と と も
に、 ペ ル ー で もま ず最 初 に い わ ゆ る教 養 層(知 識 人 や 芸 術 家)の 間 で関 心 が 生 ま れ、 そ れ が富
裕 階級 を も動 か す こ とに な る。 支 配 階 級 の 多 くや 一 部 、 そ して大 半 の 中間 階 級 は、 従 来 の蔑 視
(や 、 そ の反 対 の、 無 責 任 な賞 賛)か
ら、 よ い意 味 で の好 奇 心 へ と評 価 を変 え て い き、 さ らに
は真 の 関心 へ と大 き くな って い った の で あ る。
ワイ ノな どが 「民 俗 音 楽 」 か ら 「民 衆 音 楽 」 へ と変 化 して い くた め に は、 こ うい うよ うな イ
メ ー ジの変 化 も また重 要 な一 要 素 で あ っ た はず で あ る。
皿
ハ イ メ ・グ ア ル デ ィ ア と リ ラ ・パ ウ シ ー ナ
下 表 は 、 『伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』 に 収 録 さ れ た 全23曲(う
ち2曲
は 演 奏 の み)と
『エ ル ・
奈
50
チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル0』
良
大
学
紀
収 録 の 全21曲(う
要
第27号
ち12曲 は 演 奏 の み)に
関 す る もの で あ る 。 特 に 、
形 式 、 ケ チ ュ ア 語 度 、 キ ー ・ワ ー ドに 注 目 し て み た 。 な お 、 巻 末 資 料 の5曲
に つ い て は、 ス ペ
イ ン語 の 部 分 を 斜 体 字 で 表 し て い る 。
田 中 に よ れ ば 、 『伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』 の1か
が60年 代 、12か
ら15ま で が60年 代 後 期 、16か
ら8ま
で が50年 代 の 録 音 、9か
ら19ま で が70年 代 、 そ して20か
ら11ま で
ら23ま で が1983年
の 録 音 と い う こ と に な る 。 以 下 で は 、 こ の 表 に 従 っ て 、 そ の 特 徴 を 紹 介 して い く。
資料①
目
『伝 説 の リラ ・パ ウ シ ー ナ』 の構 成
ケチュ
ア語 度
曲番
題
1
パ ウサ の 里
ワイノ
X
パ ウ サ 、 望 郷 、 ス ペ イ ン人
Guardia
2
私のギ ター
ワイノ
/¥
ギ タ ー 、 花 、 恋 慕 、 ネ グ ラ ・サ ン バ
Acuna脚
3
チ リモ ヤ の 花
ワイノ
X
チ リモ ヤ の花 、 恋 慕 、 チ ョ リー タ ・
Guardia
4
あ な たを 探 して
ヤラビー
0
小鳥、恋慕、放浪
Pebe
5
マ ー ガ レ ッ トの 花
カル ナバ ル
/¥
マ ー ガ レ ッ トの花 、 パ ウ サ広 場 、 恋
Guardia
形
式
キ
ー
・
ワ
ー
ド
作
者
ネ グ リー タ
慕 、 飾 り紐
(ワ イ リャ チ ャ)
6
おお
サ ラサ ラ山
ワイ ノ
X
サ ラサ ラ山 、 望 郷 、 チ ャ ラ ンゴ、 よ
Guardia
きペ ル ー人
7
愛 しい お 母 さん
ワイ ノ
X
お 母 さん 、 思 慕 、 冷 た い世 間 、 孤 独
Guardia
8
独 りぼ っち
ヤ ラ ビー
X
孤 独 、 あな た の不 在
Pebe
9
パ リナ コ ー チ ャ の 娘
ワイ ノ
X
パ リナ コ ー チ ャ の 娘 、 高 原 の 花 、 イ
A.Franco
6
ン カ人 、 魅 惑 の混 血
10
墓地に生 え る草
ワイ ノ
O
墓 地 に生 え る草 、放 浪 、イパ リャの山
Guardia
11 愛 の鎖
ワイ ノ
12
わが故郷 の思 い出
恩知 らずな女
14 甘 美な愛
マ リネ ー ラ
13
ワイ ノ
X
恩 知 らず な 女 、 恋 慕
Guardia
ヤ ラ ビー
X
鳥、花、恋慕
Pebe
15
ワイ ノ
X
別離、孤独
A.Guardia
16
ワイ ノ
0
パ リナ コ ー チ ャ 、 鴨 、 恋 慕 、 ネ グ ラ
Guardia
17
ワイ ノ
0
白 い 鳩 、孤 児 、 放 浪
Pebe
悲 しい心
C.LaNoire
D.R.
鴨の恋人 たち
白い鳩
18 悲 しや私 の運命
カルナバル
0
恋 慕 、 カ ル ナ バ ル ∼ 飾 り紐
Guardia
19
ワイ ノ
/1
人生 、山々の鳥、孤独
C.Herrerra
n
私 の人 生 は嵐 の よ う
20
カ ー ネ ー シ ョ ンの花
ワイ ノ
21
裏 切 った女
マ リネ ー ラ
22
さよ うな ら さような ら
ヤ ラ ビー
23
私 を忘 れ な い で
ワイ リ ャチ ャ
カ ー ネ ー シ ョンの 花 、 恋 慕 、 プ ラ ム
Guardia
X
鳩 、 恋慕 、 裏 切 った 女
Acuna
X
恋慕、旅立 ち
Pebe
カ ル ナ バ ル 、 葵 の 葉 っぱ 、 恋 慕
Guardia
/¥
等
色
青 木:ペ
資料②
曲番
題
『エ ル ・チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル ー 』 の 構 成
目
形
ケチュ
ア語 度
式
一
サ ンテ ィアー ゴの行 進 曲
フ ォ ル ク ロー レ
二
カケーロ
ダンサ
三
四
五
私 と と も に君 は行 く
ワイノ
キ
ー
・
ワ
ー
ド
一
作
等
D.R.
白 い鳩 、 死 に ゆ く者 、 恋 慕
Guardia
旅す る燕
ワイノ
X
燕、恋慕、別離
Pebe
パ リオ ニ ー タ
カ ルナバ ル
O
パ リオ ニ ー タ、 恋 慕 、 ボ ン
Pebe
タ ンボバ ンバ の カ ー ニバ ル
者
D.R.
X
チ ョ、 ワ ン カ ワ ン カ の 大 河
(ワ イ リ ャチ ャ)
六
51
ル ー ・ア ンデ スの フ ォ ル ク ロ ー レ
フォルク ロー レ
O
タ ン ボ バ ンバ の 男 、 恋 慕 、
Arguedas…
採録
ウ ィ フ ァ ラ、 血 の 川
七
太陽 の乙女 たち
J.Bravo
フ ォ ク ス ・イ ン
カ イコ
八
九
十
私 を忘 れ な い で
カルナバル
我 が カ ー ニバ ル
ワ イ リ ャチ ャ
魅惑 のカモメ
ヤ ラ ビ ー=ワ
Guardia
Guardia
D.R,
イ
ノ
十一
いっ も君 を思 い 出 して いる
ヤ ラ ビー
X
太 陽、 恋 慕
Guardia
十二
誰 が愛 なんて言 ったのか
ワイノ
X
林 檎 の木 、 恋 慕 、 シェ ラ
Guardia
ワイノ
0
小 鳩 、 恋 慕 、 オ レ ン ジ、 旅
Guardia
十三 愛 しの小鳩
立ち
ワイノ
T.Medina
十五 私 と一 緒 に行 こ う
ワイノ
A.Gutierrez
十六 我 が悲 しみの声
十七 イ ンコよ 歌 って お くれ
十八 明 日私 は旅立 っ
十九 ム ナ ス パ カ ・ス ヤ イ ク ワ イ
二十 ツ グ ミ
ヤ ラ ビー
十四
ア ヤ ク ー チ ョの 町 よ、 さ
よ うな ら
採録
ニー
心 よ、 な ぜ悲 しい の?
M.Melgar
ワイノ
1¥
ワイ ノ
X
イ ン コ、 魚 、 恋 慕
Guardia脚
色
Guardia
ワイ ノ
Guardia採
ワイ ノ
folklore
ヤ ラビー
Guardia採
録
録
52
奈
良
大
学
紀
要
第27号
(a)形式
形 式 別 に これ ら二 枚 のCDに
収 録 され た曲 を数 え れ ば、 以 下 の よ うに な る。
資料③
形式別の分類
伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ
エ ル ・チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル ー
14
ワイノ
10
計
24
4
3
0
1
1
カル ナ バ ル ・ワイ リャチ ャ
3
3
6
マ リネ ー ラ
2
0
2
フ ォル ク ロー レ
0
2
2
ダ ン サ=プ
0
1
1
0
1
1
ヤ ラ ビー
ヤ ラ ビ ー=ワ
イ ノ
ー ノ
フ ォ ッ ク ス ・イ ン カ イ カ
計
23
7
21
こ の 表 を 見 て も 、 ワ イ ノ 、 ヤ ラ ビ ー 、 カ ル ナ バ ル(ワ
イ リ ャ チ ャ)が
44
主 と して収 録 され 、 特
に ワ イ ノ が 半 分 を 占 め て お り 、 グ ア ル デ ィ ア と リ ラ ・パ ウ シ ー ナ が 最 も得 意 と す る の が ワ イ ノ
で あ る こ と が 分 か る。 ま た 、 表 中 の フ ォ ル ク ロ ー レ と い う の は 「創 作 曲 」 に 対 す る 「伝 承 曲 」
と い う ほ ど の 意 味 で あ り 、 そ の う ち の 一 曲 「タ ン ボ バ ンバ の カ ー ニ バ ル 」 は 、 そ の 名 の と お り、
ア プ リマ ッ ク県 の カ ル ナ バ ル の 曲 で あ る 。
[カ ル ナ バ ル]
パ ロ ミー ノ が 奈 良 大 学 の 授 業 で 取 り 上 げ た 「パ リ オ ニ ー タ 」(巻 末 資 料 ④)は
、 この 形 式 の
曲 で あ る。 リズ ミカ ル で 、 学 生 に も 覚 え や す い 曲 だ っ た よ う で あ る 。 実 は 、 こ の 曲 は 東 宝 映 画
の 『絆 』(1998年6月
封 切 り)の
主 題 歌 に 採 用 さ れ 、 サ ウ ン ド ・ ト ラ ッ ク盤 で は 原 曲 以 外 に 、
ケ ー ナ に よ る演 奏 曲 、 オ ー ケ ス ト ラ 仕 立 て の 曲 、 つ ま り 三 様 の 「パ リ オ ニ ー タ 」 を 試 聴 す る こ
と が で き る。 こ の サ ウ ン ド ・ ト ラ ッ ク 盤 を 試 聴 して 原 曲 と 比 較 す る と 、 後 二 者 は 非 常 に 物 悲 し
い 印 象 を 受 け る。 ア ン デ ス 系 の 民 衆 音 楽 の メ ロ デ ィ は、 半 音 抜 き の 、 ド レ ミ ソ ラ の 五 音 音 階 で
あ り、 日本 の 伝 統 的 な 音 階 に 似 て お り、 そ う い う意 味 で は わ れ わ れ に と っ て 親 しみ や す い わ け
で あ る が 、 原 曲 を は じ め と して カ ル ナ バ ル の 曲 は、 本 来 集 団 で 踊 る た め の 曲 で あ っ て 、 そ れ ほ
ど物 悲 し く は な い 。
そ も そ も カ ル ナ バ ル は 、 カ ト リ ッ ク の 暦 に お け る謝 肉 祭 の こ と で あ る 。 南 ア メ リ カ で も ブ ラ
ジ ル や ボ リ ビ ァ の カ ル ナ バ ル が も っ と も有 名 で 観 光 ス ポ ッ ト と な っ て い る が 、 南 ア メ リ カ 全 土
で 広 く行 な わ れ て い る行 事 で あ る。 ケ チ ュ ア 語 で は プ ク リ ャ イ(pukllay)と
呼 ば れ、 直訳 す
れ ば 「遊 び 」 と い う意 味 と な る。 特 に 未 婚 の 男 女 に と っ て は 知 り 合 い に な る 好 機 で あ り 、 踊 り
な が ら、 歌 を 掛 け 合 う場 と な る。 し た が っ て 、 「カ ル ナ バ ル 」 と い う形 式 の 歌 は 、 本 来 明 る い
歌 で あ る と と も に 、 恋 慕 を テ ー マ と し て い る。 資 料 の 表 の キ ー ・ ワ ー ドの 項 目 を 一 瞥 して も、
この こ とは 明 白 で あ る。
最 も カ ル ナ バ ル ら し い 曲 は 「マ ー ガ レ ッ トの 花 」 で あ り、 田 中 は 「2拍 子 系 の バ ネ る よ う な
感 覚 の リズ ム で 、 お そ ら く ヨ ー ロ ッ パ の マ ー チ が 土 着 化 し て 生 ま れ た 形 式 だ と思 わ れ る」 と解
説 し て い る が 、 「私 を 忘 れ な い で 」(巻 末 資 料 ⑤)や
ン バ の カ ー ニ バ ル 」(巻 末 資 料 ⑥)も
ア プ リマ ッ ク県 の 伝 承 曲 で あ る 「タ ン ボ バ
ま た、 カル ナバ ル の 曲 で あ る。 踊 りの 様 式 の一 っ で あ る
ウ ィ フ ァ ラ と い う の は も と も と 「旗 」 を 意 味 し て お り、 「ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ … … 」
の と こ ろ で は 、 旗 を 振 り回 し な が ら踊 る と い う、 非 常 に 躍 動 的 な 踊 り で あ る(図
版 参 照)。 採
青 木:ペ
53
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
録 した の は イ ンデ ィヘ ニ ス モ の代 表 的
な小 説 家 で もあ る アル ゲ ーダ スで ある。
こ の ア ル ゲ ー ダ ス は 、 早 く も40年 代 か
ら、 そ れ ま で 蔑 視 さ れ て き た ア ン デ ス
系 の民 衆 音 楽 の普 及 に貢 献 した人 物 で
あ り、 も ち ろ ん グ ア ル デ ィ ア を も高 く
評 価 して い た。
[ヤ ラ ビ ー]
次 に、 グ ア ル デ ィア よ り もむ しろ ペ
ベ の ほ うが 得 意 と した と さ れ る ヤ ラ ビー
は 、 先 ス ペ イ ン期 の ハ ラ ウ ィ に 由 来 す
る、 踊 りのっ か な い拝情 歌 曲で あ るが、
浜 田 に よ れ ば、 今 日一 般 的 に行 な わ れ
て い る ヤ ラ ビ ー は 、19世 紀 初 に 南 部 高
原 の 町(と
い っ て も沿 岸 部 に接 した 町)
ア レ キ ー パ で 確 立 さ れ た 「メ ス テ ィ ー
ソ風 の ヤ ラ ビ」 で あ り、 三 拍 子 の リ ズ
ム と メ ス テ ィ ー ソ風 音 階 、 つ ま り3/
4拍 子 に6/8拍
子 の 感 覚 が ま じ って
く る音 階 を メ ロ デ ィー に 持 っ 。 ア ル ゲ ー
出典:Catacora1981=101
ダ ス は 、 ヤ ラ ビ ー は 「イ ン デ ィ オ か ら
は だ い ぶ ん 分 化 し た メ ス テ ィ ー ソ系 民 衆 に よ り創 作 さ れ た 」、 ま た 「ヤ ラ ビ ー は 、 何 か 大 き な
希 望 が 失 わ れ て し ま っ た と き と か 、 何 か 悲 痛 を 感 じ た り伝 え た り し た い と き に 、 歌 わ れ る だ け
で あ る 」 と 、 指 摘 して い る 。 巻 末 資 料 に は 、 ペ ベ 作 曲 の 「あ な た を 探 して 」(資 料 ⑦)を
掲載
した。
[ワ イ ノ]
ワ イ ノ は 、 ヤ ラ ビ ー が 聴 く た め の 形 式 だ っ た とす れ ば 、、踊 る た め の 形 式 で あ る。 カ ル ナ バ ル
や ワ イ リ ャ チ ャ も ま た 踊 る た め の 形 式 で あ る が 、 ワ イ ノ は 日常 的 な 、 カ ッ プ ル に よ る踊 り の た
め の 形 式 で あ り、 踊 り を 終 了 す る た め の 「エ ス ト レ ビ ー リ ョ」 と い う部 分 、 テ ン ポ を 上 げ て ク
ラ イ マ ッ ク ス に 導 く部 分 が 、 か な らず 最 後 に 来 る 。 そ の ワ イ ノ は 、 先 ス ペ イ ン期 以 来 の 伝 統 と
して 、 タ ン タ タ ・タ ン タ タ と い う二 拍 子 系 の リ ズ ム と、 ド レ ミ ソ ラ の 五 音 音 階 の メ ロ デ ィ ー を
特 徴 と して い る 。 巻 末 資 料 に 収 録 し た 「カ ー ネ ー シ ョ ン の 花 」(資 料 ⑧)は
の 部 分 が 非 常 に 鮮 明 な 舞 曲 で あ る(た
だ し、 実 際 にCDを
い 〉。 ア ル ゲ ー ダ ス は 、 ワ イ ノ を 「イ ン デ ィ オ=メ
、 エ ス ト レ ビー リ ョ
試 聴 し な け れ ば こ の こ と は分 か ら な
ス テ ィ ー ソ系 ペ ル ー の普 遍 的 な 歌 曲 」 と見
な し、 「歌 詞 は 急 速 に 変 化 し て し ま い 、 ほ と ん ど 各 人 各 様 と い っ て よ い ほ ど 、 あ り と あ ら ゆ る
形 態 を と る よ う にな っ た もの の、 ワ イ ノ の音 楽 は ほ とん ど変 化 しな か った。 今 日の イ ンデ ィオ
も メ ス テ ィ ー ソ も 、 百 年 前 の 人 々 と 同 じ よ う に 、 自 分 た ち の 精 神 と感 動 の す べ て を そ の ま ま 表
現 す る す べ を こ の 音 楽 の 中 に 見 い だ し続 け て い る 」 と指 摘 し て い る。 あ る い は 、 「南 部 の こ の
メ ス テ ィ ー ソ[ス
ペ イ ン語 化 さ れ た メ ス テ ィ ー ソ]は
、 ス ペ イ ン語 し か 読 め ず 、 ス ペ イ ン語 で
教 育 さ れ た に も か わ らず 、 歌 う と き に は 、 ケ チ ュ ア 語 の ほ う が 上 手 に 、 そ し て も っ と正 統 的 に
歌 え る の で あ る 」 と も、 指 摘 して い る 。
奈
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要
第27号
(b)ケ チ ュ ア 語 度
ケ チ ュ ア 語 度(表
中 の ◎ は 、 ケ チ ュ ア 語 ば か り の 曲 を 意 味 す る 。 反 対 に × 印 は 、 ス ペ イ ン語
ば か り の 曲 で あ る。)を 形 式 別 に 見 れ ば 、 フ ォ ル ク ロ ー レ や カ ル ナ バ ル 、 ワ イ リ ャ チ ャ で は 必
ず ケ チ ュ ア 語 混 じ り に な っ て い る の に 対 して 、 マ リ ネ ー ラ で は ス ペ イ ン語 の み で あ る 。 そ れ ら
の 中 間 に 位 置 す る の が 、 ア ン デ ス の 民 衆 音 楽 の 両 代 表 と も い う べ き ワ イ ノ と ヤ ラ ビ ー で あ り、
ケ チ ュ ア 語 混 じ り で 歌 わ れ て い る も の も あ れ ば 、 ス ペ イ ン語 の み の 歌 詞 の も の も あ る 。 な お 、
グ ア ル デ ィア に よ る作 曲 で は、 ケ チ ュ ア 語 の み の 曲 は 一 っ も な い 。 ア ル ゲ ー ダ ス に よ れ ば 、 グ
アル デ ィア の故 郷 パ ウサ は メ ステ ィー ソの 優 勢 な 町 で 、 一 方 パ ウサ に隣 接 す る ル カ ー ナ ス と い
う と こ ろ は ケ チ ュ ア 系 が 優 勢 な 地 方 で あ つ た か ら、 グ ア ル デ ィ ア は ス ペ イ ン語 と ケ チ ュ ア 語 の
バ イ リ ン ガ ル(二
重 言 語 生 活 者)と
して 育 っ た と 思 わ れ る 。
次 に 、 ケ チ ュ ア 語 度 を 年 代 別 に 見 れ ば 、70年 代 の 曲 が も っ と も ケ チ ュ ア 語 度 が 高 く な って お
り 、50年 代 に 録 音 さ れ た も の は 、 予 想 と は 逆 に ス ペ イ ン語 度 が も っ と も高 い 。
例 え ば 、50年
代 後 期 の 録 音 と 思 わ れ 、 大 ヒ ッ トを 記 録 し た と い う 「愛 し い お 母 さ ん 」(7)
は 、 完 壁 な ス ペ イ ン語 の 歌 で あ り 、 内 容 的 に も 母 親 へ の 思 慕 を 歌 っ た 普 遍 的 な テ ー マ の 歌 で あ
る 。 形 式 的 に は 「ワ イ ノ 」 で あ る が 、 ス ロ ー ・テ ン ポ で 、 踊 る た め の 曲 と い う よ り も む し ろ 聴
くた め の 曲 の よ う に 聞 こ え る 。 ち な み に 、 リ ラ ・パ ウ シ ー ナ の 曲 で パ ロ ミー ノ が 知 っ て い た 曲
は 、 こ の 曲 の み で あ っ た 。 子 供 の 頃 か ら、 ク ス コ 地 方 の ラ ジ オ 局
「タ ワ ン テ ィ ン ス ー ユ 」 の リ
ク エ ス ト番 組 で は、 特 に 「母 の 日 」 に は 必 ず と い っ て よ い ほ ど 掛 け ら れ て い た 曲 だ か らで あ る。
こ の 時 期 の 曲 の 中 で は ペ ベ 作 曲 の 「あ な た を 探 して 」(4)以
外 は、 あ ま り ケ チ ュ ア 語 が 使 用
さ れ て い な い 。 あ る い は 、 ケ チ ュ ア 語 で は あ ま り 録 音 さ れ て い な い 、 と言 う べ き な の か も し れ
な い。
こ れ に 対 して70年 代 の 曲 に ケ チ ュ ア 語 使 用 が 多 い の は な ぜ で あ ろ う か 。 当 時 は 、1968年
の 軍 事 政 権 の 時 代(1980年
に 民 政 移 管)で
あ り、 特 に1975年
か ら
ま で は 「ペ ル ー 革 命 」 を 標 榜 し た
ベ ラ ス コ の 左 翼 軍 事 政 権 の 時 代 で あ り、 上 か らの 国 民 統 合 を 強 力 に 推 進 す る た め に 、 植 民 地 時
代 末 期 の 先 住 民 反 乱 の 指 導 者 で あ る コ ン ドル カ ン キ(ト
ゥパ ク ・ア マ ル2世)が
国 民 統 合 の象
徴 と して 利 用 さ れ た り 、 あ る い は ス ペ イ ン語 と 並 ぶ 公 用 語 の 一 つ に ケ チ ュ ア 語 が 指 定 さ れ た り
した 時 代 で あ っ た 。 そ の た め 、1975年
に は 法 令 に よ り ラ ジ オ 局 に は 、 番 組 の 最 低7.5%以
上 は
「民 族 音 楽 」、 っ ま り 「民 衆 の 伝 統 や 習 慣 か ら直 接 生 ま れ た り、 と り わ け ペ ル ー の 非 都 市 圏 に 現
わ れ た 集 団 的 な 創 造 に よ る音 楽 」 に充 当 す べ きで あ る、 と され た。
(c)キー ・ワ0ド
次 に 、 キ ー ・ワ ー ドに 注 目 して み れ ば 、 ① 自 然 と の 一 体 化 、 ② 濃 密 な 人 間 関 係 と別 離 、 ③ 故
郷 讃 歌 と 望 郷 、 そ して ④ ペ ル ー 讃 歌 と 混 血 、 を 象 徴 す る よ う な 語 彙 が 使 用 さ れ て い る の が 分 か
る。
[自 然 と の 一 体 化]
ま ず 、 最 初 に 目 に 付 くの は 、 鳥 や 植 物 、 山 や 川 な ど 、 自 然 に 対 し て 呼 び 掛 け て 歌 っ て い る点
で あ る 。 例 え ば 、 鳥 で は 巻 末 資 料 に 掲 げ た 曲 だ け で も、 曲 名 に も な っ て い るパ リオ ニ ー タ(ア
ヤ ク ー チ ョ地 方 の 鳥 で 、 蜂 鳥 く ら い の 大 き さ の 小 鳥 。 人 前 に は め っ た に 姿 を 見 せ な い こ の 鳥 が
姿 を 見 せ る と き は 、'一'」
や 霰 が 降 る 前 触 れ だ と い う 。)、「あ な た を 探 して 」(ヤ ラ ビ ー)の
わ れ て い る 「私 だ け が お 似 合 い 」 の 小 鳥 が い る 。 そ の 他 、 「イ ン コ よ
中 で歌
歌 っ て お くれ 」 の イ ン
コ 、 「愛 し の 小 鳩 」 の 小 鳩 、 「旅 す る 燕 」 の 燕 な ど が あ る 。 も ち ろ ん 、 鳥 以 外 の 動 物 で も、 例 え
ば 「イ ン コ よ
歌 っ て お くれ 」 で は 「縞 模 様 の 灰 色 の 魚 」 に 対 し て 「湧 き水 が 渇 れ た な ら、 私
青 木:ペ
55
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
の この辛 い涙 、 そ こで あ な た が泳 い だ らい い」 と呼 び掛 け て い る。
植 物 で も っと も一 般 的 な象 徴 は花 で あ る が(例 え ば 「チ リモ ヤ の花 」 や 「マー ガ レ ッ トの花 」
や 「カ ー ネ ー シ ョ ンの花 」 は曲 名 に もな って い る。)、花 以 外 で は葵 の葉 っぱ に対 して 「私 を 忘
れ な い で」 と さ さ や きか け、 「誰 が 愛 な ん て 言 っ たの か 」 で は林 檎 の木 に対 して 「誰 が お ま え
を植 え/誰 が お ま え を育 て た の か」(岩 村 健 二 郎 訳)と
な じって い る。 ま た 「愛 しの 小 鳩 」 で
は 「下 り坂 に あ る私 の菜 園 に私 が植 え た甘 い オ レ ン ジの木 」 とい う よ う に特 定 の木 に対 して話
し掛 け て い る。 以 上 の よ うな鳥 や植 物 は恋 人 と0体 化 され て 呼 び掛 け られ て い るが、 以 下 の 事
例 は そ うで は な い。 例 え ば、 「墓 地 に生 え る草 」 の 中 の 「悔 い改 め た者 に よ り植 え られ た/あ
な た の花 は祝 福 さ れ て い る。 生 者 を苦 しめ るた め に、 死 者 を さい な む た め に」 と い う文 句 は皮
肉 に満 ち て い る。
そ して、 山 や川 の例 と して は、 サ ラサ ラ山(「 お お
サ ラサ ラ山 」)や ワ ン カ ワ ンカ の 大 河
(「タ ンボバ ンバ の カ ー ニ バ ル」)が あ る。 それ 以 外 の呼 び掛 け の対 象 と して は ギ ター(「 私 の ギ
ター」)が あ るが 、 これ は悲 しみ を分 か ち合 って くれ る友 の意 味 で使 用 さ れ て い る 。 な お 、 呼
び掛 け の対 象 と して 自然 を選 択 して い る事 例 の ほ とん どが ワイ ノか カル ナバ ル(ワ イ リャチ ャ)
の 曲 で あ る こ とは興 味 深 い。
[濃密 な人 間 関 係 と別 離]
自然 との一 体 化 とい う第 一 の特 徴 か ら導 きだ され る第 二 の特 徴 は、 濃 密 な人 間 関 係 で あ る。
花 や鳥 は単 な る比 喩 で は な く、 特 定 の もの、 例 え ば 自分 が 植 え た オ レ ンジや 林 檎 の木 と一 体 化
され て い る た め に、 そ れ だ け そ の対 象 とな る恋 人 との 関係 は濃 密 な もの と な らざ る を え な い。
した が って、 そ うい う人 間 との別 離 を意 味 す る首 都 へ の 移動 な ど は一 層 の悲 痛 と して 受 け取 ら
れ た こ とで あ ろ う。 ま た、 恋 人 で はな い が、 最 初 の大 ヒ ッ トと な っ た 「愛 しいお母 さん」 で は、
「冷 た い世 間 、 裏 切 り屋 の運 命 の女 神 よ/ど
う して私 か らお母 さ ん を奪 った ん だ 」 と歌 わ れ て
い る。
[故郷 讃 歌 と望 郷]
自然 と一 体 化 して認 識 され るの は何 も人 間 関係 に限 られ な い。 故 郷 もま た、 自然 と一 体 化 し
て認 識 され る。 例 え ば、 「お お
サ ラサ ラ山」 で は 「あ な た は永 遠 の 見 張 り番/全
パ リナ コ0
チ ャの」 「私 はパ ウ サ 出身 と して お名 前 を呼 び ま す/お お、 壮 麗 な サ ラサ ラ山 」 と い う よ う に、
サ ラサ ラ山 とパ リナ コー チ ャ県 を0体 化 して 歌 って い る。 こ の曲 で は コ ン ドル や ビ クー ニ ャ も
歌 わ れ て い る。 ま た、 「パ リナ コ ー チ ャの娘 」 で は 「パ リナ コー チ ャの/美
し く晴 れ 渡 っ た空
の下 で/あ な た は ア ンデ スの 空気 を 呼 吸 す る/同 郷 の 愛 ら しい女 よ」 と歌 わ れ て お り、 実 は故
郷 の パ リナ コー チ ャ讃 歌 とな って い る。
した が って、 自然 と一体 化 して 認 識 され る た め に、 故 郷 を離 れ て首 都 な どで生 活 す るよ うに
な った人 々 の望 郷 感 はそ れ だ け0層 募 る こ と に な る。 例 え ば、 「パ ウサ の 里 」 で は 「そ こ に は
あ る/本 当 の愛 が/永 遠 の 愛 が 」 「あ な た を思 う とた め 息 が 出 る/今 は遠 く/離 れ て い るか ら」
と歌 わ れ て い る。
[ペ ル ー讃 歌 と混 血]
グ ァル デ ィ ァや リラ ・パ ウ シ ー ナ の曲 を聴 くと き、 故 郷 讃 歌 と並 ん で ペ ル ー讃 歌 の 曲 が 歌 わ
れ て い る こ と、 そ して その 理 由 が 「混 血 」 に あ る こ とに、 最 終 的 に気 付 か され るだ ろ う。 録 音
の年 代 順 に並 べ て み よ う。
『伝 説 の リラ ・パ ウ シ ー ナ』 の最 初 の 曲 は、 生 ま れ故 郷 の パ ウサ の 町 の 讃 歌 で あ る。 そ こで
は、 「パ ウサ の里[=町]/ス
ペ イ ン人 に よ り/創
られ た 地 よ/あ の人 々 の 足 跡 が/今
残 って い る と こ ろ」(「パ ウ サ の里 」)と 歌 わ れ て い る。
で も/
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奈
次 に 「お お
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第27号
サ ラ サ ラ 山 」 で は 「そ し て 私 は チ ャ ラ ン ゴ を 弾 き ま す/歌
ル ー 人 と し て 心 の 中 で/感
を 歌 い ま す/よ
きペ
じた ま ま を」 と歌 わ れ て い る。
同 じ く生 ま れ 故 郷 の パ リナ コ ー チ ャ県 に 対 す る 讃 歌 で あ る 「パ リナ コ ー チ ャ の 娘 」(60年
録 音)で
は 「あ な た の 血 管 に 流 れ る の は/イ
ン カ 人 の 血/ス
ペ イ ン人 と の/魅
代
惑 の 混 血 」 と、
さ ら に 明 確 に 混 血 と の 関 係 が 歌 わ れ て い る 。 混 血 と の 関 係 で 言 え ば 、 キ ー ・ ワ ー ドの 欄 か ら も
明 らか な よ うに、 チ ョ リー タ、 ネ グ リー タ、 サ ン ビー タ と い った 間 の手 の よ うな、 エ ス ニ ック
的 用 語 に よ る 呼 び 掛 け が 入 る こ と が 多 い 。 こ こ で チ ョ リ ー タ は チ ョ ラ(メ
白 人 と イ ン デ ィ オ の 混 血 女 性)、 ネ グ リー タ は ネ グ ラ(黒
と メ ス テ ィ ー ソ の 混 血 女 性)の
ス テ ィー サ、 っ ま り
人 女 性)、 サ ン ビ ー タ は サ ン バ(黒
人
愛 称 で あ る 。 な お 、 こ の 項 セ 例 示 し た 曲 の 形 式 が み ん な 「ワ イ
ノ」 で あ る こ と もま た興 味 深 い。
IVお
わ りに
II章 と 皿章 の分 析 結果 か ら考察 す れ ば、 ハ イ メ ・グアル デ ィア と リラ ・パ ウシーナ は、ペ ル ー ・
ア ンデ ス系 の フ ォ ル ク ロ ー レが 「民 俗 音 楽 」 か ら 「民 衆 音 楽 」 へ 発 展 す る過 程 に お い て決 定 的
な役 割 を演 じて き た演 奏 家 た ちで あ る こ とが 分 か る。
さて 、 ア ンデ ス系 の フ ォ ル ク ロ ー レの代 表 的 な存 在 で あ る ワ イ ノ は、 今 後 ど の よ うな展 開 を
見 せ て くれ る のだ ろ うか 。 これ まで 変 幻 自在 の文 化 的 混 血 力 を発 揮 して き た ワイ ノ が、 そ の ワ
イ ノ と平 行 して 成 長 して き た、 そ して そ の支 持 母 体 で もあ る都 市 の チ ョ ロ層 な ど に支 え られ っ
っ 、 「民 衆 音 楽 」 か らさ らに ペ ル ー の真 の 「民 族 音 楽 ⊥ へ と発 展 す る姿 を 想 像 しっ っ 、 本 稿 を
終 え る こ と に した い。
[後 記]本 稿 作 成 に当 た って は、 さ ま ざ まの 方 か らご支 援 を受 け ま した。 特 に採 譜 に 当 た って
は明 石 真 琴 さん に一 部 楽 譜 化 の 作 業 を して い ただ き ま した。 さ らに、 す で にCD化
されている
分 の 聞 取 り ・日本 語 訳 の 転 載 につ いて は、 ボ ンバ ・レコ ー ドな らび に東 宝 ミュ ー ジ ック の ご協
力 を 得 ま した。 この 紙 面 を 借 りて 謝 意 を 表 した い と思 い ます 。
な お 、 今 回 も また 、 共 同 研 究 者 で あ る ア ンヘ リカ ・パ ロ ミー ノ の ケ チ ュ ア語 な らび に ス ペ イ
ン語 の 知 識 と経 験 な く して は本 稿 の 脱 稿 もお ぼ っ か な か っ たで し ょ う。
基本資料
グア ル デ ィア、 ハ イ メ
1995音
楽CD「
エ ル ・チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル ー 』(選
曲 ・解 説:田
中 勝 則 、 翻 訳:岩
村 健 二 郎)ボ
ン バ ・ レ コ ー ド[BOM2064,JASRACCO]
リ ラ ・パ ウ シ ー ナ
1996音
楽CD「
伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』(選
Palomino)ボ
朝 川 朋 之[音
1998音
曲 ・解 説:田
中 勝 則 、 翻 訳:青
木 芳 夫 ・Angelica
ン バ ・ レ コ ー ド[BOM2065,JASRACC3]
楽]
楽CD『
絆
オ リ ジ ナ ル ・サ ウ ン ド ・ ト ラ ッ ク』 東 宝 ミ ュ ー ジ ッ ク[POCX-1099]
青 木:ペ
57
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ 」 レ
参考文献
膨、
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ヤ
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CEPES鳳
1986Huayno,vals,c配cん
α∫roc規
ηz蕊8∠cαpoμZαrpθrμ
απα9,Lima,CEPES
Gunther,Juan
1992JornadasdeLima:ProgramadetomadeconcienciadelCentrohistoricodeLima,
Lima,PatronatodeLima
LlorensAmico,JoseAntonio
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Sandoval,CiroA.&SandraM.Boschetto-Sandoval(eds.)
1998JoseMariaArguedas:ReconsiderationsforLatinAmericanCulturalStudies,Athens,
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Univ.ofTexasPress
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コ ー エ ン、 ジ ョン
1992音
楽CD「
』.
ペルー
ア ン デ ス 山 脈 の 音 楽 』(地 球 の 音 楽74)日
本 ビク タ ー
後藤雄介
1994「
イ ン デ ィ ヘ ニ ス モ か ら 『メ ス テ ィ サ へ 』 ヘ
ホ セ ・マ リ ー ア ・ア ル ゲ ー ダ ス の ペ ル ー 社 会 像 一
一 」 『イ ベ ロ ア メ リカ 研 究 』(上 智 大 学)第30号
西村秀人
1992「
現 代 ラ テ ン ア メ リガ にお け る民 衆 文 化 の意 味
音楽論の試み
ア ル ゼ ン チ ン ・ タ ン ゴ を 中 心 と した ポ ピ ュ ラー
」 「ラ テ ン ア メ リ カ 研 究 』(上 智 大 学)第14号
浜 田滋 郎
1980『
エ ル ・フ ォ ル ク ロ ー レ』 東 京 、 晶 文 社
山 本 紀 夫,
1992音
楽CD『
ペ ル ー/ボ
リ ビア
変 り ゆ く伝 統 の 響 き 」(地 球 の 音 楽73)日
本 ビクター
奈
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巻末資料
*斜
体 字 は ス ペ イ ン語 の 部 分 で あ る。 た だ し、 ケ チ ュ ア 語 に 同 化 し た
ス ペ イ ン語 は 除 くo
**こ
こに お け るケ チ ュ ア語 の 表 記 は、 ク ス コ地 方 の ケ チ ュ ア語 に よ る
表 記 で 行 な っ て い る。(以 下 の 曲 に っ い て も 同 様 で あ る。)
***一
部 楽 譜化 に つ い て は、 で き るだ け原 音 に近 い形 で 行 な って い ただ
い た。
資 料④PARlONlTA
パ リオ ニ ー タ
ParionitaParionita
パ リオ ニ ー タ、 パ リオ ニ ー タ よ
Maytankaytahamuranki
ど う して こん な と こ ろ まで 来 た の で す か
Chikchiparatagatipaspa
霰 や 雨 を っ くよ うに して まで
Lomasphuyumanalkansaspa
山 の上 の 雲 を 追 い 掛 け る よ う に して まで
Apanpuwaygoykanpuway
cielocolorpunchuchayta
持 って きて お くれ 、 返 して お くれ
punchuchaygapunchuchaysi
warmayanaypastapaykunay
Punchuchaygapunchuchaysi
Warmach'ullaypasmay'uykunay
私 の ポ ンチ ョ は、 私 の ポ ンチ ョはね
Metomaronprisionero
Enlacanceldetopecho
Conlascadenasdetusbrazos
Conelimandetusojos
私 は 囚 わ れ の 身 とな り ま した
私 の 空色 の ポ ンチ ョを
恋 人 を 蔽 うた あ の もの
私 の ポ ンチ ョ は、 私 の ポ ンチ ョはね
恋 人 を ぐ る ぐ る巻 き にす るた あ の もの
あ な た の胸 の 監 獄 で
あ な た の腕 に縛 られ て
あ な た の 瞳 に 引 き寄 せ られ て
Wankawankahatunmayu
ワ ンカ ワ ンカ の 大 河 よ
guardiacivilapaqmayu
Kaynogallaytaapakuway
民 警 様 す ら流 され て しま う とい う河 よ
Manamamayoqkasgayrayku
私 に は お母 さん もい な い の だ か ら
こん な私 も連 れ て い って お くれ
Kaynogallaytaapakuway
こん な私 も連 れ て い って お くれ
Manataytayoqkaskayrayku
私 に は お父 さ ん もい な い の だ か ら
(「絆 』 よ り再 録)
青 木:ペ
資 料 ⑤CUlDADOCONOLVlDARME
carnal/ales(メ
θmiUL(Zα
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
私 を 忘 れ な いで
わ が 命 の カ ー ニバ ル
hojasdemalva
葵 の 葉 っぱ よ
manaskunanpagchukanki
あ な た は今 日の た あ で は な い
ahorasivivesconmigo
今 は確 か に一 緒 だ ね
cuidadoconolvidarme
私 を 忘 れ な いで
mamallaysimaskhawashan
hojasdemalva
お 母 さん が 私 を探 して い る
pishgap'akilasollantin
鞭 で こ ら しめ る た め に
ahorasivinesconmigo
今 は確 か に一 緒 だ ね
cuidadoconolvidarme
私を忘れ ないで
Cαrπ αびαZθ8(ZθmiUL(1α
わが命 のカーニバル
hojasdemalua
葵 の葉 っ ぱ よ
cont乙gO)ノ01'!"乙(∼amar乙ezco
あ な た と一 緒 に夜 明 け を迎 え る
葵の葉 っぱよ
cuidadoconolvidarme
今 は確か に二緒 だね
私 を忘れ ないで
kawsakuypasyachaypagsi
生 き る術 は学 ぶ もの
んo/asdemalva
葵 の葉 っ ぱ よ
manayachaqusuchinsi
学 ば な い人 は無 駄 に す る
ahorasiuiuesconmigo
今 は確 か に一 緒 だ ね
cuidadoconolvidarme
私 を忘 れ な い で
kayp'unchawpaspisinragsi
今 日 は短 く感 じ る
んoブasdemalva
葵 の葉 っぱ よ
khuyasgaywankawsagtiyga
好 き な人 と一 緒 だ か ら
ahorasivicesconmigo
今 は確 か に一 緒 だ ね
cuidadoconolvidarme
私 を忘 れ な い で
ahorasivicesconmigo
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(「伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』 よ り 再 録)
奈
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翼
CUIDADOCONOLVIDARME
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弄〒弓rコ
コ]
コ
青 木:ペ
資 料 ⑥CARNAVALDETAMBOBAMBA
Tamわ0う
αηZう加omaqt'atas
ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
タ ンボ バ ンバ の カ ー ニバ ル
タ ンボバ ンバ の男 が
yawarmayuapamun
血g)川 で 流 さ れ た そ うだ ・
tinyachallannastuytushan
彼 の テ ィ ンヤ だ けが 浮 かん で い ま す
genachallannastuytushan
ケ ー ナ だ けが 浮 かん で い ま す
charangollannastuytushan
チ ャラ ンゴだ けが 浮 か ん で い ま す
birritillannastuytushan.
帽 子 だ けが 浮 かん で い ます
Wifalitaywifala
wifalawifalawifala(bis)
61
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
ウ ィ フ ァ ラ 、 ウ ィ フ ァ ラ、 ウ ィ フ ァ ラ
wifalitaywifala.
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
Khuyakusqanp'asnari
愛 した女 が
wagayllanaswagashan.
泣 いて い ます
Wayllukusqanp'asnari
恋 した女 が
llakiyllanasllakishan
悲 しん で い ます
tinyachallantaghawaspa
彼 の テ ィ ンヤ を眺 め なが ら
genachallantarikuspa
ケ ー ナ を見 っ め なが ら
charangollantaghawaspa
チ ャ ラ ンゴ を眺 あ なが ら
birritillantarikuspa.
帽 子 を 見 っ あ なが ら
Wifalitaywifala
wifalawifalawifala(bis)
wifalitaywifala.
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
Kunturllanasmuyushan
コ ン ドルだ けが 飛 び回 っ て い ます
Tambobambinomaskhaspa
タ ンボバ ンバ の男 を探 して い ます
ウ ィ フ ァ ラ 、 ウ ィ フ ァ ラ、 ウ ィ フ ァ ラ
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
manapunistarinchu.
ど う して も見 っ か りませ ん
Yawarunusapakun
血 の 水 に流 さ れ た そ うだ
manapunistarinchu
ど う して も見 っ か りませ ん
yawarmayusapakun.
血 の 川 で 流 され た そ うだ
Wifalitaywifala
wifalawifalawifala(.bis)
wifalitaywifala.
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
ウ ィ フ ァ ラ 、 ウ ィ フ ァ ラ 、 ウ ィ フ ァ ラ
ウ ィ フ ァ リ タ イ 、 ウ ィ フ ァ ラ
(「エ ル ・チ ャ ラ ン ゴ ・デ ル ・ペ ル ー 』 よ り和 訳)
62
奈
良
大
学
紀
要
第27号
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ル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク 目 一 レ
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奈
良
大
学
紀
要
第27号
資 料 ⑦MASCAMUYQUl
あ な た を 探 して
gangahuch'uysumaqurpi
あ な た は可 愛 い 小 鳥
nogallanparischamayga
あ な た の お 似 合 い は私 だ け
punuspaykisuen`okuway
眠 って い るな ら私 の 夢 を 見 て
rikch'aspaykiwahakuway
起 きて い るな ら私 を 呼 ん で
orgoq'asantamaskhamuyki
山 や谷 を 越ネ て 探 して い ます
tutatapasp'unchawchaspa
昼 も夜 も
Bach'arumitatapukuspa
石 に も木 に も聞 い て
sutiykimantagaparispa
あ な た の 名前 を 叫 ん で い ま す
achhuykamuyachhuykamuy
おいでおいで
llakinchistamirmachisun
二 人 の悲 痛 が減 る よ うに
kaypinnogasuyashayki
こ こで私 は あ な た を 待 って い ま す
chiriwayratamuchuspa
寒 さ に も風 に も耐 え て
(「伝 説 の リラ ・パ ウ シ ーナ 』 よ り再 録)
MASCAMUYQUI
『
滑
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青 木 昌:ペル ー ・ア ン デ ス の フ ォ ル ク ロ ー レ
資 料⑧CLAVELWAYTA
力 弓 ネ ー シ ョンの 花
alsilenciodelanoche
lindosojosmemiraron
clavelinasclavelwayta
あ る静 か な 夜
quientohadicho
誰 が あ な た に言 った の
quemequieras
私 を 好 き にな れ と
quientohadicho
誰 が あ な た に言 った の
quemeames
私を愛せ よと
paradespuesolvidarme
あ とで 私 の こ と な ど忘 れ て しまう の に
clavelinasclavelwayta
カ ー ネ ー シ ョ ンの花 よ
makiykitaq'ewespaychu
む りや り
dedoykitap'ak'ispaychu
私 を 愛 して な ど と言 わ なか っ た の に
khuyallawaynillargayki
む りや り
美 しい 瞳 が 私 を み っ あ た'
カ ー ネ ー シ ョンの 花 よ
カ ー ネ ー シ ョ ンの花 よ
clavelinasclavelwayta
wayllullawaynillargayki
党
〆
私 に 恋 して な ど と 言 わ な か っ た の に
clavelinasclavelwayta
ヵ 一 ネ ー シ ョ ンの花 よ
enganasteenganaste
だ ま したん だ ね、 だ ま した ん だ ね
lambraciruela
amlcorazonLnocente
lambraciruela
tristerecuerdo
、,
くや し い 、 フ。ラ ム よ
私 の無 垢 な心 を
くや し い 、 フ。ラ ム よ
っ らい思 い 出 に
(『伝 説 の リ ラ ・パ ウ シ ー ナ 』 よ り再 録)
奈
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良
大
学
紀
要
第27号
CLAVELWAYTA
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RESUMEN
Estearticuloconsistededospartes.Enlaprimeraparte,elautortrazalahistoriadela
musicafolkloricaandinadelPerudesdelaperspectivadelmestizajecultural,lacualesla
mismaperspectivadelnovelistaindigenistaArguedas.
Enlasegundaparte,elautorexaminaCDmusicaldelcharanguistaJaimeGuardiacomoun
casoconcreto:laconfluenciadequechuayespanol,laformulamusical,ylasparabras
simbolicas.
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