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心臓病のリハビリ

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心臓病のリハビリ
池
朗
齢
管研究所付属病詈
心臓病 の
リハビリテーション
小
﹁
病気 にな ると安静が必 要だ﹂と いうか つての常 識 に対 し、最近 では、
\ ヽ′
︲
、
一 過度 の安静 が体 のさ まざ まな働 きや運動能力 を低 下させ ると指摘 さ れ始 め て います 。
心臓病 で手術 など の治療 を受 け た患者 さ んが快適
セ リ ング﹂ な ど か ら成 る総合 的 な プ ログ ラ ム で、
の理解 ﹂ ﹁
運動療 法 ﹂ ﹁
食 事 。禁 煙 指 導 ﹂ ﹁カ ウ ン
心 臓 リ ハビ リ テー シ ョンと は 、
一般 に、 ﹁
病気
まり つつあります 。
心臓 病 の治 療 後 の患者 さん にも 、早期 に体 を動 か す リ ハビ リ テー シ ョンが勧 め られ ます。
以前 は、心臓病 で手 術 など の治療 を受 けた患 者
さ ん が 、 運動 を行 う のは危 険 であ ると考 え ら れ 、
に日常 生活 を送 ったり、 早期 に社会復 帰 でき るよ
7ぺ︲ジ の囲
う に支 え て いこう とす るも のです ︵
0
︲
み参 昭じ。
安 静 にす る こと が勧 め ら れ て いま した 。 し か し 、
最近 は、病状 に合わ せた適 切な運動 を行う こと で、
●対 象
次 のよう な病気 や状態 が、心 臓 リ ハビ リ テー シ
生活 の質 が向 上 したり、 より長生 き でき る こと が
明 ら か になり 、 ﹁
心 臓 リ ハビ リ テー シ ョン﹂ が広
イラスト 林 カロ
奈子
lo6
きょうの健康
20089
ョンの対象 となります 。
▼狭 心症 。心筋梗塞 ⋮⋮心 臓 の筋肉 ︵
心筋 ︶ に栄
養 や酸 素 を供給す る血管 ︵
冠動脈 ︶ に動脈硬化 が
起 こる こと など によ つて、血管内腔 が狭 ま る のが
﹁狭 心 症 ﹂ で 、 血 管 内 腔 が 詰 ま って し ま う のが
﹁
心筋 梗塞﹂ です。 これ らを発症 した患者 さ んは、
これら の病気 に対す る心臓 リ ハビ リ テー シ ョン
には、健康保険 が適 用されます 。
●効 果
心 臓 リ ハビ リ テー シ ョン の運動 療 法 を行 う と 、
自律 神 経﹂ など の働 き が
﹁
肺﹂ ﹁
心 臓﹂ ﹁
骨格筋﹂ ﹁
改善 し、運動能力 が高ま って、楽 に活 動 でき るよ
*︱ ここでいう大 血管疾患 とは、大動
脈解離や大動脈疾患 の手術後を指す。
*2 200 6年度 から、慢性心不全 に
対 す る心臓 り 八ビ リ テー シ ョンにも健康
保険が適用されるようにな った。
守つているため、安
心 して取 り組め る。
う になり 、生活 の質 が向 上します。ま た、運動 に
護師、検査技師、理
学療 法 士 な ど が 見
治療 後 も再発を防ぐ た め に、運動 や食事 な ど の生
ミルで歩行を行つて
は動脈 硬化 が進 む のを防 ぐ効 果も あり 、狭心症 や
いる (右 )。 医師、看
活 習慣 を改善 す る こと が大 切 です 。
た り(左 )、 トレッド
心筋 梗塞 の再発 予防 に つな がり ます 。心臓病 の手
霊│[TT11
▼心臓病 の手 術後 ⋮⋮心 臓 の弁を 人 工弁 に置き換
転車こぎ運動を行 つ
術後 の患 者 さ ん では、早期 の社会復帰 が期待 でき
│り
える ﹁
心臓弁膜症﹂ の手 術 や、血流 が悪く な った
エ ル ゴ メー タで 自
ます 。慢性 心不全 の患者 さ ん の場合 は、心臓 の働
に役立 てた り、 日常生
活 に注意する。
冠 動 脈 の代 わ り に新 た な 血 液 の通 り 道 を つく る
食事 や喫煙が病気 に大
│き くかかわる場合 もあ
﹁バイ パ ス手 術 ﹂ な ど 、体 に負 担 のか か る心 臓 の
手 術 を受 けた患者 さ んは、 スムーズ な社会復 帰 の
た め に、医師 の指導 の下 で無 理なく体を動 かし始
め る こと が必要 です 。
▼慢性 心 不全 ⋮⋮さまざ ま な原因 によ って、心 臓
が血液 を送り出す働 き が弱 ま った状態 が ﹁
慢性 心
不全﹂ です。慢性 心 不全 では、適度 な運動を行 わ
な いと 、自律神 経 の働き に異常 が生 じたり 、心臓
の働き がますます悪 化 し て、活動 し にくく な った
り 、命 にかかわ る こと があります。
末 梢動 脈 閉塞 性 疾
こ のほ か 、 ﹁
大 血管 疾 患 ﹂ ﹁
患 ﹂ の治療 を受 けた患 者 さ んも 、心臓 リ ハビ リ テ
ー シ ョンの対象 となります 。
107き ょうの健康 120089
病気 へ の不安な どをも
つ 患 者 さ ん に 対 して
心臓 り八ビリテーシ ヨ
ンの中心となる。適切
な強度の運動を医療ス
タ ッフの指導のもとで
安全に行う。
、食事 に注意する と
病気の原 因や状態 につ
いて理解 し、再発予防
生存率 ︵
%︶
3回 の運 動療法 を約 14か 月間行 つた グル
ー プで 、生存 率 を比 較 したイ タ リア にお
●運動 の内容
す ︵
右 の囲 み参 照 ︶。
た ほう が 、 生 存 率 が 上 が る こと が報 告 さ れ て いま
き に つな が り ま す 。 海 外 の調 査 でも 、 運 動 を 行 っ
って、 活 動 範 囲 が広 が り 、 経 過 が よく な って長 生
主 に骨 格 筋 と 自 律 神 経 の働 き が改 善 す る こと に よ
き を 大 幅 に改 善 さ せ る こと は 期 待 でき ま せ ん が 、
約 100人 の心不全の患者 さんを対象 と し、
運動療法を行わないグループと、週 に2∼
心臓 リ ハビ リ テー シ ョン の運動療法 には、十分
ロロ 11古 D30分 間程度
たほうが生存率が高いことが示された。
CE≡ ヨD有 酸素運動 :エ ルゴメータ、
トレッ ドミルなど
筋 力 トレー ニ ング :筋 肉が
萎縮 した患者さんが行 う
●EIヨ D安 全かつ有効な範囲
CEEヨ D週 に3∼ 5回
月間程度。入院中か ら行
い 、退 院後 は通 院 して継続
-5か
を 使 った 筋 カ ト レ ー ニング が行 わ れ る こと も あ り
て足 腰 な ど が衰 え て いる患 者 さ ん に は 、 器 具 な ど
運 動 を 行 って いな い期 間 が 長 く 、筋 肉 が萎 縮 し
行 わ れ て いま す 。
故 の危 険 性 が低 い﹂ と いう 利 点 が あ り 、 最 も よ く
は、 ﹁
転 倒 な ど事
比 較 的 軽 い負 荷 を 設 定 でき る﹂ ﹁
り ま す 。 エルゴ メー タを 使 った自 転 車 こぎ 運 動 に
使 った 速 め の ペー ス の歩 行 や ジ ョギ ング な ど があ
メー タを 使 った自 転 車 こぎ 運 動 、 ト レ ッド ミ ルを
運 動 ﹂ が 適 し て いま す 。 代 表 的 な も のに、 エルゴ
1日
ます。
0分 間程 度 、 週 に 3∼
一般 に運 動 療 法 は 、 1回 3
5回行 わ れ ま す 。
心肺運動負荷
検 査 (CPX)
の 様子 。 この
よ うな検査 の
結果 か ら適切
な運動強度が
決め らねる。
に相 談 す る こと が勧 め ら れ ま
だ 受 け て いな い場 合 は 、 担 当 医
ら 、対 象 と な る 患 者 さ ん で 、 ま
受 け ら れ る と ころ も あ り ま す か
国 に増 え つ つあ り ま す 。 外 来 で
は 、 ま だ 限 ら れ て いま す が 、 全
け る こと が でき る 医 療 機 関 の数
心 臓 リ ハビ リ テ ー シ ョンを 受
◆受 けら れ る医療機 関
運動強度を決めるための検査
す。
lo8
きょうの健康
20089
)
5(年
4
3
2
1
な量 の酸素 を体内 に取り 入 れな がら行う ﹁
有酸 素
は、行 わないグルー プでは約40%、 行 つ
たグルー プは約 80%と 、運動療法 を行 つ
―
(Belardinelli R,et al Circulation 1 999)
ける調査。その結果、3∼ 4年 後の生存率
する
_/ノ
●運動 強度 と入院 中 の運動 療法
療法 を継 続 します。
者 さ ん の入院期 間 は、 1∼ 3週 間程度 です 。 こ の
さんごと に、安全 か つ有効 な範 囲 で決 められます。
療法 を継続 す る のが適 切と判 断 され る場合 は、期
心臓 リ ハビ リ テー シ ョンに健康保険 が適 用 され
間運動療 法 を続 け、 さら に退 院後 は通院 し て運動
運動療法 は、早期 に始 め るほう が効 果 があ るた
め、 入院中 から行 わ れます 。運動 の強度 は、患 者
例え ば、手 術を受 けた患者 さ んは、早 ければ手
0m
術 の翌 日から歩行 を始 めます 。 3∼ 4日後 に ︲
0
ほど 歩 け るよう にな つたと ころ で、 ﹁
心 肺 運動負
間を延長す る ことも 可能 です 。
運動 能力 の回復 が不十分 であ るなど、 さら に運動
る期 間 は、入院中も含 め て5か月間 です。ただ し、
荷検 査﹂ など の検 査 で適 切 な運動強度 を決 め、自
心肺 運動負 荷検査 と は、自転車 こぎ 運動 の強度
院 が難 し い場合も 同様 です。自 宅 や スポ ー ツ施 設
療法 が終 了 したあ とも 、自宅 や スポ ー ツ施 設 など
運動能力 の回復 が認 められ、医療機 関 で の運動
●自 宅 など での運動
を徐 々に強 め な が ら 、 ﹁
心 電 図﹂ ﹁
血 圧測定 ﹂ ﹁
呼
8ぺ︲ジ の下
気 ガ ス分析﹂ などを行う 検査 です ︵
0
︲
の囲 み参 照 ︶。呼 気 ガ ス分析 では 、 マスクを 装 着
で運動 を行う場合 には、医師 の運動 処方 に従 って
転車 こぎ運動 など の運動療法 が開始 されます 。
し て呼 気 や吸気 を分析 し、体内 に取り入 れた酸素
安全 に行う こと が重要 です。
れら の結果 から、適 切な運動 強度 が設定 されます。
が出 る運動 は やや強す ぎ ると考え られ ており 、 こ
からわ かります 。心 臓病 の患者 さ ん の場合 、乳酸
酸 ︶ が出 てく るかが、 二酸 化炭素 の量など の解析
た、ど のく ら いの運動 強度 で血中 に疲労物質 ︵
乳
場合 は、脈拍 が速 くなりす ぎ な いよう に注意 しま
参 し てく だ さ い。自宅 でウオ ーキ ングなどを行う
ら、 スポ ー ツ施設 を利 用す るとき には、そ れを持
運動 の時 間﹂ ﹁
頻度﹂ が書 かれ て います か
拍 数﹂ ﹁
査 の結 果 に基づ いて決 められた 、 ﹁
運動 強度 ﹂ ﹁
心
運動 処方 には、事 前 に行 わ れた心肺 運動負 荷検
リ ハビ リ テー シ ョンな ど
専 門 は 循 環 器 内 科 学 、 特 に心 臓
3
● 経 歴 1 9 5 7年 生 ま れ 。 8
年 東 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部卒 業 。
3
1
0
︲
器科 ︶
.2
6
3 東 京 都 港 区 六本 木 7 1
〒0
0
︲0
心 臓 血 管 研究 所 付 属病 院 ︵
循環
一般 に、心 臓 病 の患 者 さ ん の適 切 な 運動 強 度 は 、
す。胸 や腕 など に装着 し て簡 単 に脈 拍数を知 る こ
を利 用す る方法もあります。
。
0
最大 運動強度 の0
5∼ 7%と され て います
■■ 闘 ■ ■ ■
心臓 り八ビリテーシ ョンを受けられ
る医療機関の一覧が閲覧できます。
と が でき る心拍計 が市 販 さ れ て います から 、そ れ
で運動 を続 け る こと が勧 めら れます。退院後 、通
の量 や吐 き出 した 二酸 化炭素 の量 を調 べます 。ま
http:〃 square.umin.ac.ip/iaCr/
●退院 後 の運動療 法
手 術 を受 けた患 者 さ ん や狭心症 、心筋 梗塞 の患
109 きようの健康 120089
日本 心 臓 リハ ビ リテー シ ョン学
会 の ホー ム ペ ー ジ
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