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資料5-2 未来への選択(「選択する未来」委員会)

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資料5-2 未来への選択(「選択する未来」委員会)
資料5-2
未来への選択
-
人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築
平成 26 年5月 〔これまでの議論の中間整理〕
経済財政諮問会議専門調査会「選択する未来」委員会
-
はじめに
現状のまま何もしない場合、私たちには極めて厳しく困難な未来が待ち受けている。
しかし、制度、政策、人々の意識が速やかに変わるならば、未来は変えることができる。
日本経済は、アベノミクスによって、長く続いてきたデフレからの脱却が視野に入り
つつある。この景気回復の動きを確実なものとしつつ、持続的な成長・発展につなげて
いくためには、経済社会の構造変化を見据えながら、現状のまま何もしない場合に直面
するであろう困難な未来像を予想し、そうした未来とは別の未来へ到達するための中長
期的な政策の枠組みを明らかにしていく必要がある。
こうした観点からの検討のため、本年1月に経済財政諮問会議の下に「選択する未来」
委員会が設置された1。本委員会では、人口急減・超高齢化2という未来が近づいている
ことを直視した上で、2020 年頃を節目としつつ、半世紀後までを展望しながら、中長
期的な課題とその克服に向けた対応の方向性を示すべく、議論を進めてきた。
本報告は、これまでの議論をもとに、本委員会としての基本的な考え方を整理したも
のである。国民各層、現状を変革することができる現役世代と未来を担うことになる次
世代の双方の多くの方々に、本報告のメッセージが届き、「未来への選択」に向けた新
しい動きが生まれるきっかけとなることを期待したい。
Ⅰ
今後 50 年、人口減少社会が続く
未来はあらゆる可能性を秘めている。今後半世紀先、新しい科学技術やビジネスによ
って、私たちの日常生活は予想もできない変化を遂げているだろう。さらに、グローバ
ル化や IT 化が一層進み、世界情勢は大きく変わっているかもしれない。未来は不確実
性に満ちている。しかし、一つだけ確かなことがある。それは、今後 50 年、人口減少
社会が続くということである。
日本の総人口は、現状の出生率の水準が続けば、50 年後には約 8,700 万人と現在の
3分の2の規模まで減少する。そして、人口の約4割が 65 歳以上というかつて経験し
たことのない著しい「超高齢社会」になる。仮に、2030 年までに合計特殊出生率が人
口置換水準3である 2.07 まで急速に回復し、それ以降同水準を維持したとしても、50 年
後には人口は約 1 億 600 万人まで減少し、人口減少が収まるまでには今から約 80 年の
1
本委員会では、中長期的な課題について、「経済成長と発展」、「人の活躍」、「地域の未来」という3つの切り口か
ら掘り下げて議論を行うため、3つのワーキング・グループを設置した。本報告は、各ワーキング・グループにおけ
る議論も取り入れて取りまとめたものである。
2
一般的に高齢化率(総人口に占める 65 歳以上人口の割合)が 7%を超えた社会を高齢化社会、14%を超えた社会を高
齢社会と呼称。2013 年の高齢化率は 25.1%。本報告では、高齢化率の一段と高い状態(3割程度)を「超高齢化」、
さらに高い状態(4割程度)を「超高齢社会」と呼ぶ。
3
人口を長期的に一定に保つことが可能となる合計特殊出生率の水準。現在の死亡率の水準を前提とした場合、概ね
2.07 となる。
1
期間を要することになる。
さらに注目すべきは、人口減少のスピードである。人口は、2008 年に 1 億 2,808 万
人でピークとなり、その後 2013 年までに年平均 16 万人ずつ減少してきた。現状の出生
率の水準が続けば、人口減少はさらに加速し、2010 年代後半から 2020 年代初頭には年
平均 50~60 万人減、2040 年代初頭には年平均 100 万人減となる。これから私たちは、
経験したことのない速さでの人口減少に直面することとなる。この「人口急減」は、労
働力人口の減少、経済成長の鈍化、地域経済の縮小、社会保障や国・地方の財政の持続
性の危機など、私たちの未来に大きな影響を及ぼしていく。
加えて、グローバル化、IT 化等の世界の潮流に適切に対応できなければ、危機は一
段と深刻となろう。
私たちは、まず「人口急減・超高齢社会」という未来が間近に近づきつつあることを
再認識し、危機意識を共有すべきである。その上で、悲観的に考えるのではなく、前向
きに思い切った改革を進めていく必要がある。
Ⅱ
未来は変えられる
1.現状のまま何もしない場合の未来像
「人口急減・超高齢社会」によって生じる影響に対する危機意識を共有するため、あ
えて日本の経済社会が現状のまま推移した場合に訪れる未来像を描いてみよう。
①
マイナス成長:経済規模の縮小
日本経済は、近年、労働力人口の減少に加え、生産性上昇率の低迷により、潜在成長
率が低下を続けてきた。今後、労働力人口の減少がさらに加速する中、生産性上昇率が
低迷している現状を放置すれば、日本経済全体でプラス成長を続けることは困難になる。
経済規模が縮小すると、海外経済や国際金融市場等の影響を受けやすくなり、経済活
動の短期的な振れ幅(ボラティリティ)が大きくなる恐れがある。また、グローバル化、
アジア新興国の成長の中で、日本の経済規模が国際的な比較において相対的に縮小する。
人口オーナス4と縮小スパイラル:規模の縮小が国民生活の低下を招く
②
人口に占める働く人の割合が低下し、働く人よりも支えられる人が多くなる「人口オ
ーナス」に直面し、経済成長の重荷となっていく5。また、急速な人口減少が、国内市場
の縮小をもたらし、投資先としての魅力を低下させ、さらに人々の集積や交流を通じた
イノベーションを生じにくくさせることによって、一旦経済規模の縮小が始まると、そ
4
少子高齢化により生産年齢人口が相対的に減少していく人口構造の変化が、経済成長等に重荷となっている状態。
2013 年の 75 歳以上人口の割合は 12.3%、2035 年には 20.0%。高齢者単独世帯の世帯総数に占める割合は、2010
年 9.6%、2035 年 15.4%(2013 年の人口割合は総務省推計、それ以外は国立社会保障・人口問題研究所推計による)。
5
2
れが更なる縮小を招くという「縮小スパイラル」に陥る恐れがある。
「人口オーナス」と「縮小スパイラル」の双方が強く作用する場合には、国民負担の
増大が経済の成長を上回り、実際の国民生活の質や水準を表す一人当たりの実質消費水
準が低下する恐れもある。
③
格差の固定化・再生産
労働市場は、長時間労働につながりやすい正社員と、雇用が不安定でキャリア形成が
難しい非正規社員とに二極化している。若者は新卒時に正社員として雇用されるか否か
で大きく道が分かれ、再チャレンジすることが難しい。女性や高齢者の力は十分に引き
出されていない。こうした状態が続き、労働力不足を補うために長時間労働がさらに深
刻化し、ワークライフバランスも改善されず、少子化がさらに進行していく。また、労
働市場の二極化が続くことで、格差が固定化・再生産されて、社会から取り残され、未
来に希望の持てない人々も増加していく。
④
4分の1以上の地方自治体が消滅可能性6、東京の超高齢化
これまで地方圏で人口減少と高齢化が先行してきたが、今後は大都市圏、特に東京圏
においても人口減少や高齢化が急速に進行していく。また、地方圏以上に出生率が低い
東京圏への人口流入は、人口急減・超高齢化の進行に拍車をかけていく。やがて 50 年
後、地方圏を中心に4分の1以上の地方自治体で行政機能の発揮が困難になる。他方、
東京圏では、超高齢化が避けられず、グローバル都市としての活力を喪失し、所得や資
産はあっても医療・介護が受けられない医療・介護難民が多数出現する。
⑤
財政破たんリスク、国際的地位の低下
高齢化の進行に伴い医療・介護費を中心に社会保障給付費の増加傾向は一段と強まる。
また、家計や企業等の純貯蓄が減少する一方、財政赤字が十分に削減されなければ、経
常収支黒字は構造的に縮小していき、国債の消化を海外に依存せざるを得ない状況とな
る。その結果、利払い費負担が増加する恐れがあるとともに、国際金融市場のショック
に対して脆弱な構造になる。財政健全化の道筋に沿って財政赤字を着実に削減できなけ
れば、財政の国際的信認を損ない、財政破たんリスクが高まることになる。また、国際
社会に貢献する力も弱まって世界での存在感も低下していく。
2.「未来への選択」
なぜ、このような厳しく困難な未来を招くことになってしまうのだろうか。
少子化、高齢化は、日本に特有ではなく多くの先進諸国に共通してみられる現象であ
6
地方圏から大都市圏への人口移動が現状のまま推移する場合、2040 年に 20~30 代の女性人口が対 2010 年比で 5 割
以上減少する自治体が 896 市町村(全体の 49.8%)
、うち 2040 年に自治体の総人口が 1 万人未満となる自治体が 523
市町村(全体の 29.1%)となり、これら自治体は「消滅可能性」が危惧される。
3
る。しかし、わが国の場合は、戦前の貧しさと戦後の経済成長の間で人口の急増が生じ、
その時代に生まれた世代がいまや高齢者になり始める一方で、ちょうどこの時期が「失
われた 20 年」と重なり、若い世代は豊かさを手にすることができず、少子化が加速し
ていること、すなわち、急激な高齢化と急激な少子化が同時に進行し、それに伴って人
口構成の著しい不均衡化が生じているという特色を有している。このため、経済社会全
体にかつてない大きな変化が急速に進行し、変わっていくべき制度、政策や人々の意識
が大きなこの変化について行っていないという課題を抱えている。
しかし、今から過去を変えることはできない。そこで、この変化が経済社会全体にも
たらす厳しく困難な未来を回避するためには、これから、若い世代やさらに次の世代が
豊かさを得て、結婚し、子どもを産み育てることができるよう、そこに集中して改革・
変革していくしかない。制度、政策や人々の意識が速やかに変われば、「人口急減・超
高齢社会」への流れを変えることはできると本委員会は考えている。
またその際に重要なことは、人口構成の不均衡の改善や、経済全体の持続的な成長の
実現といったマクロ的な視点と、女性や若者をはじめとして、人々や地域社会が伸び伸
びと個性や能力を発揮し、豊かさや幸せを感じられるというミクロ的な視点が有機的に
結びついていることである。
これらの視点からの改革・変革はいずれも欠くことができない。未来は変えられると
いう強い意思をもって実行することができるか、否か。それが「未来への選択」である。
①
危機意識を共有し、50 年後に 1 億人程度の安定した人口構造を保持することを目
指す7
「人口オーナス」と「縮小スパイラル」によって国民生活が低下する事態に陥ること
を回避するためには、様々な経済活動や社会的機能の担い手となる人口を、将来におい
てもある程度の規模で保持することが必要である。国民の希望どおりに子どもを産み育
てることができる環境をつくることによって、人口が 50 年後においても1億人程度の
規模を有し、将来的に安定した人口構造を保持する国であり続けることを目指していく。
②
経済を世界に開き、
「創意工夫による新たな価値の創造」により、成長し続ける
成長・発展を続けていくことは、国民生活の質や水準を維持する上で必要不可欠であ
る。人口減少下においても、付加価値生産性の向上8、労働力参加率の上昇、国内資本
の蓄積を促すことによって、持続的な経済成長を実現することは可能である。ブランド
等の知識資本の活用、マーケティングの革新等により、付加価値の高い新しい財・サー
ビスや新たな需要を創出し、経済活動のダイナミズムを生み出す。また、経済を世界に
7
2030 年に合計特殊出生率が 2.07 まで上昇した場合、総人口に占める年齢階層別の割合は、2060 年には、20 歳未満
20.7%、20-64 歳 46.3%、65 歳以上 33.0%になり、年齢階層数とほぼ等しくなって著しい不均衡は解消すると推計
される。
8
付加価値生産性の向上とは、安価に産出量を増やすことではなく、生産要素に対する付加価値の比率を高めること
を意味する。
4
オープンにし、世界中からヒト、モノ、カネ、情報が集積する経済を目指していく。こ
れにより、生産性をどこまで高められるかが経済成長の鍵となる。「縮小スパイラル」
に陥ることを回避し、活力と競争力のある経済をつくり、成長し続けていく。
③
年齢、性別に関わらず意欲、個性や能力に応じて活躍できる制度、仕組みを構築
する
人々が豊かさや幸せを感じられる経済社会を築いていくためには、女性、若者、高齢
者をはじめ、すべての人々が意欲、個性や能力に応じて活躍できるようにしていくこと
が重要である。このため、年齢、性別、時間、場所に関係なく働くことができ、また、
働くことが生きがいや誇りとして感じられる社会を構築していく。また、多様性が尊重
され、多様なライフコースが選択でき、仮に失敗しても意欲があれば、その能力と個性
を伸ばし、だれもが何度でもチャレンジできる環境を整えていく。
④ 個性を活かした地域戦略と「集約・活性化」を進め、働く場所をつくる
今後、地域の中で進む人口減少と高齢化によって、経済活力の低下だけでなく、コミ
ュニティ崩壊や行政サービスの水準低下が懸念される。このため、個性を活かした地域
戦略を推進するとともに、地域の再生に向けて、空間的にメリハリのある「集約・活性
化」を進め、男女の各世代が働く場所を創出し、魅力ある地域社会が全国に展開する国
を目指していく。また、東京への若者の人口流出圧力を抑える一方、東京は多様な人材
が協働して新しいものを生み出すグローバル都市の地位を確保していく。
⑤
基盤的な制度、文化、公共心など社会を支えている土台を大切にする
社会保障や財政等の基盤的制度の持続可能性や国際的信認を引き続きしっかりと保
つとともに、歴史と伝統に育まれた日本固有の文化や公共心、地域での自助・共助の取
組などを受け継ぎ、安全・安心の基盤を確保する。
Ⅲ
未来を変えるための時間及び改革・変革の方向性
今後 50 年先の望ましい未来を目指して、まず経済の長期低迷から早期に抜け出した
上で、2020 年を目途に大きくトレンドを変え、さらにその先を展望するという明確な
時間軸を持って、①人口、②成長・発展、③人の活躍、④地域の未来、⑤信頼・規範に
関わる課題に、スピード感をもって重点的に取り組んでいく必要がある。
民間企業による経営努力、経営者や雇用者など人々の意識の変革が重要であり、政府
の役割はたゆまず制度、政策の改革を続け環境を整備することである。以下は、新しい
提案もあれば、これまでも指摘されながらなかなか取組が進まない課題もある。残され
ている時間は多くないという危機意識の共有が重要である。
5
<成長・発展:アベノミクスを機に低迷から抜け出して長期の発展経路へ>
いわゆる失われた 20 年の間に、日本経済は低迷を続け、経済力、豊かさは急速に減
じている。この長期低迷から早期に抜け出していくため、成長・発展面での取組を迅速
かつ強力に進めていくことが必須である。
<人口・地域:2020 年目途でトレンドを変える>
2020 年代後半には団塊の世代がすべて 75 歳以上になり、高齢化率が3割を超え、人
口減少が加速する。その前までにこのトレンドを変えることができなければ、「現状の
まま何もしない場合の未来」は一気に現実のものとなる。出生率上昇の流れを強め、2020
年目途でトレンドを変えるには、改革に向けた舵を早く大きく切る必要がある。
<その先へ:2020 年の先を展望して改革を前進させる>
東京オリンピック・パラリンピックが開催される 2020 年は、節目であってゴールで
はない。2020 年までの取組の成果と舵の方向性を確認しながら、更に改革を前進させ
る。その先にあるのは、年齢・性別や東京・地方にかかわらず、人々が生き生きと活躍
することができ、日本・日本人らしさを大切にできる、持続的、安定的に成長・発展す
る経済社会である。
1.人口:子どもを産み育てる環境の整備により 50 年後に1億人程度の人口保持
中長期的課題と改革・変革の方向性

将来的に一定規模の人口を保持し、安定的な人口構造を保持していくためには、
出生率の回復が不可欠である。

人口急減・超高齢化という人口動態への対応は、効果発現までに複数の世代が
必要になる。出生率回復が 10 年遅れると 50 年後の人口はさらに約 300 万人減
少するというように、スタートが遅れるにつれ、将来の人口規模・構成に大き
く影響する。このため、若者が結婚し、子どもを妊娠し、産み育てやすい環境
づくりに、国、自治体、企業を含め社会全体で早急に取り組む。
(1) 抜本的少子化対策
少子化の要因のひとつに、結婚できない若者が多いことが挙げられる。この背景とし
て、正社員と非正規社員が二極化し、低賃金で雇用が不安定な非正規社員が増えている
ことが考えられ、非正規社員の処遇を見直すなど、若者が安心して結婚できる環境を整
備していく必要がある。
また、結婚した男女については、経済的な理由等から希望の子ども数を持てない夫婦
が多いという現状があり、まずは子どもを産み育てたい人の希望を阻害する要因を除去
し、それにより出生率を高めることが重要である。このため、子どもを持つことによる
6
新たな経済的負担を最小限に止めるという視点で、様々な制度・仕組みを全面的に見直
していく。
夫婦の理想子ども数は平均で 2.4 人だが、現実は 1.7 人9。その理想を実現できる環
境を整えることが、出生率を2程度まで回復するためには必要である。第二子、第三子
を産み育てやすい環境を実現するため、第三子以降の出産・育児・教育への傾斜支援な
ど、これまでの延長線上にない少子化対策を推進していく。
出産・子育て支援も社会保障の柱という認識を改めて共有すべきである。資源配分の
重点を高齢者から子どもへと大胆に移し、出産・子育て支援を倍増させるなどにより、
出生率の回復に成功した諸外国に倣って充実する10。出産・子育て支援の費用は、次世
代につけ回しをせず、現世代で負担していく。
(2) 子どものための政策推進と意識変革
少子化対策を出産・子育て支援よりも広がりのある切れ目のない支援に拡張していく
とともに、従来からの少子化対策の枠組みにとらわれることなく、様々な分野の政策を
子どものための政策という視点から見直し、子どものための政策は未来への投資と位置
付けて積極的に拡充を図っていく。
また、子どもを産み育てたい人の希望を阻害する要因につながっている人々の意識や
価値観(例えば、企業の有期契約労働者等のことを「非正規」社員と呼ぶ価値観、男性
であることが暗黙裡に有利に働く企業文化、制度はあっても育児休業等を取りづらい風
潮等)が変わっていくよう、危機意識の共有を広げる。
2.中長期的な経済成長と発展:経済を世界に開き、「創意工夫による新たな価値の創
造」により成長し続ける
中長期的課題と改革・変革の方向性

人口急減・超高齢社会においても、国民生活の豊かさを維持するために、経済
全体の成長を持続させていくことが必要である。今後労働力や資本投入の増加
に多くを望めない中、経済成長を持続させていくため、人が能力と個性を磨き、
伸び伸びと発揮し、繰り返しチャレンジできる、ダイナミックさのある経済社
会システムを構築していく。その結果、全要素生産性(TFP)11を高める。
9
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(夫婦調査)」による。
OECD の社会支出統計(Social Expenditure Database)では、2009 年度の家族関係社会支出(子育て支援として制
度に基づき行われる現金給付及び現物給付の合計)対 GDP 比は、スウェーデン 3.8%、フランス 3.2%、OECD 平均 2.3%
に対し、日本は 0.96%。なお、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2011 年度の家族関係社会支出対 GDP 比
は 1.35%。
11
生産性を示す指標の一つで、労働や資本等の生産要素が付加価値を産出する際の効率性を示す。経済成長のうち生
産要素の投入量の増加で説明できない部分(残差)として計測される。
10
7

経済を世界に開き、グローバル化、IT 化等の世界の潮流に適切に対応し、内外
の企業、投資家、高度人材等が、世界で一番活躍する国を目指していく。

成長・発展の基盤として、医療・介護等の社会保障制度と国・地方の財政の持
続可能性を確かなものとしていく。
(1) イノベーションが付加価値生産性向上の切り札
持続的な経済成長の鍵は、労働や資本の質的向上を含め、全要素生産性(TFP)
、すな
わち労働・資本が付加価値を生み出す際の生産性を高めていくことにある。イノベーシ
ョンは、付加価値生産性を高め持続的成長を実現するための最も強力な手段であり、
「創
意工夫による新たな価値の創造」と捉えることができる。科学的知見に基づいた技術の
革新だけでなく、新しい生産方法の開発や新たな販売網の構築、工場や営業、バックオ
フィスといった現場での工夫、企業のブランド戦略やマーケティング戦略など様々な領
域での対応により、またはそれらの組合せにより、広域な領域で起こすことができる。
その際、「モノづくり」から「モノ・コトづくり」12への発想の転換が重要である。
供給側の視点はもちろんのこと需要側の視点をも取り込んだ取組であることを忘れ
てはならない。製品やサービスのメリット、優位性等を消費者に効果的に認知させる取
組(ブランディング)や、思い切った IT 投資とその活用等を通じた潜在的な需要を開
拓するための取組(マーケティング)は、競争力のある商品を生み出し付加価値生産性
を向上させる。さらに、非価格競争力の向上を通じて交易条件の改善にもつながる。特
に、経済への波及効果の大きいサービス分野において、ブランディングやマーケティン
グを積極的かつ効果的に活用することで、消費者への訴求力を強めていく。
ブランド、ビジネススキル、知的財産権といった「知識資本」の役割は、製品やサー
ビスの知識集約化が進む中でますます大きくなっており、今後、「知識資本」への投資
水準を有形資本並みに高めていくとともに、多様性が尊重され、つながりが確保される
オープンで柔軟な制度への変革によって、連続したイノベーションを起こしていく。
(2) 産業・企業の「新陳代謝・若返り」促進
国民の関心の高い健康や生命に関連する医療・バイオ分野や、地球規模で高まる制約
への克服が求められるエネルギー・環境分野等において、今後、潜在需要の増大が見込
まれる。特定の産業振興ではなく、大胆な基盤的な制度改革等を通じて、ダイナミック
な産業構造の変革を起こし、産業・企業の「新陳代謝・若返り」を促す。
起業・廃業や投資家による企業経営の規律付け等により、産業・企業の「新陳代謝・
若返り」を図っていくため、金融機能を強化していく。アメリカと比べて規模が小さい
12
従来日本が得意としてきた「モノづくり(=高性能・高品質の製品開発)」から一歩先へ行き、サービスやシステ
ム、デザイン、ブランドストーリー等を駆使し、あらゆる角度から顧客により深く豊かな感動体験を提供すること。
8
新興市場やベンチャーキャピタルを活性化させるなど、金融サービス業の競争力向上を
通じて、成長が見込まれる企業への資金供給や事業の再構築の円滑化を促していく。さ
らに、日本は世界一の対外純資産を持っており、金融資産の運用効率の改善を図るとと
もに、日本市場の魅力を高めることにより、アジアの中で特色ある国際金融センターと
しての地位を確立していく。
(3) オープンな国づくり
新興国の成長等により、急速に拡大し、多様性を増す世界市場と向き合い、その成長・
発展を取り込む。大企業だけでなく中堅・中小企業等も、製造業だけでなくサービス業
も外へのグローバル化を進め、また、M&A を含めた対日投資促進等の内なるグローバル
化を同時に進める。
人口減少下において成長力を高めていくため、高度人材をはじめ外国人材について国
民的議論を進めつつ戦略的に受け入れ、外国人材との交流を成長・発展に活かしていく
13
。
グローバルな生産体制の構築、新興国の成長等により、世界経済における付加価値創
造の構造が大きく変化する中で、国際的な分業を戦略的に行い、グローバル・バリュー・
チェーン14において日本として生み出す付加価値を最大化していく。また、企業による
立地の選別が一段と厳しくなる中で、日本国内で付加価値と雇用が創出される環境を維
持・整備し、グローバル経済の中での広域的な貿易・投資圏の形成において枢要な役割
を果たしていく。
(4) 社会保障制度と財政の持続可能性の確保
高齢化の進行により「肩車社会」15が到来し、社会的な格差は拡大し、社会保障制度
と財政の持続可能性の確保とそれを支える経済成長はますます重要となる。
社会保障制度と財政の持続可能性を確保するためには、社会保障に係る給付と負担の
不均衡を改善する必要があり、まずは医療・介護費の増加に歯止めをかけることが課題
である。医療・介護の費用と効果に対する国民の意識を高めていくとともに、IT の活
用や技術革新によって費用の抑制を図る。また、高額医療の原因となる疾病を中心に、
生活習慣の改善などの予防の取組を充実させていく。さらに、大都市では医療・介護サ
ービスが不足し、地方では過剰になるなど、サービスの地域的偏在の是正を含め、人材・
技術面等での効率的・効果的なサービス提供体制を構築していく。
債務残高が GDP 比 200%を超えるなど極めて厳しい財政状況が続き、長期的には経常
収支が基調として赤字となる可能性もある中で、早期に財政収支を改善した上で債務残
13
外国人一般について定住化を進める等の移民政策ではない。
製造業などにおける生産工程が国内外に分散していく国際的な分業体制のことであり、付加価値の形成過程が国境
を越えてつながっていく状況を捉えた概念である。
15
高齢者とそれを支える現役世代の人口が 1:1 に近づいた社会をいう。
14
9
高対 GDP 比を引下げる等の明確な目標の下で、着実に財政健全化を推進し、安定した経
済活動と国民生活の基盤を作っていく。
3.人の活躍:年齢、性別にかかわらず能力発揮
中長期的課題と改革・変革の方向性
 男女の働き方を改め、出産・育児と仕事の両立がしやすい環境をつくることで、
男女が共に持てる能力を発揮することができる社会を構築するとともに、女性
の労働力率のM字カーブを解消していく。
 人生のあらゆる場面で、何度でもチャレンジできる社会をつくっていく。また、
元気な高齢者が経験や能力を活かし、仕事や社会活動を通して活躍できる社会
を実現していく。
 子どもの潜在能力を開花させ、未来のプレイヤーになれる人材を育成していく。
(1) 性別、正規・非正規:能力や意欲に応じた活躍の機会充実
長時間労働を前提とした正社員と非正規社員とに二極化した労働市場を背景に、人の
力を十分引き出すことができず、結婚・育児と就労の両立も難しい状況が依然として強
く残っている。その結果、20 代後半から 30 代にかけて女性の労働力率が低くなるM字
カーブの傾向が見られる。このため、男女の働き方を巡る制度・慣行や人々の-特に男
性の-意識、ワークライフバランスを抜本的に変革し、能力や意欲に応じて労働参加と
出産・育児の双方の実現を促す仕組みを構築していく。
また、企業や行政機関における少子化対策やワークライフバランス改善に向けた取組
の見える化を進めることによって、企業や行政機関の文化や人々の意識を変えていく。
(2) 高齢者:健康長寿を社会の活力に
平均寿命や健康寿命の延伸が見込まれる中で16、増加する元気な高齢者が経験、能力
を活かして活躍できる社会を実現していく。これまでは 15 歳以上から 65 歳未満までを
生産年齢人口と捉えてきたが、過去 10 年余りの期間で高齢者の身体能力は5歳程度若
返っていることを踏まえれば、70 歳までを働く人(「新生産年齢人口」)と捉え直し、
仕事や社会活動に参加する機会を充実させていく。その際、あらゆる世代の人が意欲と
能力に合わせてキャリア形成をし、生きがいや誇りを感じられる職業を選択できるよう
にしていく。
また、高齢者が豊かな経験や知識を活かしながら過ごすことができるよう、高齢者と
子ども・若者との交流を含め、高齢者が地域社会と関わりを持ち、孤立せずに暮らして
いけるためのサポートを充実させていく。
16
高齢者の体力、運動能力は、過去 15 年間に概ね5歳下の年齢階層並みに向上している(文部科学省「体力・運動
能力調査」による)。
10
(3) 若者、子ども:未来を支えるプレイヤーの育成
すべての子どもに幼少時から自発性、創造性を伸ばす教育や、学びの選択肢や学び直
しの機会を増やし、生涯を通じて能力を発揮できる人材を育成していく。すなわち、親
の経済力とは独立した形で、子どもの様々な能力を伸ばす多様な機会を充実させ、格差
の再生産を回避していく。加えて、起業・転職の不成功、失職など一旦失敗するとやり
直す道を探すことが容易でない現状を改善し、複層的、複線的に多様な再チャレンジの
機会を確保し、一人ひとりが意欲、能力に応じて活躍していくことができる環境を整備
していく。
未来の技術革新や産業構造の変化によって、人々の働き方や求められる能力も変化し、
新しいタイプの仕事も次々と生まれてくる。そうした中で、新しい技術や産業に適応し
つつ付加価値を生み出し、未来を支える人材(「プレイヤー」)を育てていくことが重要
である。海外留学などに積極的に挑戦でき、その結果が社会で適切に評価されるように
するなど、グローバル・プレイヤーとして活躍できる人材を育てる仕組みを構築してい
く。
4.地域の未来:個性を活かした地域戦略と集約・活性化
中長期的な課題と改革・変革の方向性

4分の1以上の自治体の「消滅可能性」が危惧されるとともに、若者を中心に
地方圏から東京圏への人口流出が止まらず、地域経済の悪循環をもたらしてい
る。他方、東京圏への一極集中は、災害に対する脆弱さや高コスト構造を招き、
グローバル都市としての競争力低下が懸念される。

地域住民や自治体、地域で活躍する多様な主体は、地域の再生に向けて、個性
を活かした地域戦略と「集約・活性化」を「新しい絆」の下に同時に進めるこ
とが必要である。国は明確な地域の展望を示しながら、地域再生のための柔軟
で効果的な制度の枠組みを構築する。

東京圏については、これ以上の人口集中を抑制しつつ、東京のグローバル都市
としての競争力を強化していく。
(1) 個性を活かした地域戦略を推進し、働く場所をつくる
地域に働く場所を創出するため、それぞれの地域独自の個性を活かせる「魅力ある地
域づくり」に向け、選択と資源の集中投入を伴う、地方を元気にする戦略を推進してい
く。そこで、地域にある資源を新しい発想で利活用し、ICT の活用や「ヨソモノ」17 を
含む多様な人材や主体との連携・交流による広域ネットワークの形成によるイノベーシ
ョン創出(リノベーション、リエンジニアリング等)を促す。こうした取組により、地
域の経済が円滑に循環し、地域社会の維持、持続的な発展が可能となる。
17
他地域から来て企画や実施を担う人材。
11
例えば、農林水産業では、U・I ターンを含めた人材による健康、ICT 等の多様な分野
とのマッチングが期待できる。観光・交流の分野では、2020 年の東京オリンピック・
パラリンピックを契機とする広域交流が見込まれ、人流・物流の受け皿づくり、地域が
海外とオープンに直接つながる取組等を進めていく。医療等の分野では、国際的なイノ
ベーション拠点の整備等による先進的モデルを提示していく。
東京一極集中については、競争力のある本社機能等が立地する地方の戦略的拠点都市
を形成し、地方から東京への人口流出を抑えるとともに、地方での医療、介護の受け皿
整備、職業経験が豊富な人材の地方への「移住」の支援等を通じて、東京から地方への
人の流れを作る。東京圏では国際競争力のある知的創造拠点を形成するため、外国人材
が働きやすく、働く男女が子どもを産み育てやすい環境整備、都市再生等を推進する。
東日本大震災からの真の復興を果たすために、本報告における提案実現や課題解決の
モデルを東北において実践する。「新しい東北」の創造に向けた取組は、中長期の地域
づくりの検討にも大きな方向性を与えるほか、高齢者、若者、子ども等の活躍を促す先
進的な実践例にもなっており、今後全国における地域づくりに役立てていく。また、東
日本大震災の教訓を踏まえ、生産力向上を核とする食料安全保障の確保や大規模災害等
のリスクに強い地域づくりに取り組んでいく。
(2) 地域の再生のための「集約・活性化」
地域の再生に向けて、郊外部等からの縮小・撤退等により市街地を中心部に集約し、
行政サービスの集中と経済活動の活性化を図る「集約・活性化」が求められる。その際
には、自治体の首長、地域住民等による危機意識の共有が重要である。公共交通の活用
を含め、コンパクトシティ18の取組や、地方中枢都市圏19の形成と地域間の機能分担・連
携等に向けて、早期から将来の都市構造等を予測し、転居コストへの対応や住民への行
政サービスのあり方を検討し、住宅・まちづくりの戦略を推進していく。
集約・活性化の際には、住民の居住に関する選択をどのように施策に反映させていく
かの判断が重要であり、客観的指標や手続・ルール等の情報を住民と共有し、十分な討
議による合意形成と政治の決断、リーダーシップによる施策の実現が求められる。
集約・活性化に際して、例えば公民館、図書館等の公的資産20については、周辺から
中心部への統合・再編や長寿命化を推進し、PPP/PFI も活用し効率的なマネジメント21を
進めていく。また、都市中心部の空き家や遊休地等については、「所有から利用」の視
点に立ち、定期借地権や資産流動化の仕組みを活用した有効活用を促進していく。
18
都市の中心部に居住と各種機能を集約させた人口集積が高密度なまちを形成すること。中心部とは、例えば合併前
の自治体の拠点など複数の拠点も対象となる。
19
地方圏における県庁所在都市や中核的な都市と社会的、経済的に一体性を有する地域。
20
本報告では、国、地方自治体等の公的主体が行政目的等のために保有する土地、建物、施設、設備等の固定資産を
対象とする。
21
ハード面のアセット・マネージメントとソフト面を含むファシリティ・マネジメントの両面での効率化。
12
(3) 「新しい絆」による地域づくり
NPO の取組やソーシャルビジネス等、「新しい絆」による人と人との絆を活かした地
域づくりが、地域における循環型社会の形成を推進していくなど、ダイナミックな地域
の変革や成長につながっていくことが期待される。このため、グローカルな人材22や「ヨ
ソモノ」を含む地域づくりの担い手を地域のリーダーとして形成し、活かしていく。
また、こうした地域づくりには、公的財源による対応だけでは限界があり、広く民間
からの社会投資を促していく必要がある。このため、地域の資金が地域の取組に活用さ
れるように、ソーシャル・インパクト・ボンド23も参考として、地域における資金循環
を支える社会投資市場を形成していく。
5.信頼・規範:安全・安心の基盤確保
中長期的課題と改革・変革の方向性

成長・発展の基盤として、社会保障制度と財政の持続可能性を確かなものとし
ていく。食料安全保障の確保に努める(再掲)。

日本の風土に育まれた伝統、文化等を受け継ぎ、世界に発信していく。また、
世界の中で責任と役割を果たしていくため、世界における新しいルール作りに
リーダーシップを発揮し、世界から信頼される国を目指す。
(1) 日本、日本人らしさの尊重
経済を世界に開き、グローバルな潮流に乗っていく中でも、歴史と風土に育まれた固
有の伝統、文化や美意識、価値観を消滅させることなく、それらを継承・発展させ、ま
た、世界から評価される価値観を発信するとともに、日本の美意識を活かし、日本ブラ
ンドを確立していく。
また、他者とのつながり・思いやりや地域での自助・共助の取組によりもたらされる
信頼、規範、あるいはネットワークといったソーシャルキャピタル24を蓄積し、安全・
安心な社会を保ち続ける。
(2) 世界の中で責任と役割を担う国家であり続ける
世界の中で存在感を保ち、国際貢献や国際ルールづくりへの参加などにより、世界に
発信し続ける。これによって、世界に対し責任と役割を果たすとともに、わが国にとっ
てもその恩恵が及ぶようにしていく。
22
グローバルな視点で物事を考える能力を兼ね備えつつ、地域経済・社会(ローカル)の持続的な発展に参画する人
材。
23
民間投資家からの出資を元に従来行政が担ってきた社会政策を実施する制度。英国で 2010 年に導入。
24
人々の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることのできる、「信頼」「規範」「ネットワーク」
といった社会関係資本。
13
おわりに
本委員会は、ワーキング・グループを含めて、計 16 回にわたって真摯な議論を重ね
た上で、「人口急減・超高齢社会」という未来が間近に近づきつつあること、その未来
を変えるためには、若い世代とさらに次の世代のために集中した改革・変革が必要であ
ることについて共通認識を得るに至った。
本報告で示した未来への選択のための改革・変革の方向性について、それぞれ具体化
することはいずれも簡単な課題ではない。危機意識の共有によって、様々なレベルにお
いて具体化に向けた動きが生まれることを期待するとともに、本委員会としては、今後、
人の活躍、地域の未来、成長・発展に係る重点課題と中長期的な政策枠組みの在り方に
ついて、掘り下げた議論を進めていく。本年内目途に最終報告を取りまとめることとし
たい。
14
未来への選択
<参考図表編>
【目次】
○人口関係・・・・・・・・・・・・・・・1~3
○成長・発展関係・・・・・・・・・・・・4~12
○人の活躍関係・・・・・・・・・・・・・13~22
○地域の未来関係・・・・・・・・・・・・23~27
○開催実績・・・・・・・・・・・・・・・・・28
平成26年5月
「選択する未来」委員会
1.総人口の将来推計
 現状が続けば、2060年には人口が約8,700万人と現在の3分の2の規模まで減少。
 2030年までに合計特殊出生率が2.07に回復する場合、50年後に1億人程度、さらにその一世代後に
は微増に転じる。
(万人)
14,000
長期的な人口(総人口)の推移と将来推計
2013年
12,730万人
(高齢化率:25.1%)
出生率回復(2.07)ケース
2060年 10,545万人
(人口減少率(対2013年比)17.2%)
(高齢化率:33.0%)
12,000
総人口
出生率回復(2.07)ケース
2110年 9,661万人
(高齢化率:26.6%)
10,000
8,674万人
人口減少が止まる
(2090年代半ば)
(人口減少率(対2013年比)31.9%)
(高齢化率:39.9%)
8,000
6,000
4,286万人
社人研
(高齢化率:41.3%)
(国立社会保障・人口問題研究所)
中位推計
4,000
2,000
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
2100
(備考)1.1990年から2013年までの実績は、総務省「国勢調査報告」「人口推計年報」、厚生労働省「人口動態統計」をもとに作成。
2.社人研中位推計は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」をもとに作成。合計特殊出生率は、2014年まで概ね1.39で推移し、その後、
2024年までに1.33に低下し、その後概ね1.35で推移。
3.出生率回復ケースは、2013年の男女年齢別人口を基準人口とし、2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇し、それ以降同水準が維持され、生残率は2013年以降社人研中位推計の
仮定値(2060年までに平均寿命が男性84.19年、女性90.93年に上昇)を基に推計。
2110
(年)
1
2.20~70歳人口の将来推計
 現状が続けば、2060年には生産年齢人口が約4,400万人まで減少し、その後も同ペースで減少が続
く。
 2030年までに合計特殊出生率が2.07に回復し、20~70歳を「新生産年齢人口」とする場合、2060年に
「新生産年齢人口」は約5,600万人規模となり、その後は同規模で推移。
(万人)
10,000
長期的な人口(「新生産年齢人口」・生産年齢人口)の推移と将来推計
20~70歳人口
(「新生産年齢人口」)
2013年
8,329万人
9,000
8,000
生産年齢人口
(15~64歳)
7,000
出生率回復(2.07)ケース
2060年 5,555万人
2013年
2013年
7,901万人
7,901万人
6,000
5,000
社人研
中位推計
出生率回復(2.07)ケース
2110年 5,461万人
4,777万人
4,418万人
4,000
3,000
2,333万人
2,126万人
2,000
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
2100
(備考)1.1990年から2013年までの実績は、総務省「国勢調査報告」「人口推計年報」、厚生労働省「人口動態統計」をもとに作成。
2.社人研中位推計は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」をもとに作成。合計特殊出生率は、2014年まで概ね1.39で推移し、その後、
2024年までに1.33に低下し、その後概ね1.35で推移。
3.出生率回復ケースは、2013年の男女年齢別人口を基準人口とし、2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇し、それ以降同水準が維持され、生残率は2013年以降社人研中位推計の
仮定値(2060年までに平均寿命が男性84.19年、女性90.93年に上昇)を基に推計。
2110
(年)
2
3.2060年までの人口構造の変化
 日本の人口構造の変化を見ると、現在の現役世代は59.1%、高齢者は23.0%。
 現状のままであれば、2060年になっても人口構成の不均衡が続く。
 出生率が回復した場合(2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇)、2060年には、20歳未満20.7%、20~64歳
46.3%、65歳以上33.0%となり、年齢階層数とほぼ等しくなって不均衡はほぼ解消。
2060年
2030年
75歳~
2269 18.7%
100
出生率回復
ケース
65~74歳
1,529 11.9%
70
65~74歳
1,413 11.7%
70
90
80
80
80
75歳~
1,419 11.1%
20~64歳
6,245 51.6%
50
40
30
30
20
20
~19歳
2,176 18.0%
0
500
2030年
1000
1500
0
2000
10
現状継続
0
500
1000
1500
2000
2500
(万人)
2000
2500 (万人)
75歳~
2,336 26.9%
100
80
65~74歳
1,407 12.1%
60
65~74歳
1,128 13.0%
70
60
20~64歳
6,278 53.8%
50
0
1000
1500
2060年
90
70
~19歳
2,293 17.9%
500
(万人)
80
20
0
2500
90
30
~19歳
2,181 20.7%
10
75歳~
2278 19.5%
100
40
20~64歳
4,881 46.3%
50
40
0
20~64歳
7,564 59.1%
50
65~74歳
1,132 10.7%
70
60
60
10
60
75歳~
2,351 22.3%
90
90
2010年
100
100
年齢階層別
割合と年齢
階層数がほ
ぼ一致し、
不均衡解消
50
40
40
30
30
20~64歳
4,105 47.3%
20
20
~19歳
1,698 14.6%
10
~19歳
1,104 12.7%
10
0
0
0
500
1000
1500
2000
2500 (万人)
0
500
1000
1500
2000
(備考)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」を基に作成。出生率回復ケースは、2013年の男女年齢別人口を基準人口とし、2030年に合計特殊
出生率が2.07まで上昇し、それ以降同水準が維持され、生残率は2013年以降社人研中位推計の仮定値(2060年までに平均寿命が男性84.19年、女性90.93年に上昇)を基に推計。
2500 (万人)
3
4.成長・発展の未来像
 人口減少や、貯蓄率、技術進歩率の低下等によって、現状のままでは日本経済の成長・発展力が弱
まることは不可避。
 マクロ的には、①生産性の上昇、②労働参加率の上昇、③貯蓄から投資の流れや、対内投資の増
加等が望まれる。特に、生産性をどこまで高められるかがポイント。
⇒イノベーションによるミクロレベルでの付加価値生産性の向上
⇒大胆な制度改革によるダイナミックな産業構造の変革
⇒オープンな国づくりによる世界経済の成長力の取り組み
○現状のまま何もしない場合の未来像
○選択の後の未来像
生産性
生産性
・イノベーション
・ブランディング、
マーケティング
・知識資本
オープン
ダイナミズム
生産性の上昇
技術進歩の停滞
生産性の低下
・成長産業への投資
・金融機能の強化
・対日投資の推進
貯蓄率の低下
人口高齢化
労働力人口の減少
資本蓄積
資本
資本
労働参加率上昇
人口減少
労働
労働
・若者、女性、高齢者をはじめ
とする能力、意欲に応じた
労働参加
4
5.労働力人口の推計
 労働力人口は、 出生率が回復し(2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇)、かつ女性がスウェーデン並みに働
き、高齢者が現在よりも5年長く働いたとしても、 2060年には5,500万人程度まで減少。
労働力人口の推計
(万人)
7,000
6,577
年平均
減少率:▲0.3%
減少数:▲17万人
経済成長・労働参加ケース
6,285
年平均
減少率:▲0.4%
減少数:▲25万人
出生率回復
ケース
6,000
社人研中位
推計ケース
年平均
減少率:▲0.9%
減少数:▲53万人
5,000
5,522
4,792
◆30~49歳の女性の労働力率を
スウェーデン並み(90%)
◆60歳以上の男女の労働力率を
5歳ずつ繰り上げ
4,000
年平均
減少率:▲1.3%
減少数:▲63万人
6,577 3,000
5,683 現状継続
ケース
4,453 2,000
3,795 1,000
0
2013
2013
2030
2030
2060
2060
(年)
(備考)総務省「労働力調査」、厚生労働省雇用政策研究会「労働力需給推計」(2014)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」、スウェーデン統計局「労働調査」をもとに作成。
(注)1.労働力人口は、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの。
2.現状継続ケースは、2012年の性・年齢階級別の労働力率を固定して推計したもの(厚生労働省雇用政策研究会推計)。
経済成長・労働参加ケースは、女性、高齢者や若年層の労働市場への参加が進むとして推計したもの(厚生労働省雇用政策研究会推計) 。例えば、30~49歳の女性の労働力率は、
2012年71%→2030年85%に上昇し、M字カーブは解消すると仮定している。
3.社人研中位推計ケースは、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が推計した2060年の性・年齢別人口に労働力率を乗じたもの。
出生率回復ケースは、2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇し、それ以降同水準が維持され、生残率は2013年以降社人研中位推計の仮定値(2060年までに平均寿命が男性84.19年、
女性90.93年に上昇)を基に推計した人口に労働力率を乗じたもの。
4.2060年の労働力人口では、上記「1.」の厚生労働省雇用政策研究会推計に加え、女性・高齢者の労働参加が更に進むとし、30~49歳の女性の労働力率を
スウェーデン並み(2030年85%→2060年90%)、60歳以上の労働力率を5歳ずつ繰り上げて推計している。
5
6.潜在成長率の推移~労働、資本投入寄与度
 労働投入の寄与度は、出生率が回復し、かつ女性・高齢者の労働参加が図られ、高齢者の労働時
間が伸びる場合であっても、マイナスの傾向が続く見込み。
 資本投入の寄与度は、過去と比べ小幅にとどまる。
 潜在成長率を高めるためには、TFP(全要素生産性)の伸びが重要。
日本の潜在成長率の推移
(年平均成長率、%)
3.0
(年平均成長率、%)
5.0
出生率が回復し、
女性・高齢者の労働参加が図られ、
高齢者の労働時間が伸びるケース
4.4 資本投入寄与度
4.0
1.0
女性・高齢者の労働参加が図られ、
高齢者の労働時間が伸びるケース
経済成長・労働参加ケース
1.8 0.0
TFP寄与度
3.0
‐0.1 1.6 ‐0.3 ‐0.3 ‐0.5 2.0
‐0.6 ‐0.6 ‐1.0
‐0.9 現状継続ケース
潜在GDP成長率
労 働 投 入 寄 与 度
‐2.0
2.0
1.4 1.0
2011‐2020
0.8 2021‐2030
2031‐2060
0.5
0.6
‐0.3 ‐0.3 (年)
(年平均成長率、%)
3.0
0.5 0.6 2.0
2.0
0.0
実質GDPと設備投資が、いずれも2%成長するケース
実質GDPと設備投資が、いずれも1%成長するケース
‐1.0
1.0
労働投入寄与度
0.4 0.3 0.6 0.5 0.4 0.3 0.4 0.5 0.3 0.0
‐2.0
実質GDPが1%成長、設備投資が1.5 %成長するケ ース
1981‐1990
1991‐2000
2001‐2010
(年)
‐1.0
資
本
投
入
寄
与
度
‐2.0
2011‐2020
2021‐2030
2031‐2060
(年)
(備考)内閣府「国民経済計算」「民間企業資本ストック」、総務省「労働力調査」、経済産業省「鉱工業指数」「第3次産業活動指数」、厚生労働省「毎月勤労統計」、厚生労働省雇用政策研究会「労働力需給推計」(2014)、
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」等をもとに作成。
(注) 1.現状継続ケースの労働力人口は、2012年の労働力率、労働時間がその後も一定のケース。
2.経済成長・労働参加ケースの2020年、2030年の労働力人口は、厚生労働省雇用政策研究会推計を使用。労働時間は2012年で一定。
3.女性・高齢者の労働参加が図られ、高齢者の労働時間が伸びるケースの2060年の労働力人口は、2030年に比べ更に女性・高齢者の労働参加が進み(30~49歳の女性の労働力率をスウェーデン並み、
60歳以上の労働力率を5歳ずつ繰り上げ)、労働時間は60歳以上の男女の労働時間を5歳ずつ繰り上げたもの。
4.出生率が回復するケースの2060年の労働力率は、上記「3.」のケースと同様で、人口は2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇し、それ以降同水準が維持され、生残率は2013年以降社人研中位推計の
仮定値(2060年までに平均寿命が男性84.19年、女性90.93年に上昇)を基に推計したもの。
6
7.生産性の国際比較
 労働生産性(就業者数ベース)を国際比較すると、日米格差は近年大きく開き、主要先進諸国からも
引き離されつつある。
 米国は1980年代から、英国、カナダ、スウェーデンは1990年代から、IT革命や労働市場改革等によ
り、労働生産性上昇率が上昇。
各国の労働生産性(名目、就業者1人当たり)
5.0
(ドル)
各国の労働生産性伸び率(実質、5ヶ年後方移動平均)
(%)
120000
米国
4.0
フランス
100000
ドイツ
日本
米国
ドイツ
英国
フランス
カナダ
スウェーデン
スウェーデン
生産性上昇率
の高まり
3.0
スウェーデン
80000
カナダ
2.0
英国
日本
1.0
韓国
日本
日本
▲ 1.0
1970
1980
1990
2000
2010
(年)
(備考)
1.OECD“Economic Outlook94”、 “Purchasing Power Parities Statistics” 等による。
2.各年基準購買力平価(マクロベース)で換算した名目GDP(ドルベース)を就業者数で除した生産性。
2011
2009
2007
2005
2003
2001
1997
1995
1993
1991
1989
1987
1985
1983
各国の労働生産性伸び率(実質、年代別)
20000
0
1981
1979
1975
1977
0.0
40000
1999
60000
(年)
(%)
日本
米国
英国
フランス
ドイツ
カナダ
スウェーデ
ン
韓国
1970年代
3.71
1.04
1.83
3.09
2.60
1.30
1.01
5.24
1980年代
3.69
1.66
2.02
1.98
1.31
0.94
1.47
6.74
1990年代以降
(~2007年)
1.14
1.84
2.53
1.15
1.43
1.32
2.58
4.18
7
8.日本、ドイツの生産性比較
 日本とドイツは、総人口・生産年齢人口ともに減少。また、潜在成長率における労働投入の寄与はマ
イナス。一方で、TFP及び資本投資の成長への寄与が、ドイツは日本と比較して大きい。
 ドイツの経済成長の背景としては、シュレーダー政権下の労働市場改革による労働市場参加の促
進、サービス業における積極的なICT資本投資、ビジネスサービスによる付加価値の創出等がある。
主要データ
総人口
日本
ドイツ
ピーク
2008年
(12,808万人)
2003年
(8,253万人)
減少率
▲0.1%
▲0.1%
1.41
1.36※
24.1%
21.1%
ピーク
1998年
(6,793万人)
1999年
(5,596万人)
減少率
▲0.5%
▲0.3%
合計特殊出生率※
高齢化率※
生産年齢人口
※2012年。ドイツの合計特殊出生率は2011年
潜在成長率
(前年比寄与度、%)
5.0
4.6 日本
TFP寄与度
4.1 TFP寄与度
4.0
4.0
3.0
ドイツ
(前年比寄与度、%)
5.0
1.7 2.3 資本投入寄与度
2.3 0.9 2.0
1.7 2.0
0.9 0.1 2.0 1.0
1.7 0.7 0.0
1.0 0.4 ‐0.3 労働投入寄与度
‐0.2 0.9 0.7 0.5 1.3 1.0 1.0
0.9 0.0
1991‐1995
(備考)EU KLEMS、各国統計より作成。
1996‐2000
1.5 1.9 2001‐2007 (年)
1.0 2.0 0.7 1.2 1.3 1.3 0.5 ‐0.4 0.0 1.7 1.2 0.8 ‐0.2 労働投入寄与度
‐1.0
1986‐1990
資本投入寄与度
‐0.7 ‐0.2 ‐1.0
1981‐1985
3.2 3.0
1981‐1985
1986‐1990
1991‐1995
1996‐2000
2001‐2007 (年)
8
9.日本、ドイツの産業別付加価値額
 バリュー・チェーンが複雑化し、サービスも含めた国際的な分業体制が構築される中、輸入した中間
財の価値が含まれる輸出額ではなく、国内で生じた付加価値を算出した付加価値輸出額で見ること
で、輸出において国内のどの産業部門で付加価値を産出したか把握することが可能。
 OECDが算出した付加価値輸出額によると、ドイツはビジネスサービスで最も付加価値を生んでい
る。他方、日本は流通段階での付加価値が大きい。
日本、ドイツの産業別輸出額
(億ドル)
ビジネスサービス
(注)のシェアは6%
25
ドイツ
20
15
付加価値輸出額※のイメージ
A国
輸出額
(100)
日本
付加
価値
(100)
10
5
B国
0
輸出額
(110)
(億ドル)
日本、ドイツの産業別付加価値輸出額
25
日本の卸売、運輸等は輸出額に
ドイツ 比べて付加価値輸出額が大きい
20
15
10
5
0
日本
日独が逆転
ビジネスサー
ビス(注)の
シェアは23%
付加
価値
(10)
C国
OECD (2013)を基に作成。
※Global Value Chain(GVC)により中間財貿易が
拡大し、世界の総貿易額の計算において、付加
価値がダブルカウントされてしまっている。こうし
た問題に対処するため、世界の貿易において
各国が算出した付加価値を把握するべく、OEC
DとWTOが共同で付加価値貿易額のデータ
ベースを構築。
出典:OECD‐WTO‐TiVAより内閣府において作成。
注:ビジネスサービスとは、マーケティング、コンサルティング、IT関係サービス、広告、法律、会計、研究開発関連サービス等を指す。
9
10.知識資本投資(無形資産投資)の現状・国際比較
 知識資本の内訳をみると、研究開発投資等の「革新的資産」の割合が高い反面、ブランド力、マーケ
ティング力等の「経済的競争能力」への投資の割合が低い。
無形資産投資(GDP比、実質)
12%
100%
10%
80%
経済的競争能力
8%
無形資産投資の構成比(2005年)
経済的競争能力
60%
6%
革新的資産
40%
革新的資産
4%
20%
2%
情報化資産
情報化資産
0%
80
85
90
95
2000
05 07
(年)
日
本
E
U
1
5
北
欧
諸
国
英
国
等
大
陸
欧
州
地
中
国
海
諸
ア
メ
リ
カ
ー
0%
オ
ラ
リ ス
ア ト
・ブランド資産、マーケティング力
経済的
・企業固有の人的資本
競争能力
(備考)平成23年度経済財政白書の分析に基づく
・組織構造
情報化資産、革新的資産、経済的競争能力は、下記の方法にもとづき推計
・自然科学分野の研究開発
①情報化資産・・・受注ソフトウェアはソフトウェア投資額、パッケージ・ソフトウェアはソフトウェア業の売上高、
自社開発ソフトウェアは経済センサスより算出した自社開発ソフトウェア比率、データベースは情報提供
・資源開発権
サービス業の売上高より各々推計
・著作権及びライセンス
②革新的資産・・・自然科学分野の研究開発は、科学技術研究調査、資源開発権は、鉱物探査費及び探鉱投資
革新的
額、著作権及びライセンスは、各産業が購入した出版・印刷業及びその他の映像・音声・文字情報製作作業の名
資産 ・他の製品開発、デザイン、自然科学分野以
目産出額、デザインはデザイン業の売上高、ディスプレイはディスプレイ業の売上高、機械設計は機械設計業の売
外の研究開発
(デザイン、ディスプレイ、機械設計、
建築設計、金融業における製品開発)
・受注ソフトウェア
情報化 ・パッケージ・ソフトウェア
資産 ・自社開発ソフトウェア
・データベース
上高、建築設計は土木建築サービスの名目産出量、金融業における製品開発は金融業・保険業の名目中間
投入の20%より各々推計
③経済的競争能力・・・ブランド資産は広告費と市場調査(広告費は他の産業が広告業から購入した名目算出額の
60%、市場調査は情報サービス業の名目産出量に経済センサスより算出した情報提供サービス業の割合を
乗じた値)、企業固有の人的資本は、就労条件総合調査における常用労働者の平均教育訓練費、組織構造は、
対事業所サービス産業の名目産出量に、経済センサスより算出した経営管理・コンサルタント業の割合を乗じ
各々推計
10
11.経済活動別GDPの国際比較
 日本の経済活動別のGDPの構成比は、この10年間ほとんど変化が生じていない。諸外国では、金
融業、医療・福祉サービス業、教育業などが大きく伸長。
経済活動別のGDP
鉱業
1980年
1970年
1%
10%
6%
7%
7%
日本
15%
8%
5%
15%
38%
サービス
産業計
47%
9%
16%
2% 8%
3%
12% 3%
米国
25%
17%
4%
5%
7%
7%
20%
7% 18%
英国
9%
15%
13%
サービス産業計
57%
5%
7%
8% 14%
17%
スウェー
14%
デン
26%
3%
10% 12% 7%
サービス産業計
57%
3%
24
%
15%
10%
8%
12%
25%
31%
4%
7% 2%
11%
19%
14%
22%
6%
9%
21%
4%
6%
12%
5%
7%
15%
サービス産業計
67%
22%
サービス産業計
64%
4%
19%
9%
16%
18%
4% サービス産業計
66%
25%
7%
12%
(備考)日本:内閣府「国民経済計算」により作成。なお、1990年以前は、情報通信業と運輸業合わせて運輸・通信業という括りとなる。
諸外国:国際連合“National Accounts Main Aggregates Database”により作成。
6%
電気・ガス・水道業
3%
卸売・小売業
13%
16%
金融・保険業
6%
16
%
6%
1%
75%
17%
2%
産業計
79%
15%
運輸・通信
業等
卸売・小売
6% 業等
10%
製造業 5%
その他
建設業
53%
17%
鉱業、電気・
ガス・水道業
等
卸売・小売業等
6% サービス
産業計
78%
8%
運輸・通信業等
2%
21%
3%
4%
11%
金融業・
不動産業
等 33%
農業等 1%
15%
5% サービス産業計
6%
73%
27%
5%
19%
建設業
6%
3%
9%
4%
製造業
鉱業、電気・
教育、行政サービス
ガス・水道業
農業等
等(含、国防)
等
7%1%
8% 1% 12%
4%
教育、医
16%
製造業
療、その他
15%
4%
3%
サービス等
建設業
サービス
17%
5% サービス産業計
6%
サービス産業計
59%
サービス業
サービス
情報通信業
産業計
6%
66%
運輸業
5%
18%
サービス
産業計
71%
1% 0%
22%
不動産業
15%
11%
5% サービス産業計
4%
70%
5%
7%
4%
サービス産業計
64%
22%
17%
5%
21%
24%
6%
3%
7% 2%
10%
16%
7%
5%
14%
20%
8%2%
19%
13%
21%
サービス産業計
63%
19%
3%
28%
10%
3%
11%
8%
サービス
産業計
58%
28%
7%
10%
農林水産業
2%
0%
17%
サービス 7%
産業計
56%
2010年
2000年
3%0%
0%
4%
30%
6%
8%
1990年
11%
サービス産業計
70%
48%
17%
5%
5%
10%
サービス
産業計
71%
13%
11
12.マクロ経済への影響(部門別貯蓄・投資差額の見通し)
 高齢化の進行に伴って、家計の貯蓄超過は縮小傾向。
 財政赤字が拡大する場合、国内の資金不足を補うためには、海外からの資金流入が必要。
国内総生産 = 消費 + 投資 + 政府支出 + 貿易収支(輸出 – 輸入)
(国内総生産 – 税 + 海外所得受取 – 消費 – 投資) + (税 – 政府支出) = (貿易収支 + 海外所得受取)
国内民間経済における純貯蓄
(名目GDP比、%)
財政収支
経常収支
部門別貯蓄投資差額(ISバランス)の推移
10
企業
8
6
4
家計
2
経常収支
0
-2
現状放置ケース
-4
一般政府
-6
-8
-10
2000
02
04
06
08
10
12
(備考)内閣府「国民経済計算年報」をもとに作成。
(年度)
12
13.「人の活躍」に関する現状マップ(イメージ図)
戦後高度成長期を経て培われてきた経済社会モデルに最適化した人材育成と労働市場
働く環境
教育環境
◆人口減少・高齢化の下で求められる人材像や
働き方の変化
企業内部
◆少子化を始めとした社会変化
高齢者の働き方
社会のしくみ
正社員(無限定雇用)
就職前教育
◆定年の設定とそれ
を境にした働く環
境の激変
◆新卒一括採用(ポテンシャル採用)
◆自社育成主義
◆チーム力の重視
◆職務を明確にしない働き方
◆年功を重視した処遇
◆安定雇用・長時間労働・生計に応じた賃金
・OJT中心の訓練
◆全国的な水準の維持向上に重点
◆画一性が重視される教育
◆科学技術の進展など、未来を展望した長
期的視野が不十分
◆家計を圧迫する教育費負担
◆教育と職業の不連続の傾向
(学習内容が労働市場で評価されない)
高齢者の生活
◆高齢者の能力活用
の場の不足
◆高齢者の割合の増加
◆疾病構造は生活習慣病中
心に
◆団塊の世代の高齢化に伴
う介護ニーズの急増
◆国民皆保険の下での医療
アクセスの容易さ
◆技能継承者の不足
◆非正規:低賃金・不安定雇用・OJTの機会が少ない
◆高齢者の「居場所」や
「生きがい」の問題
◆国際的にみると若者中心に低失業率
◆外部労働市場(専門職・中途採用)が未発達
◆外部労働市場での能力評価軸がはっきりしない
◆ニートの高止まり・高年齢化
◆就労をサポートする社会資源が不足
就職後教育
◆学卒後の教育訓練が企業のOJTに依存
◆社会に出てからの学び直しが不活発
人の生涯
◆平均的な学力は世界でもトップ
クラス
◆留年や中退などの「ノンストレー
ター」が活躍できない教育環境
◆グローバルプレイヤーへの挑戦
が容易でない
非正規
◆親の所得による教育の格差
女性
人の現状
◆生涯を生き抜く力の養成が不十分
正社員
人材育成
働き方
高齢期の働き方・生活
◆金銭的な生活は相対的に安定的
◆企業主導のキャリア形成
◆長時間労働になりやすくワーク
◆離職した中高年層の再就職難
ライフバランスがとりづらい
◆家事・育児が配偶者(特に女性)に集中しがち
◆能力を活かして活躍する場が少ない ◆長時間労働しなければ管理的立場に上が
⇔非正規雇用が多い
りにくい
◆出産・育児期の離職が少なくない
◆キャリア形成が難しい
◆出産・育児後に再就職が難しい
◆正社員への転換機会が少ない
◆雇用不安定・低賃金で生活が不安定
◆学卒後の訓練が評価されない
◆ニート・フリーターなどが職業能力を身に付ける場が少ない
◆キャリア形成を主体的に行う力や
職業に必要な専門性が身に付かない
◆平均寿命・平均余命の延伸
◆高齢者の体力の向上・活動意
欲の高まり
◆医療コストへの意識不足
◆予防、健康維持などに関する
意識の格差
◆若い頃の働き方が高齢期の生活
基盤に大きく影響
◆人間関係のつながりの重要性
◆高齢期の職業能力活用が不十分
◆グローバル人材養成など、仕事と結びついた再教育の場が少ない
◆生涯に渡って学べる場が少ない
◆充足感を感じにくい生活状況
社会の課題
グローバル化
少子化・人口減少
地域の存続
安定的な経済成長
格差の拡大
社会保障負担の増加
13
14.主要国の女性の労働力率(M字カーブ)
 日本では、30代~40代前半に女性の労働力率が低下するM字カーブが残っている。
 欧米主要国では、M字カーブは見られない。
 日本では諸外国に比べ、女性の管理的職業従事者の比率が低い。
女性の労働力比率の国際比較
(%)
女性の管理的職業従事者の比率の国際比較
100.0
60.0%
女性の就業者
スウェーデン
90.0
女性の管理的者職業従事者
全管理的職業従事者
就業者
全就業者
管理的職業従事者
52.7%
50.0%
47.5% 47.4% 47.2% 47.2% 46.5%
46.1% 45.3%
43.6%
43.0%
42.3%
41.6%
39.2%
38.7%
40.0%
36.7%
36.1%
35.7%
34.4%
34.3%
31.2%
29.9%
30.0%
25.0%
80.0
70.0
イギリス
60.0
日本
50.0
アメリカ
40.0
20.0%
30.0
11.1%
20.0
ドイツ
9.4%
10.0%
フランス
10.0
スウェーデン
資料出所:日本:総務省「労働力調査」 各国:OECD Database
マレーシア
フランス
フィリピン
ドイツ
(歳)
韓国
イギリス
シンガポール
アメリカ
オーストラリア
日本
ドイツ
65-69
イギリス
55-59
アメリカ
45-49
スウェーデン
35-39
ノルウェー
25-29
フランス
15-19
日本
0.0%
0.0
資料出所:総務省「労働力調査」(2012)
ILO LABORSTA (2012)
欧州:Eurostat Database(2012)
注1)日本は2012年、オーストラリアは2008年、その他は2010年のデータ
注2)総務省「労働力調査」では、「管理的職業従事者」とは、就業者のう
ち、企業の課長相当職以上、管理的公務員等をいう。「管理的職業従
事者」の定義は国によって異なる。
14
15.出生率と女性の労働力率の関係
 フランスやスウェーデンにおいては、高労働力率と出生率上昇の同時回復を達成。特にスウェーデン
においては、足元では1970年よりも高い出生率を達成。
 近年は、女性の労働力率が高い方が、出生率も高くなる傾向。
主要国における合計特殊出生率と女性労働力率の推移(15~64歳)
(合計特殊出生率)
2.6
2.2
● 始点(1970年)
■ 終点(2010年)
イギリス
2.4
アメリカ
フランス
2.0
1.8
日本
1.6
1990
1980
2001
1.4
スウェーデン
1980
2000
ドイツ
1.2
2005
1.0
45.0
50.0
55.0
60.0
65.0
70.0
75.0
80.0
85.0
(15~64歳の女性労働力率、%)
(備考)OECD Annual Labour Force Statistics、OECD Factbook 2013により作成。
15
16.平均理想子ども数と平均予定子ども数の推移
 理想の子ども数、実際の子ども数の平均は、ともに長期的に減少傾向にあるが、夫婦の理想とする
子どもの数、予定する子どもの数ともに2人以上を保っている。
 一方で実際には平均現存子ども数が2人未満となっており、希望と現実にギャップが存在。
平均理想子ども数と平均予定子ども数の推移
子どもの数別の夫婦数の分布(2010年)
(人)
3
理想子ども数
2.61
追加予定子ども数
2.67
2.62
2.64
2.17
2
0.32
2.20
0.32
2.23
0.3
2.56
2.53
2.5
2.18
0.32
2.16
0.32
50.0%
現存子ども数
2.48
45.6%
45.0%
2.42
40.0%
2.13
0.35
2.11
0.34
2.07
35.0%
30.0%
0.36
22.3%
25.0%
1
1.85
1.88
1.93
1.86
1.84
1.78
1.77
1.71
予定子ども数
1.5
20.0%
15.0%
15.7%
13.6%
10.0%
5.0%
0.5
0.3%
4人
5人以上
0.0%
0人
0
第7回調査 第8回調査 第9回調査 第10回調査 第11回調査 第12回調査 第13回調査 第14回調査
(1977年) (1982年) (1987年) (1992年) (1997年) (2002年) (2005年) (2010年)
1.7%
1人
2人
3人
資料出所:国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向
基本調査」(2010年)をもとに作成
資料出所:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(夫婦調査)」を
もとに作成
注)対象は妻の年齢50歳未満の初婚同士の夫婦。予定子ども数は現存子
ども数と追加予定子ども数の和として算出。総数には結婚持続期間不詳を
含む。各調査の年は調査を実施した年である。
16
17.男女の非正規比率・賃金格差
 男性は若年層と高齢層で非正規比率が高く、女性は全年齢層で非正規比率が高い。
 賃金を見ると、男女共に、非正規は正規に比べ、相当程度賃金が低い。
男女別 雇用形態別賃金カーブ
男性の非正規比率
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
(万円)
正規 男性
非正規 男性
正規 女性
非正規 女性
男女の賃金カーブ(EU)
250.0
200.0
800
150.0
700
100.0
600
500
400
50.0
ドイツ
20歳以下
30〜39歳
300
女性の非正規比率
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
英国
40〜49歳
50〜59歳
60歳以上
男性
200
250.0
100
200.0
0
フランス
0.0
150.0
100.0
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2013年)
注)データは一般労働者のものであり、短時間労働者は含
まれない。賃金は年収ベースにしたもの。
50.0
ドイツ
フランス
英国
0.0
20歳以下
30〜39歳
40〜49歳
50〜59歳
60歳以上
女性
資料出所:総務省「労働力調査」
(詳細集計)(2013年)
資料出所:EU “Structure of Earnings Statistics 2010”
(注) データは月間平均収入額(=monthly earnings)で
あり、各国の「20歳以下」を100とした指数である。
17
18.年齢別・雇用形態別にみた男性の有配偶率の比較
 雇用形態別に男性の有配偶率を比較すると、すべての年齢層において、非正規雇用労働者の有配
偶率が顕著に低くなっている。
 結婚に当たり、所得や雇用形態といった経済状況が大きな影響を及ぼしていることを示唆。
(%)
70.0%
60.1%
60.0%
正規雇用の
労働者
非正規雇用
の労働者
50.0%
40.1%
40.0%
33.4%
27.1%
30.0%
20.0%
14.5%
11.6%
9.6%
10.0%
2.4%
1.3%
3.7%
0.0%
15~19歳
20~24歳
正規の職員・従業員
25~29歳
30~34歳
15~34歳計
非正規の職員・従業員
資料:総務省統計局「就業構造基本調査」(2012年)
(注)1.「非正規雇用の労働者」は、パート・アルバイト、派遣、契約社員、嘱託などをいう。
2.ここでいう有配偶者とは、総数から未婚者を除いた者である。
18
19.少子化関連指標の国際比較
女性の平均初婚年齢
日本
29.2
(2012)
30.3
(2012)
フランス
30.8
(2011)
28.6
(2006)
第1子出生時の母親の
平均年齢
婚外子の割合
2.1%
52.6%
(2008年)
長時間労働者の割合
計11.6%
計22.7%
(週49時間以上)
男性31.6% 男性16.1%
女性10.6% 女性6.5%
(2012年)
夫の家事・育児時間
1:00
2:30
(2006年)
家族関係政府支出の対
0.96%
3.20%
GDP比(2009年)(注2) (2011年度は
※ 児童手当、保育サービスなど
イギリス
30.6
(2010)
33.0
(2011)
29.0
(2011)
ドイツ
30.2
(2011)
29.0
(2011)
43.7%
54.7%
32.7%
40.6%
計12.0%
男性17.3%
女性5.8%
計7.6%
男性10.7%
女性4.2%
計11.2%
男性16.4%
女性5.0%
計16.4%
男性21.8%
女性10.2%
2:46
3:21
3:00
3:13
3.83%
3.76%
2.11%
0.70%
―
スウェーデン
アメリカ
25.8(注1)
25.1
(2005)
1.35%)
資料出所:
女性の平均初婚年齢:日本は厚生労働省「人口動態統計」、フランス、スウェーデン、ドイツはEurostat
第1子出生時の母親の平均年齢:日本は厚生労働省「人口動態統計」、欧州はEurostat、アメリカはCenters for Disease Control
and Prevention , National Center for Health Statistics “National Health Statistics Report”(2012年3月22日)
長時間労働者の割合:「ILOデータベース」
夫の家事・育児時間:Eurostat “How Europeans Spend Their Time Everyday Life of Women and Men”(2004)、Bureau of Labor
Statistics of the U.S. “American Time-Use Survey Summary” (2006)、総務省「社会生活基本調査」(2006)
家族関係支出の対GDP比:OECD “Social Expenditure Database”
注1)アメリカのデータは2006年から2010年までの平均値
注2)家族関係支出の対GDP比率は、支出のみの数値であり、税制による控除等は含まれない。
19
20.社会保障関係政府支出の国際比較
 日本の社会保障関係政府支出の対GDP比率は、ほぼOECD平均と同水準であり、ヨーロッパ諸国
と比べると低い水準になっている。家族関係政府支出の割合が低い。
(対GDP比、%)
35.0
32.1
29.8
30.0
3.7
27.8
3.0
3.2
22.2
3.7
1.0
9.0
22.1
2.1
2.5
1.2
20.0
3.5
24.1
25.0
3.1
19.2
3.8
7.3
1.8
0.7
8.6
7.2
2.0
15.0
8.1
1.8
1.0
1.4
6.6
5.0
8.3
2.3
0.5
10.0
2.2
2.4
2.9
5.0
2.3
12.3
10.4
1.0
1.5
0.1
0.8
10.2
9.1
6.7
7.3
6.1
0.0
日本
フランス
年金・介護
イギリス
遺族(遺族年金等)
資料出所:OECD "Social Expenditure" (2009年)
スウェーデン
障害者施策・労災等
ドイツ
医療
アメリカ
家族
その他
OECD平均
計
20
21.高齢者の体力・運動能力の推移
 高齢者の体力・運動能力のスコアはおおむね上昇傾向。
 1998年時点の合計点と、2012年の合計点を比較すると、おおむね5歳下の年齢階層のスコア並みに
向上している。
高齢者の体力・運動能力の推移
43.00
41.00
39.00
37.00
35.00
33.00
31.00
29.00
27.00
25.00
1998
1999
65~69歳 男子
65~69歳 女子
70~74歳 男子
70~74歳 女子
75~79歳 男子
75~79歳 女子
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
(備考)文部科学省「体力・運動能力調査」により作成。
注)データは下記の項目の合計点の平均値である。
握力・上体起こし・長座体前屈・開眼片足立ち・10m障害物歩行・6分間歩行
21
22.社会保障の未来像
 社会保障給付費は、医療、介護等を中心に増加する見込み。
 医療・介護サービスの地域的偏在が予想され、特に、東京圏は、高齢化に伴い医療・介護サービス
が大幅に不足。
社会保障給付費の部門別推移
医療・介護サービスの偏在(2040年時点)
75歳以上人口
(総人口に占める割合)
推計
(兆円)
(万人)
160
2,500
2010年
1,419万人
(11.1%)
140
2020年
1,879万人
(15.1%)
2030年
2,278万人
(19.5%)
120
100
2050年
2,385万人
(24.6%)
2040年
2,223万人
(20.7%)
2060年
2,336万人
(26.9%) 2,000
介護等
1,500
80
1,000
医療
60
2011年度
医療:34.1兆円
年金:53.1兆円
介護等:20.4兆円
計:107.5兆円
40
20
年金
2025年度
医療:54.0兆円
年金:60.4兆円
介護等:34.4兆円
計:148.9兆円
500
‐
0
2000
2005
2010
2015
2020
2025
2030
2035
2040
2045
2050
2055
2060
(出典)1.社会保障給付費については、2011年までの実績値は国立社会保障・人口問題研究所「平
成23年度社会保障費用統計」を、2012年度以降の推計値は厚生労働省「社会保障に係る
費用の将来推計の改定について(平成24年3月)」をもとに作成。
※当該推計の経済に関する前提条件については、2022年までは、内閣府「経済財政の中長
期試算(平成24年1月)」慎重シナリオ、2023年以降は、名目経済成長率:1.8%、賃金上昇
率:2.4%、物価上昇率:1.2%を使用している。
2.75歳以上比率は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月
推計)」における出生中位・死亡中位推計をもとに作成。
(出典)第9回社会保障制度改革国民会議(平成25年4月19日)
高橋泰国際医療福祉大学大学院教授提出資料より抜粋。
22
23.地方都市の「消滅可能性」
 地方から大都市圏(特に東京)への人口移動が収束しないケースでは、2040年時点で、約1,800自治体
のうち、523自治体は「消滅可能性」が危惧される。収束するケースでも、243自治体が「消滅可能性」。
人口移動が収束しないケースにおいて、「20~39歳の女性人口」
が5割以下に減少する自治体数の推計結果
2040年時点の自治体数
523自治体が
「消滅」か
2000
243自治体が
「消滅」か
20~39歳女性人口の変化率でみた市町村数
維持・増加, 15自治体(0.8%)
1799
3割未満減少,
269自治体
(15.0%)
1500
1556
1万人未満
523自治体
(全体の29.1%)
1276
1000
3割以上5割未満減少,
619自治体(34.4%)
500
人口移動が
収束するケース
人口移動が
収束しないケース
総自治体数
0
20~39歳女性人口が5割以上減少する
市町村の人口規模別にみた内訳
5割以上減少, 896自治体
(49.8%)
1万人以上5万人未満
316自治体
(全体の17.6%)
10万人以上
17自治体
(全体の0.9%)
5万人以上10万人未満
40自治体
(全体の2.2%)
(備考) 第1回「選択する未来」委員会 増田委員提出資料(平成26年1月30日)をもとに作成。
(注)1.「消滅可能性の高い自治体」とは、2010年から2040年までの間に「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少
する自治体のうち、2040年に人口が1万人未満となる自治体と定義。
2.国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来人口推計(平成25年3月推計)」及びその関連データよ
り作成。
3.人口移動が収束しないと仮定した場合の推計は、2010年から2015年にかけての人口の社会純増数(純移動
率がプラスとなっている項の合計)と社会純減数(純移動率がマイナスとなっている項の合計)とがその後も
ほぼ同じ水準で推移するよう、年次別・性別・年齢階級別(85歳未満まで)の純移動率について、プラスの純
移動率、マイナスの純移動率別に一定の調整率を作成し乗じて推計したもの。
23
4.数値は、12政令市は区をひとつの自治体としてみている。また、福島県の自治体を含まない。
24.世界の都市圏の人口集中
 東京圏は3,000万人以上の人口があり、国全体の3割近くを占め、グローバル企業の本社機能の7割
が立地。
 国内の人口や機能が一ヵ所に集中している状況は韓国を除けば世界的にも著しい。
世界の都市的地域の人口集中の状況(2013)
50.00%
3,724 都市的地域の人口(万人)
46.42%
3500
都市圏の人口(万人)
3000
2500
その都市的地域の存する国
の総人口に占めるシェア
2,675 29.29%
2000
30.00%
2,177 2,124 2,067 2,057 2,003 25.00%
22.12%
1,579 1,507 1500
16.38%
1000
18.37%
500
6.46%
1.86%
16.91%
20.00%
15.17%
15.00%
1,087 958 10.27%
11.66%
10.70%
0
都市別グローバル企業本社所在数
40.00%
35.00%
2,287 2,330 2,283 731 11.05%
8.84%
フォーチュングローバル500
45.00%
総人口に占めるシェア(%)
4000
10.00%
5.00%
1.65%
0.00%
注1:出典 Demographia: World Urban Areas & Population Projections (Wendell Cox)
注2:都市的地域とは原則として400人/k㎡以上の人口密度を有する、建物が連続する地域
注3:各国の総人口はUN, World Population Prospects: The 2010 Revisionのmedium fertility の2013年の推計値から
注4:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県及び、群馬県、栃木県、茨城県の一部の都市的地域からなる
順位
1
2
3
4
5
6
7
7
本社所
企業数
在都市
北京
48
東京
45
パリ
19
ニュー
18
ヨーク
ロンドン
17
ソウル
12
大阪
8
上海
8
占有率
53.9%
72.6%
61.3%
13.6%
63.0%
85.7%
12.9%
9.0%
(出典)フォーチュングローバル500 2013
フォーチュングローバル500は売上高上位
500社のグローバル企業を掲載。占有率
は500社のグローバル企業のうち、各国の
企業数に占める各所在都市の企業数の
割合。
24
25.東京と地方の就業、所得状況
 東京圏への人口の流入と地方での人口減少は、就業、所得状況と表裏一体になっていることを示
唆。
①過去10年間での就業者数の増減
(2003年→2013年の増減数)
③過去10年間での産業別・地域別 就業者数の増減
(2003年→2013年の増減数)
農業、建設業、製造業等の就業者数が全国的に減少している一方、東京圏等における情報通信
業や専門・技術サービス業等の就業者数は増加。また、医療・福祉就業者数が全国的に増加。
(万人)
200
150
100
73.9 30.9 50
0
‐50
医療・
福祉
教育、学習支援業
(備考)①③総務省統計局「労働力調査(基本集計)」2003年、2013年データより作成
(③の2003年データについては、2013年の産業分類と整合を取るため、労働力調査を元に内閣府にて推計した値を一部使用)
②内閣府「県民経済計算(平成13年度 - 平成22年度)」より作成
生活関連サービス業、娯楽業
宿泊業、飲食サービス業
学術研究、専門・
技術サービス業
不動産業、物品賃貸業
その他の地域
金融業、保険業
三大都市圏
卸売業、小売業
東京圏
運輸業、郵便業
②1人当たり県民所得 東京都と下位5県の比率
(東京都÷下位5県の平均)
情報通信業
‐56.0 製造業
‐55.0 建設業
農業、林業
‐100
‐44.9 ‐35.0 25
26.東京圏への人口の移動状況
 人口移動の状況を見ると、地方圏から東京圏への流出が続いており、年齢別では15歳から24歳まで
の若年層の割合が大きい。進学や就職の機会に東京に移動していることがうかがわれる。
65.1万人(S36)
38.8万人(S37)
21.1万人(S36)
16.4万人(S62)
15.5万人(H19)
9.7万人(H25)
6.9万人(S38)
-0.01万人(H25)
-0.7万人(H25)
(備考)住民基本台帳人口移動報告(総務省統計局)より作成
26
27.東京一極集中に関する現状マップ(イメージ図)
[高度成長期]
1973~75年頃
[安定成長期]
[課題]
東京中心の情報発信機能
行政の影響力の大きさ
交通ネットワークの充実
高度な文化・交流機能
東京圏
東京圏に残された本社機能
国際業務・金融機能の集中
人的資本の蓄積
高い生産性
地方圏との
相対的な
所得等の格差
集中の
スパイラル
東京圏
への
人口集中
国際競争力
の強化
産業と人口の集中
円高
アジア諸国との競争激化
若者が大学進学や就職を
契機に東京圏へ流出
地方圏
工場の海外移転・
閉鎖
工場等の地方分散
インフラ整備
国内交通の整備による
物流の合理化
通信機能の改善
地方圏の
雇用の減少
支店
機能の
低下
流出の
スパイラル
地方圏の
人口減少
地方の経済社会活動の低下
地方圏を
支える産業
の活性化
若者を中心
とした人口
流出の抑制
人口流出の構造
当初は地方圏から
3大都市圏に人口が
大量流出
地方圏からの若年層を中心とした人口流出の恒常化
所得格差の固定化
工場等の機能分散に
より所得格差を伴い
ながら人口流出は減少
人口流出が更なる経済格差と人口流出を呼ぶスパイラル
27
28.「選択する未来」委員会の開催実績
開催実績
• 1月20日 第1回経済財政諮問会議
・「選択する未来」委員会の設置
• 1月30日 第1回委員会開催
・委員会の論点について
• 2月14日 第2回委員会開催
・委員会の検討項目等について
・潜在成長率、人々の幸福感と所得、
人口動態について
• 2月24日 第3回委員会開催
・目指すべき未来の姿について
・経済成長・発展、少子化問題について
• 3月12日 第4回委員会開催
・地域の未来について
• 4月7日 第5回委員会開催
・人の活躍について
• 4月21日 第6回委員会開催
・WG主査の報告等を踏まえた議論
・中間整理骨子案について
• 5月13日 第7回委員会開催
・WGからの報告
・中間整理について
委員名簿
会
長
三村 明夫
新日鐵住金株式会社相談役名誉会長
日本商工会議所会頭
会長代理
岩田 一政
公益社団法人日本経済研究センター
理事長
元日本銀行副総裁
石黒 不二代
ネットイヤーグループ株式会社代表取締
役社長
加藤 百合子
株式会社エムスクエア・ラボ代表取締役
社長
白波瀬 佐和子 東京大学大学院人文社会系研究科教授
高橋 智隆
株式会社ロボ・ガレージ代表取締役
深尾 昌峰
龍谷大学政策学部准教授
公益財団法人京都地域創造基金理事長
増田 寬也
東京大学公共政策大学院客員教授
前岩手県知事
吉川 洋
東京大学大学院経済学研究科教授
28
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