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初期言語発達と認知発達の関係についての横断研究: 手段一目的課題と
Kobe University Repository : Kernel Title 初期言語発達と認知発達の関係についての横断研究 : 手段-目的課題と事物の永続的課題を中心に(a crosssectional study on the relationship between early language development and cognitive development; means-end tasks and object permanence tasks) Author(s) 小椋, たみ子 / 山下, 由紀恵 / 村瀬, 俊樹 / 山田, あき Citation 神戸大学発達科学部研究紀要,2(2):177-194 Issue date 1995 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher DOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81000183 Create Date: 2017-03-31 1 77 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 1 9 9 5 初期言語発達 と認知発達の関係についての横断研究 :手段一 目的課題 と事物の永続性課題を中心 に 小 椋 たみ子*・山 下 由紀恵**・村 瀬 俊 樹***・山 田 あ き** ** A Cr os s-S e c t i onalSt udyoft heRe l at i ons hi pbe t we e nEar l yLanguage De v e l opme ntandCogni t i v eDe v e l opme nt ;Mt t ans-EndTas ksandObj e c t Pe r mane nc eTas ks Ta mi koOGURA,Yuki eYAMASHI TA,To s hi kiMURASEa ndAkiYAMADA Abstract Te n chi l dre n each at1 0 ,1 2,1 5 ,1 8, 21 ,2 4and2 7mont hswereobse r vedt oi nve st i gat et he re l at i onshi p be t wee n earl yl anguage and cogni t i vedeve l opment ,i ncl udi ng means-e nd, obj e ctpe rmane nce,and pl ay abi l i t i e s.Language and ges t uralmeas ure swe re adapt e d f rom t heJapane se Earl y Communi cat i ve Deve l opme ntl nve nt ory.Spe ci f i c words,t hat e ncod ' s uc ce ss'and ' r ai l ure' ,and ' di sappearance'and ;ppearance' ,were anot he r l anguage meas l l reS.Means-e nd t as ks we re mai nl y adapt e df rom Ordi nalScal e s of Psychol ogi calDe ve l opme nt ( Uzgi ri s& Hunt , 1 97 5).Obj e ctpe rmane ncet as kswe readpat e d f rom Kyot oScal eofPsychol ogi calI 〕 e ve l opment ( Shi maz u,I kuzawa& Nakase, 1 980) and Ordi nalScal esofPs ychol ogl CalDe ve l opme nt . Ordi nal i t yofmeans-e ndt as ksandobj e ctpermane ncet as ksshowe dt het as kof useof s t r i nghori z ont al l y' andt het as kof' hi deunde rofoft wobl uec ups( nomoveme nt )'We re t hes i mi l arachi e veme ntofs t ageI Vt as ks. Par t i alc or re l at i onsc ont rol l i ngf orCA showed ge s t ure swe recorre l at e dwi t ht hest age I V ofmeans-end t as ks,nons ynt ac t i calwordc ombi nat i ons,t here f e re ncet onone xi st e nt e ve nt s,and ' s uccess'word we re c orre l at e d wi t hs t age V of means-e nd t as ks,and product i ve t wo word ut t e r ・ anceswe recor ・ related wi t hs t ageVIofmeans-e nd t as ks. Conce rni ngaboutobj e ctpe rmane ncet as ks,'Fi ndi nganObj e ctwrappe di naCl ot h' ( st age V) wascor re l at edwi t hge s t uresandl anguagecomprehe nsi onandt het as ksofs t ageVI we re c orre l at e d wi t ht he re f e re nce t o abse nt pe rs on.Ges t ure s we re c orre l at ed wi t h l anguagec omprehe ns i on,ands ubst i t ut i onpl aywascorre l at edwi t hl anguageproduct i on・ Furt he ranal ys i sOft hedat af r om obse rvat i onwi l lmorec l ar ・ i f yt here l at i onshi pbe t we e n l anguageandcogni t i on・ ・神戸大学発達科学部発達基礎論講座 **島根県立 島根女子短期大学児童心理研究室 ・辛*島根大学法文学部心理学研究室 *辛辛*島根県立島根女子短期大学第二英文教室 - 1I 1 78 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 本研究の最終の目的は、ウラル ーアルタイ語族に属す る日本語 と、イン ドーヨーロッパ語族に属す る英語の、初期言語獲得過程 とそれに関わる認知能力、母子相互交渉性を観察 と質問紙調査により明 らかに し、 「 言語獲得の普遍性 と文化的差異の諸相」についての 日米比較を行 うことである。 日本側 は本研究の執筆者が、米国側 はワシン トン大学心理学部のDal e, P. S.とKe l l yC. が参加 している。 本報告は初期言語発達過程 とそれにかかわる認知能力の 日本側の中間報告である。 問題 と 目的 1 9 70年代後半か ら言語 と認知 は強 く関係 しているとい う相関説 に立つ研究が報告 されて きた。 Bat e sとその共同研究者達は言語 と認知は共通の基底にある構造により両方 とも動かされているので 発達的な変化が基底にある構造、メカニズムでおこる時、その変化は言語あるいは非言語領域で観察 l ocalhomol ogymode l "( 局所相同説) を提起 している ( Bat e s, Be ni gni , Br e t he r t on, されるとする" Camai oni ,& Vol t e r ra, 1 97 9)。 言語 と認知の関係をあさらかにするために沢山の実証的研究がなされて きた。特に1 9 70 年代後半、 Pi age t( 1 9 48) が乳児の感覚運動期に観察 した認知機能の発達を操作的に測定 しようとしたUz ir g i s & Hunt( 1 9 75)のOr di nalScal e sofPs yc hol ogi calI ) e v e l opme ntが開発 されてか らはこの順序尺 r i s& Hunt は感覚運動期の認知の発 度を認知の測度 として用いた研究が多数報告 されて きた。Uzgi 達を事物の永続性、手段一目的関係、操作的因果律、空間における対象関係の構成、音声 と動作の模 倣、対象関係把握の シェマの 6領域にわけてみている。感覚運動期の認知の領域 として これ らの 6つ の ほか にMcCune-Ni c ol i c h( Uz gl r i s, 1 987による) は象徴遊 びを とりあげ、Se i be r t , Hogan,& Mundy(Uz gi r i s, 1 98 7による)はコ ミュニケーションの発達を とりあげている。 Uz gi r i s& Hunt ( 1 97 5)では各領域毎に課題の困難性の順に課題が配列 されていて、課題の段階設定はなされていな い。Uz gi r i s& Hunt が1 975年に提出 した課題の順序性 についてはUz gi r i s( 1 98 7) により再検討が なされている。認知 との関係を見てい く際の言語指標 は言語の一般的な発達の里程蓑 とな っている 9-1 0ヶ月頃の意図的な前言語的 コミュニケーション、1 2-1 3ヶ月頃の初語の出現、ほぼ20ヶ月頃に 生起する多語発話の出現、さらに28ヶ月頃に生起する文法化のは じまりが とりあげ られてきた。また 言語指棟 として、特定の意味を もつ語の獲得 と認知の関係をみた研究 もある( Gopni k, 1 9 8 4; Gopni k & Me l t z of f , 1 98 4)。また言語の量的測度 としては語乗数、MLU ( 平均発話長)が多 く用い られて いる。 これ らの測度を用いた言語 と認知の関係についての研究の概観は小椋 ( 1 9 90) に述べた。 言語 と認知の関係の研究で用い られてきたもう 1つの測度は子 どもの自発的活動 としての遊びであ る。Uz gi r i s (1 987)が感覚運動段階の 6つの認知領域以外で重要な領域 としてMcCune -Ni c ol i c h の遊びの研究を とりあげたことはさきに述べた。 この遊びはUz gi T i s& Huntスケールで も対象関係 把握のシェマとして とりあげ られているが、事物の操作については対象物への社会的意味の付与で終 gi r i s& Hun・ tスケールとは別に、遊びを独立にとりあげ、言語 との関係が わって しまっている。Uz 研究されてお り、両者の関係 は認知測度の中で最 も安定 した結果が得 られている。健常児や障害児に age tの理論 を基盤 にな され て きた。 対 して象徴遊 び と言語 の関係 につ いて の沢 山の研 究が Pi Pi age t( 1 96 2) は、初期の言語が記号機能の一側面であり、 この記号機能の発達は象徴遊び、描画、 延滞模倣などにあ らわれるとしている。遊びと言語の関係については、他の認知機能での研究方法 と 同様、相関の方法や両者間の発達過程の対応づげの方法により行われてきた。各研究が対象 としてい る言語測度、遊びの測度、遊びの喚起方法は異なってお り、導 きだされた結論 も異なるが、多 くの研 究で象徴遊びと言語の問の高い正の相関、あるいは発達過程の平行性が報告されている。特 に、ある ものを他の物にみたてた代置での象徴遊びと言語測度の間に高い相関があった ( Bat e s,Bre t he r t on - 2- 1 7 9 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題 を中心に Snyde r, Shor e&Vol t e r ra, 1 98 0; Cas by& Rude r, 1 9 8 3; 小椋,1 98 8 ) 。McCune-Ni c ol i ch ( 1 9 81 )は、 age t の考えに基づ き象徴遊びの構造的変化を示す 5つの水準を 象徴遊びと言語の関係について、Pi 設定 し、 これ と言語の構造的変化の対応を推測 し、言語、象徴遊びとも基底にある象徴能力の発達を 反映 し、平行 して発達 してい くことを予想 している。小椋 ( 1 9 8 8),Ogura ( 1 9 91 ) も 4児の 7カ月 c ol i chの仮説の検証を こころみ、音声 と か ら生産的二語発話 出現 までの縦断研究で、McCune-Ni 事物の記号関係を成立させるまでは、遊びと言語が平行 して発達 したが、記号関係成立後は、言語 と 遊びは互いに影響 しあい、共働 して発達 してい くことを報告 した。 本研究ではいままでの研究で使用されてきた認知測度、言語測度を整備 し、文化、言語構造に規定 されない言語発達の側面及び言語発達 に関連 している認知的側面 と,文化、言語構造に規定 される側 面を明 らかにす る。本研究では、認知測度 として、言語 との相関が報告されている手段一目的、事物 の永続性、遊びをとりあげた。 本報告の測度は、初期言語発達インベ ン トリーの身振 りと言語、さらに母親 との面接により明 らか に した特別なことば (「ここ ・これ」 「 あった」 「 ない」 「 できた ・やった」 「 だめ ・で きない」) を測度 とした。認知の手段一目的 と事物の永続性の領域については子 どもへの検査の結果か ら、認知 の遊びの領域については、初期言語発達インベ ン トリーの 「 身振 りと行為の部」の事物への身振 りの 尺度を測度 とした。 方 法 ここでは今回の分析に直接関係 していない部分 もあるが研究全体の方法をのべる。 対象児 : 松江市の 4ヶ月健診、 1歳半健診の場で健常 と認め られた乳幼児の保護者、およびその 他の乳幼児相談室事業に参加 していた乳幼児の保護者に研究への協力を依頼 し、保護者が任意で行動 観察に参加 し、全行動観察場面を実施できた1 0 、1 2、1 5 、1 8 、21 、2 4 、27ヶ月児各 1 0名 ( 男児 5名、 母親か らの聴 女児 5名)計70名。 これ らの子 どもは該当月齢でデ ンバー式発達スクリーニ ング検査 ( 取 と子 どもへの課題を実施)を実施され、健常に発達 していることが確認 されている。 手続 : 島根大学、島根女子短期大学に来室を依頼 し、遊戯室で以下の順序で認知面の評価、事物 操作 ( 遊び)、身振 り ・言語サ ンプルを得た。全ての場面を保護者の了解を得て、隣室の リモー トコ ン トロールによりVTR録画 した。行動観察の順番は次の とお りである。 1.デ ンバー式発達スクリーニ ング検査 ( 母親か らの聴取) 約 5分間 2.認知課題 :手段一目的課題 1 0 課題、事物の永続性課題 6課題 約20 分間 3.デンバー式発達スクリーニ ング検査 ( 子 どもへの課題) 約 5分間 4.母子によるままごと遊び場面 1 0 分間 5.母子による絵本場面 5分間 6.母子による人形遊び場面 7分間 7.母子による乗 り物遊び場面 7分間 行動観察終了後、母親か ら生育歴、特別なことばについての情報を得た。また初期言語発達インベ ン トリーの家庭での記入を依頼 し、後 日返送 して もらった。 本研究は 2.の認知課題 と初期言語発達インベ ン トリーの結果である。 ( a). 認知課題 認知面の検査 として手段一目的検査 と事物の永続性の検査を実施 した。手段一目的の課題の内容 と 手続 についてはTabl e1- 1に示 した。 本研究で使用された手段 一目的検査課題の課題 1か ら課題 6、 課題 8、課題 9はUzgi r i s& Hunt( 1 9 7 5 )の尺度( b) の 「 望 ま しい環境事象を獲得す る手段の発達」 - 3- 1 8 0 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 か ら、課題 7がMi l l e r, Chapma n, Br a ns t on&Re i c hl e( 1 9 8 0 )か ら、課題 1 0 が Duns t( 1 9 8 0 )か ら取 られた。課題 1、 2は床で実施 され、課題 3か らは母親が椅子に座 り、子 どもは母親の膝に抱か れ、机に向か う形で実施 された。課題 1か ら課題 6までは被験児が正反応を示さない場合は最高 3試 行まで実施 された。 課題 3か ら課題 6は 3試行 目は実験者が課題解決を実演 してみせてか ら試行 した。 Tabl e1- 1 課題番号 課 手段 一目的課題の手続 と正反応の基準 題 手 正 反 応 続 課題 1 他のものを潤む 2 つの積木を披験児の片手に一つづつもたせて、第3 の玩具 (ゴムのあひ 持 っていた積木の1 つを手放 し、空い 物を手放す のに持っている る)を被験児に呈示するo た手であひるを取るoその他空いた手で あひるをとるのに他の方略を用いるo 課題 2 手段としての移 積木と積木が2 、3 ケ入っているコップを呈示 し、被験児に遊ばせ、遊び コップ巻取るのに移動 し、遊ぶのを再 動の使用 はじめたらコップを手が届かない位置に置き、とるように励ます○ 関する○ 子どもの手が届かない位置に置 く○子どもが玩具で遊んでいる時に玩具 入れる を取 りあげ、蓋の上の子どもの手が届かない位置に玩具を置 くo玩具杏 支持物を実演後引き、玩具を手に入れ 課 題 3 手段としての支 ね じまき玩貝で遊ばせ、玩具に関心を持たせるo箱の蓋を子どもの前の 支持物を実演なしで引き、玩具を手に 0 秒待ち、支持物を引かなかったら再度試 る○ 持物の使用 取るように子どもを励ます02 みる○再度支持物を引かなかったら、実験者が紐を子どもの方へ引いて みせるo玩具をとるように励ますo りあげ、玩具の一方の端の回りを紐 (1m) で結び、玩貝を子どもの手 るD 課題 4 手段としての紐 ギターで遊ばせ、玩具に関心を持たせるo子どもが遊んでいるときに敬 紐を実演なしで引き、玩具を手に入れ の使用 ( 水平) が届かない位置に置 くO紐のもう一方の端は子どもの手の方に伸ば して 紐を実演後に引き、 玩貝を手に入れるo お く○ の端か ら床へゆっくり降ろし、この過程に子どもの注意をよび起こすよ るo うにするo一方の紐の端は子どもの手のところまで、伸ば してお く○玩 紐を実演後に引き、玩具を手に入れ 課題 5 手段としての紐 紐の一方の瑞を対象物にぐるりとまきつけて結び、子どもの椅子の-方 紐を実演な しで引き、玩具を手に入れ の使用 ( 垂直) 具を取 るように励ます○2 0 秒待 って紐を引かなかったら再度試みる○再 る○ 皮紐を引かなかったら、実験者がゆっくり紐を引き上げ、実演するo玩 具を取るように励ますo 験児が関心をもつたら手の届かない位置に、 Tスティック( Tの部分1 5 c m、 せるo 課 題 6 手段としての棒 披験児の前に結んだ鎖 ( あるいはね じまき玩具)を置き、遊ばせるo被 棒を実演な しで使用 し、玩具を引きよ の使用 棒の部分4 5 c m)と一緒に置くO Tスティックの端は子どもの手の近 くに置 棒を実演後に使用 し、玩具を引きよせ く〇鎖を取るように励ます○ るo 皿 m 程度すきまを 箱を調べ、短時間押 るか、あるいはす ぐに箱をあけ、葉子 ように、実験者がクッ キーをマ ッチ箱に入れ、ふたを5 課題 7 マッチ箱と菓子 小さいクッ キーをみせ、子どもの関心を引きつけるo子どもに見えない したりひいたりす の問題の洞察 開けて、子どもに渡 し、クッキーを取 り出すように励ますo を取 り出す○ 4. 5 c m)をたてておき、容器の中へ鎖を入れるように促す○もし子ども たり、容器の不安定さを考慮 した方法 課題 8 鎖と容器の問題 被験児の前に鎖 (2 5 C 皿)を横に伸ば して呈示 し、筒 (高さ1 3. 5 c m、直径 最初か ら鎖をまるめたり、容器を支え の洞察 が自分か ら入れないときは、見えない所で鎖を入れ、鎖の入 った筒を見 をとる○ せてか ら、鎖と筒を最初のように再呈示する○ の積木は穴が空いていて、棒にさせる01 つは穴が詰まっていて棒には さそうとしないo先に気づきゃ言語反 課題 9 穴のつまつた穣 被験児の前に積木をバラバラに置き、棒にさし て遊ぶように誘う04 つ 穴のつまつた積木に気づき、最初か ら 木の問題の洞察 させない○ 応があるが、一回は棒にさそうとす る○ 明の簡 ( 長さ1 4 . 5 c m、直径3 . 0c m)の中央にゴムの玩具を入れる○披験児 ら棒を使い、玩具をとりだす○ 0 筒の中の対象物 2 0 . 5 c m)を、筒にたいし垂直になるように筒と子どもの間に ら、見えない所で、半逮 筒の中のゴムの玩具を出すのに最初か と棒の問題の洞 被験児にゴムの玩具を見せ、関心を持たせてか の前に樺 ( 課題 1 寡 置 くo筒は子どもの前にたてて呈示する○筒か ら玩具を取 り出すように - 4- 1 81 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中J L 、 に 事物の永続性課題の課題 と手続 をTa bl el-2に示 した。課題 1、課題 2、課題 4、課題 5が嶋津 ・生 津 ・中瀬 ( 1 9 8 0 ) の新 版 K式 発達 検 査 か ら、課題 1、課題 3ほUz gi r i s& Hunt( 1 9 7 5 ),Duns t s har t& Bowe r( 1 9 8 4 )か らで あ る。事物 の永続 性課題 で は、 隠 す対象 ( 1 9 8 0 )か ら、課題 6はWi 物 に ミニチ ュアの動物や乗 り物の具体 的な事物が使用 されて いるが、本研究で は、被験児の言語が事 物 の永続性課題 に介在す る可能性 を排 除す るために、独 自にフェル ト製 の 「 無意味 」玩具を課題別 に 作成 し使用 した。事物 の永続性課題 のすべて は子 ど もは母親の膝 に抱 かれて、机 に向か う形 で実施 さ れた。課題 1、 2は 1試行、課題 3か ら課題 6は各 3試行実施 した。 Tabl e1-2 事物 の永続性課題の手続 と正反応 の基準 課題番号 課 題 手 続 正 反 応 探すように促すo 課題 1 完全に れた り出す 対象物を取 布で隠さ 玩具を被験児の前に呈示し、関心を引いてから白い布でおおう〇玩具杏 布をはぐって対象物を手に入れるo で包み込み、子どもの前に置き、玩具を探すように促すo 課題 2 れた 完全に り出す 対象物を取 包み込ま 玩具を被験児の前に呈示し、関心を引いてから白い布の中央におき、布 布をはぐって対象物を手に入れる○ いてから、披験児の利き手側のコップに玩具を隠し ( 第一試行)、探さ せるo次に非利き手側に隠し ( 第二試行)、探させるo次に再び利き手 課題 3 取り プ 2から つの青いコッ 出す 対象物を 披験児の前に約3 0 c m 離して 2つのコップを置く.玩具に披験児の関心を引 だし る 3o 回のう 左、右のいずれの位置からも ち2回以上対象物を探す○た 探せ 側に隠し ( 第三試行)、探させるo コップから対象 くo利き手側に玩具を入れ、被験児が見ている前で、2つのコップを時 物を取り出す 計回りに動かし、置き換えて、探させる0第二試行は非利き手側に、第 る し 回のう 、左、右のいずれの位置からも ○ ち2回以上対象物を探すoただ 探せ 課題 4 青と赤の2つの 被験児の利き手側に青のコップがくるように、2つのコップを離してお 3 ( 置き換え) 三試行は利き手側に、常に青いコップに隠すo は右、第3 試行は左の順で玩具を隠すo各試行とも白いスクリーンを披験 児の前に置き、5 秒間3 つのコップを被験児の視界から遮る〇 課題 5 取り プから 3 ( 遅延) つの青いコッ 出す 対象物を 3つの青いコップを約1 5 c m間隔で離して置き、第-試行は中央、第二試行 3回のうち2 回以上対象物を探すO ( b) 言語 9 91; Ogura, Yamas hi t a,Murase& Dal e, 1 . 初期言語発達 イ ンベ ン トリー ( 小椋 ・山下 ・村瀬 、1 1 9 9 3 )を母親 に家庭で記入 し、返送 して もらった。 c Ar t hur Communi c at i ve De ve l opme nt l nv e nt or y 初 期 言 語 発 達 イ ン ベ ン ト リ ー は Ma ( Fe ns on,Dal e, Re z ni c k, Thal , Bat e s, Har t ung, Pe t hi c k & Re i l l e y, 1 9 9 3 )のI nf ant 用 (8-1 6カ 月) とToddl e rs 用 ( 1 6-3 0カ月) を一体化 し、 日本語 に適 用で きな い 「 文 と文法の部 」を除外 し、 また項 目内容、回答方法 を一部改訂 し、初期言語発達 イ ンベ ン トリ-を作成 した。 「 行為 と身振 りの 部 」 と 「ことばの部 」の 2部 か ら構成 されてい る。 「 行為 と身振 りの部 」 は "身振 りでの コ ミュニ ケー シ ョン' '1 4 項 目、 "社会 的ゲーム" 6項 目、 " 辛 物-の慣用 的身振 り"1 8 項 目、 ` ` 人形への身振 り' '1 3 項 目、 " 大人の しぐさの まね ' '1 6 項 目、 ` ` 代置 のみたて遊 び" ( っ̀み きを にみ たて る'のよ うに子供が、他 にあ き箱、砂、紙、洗面器 を何 に - 5- 1 8 2 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 みたてるかを尋ねた)の 6領域がある。米国版では 「 行為 と身振 りの部」は 8-1 6ヶ月のI nf ant 版だ けにある。 '3項 目 ( 米国版はI nf ant 版のみ)、 "フレーズの理解" 「ことばの部」は ` 理̀解の最初のサイン' 2 7項 目 ( 米 国版 はI nf ant 版 のみ)、 "こ とばの はな しは じめ ( 模 倣 と命名) 6項 目 ( 米 国版 は I nf ant 版のみ 2項 目) 、 語嚢理解 と語嚢表出についての` 語̀嚢チェックリス ド (19 のカテゴ リー( 撹 0 語、動物の名前3 4 語、乗物 1 2 語、お もちゃ 8語、食べ物 と飲物4 9 語、衣類 1 9 語、体の 音語 ・幼児語4 2 語、家具 と部屋2 7 語、家庭用品4 0 語、戸外の もの3 3 語、人々1 9 語、 日課 とあいさつ2 4 語、動作 部分2 4 語、時間1 4 語、性質4 2 語、代名詞 1 7 語、質問 7語、場所 ・位置2 0 語、数量 1 7 語)の4 9 8 語で構成さ 語5 nf ant 版 とToddl e r版の両方 に語嚢チェックリス トはあるが語嚢が異な って れている ( 米国版ではI いる。またToddl e r版は語嚢表出のみである。))、"語賠合" ( 単語 +助詞、二語発話、三語発話) ( 米国版にはない)、 "ことばのつかい方 ( 過去、未来、現存 しない事物、事象 についての言及の 5項 目) ( 米国版はToddl e r版のみ)、 "ことばの組合せ"( 付加言い直 し、疑問詞 +内容語、生産 的二語発話の 3項 目) ( 米国版にはない)か らなっている。本研究で使用 したインベ ン トリーは小椋 1 9 91 )や Og ur ae tal .( 1 9 9 3 )をわずかに改訂 した。語嚢チェックリス トの回答形式の改訂、擬 他 ( 音語 ・幼児語のカテゴリーの語嚢の付加、 ことばの組み合わせの項目の付加をおこなった。 まだ しない、時々する、 しば しばす る、以前は したがいまは し 回答は項 目により異なり、 4段階 ( まだいわない、時々いう、 しば しばいう)、 2段階 ( はい、いいえ)の評定を求め ない)、 3段階 ( た。語嚢チェックリス トは各語に対 して理解、言 うの欄に○, ×を求めた。 2 .特別なことば あった」 「 ない」 「 できた ・やった」 「 だめ ・できない」の 特別なことばとして 「ここ ・これ」 「 ことばを家庭で表出するか母親に尋ねた。 分析(り認知課題 gi s r i s& Hunt( 1 9 7 5 ),Cas at i& Le z i ne( 1 9 6 2 ) 手段 一目的、事物の永続性課題への反応をUz などを参考に して作成 した判定基準に基づ きPas s 、Fai l を決定 した。正反応基準 については手段一 bl el- 1に、事物の永続性課題 についてはTabl el-2に示 した。山下 ・小椋 目的課題 についてTa 1 9 9 3 ) は本研究の被験児の手段一目的課題、事物の永続性課題の各課題への子 どもの ・村瀬 ・山田 ( bl el-1 反応 を詳細 に分析 し、正 反応 基準 の再 検討 を行 って い る。 これ に基づ き、今後、Ta e1- 1、Tabl e 、Tabl e1I2に示 した正反応基準がより整備 される予定であるが、今回は、Tabl 1-2の反応を各課題の正反応基準 とした。 Ⅱ) 言語 ・身振 り 分析 ( (1)初期言語発達インベン トリー 「 行為 と身振 りの部」、 「ことばの部」とも 0、 1型データとして処理 した。 イ ンベ ン トリーの 「 身振 りと行為の部」の下位領域毎に小椋他 (1991)で内的整合性信頼係数の 低かった項 目を除外 し、構成 された尺度の 「コミュニケーションの身振 り」、 「 ゲームの身振 り」、 「 事物への慣用的身振 り」、 「 人形への身振 り」、 「 大人の しぐさのまね」、 「 代置の見立て遊び」 とさらにコミュニケーションの身振 りとゲームの項 目をこみにして因子分析 して抽出された 「 相互交 渉の身振 り」と 「 叙述の身振 り」の 2つの新尺度について合計得点を算出 した。各尺度の合計点を算 出する場合、欠損値は 0として処理 した。 語嚢チェックリス トについては各語嚢についての理解、表出についての○の数のみ下位カテゴリー 毎に合計 した。語嚢チェックリス トの総表出語嚢数、総理解語嚢数、擬音語 ・幼児語の語嚢表出数、 擬音語 ・幼児語の語嚢理解数、フレーズの理解の合計点、 ことばのつかいかたの合計点及び各項 目へ の得点、語結合、命名、模倣の各項 目への得点を算出 した。 ー 6- 1 8 3 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中心に (2)特別なことば 「ここ ・これ」 「 あった」 「 ない」 「 できた ・や った」 「 だめ ・で きない」の各 ことばの得点を表 出する場合 1点、表出 しない場合 0点 として処理 した。 結 果 A. 認知課題 Fi g. 手段 一目的課題で各月齢の被検児の60-70%以上の出現率がは じめてみ られた月齢をみると( 1- 1)、課題 1は1 2ヶ月、課題 2は1 0ヶ月、課題 3は1 5ヶ月、課題 4は1 2ヶ月、課題 5は1 8ヶ月、 0は24ヶ月であった。課題 9は2 7ヶ月で も 課題 6は21ヶ月、課題 7は24ヶ月、課題 8は21ヶ月、課題 1 55%と通過率が低か った課題 4は課題 1と類似の出現率を示 していた。また、課題 1 0 、 8、 7はほぼ 同 じ出現率であった。手段 一目的課題の順序性 についてはガ ッ トマ ンのスキャログラムで検討する予 定であるが、出現率、月齢込みの平均通過率の結果か らは、課題 2-課題 1-課題 4-課題 3一課題 5-課題 6-課題 1 0-課題 8-課題 7-課題 9であった。 Fi g. 1 1手 段 一 目的 諌 魅 の 年 齢 推 移 MEは 手 段 一 目的 課 題 の 略 。 MEl. MEZは 図示 して い な い 。 MElは 1 0ケ 月55. 5% 、 1 2ケ月 80% 、 1 5ケ月 以 降 は 1 00% の 通 過 率 で あ っ た 。 ME之は 1 0ケ月 85. 7% 、 1 2ケ 月以 降 は 1 00% の 通 過 率 で あ っ た 。 事物の永続性課題について60-70%以上の出現率がは じめてみ られた月齢をみると( Fi g.1- 2)、 0ヶ月、 課題 2が 1 5ヶ月、 課題 3が1 0ヶ月、課題 4が1 8ヶ月、課題 5が1 8ヶ月、課題 6が1 8ヶ 課題 1が1 青 2ヶのコップ)は10ヶ月で、通過率が80%で、課題 2 ( 包み込み)より容易 月であった。課題 3 ( 、5、6はほぼ類似の通過率を示 した。各月齢の出現率 と年齢込みの平均通過率 な課題である。課題4 か ら課題の順序性をみると課題 1-課題 3-課題 2-課題 4-課題 6-課題 5であった。 - 7- 神戸大学 発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 + OP2 ・ 4・・OP3 〇一lQP4 ●一 肌 ・ ・ ▲・・ ・OPG Fi g. 1 2事物の永続性課題の年齢推移 opは事物の永続性課題の略。 opl は図示していない。 OPl は1 0.1 2ケ月児は90%の通過率、1 5ケ月以降は1 00%の通過率であった。 B. 初期言語発達 と認知課題の関係 手段 一目的、事物の永続性の各課題 と語嚢チェックリス トの総表出語義数、総理解語乗数、擬音語 ・幼児語の語嚢表出、語嚢理解、フレーズの理解の合計点、 ことばのつかいかた、語結合、命名、模 あった」 「 ない」 「 で きた ・やった」 「 だめ ・できない」の ことばの 倣の各項 目、 「ここ ・これ」 「 言語測度 との、年齢を一定に したときの偏相関係数を算出 し、 5%水準以下で有意であった ものを表 示 した。手段一目的課題 と各言語測度 との偏相関をTabl e2- 1、Tabl e2-2、Tabl e2-3に、 事物の永続性課題 と各言語測度 との偏相関をTabl e3- 1、3-2、 3-3に示 した。 1 . 手段 一目的課題 と言語 暮身振 り Tabl e2-1)、課題 1、課題 2とコミュニケーション、慣用的 身振 りと各課題 との関係をみると( 身振 り、ゲームとの偏相関が高か った。課題 3と偏相関の高い課題はなか った。課題 4とはコミュニ ケーション、ゲームとの偏相関があった。課題 6、課題 8と代置の有無 との偏相関があった。 次に言語 との関係をみると( Tabl e212 、Tabl e2-3)、課題 1、課題 3は擬音語理解、フレーズの 理解、非存在の物の理解 との偏相関、課題 3はさらにラベルづげと偏相関があった。課題 4はフレー ズの理解、擬音語理解 と、課題 5は非存在の物の理解、フレーズの理解、理解語総数に示される理解 面 と、 ことばの使い方、非存在の物についての表出、 「 ない」のことばの表出、感嘆詞 +内容語に示 感嘆詞 +内容語、 二語発話の語結合、「 やっ される表出面 との偏相関があった。 課題 6は将来への言及、 「 あった」の成功 ・発見をあ らわす ことばの表出との偏相関があった。課題 7は疑問詞 +内容語、 た」 あっ 生産的二語発話、三語発話、表出総語乗数、 「 やった」の表出との偏相関があった。課題 8は 「 た」の表出、課題 9は三語発話、生産的二語発話、疑問詞 +内容語、内容語 +助詞、表出語嚢総数 と 0は理解語総数、擬音語理解、擬音語表出、 「 ない」の表出と偏相関があった。 偏相関があった。 課題 1 - 8- 1 85 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 -目的課題 と事物の永続性課題を中心に Tabl e2- 1 「 身振 りと行為の部」の下位領域と手段一目的課題の偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示) 身振 り コミユニ 相 互 手段一目的 ケ-シヨン 交 渉 課題 1 ・ . 5 2 4 . 5 4 7 叙 述 ゲーム 1 慣 用 . 4 4 3 . 4 8 4 . 5 01 人 形 大人の ま ね . . 3 2 0 9 2 5 7 - 代 置 有 無 代 置 合 計 . 3 2 2 6 0 3 Tabl e2- 2 手段一目的課題と言語との偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示) 号音 口○ 五 ⊂ 】 手段一目的 課題 1 課題 2 課題 3 課題 4 課題 5 課題 6 課題 7 課題 8 課題 9 課題1 0 - 9- 1 8 6 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻 第 2号 Tabl e2-3 手段一目的課題と特別なことばの偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示) 青 口書 ロ 五 ロ 手段一目的 課題 1 魂題 2 無題 3 課題 4 課題 5 課題 6 課題 7 課題 8 課題 9 課題 1 0 2 . 事物 の永続性課題 と言語 ・身振 り Tabl e3- 1、Tabl e3- 2、Tabl e3-3をみ ると、課題 2 ( 包 み込 み) とコ ミュニ ケー シ ョンの 身振 り、大人の しぐさの まね、慣用 的身振 り、理解擬音 語、 フ レーズの理 解、非存在 の ものの理解 の 350 以上 の偏相 関が あ った。特別 の ことば につ いて は、課題 2と 「 あ った」の偏相 関が . 3 25 であっ 間 に. 青 2ヶの コ ップの置 き換 え) と目の前 にいない人 の物 につ いて の表 出 と.307の偏相 関が た。課題 6 ( 2 00 台 の低 い偏相 関で あ るが、課題 4も目の前 にいない人の物 の表 出 と、課題 5も目の前 に あ った。. で きない」の ことば との偏相 関が あ った。 いない人 の物 や過去 につ いて の表 出、 「 や った 」 「 TabJ e3- 1 「 身振 りと行為の部」の下位領域 と事物の永続性課題の偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示) 身振 り コミユニ 相 互 事物の永続性 ケ-シヨン 交 渉 叙 述 Tabl e3-2 ・ゲーム 慣 用 人 形 大人の ま ね 代 置 有 無 事物の永続性課題と特別なことばとの偏相関 (5%水準 で有意 な ものだ け表示 ) ロ 号 壬 J 7 五 E = 事物の永続性 課題 1 - 課題 2 10 - 課題 3 課題 4 課題 5 課題 6 代 置 合 計 1 8 7 初期言語発達 と認知発達の関係についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中心に Tabl e3 3 事物の永続性課題と言語との偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示) 書き F : 1I l E 。 事物の永続性 (、 、 U 表 ことばの使い方 理解 表出 出_将来 ( 非 感嘆詞十内容語 過去 生産的二語発話 疑問詞+内容語 フレ丁ズの理解 ( 付加言い直し 名前を尋ねる 内容語+助詞 存 非存在物 理解語総数 理解擬音語 表出語総数 表出擬音語 ラベルづけ 三吉 二語発話 在人 模倣 吾 US1 US2 のも 発話 の 、U ( 合計点) US )S S5 . 4 3 ) ) 課題 1 課題 2 課題 3 課題 4 課題 5 課題 6 . 2 8 0 -. . 4 . 2 3 2 7 9 1 9 6 3 0 4 8 9 6 3-. . . 2 . 2 0 0 3 9 2 9 6 2 -. . 2 2 9 0 8 6 . 2 5 0 7 1 8 6 3 1 . 2 3 3 0 0 7 C 遊び、身振 りと言語 イ ンベ ン トリーの 「 身振 りと行為の部」について小椋他 ( 1 991 )で、新 しく構成 された尺度 と言語 e4に示 した。 測度 との年齢を一定 に した偏相関係数を算出 し、有意な偏相関のみ Tabl フ レーズの理解、理解擬音語 とすべての身振 りの下位尺度の有意 な偏相 関、 ことばの使 いかたの US4 ( 部屋 にない ものの理解) と代置以外の身振 りの下位尺度 と有意な偏相 関があ った。 「 相互交 渉の身振 り」を除いて理解語総数 とも高 くないが有意な偏相関があった。言語表 出 と身振 りの関係 は NA l(ラベルづ け)と低 い有意な偏相関があ った。表 出擬音語 とは 「 相互交渉の身振 り」 「 ゲーム」 以外 と偏相関があ ったが、多語発話 とは偏相関がなか った。代置のみたて遊 びは出現の有無 よ り、各 事物へのみたての合計点のほ うが偏相関係数が高か った。表 出語総数 、US2 ( 将来のお こることを 0 以上の偏相関があ った。 また多語発話 とも偏相関 話す)、表 出擬音語、 ことばの使 い方の合計 と.50 が高か った。 -引 1- 1 88 神戸大学発達科学部研究紀要 Tabl e4 第 2巻第 2号 「 身振 りと行為の部」の下位領域 と言語 との偏相関 (5%水準で有意なものだけ表示 ) 書誌 ロE I エ コ 身振り 表出( 非存 表出擬音語 在人のもの、US5) ( 、U 理解 表出 将来 過去 ( フレ 非存在物 ーズの理解 US2 US1 、US3 )S4) 理解擬音語 表出語総数 理解語総数 ことばの使い方 生産的二語発話 感嘆詞+内容語 疑問詞+内容語 付加言い直し 内容語+助詞 ラベルづけ 三語発話 二語発話 ( 合計点) コミユニ 相 互 ま ね 代 有 無 置 合 代 計 置 ケ -シヨン 交 渉 叙 述 ゲーム 慣 用 人 形 大人の . 3 0 5 . 4 2 8 5 0 2 . 3 6 4 6 2 .. 5 2 7 1 9 6 . 3 2 2 4 8 1 -. 3 2 2 9 7 1 . 5 3 2 4 9 0 7 9 0 6 1 . 7 3 2 . 7 0 6 2 1 2 9 5 6 6 2 3 3 5 5 6 3 . 6 4 8 3 9 4 3 2 5 2 6 5 3 0 6 4 3 9 9 4 3 1 4 5 8 2 5 5 7 6 . 4 6 2 . 4 8 2 3 8 6 1 7 . 4 5 8 2 7 1 . 4 2 3 4 0 9 3 1 6 4 0 -. 5 3 5 0 8 5 4 0 1 - . 5 0 5 6 2 0 6 0 4 . 3 2 1 9 7 . 2 . 3 2 8 5 7 0 3 9 0 . . 4 2 3 0 5 4 , 1 i . 2 3 5 8 7 1 . . 3 5 3 . 2 6 3 3 4 7 4 3 8 . 4 2 5 3 3 4 8 7 0 5 1 8 9 4 5 6 1.認知課題 について Uz gi ri s& Hunt( 1 975 ) のOrdi nalScal esofPs yc hol ogi calDe ve l opme ntはPi age t( 1 9 48 ) が感覚運動期 に観察 した認知機能 を操作 的に測定で きると して、広 く使用 されて きた。Uz gi ri s& Hunt自身 は各領域 ごとに困難性の順 に課題を示 し、大多数の子 どもが通過す る代表的な月齢 を提 出 age t の感覚運動期の 6つの段階の どれ に位置づ け られ るかを示 してい して いるだけで、各課題が Pi ない。段階を示 したの はMi l l e re tal .( 1 9 80),Duns t( 1 980) やUz gi ri s-Huntとは独立 にPi age t の考え に基づ きテス トを作成 した Casat i& Lez i ne( 1 968 ) で あ る。従来の研究か ら本研究 の課題 が感覚運動段階の何段階 に設定 されているかを手段 一目的課題 について はTabl e5 -1に、事物の永続 e5- 2に表示 した。 性課題 について はTabl - 12 - 1 8 9 初期言語発達 と認知発達の関係についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中心に Tabl e5 -1 手段 一目的課題の段階と出典 出典 課 題 段 階 課 長 雲l 盲果題 2 ー >段 階 ー >段 階 M川eretaL(1980),Dunst(1980) Mi l L eretat .(1980), Dunst(1980) >段 > >由 >l >Ⅰ 段 一 段 段 一 斐階 声 階 皆 Gi nsbur g& Opper(l979) Pi a9et(1948), M川e「etal . (1980), BatesetaL(1977) Gi nsbur g & Opper(l979), Dunst(1980) Pi aget(1948), Batesetal _ (1977), FOl 9er& LeOna「 d (1978), Gi nsbur g& Opper (l979), Dunst(l980) Pi aget(1948), Batesetal . (1977), Fo一 ger& LeOnar d (1978), Gi nsbur g & Opper (l979), Dunst(l980) Pi aget(1948), Gi nsbur g & Opper (1979), Dunst(1980) Mi l l er (1980) 9 & OPPer (1979), Dunst(1980) Pi a9et(1948), Gi nsbur Batesetal . (1977), FOl ger& LeOnar d(1978) Pi aget(1948), Gi nsbur g & Opper(1979), Dunst(1980) Batesetal _ (1977), FOl 9e「& LeOnar d(1978) Pi a9et(1948), M 川e「etal . (1980), BatesetaⅠ . (1977) 課題4 課題7 課 言果 芸 果題 題 3 5 6 8 9 10 本研究で、課題 4 ( 手段 としての紐の使用 ( 水平))が 10ヶ月で50%、 12ヶ月で80%の子 どもが通 過 してお り、手段一目的Ⅳ段階の課題 1と類似の出現率で、Ⅴ段階の課題 といいがたい。Ⅴ段階は能 動的実験を通 して新 しい手段を発見する認知能力が育 っている時期であるが、課題 4は紐 と玩具の関 係の認知は必要であるが、能動的実験をとお しての新 しい手段の発見の能力は必要 としていないと考 え られ る。 Uzgi ri s (1987) は12人の子 どもにUzgi ri s-HuntScal eを縦断的に実施 し、達成時期か ら各領域 の各課題の順序性を再検討 している。その中で、 Step が運転 した課題をとりあげている。手段一目 的課題の手段 としての紐の使用 ( 水平)課題 (Step 9)の平均達成月齢が304.0日で、手段 としての支 持物の使用課題 (Step6) ( 平均達成月齢268.7日)や手段 としての移動の使用課題 (Step7) (263.7 日)の後に達成 され、 Step8の支持物の上 に直接置かれず、少 し上におかれた物に対 して支持物をひ かない課題 (495.2日)より早 く達成 された。本研究では手段 としての支持物使用の課題 3は12ヶ月 児では手段 としての紐の使用( 水平)の課題 4よりむっか しい課題 となってお り、 Uzgi ri s&Hunt ( 1975) ,Uzgi ri s (1987) の順序性 とは一致 していない。従来の研究でⅤ段階に設定 されて きた手段 としての支持物の使用、紐の使用 ( 水平、垂直)、棒の使用のおのおのの課題で通過率は異なってい るo Uzgiris (1987) は水平に紐をひ く課題 に示される、 グローバルに分析 しないで仲介物をっか う 課題 と、目的と仲介物の間に特別な関係の理解が必要である課題を区別す る必要があるとしている。 本研究で も、手段 としての棒の使用は支持物、紐の使用に くらべ困難な課題であった。 Uzgiris (19 epの逆転はSt ep12 ( 鎖 と容器の問題の洞察で、 556.5日でに 87) の手段一目的関係の課題での他のSt 達成) とStepll( 手段 としての棒の使用で、 663.1日で達成)であった。本研究ではこの 2つの課題 の逆転 はなかった。 Uzgirisの研究では真 っ直 ぐな棒が用い られてお り、 これが課題をむっか しくし たとUzgi ri sは考察 している。課題 9の穴のつまった積木の問題の洞察課題 はUzgi ri sの結果では、 達成時期が714.7日であった。本研究の結果では24ヶ月 (720日)児で40%、 27ヶ月 (810日)児で50 %の達成率で、 Uzgi ri sの研究の子 ども達は本研究の子ども達よりはや く達成 している。各課題で用 いられた材料、検査状況が達成時期に影響すると考え られる。 山下他 (1993)は各課題への反応カテゴリーを分析 し、課題 3か ら課題 6までの道具の使用課題で、 実演な しの正反応 と実演後の正反応に連関がな く同一の正反応カテゴリーに入れることについて疑問 を呈 している。現在正反応基準を再度検討する作業をすすめている。また課題の順序性、課題の段階 設定については今後検討 してい くべ き大 きな課題である。 I 1 3- 1 9 0 神戸大学 発達科学部研究紀要 第 2巻第 2号 Tabl e5-2 事物の永続性課題の段階と出典 課題 段 階 課題 1 Ⅳ段階 課題 2ー ? 課題 3 Ⅴ段階 (見える所での移動 ) 課題 4 *Ⅵ段階 (見えない所での移動 ) 課題 5 *Ⅵ段階 * 出 典 嶋津他 ( 1 9 8 0) ,Duns t ( 1 9 8 0) ,Pi age t ( 1 9 4 8) 嶋津他 ( 1 9 8 0) Duns t ( 1 9 8 0) 嶋津他 ( 1 9 8 0 ) 嶋津他 ( 1 9 8 0) *は出典では段階設定がなされていない。 1 99 0) の 事物の永続性課題については、本研究では一部K式発達検査の記憶課題を用いた。生津 ( 0 0%、課題 2 ( 包み込み)は1 0ヶ月 5%、 標準化データの通過率では、課題 1は10ヶ月90%、12ヶ月1 1 2ヶ月3 0%、1 5ヶ月78 .3%、課題 4 ( 青 ・赤 2ヶの コップの置 き換え)は10、1 2ヶ月0%、1 5ヶ月47.8 %、1 8ヶ月70%、 21ヶ月8 5.7%、2 4ヶ月1 0 0%であった。課題 5の 3ヶのコップは1 0、1 2ヶ月 0%、1 5ヶ 月26.1%、18ヶ月40.0%、21ヶ月57.1%、24ヶ月78.9%であった。本研究では課題 2は生津 とほぼ同 、2 4ヶ月でやや低い出現率、課題 5は21ヶ月でやや低かったが、ほぼ生揮 ( 1 9 90) じ傾向、課題 4は21 と同 じ結果が得 られたといえるであろう。Uzgi ri s& Hunt の事物の永続性課題に該当す るのは課題 1と課題 3で、Uzgi ri s( 1 98 7) の縦断研究では、課題 1のSt e p5は21 4.8日に、課題 3のSt e p6は 23 3. 2日に出現 している。Duns t( 1 980)では課題 1は 8ヶ月でⅣ段階に、課題 3は 9ヶ月でⅤ段階 に割 り当て られている課題である。本研究では課題 3は1 0ヶ月児の出現率が80%で、課題 1の出現率 に類似 している。課題 3のⅤ段階の段階設定には再検討が必要である。課題 4、課題 6の置き換え課 題、課題 5の心像の保持の課題を、見えない所での移動 と考えるな らこれ らは段階Ⅵの課題 と考え ら れる。 1 9 93) は手段一目的課題 と同様、各課題への反応カテゴリーの分析を行い、課題 3か ら課 山下他 ( 題 6で、 3試行の うち 2試行連続 して成功する反応を不完全反応 として、 この反応が他の完全正反応 と連関が低いことか ら、不完全反応を正反応カテゴリーへいれることに疑問を呈 している。事物の永 続性課題について も、現在正反応基準の再検討を行 っている。 2 .手段 一目的関係の理解 と言語 ・身振 りとの関係 言語 ・身振 りと認知の関係についての研究の多 くでは、認知の指棟は感覚運動知能の段階である。 さきにのべたように段階設定は今後検討すべき課題が多いが、従来の研究 との比較検討では段階を考 えてみる。 Bat e s, Camai oni ,& Vol t e rra, 1 975; 意図的 コ ミュニ ュケ- シ ョンと認知 の関係の研究で は ( Snyde r,1 97 8;Curci o, 1 9 78)、意図的 コミュニ ュケ-ションの成立には手段 一目的Ⅴ段階 と因果性 Ⅴ段階の能力が必要であることが報告 されてきた。本研究の結果では意図的コミュニケーションは手 段一目的Ⅴ段階よりも手段一目的Ⅳ段階の課題 と有意な偏相関があった。 感覚運動知能の手段一目的 と言語の相関は多 くの研究で報告されて きたが、相関がある年齢は研究 ese tal .( 1 979) は手段一目的 と初語の問に有意な相関があったが、それ 毎 にことなっている。Bat は 9カ月のセ ッションであり、手段一目的の課題は環境で既に準備されている手段一目的関係を用い る ( 布 とひ もの使用)課題 ( 初期 Ⅴ段階)であった。Snyder ( 1 978) は、言語発達遅滞児 と健常児 を区別 した課題 は手段の発明あるいは予見を必要 とする課題( 道具 として棒をつかう) ( 後期Ⅴ段階) であるとした。本研究での手段 一目的課題 と言語測度 との関係をみると、手段 としての支持物の使用 水平)の課題 4は言語表 の課題 3はラベルづけと低い有意な相関があった。手段 としての紐の使用 ( 出の測度 とは有意な相関はなか った。手段 としての紐の使用 ( 垂直)の課題 5は非存在の ものへの言 -1 4- 1 91 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中心に 及、感嘆詞 +内容語のことばの使用 と有意な相関があった。手段 としての棒の使用の課題 6は将来の あった」の成功や発見をあ ことについての言及や二語発話、感嘆詞 +内容語の語結合、 「 や った」 「 らわす ことばとの有意な偏相関が高か った。課題 5、課題 6は目的を達成するために、手段をどのよ うに使用 した らよいかの表象を頭の中で考えねばな らない。非存在への言及 も、ないものや将来の こ との心的表象が必要な課題である。Ke l l y& Dal e( 1 9 8 9 ) はルールに支配 されていない非生産的 シ ンタックス使用者は手段一目的Ⅴ段階の行動を、意味的一貫性、位置的-貫性を示す一組の発話を少 な くとも発する生産的シンタ ックス使用者は手段一目的Ⅵ段階の行動を示 したことを報告 している。 手段一日的Ⅵ段階は頭の中での予見、心的結合を必要 とする課題であり、言語において も、 シンタッ クスの生産には、 頭の中でのプランに基づ き、 個々の単語の頭の中での結合が必要である。本研究で、 語結合のは じまりの感嘆詞 +内容語、二語発話が手段一目的のⅤ段階の課題 5、課題 6と偏相関があ 段階の課題 7、課題 9は生産的二語発話や疑問詞 +内容語 と偏相関があ り、Ke l l y& り、 またⅤⅠ Dal e( 1 9 8 9 )の結果が支持 されているといえる。 3 .事物の永続性 と言語 ・身振 り 事物の永続性 と身振 りの意図的 コミュニケーションとの関係の報告は筆者の知 る限り報告 されてい ない。言語 との関連をみた もの としては事物への命名 とⅥ段階の出現を報告 したBat e s, Camai oni 1 9 7 5) 、一語発話出現 と事物の永続性VI 段階のはじまり(2つのスクリーンを用いた 1 & Vol t e rra ( 回のみえない移動をする物の発見) との時間的対応、 さらに語乗数の増大、al l gone, moreの獲得 と 事物の永続性前操作期 ( 一連のみえない移動をする物を隠 した順序 と逆に捜 して発見)の対応を報告 したCorr i gan ( 1 9 7 8 )の研究がある。Gopni k( 1 9 8 4 )もgoneの語の獲得 と事物の永続性Ⅵ段階か ら Hal per n& Av i eze r, 1 9 7 6( Bat es& Snyde r, 前操作期-の移行の時期の時間的対応を報告 しているo 1 9 8 7による)では、Ⅵ段階の全ての項 目を通過 した子 どもは、行為者一行為一目的語の意味関係を も つ文を産出 した。文の構成には完全に内化 された表象分析が反映されてお り、感覚運動期か ら表象思 考の移行をまって文の産出が行われることを主張 している。事物の永続性の研究をまとめてみると、 みえない所での事物の移動を記憶 してお く事物の永続性Ⅵ段階 と初語 との関係は、研究により見解は 異なるが、 シンタックスの出現 と目にみえないおきかえの項 目の完成 いるのは確かなようである。 一表象の定着- が関係 して 本研究での結果をみると、先行研究が使用 したUzgi ri s& Hunt の課題を使用 していないので、従 来の研究 との比較が困難な点 もあるが、課題 2の包み込み課題 と身振 り、言語理解の偏相関が、また Ⅵ段階の課題 と考え られる課題5の 3ヶのコップと非存在の人の物、 過去についての表出との偏相関、 課題 6) 、青 ・赤 2ヶの コップの置き換え課題 ( 課 Ⅵ段階の課題 と考え られる青 2ヶの置 き換え課題( 題 4)と、非存在の人の物についての表出の偏相関がみ られた。 シンタックスの出現 と偏相関のある 記憶の定着により非存在事象 課題はなか った。 課題 4、5、6は見えない事象への言及 と偏相関があり、 の表出が可能になることが実証されたといえる。課題 2の包み込みの課題は小椋 ( 1 9 8 4 )で半指示語 や指示語が 4以下の言語測度 と高い相関があった。本研究の身振 りや言語理解 との高い相関は、 この 課題が言語の出現期に関係する認知能力であることを示 している。包み込みは布に包まれているもの を記憶 している点で事物の永続性 と、玩具を手 にいれるためには布をあけるという点で手段一目的課 題の側面 ももっている。また包み込みはUzgi ri s& Hur i t( 1 9 7 5 )の段階Vの、重ね合わせた 3枚の スクリーンの下で完全に隠された ものを見つけだす課題 にも類似 している。課題 2を事物の永続性Ⅴ 段階の課題 と考えるな ら、見えるところでの事物の移動を記憶 してお く能力が言語理解、身振 りと関 係があるといえるが、今後、課題を吟味 し再検討が必要である。 4. 身振 り、遊びと言語 本研究の結果は身振 りは言語理解 と、代置のみたて遊びは言語表出と偏相関が高いことを示 した。 ー 15 - 1 9 2 神戸大学発達科学部研究紀要 第 2巻 第 2号 これは米国のダウン症児についての研究で ( 小椋 ・Not ar i・Fe we l l , 1 9 91 )、観察での代置のみたて 遊びがヴァインラン ド適応行動尺度の言語表出と、言語理解は代置より低いレベルの遊びと関係する とい う結果 と一致 していた。Bat e s, Thal , Whi t e se l l , Fe ns on,& Oake s( 1 9 8 9 ) は本研究での初期 言語発達イ ンベ ン トリーの元であるMac Ar t hurCommuni cat i veDe v e l opme ntl nv e nt or i e sを使 用 し、言語理解、言語表出と身振 りの関係を1 2ヶ月児 と1 4ヶ月児で明 らかに している。因子分析の結 果、第-因子は言語表出により規定され、第 2因子は言語理解の因子に規定されていた。おさまりの 身振 り ( 本研究でのゲームの尺度。たとえばバイバイ、おつむてんてん等)は言語表出と同 じ第一因 子に、指示的身振 り ( 本研究での コミュニケーションの身振 り。Showi ng, Gi v i ng, Poi nt i ng等)は 言語理解 と同 じ第二因子に、事物への再認身振 り ( 本研究での慣用的身振 り。たとえば髪をブラシで とかす等)は言語理解 と言語表出の両方に高 く負荷 していた。本研究では因子分析はおこなっていな いが、おきまりの身振 りのゲーム、指示的身振 りのコミュニケーション、事物への再認的身振 りの慣 用的身振 りは、 ともに言語理解 との偏相関が高か った。ラベルづけとは 3つの身振 りとも低い偏相関 3 0 0台の偏相関があ った。Bat ese t があった。また慣用的身振 りと表出擬音語、非存在の表出との. .( 1 98 9 )の結果は一部支持 された。代置のみたて遊びは表出語総数や、非現前事象の表出、多語 al 発話 との偏相関が高かった。先の事物の永続性のところで、文の構成には完全に内化された表象分析 が反映されてお り、感覚運動期か ら表象的移行をまって文の生産が行われることをのべたが、文の生 産、非現前事象の表出とも、表象的思考の成立 とともに出現 して くることが本研究で も示された。代 置のみたて遊びは事物について子 どもが二重の意味を意識 している点で、表象的思考が確立 して きた ことを示 してお り、表象的思考の成立が言語 と認知の側面に反映されているといえる。代置のみたて 遊 びはMcCune-Ni c ol i c h ( 1 9 81 )の遊びの レベルでは水準 5の象徴要素間の関係の構築を示 して c ol i chは仮定 している。本研 お り、言語 において言語ルールの発達がみ られることをMcCune-Ni 究の結果はこの仮説を支持 しているといえる。 以上、手段一目的、事物の永続性の認知課題を中心に初期言語 との関係を見てきたが、今後、認知 課題の正反応基準の整備、段階設定の検討を行い、また観察のデータか らの言語、身振 り、事物操作 の分析を行い、初期言語発達 と認知発達の関係を明 らかにしたい。さらに同 じ方法で収集され、分析 中の米国の結果 との比較検討を行い。言語構造、文化の違いが初期言語発達過程 とそれにかかわる認 知能力にいかなる影響を及ぼ しているかを検討 していきたい。 文 献 Bat e s, E. ,Be nl gni , L. , Br e t he r t on, Ⅰ . , Camai oni , L. , & Vo l t e r r a, V.1 9 7 7Fr om ge s t ur etot hef i r s t wor d:Onc ogni t i v eands oc i a lpr e r e qui s i t e s. 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Ur banaandChi cago:Uni v e r s i t yofl l l i noi sPr e s s, Pp1 6 82 0 4 . ー1 6- 1 93 初期言語発達 と認知発達の関係 についての横断研究 :手段 一目的課題 と事物の永続性課題を中心に Bat e s, E. ,Tha l , I ). ,Whi t e s e l l , K. ,Fe ns o n, L. ,& Oa ke s, L.1 9 8 91 nt e gr a t l ngl a ngua gea ndge s t ur ei n i nf anc y.De u e l o pme nt alPs yc hol ogy,2 5, 1 0 0 4 101 9 . i , I .&Le z i ne, I .1 9 6 8Thes t age sofs e ns or i -mot ori nt e l l i ge nc ei nt hec hi l df r om bi r t ht ot wo Ca s at ye ars.Ce nt e rofAppl i e dPs yc hol ogy,Par i s( re v i s e dbyKopp, C. B.& Si gman, M.1 9 7 2 ) Cas by, M. W. , & Rude r, K. F.1 9 8 3Symbol i cpl ayande ar l yl anguagede v e l opme nti nnor maland . me nt al l yre t ar de dc hi l dre n. 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Ogura, T.Yamashi t a, Y.Muras eT.& Dal e, P. 1 9 9 3Somef i ndi ngsf rom t heJapaneseEarl y Com muni cai ve工 ) e v e l opme ntI nv e nt or y.Me moi r so ft heFac ul t yo fEducat i onSki m, ane ー1 7- 1 9 4 Uni u e r s i t y, 2 7 , 2 6 13 8 Pi age t ,J. 1 9 4 8LaT Wi s s anc edel 'i nt e l l i gane c ec he fl 'e n f ant( 2nde di t i on) ;De l ac hauxe tNi e s t l e. 谷村覚 ・浜田寿美男 ( 釈) 1978 知 能 の誕 生 ミネルヴ ァ書房 Pi age t , J. 1 9 6 2 Pl a y,dr e amsandi mi t at i oni nc hi l dhood.Ne w Yor k:Nor t on. 嶋津峯真 ・生揮雅夫 ・中瀬惇 1 980 新版 K式発達検査実施手 引書 京 都 国 際 社 会 福 祉 セ ンター Snyde r, L.1 9 7 8Communi c at i v eandc ogni t i v eabi l i t i e sanddi s abi l i t i e si nt hes e ns or i mot or pe r i od. Me r r L l l -Pal me rQuar t e r l y, 2 4 , 1 61 -1 4 5 . Uz gi r i s,Ⅰ .C.Thes t udyo fs eque nt i alor de ri nc ogni t i v ede ve l opme nt . I nUz gi r i s,Ⅰ,C,& Hunt J.McV. ( Eds. ) ,I n f antpe r fo r manc eande x pe r i e nc e /Ne u ノf i ndi ngswi t ht heor di nal sc al es. Ur banaandChi c ago:Uni v e rs l t yOHl l i noi sPr e s s, Pp. 1 311 6 7 . Uz gi r i s,Ⅰ . C. & Hunt ,J.Mc V.1 9 7 5 As s e s s me nti n i n f anc y/Or di nalSc al e so f Ps yc hol o gi c al De u e l o pme nt .Ur bana:Uni ve rs i t yofI l l i noi sPre s s.白瀧貞昭 ・黒田健次 ( 訳)1 9 8 3 乳幼児の精神発 達 と評価 日本文化科学社 Wi s har t ,∫.G.&Bower, T. G. R.1 9 8 4 Spat i alre l at i onsandt heobj e c tc onc e pt .A normat i v es t udy. Adu anc e si nI n f anc yRe s e ar c h. Vol .3 , 5 7-1 2 3 . 山下 由紀意、小椋たみ子、村瀬俊樹、山田あき 1 9 9 3 手段 目的課題 と物の永続性課題 における反応 カテゴ リー 1 号、1 1 3-1 2 4 . の研究 一日米言語認知発達研究、認知課題 について -島根女子短期大学紀要3 付記 :本研究 は佐藤玩具文化財団第 5回奨励金交付事業 ( 平成 3年 2月) と発達科学研究教育セ ンター発達科学 0 月)の研究助成 による研究成果の一部である。 研究教育奨励賞 ( 平成 3年1 -1 8-