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製鉄実験による鉄製品のー4C年代測定原理の検 と展望

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製鉄実験による鉄製品のー4C年代測定原理の検 と展望
製 鉄 実 験 に よ る鉄 製 品 の
山 田哲 也
1)
1)
・塚 本 敏 夫
1)
14
C年 代 測 定 原 理 の検 証 と展 望
・小 野 直 俊 2 )・小 田 寛 貴
3)
・中 村 俊 夫
3)
(財 ) 元 興 寺 文 化 財 研 究 所
保 存 科 学 セ ンター
〒 630-0257 奈 良 県 生 駒 市 元 町 2-14-8
Tel:0743-74-6419, Fax:0743-73-0125
E-mai
l:g-hoz
on@kc
n.
ne.
j
p
2)
名古 屋 大学
3)
名古 屋大 学
大学院工学研 究科
〒 464-8602 名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町
年代測定資 料研 究セ ンター
〒464-8602 名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町
Tel:052-789-2578, Fax:052-789-3095
1. は じめ に
古 代 製 鉄 に お い て は 、純 度 の 高 い 鉄 を 作 る た め に 、木 炭 な ど の 炭 素 を 還 元 剤
と し て 用 い 、 鉄 鉱 石 や 砂 鉄 中 の 酸 化 鉄 を 還 元 す る 方 法 が 採 られ て き た 。 これ ら
の 製 鉄 法 に よ り造 られ た 古 代 の 鉄 製 品 は 、そ の 成 分 中 に 木 炭 の 成 分 で あ る 炭 素
0程 度 含 ん で い る
を 数 % か らそ の 1/1
。
従 って 、鉄 製 品 中の炭 素 の年 代 は、製
錬 過 程 で 使 用 さ れ た 木 炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 年 輪 形 成 時 期 に 由来 し て い る と
考 え ら て い る 。 こ の 前 提 条 件 を用 い て 、 これ ら の 炭 素 を 効 率 よ く、 か つ 、高 純
度 で 抽 出 す る 事 に よ り、鉄 製 品 の 年 代 測 定 方 法 と して 加 速 器 質 量 分 析 法 を用 い
た放 射 性炭 素
(
14 C ) 年 代 測 定 法 が 利 用 さ れ て い る 。 しか し、 そ の 前 提 条 件 が
正 し い か ど う か の 検 証 は 行 わ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。 ま た 、い く ら測 定 資
料 の 少 量 化 が は か られ た と は い え 、非 破 壊 で は な く破 壊 分 析 で 測 定 を 行 っ て お
り、 か け が え の な い 文 化 財 を 少 量 で も 、 破 壊 分 析 す る の で あ れ ば 、 き ち ん と分
析 法 の 有 効 性 を検 証 す る必 要 が あ る
。
本 報 告 で は 、 ま ず 、年 代 測 定 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 の 有 効 性 を検 証 す る た め
古 代 の 製 鉄 方 法 に よ る 製 鉄 実 験 を 行 い 、 そ の 際 、使 用 した 砂 鉄 や 木 炭 と製 鉄 実
験 に よ り得 ら れ た 鉄 塊 の
性 に つ い て 検 証 を行 っ た
た の で こ こで 報 告 す る
14
。
C年 代 測 定 結 果 の 相 関 関 係 を 求 め 、前 提 条 件 の 有 効
ま た 、併 せ て 、遺 跡 出 土 遺 物 の
。
-87一
14
C 年 代 測 定 を行 っ
2. 製 鉄 実 験 に よ る
14
C年 代 測 定 原 理 の 検 証
2 - 1. 製 鉄 実 験
製 鉄 方 法 は 砂 鉄 製 錬 法 で 行 い 、 製 鉄 炉 に は 、 粘 土 製 の 小 型 竪 形 炉 (内 径 20
c
m、 高 さ 100c
m) を作 製 し使 用 し た 。 砂 鉄 は 、 熊 本 県 荒 尾 市 関 川 岩 本 橋 周 辺 の
山 砂 鉄 を 採 取 し使 用 。 年 代 の 推 定 と な る 木 炭 は 、 岩 手 県 産 の 10- 30年 も の の
松 材 を 1996年 に 製 炭 し た も の を 使 用 し た 。 操 業 時 間 は 、 約 5時 間 操 業 し 、 製
錬 を行 っ た
。
2- 2. 分 析 試 料
製 錬 に 用 い た 砂 鉄 と製 錬 さ れ た 鉄 塊 の 化 学 組 成 分 析 を 行 い 、製 錬 に 使 用 し た
木 炭 1点 と 製 錬 さ れ た 鉄 塊 2 点 の 加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る
った。
14
C年 代 測 定 を 行
2 - 3 . 結 果 と考 察
砂 鉄 と鉄 塊 の 化 学 組 成 分 析 結 果 を Tabl
e 1 ・ 2に 、 菰 微 鏡 組 織 を Photo 1
・2に 示 した
。
ま た 、 木 炭 と鉄 塊 の
14 C
年 代 測 定 結 果 を Tabl
e 3に 示 し た 。 14 C 年 代 か ら
暦 年 代 へ の 較 正 は 、 Manr
l
i
ngandMel
hui
s
h(1994) の デ ー タ に 基 づ い て 行 っ
た。
製 錬 に 用 い た 砂 鉄 は 、化 学 組 成 分 析 よ りチ タ ン ・バ ナ ジ ウ ム の 含 有 率 が 高 く
砂 鉄 特 有 の 特 徴 を 表 して お り、寂 微 鏡 組 織 か ら も チ タ ン鉄 鉱 を 観 察 す る こ とが
できた
。
ま た 、 問 題 と な る 炭 素 に つ い て は 、 0.
08% とか な り低 い 値 を 示 し た 。
ま た 、製 錬 さ れ た 鉄 塊 は 、化 学 組 成 分 析 に よ り炭 素 を 1.
66%含 有 し、顕 微 鏡 組
織 か ら 銑 鉄 の 中 の 炭 素 が 黒 鉛 の 形 で 存 在 して い る こ とが 観 察 さ れ た
。
こ の こ と か ら、 製 錬 に 用 い た 木 炭 の 炭 素 が 、 製 錬 課 程 で 鉄 塊 中 に 取 り込 ま れ
て 行 く こ とが 検 証 さ れ る
木 炭 と鉄 塊 の
14C
。
年代測定結果 は、
14 C /
12 C
比 (- R ) が 1.
000以 上 で あ
る た め に 、A D 1950年 か ら後 の 年 代 と して 、そ れ ぞ れ
14
C年 代 値 が 負 の 値 を 示
して い る 。 ま た 、 歴 年 代 に 補 正 し た 結 果 は 、 木 炭 で は 1989 年 頃 を 、 鉄 塊 で は
1982-1983年 頃 を 示 して い る 。製 鉄 実 験 に 使 用 し た 木 炭 は 、10- 30年 も の の 松
材 を 伐 採 後 、 す ぐ に 製 炭 して お り、 14 C年 代 測 定 結 果 と比 較 し て も 、 矛 盾 の な
い 結 果 が 得 られ た O 木 炭 の 歴 年 代 よ り鉄 塊 の 暦 年 代 の 方 が 古 い 年 代 を 示 して い
る の は 、 木 炭 か ら測 定 試 料 を 採 っ た 位 置 が 、 伐 採 に よ り大 気 に 対 して 閉 鎖 系 が
形 成 さ れ た と き の 最 終 形 成 年 輪 で は な く 、1989年 頃 の 年 輪 の 位 置 か ら試 料 取 り
を行 っ た 結 果 で あ り 、 ま た
,
.
鉄 塊 中 の 炭 素 は 、 10- 30年 も の の 木 炭 中 の 炭 素 が
燃 焼 す る こ と に よ り均 一 化 さ れ た 結 果 で あ る と考 え られ る
。
い ず れ に して も 、 こ れ ら の 結 果 か ら、 鉄 塊 中 の 炭 素 の 由 来 は 、 製 錬 の 際 に 用
い られ た 木 炭 で あ り 、 そ の
14
C年 代 は 、 木 炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 年 輪 形 成 時 期
に 由 来 し て お り 、 14 C 年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 に は 有 効 性 が 認 め る こ
とが で き る
。
I
-88-
製 鉄 実 額 試 料 (砂 鉄 ) の 化 学 組 成 分 析
Tabl
e l
Chem i
calcom posi
ti
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ron-m anufacturi
ng experi
m ent(i
ron sand)
*
第一
鉄
試料 各
種別
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鉄
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F
一
分
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金e
属鉄
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川
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) 酸化
薮化
ガ(
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マ
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) チタン
二酸化
(
Ti
O,
) 酸化
クロム
(
Cr
,
0.
)
Tabl
e2
第2
鉄
珪素
(
F
e
1
01
) 二較化
(
S
i
O
l
)
薮化
硫
(
S
黄
)
五穀化燐
(
P
z
O∼
)
*
*
*
*
ミニ ウム
シウム
ネ シウム
カ リウム
(
A
J
z
O
,
)
酸化アル
炭素
(
C)
(
Ca
O) 醗化
I
(
Mg
O)
マグ
転化 カル
(
C
鍋U
)
八
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ナ
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∨
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)ウ
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(
K
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酸化
造淳 成分
リウム
(
Na
2
0)
穎化 ナ ト
T
造薄成分
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製 鉄 実 験 試 料 (鉄 塊 ) の 化 学 組 成 分 析
Chem i
calcom posi
ti
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ron-m anufacturi
ng experi
m ent(i
ron l
um p)
種別
試料名
C
Si
Mn
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Cu
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∨
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Cr
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(o
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)
Tabl
e3
製 鉄 実験 に お け る放 射 性 炭 素 年 代
AMS 14c agesofi
ron-m anufacturi
ng experi
m ent(i
ronl
um p andcharcoal
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sa- ・
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6.
3
C(
‰)
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4C
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2C)
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4
C,.
2
C)
s
T
)
荒尾市復 原実験
鉄塊 1
-23.
8±0.
1
1.
258±0.
X)
8
(
-1
843±51
-26.
5±0.
1
1.
259±0.
013
ー1
848±81
-26.
7±0.
1
1.
170±0.
008
-1
260±53
鉄塊 2
木炭
- 89-
,
4
ca
Be(
V,BP)
Cdi
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A
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D
r
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3. 源 内 峠 遺 跡 出 土 鉄 塊 の
-4
C年 代 測 定
2.の 結 果 か ら製 鉄 実 験 の 鉄 塊 に お い て 、14 C 年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条
件 の 有 効 性 が 認 め られ た の で 、 製 鉄 遺 跡 出 土 鉄 塊 に 対 し て も 、そ の 有 効 性 に つ
い て 検 証 を行 っ た 。
3 - 1. 遺 跡 の 概 要 と 測 定 試 料
源 内 峠 遺 跡 は 、滋 賀 県 草 津 市 瀬 田 丘 陵 北 側 に 位 置 す る 製 鉄 遺 跡 で 、周 辺 に は
近 江 国 府 跡 や 木 瓜 原 遺 跡 。野 路 小 野 山 遺 跡 等 の 製 鉄 遺 跡 、 山 の 神 遺 跡 ・笠 山 遺
跡 等 の 窯 業 遺 跡 な ど 多 く の 遺 跡 が 集 中 して お り 、 律 令 期 (7世 紀 ∼ 9 世 紀 ) の
生 産 ・流 通 ・消 費 の 一 大 拠 点 の 一 つ で あ っ た こ と が 知 ら れ て い る 。 遺 跡 の 時 代
と し て は 、 出 土 し た 須 恵 器 か ら、 7世 紀 後 半 に 操 業 を 開 始 し 、 8世 紀 代 ま で 存
続 し た と考 え られ る
。
源 内 峠 遺 跡 出 土 の 鉄 塊 2点 と鉄 塊 中 の 錆 に 巻 き 込 ま れ て い た 木 炭 片 1点 (製
鉄 時 に 使 用 し た 木 炭 と考 え られ る ) を 加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る
14
C年 代 測 定 を
行 っ た 。 測 定 資 料 に 供 し た 鉄 塊 は 、 埋 没 中 に 表 面 が か な り錆 化 して い た た め 、
土 壌 等 に よ る 炭 素 汚 染 の 影 響 を 考 慮 し、鉄 塊 中 心 部 の 金 属 鉄 が 完 全 に 残 っ て い
る 部 分 を 、 測 定 資 料 を と した
。
3 - 2. 結 果 と考 察
C年 代 測 定 結 果 を Tabl
e 4 に 示 し た 。 14 C年 代 か ら暦 年 代 へ
の 較 正 は 、 St
ui
v(
ョ
rand P(
∃arson(
1993)
に よ り作 成 さ れ た 樹 輪 較 正 曲 線 を 用 い
た。
鉄 塊 と木 炭 の
Tabl
e4
14
源 内峠 遺 跡 出 土 遺 物 の放 射 性 炭 素 年 代
AMS H c agesofarchael
ogi
caIremai
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tougesi
tes
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ron 一
ump and charcoal
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源 内峠遺跡
鉄塊No.
1
源 内峠遺跡
鉄塊No.
2
源 内峠遺跡
鉄塊No.
2
よ りの木炭
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6.
66
-27.
7±0.
1
1
495±157
41
4(
598)
673
2.
41
3.
51
-1
5.
0±0.
1
1
292±58
785
668(
709,
748,
754)
6.
76
1.
76
-25.
7±0.
1
1
288±83
663(
71
2,
746,
756)
823
838( )
861
一一90-
C 年 代 測 定 結 果 か ら、 鉄 塊 N0.2 とそ の 錆 中 の 木 炭 の 年 代 に 大 き く矛
盾 の な い 結 果 が 得 られ た こ の こ と か ら も 、鉄 塊 中 の 炭 素 の 由 来 は 製 錬 の 際 に
この
14
。
C
年 代 測 定 を行 う に あ た り、 こ の よ う な 試 料 を 測 定 し 、鉄 塊 と木 炭 の 年 代 差 を検
用 い られ た 木 炭 で あ る と考 え て よ い と思 わ れ る 。 ま た 、製 鉄 遺 跡 に お け る
14
証 して 行 く こ と に よ り、測 定 結 果 の 信 頼 度 を 上 げ る こ とが 可 能 に な る と考 え ら
れ る 。 ま た 若 干 、暦 年 代 の 幅 が あ る が 、 こ れ ら の 年 代 と 出 土 須 恵 器 の 形 式 か ら
の 年 代 と も大 き く 矛 盾 の な い 結 果 が 得 られ た 。
以 上 の こ と よ り、 遺 跡 出 土 資 料 か ら も 、 14 C年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条
件 に は 有 効 性 が 認 め る こ とが で き た 。
4. 課 題 と展 望
今 回 は 、 14 C年 代 測 定 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 の 検 証 を主 目 的 と し た た め 、 分
析 資 料 は 、 製 錬 工 程 で 得 られ た 資 料 を対 象 と した 。 そ の 結 果 、製 錬 遺 跡 出 土 の
鉄 塊 に つ い は 、 14 C 年 代 測 定 法 の 適 応 は 可 能 で あ っ た
。
しか し 、 今 後 、 鉄 製 品
C年 代 測 定 を行 っ て い く上 で は 、精 錬 鍛 冶 や 鍛 錬 鍛 冶 の 製 作 工 程 お け
る 各 生 成 品 が 、各 工 程 の 違 い に よ り炭 素 履 歴 が ど の よ う に 影 響 を 受 け て い る か
に つ い て も そ れ ぞ れ 検 証 して 行 く こ とが 重 要 な 課 題 で あ る
つ ま り、鉄 製 品 の 製 作 工 程 内 に お け る 炭 素 の 履 歴 に は 、精 錬 鍛 冶 や 鍛 錬 鍛 冶
の 時 間 差 (製 錬 。精 錬 鍛 冶 ・鍛 錬 鍛 冶 の 工 程 を 一 連 の 流 れ の 中 で 製 品 を作 製 す
全般の
14
。
る 場 合 と 、あ る 工 程 間 で 鉄 素 材 の ま ま で あ る 程 度 の 時 間 を お い て 製 品 を 作 製 す
る 場 合 ) や 空 間 差 (精 錬 ・製 錬 鍛 冶 ・鍛 錬 鍛 冶 を 同 一 の 場 所 で 行 う 場 合 と 、 各
工 程 毎 に 鉄 素 材 の 加 工 場 所 が 異 な る 場 合 ) を考 え て ゆ く必 要 が あ る
に は 、各 製 作 工 程 に使 用 す る材 料
。
。
ま た 、更
特 に 、鍛 錬 鍛 冶 の 鍛 錬 課 程 に 用 い る 材 料 に
影 響 を 受 け 、製 品 の 表 面 と 中 心 部 で は 炭 素 の 履 歴 が 変 わ る 可 能 性 が あ る の で は
な い か と考 え られ る 。 又 、 鉄 製 品 の 再 利 用 の 問 題 も考 慮 し な け れ ば な らな い
。
こ れ ら の 課 題 を 克 服 す る こ と に よ り、遺 跡 に お け る 絶 対 年 代 の 推 定 値 の 精 度
が 向 上 し 、 指 標 遺 物 を 出 土 しな い 製 鉄 遺 跡 の 年 代 を 明 らか に す る こ とが で き 、
ま た 、製 鉄 方 法 の 推 定 や 鍛 治 工 房 の 操 業 形 態 の 実 体 解 明 に 利 用 可 能 で あ る と考
え る 。 さ ら に 、考 古 学 に お け る 出 土 鉄 製 品 や 鉄 製 文 化 財 に 実 年 代 を 与 え る こ と
が 可 能 と な り、 従 来 ま で の 様 式 や 形 式 に よ る 年 代 観 の 一 助 と な る 。
5. お わ Uに
加 速 器 質 量 分 析 計 を用 い た
14
C年 代 測 定 法 は 、鉄 製 品 の よ う な 炭 素 含 有 量 の
低 い 資 料 に も有 効 で あ り、古 代 の 製 鉄 方 法 (製 錬 ) に よ り得 られ た 鉄 塊 等 か ら
炭 素 を 汚 染 さ せ る こ と な く効 率 よ く高 純 度 で 回 収 し 、 14 C 年 代 測 定 を行 っ た と
こ ろ 、測 定 結 果 は 使 用 前 の 木 炭 と ほ ぼ 同 一 の 年 代 を 示 し、炭 素 の 履 歴 は 、製 鉄
の 際 に 用 い られ た 木 炭 に 由 来 す る こ の 炭 素 の 年 代 は 、製 鉄 時 に 使 用 し た 木 材 の
ー 91-
年 輪 形 成 時 期 に 由 来 して い る と考 え て 差 し支 え な く 、製 錬 過 程 で 使 用 さ れ た 木
炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 育 成 年 代 を 明 らか に す る こ と で 、鉄 製 品 の 製 錬 年 代 を 与
え る こ とが 可 能 で あ る。
4C 年 代 測 定 の 精 確 度 を 高 め る た め ・有 効 精 度 を 上 げ る た め
今 後 、鉄 製 品 の 1
に は 、 年 代 測 定 や 鉄 の 化 学 組 成 に 関 連 す る 自 然 科 学 (年 代 学 。分 析 化 学 ・金 属
学 な ど ) と鉄 製 品 の 背 景 を 考 察 す る 人 文 科 学 (考 古 学 ・歴 史 学 な ど ) と の さ ら
な る 学 際 的 な 研 究 が 必 要 で あ る。
謝
辞
本 研 究 を 行 う に あ た り、 製 鉄 実 験 に 協 力 い た だ い た 刀 匠 松 永 源 六 郎 氏 と 、 測
定 資 料 と し て 遺 跡 出 土 鉄 塊 を 提 供 し て い た だ い た 滋 賀 県 教 育 委 員 会 ・ (財 ) 滋
賀 県 文 化 財 保 護 協 会 に深 く
こ感 謝 い た し ま す 。 ま た 、化 学 組 成 分 析 及 び 顕 微 鏡 組
織 観 察 は 、 (柿 ) 九 州 テ ク ノ リサ ー チ ・大 揮 正 己 氏 に ご協 力 い た だ い た 。
本 稿 は 、 平 成 9・10 年 度 文 部 省 科 学 研 究 費
代 測 定 に 関 す る 基 礎 的 研 究 」 (研 究 代 表 者
基盤研究(
C)
(
2)「古 代 鉄 製 品 年
山 田哲 也
課 題 番 号 09610421)
の 成 果 の 一 部 を含 む 。
参考文献
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砂鉄粒子
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㊨ ×400格子粒子
チタン鉄鉱
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外観写真 ×1.
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1 砂鉄の顕微鏡組織 (
荒尾市 関川、岩本橋周辺)
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鉄塊系遺物
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②④⑥ 魯 ×100
③⑤⑦⑨ ×400
黒 い片状 は黒鉛
素地はパーライ ト
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外観写真
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2 鉄塊の顕微鏡組織
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