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大恐慌のタイムライン

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大恐慌のタイムライン
吹
は じめ に
報
告
第 Ⅰ部
国際金 融 システ ム改革 への視 点
・
・
・- - ・
・
・
・
・ 5
第 1節
金 融 グ ローバ ル化 の進展 と開放 的 国際経 済 の トリ レンマ
第 2節
アジ ア経 済危機 に現 れ た国際金 融 市場 の不 安 定 性
第 3節
国際金 融 シス テ ム改 革 の論 点
1
2
第 4節
むす び 一国際金 融 シス テ ム改 革- の視 点
1
7
第 Ⅱ部
金 融改革 の現 状 と課題
・
・
・
・-・
-・
-・
・
・
・
・
・ ・
9
一勤 労者 の視 点 か ら-
日本版 金 融 ビ ッグ ・バ ンの推 移
2
4
第 2節
次 世紀 へ の二 つ の大 課題
2
5
第 3節
最悪 の タイ ミングで の金 融改 革 一平成 大不 況 と金 融 ビ ッグ ・
バン ・
・
・
-
29
第 4節
当面 の金 融 改 革 の視 点 一利 用 者 ・消費 者重 視 の金 融 政 策 を
-・
・ ・
-
31
氏 (
早稲 田大学 講 師、金 融 コ ンサ ル タ ン ト) ・
・
・
・
・
・
-
7
7
第
1節
特 別 寄稿
円の 国際化 に向 けて
岡 山理 科 大学教授
-デ ノ ミで決意 表 明 を 小
邦
宏
治
-
、
氏
付属資料
ヒア リング要 旨
1. 国際金 融資本 市場 の実 態
藤
原
直
哉
2.金 融 の グ ローバ ル化 と国内 にお け る金 融 シス テ ムの あ り方
露
見
誠
良
氏 (
法 政 大学比 較経 済研 究所 所 長 ) -・
・
・
・
- - -- -
82
3. ビ ッグバ ン時代 の 自己責任 と消 費 者保 護
楠
本
くに代
・
・
・
・
・
氏 (
東 京都 消費 者 セ ンター相 談員 ) ・
- ・
・
-
・
-
9
0
4.金 融 ビ ッグバ ン時代 の地 方銀行 の経 営 戦 略
吉
田
忠
明
氏 (トマ ト銀行 社 長 )
5.ユ ー ロ誕生 と円の 国際化
益
田
安
良
民 (
富 士 総合研 究所 主任 研 究 員 ) ・
・
-・
・
・
-1-
-
--・
- 1
05
は
じ め
に
金融の グローバ ル化が急速 に進展す る中、9
7年 の アジア、98年 の ロシアこ南米 の金融
危機 に代表 され る国際的 な金融混乱が多発 してお り、安定 した国際金融 システムの再構
築が グローバ ルな課題 となってい る。 そ して、バ ブル崩壊後 の不 良債権問題 が 日本経 済
の長期低迷 の要因 となってい るこ とや、 アジア通貨危機 が これ ら諸 国の経 済 に壊滅的打
撃 を与 えた こ とに見 られ るように、金融混乱 の実物経済 お よび国民生活へ の影響 は大 き
く、労働組合 も金融安定化 の実現 に無 関心 で はい られない。
また、不 良債権処理 とい う後始末 に加 えて、護送船 団方式 を脱 し、 グローバ ル化 の 中
でわが国金融 システムの資源配分機能 の活性化 を目指す改革 、いわゆる金融 ビッグバ ン
が始 まってい る。 勤労者 は主要 な貯蓄主体 であ り、特 に高齢社会の到来 を控 えて蓄積 の
進 む年金資 産 の受取 者であ り、本 源的 な資金運用主体 である。 その意味で金融 問題 に勤
労者 の視点 を反映 してい くこ とは非常 に重要であ る。
以上 の問題 意識 か ら、連合総研 では 「
金融 の グローバ ル化 と今後 のあ り方」プロジェ
ク トを発足 させ 、約 1年 間にわた り金融問題 の識者 の方 々に ヒア リングを行 い、勤労 者
の視点か ら金融 システムの今後のあ り方 ・改革 の方 向性 につ いて検討 を行 った。本書 は
その検討結果 を今後 の議論 のたた き台 として ま とめ た ものであ る。
先 のケル ンサ ミッ トに向けた OECD-TUAC (
労働組 合諮 問委員会)の声 明で も、
国際金融 シス テムの改革 が大 きな柱 と して取 り上 げ られ、 この間題 に関す る議論へ の労
働組合、市民社会の参加 を呼 びかけてい る。 技術 的 な面 は国際金融の専 門家 に委 ね る と
して も、改革 の基本 的方 向性 を作 る上 で、社 会構 成員 の広範 な参加が欠かせ ない。そう
い う意味 で、勤労者市民 の立場 を代表す る労働組合 の積極的 な関与が必 要であ る。 本書
が、金融 問題 につい て勤労者 の立場 か ら労働組合が主体 的 に議論 し、問題提起 を行 って
い く切 り口 を提供 で きれ ば幸 いである。
最後 に、 ご多用 中の ところ本 プロジェク トの コメ ンテ イター と して参画 して下 さった
小邦宏治先生 、そ して本 プロジェク トのため にご講演 くだ さった尭生方 に心 か ら御礼 を
申 し上 げ る。
1999年 9月
財 団法人
連合総合生活 開発研 究所
所
-2-
長
栗
林
世
報
第 Ⅰ部
第 1節
国際金融システム改革への視点
金融グ ローバル化の進展 と開放的国際経済の トリレンマ
1
9
8
0
年代 以 降 、金 融市場 の グローバ ル化 が急 速 に進展 してお り、 国際金融市場 の規模
は世界 の GDPや貿 易額 を上 回 るペ ース で拡 大 してい る 。 さ らに、世 界 の貿 易額 が年 間
約 6兆 ドルで あ るの に対 し、外 国為 替 の取 引 高 は 1営 業 日当 た り1
.
5兆 ドル*仁一と年 間営
業 日数 を2
5
0日 とす る と年 間37
5兆 ドルで 、モ ノの取 引 の 5
0
倍 以上 の マ ネーが 日々 グロー
バ ル市場 を駆 け巡 ってい る。 また、先 進 国の市場 だ けで は な く、東 ア ジ アの新 興経 済諸
国 な ど途 上 国へ の資 本流 入が 9
0
年代 に入 り急 速 に拡 大 した 。
(
開放 的 国際経 済 の トリレンマ)
金融 グローバ ル化 が急 速 に進 んでい るわ けだが 、開 放 的 国際経 済 には よ く知 られ た ト
リ レンマ の問題 が あ る。 す なわ ち、
① 各国 のマ クロ経 済政 策 の独 立性 (自国の経 済調 整 の ため にマ クロ経 済政 策 を行 う権
利)
② 為 替 レー トの安 定 (
実物 の経 済 活動 には価格 の予 測 可 能性 、す なわ ち為 替 リス クの
回避 が重 要)
③ 資本市場 の統 合 (
資 本 の グローバ ルな レベ ルで の効 率 的 な調 達 ・運 用 )
の 3つ の 目標 を同時 に達 成 す る こ とは不 可 能 とい う問題 で あ る 。
7
0
年代 初 め まで戟 後 の世界経 済 の レジーム とな って きた ブ レ トンウ ッズ体 制 は、固定
相場制 の下 で資 本 移動 の規 制 が行 われ てお り、①② を 目標 と した もの で あ った。 これが
崩壊 した後 の変 動 相 場 制 下 で 、資 本 市 場 の グ ローバ ル化 が 急 速 に進 む と と もに、為 替
レー トの不安 定 が常 態 とな った これ まで の流 れ (
す なわ ち① ③ の優 先 ) は、 トリ レンマ
の存在 を如 実 に物語 ってい る 。 ドルが依然 と して基軸通 貨 の役 割 を果 た してい る現 在 、
アメ リカの為 替 リス クが最 少 とな る有利 な体 制 とい える。 他 方 、 日本 は為 替 レー ト不安
*
EI
BISに よる98年 4月調査
(
"Centr
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Mar
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vi
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99
8")
。 また、デ リバテ ィブ取 引高 も 1営業 日当 た り1.
3兆円 に達 している。
-5-
定 の影響 を最 も多 く被 った国の一つであ る とい える。
この他 に、②③ を優先 した もの に戟前 の金本位制 や、 カ レンシーボー ド、 カ レンシー
ユ ニ オ ンな どがあ る。 アルゼ ンチ ンで現在考 え られてい る ドルを自国の通貨 と して採用
d
ol
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写
ati
o
n) もこの一つ の例 で、マ クロ経 済政策 の 自由度 を失 うこ とに
す る制度 (
な る。 EU通貨統 合 もこの範噂 に入る もので、各国はマ クロ経済政策 の 自由度 を失 うこ
とになるので、それ を許容 で きるまで EUの経済社 会の統合が強 固な基盤 を有す る もの
に まで成長 してい るか否 かが今後 問われ る こ とになろ う。
従 って、 これか らの国際金融 システム改革 において、 この トリレンマに どの ように対
処 すべ きか とい うこ とが 、大 きな課題 の一つ として横 たわ ってい る。
参考 :ブ レ トンウ ッズ体制の意味
1
930年代 の大恐慌 とそれ に続 く第 2次 世界大戟 の教訓 を踏 まえて考案 され たブ
レ トンウ ッズ体制
(IMF-GATT体制) は、 自由貿易 の促 進 と並 んで、国際通
貨 シス テム と しては、金 との交換比率 を固定 した ドル を基軸通貨 と した固定相場制
を採用す る一方で、資本取 引へ の規制 を認 め るこ とに よ り金融政策 の 自由度 を確保
した。
IMF協定 で は、経常取引 に関 して通貨の交換 可能性
(
国際貿易 で どの国の
通 貨で も決済可能 となる) を求める一方で資本取 引 に関 しては制 限 して もよい こ と
になっていた。 また、資本移動 のない固定相場制 が持 つ調整 メカニズム (
貿易赤字
・景気過熱- 金融引締 め-景気減速 ・赤字縮小) で は是正 で きない基礎 的不均 衡 に
陥 った場 合 は、為替 レー ト調整 を行 うこ とが認 め られていた。
す なわ ち、国際金融 の トリレンマ (
為 替 の安定 、 自由な資本移動 、金融 政策 の
金本位 制 」 が金融
自由度 の 3つ を同時達 成す る ことは不可 能)が存在 す る中で、「
政策 の 自由度 を狭 め大恐慌 を もた らす一 因 となったの に対 し、 ブ レ トンウ ッズ体制
は資本 移動 に制約 を課す る ことによ り国内経済 の安定 を優先 したマ クロ経 済運営 を
可 能 とす る もので あ った 。 この レジー ムの下 で、先 進諸 国 は 1
950-60年代 にか け
て、貿易 の拡大 とケイ ンズ経済学 的 な総需 要管理政策 に よ り長期繁栄 を享受 した。
しか し、 アメ リカ経 済 の圧倒 的優位 に よる世界 的 な ドル不足 の状 態か ら始 まった
この体 制 も、戦後 の経 済復 興 を経 て他 の先進諸 国の外 貨準備 (ドル保有 )が蓄積 さ
れ る・
とともに、ベ トナム戦争等 によるアメ リカか らの ドル流 出 によ り、 ドルの金へ
ー6-
の究換可能性に村する信認が揺 らぐようになる。また、多 くの国々で資本取引の規
制が行われていたが規制があれば必ず抜け道を探す者がいるもので (
例えば貿易決
済の時期 をず らすことによる事実上の資本移動)、次第に民間資本移動が拡大 し
た。そ して、71
年のニクソン ・ショック (ドルと金の究換停止)によりブレトン
ウッズ体制は崩壊 した。
[
参考文献]
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n,P.R.a
n
dO
bst
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d,M.(
1
9
9
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石井莱穂子他訳 (
1
9
9
6
年)
『
国際経済
:理論 と政策 (
第3
版) Ⅱ.
国際マ クロ経済学 』新世社 ]
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1
9
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Les
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『
[
猪木武徳他訳 (
1
9
9
4年) 大恐慌 の教訓 』 東洋経済新報社]
『
・経済企 画庁 (
1
9
9
9年 6月) ゼ ロイ ンフ レ下 の物価 問題検討委員会報告書 』 の参
1
9
3
0年代 アメ リカ大恐慌 のメカニズ ム」
考資料 「
『
・通商産業省 (
1
9
9
9
年 5月) 通商 自書 (
平成 1
1
年版 )
』 の第 2章 「
深化す る世界経
済 の グローバ ル化 と通貨 ・経済危機 の広が り」
(
金融グ ローバル化 の背景)
2
0世紀最後 の四半世紀 に金融 グローバ ル化 が これ ほ どまで に進 んだのは どう してであ
ろ うか。 その背景 に主 な もの として 4つの点があげ られ る。
第 1に、言 うまで もな く戦後 の世界経済の レジーム となって きたブ レ トンウ ッズ体制
が7
0
年代 初 め に崩壊 した ことであ る。変動相場制へ の移行 は、為替変動 の リス クをヘ ッ
ジす る必 要性 か ら先物等 の新 たな金融商品 を生み出す とともに、外 国為替市場 をめ ぐる
投機 の機会 を提供す るこ ととなった。裁定取引の登場 は、投 機取 引 に も容易 にチ ャンス
を開 くことになる。
第 2に、7
0
年代 の二次 にわたる石油 シ ョック とい う価格体系 の大幅 な変更 に伴 う世界
的 な資金 の偏在 の発 生である。 世界 の貿易バ ランスが大 き く変化 し、産油 国は大幅 な経
常収支黒字 を計上す るこ とになったが、それ に見合 う大 きな投資機会が産油 国内 にある
わけで はないので、産油 国に集 まった資金 は再 び国際金融市場 に還流す ることにな り、
-7-
いわゆるユ ー ロ市場 (
オ フシ ョアの金融取引)が急 速 に拡大 した。
第 3に、 この よ うな国際金融市場 の変化 と、石油 シ ョック後 の先 進諸 国が ス タグフ
レー シ ョン (イ ンフ レと高失業) に苦 しむ中で台頭 して きた アメ リカの レーガ ン政権 に
代表 され る 自由主義 的 な経済思潮 を背景 に、8
0年代 に入 り強 まった金融 自由化 の潮流で
あ る。 アメ リカ、 イギ リス を筆頭 に進 む自由化路線 は、社 会主義経 済圏の崩壊 も寄与 し
て、9
0
年代 には途上 国の経済政策 に関 して も支配的 な考 え方 とな り、資本取 引の 自由化
が進 め られ だ r
:
2
。
第 4に情報通信技術 の急速 な発展 である。 コンピュー タの発達 が デ リバ テ ィブの よう
な高度 な金融工学 を駆使 す る ことを可能 にす る とともに、情報通信 ネ ッ トワー クの発達
に よ り、デ ィー ラーや トレー ダーたちが端末 をたたけば多額 の資金 をグローバ ルかつ瞬
時 に動 かせ る ようになった。 さらに、世界各地の情報 が リアル ・タイムで流 れ る ように
思惑 ) を 日々
な った結 果 、精査 まち まちの膨 大 な情報が市場参加 者 の様 々な 「
期待 」(
形 成 し、 グローバ ルな規模 で短期 的利益 を追求 したマ ネーの動 きを加速 してい るd
(
金融グ ローバル化 にメ リッ トはあるのか)
それで は、 この ような金融 の グローバ ル化 の進展 は、世界経済 、市民 にメ リッ トを も
た ら して きた と言 えるであ ろ うか。一般論 と して、 自由な資本移動 は グローバ ルな規模
での資本 の効率 的 な配分 を促 し、世界の経済厚生 を高 め る と言 われてい るが、具体 的 な
成果 として何 があげ られ るであろ うか。
最 も重 要 な成果 とい えるの は、「
東 アジアの奇跡 」に象徴 され る東 アジアの途上 国の
経 済発展 であ ろ う。 昨今 のアジア経済危機 によ り忘 れ られが ちであ るが、東 アジアの新
興経済諸 国の経 済発展 はその国民経済 に大 きな果実 を生 み出 した。す なわち、危機 に陥
る前 の数十年 の間 に年平均 5%以上の経済成長 を遂 げる中で、単 に経 済規模 の拡大 とい
うだけで はな く、貧 困率 の低下、教育 の普及や識字率 の上昇 にみ られ る ように国民 の生
活水準 の顕 著 な向上 が実現 されたのである。
6
0年代 まで の ア ジアの途 上 国 は、総体 と してみ る と ミュ ル ダールが 「アジアの ドラ
マ」(
1
968年) で描 い た ■
「
停滞 の アジア」 で、年 々歳 々変化 の少 ない定常 的 な経 済循環
*
E
2 いわゆる 「ワシ ン トン ・コンセ ンサス」 と呼ばれる考 え方で、経済発展の鍵 を握 るマ クロ経済の
安定 、
市場 メカニズムの発揮のための手段 として、
資本取引の 自由化 も 1つの項 目としてあげてい た。
ー8-
が続 き、悠久の時 間が流 れ る世界であ った。南北 問題 とい う言葉 が生 まれ、経 済発展戟
略 の選択肢 の一つ と して社会主義 が魅 力的 に語 られ もした。 ところで、 シュ ンペ ー ター
流 の経済発展 の本質 は、従来 の経 済循環 か ら生産要素 を奪 い取 り新 たな結合 に向 けて転
用す るこ と (
いわゆる創造 的破壊 )であ り、資本主義経 済 においてはその ような企業家
活動 に購 買力 を与 える信 用創造 、す なわ ち金融 の果 たす役割 が極 めて大 きい。東 アジア
の経 済発展 は、 もちろん良好 なマ クロ経 済環境 、人的資本 の重視 、高 い貯蓄率 とい った
基礎 的条件 があ って こそ実現 した ものであ るが 、「
東 アジアの奇跡 」 と呼 ばれ る飛躍 的
な発展 が可能 とな った背景 と して、直接投資 も含 め た金融 グローバ ル化 の影響 を無視 で
きない。
貿易の拡大 、直接投資 の拡大 とい う経 済 の グローバ ル化が 、途上 国のテ イクオ フか ら
持続 的発展 を もた ら した。 これは貿易 の拡大 、投資収益 の拡 大 な どを通 じて、先 進 国 に
も果実 を もた ら してい る。 金融 グローバ ル化 もその 中の一部 に位 置付 け られ よう。 しか
0年代 の金融 グローバ ル化 の問題 点 は短期資金 の移動 を急激 に し、国際金融市場 の
し、9
不安定性 を高めた ことであ る。
第 2節
ア ジア経済 危機 に現れ た 国際金 融市場 の不安定性
前節でみた ように、金融 グローバ ル化 は世界経済 の構造変化 を背景 と した不可避的 な
流 れ とい う面が強 く、世界経 済 にメ リッ トを もた ら して きた面 もあ る。 しか し、9
7
年後
半 の アジア経済危機 の発生 に よ り、国際金融市場 が抱 える不安 定性 を改 めて認識 させ ら
れ る こととなった。
(
金融市場 に内在す る不安定性 )
そ もそ も金融市場 は不安定性 を内在 してい る ものであ る。 その理 由は、新古典 派経 済
学 の コアにあ る完全競争 の均 衡理論 で は十分 に扱 い きれない情報 の不完 全性 、経 済の動
態 的発展 が最 も集約 して現 れ るのが金融市場 であ るか らだ。す なわ ち、現在 と将来の間、
異 時点 間の資源配分 を媒 介す る こ とが金融 の一つの役割であ り、 ここで は 「
期待 」 の果
たす役割が極 めて大 きい。 また、技術 革新 にチ ャ レンジす る企業家 のため に資金 を仲介
す る ことが金融 の重 要 な役割 であ るが 、企業 家の本 質 は 「
不確 実性 」を恐 れず に挑戟す
るアニマ ル ・ス ピリッツにあ る。 市場 の安定性 を前提 と した完全競争 モ デ ル を究極 まで
-9-
突 き詰 め た 「
合理 的期待」 が幻想 に過 ぎない こ とは、金融工学 を駆使 したヘ ッジ フ ァン
ド ・LTCMの破綻 で明 白にな った。
さらに、 国際金融市場 の場 合 、世界 各国の市場規模 に極端 な相違 が あ る こ とに注意す
る必 要が あ る。 例 えば世 界各 国の株式市場 の規模
(
9
8
年 8月の時価総 額 ) を比べ てみ る
と、 ア メ リカ に対 して 日本 や イギ リス は 5分 の 1程 度 の大 き さが あ るが 、香 港 で も
2.
7%、韓 国や イ ン ドネシアはそれぞれ0.
5%、0.
1
3% と微 々たる大 きさ しか ない。 その
一方 や、ヘ ッジフ ァン ドや年金基金等 の巨額 の機 関投資家が存在 す る 。 完全競争 モデル
が想 定す る無 数 の同質的 な経 済主体 の集 ま りの前提 、す なわ ち個 々の市場参加者 は価格
を左 右 で きない とい う前提 が 、 と りわけ国際金融市場 の場 合 には当て は ま らない。
金融市場 が発達 した と考 え られ る先進 国で も、8
0
年代 の アメ リカの S&L、 日本 や北
欧諸 国のバ ブルの生成 ・崩壊 の ように金融市場 の混乱 を経験 した。 ま してや、国際金融
市場 には、金融市場 が未成熟 な旧社 会主義諸 国や途上 国 も含 まれ てい る。 アジア経 済危
機 だけで はな く、8
0年代 の ラテ ンアメ リカの債務危機 、9
4年 の メキ シ コ危機 の ように、
これ まで も国際金融市場 の混乱 は頻発 して きた。 国内金融市場 の ような中央銀行 の 「
最
後 の貸 し手 」機能や預 金保 険制度 な どの安定化装 置 を整 っていない国際金融市場 で は、
小 さな混乱 で も大 きな徒機 に転 化 して しまう可能性 が高 くなる。
しか し、市場万能 の経 済思潮 が強 まる中で 、不安定性 を内在す る国際金融市場 を制御
す る適切 な処方毒 を作 り出す努 力 が十分 にな されて こなか ったのが 、最 近 までの 国際社
会 の状 況 とい える。
(ア ジア経 済危機 の教訓 )
アジア経 済危機 の背景 と して、 ドルに連動 (
ペ グ) した為替 レー ト、 クロー一 一 (
縁
故 )資本 主義 に よる非効率 な投 資 な ど様 々な問題点が指摘 されてい る。 東 アジアの新興
経 済諸 国の高成長 にバ ブル的要素 が あ ったの は事 実 で、遅 かれ早 かれ減 速す る こ とは避
け られ なか ったであ ろ う。 しか し、それ まで の失敗 の程 度 に比べ て今 回の打 撃 はあ ま り
0年代 に
に も大 きい 。 「
危機 」 と呼 ばれ る大 きな変動 を引 き起 こ した直接 的 な原 因 は、9
入 ってか ら急速 に拡 大 した これ ら諸 国- の資本流 入が逆転 し、大量 の短期資本 が流 出 し
熱狂」 か ら 「
信 認 の崩壊」 へ急激
た こ とで あ る。 理 由の如何 は別 に して、市場心理 が 「
にシフ トし、大量 の資本 の移動 が生 じ得 るのが現在 の グローバ ル化 した金融市場 の現実
であ る。
-1
0-
今 回の経験 か ら、金融市場 の不安 定性 に代 表 され る 「
市場 の失 敗 (
不完 全性 )
」、マ
クロ経 済 の観 点 が大切 な こ と
(
「
合 成 の誤謬 」 の発 生 )、そ して、 これ らに関 して
「政
府 の役割 」(
金融規制 の制度設計 ・運 用 、マ クロ経 済政策等 ) が重 要 な こ とを改 めて教
え られた。
まず 第 1に、今 回の危 機 の特 徴 で あ る 「危 機 の伝 染性 (
cont
agi
on)
」 であ る 。 タイ
の通貨危機 を発端 に、 イ ン ドネシア等 の周辺 諸 国、次 に韓 国、 さらにはロシアや ラテ ン
アメ リカへ と危 機 が波 及 した。 ロ シア危機 に伴 う市場 の混乱 は大手 ヘ ッジ フ ァ ン ド ・
LTCM の破綻 を招 き、その金融市場 に与 える影響 か らアメ リカの金融 当局が救 済 に乗
り出 さね ばな らない事態 にまで及 んで、 グローバ ル化 した金融市場 の危機 であ る との認
識 が持 たれる ようになった。一つの出来事 を きっか けに危機 が伝染す る とい うこ とは、
それ まで市場 が情報 を適切 に評価 出来 ていなか った ことを示 してい る*
E
ニ
;
。
第 2に、過剰 な短期資本 の流 入 を放 置す る背景 となった金融規制 の問題 であ る。 アジ
ア新興経 済諸 国が資本取 引 の 自由化 を進 めた一方で、その金融 シス テム ・監督体 制が脆
弱 な ことは早 くか ら指摘 されてい る。 他 方 、先進 国の卿 で も、 BISの 自己資本規制 で
途上 国の銀行 - の貸付 で短期 (1年未 満 ) の もの は リス クウェイ トが低 くなる (
1
0
0%
が2
0%になる) とい う設定が、短期 貸付 の イ ンセ ンテ ィブを与 える とい う歪 み を持 って
い た。
第 3に、負債 を考慮 に入れた場 合 の調整 の困難 さであ る*
E
/
1
。経 済学 の入門 レベ ルで は、
通貨の下落 は輸 出 を有利 にす るので、景気 にはプラス と考 え られ る。 しか し、通 貨が下
落 して も外貨建 の負債額 は変 わ らない一方で、現地通貨建 で は負債 が急激 に膨 れ上が る
ので返済可能性 に疑 問符 がつ くこ とになる。 その結果、資金 が引 き上 げ られ始 め る と、
ます ます通貨が下落 して負債 の重圧が増す とい う悪循環 に陥 って しま う。 また、信用秩
序 の崩壊 は輸 出信 用状発行 の停滞 な どを招 き、輸 出の回復 が始 まるの は危機 が落 ち着 い
てか らの ことであ った。
*
E3 金融市場が情報 を適切 に評価 していない例 に 「
群れをなす (
her
di
n
g)
」 とい う現象があ り、投資
家は他の投資家の行動 に追随す る傾向がある。 ヘ ッジファン ドが今回の危機の引 き金 を引いたか ど
うかの明確 な証拠 はないが、有力投資家の うわ さは市場 を一方向に動かす要因 となる。
*
E4 通貨下落はないがバブル崩壊後の 日本経済 も同様 の問題があ り、負債 の重圧 にデフレが伴 うと調
整が極めて困難 になる。
-i
f
l
‥
第 4に、経 済 が下方 スパ イラルに陥 る危 険があ る場 合 の、マ クロ経 済政策 の重 要性 で
あ る。 従 来型 の経常収支危機- の対応 であ る緊縮政策 を押 しつ けた IMFの処 方篭 は、
景気 下 降 を さらに悪化 させ る こ とにな り、信 認 の回復 ・通貨安 定 には逆効果 となっ た。
この ような状 況 で は拡張 的財 政政策が望 ま しか ったわけであ り、 IMFの プログラム も
危機 の深化 につ れて修正 され る こ とになった 。
最 後 に、社 会 の最 も弱 い層 が大 きな損 害 を受 け る こ とにな る とい う事 実 で あ る 。 マ
ネーゲ ーム に狂奔す る者 だけが相場 の乱高下 の損 害 を負 うな らば問題 は少 ない。 しか し、
通貨暴落 が実物経 済 の収 縮 を招 き、 タイ、 イ ン ドネ シア、韓 国で は失業率 が 3倍 以上 に
上昇 した し、 イ ン ドネシアで は生活苦 に よる社会不 満が暴動 につ なが りスハ ル ト政権 が
崩壊 した 。 社 会 の安定 には、危機時 は もとよ りそれ以前 の段 階か ら、経済優先 で はな く
社 会 的側 面へ の視点 が欠 かせ なか った ことを示 してい る。
第 3節
国際金融システム改革の論点
アジア経 済危機以降の 2年 間 にわたる様 々な経験 と議論 を経 て、本年 6月の ケル ン ・
サ ミッ トで 国際金融 シス テムの改革の輪郭が ようや く見 えて きた。本節 で は、 この 2年
間の革論 の推 移 キ現 時点 での改革 の方向 を整理 し、その 中で の労働組 合の関わ りにつ い
て考 える こ ととす る。
(この 2年 間の議論 の推 移 )
7
年半 ば頃の国際金融 をめ ぐる議論 の焦点 は、資本取 引 の
アジア経 済危機 が発 生 した9
自由化 の推 進 であ った 。 デ ンヴ ァ一 ・サ ミ・
ツト (
9
7
年 6月) の経 済声 明で は、 グローバ
ルな金融 シス テムの安定 の強化 について も言 及 してい る ものの、 IMFに資本取 引 の 自
由化 を促 進 す る権 限 を付 与す るべ く IMF協 定 の改正 を進 め る とい うことが一つ の ポ イ
ン トであ った。 その実質 的合意 の 目標時点 とされ た9
7
年 9月 に香港 で開催 された IMF
暫 定委員 会 で は、 アジア危機発生後 に も関わ らず 、資本取 引 自由北 に関す る声 明が採択
され た。 なお、 アジア経 済 については、今 回の混乱 で短期 的 には減速す る ものの、
▲経 済
の フ ァンダメ ンタルは しっか りしてお り、所 要の調 整が続 け られれば中長期 的 な見通 し
は良好 で あ る との見解 が示 されていた。
その後 、危機 が ます ます深 ま り、経済見通 しは回 を逐 うご とに下方修正 され、従 来型
ー1
2-
の経常収支危機で はな く資本収支 が問題 の新 しい危機である と認識 され る ようにな′
つた。
その中で、市場 が的確 な情報 を もとに適切 な判 断 を行 える よ う 「
透 明性」 の向上 、経 済
政策等 に関す る国際的 なモニ タリングの強化 、国内の金融 シス テム強化 のための適切 な
銀行監督 な どが強調 され る ようになるが、当初の議論 は専 ら新興経 済諸 国の側 に問題 あ
りとす る ものであ った。す なわち、透 明性 の向上 な どに よ り市場 の不完全性 を正 す こと
が可能であ り、そのため には B IS等 の国際基準 の遵守 が重要 との考 え方で、危機 の前
か ら議論 されていた課題 であ る。 しか し、98年夏 の ロシア危機 か ら大手ヘ ッジフ ァン ド
・LTCMの破綻 の救済劇 に至 り、貸 し手 、先進 国の側 に も大 きな問題 があ る こ とが共
通 の認識 となった。
また、 イン ドネシアの大 きな社 会的混乱 な どを目のあた りに して、危機 の当初 にはほ
とん ど言 及 され るこ との なか った 「
社 会的セ イフテ ィネ ッ ト」 の重 要性 が次 第 に強調 さ
れ る ようになった。 ケル ン ・サ ミッ トの声明では、重要 な 6本柱 の一つ に 「
貧 困かう最
も脆弱 な層 を保護す るための社 会政策 の促進 」が掲 げ られ る ようにな り、経 済発展 及 び
改革 は社 会のすべ ての構 成員 に恩恵 を もた らす もので なけれ ばな らない とい うように、
市場万能主義が後退 し、経済 は社 会の ため にあ る との視点が戻 って きた こ とは大 きな前
進 である。
この ような議論 と並行 して、 日本政府が提起 した貴重 な論 点 の一つ に危機 に対 す る地
域 的対応 があ る。 危機 に見舞 われた国 に対 して国際社 会が流動性 を迅速 に供給す る こ と、
いわゆる 「
最後 の貸 し手 」機能 を強化す るこ とが、投資 家の 間のパ ニ ックを防 ぎ市場 の
信認 を早期 に回復 す るため に必 要であ る。 日本が9
7
年秋 に IMFを補完す る もの と して
アジア通 貨基金構想 を提 唱 した際 には、 IMFの機 能 を掘 り崩す ものであ る とアメ リカ
等 か ら激 しく反対 された。 しか し、危機が深 化 L IMFの処 方隻 が アジア諸 国の経 済実
態 の的確 な分析 に基づ くもので なか った こ とが明 らか とな り、9
8年秋 の 「
新宮沢構想」
は好意的 に受 け入れ られ る ようになった。 IMFに予 防的 ク レジ ッ ト ・ライ ンと呼 ばれ
る新 たな流動性供給 の仕組 み*
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が設 け られたの も、 この ような議論 があ ったか ら とい え
る。 また、国際的支援 に関 して常 にモ ラルハ ザ ー ドの問題 が提起 され るが、危機解決 に
民 間セ ク ター を関与 させ る (リス クテ イクの結果 であ る応分 の負担 を負 う) こ とが強 く
*
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CCL)。健全 な経済政策 を追求 して きた国 には、危 機 の伝
9年 4月の IMF理事 会で設 け られ た。
播 か ら守 るため に予 防的 に短期資金 を融資す る制度 で、9
-1
3-
求 め られ る ようにな った 。
また、9
8年 9月のマ レー シアに よる資本取引 に関す る規制 の導 入が、短期資本 をめ ぐ
る議論 に一石 を投 じた。発表 の当初 は、必 要 な構造改革 を先送 りす る ものであ り」経済
効率 を犠牲 にす る もので あ る との批 判 的 な見解が多か った。 しか し、「ダムが決壊 して
い る時 には水 を如何 にせ き止 め るかが優先 であ るム また、治水が行 われて こそ水 の流 れ
が有効 にな る。
」とい う比喰 が示す ように、短期資本 を有用 な流 れ とな る ようにコ ン ト
ロールす る ことが妥 当であ る との意見が次 第 に強 まって きてい る。
(
ケル ン ・サ ミッ トで示 された改革の方向)
ケル ン ・サ ミッ トで は、 G 7蔵相 か らの 「国際金融 システムの強化 」 に関す る報告 が
提 出 され た。 この報告 で は、
①
国際金融機 関及 び国際的 ア レンジメ ン トの強化及 び改 革
② .透 明性 の強化 及び最 良の慣行 の促進
③
先進 国 におけ る金融規制 の強化
④
新 興市場 国のマ クロ経 済政策 及 び金融 システムの強化
⑤
危機 の予 防 ・管理 の改善 及 び民 間セ クターの関与
⑥
貧 困かつ最 も脆弱 な層 を保護す るための社会政策 の促 進
の 6つの重 要 な分野 を取 り上 げて具体 的な改革 の方向 を示 してい る。
ポイ ン トは、危機 の予 防のため市場 の不完全性 を極力是正す る こと、それで も危機 は
発生 しうる もので危機 の影響 を小 さ くす る こと、 これ らの問題 につい て先進 国 ・貸 し手
ヾ
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▲
†
と途上 国 ・借 り手 の双方 に課題 が あ る とい うことである。 また、先述 した ように社 会政
策が一つ の柱 に立 った こ とが注 目 され る。
具体 的 にい くつかの論 点 をあげ る と、先進 国 (
貸 し手) の側 で は、金融規制 の強化 と
して リス ク管理 の改善 を掲 げてお り、現在 、 B ISの 自己資本比率規制 の見直 しが進 め
られてい る*
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。 また、ヘ ッジ フ ァン ド等 の高 レバ レッジ機 関
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)の規制 のあ り方 につい ては、 まず高 レバ レッジ機 関 に資 金 を提供す る
銀行 を通 じた間接規制 の方策が B ISか ら提 示 (
99年 1月) されてお り、 さらに今秋 ま
*
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69
9
年 6月 に BISか ら見直 し案が提示 された。 コメ ン ト提 出期 限が2
0
0
0
年 3月末 で、同年 中に修
正案 をまとめる予定。 リスク評価 を 3-5段階 に細分化す ること等 を提案 している。
ー1
4-
で に金融安 定化 フ ォー ラム*I:
7が直接 規 制 を含 む幅広 い観 点 か ら報 告 を ま とめ る こ とに
な ってい る。 さらに、債権者 (
貸 し手 )が 自 らとった リス クの結果 を受 け入れて初めて
市場規律 が働 くこ とか ら、危機 の解決 に当た り民 間セ ク ター (
貸 し手 ) を関与 させ るた
めの原則 及 び手段 の フ レーム ワー クを 事前 に設定す る必 要が あ る との合意 が な されだ E
H
。
新興市場諸 国の為替制度 につい ては、最 も適切 な制度 は貿 易相手 国 との関係 の深 さな
ど、具体 的 な経済状 況 に よって異 な りうる し、経 済状況 は時 間 とともに変化す るので、
あ る国に とって も適切 な制度は 変化す る と述べ てお り、特定 の通貨 や通 貨バ ス ケ ッ トに
ペ グ した為替制度 を否定 したわけで はない。 ただ し、特定 の為替 レー ト水準 を支 えるた
め に大量 の介入 を行 う国 に対 して は、一定の条件 が満 た され る場 合 を除 いては国際社会
が大規模 な公 的支援 を供与す るべ きで はない と してい る。 一定 の条件 の例 と して、その
水準が維持 可能 と判定 され、強固かつ信頼 しうる コ ミッ トメ ン下 とそれ を支 え る ア レン
ジメ ン 下里に よって裏付 け られ、一貫性 のあ る国内政策 に裏付 け られ る場 合が あ げ られ
ている。.なお、 これ はあ くまで も例示 で、一部で主張 され る ような変動相場制 か強固 な
固定相場制 の両極 しか ない とい うわけで はな く、 もう少 し柔軟 な立場 であ る。
資本移動 に関 しては、 まず 、資本取 引の 自由化 は、注意深 く順序立 った方法で実行 さ
れ るべ きであ り、健全 かつ適切 に規制 された金融 セ ク ター及 び一貫性 のあ るマ クロ経 済
政策の フ レーム ワー クが伴 わなければな らない と述べ てい る。 その上 で、資本流 入規制
が 国内金融 システム を強化す る過渡 的 な期 間 において正 当化 され うる と してい る。 また、
資本流 出規制 は、長期 的 な大 きな コス トを もた ら しうる し、それ ほ ど効 果 的 な政 策手段
で もな く、改革の代 替手段 となってほな らない と してい る ものの、一定 の例外 的 な状 況
*
E7 金融 監督 及 びサ ーベ イラ ンスの分 野 に関す る国際的 な協 力 ・強調 を強 化す るため に、9
9年 2月の
G7で創 設 が決 め られ 、 4月 に初 会 合 。 各 国の金融 当局 の代 表 及 び関連 国際機 関 で構 成 。 当初 、
① 高 レバ レ ッジ機 関 、② オ フ シ ョアセ ンター、③ 短期 資本 移動 の 国際 金 融 の安 定 性 へ の影 響 、 の
3分野 を研 究 してい る
。
*
E8 韓 国の危機 の際 には9
8年1
2月 に外 国銀行 に融資 の ロール オーバ ー (
更新 ) を行 うよ う国際 的 に説
得が行 われ た。 これ に対 し、 イ ン ドネ シアで は借 り手 が銀行 で はな く一般 企 業 で数 多 く分散 してい
るため、債 務 問題 解 決 が進 まず事 態 を更 に悪化 させ る こ とになった。
*
E9 例 えば国内通 貨 供給 量 と外 貨準 備 を結 びつ けるガ レンシー ・ボー ド制 が あ る 香 港 な どで採用 さ
。
8
年 2月 にスハ ル ト政権 が この案 を示 して物議 をか も した。
れてお り、 イ ン ドネシア危 機 の際 には9
-1
5-
で は必 要 とな りうる としてい る。
IMFな どの国際機 関 について は、 IMF及び世 界銀行が国際金融 の分野 での中心 的
な役割 を果 たす との認識 を示 した上 で、その有効性 を高 めるため には改革が必 要 とい う
こ とであ る。 アカウ ンタビリテ ィ (
説 明責任 )及び透 明性 の強化や、金融 グローバ ル化
の進展 に対応 した適切 なプログラム を生 み出せ るよう仕組み を改善す るな どの改革であ
る。 例 えば、 IMFによるサ ーベ イラ ンスの改善、 IMF暫定委員会 を常設 の 「国際金
融通貨委員会」 に改組す る こ と*
川'
等があげ られてい る。 アジア危機 に際 して IMFの処
方隻 に不適切 な点があ った こ とは確 かであ り、国民 に よる選挙 な どの評価 を受 け るこ と
の ない国際機 関の アカウ ンタビリテ ィの向上 は、 と りわけ重 要 な点であ る。
(
国際金融 システム改革 と労働組合の関わ り)
グローバ ル化 した国際金融 の不安定 な動 きが、マ ネーゲームに狂奔 す る投資家 だけ に
影響 を与 えるな らば、その改革 は国際金融 の専 門家 にまかせ てお けばいい。
tしか し、 ア
ジア経 済危機 に端 的 にみ られた ように、あ るい は我 が国のバ ブル崩壊 にみ られた ように、
金融市場 の混乱 は実物経 済 に影響 を与 え、勤労者の生活の安定 を掘 り崩す ものであ るか
ら、労働組合 は無 関心 で はい られ ない。 さらに、投資 家が動 か してい るマ ネーの多 くは、
もとをた どれば勤労者 の貯 蓄で あ る。 このため、 ケ ル ン・
サ ミッ トに向 けた TUACの
声 明で は、 国際金融 シス テムの改 革 を大 きな柱 として取 り上 げてい る。
この 2年 間の議論 の移 り変 わ りをみ る とわか るように、市場万能的 な考 え方か ら市場
を制御 す る必 要があ る との考 え方-経 済思潮 が シフ トして きてい る。 アメ リカ主導 の グ
ローバ ル ・ス タンダー ド論 が強い 中で、 日本 やマ レー シア等 の問題提起 があれば こそ、
流 れが変 わ って きたのである。
TUAC声明で は、「
銀行家 と財務官僚 は、労働組合や市民社 会の公式 な参加 な しに、
未 だ閉 ざされた ドアの向 こうで議論 を行 ってい る。 ・・・政府 は、現在必 要 とされ てい
る国際的 な規制 の枠組み につ いて早急 に報告す るこ とを目的 とす る独 立 国際委員会 を、
広範 な参加 の もとに設置すべ きであ る。 最初 のステ ップ として、金融安定化 フ ォ∵ ラム
は公聴 会 や協議 を行 うべ きであ る。
」 と述べ てい る。 技術 的 な面 は国際金融 の専 門家 に
*
E1
0 年 2回の大 臣級会合 の前 に代 理 レベ ルの会合 を開催す るこ と、世銀総裁 が特別 の役割 を果 たす
こ と等 を指摘 してい る。
-1
6-
委 ねる と して も、改革の基本的方 向、考 え方 を作 る うえで社 会構 成員 の広範 な参 加が欠
かせ ない。 そ して、経済 と社 会の接点 を最 も真撃 に考 えてい る主体 が労働 組合であ る。
「グローバ ル化 を民衆 のニーズや希望 に合致す るように制御 す る国際的 な政第 ・
・制度 を
築 く」 ため には、労働組合か らの問題提起 が重 要 な役割 を果 たす であ ろ う。
第 4節
むすび 一国際金 融 システム改革への視点
本稿 をむすぶ にあた り、冒頭 で指摘 した開放 的国際経 済 の トリ レンマ に どう対 処 して
い くか を考 えたい。
トリレンマの うち、各国の国内経済調整 のためのマ クロ経 済政策 の独立性 を放棄す る
こ とは、特殊 なケース を除いて困難 であろ う。 従 って、為替 レー トの安定 と資本移動 の
自由の どち らを重視す るかがポ イ ン トとなる。
先進 国で は、国内の金融 システムが発達 しているので資本移動 の 自由 を重視 し、為替
レー トの不安定 を容認す ること、す なわ ち変動相場制が基本 となろ う。 ただ し、過度 の
為 替 レー トの変動 は避 け るこ とが望 ま しく、そのための国際協調 政策 を追 求す る必 要が
あ る。 他 方、発展途上 国では、為替 レー トの安定 をよ り重視 し、そのため に資本 移動 の
あ る程度 の規制 を容認す る とい うのが、国内金融 システムが発達 してい ない段 階では望
ま しい選択 であ ろ う。 為替 レー トは先進 国の ような純粋 なフロー ト制 で はな く、関係 の
深 い国の通貨- の アジャス タブル ・ペ グ制 、あ るい はバス ケ ッ ト方式 となろ う。 そ して、
「
最後 の貸 し手」 に相 当す る ような国際的基金 を創設す るこ とが必 要であ り、新宮沢構
想 が アジア地域 でのその第一歩 となる こ とが期待 され る。
この結果 、国際金融 システムにお け る各国の通貨供給 の基礎 をなす信 用創造 システム
は、各国の主権 の もとで運用 され るこ ととなる。 従 って、金融機 関の監督 と健全性維持
のための規制 (
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egul
ati
on) 、
破綻処理 や預 金者保護等 の金融混乱 防止 の枠
組 み は各国の責任 となる。 この うちpr
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onは、 国際金融市場 で各国の
金融機 関が対等 の条件 (
equalf
ooti
ng) で競争す るため にI
は 、 B IS規 制 の ように共
通 の規制 であ る ことが望 ま しい と考 え られ る。 ただ し、景気 の振 れ を大 き くして しま う
こ との ない よう、各 国の景気循環 に応 じた柔軟性 を確保 した方式 が望 ま しい とい え よう。
-1
7-
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招-
デ ンヴァ(
9
7年 6月)
1
5
.世界の貿易及び民間資本の流れの急速な拡大に応 じ、I
FI
s(
国際金融機関)は適応 と改革を継続的に行 う必要がある。したがって、我々
<統合された世界経済の構築>
・変化する世界における国際金融機関
1
4
.金融の安定を促進 し、発生し得る金融危機を緩和するためのこのような努力は、我々が極めて重視 している進行中の重要なプロセスの
一部である。我々は、国内の監督当局に対 して、規制面での国際協力を強化するために更に提案 を作成 し、それ らを実行するよう求める。
我々は、国際金融機関及び国際規制機関に対 して、新興市場経済がその金融システムと健全性基準を強化することを支援す る役割 を果たす
よう呼びかける。蔵相はJ一層の措置をとるためのアプローチを策定すべ く、関連する監督機関、国際規制機関及び国際組織 と協議 し、来
年のサ ミッ トに先立って これ らのイニシアティブの実施に係る進捗状況を報告する。
1
3.新興市場経済における金融の安定に関する作業部会は、新興経済の金融システムの強化を支援するための具体的な戦略の概要を示 した。
この作業部会には、新興市場経済か らの代表も参加 した。また、バーゼル銀行監督委員会は、改善された健全性基準の世界的な採用に大き
く責献する一連の 「
コア ・プリンシプル」 を策定 した。我々は、これ らの報告内容の普及及び支持並びにこれ らの報告に示 された勧告の実
施を要請する。
1
2
.各国の監督当局及び国際規制機関は、通常時及び緊急時の双方において国際的に活動する金融機関の監督を強化するための、協力に関
する取決めのネッ トワークを整備 し、提案 を作成 した。このような努力は、規制の枠組みに市場の進展を一層反映させる上で役立つであろ
う。更に蔵相は、監督上の目的のための情報交換を促進及び改善する法令上の必要な変更を支持することで一致 した。我々の消費者、投資
家及び規制当局が リスクを一層明 らかにし、管理 し及び抑制することを手助けするために、 リスク評価ゐ強化、外為決済 リスクの軽減及び
0作業部会が、出現 しつつある電子的支払技術に関 し各国
市場の透明性の改善に向けた措置が とられている。更に、電子マネーに関する G1
のアプローチを導 く手助けとするため、一連の広範な目標及び主要な考慮事項を明 らかにした。
ll
.国際金融市場は、ますますグローバル化 し複雑化 しつつある。 この状況は、国際金融システムの機能の効率性向上につなが り得る新た
な機会を提供するものであ り、このことにより成長と繁栄が促進される。同時に、これ らの変化は新たな課題をもた らす。ハ リファックス ・
サ ミッ ト以来、リヨン ・サ ミッ トを通 じて、我々は、金融規制当局及び国際金融機関に対 し、技術革新を抑圧することな く、また、グロー
バル化、自由化及び競争の恩恵を損なうことな く、発生し得るシステミック ・リスク及び波及 リスクに効果的に対応 し、金融の安定を促進
するための措置をとるよう奨励 してきた。我々は、国際金融システムの強化のための協調的な努力を歓迎 し、 リヨンで特定 した主要分野に
おける進展の概要を示 した蔵相報告を支持する。
<グローバルな金融システムの安定の強化>
サ ミッ ト経済声明の国際金融に関する論点の推移
卜
弼-
il
1
9
.I
FI
sが意欲的かつ重要な改革を成功させるために必要とする多数国間による支持及び財政的資源が確保されるようにすることは、我々
D
A(
国際開発協会)のような極めて重要な譲許的融資業務に関 して、
の責務である。これは、国際開発金融機関にとっては、特に、例えば I
我々が資金面でのコミッ トメン トを完全に履行することを意味する。我々はまた、MI
G
A(
多数国間投資保証機関)が、世界銀行 グループの
他の機関と協力しつつ、開発途上国における民間投資への支援を継続するためには十分な財源を必要としているとの認識で一致 している。
川Fがシステム上の責任を果たすために引き続き十分な財源を有することが重要であるとの認識に立ち、我々は、川F錘事会に対 して、9月
1
8.持続的な経済開発と健全な民主主義を実現するためには、透明で責任があ.
りかつ対応力のある公的機関が不可欠である。この関連で我々
は、良い統治を促進するための世界銀行の長年にわたる努力及びアジア開発銀行による良い統治に関する方針の採用を歓迎する。我々は、
川F及び世界銀行に対 して、統治に関する最良の実践についての原則及び指針か らなる統治の問題に関する方針の策定を完了するよう要請
する。
1
7
.世界銀行の 「
ス トラテジック ・コンパク ト」は、貧困の削減に対する世界銀行のより強力な対応、民間部門との強力な新たなパー トナ
ーシップ並びに健全な政策及び全市民の福祉に真にコミットする国々に対する業務の集中を強調するものであり、新たな方向への歓迎すべ
きコミッ トメン トを示す ものである。我々は、特に最貧国における制度面での能力構築によ り重点を置 くことへの世界銀行のコミッ トメン
ト並びにこの取組みにおいて透明性、責任及び良い統治が極めて重要であるとの世界銀行の認識を全面的に支持する。我々は、これ らのコ
ミッ トメン トの完全なかつ時宜を得た実行を期待する。我々は、地域開発銀行が、
て れ らの課題への対応に全面的に参加するよう要請する。
我々は、香港総会において、開発途上国における民間部門のインフラ投資を支援するための革新的な方策を示す との世界銀行グループのイ
ニシアティブを歓迎する。
1
6
.我々は、川F(
国際通貨基金)による国際通貨制度の監視を評価する。我々は、各国が貿易及び投資の自由化を通 じて長期的な潜在力を
築 こうとしていることへの 川Fの支援は特に重要と考える。我々は、世界の資本市場における新たな課題に対応するために 川Fに資本取引
M
p協定の改正の主要な内容について、香港での世界銀行 ・I
M
F年次総会までに実質的合意に達
の自由化 を促進する特定の権限を付与する I
することを目指す。我々は、監視の強化及び透明性の改善の促準についての 川Fにおける進展を歓迎する。重大なマクロ経済上の影響をも
た らす可能性のある金融部門の問題並びに良い統治及び透明性の促進に対 して注意が払われること瀕 、金融危機の回避 に役立つ。 I
M
Fが行
う加盟国との活動における適切な透明性や同様に重要である。我々は、これ らの分野でゐ I
M
Fにおける進展を歓迎する。我々は、特別引き
M
F協定の改正案に対する実質的合意に達することを目指す とともに、I
M
Fに対 して、9月の香
出し権の 「
衡平な」 配分を規定するためた、I
港での世界銀行 ・川F総会までに、最終合意に至るよう努めることを要請する。
は、ハ リファックス ・サミット以降進んでいる意欲的な I
FI
s改革の計画に対する支持及び、これ らの改革の包括的な実施によって国際通貨
制度の有効性が大幅に強化されることに対する確信を再確認する。我々は、これ らの機関がその努力を続ける中で、これ らの機関と共同で
作業すること、並びに成功'
に必要な財源と多数国間による支持を提供するために、我々の間で及び国際通貨制度に利害を有する他の国々と
の間で協力することを誓約する。
1潔O-
バーミンガム
(
9
8年 5月)
・秩序立った資本勘定の自由化を進める最善の方法に関する助言を提供することと共に、各国が国内政策及び機構に関 し必要な強化 を行
うことによ り支援すること、
・川Fに対 して、情報を提供 し、市場の安定を促進するため、資本フロー、特に短期フローを如何に効果的に監視するかについて検討す
るよう求めること。
○世界的な資本 フローに対する世界中の国の準備への支援
・例えば特別データ公表基準に同意 し、同基準を満たさないメンバーを公に特定することによ り、よ り正確かつアクセス可能な金融デー
タを提供するよう 川Fメンバーを愁憩すること、
・財政政策の透明性における良好な実践に関するコー ドの採択を歓迎 し、その促進を態漁すると共に、 川Fが類似の金融及び通貨政策に
おける良好な実践に関するコー ドを検討することを支持すること、
・川Fメンバー及びその政策について、メンバーの政策決定及び脆弱性に関する I
q
Fの懸念を含め、よ り多 くの情報を '
I
M
Fが公表 し、ま
た、川F自身の意思決定に関するよ り多 くの情報も公表するよう態漁すること。
○透明性の向上
8
.我々は、世界の金融構造を強化するための方途に関する我々の蔵相の報告を歓迎 し、承認する。彼 らの構想の中で、我々は、以下につい
て特に重要 と考える。
7
.これまでのサ ミッ トもまた、世界金融 システムを強化する方途に取 り組んできてお り、これは、改革のプロセスの継続 とみなされるべき
である。個々の国にとって、もし安定を達成しようとするな らば、健全な経済政策、開かれた市場及び良い統治を追求することが不可欠で
ある。同時に我々は、これ らの健全な政策を促進 し、将来の失敗を防止するために支援 し、かつ、危機が起 こった場合に対応するに当たっ
て、国際金融機関 (
I
F
I
s
)
が果たす中心的役割を確認する。それ らの対応は、最近の諸問題に取 り組む上で極めて重要であった し、我々は、
将来におけるそれ らの役割を強化する方法を兄いださねばならない。
6
.グローバ リゼーションは、すべての国及び人々に莫大な経済的利益をもたらす力を有 している。しか しなが ら、アジアの金融危機は、世
界金融 システムに潜在的な弱さと脆弱性があることを明らかにした。特に我々は、そのような危機が起 こった場合の深刻な人的及び社会的
影響を認識 している。 したがって、我々は、世界の金融構造を強化 し、そのような危機が将来再発する危険を減少させ、また、それが起 こ
った場合の衝撃に対 してより強靭なシステムを構築するために措置をとることが緊急に必要であると考える。
<世界金融 システムの強化>
の香港での世界銀行 ・
川F総会までに、第 1
1次増資に関する作業を完了するよう努めることを要請する。最貧国の成長及び開発を促進する
M
Fが果たす十分な役割を維持するために、E
S
A
F(
拡大構造調整ファシリティー)が十分な財源をもって継続されることが必要である。
上で I
-粛i
]
-
ケル ン
(
9
9年 6月)
持直を提言する大蔵大臣か らの報告書を歓迎する。我々ま、これ らの提言が全体 として国際金融 システムの大幅な強化を示 してお り、その
結果、金融危機のリスクの減少に頁献するとともに、将来の効果的な危機管理をより容易にすると確信する。
6
.アジア、ロシア及びラテン ・アメリカにおける過去 2年間の金融危機は、多くの開発途上国における弱い政策や制度及び先進国における
0月 3
0日の世界経済に関
銀行や投資家の側のリスクに対する不適切な注意を含む国際金融システムの重大な脆弱性を明 らかにした。昨年 1
する声明に串いて、我々は、
.これ らの問題に対姓するために既にとられているいくつかの措置及び更なる改革が必要 とされる多 くの主要な
分野を特定 した。その後、それ らの多 くの分野において重要な進展が見 られた。我々は、本 日発表された、この進展を際立たせつつ更なる
にある。
5
.ますます統合されつつある世界経済において、課題は、各国の行動及び強化された国際協力を通 じて世界的な金融の安定を促進すること
<Ⅰ
Ⅰ
.国際金融システムの強化>
効果的な対話が可能 となるよう同フォ」ラムを如何に拡充できるかについて更に検討するよう求める。我々は、これ らすべての問題に関す
る確固たる提案が本年後半に決定のために提出されることを希望する。また、我々は、我々の蔵相に対 し、その進展に関 し遅滞なく報告す
るよう要請する。
9
.我々は、我々の蔵相に対 し、新興市場及び他の諸国と協力し議論 しつつ、由際金融機関及び民間セクター と共にこれ らの構想を推 し進め
るよう求める。我々はまた、我々の蔵相に対 し、既存の世界的な議論のためのフォーラム∴特に 川F暫定委員会においてよ り深 くかつよ り
・民間セクターが金融危機の解決に時宜を得た適切な役割を果たすよう確保するための枠組みを構築すること、
・危機の場合において、債務国が適切な調整政策を採用 している場合に、債務の一時的未払いが生じている状況を含め、延滞に陥ってい
る国に対 して、融資を検討する用意があることを示すよう 川Fに対 し要請すること、
・国際的な債券の発行の際に、債務不履行の場合に再交渉を可能とする条項を悠聴すること。
○モラル ・ハザー ドを減少するために民間セクターが自らの決定に十分な責任をとることの確保
・すべての国が効果的な銀行監督に関するバーゼル ・コア ・プリンシプルを採用し、実施するよう悠漁すること、
・コーポ レー ト・ガヴァナンス及び会計原則に関する国際的なコー ド及びガイ ドラインを策定すること、
・国内の金融監督及び規制制度に関する多角的サーヴェイランスのシステムを構築すること。我々の蔵相は、その方途につき検討するこ
ととなろう。また蔵相は、関連する国際機関に対 し機構改革のための選択肢を含め、この分野における「層の協力を達成するための方
途に関する提言を策定するよう要請 した。
○国内金融システムの強化
-22-
。
債権者は、一層の規律をもって行動するように促されるとともに、貸付に伴 うリスクをよ り慎重に評価するように奨励 されなければな
らない。我々は、以下のための具体的な行動を要請する。
・バーゼル委員会に串いて提案されている自己資本合意の見直 しを通 じる等によ り、 リスク評価及び リスク管理を改善すること。
・透明性の向上を通 じること卑どによ り、監督当局及び規制当局にとっての高レバ レッジ金融機関のインプ リケー ションに対応すること
・オフショア金融セ ンターに対 して、国際的に合意された規制に関する基準を遵守するとともに、資金洗浄に対する闘いにおいて、よ り
実効的に協力するように奨励すること。
C
.先進国における金融規制の強化
これは、市場参加者が十分な情報に基づいて リスクに関する判断を行うことを可能 とし、また、政策立案者が健全な政策を実施するよ
り大きなインセ ンティブを与える。我々は、次のことを要請する。
・公的部門及び、適当な場合には、民間金融機関双方のために、国際的に合意された透明性に関する行動規範及び最良の慣行 に関する基
準を速やかに作成 し完成すること。更に、資本移動に関するよ り迅速かつ包括的なデータの提供に高い優先順位 を与えるべきである。
高 レバ レッジ機関 (
H
LI
s
) への直接的かつ具体的なエクスポージャー及び高 レバ レッジ機関自身による関連情報に関す る情報開示の質
及び適時性を改善するための措置がとられるべきである。
・特 に、強化 されたサーベイランス及び 川Fの透明性報告書の中での結果の公表を通 じることによ り、こうしキ行動規範凍び基準が遵守
されること、並びに、金融及び経済政策に関する様々な基準並びに最良の慣行を国際的な金融 ・経済政策に関する基準集のような共通
の参考資料 として編集すること。
・I
M
F及び世界銀行の文書の更なる公開を通 じた国際金融機関の透明性を向上すること、及びそれ ら機関の機能についての内部 ・外部双
方による評価 を実施するための更なる措置をとること。
B.透明性の強化 と最良の慣行の促進
これは、新たな機関を必要とはしないが、既存の機関が今 日の国際金融 システムの要請に適応することを必要 とする。 川F及び世界銀
行は、国際経済金融 システムにおいて及びこれ らの分野での各国間の協力を促進するに当た り、中心的な役割 を担 っている。我々は、次
のことを歓迎する。
・金融市場の監督及び規制の分野における国際的な協力及び協調を向上させるための新たな金融安定化 フォー ラムの設立
・川F暫定委員会に 「国際金融通貨委員会」 として永続的な地位を与えること及び 川Fのサーベイランスやプログラムを更に改善するこ
となどによって、国際金融機関の統治機構の強化及び改革
・ブレ トン ・ウッズ機関か らなる制度的枠組みの中で、国際金融 システム上重要な諸国間の対話のための非公式なメカニズムを設立する
ための協力へのコミットメン ト
A
.国際金融機関 (
I
F
I
s
)及び国際的アレンジメン トの強化及び改革
7
.我々は、以下の措置を特に重視する。
-23
-
8
.我々は、これ らのイニシアティブ及び改革の完全な実施が、世界の金融システムの安定性の向上に重要な貢献をもた らす ことを確信する。
我々は、大蔵大臣に対 して、他国、国際金融機関、・
民間金融界と緊急に協力しつつ、●
これ らを早急に前進させることを要請する。
国際金融機関及びその他の機関はこれ らの目標を各機関の政策の主要項 目としなければならない。
社会政策は存立可能な国際金融システムの基礎である。経済発展及び改革は社会のすべての構成員に恩恵をもた らす ものでなければな
らない。
・貧困かつ最も脆弱な層は、危機の際の調整の負担からよりよく保護されなければな らない。
・国際社会は、各国政府及び各国当局と共に、長期的発展の基礎 となる、教育、医療及び他の基礎的社会的ニーズを通 じた人々への投資
を促進するために協力しなければな らない。
F.貧困かつ最 も脆弱な層を保護するための社会政策の促進
資本市場が益々開放的なものとなっている世界においては、我々は、自らが負うリスクの結果を民間債権者が受け入れるような形で期
待形成を行 うとともに、金融市場における危機の伝播のリスクを削減する必要がある。我々は、以下の点を要請する。
・健全で持続可能な政策を追求 しているが、金融市場における危機の伝播によって影響を受ける潜在性を有する国々に対する 川Fの新た
な予防的クレジッ ト・ライン (
C
C
L
)を通 じた支援
・ソブリン債契約における集団行動に関する条項の利用を拡大するよ り強固な努力などを通 じて、危機の回避及び管理における民間セク
ターの関与のための市場原理に基づいた手段の利用拡大並びた新興市場国と債権者 との間のよ りよい意志疎通 と協力。
・危機解決における民間セクターの関与のための一般的な枠組みについての合意。これは、大蔵大臣による報告書の中で述べ られている、
行動のための原則、考察及び広範問にわたる手段を予め示すものである。
E
.危機の予防 ・管理の改善及び民間セクターの関与
最近の危機は、新興市場国の借 り手が、国際金融システムへの統合か らの十分な恩恵を享受するためには、自国の政策の枠組み及び金
融システムを強化することが必要であることを示した。このような観点か ら、我々は以下の点を奨励する。
・新興市場国が、自国の資本勘定の自由化に対 して注意深 くかつよく順序立ったアプローチを取 りつつ、金融 システムを強化するととも
に、短期資本借入れに対する過度の依存を避けること。
・新興市場国が、各国の経済環境を反映させつつ一貫性のあるマクロ経済政策及び堅固な金融システムによ り支え られた、適切かつ持嘩
可能な為替相場制度を維持すること。 川Fの政策は,この目的をより効果的に促進することに焦点をあてる必要がある。
・川F及び世界銀行が、.
金融システムの強化に関する助言及び支援を新興市場国に対 して提供する上で、相互の協力を強化すること。
D
.新興市場国のマクロ経済政策及び金融システムの強化
第 Ⅱ部
金融改革の現状 と課題
一勤労者の視点か ら-
第 1節
日本版金融 ビッグ ・バ ンの推移
1
996年 11月、新 しい選挙制度 の もとでの総選挙 に勝 利 した橋 本首相 (
当時) は、内外
に頻 発 す る金 融 不 祥 事 を に らみ つ つ 、 「わが 国金 融 シス テ ムの改 革
2000年 をめ ざ し
て」 とい う 日本版 金融 ビ ッグ ・バ ンに関す る首相声 明 を発表 した。 これ は、従来 の 日本
の金 融 シス テ ムの漸次 的 な金融 自由化措 置 を一挙 に全面 展 開 して、 「自由 (フ リー)、
公正 (フェア)、 グローバ ル」 を三原 則 とす る大改 革 をすす め、 20
01
年 3月 まで に これ
を完 了す る とい う方 向性 を示 した ものであ った。
日本 の金融 システムは、それ まで国内中心 (
国内封 鎖 型) で、行 政 の規制政策 に依存
し、限定 され た範 囲の もとでの市場 メカニ ズムに よって運用 され て きた とされ る。 いわ
ゆる 「
金融護送船 団方式」 といわれて きた体制であ る。 この ような金融 システムは、 日
本 が まだ若 い開発途上 にあ ったい わば 「
小 国」 時代 の経 済 システ ム に適合 した もの とさ
れ て きた。 ここで は、産業発 展 の ため等 の資金不足 が常 態 で あ り、国内の資金 をよ り多
く集 め (
高貯 蓄 の奨励 )、必 要 とされ る分 野 に戟略 的 に投 入 してい くため には合理性 を
もった金融 システムであ る といわれて きた 。 しか し、 これ は同時 にそれ までの 日本 の保
守 党 を中心 とす る統 治構 造 におい て、「
政 ・官 ・財」 癒 着 の コア (
核 ) の ひ とつ とされ
て きた。
しか しなが ら、 日本経 済 が成熟段 階 に達 し資金過剰 が常態 とな った なかで、。
1
980年代
末 か ら9
0年代 にか けてバ ブルの拡張 と崩壊 に さらされ、多 くの金融不祥事 も頻発 した。
それ までの 日本 の金融 システ ムの 「
影」 が表 出す るなかで、 アメ リカ、 イギ リス な どで
進展 した金融 の グローバ リゼ ー シ ョンに適応 した金融市琴 の構造 に照 ら し、従来 の シス
テムの変革 に踏み切 らざるをえない。 この 「
首相声 明」 にはそ う した意味 があ った とい
え よう。
-2
4-
(ビッグ ・バンの進展)
この金融大改革 は、他 の財 政構 造改 革 な どと共 に 「
橋 本 6大改 革 」の 中心 的柱 の ひ と
つ とされ、 さまざまの問題点 が噴 出 して きた 日本型経 済 シス テム を自民党政府 が 2
1
世紀
に向けて改革 してい く目玉の ひ とつ とされた。 この 「
首相声 明」 はその後 5年 間の金 融
改 革 の方向 と性格 の大枠 を規定 して きた とい え よう。
これ に先立 つ 同年 6月 には、不 良資 産 の早期処理 と金融改 革 、預 金保険機構 な どの金
融破綻対策 を含 めた金融改革 関連 法が成立 していた 。 それ らの措 置 には、 5年以 内のペ
イ ・オ フ (
2
0
01
年 3月 まで に、従 来 の預 金全額保護 とい う特例 のや り方 を終 了 させ る こ
と)が決 め られてい た。
9
9
8
年 4月 には 「
早期是正措置 」が実
また、時限 を切 られた銀行 の健 全化措置 と して 1
施 され、ペ イ ・オ フまで の間 に、金融 シス テム を建 て直す ための措 置 と して、公 的資 金
9
9
9
年 には、都市銀行 の健 全化 に
投 入 を うけた都市銀行 は健全化計 画 を公表 してい る。 1
続 いて、地方銀行 の健全化措 置がお しすす め られてお り、次 いで生保 な ど銀行 以外 の金
融機 関の建 て直 しが行 なわれ る こ とになる。
日本 の金融界 は、すで に1
9
9
0
年代 に入 って、バ ブル崩壊 以 来相次 いで多 くの金 融機 関
が破 綻 し、金融 の再 編 成 が進 んで い る 。 そ れ に加 えて、 2
001
年 3月 を 目処 と した金 融
ビ ッグバ ンの措 置が完了 され る こ とに よ り、国内のみ な らず 海外 金融機 関の 日本進 出、
提 携拡 大 を含 めて、 1
9
2
0
年代 の大正末 か ら昭和 金融恐慌 にい た る時期 を上 回 る未曾有 の
金融再編成過程 に入 ってい る。 つ ま りこの ような激動 が金融 ビ ッグ ・バ ンとい うこ とで
あ る。 金融 ビ ッグ ・バ ンは、北 海道拓 殖銀行 、 山一証券 、長銀 、 日債銀 な どの 日本 の大
手 金融機 関の 閉鎖 ・公的特 別管理へ の移行 な どの大波乱 を伴 い なが ら進 んで い る。
第 2節
次世紀 への二つの大課題
ビッグ ・バ ンは折 りか らの 日本経 済 の深刻 な不況 や アジア経 済危機 、 アメ リカのヘ ッ
ジ フ ァン ドの崩壊 な どの悪条件 の なかで、信 用不安 や信 用収 縮 な どの弊害 を伴 いつつ 、
す で に進 み始 めてい る。 しか し、そ こで問題 なの は、 ビ ッグ ・バ ンとい う方 向性 は出 し
0
01
年以 降の 日本 の金融 シス テムの あ り方 につい て、 国民世論 や金融 界 に必
た ものの、2
ず しも合意 が ない とい うこ とであ る。
主 な問題 点 は、① ビ ッグ ・バ ン後 の 日本 の新 た な金融秩序 を どうえが き、いか にそ れ
-25-
を構築 してい くか、② 変革 された金融 システムにおいて必然 となる大 きな リス クについ
て、いか なる金融の安全網 を構築 してい くのか とい う、二つがあ る。
(
21
世紀 の金融秩序 をど うす るのか一 金融 システムのあ り方 と一般利用者の関係 )
第一 には 日本 の2
1
世紀 の金融秩 序 を どの ように構築 してい くのか とい う問題 である。
日本 の金融秩序 は、従来 は銀行 、証券 、生保 ・損害保険、郵貯 な どの各業態別の仕切 り
と規制 に よって成 り立 っていた。 これ を 「フ リー、 フェア、 グローバ ル」とい う従来の
業態 を越 えた金融 ビッグ ・バ ン後 の体制 に どの ように乗せ てい くのか、将来 的な金融秩
序 の イメー ジをどう描 き、その過渡 的段 階 と措置 を どうす るのか とい う点が ある。
また、 こ こで何 よ りも重 要 な こ とは、 これ ら 「
供給者サ イ ド」 と しての金融業 界の仕
切 りルールの再編成 だけで な く、殊 に大切 な ことは、 これ まで問題 とされなか った資金
源泉 た る出 し手 (
預貯金者 )、利用者 あ るい は消 費者 (
主 と して金融 のい わゆ る 「アマ
チ ュ ア」 と しての) と供給 者
(
「
プロ」 と しての金融機 関) との関係 につ いてで あ る
。
これ まで明示的で なか った この両 者の関係 について、新 た にルールを明示す る必 要があ
る。
金融市場 の変革 と共 に、 これ までの一般 の預貯金 は、 よ り高 い利率 を もとめて リス ク
のかか った金融商品 にシフ トす る動 きも出る こととなる。 従来 の預貯 金 の一部 は投資家
と しての運用 に動 く可能性 もあ る。 企業 の資 金調達 について もこれ までの間接 金融 を基
本 と した ものか ら、市場 を通 した直接 金融 の比重が上が って くる可能性 があ る。
従来 の枠 組 み としての規制 に限定 された市場 としての金融秩序 (
その限 りで一般利用
者 に リス クはない)か ら 「フ リーで グローバ ルな」 開放市場 型 の金融秩序 に移行 す る と
す れば、その ような 日常 的 に市場 が もた らす大 きな リス ク (
その反面大 きな リター ンも
可能 になる) をいか に吸収 ・分担 す るのか。 この金融 システム変革が必然的 に もた らす
リス クの拡 大 とその受益 ・負担 の仕方 (リス ク ・テ-キ ング) につい て、普遍性 のあ る
ルールをたてる必要があ る こ ととなる。
金融 においての、いわば消費者 (
利用者側 ) といわば供給者 の間の 「
消費者保護法」
的 なルール を含 め、業態毎 に仕切 りをこえた金融秩序 の憲法 ともなるべ き 「
金融サ ー ビ
ス法」 の制定が もとめ られ る こ とととなる (
1
999年末 まで に素案 が金融審議 会で まとめ
られ る予定 )。
-26-
(日本型金融 システムの一側面-
「
人為 的低金利 」)
これ までの 日本 の金融 システムは、国家 に よる資金動員 を系譜 に もち、それ と一体 と
なって元利保 障が期待 で きる とい̀ う 「
包括 的セー フテ ィー ・ネ ッ ト」 によっ ていた (
実
際 には元利保 障 とい うの は、戦後 イ ンフ レ過程 にみ られ る ように利子 が統制 され、 イ ン
フ レ率 がそれ をはるか に上 回 る ことで大幅 に減価 して担保 は され なか った)。 したが っ
て これ まで貯蓄 の運用形態の中心 を占めた一般預貯金 については、 リス クを意識す る必
要 はなか った。 しか しなが ら、資金不足下の実勢市場金利 の高水準 のなかで、一般 の預
貯金 の金利 は 「
人為 的低金利」政策 による相対 的 な低金利 にず っ と甘 ん じて きていた。
0
年代 にな り、金融機 関の経営不安 が ひろが るなかで、 1
9
9
5
年 には、公定歩合
さらに9
.
5%、そ して 1
9
9
8
年 9月 にはコール ・レー ト誘導水準 を0
.
2
5%さらに9
9
年 2月 には
が0
「ゼ ロ」% とい う極 限 にまで引下 げ られてい る。 この金融政 策 については、マ クロ的 な
景気対策 とい うことだけでな く、迫 りくる不 良再建処理 に関わる金融 リス クに対 して金
融機 関に体力 回復 のため に大 きな利鞘 を もた らす ため に預貯 金者- の金利 引下 げ による
負担 をもとめた、 とい う側面 を もっ ことは否定で きない。
実際 に預金 をあずか る金融機 関の保有す る金融資産 の収益 率 と預金 の出 し手 であ る家
9
7
0
年代 よ りも、超低 金利 下 の
計 保有 の金融資 産 の収益 率 の長期趨 勢 を比 較す る と、 1
1
9
9
7
年 を とる と 3%分 も高 く、低金利 を もとに金融機 関の方 が家計 よ りも高 い利 回 りを
かせ いだ現実があ きらかであ る。 「
つ ま り、近年 の金融機 関 は、家計 に対 して十分 な収
とみ なけれ ばな らないので あ る。 (
但 し、生保 の ように逆 鞘
益 還元 を してい ない」(注 1)・
に苦 しむケース もでてい る)
この こと にみ られ る ように、従 来 の統制型 の 日本 の金融 シス テムは、
、国民 に とって
「
安定感」 は もた ら してた ものの、必 ず しも一般利用者 に有利 であ った とい えない (
吹
にみ る政 ・官 ・財癒着 の利権 的政治構造 の装置 として機能 してい た点 を別 と して も)0
2
1
世紀 をめ ざ して、 グローバ ルな市場競争 に耐 え られ る効率 的な金融 システム を構築す
る こと、一般利用者 に不利 な関係 にな りが ちな、金 融機 関 との問の明示的 なルール設定
は不可欠であ る とい え よう。
(
統制型の 「
包括的セー フテ ィーネ ッ ト」か ら新たな安全綱 とは ?)
第二 には 「日本版 ビッグバ ン」 によ り日本 の金融 システムが変革 されてい くとす れば、
包括 的
同時 について、以前 の 「
護送船 団方式 」による金融秩序 と一体 であ った統制型 「
-2
7-
セー フテ ィー ネ ッ ト」 も くず れてゆ くこ とになる。 それ な らば、その リス クをいか に回
避す るのか 、いか なる次 の安 全 ネ ッ トを構 築 してい くのか とい う問題 であ る。
長銀 や 日債銀危機 と特 別公 的管理へ の移行 な どへ の緊急対処策 と して、 1
998年 秋 、緊
急 の危機 回避 策 と して金融再生法 、金融早期健 全化法 な どが成立 した。 しか し、 これ は
2
0
01
年 3月末 までの時 限がつ け られてい る。 これ を2
0
01
年 4月以 降 は どうす るのか とい
う問題 が あ る。
さらにまた ここには1
9
98年秋 にあ らわれ た ようなアメ リカのヘ ッジ ・フ ァン ド崩壊 に
よる世界金融恐慌 の危 機 にみ られ た ような、国際規模 での経 済社 会秩 序 の崩壊 に もつ な
が りかね ない 「シス テ ミック ・リス ク」につ いての対処策 も含 まれ る。
後者 の問題 は、別章 にみ る ように、金融 の グローバ ル化 に対応 す る国際経 済秩 序 の形
成 につ いて G 8首脳会議 で も検討 された ように、ヘ ッジ ・フ ァン ドな ど短期 国際金融取
引 に関す るる監視策 (
サ ーベ イラ ンス)強化 の必 要性 が ようや く合意 された ところであ
る。 いず れ にせ よ現在 において もそのあ り方 は模索 の段 階であ る。 こう した問題 につ い
ては、国内制度 の整備構 築 、 アジア地域 での通 貨協 力 、国際通貨 ・金融 の安定化 な ど、
世界秩序 の根幹 に関 わ る大規模 で 多次元 にわた る制度構 築が必 要であ る ことは明 らかで
あ る。 しか しなが ら、それ らはア メ リカをは じめ とす る国益 がか らみ、か っての ブ レ ト
ン ・ウ ッズ体制 の ような包括 的 な合意 が短時 日の うちに成立す る こ とを期待す るの は難
しい と思 われ る。 国際的 には大 きな不安 を抱 えなが ら、国際金融秩序 に頼 らず 、 自前 の
国内での金融安定 の装 置 を どの ように構築 してい くか を考 えねば な らない。
0年代 バ ブ ル崩壊 の ツケ は さらに尾 をひ くこ とにな る 。 この
さ らに、 中長期 的 に も9
1
0
年 の金 融機 関の不 良資 産 の処理 につ いて は、それぞれの金融機 関や預 金保 険機構 の手
当て に とどま らず、一連 の金融救 済策 は、 1
998年 3月の長銀 、 日債銀- の公 的資 金投 入
をは じめ、 か な りの部分 が公 的財 政 にお きか え られ る。 その負担 は時 間の推 移 とともに
国民 の負担 に転嫁 されてい くこ ととなる。 最近 の非常 緊急事態で の金融 シス テム救 済策
は、財 政 に多大 な負担 を負 わす こ とになる可能性 が あ る。 長期 的 な視点 を入れて金融 の
安全網 を よ り合理 的 な制度 と してつ くりあ げて ゆ く必 要 もあ る。
-2
8-
第 3節
最悪のタイミングでの金融改革
一 平成大不況 と金融 ビッグ ・バ ン
それ に して も、今 日、 日本 の金融改革 は途方 もな く困難 な課題 を抱 えてい る。 す なわ
ち まず は今世紀最大 といわれ るはバ ブル崩壊 の後始 末 と しての不 良債権処理 を しなけれ
ばな らない。 そ して しか もビ ッグ ・バ ンに よるグローバ ル時代 に適合す る金融 システム
を次世紀 をめ ざ し構築 しなければな らない。 巨大 な二重 に困難 な課題 に立 ち向か ってい
負債 デ フ レ」
るわけであ る。 しか も、 ここで はバ ブル崩壊 の後始 奉の遅 れ を根 に もつ 「
990年代 は 「失 われ た
の 中でか って誰 も予想 しなか った ような低 成 長 の持 続 が あ る。 1
1
0年」 となるこ ととなってい る。 1
980年代 まで、 日本 の成長率 は OECD諸 国で抜 きん
で て高 か ったが、 この90年代 は 1
998年度 のマ イナス2.1%の ようなマ イナス成長年 もあ
り、平均 で 1%内外 の例外 的 な低成長 に終 わ りそ うであ る。
1
9
90年代 が 「
失 われた 1
0年」 となった こ とを規定す る重要 な要 因 にバ ブル崩壊 と金融
部 門の不 良資産及びそれ に関わる 「
負債 デ フ レ」が あ った こ とにつ いて、今 日で は よう
や く通説 となって きた (
経済企画庁 の 「
平成 1
1
年版 日本経 済 の現 況」 は、 は じめて 「
バ
0年 間」を正面 か らと りあ げてい る)。 それ まで政府 は 1
990年代 の経 済停滞
ブ ル崩壊 の 1
の大 きな原 因が金融 システム にあ るこ とを認 め よう とはせず 、財 政構造改革 や製造業 の
ように相対 的 に健康 な対外 的競争部 門 を含 め て、 「
制度疲 労 」に原 因が あ るかの よ うな
議 論 に立 ち、一般 的 な 「
構 造 改 革」 の必 要性 を強調 す るの みで あ った 。
「
財 政構 造 改
9
97年度予算が緊縮 的 に運営 され、 しか も年金切下 げや医療負担
革」優先 の名の もとで 1
増 な ど将来的 な生活不安 を煽 った ことが、結果 的 には景気 回復 の腰折 れ、北 海道拓殖銀
行 崩壊 には じまる一連 の金融危機 と信 用収縮 、 1
998-99年 にいた る戦後最悪 の不況 を招
く直接 の原 因 となった。
(「
先送 り政策 」 と不透 明性のつ け一一 金融危機 )
バ ブルの膨張 と破裂 は資本主義市場経 済 において、幾度 とな くみ られ る こ とで あ り、
日本 だけの ことで はない。 しか し、 この問題 の背景 として景気停滞 がか くも長期化 した
原 因につ いては、今 日で は 日本型金融 シス テム改革 の遅 れ を指摘 せ ざるをえない ように
思 われ る。 1
990年代 のバ ブル崩壊 後、 1
993年 以来大規模 な総 合経 済対 策が幾度 とな く実
施 された。その ようなマ クロ政策 の実施 は経 済 の崩落 を緩和 し大 幅 なマ イナス成長へ の
-29-
転 落 を防止 した と して も、そ もそ もがバ ブル崩壊 に よる金融 シス テムの行 き詰 ま りに大
きな原 因が あ る とい う的確 な現状 認識 と対策 を欠いてい たため に、その有効性 は限定 的
な ものであ った。
OECDは 1
998年 の対 日経 済審査報告 で今 回のバ ブル崩壊 に よる資 産価格低下 とそれ
に伴 うキ ャピタル ・ロス は GDPの まる まる 2年分 、 1
00
0兆 円 にのぼ る とみ てい る。 そ
の 間、負債 はその 1
0分 の 1程 度 しか減 らなか ったので、バ ブルの崩壊後 の海外 の分析 家
は、 1
997年 時点 で 日本 の金 融部 門の不 良資 産 は70兆 円 とも1
00兆 円 に もの ぼ る とみ る も
の もあ った 。 その後 この ような見方 はほぼ正 しか った こ とが裏付 け られ る こ とにな った 。
日本 の行 政 当局 は、 日本 型 金 融 シス テ ムの特 徴 で もあ った 「不 透 明性 」(
「
暗黙 の
掌握 しない) ま
ルール」 ともいわれ る) の 中で資 産 ・負債状況 の現状 を掌握 で きない (
まで、す なわ ち不況長期 化 の全体像 が わか らない ままで、財 政金融政策 を展 開 して きた
不透 明性 」(
「
暗黙 の ルール」
)の なかで、おお くの金融不祥
とい え よ う。 また、 この 「
辛 (
モ ラル ・ハ ザ ー ド) や 、金 融 機 関財 務 ・資 産管理 の不 公 正 が行 われ たのであ る。
(
破綻 した大手行 な どで公表 した 自己査 定 に よる負債超過額 は大変甘 く、の ちの金融監
督庁 の調査 で ははるか に大 きな ものであ る ことが明 らか とな った)。
(
大蔵省 か らの金融行政 の分離)
986年 の円 ドル委 員会以来 の金融 の 自由化措 置 は、実際 にはあ ま り
今 日か らみれば、 1
に も漸次 主義 的であ った。資 金不足基調 か ら資金過剰 基調- の変化 とい う歴 史的 な国内
の金融構 造 の変化 に対 して も、折 か ら海外 で進展 していた金融技術 革新 と金融 グローバ
リゼ ー シ ョンの動 きに対 して も遅 れていた。 それだけで な く、バ ブル崩壊後 の再建 が長
引 き遅 れ て、つい に金融危機 を発現 させ た。 この こ と自体 が 日本 の従 来型 の金融 システ
ムが 自主 的問題 解 決 の力 量 を もってい なか った こ と、 「自主 的規律 づ け」 にか けてい た
こ とを暴 露す る こ ととな った 。 す なわ ち、それ までの規制金利 と業界毎 の規制体系 の大
枠 が残 る なか で 日本 の金 融 機 関 は本 来 もつべ き リス ク管 理 の ノ ウハ ウが蓄積 してい な
か った実態 が明 らか とな った とい え よう。 バ ブル崩壊 後数年 を経 て、マ クロ経 済政策 の
支援 をうけていた に も関 わ らず、金融危機 は1
995年 の住 宅金融専 門会社 の不 良債権処理
問題 、 1
997年 1
1月の 山一証券 閉鎖 と北 海道拓殖銀行 問題 ,そ して 1
998年 11月か ら1
2月の
日本長期信 用銀行 と日本債権信 用銀行 の特別公 的管理へ と、問題 を一層深刻化 させ てい
くこ ととな った。
-3
0-
この ように、問題 の根源 にメスが入 ることが遅 れたのは、 さきにみた戦後型経 済 シス
9
9
0
年代 に入 って保
テムの根幹 に大蔵省 ・財 界 ・政界の三者関係があ った こと、 これが 1
守一党支配の終葛 と政権交代 の もとで問い直 され、大蔵省 の相次 ぐ不祥事 によって、政
治の手で遅れた 「ビッグ ・バ ン」 - の挑戟 となった とみ られ よう。
大蔵省 がそれ まで財政 と金融の双方 とい う強大 な権限 を握 ってい る状態 を改革 して、
金融行政が基本的 には独立 して金融再生委員会 と金融監督庁 に一元化 されてい く動 きは、
金融再生 と新 たな金融秩序形成の不可欠 な条件 であ った とい えるだろ う。
第 4節
当面の金 融改革の視点
一 利用者 ・消費者重視の金融政策 を
当面 の金融制度改革の焦点 は、 さきにみた ように、① ビッグ ・バ ン後 の 日本 の新 たな
金融秩序 をどうえが き、いか にそれ を構築 してい くか、② 変革 された金融 システムにお
いて必然 となる大 きな リス クについて、いか なる金融の安全網 を構 築 してい くのか とい
う、二つがあ る。 これ を一般 の勤労者の貯蓄保護 の視点か らみ る と、以下の点が重要で
あ る。
第一 には 「
金融の利用者 ・消費者」 とい う視点か らの監視 ・介入の必 要性 であ る。
ここで は金融サ ー ビス法のあ り方が課題 となる。
い ま金融改革が 「
先送 り」 政策の後 で、バ ブル崩壊 の後処 置 と金融危機 とい う最悪 の
タイ ミングで進 め られている。 この とき、金融 シス テムの安 定 と強化 、強い金融業 の育
供給 サ イ ド」 が優先
成 とい う点が先行 されが ち となる。 つ ま り、いわば金融業 とい う 「
され、金融の利用者 としてのいわば 「
消費者サ イ ド」 の問題 は後 回 しにな りやす い。従
来型 の金融政策 は、「人為 的低金利」 政策 にみ られ る ように、殆 どいつ も供給者サ イ ド
(
金融機 関サ イ ド) に偏 した ものであ った。 日本 の経 済 シス テム全体 にわた り、 「
供給
者優先型 」であ る こ とが 1
9
9
0
年代 になって反省 され、「
生活者重視 」の視点 か ら産業 政
「
1
992年策定) はそ の
策 や消 費者政 策 のあ り方 が見直 された 。 生 活大 国五 か年計 画 」(
シ ンボル ともなった。製造物責任法
(
PL法)の制定、そ して近 く成立が見込 まれ る消
費者契約法、そ して情報公開法 をは じめ とす る情報 開示 につ いて は、公共機 関のみ な ら
ず民 間での情報 の透 明性 の確立、公正 ルールの徹底 ・確立が今 日さらに求め られてい る
ところである。
-31-
ひるが え ってみ る と、金 利情報 のみ な らず金融 に関す る市場情報 は、利用者 の視点 ・
消費者 的視 点 に立つ と、 これ まで全 く不十分 で 自主 的選択 の余地 はか ぎられてい た。 ま
た、製造物 についての責任 は よ うや く手続 き的 に も明示 され ることとな った。 しか し、
預貯 金 や金融 関連商 品 につい ての相談機能や苦情処理機 能 は限定 された範 囲 に とどまっ
ていた 。 今 後 、金融 ビッグ ・バ ンは多様 な金融新商 品 を生 み出 し、勤労者 の貯蓄 も預貯
金 のみ な らず多様 な金融商 品分野- と広 が ってい くこ ととなろ う。
消費者契 約法 は、契約 の公正 に関わ る一般法 となる こ とが予想 され、特性 を もつ商 品
やサ ー ビス について は、それぞれ特 別法 的 な制度 の補完 が必 要であ る。
現在 、策定 が め ざされてい る金融サ ー ビス法 (
仮称 ) の基本的柱 の ひ とつ と して、 こ
の金融サ ー ビス消費者保護 を置 く必 要があ る。
それ は以下三つの理念 にそ う もので なけれ ばな/
らない。
① 消 費者 と金融サ ー ビス事業者 の力 の格 差 、高度 の専 門性 、公共性 に鑑 み、事業者 の
側 に よ り高度 な注意義務 を課 す 、売手注意 の理念 、
② システ ム をつ くり, シス テ ム を管理 し、 システ ムか ら利益 をえてい る事業者 が シス
テムの安全 を維持 す る費用 と して規制 の費用 を負担 す る
③ 受託者 であ る事業者 は、信 認義務 、す なわ ち最高度 の忠実義務 を負 ってお り、受益
者 の利益 のため に持 て る技術 を全 て駆使 し、受益 者 の利益 になる ように行動 す る義
務 を負 う (注 2)
これ らを担保す る制度機構 も (
官民 に またが って)設置す る必 要が あ ろ う (
中央 で は
金融監督庁 ない し予定 され る金融庁 の機構 と して、あ るいは これか ら独 立 した機 関 と し
て)。 さ らに取 引 にお け るルー ル につ い ての厳格 かつ統 一的 な 「
事 後 チ ェ ック」や英 国
の金融サ ー ビス制度 の創設 に よって、民 間団体 ベ ースの公正 ・中立 な裁判外処理 シス テ
ムの確 立 を担保す る仕組 み をつ くる必 要があ ろ う。
金融サ ー ビス法 が利用者 ・消費 者 に、 よ り有利 な金融 システムが形 成 され てい くた め
に も、金融 サ ー ビスのあ り方 、 ひい て は金融業 のあ り方全般 にまたが り各業態 を越 えた
普遍法 の性格 を もつべ きであ ろ う。 過渡期 にお ける従来 の金融 シス テ ムの安 定策 (
業態
に よる規制 を基本 と した) との混乱 な き接 合 も当然 配慮 されねばな らない。
第二 には、2
001
年 4月のペ イオ フ解禁 (
預 金 の払戻 し保 障額 を元 本 1,
000万 円 まで と
す る措 置) についてであ る。
政府 が ビ ッグ ・バ ン推進 、 その ための早期是正措 置 をすす めてい る以上 、 この期 間 を
-3
2-
現 時点 で延期 す る ような動 きがみ られ る とす れば、政策 の混乱 を招 くばか りであ ろ う。
む しろペ イオ フ解禁後 の混乱 をさけるため に、破綻 しないための早期 是正 や破綻 した場
合 の処理 を含 む金融 の安全網整備策 を確 立す る こ とが本筋 となる (
注3)
。大幅 な財 政 か ら
の投入 を含 む緊急処理策 と しての金融再生法 ・健 全化法 は2
001
年 3月 まで とされ てい る
が、その うちブ リッジバ ンクな どの破綻処理 策 については、手直 ししつつ今後 も継続す
る必要が ある。 預金保 険機構 の強化 と改革 も課題 であ る。 一般預貯 金 の不安拡大 とな ら
ない よう預金保 険の上 限 を1
,
000万 円か らさらに引 き下 げる ことには反対 であ る。
また ここで は消費者 ・利用者 の視点 に立 って預貯金保護等 について、い らざる混乱 を
さけるため に正確 な公共情報 を提供す るこ とが大切 であ る。
第三 には、金融 ビ ッグ ・バ ンに関連す る社 会的側面 、 ことに金融 関連 産業 の勤労者 の
雇用保 障の問題 であ る。 近年 の金融改革 は、 日本経済 の再生 をかけた構造転換 策 ともい
える。 金融産業 の リス トラクチ ャリング と雇 用再編成 、雇庸削減 が生 じてい るの も、国
の政策 目標 の変更 に もとづ いてい る面 があ る。 金融 関連産業 に働 く勤労者 は、平均 学歴
水準 も高 く、知識労働 者 と して高技 能の ものが多 い。 しか しそれ に もかかわ らず 、他 産
業 に移動 す る場合 はむろんの こ と、同一の金融機 関 に残 る場 合 も他 の金融 関連会社 に移
動す る場 合 に も、勤務 条件 は不透 明で大 きな リス クや不安 が伴 うこ とが多い。追 い詰 め
られ 自殺 者がで る こ とが頻発 す る状況 であ る。 ブルーカラーの職業移動 を基本 に設計 さ
れてい る これ までの雇用 ・労働 政策で は、雇用相談 、職業訓練 ・職業紹介等 であ て にな
らない面 も多 い。金融 関連産業労働者 をひ とつの ジ ャンル と した雇用対 策が金融改革政
策 と並行 してたて られ るべ きか もしれ ない。
金融再編成時代 に対応 して、個別破綻先金融機 関 に関す る これ までの地域 や業界 、行
政へ の雇用保護措置 要求 のほか に、当該労働 組合 の交渉 ・協 議機能 を越 える分野 での金
融 関連産別労組 の連携 、連合 による政策協力 が工夫 され る必 要があ ろ う。
[
注]
1.蝋 山昌一
「
市場型 間接金融 システムの構築 を」
(
『日本経済研究セ ンター会報 』99年 6月1
5日号 1
4頁)
2.楠本 くに代 『金融機 関の レンダーアライアビリテ ィー』
「
金融 をめ ぐる諸問題」
(
『
金融 ビッグ ・バ ンと消費者 』)
「日本版 金融サ ー ビス消費者保護法 一 法案 の骨子 」(
未定稿)
-33-
3. これ らにつ いて は
翁百合
「
金融 システム再構 築へ の 4つの課題 」
(
『
論争』
探尾光洋
1
9
9
9年 9月号 )
「
公 的資 金注 入後 の破綻 で は政府 の損失 を最小 限 に」
(
『
週間ダイヤモ ン ド』1
9
9
9年 4月2
4日号)
その他 一般 的 には、
堀 内昭義
岩波書店 )
『日本経 済 と金融危機 』 (
同
『
金融 システムの未来 』 (
岩波新書 )
同
「日本 の金融制度改革 と展望」
(
『
経済研 究 』1
9
9
9年 7月号 )
吉 田和 男
生産性 出版)
『
金融改革 と日本経 済 』(
-3
4-
別
特
寄
稿
岡山理科大学教授
小
円の国際化 に向けて
邦
宏
治
氏
-デ ノミで決意表 明 を-
(
宮沢演説 に秘 め られた意図)
1
999年 5月 1
5日、マ レー シアの ラ ンクアイで APEC (アジア太平洋経済協力 会議 )
_
蔵相会議 が開かれた。 ここで宮沢蔵相 が演説 したが、通常 の蔵相演 説 とは一味 も二味 も
違 ってい た。 国際通貨制度 に関す る二つの学 説 を引用 、その双方 の問題点 を指摘 しなが
ら 「第三 の道」
・とで もい える制度 を提 案 したので あ る。 そ れ こそ 「通 貨バ ス ケ ッ ト方
式 」と呼 ばれ るアイデ アに他 な らない。 アジア諸 国 に ドル、ユ ー ロ、円 を組 み合 わせ た
バ スケ ッ ト方式 で為 替 レ一一トを決定す る ように薦 めたのであ る。 表現 は極 めて穏 やか な
トー ンになっていたが、その意味す る ところはズバ リ 「円の 国際化 」戟略 だ った。 日本
政府 は十数年放置 して きた この間題 に、や っ と本腰 を入れて取 り組 む ことを内外 に表 明
した とい え よう。
宮沢演 説 は 1
997年 7月 に タイで始 ま り瞬 く間 にアジア全体 、次 いで ロシア、 ラテ ンア
メ リカへ と広 が った世界的 な通貨危機 の分析 か ら始 まってい る。
「
韓 国、 イ ン ドネシア、マ レー シア、 タイ、 フ ィリピンの 5ヶ国 に1
993年 か ら96年 ま
での 3年 間 に約 2,
200億 ドルの民 間資 金が流 入 した 。 そ して、あ る 日突然 、市場 の信 任
が運転 した結 果 、97年 に約 1
,
000億 ドルが逆流 した。 こう した、絶好調 か らパ ニ ックへ
とい う市場 のセ ンチ メ ン トの突然 の シフ ト、そ して、その結 果 と して生 じる巨大 な民 間
資金 フローの逆転 に耐 え うる国や地域 はあ りえない」と資金移動 を分析 。
その原 因の一つ と して 「
新興市場 国 に とって国内通貨で債券 を発行 す るの は、 その通
貨が米 国 ドルな どの主 要 国通貨 と厳密 にペ ッグされ ない限 り困難 だ。 しか し、今 回の通
貨危機 は米 ドル とのペ ッグに よって柔軟性 が失 われた ことが、主 な原 因の一つだ った。
問題 は、今後 、通貨建 ての ミスマ ッチ をいか に して回避す るかだ。 その一つ の方法 と し
て、例 えば米 ドル、ユ ー ロ、円 な どで構成 された通貨バス ケ ッ ト建 ての債券 を発行す る
-35-
こ とが考 え られ る」 と 「
通 貨バ ス ケ ッ ト」 方式 を提 案 してい る。
宮沢蔵相 は さらに最近 の国際通 貨 に関す る二つの学説 を引用す る。 一つ はジェフ リー
・サ ックス らが主張 してい る フロー ト制度。柔軟性 には富 んでい るが 「
相対 的 に小 さな
開放経 済 に とって為替 レー トの振 幅が大 きす ぎて リス クを避 け られ ない」 と問題点 を指
摘 。 また これ とは正 反対 の ルデ イ ・ガ一 ・ドー ンブ ッシュ らが強調 してい る 「
米 ドルに
リンク した カ レンシー ・ボー ド制」 について も 「
過度 の硬直性 が危機 の根源 的 な原 因 に
なる」と強調 した。 つ ま り、完全 フロー トも自国通貨の ドル化 の ような絶対 的固定相場
制 も、 アジア諸 国の ような新 興市場 国 には問題 があ る、 と しー「第三の道 」を提案 したの
で あ る。
こう した論 旨に立 って蔵相 は最 後 に 「円の 国際化」 に向 けた 日本 の取組 み を披 露 した。
す で に実施 してい る短期 国債 、政府短期証 券 に村す る源泉徴収税 の免 除 に触 れた後 、今
年 9月か ら長期 国債 に も免 除す る考 え を表 明 し 「
東京 の債券市場 の効率化 を さらに高 め、
円の利便性 を向上 させ て行 く」 と決意 を述べ て締 め くくった。
日本 が APECとい う国際会議 の場 で、 ここまで 「円の国際化 」 に踏 み込 んだ発言 し
たの は これが初 めて と言 える。 内外 に政府 の意 図 を鮮 明 に印象づ けた演 説で あ った。
(国際通 貨 と しての 円の姿)
当然 の こ となが ら、宮沢演 説 は蔵相 が突然思 いつ いて行 った もので はない'
. 政府 内部
9年 4月2
0日蔵相
で練 りに練 った上 で草稿 をま とめてい る。 その基本 になってい るの は9
の諮 問機 関で あ る 「
外 国為 替等 審議 会 」(
会長 ・小 宮 隆太郎 青 山学 院大学教授 )が行 っ
た
「
2
1
世紀 に向けた円の国際化」 と題 す る答 申であ る
。
同答 申は冒頭 で円の国際化 につ い て 「日本 の クロスボー ダーの取 引 及 び海外 での取 引
にお ける 円の使 用割 合が高 まって行 くこ と」と定義 してい る。 具体 的 には経 常取 引、資
本取 引 、外 貨準備 にお け る円の ウエ ー トが上昇す る こ とが、円の国際化 と し、現状 につ
い て述べ てい る。 次 の ような総括 だ。
まず 、貿 易取 引面 で の 円 の使 われ方 を見 る と、 日本 の輸 出の 円建 て比 率 は過去 数 年
3
5%程 度 で ほぼ横 ばいで推 移 し、 ドル建 て取 引が過半 を占めてい る
。
また、輸 入 につい
て見 る と、本邦企業 の海外投 資 が増 えた こ とを受 け、徐 々 に増加 してい る ものの、9
7
年
におい て も2
0%強 に止 まってい る。 さらに、世界貿易全体 に占め る使 用通貨建 ての状 況
を見 る と、 ドル建 てが大半 で あ り、円建 て比率 は 5%程度 にす ぎない。
-3
6-
資本取 引面 で見 て も、9
7
年 の 国際債 の発行 に占め る円の割 合 は4
.
5%だ った。 9
4
年当
時 は1
3
%を超 えてお り、最近 はむ しろその ウエ ー トを低下 させ てい る。 また、本邦銀行
の対外貸付残 高 にお ける円建 て比率 も9
0
年代 を通 じておお むね 2
0%前後 で推 移 してい る。
また、円の資産通 貨 と しての役割 とい う観点 か ら、銀行 の クロス ボー ダー債務残高 に
お ける通 貨別 シェアを見 る と、米 ドル4
7
%、独 マ ル ク1
3
%、円 6%とな ってい る。 さら
に米 ドル、独 マ ルク 、仏 フラ ンはペ ッグ (
連動) の基軸通 貨 と して採 用 され てい るが 、
円 を基軸通貨 と してい る国は ない。準備 通貨 と して も円の シェアは約 5%
(
9
7
年 末) と
な ってい る。
答 申が まず措 いてみせ た国際通 貨 と しての現状 は以上 の よ うに、寒 々 と した ものだ。
4%を占め、世界最大 の純債 権 国で
長期不況 に暗いでい る とはい え、 GDPで世界の約 1
あ る 日本経 済 と比べ る と円の 国際化 は遅 れ に遅 れてい る とい える 。
(国際化が遅れ た背景)
0年代 か らの動 きを簡単 に振 り返 っ
なぜ 、円の国際化が これ ほ どまで に遅 れたのか。 7
てお こう。
一円の国際的役割 に関心 が持 たれたの は、 1
9
7
1
年 8月のニ クソ ン ・シ ョックで ブ レ トン
・ウ ッズ体制 が崩壊 した ときか らだ った。金 との交換制 をな くした ドルだけが基軸通 貨
と して存 在 しうるか 、 とい う問題 意 識 だ った とい って よい だ ろ う。 現 に二度 の オ イ ル
シ ョックを経 て、多額 の オイルマ ネーが蓄積 され、 それ に よ りユ ー ロ市場 が拡大 、世 界
的資金移動 が大規模 化 、迅速 化 し、国際金融市場 は大 き く変 貌 した。 この間、米 国経 済
はその地位 を趨勢的 に低 下 させ 、 ドル- の信任 も低 下 した 。 一方 、 ドイツ (
西独 ) と 日
本 の経 済 が相対 的 にウエ ー トを高 め、円、マ ル クが一定 の役 割 を担 う 「国際通貨体制 の
多極化」 が論議 されて きた。
なかで も大 きな転 機 になる と思 われたのが 1
9
8
3
年1
1
月 9日の レー ガ ン米大統領 の訪 日
だ った。 「ロ ン ・ヤス関係 」 と呼 ばれた親密 な中曾根首相 との首 脳 会談 を終 えた翌 1
0日、
リーガ ン財務長官が竹下蔵相 にい きな り 「日米 円 ・ドル委員 会」の設置 を提 案 したので
あ る。 米 国の主張 は 「日本 は厳重 な為替管理 を実施 して るため、 円の為替 レー トが実力
に比べ過少 に評価 されてい る 。 そのため、 日本 の輸 出が集 中豪 雨 の ように増 え、貿易黒
字 が拡大 してい る。 円 を もっ と自由化す れば円の対外相場 が上昇 し、 日本 の対外 不均 衡
が調整 されて行 く」とい う ものだ った 。
-3
7-
当時 、為 替相場 は 1 ドル -25
0円前 後 で アメ リカ側 の眼 には 「不 当 な円安」 と映 って
3
0
億 ドル にな ってお り、円のマ ーケ ッ トを 自由化 す
い たの で あ る。 対 日貿 易赤字 も約 3
る こ とで円高 ・ドル安 に誘導す る必 要 に迫 られてい た。
さらにア メ リカには ラテ ンアメ リカ諸 国の累積債務 問題 が の しかか っていた。 メキ シ
コ、 ブ ラジ ル、ボ リビア、ベ ネズェ ラ とい った国 々は債務返済不能の状 況 に陥 ってお り、
政権 が交代 し、デ フ ォル ト (
債務不履行) が宣言 され る と、 これ らの国 々に融資 してい
る米 国銀行 が連鎖倒 産 しかね ない危 機状態 にあ った。
「この金融危機 を しの ぐには、先進 各国が応分 の分担 をす る しか ない」と レー ガ ン大
統 領 はサ ミッ トや IMFの場 で繰 り返 し述べ ていた 。 円へ の役割分担 を強 く望 んでいた
ので あ る。
こう した米 国の危機意識 を背景 に発 足 した 日米 円 ドル委員会 だ ったが、 日本側 は終始 、
消極 的 だ った。米 国側 の要求 に積極 的 に答 えず、ス ピンケル財務次官 が 、テーブルを叩
い て大場財 務官 ら日本側代表 に詰 め寄 る こ ともしば しばだ った とい う。 米 国が攻勢 をか
け、 日本 が抵抗 を重 ね なが ら後退す る、 とい う形 の協議 の結 果 、8
5年 3月 「円の国際化
の ための具体 策」が ま とまった。
その主 な内容 は① 金融 の 自由化 (
特 に、金利 の 自由化 や オープ ンな短期 金融市場 の整
備 )② 非居 住者 の利便性 向上 を目的 と したユ ー ロ円市場 の 自由化③東京 オ フ シ ョア市場
の創設- な どであ る。
当時 の状 況 を総合 的 に考 える と、 まず まず の内容 だ った とい え よう。 しか し、今 日か
ら振 り返 って見 る と、 日本 の通貨 当局 は具体 策 の実施 を棚上 げ し続 けて きた、 と しかい
い ようが ない。円の 「
使 い勝手 」を良 くしようとい う努 力 はほ とん ど見 られ なか った。
とい うよ り、 アメ リカ側 か ら攻 め られ て、試験 の答案 は書 いた ものの、実行 を さぼ りに
さぼ って きた、 とい って過言 で はない。
その背景 にあ ったの は大蔵省 、 日銀 の金融政策へ の こだわ りだ った、 と思 われ る。 円
の 自由化 を進 めればそれ だけ通貨 当局 の調 節機能が低下す る。 最 も効率 の悪 い金融機 関
が存続 で きる こ とを目的 とした 「
護 送船 団方式」 に固執 し続 けた通貨 当局 が積極 的 にな
れ なか った、 とい うのが 円の国際化 の遅 れの最大 の理 由だ った。
(
ユ ー ロ誕 生 による危機 感 )
こう した意識 を変 えたのは ここ数年 の国際通貨情勢 の変化 であ る。 その中で最 も衝 撃
-3
8-
的 な変化 はユ ー ロの誕生 だ。 国際通貨 の世界 は ドルの一極体 制 だ ったのがユ ー ロの誕生
で様 変 わ りし始 めた 。 この まま放置 してお くと、円 は ドル とユ ー ロの狭 間 に埋 没 し、完
全 なロー カル カ レンシーな りかね ない、 とい う事態 に気 づ き、方 向転換 を図 らざるをえ
な くなったのであ る。
ユ ー ロにつ いては まだ 懐疑 的 な見方 も残 ってい る。 しか し、9
9年 1月 1日、 EUl
lヶ
国`(ドイツ、 フラ ンス 、 オース トリア、 オ ラ ンダ、 ル クセ ンブル ク、ベル ギ ー、 フ ィン
ラ ン ド、 ア イル ラ ン ド、 イ タ リア、スペ イ ン、 ポ ル トガル) が参加 してス ター トした
ユ ー ロは十分 、 ドル に対抗 す る力 を持 ってい る 。 参加 1
1ヶ 国の人 口は約 2億 9,000万 人
で アメ リカ (2億 6,0
00万 人) を上 回 ってい る。 GDPも約 7兆 ドルに達 し、 ア メ リカ
(
約7
.
6
兆 ドル) と匹敵 してい る。
このユ ー ロの弱 点 と して挙 げ られ るの は経 済構 造 の多様 性 だ。確 か に一 人 当 た りの
GDPはスペ イ ンや ポ ル トガルの 1万 5,000ドルの 国か ら ドイツの 3万 ドル弱 まで ざっ
と 2倍 の格差 があ る。 失業率 も ドイツの約 1
0%か らスペ イ ンの約 2
2%までバ ラツキが あ
る。 さらに産業構造 で は ドイツ、 フラ ンス な ど第二次 産業 が相 当発展 してい る国 と、ス
ペ イ ン、ポ ル トガルな ど第一次 産業 の シェアが高 い 国が混在 してい る。 こう した多様性
が単一通貨で収 ま りきれず 、瓦解す るので は- とい う見方 で あ る。
しか し、誕生 までの3
0
年近 い歴 史 を考 える と、 EU諸 国の強 い決意 が揺 る'
ぐ可 能性 は
極 めて少 ない。先 に触 れた ように、ニ クソン米大統 領 が ドル と金 との交換 を停止 してか
ら、 ヨー ロ ッパ諸 国の通 貨 は何 度 も危機 に見舞 われ た。 その対抗 策 と してのユ ー ロ誕生
にか けた決意 は固 く、時 間の経 過 と共 に存在 感 を高 め る と見 た方が妥 当であ ろ う。
そ う した見方 の代 表 者 はバ ー グステ ン ・
国際投 資研 究所所 長 であ る。 同氏 は 「世界 の
通貨 シェアは ドル 4、ユ ー ロ 4、
1その他通貨 2にな る」 と予 測す る。 そ こまでいか な く
とも早晩 、 ドル とユ ー ロが世界 を二分す るに違 い ない。特 に9
9年 1月のユ ー ロ誕生 時点
で参加 を見送 った英 国が参加 す れば 、ユ ー ロ市場 は一段 と厚 み をます 。 ご く大雑把 に将
来像 をデ ッサ ンす る と、南北両 アメ リカは完 全 な ドル圏 に、 旧東 欧諸 国 を含 めユ ー ロ ツ
パか らア フ リカがユ ー ロ圏 と して塗 りつぶ され、 アジアで は ドル とユ ー ロが共存 す る姿
だ。 円 はやや強い ロー カルな通 貨 とい う存在 に落 ちて しまう と思 われ る。
そ うなれば、 日本経 済 がいか にモ ノづ くりに優 れ てい て も、衰 退す るのは 目に見 えて
い る。 こ う して円の 国際化 は緊急課題 になって きた とい え よ う。
-39-
(ア ジア通 貨危機 も促進材料 に)
円の国際化 を促 す もう一つ の国際金融情勢 の変化 は宮沢蔵相が APEC蔵相会議 の演
説 で触 れ た アジアの通貨危機 であ る。 9
7
年 の 7月、 タイバ ー ツが投 機資金 の標 的 になる
前 の アジア経 済 は問題 を内在 して はいて も、表面 的 には絶好調 だ った。 ASEAN (
東
南 アジア諸 国連 合) を筆頭 に高度成長 を続 け 「
世界 の成長 セ ンター」と呼 ばれていた。
高 い貯 蓄率 、勤勉 な国民性 な ど、かつ て 日本 が評価 され た ような成長 要因 に加 え、東西
冷戦 の終結 後 、市場 開放 政策 を取 り、外 国資本 を積極 的 に導 入 した こ とがその秘訣 とい
われ た ものであ る。
危機発 生 以前 の通 貨政策 を見 る とほ とん どの国が管理通貨政策 を とっていたが、事実
上 ドルにペ ッグ していた。大蔵省 の調査 に よる と、米 ドル との相 関関係 は フ ィリピンの
0
.
75を除 い て平均 0.
9
4-0.
99だ った とい う
。
ほ とん ど1
0
0% ドル と連動 して為 替相場 を
決 めていたのであ る。
円 との 関係 でい えば円高 ドル安 の ときはアジア諸 国製 品の価格競争力が 日本製 品 よ り
5年 の プ ラザ 合意 で米 国が ドル高政
強 くな り、 アジア諸 国の方が 日本 よ り有利 になる。 8
策 か ら ドル安 に政策転換 を図 って以来、一貫 して円高 ・アジア通 貨安 とな り、 アジア各
国 は 日本 に対 して有利 な立場 に立 って きた 。 特 に 1ドル -8
0円 になづた94年 ごろには 日
本企業 が相次 いで アジア諸 国 に生産現場 を移 し 「
産業 空洞化」と騒 がれた ものだ。 アジ
ア諸 国の立場 に立 てば、 ドルペ ッグ制 が大成功 したわけであ る。
しか し、9
7
年 7月、
rこの環境 が亮全 に変化 した。宮沢蔵相 は 「
市場 のセ ンチ メ ン トが
突如変化 した」 とい う表現 を したが、 ジ ョージ ・ソロス氏 らが率 い るヘ ッジフ ァン ドな
どの投機資 金が タイ ・バ ー ツを売 り浴 びせ たのが きっか け となった。 タイ銀行 は必死 で
買 い支 えたが 、つ い に屈伏 しフロー トに移行 す る。 こう した危機 が フ ィリピン、マ レ∵
シア、イ ン ドネ シア、
香港 、韓 国へ と連鎖 し、 アジア全体 が大 きな痛手 を受 けたのであ る。
その ア ジア経 済 も日本 が アジア開発銀行 に3
0億 ドル (
3,600億 円) の保証基 金 を創 設
した こ とや、 IMFの緊急援 助 な どで9
9
年春先 か ら危機状 態 を脱 した と見 られ てい る。ノ
中国 を除い て ほ とん どの国は まだ フロー ト制 の ままだが 、完 全 フロー トを貫 くには問題
が あ る、 との認識 で新 た な為 替政策 を模索 中 とい う。 こ う した状 況 の下で は、円の国際
化 を進 め る こ とはアジア諸 国の利益 に もつ なが るわ けで あ る。 ユ ーロ誕生 とアジア通 貨
危機 とい う二つ の大変化 が円の国際化 を全面 に押 し出 した と言 え よう。
-40-
(
通貨バ スケ ッ ト方式 とは)
で は 日本が アジア諸 国 に推 薦 してい る 「
通 貨バ ス ケ ッ ト方式」 とは どんな もの なのか。
「
バスケ ッ ト」 は ピクニ ックに出掛 け る ときの食事 を入れ るバ ス ケ ッ トを意味 してい る。
何 を入れてい くか。好 み に よって異 なるが、大 きさは大差 ない、その ためパ ンを多 く入
れ ようとす ればハ ムや ソーセー ジな どを減 ら さな くて ほな らな くなる。 また果物 をた く
さん入れ る場 合 は肉 もパ ンも減 らさな くてはいけない。つ ま りバ ス ケ ッ トの 中身の よう
に色 々な通貨 を加重平均 し、為 替 レー トを決定す る方式 であ る。
「通 貨 バ ス ケ ッ ト」 そ の もの を 日本 政 府 が 思 い つ い た わ け で は な い 。 ニ ク ソ ン ・
シ ョックが起 きる まで、 つ ま り ドルが金 と交換 され る こ とを前 提 と した 「金 ・下ル体
制 」が維持 されてい た時代 は、主要通 貨 は ドル との交換比率 が決 まった固定相場 だ った
ため、バ ス ケ ッ トとい う考 えはなか った 。
しか し、多 くの通 貨が フロー トした直後 、一部 の国が この方式 を導 入 した。 いずれ も
完 全 フロー トす るだけの経 済規模 が な く、か とい って一つ の通 貨 にペ ッグす るほ ど強 い
関係 国 を持 たない国 々であ る。 かれ らは為替 リス クをで きるだけ分散 す るため、複数 の
通 貨 と連動す る 「
バ ス ケ ッ ト方式」 を考案 したので あ る。 リス クを回避 す る方法 と して
分散投 資 す る方法 、つ ま り 「ポ ー トフ ォ リオ投 資」 が あ るが 、 これ を逆 に考 え、バ ス
ケ ッ トに出来 るだけ多 くの通 貨 を入れ る こ とで、為替 リス クを緩和 しよう とい う発想 と
い え よう。
そのバ スケ ッ トに詰 め込 む通貨 の加重平均 は経常 ・資本取 引量 の地域 別 シェアか ら割
り出 してい る。 例 えば、 アイス ラ ン ドは カナ ダ ・ドル、 ノル ウェ ー ・クロー ン、英 ポ ン
ド、ス ウェーデ ン ・クロー ネ、ス イス ・フラ ン、米 ドルそ して 日本 円 な どをバ ス ケ ッ ト
に詰 め込 んでい る。 また クエ - トは英 ポ ン ド、米 ドル、 ECU (
現ユ ー ロ) をバ スケ ッ
ト通貨 に選 んでい る、実 は タイ ・バ ー ツ も通 貨危機以前 、バ ス ケ ッ ト方式 で為替 レー ト
を決 めていた。 しか しバ ス ケ ッ トの 中身 は9
0%以上米 ドルだ った と言 われ てい る (
正式
発 表 してい ない )
。その ため、結 果 的 には ドル とい う単 一 の通 貨 に連動 (ペ ッグ)す る
の と変 わ らなか ったわけであ る。
為替管理 はい うまで もな く一 国の主権 に属 してい る。 この ため、外 為 審答 申 も 「アジ
ア各国が通貨建 ての ミスマ ッチ をな くす ため の一つ の選択肢 と してバ ス ケ ッ ト方式 が考
え られ る」 と極 めて憤重 な表現 を取 ってい る。 しか し、大蔵省 が密 か に根 回 しを した と
ころ、か な りの国 々が積極 的 とい う。 ただ、 国 に よって どん な通 貨 を選 ぶか、7
また各通
-41-
貨 の ウエ ー トづ けの基準 にな にを選ぶか な ど微妙 に異 なってい る とい う。
アジア通 貨の安定 とい う観 点 か らす れば、 ドル、ユ ー ロ、円 を三本柱 とした この方式
が最 も現 実 的 と思 われ る 。 例 えば、 そ の ウエ ー トが ドル5
0%、 円30%、ユ ー ロ20% に
な った と しよう。 どれか一つ の通 貨が大 き く変動 して も、相 当緩和 され る こ とになる。
そ うなれ ば、バ スケ ッ トに入れ る ウエ ー トに応 じて円の保有 を増 やそ う、 とい う力学 が
働 き、円の 国際化 は大 き く前 進す るに違 い ない。い ささか遅 きに失 した感 はあ るが通貨
外 交 を期待 したい。
(
市場 環境 の整備)
以上見 て きた ように、政府 はや っ と円の国際化 に本腰 を入れ は じめ た 。 そのため に最
も肝心 な こ とは、円 に対 す る信頼性 を高 め る と同時 に、非居住 者 に とって円 を 「
使 い勝
手」 の よい通 貨 にす る こ とで あ る。 外為審 の答 申 も実 はその具体 策 に重点が置か れてい
る。 答 申内容 とその実施状 況 を検証 してお こ う。
答 申は まず、資本市場 の整備 を強調 してい る。 国債 を初 め と した債 券 の量 と種類 を増
や し、市場 に厚 み をつ け、取 引 を活性 化 させ る こ とに重点 をお いてい る。 す で に実施 し
た措 置 とこれか ら実施すべ き措置 にわけて整理す る と次 の ようになる。
①
99年 4月以降、実施 されたか年度 内 に実施予定 の整備 策。
(イ) FB (
政府短期証 券 ) の市 中公募発行 - これ まで は、引受 け シンジケー ト団
向 けで、一般参加 はなか ったが、9
9年 4月か ら実施 されてい る。
(ロ) TB (
短期 割 引 国債 )、 FBの源 泉徴 収 免 除 - これ まで は、 TB、 FBの償
還差益 につ いて源泉徴収 していた。 これが特 に非居住 者 に とって不評 だ った 。
4月か ら一定 の要件 を満 たす もの について これ を免 除 し、
、外 国法 人 につ いては
原 則非課税 に した。
(
ハ )利付 国債 の利子 免 除 -非居住 者 ・外 国法 人が支払 い を受 け る利付 国債 の利子
で 、一括登録等 の要件 を満 た し、9
9年 9月 1日以降計算期 間が 開始す る もの に
つ き、源泉徴収 を免 除す る。
(
ニ) 国債発行 の多様化 -9
9年度 よ り、3
0年 国債 及 び 1年物 TBを導 入 し、国債償
還 年限の一層 の多様 化 を図 る。 同時 に9
9年 1月以降発行 の国債 よ り繰上償還条
項 を撤廃 す る。
以上 の措 置 の多 くは欧米諸 国です で に実施 されてい る。 日本 で は税体系上 、土地 や利
-4
2-
子 な どの 「
不労所得」 と勤労所得 の課税 についてバ ランス を重視す る傾向が強 く、有価
証券取引税 や利子 の源泉徴収制度が残 されて きたが、や っ とグローバ ル ・ス タンダー ド
とっ
に合わせ たわけだ。 これ らの措置でほぼ欧米並 になった とい える。 特 に非居住者 に.
て円は 「
使 い勝手」が よ くな り、利便性 が向上す る ことは確 実視 されている。
外為審では 「さらに利便性 を向上 させ 、 ビッグバ ンを一層推進 してい く観点か らも以
下の ような課題 に取 り組 んでい くことが望 まれる」 と.
してい る。
②
今後整備す る必 要があ る項 目。
・
(
イ) レポ市場 の整備 - 日本 の レポ市場 は現在 、現金担保付債権貸借 とい う独 自の
形態 になってい る。 これ は有価証券取引税 を節税す るためだ ったが、同税 の廃
止 を踏 まえ、欧米で採用 されてい る売買形態 に早急に変 えるべ きであ る。 その
ための市場整備 を急 ぐ必 要があ る。
(
ロ) 5年 国債 の導 入 -国債 の市場金利指標性 をあ らゆ る満期 に関 して向上 させ、
イール ド ・カーブの効率 的な形成 を一層促 進す るこ とが、円資産が国際的 に活
用 され るための必 要条件 であ る。 そのため にはベ ンチマ ー ク となる 5年利付 国
債 を導 入すべ きであ る。
(
ハ)ス トリップス債 の導人 - 日本 の資本市場 を国際的 に魅 力あ る もの として発展
させ るため には、
l
投資家のキ ャッシュ ・フローや金利 リ・
ス クについての様 々な
ニーズに対応すべ く国債 の商 品性 を一層 多様化 させ るこ とが重要であ る。 その
一つ として欧米主要国の国債市場 で取引 されてい るス トリップス債 (
登録 され
た利付債 の元本部分 と利札部分 を分離 し、別個 の独 立 したゼ ロ ・クーポ ン債 と
して も保有 及 び販売す る ことがで きる債券) につい て も、市場 のニーズ を勘案
しつつ、その導 入 に必要 な決裁 システムの整備 や税 制上 の取扱 いの検討 を行 う
べ きである。
以上の ように外為審の将来 に対す る提言 は専 ら、資本市場 の整備 に置かれてい る。 日
本 に資本市場 は株式市場 に比べ 閉鎖的 と言 われてお り、一気 に開放 して外 国人の参入 を
促 そ う、 との発想 である。 一つ一つ は細 か な措置 だが、積み上 げれば相 当な効果 は期待
で きそ うだ。
(
決済システムの改善)
外為審で は、円の使 い勝手 を よ くす るための もう-づの必 要条件 と して、決裁 システ
-43-
ムの改善 を挙 げてい る。 資本市場 が整備 されて も、決済 に時 間がかか った り、面倒 な手
続 きが必 要 だ と他 の市場 に流 れる可能性 があ るため、欧米諸 国並 に決済 シス テムの改善
が必 要 との判断だ。
決 済 シ ス テ ム に 関 して 特 に 注 目 さ れ て き た もの と して 「即 時 グ ロ ス 決 済 」
(RTGS) がある。 これは債券取引 を個 別 に決済す るので はな く、大 口取 引の場 合 、
ま とめ て リアル タイムで決済す る方法 。 また、 「
証 券資 金 同時決 済 」(DV P) も進 ん
でい る。 これは債券売買 とそれ に伴 う金融取引 を同時 に決済す る方法 であ る。
RTG SもDVP もユ ーロの登場 を機 に欧州市場 で活発 になってお り、米 国市場 も懸
決済 システムの改善 、
命 に追随 してい る とい う。 答 申は こう した実情 を紹 介 しなが ら 「
整備 は円の国際化 の観点 か らも喫緊の課題 であ り、非居住者 が安心 して円資 産の運用 ・
調達 を行 って行 く上 で不可欠の条件 とい える」としてい る。
そ して具体策 として次 の 3点 を挙 げてい る。
①
2000年末 までの RTGS化 や稼働 時 間の延長 を目指 してい る 日銀 ネ ッ トワー クの
整備作業 を、確実 に実現す ることが重 要で ある。
②
CP、 CDについて も、 DVPの実現等 を目指 した決済 システムの整備 について
検討 が行 われてお り、その早期 の成果 を期待 したい。
③
さらに、中長期 的観点 か らは、証券決済全般 につ き、 よ り包括 的 な集 中決済 の仕
組 みの整備 を、欧米 の動 向 を踏 まえつつ幅広 く検討 す る ことも必 要であ る。
以上 の よ うに、決済 シス テム改 善 の具体 策 は欧米 の後追 い を急 げ、 とい う程 度 に止
まってい る。い ささか迫力 に欠け る提 言で はあ るが、大量 の短期資本 が国境 を超 えて、
洪水 の ように動 く現在 の状 況 に照 ら して、 日本 に決済 システムが遅 れ を取 ってい る、 と
い う危機意識 は十分読み取 れ る。
(
大東亜共栄圏との違い)
これ まで見 て きた ように、政府 が進 め ようとしてい る 「円の国際化 」 はおお むね妥 当
と評価 で きる し、外為審 の提案 も的 を射 た もの とい える。 しか し、それだけで円が一気
に国際化 で きるか、 とい うと答 は否 で あ る。 まず 、「なんのための国際化 か」 とい う原
点 を しっか り内外 に知 らせ る必 要があ る。
ここで浮か んで くるのが 「日本 が アジアで イニ シャチ ブ を とるためで は」 とい う説 だ。
先 に円の国際化が遅 れた原 因 として、大蔵省 、 日銀 の 「
護送船 団方式 」 による金融行政
-44-
を挙 げたが 、 もっ と突 っ込 んで考 える と、第二次 世 界大 戟 中 にい われ た 「大 東 亜 共栄
硯 中国東北部) や南方諸 島 に侵攻
圏」構想 に行 き着 く。 つ ま り、当時、 日本軍 が満州 (
す る際 に掲 げた標語 と同 じ精神 で はないか、 との疑 いが国民 の嘩層心理 に残 ってい る こ
とと関係 す る。 もっ と直裁 にい えば、 日本 は今度 は軍隊で はな く円 とい う通貨 で アジア
支配 を始 め ようと してい るので はないか、 との疑 いだ。
確 か に円の国際化 とい って も、い きな りヨー ロ ッパや ラテ ンアメ リカでの使 用 を増 や
す ことは考 え られ をい。 どう して もアジアが 中心 になる。 そ して アジアで円の力 が強 く
なる と、 日本 の プ レゼ ンス (
存在感)が高 ま り、 アジア諸 国が反発す るだけで な く、米
国 との関係が緊迫す るのではないか との危悦 だ。
実 は、先 にふれた アジア開発銀行- の緊急融資 -(
いわゆる宮沢 プラ ン) を発表 した時 、
米財務省 や IMFの反応 には微妙 な ものがあ った。 アジア経 済 を回復 させ るため、
.当面 、
日本 の援 助 は必 要 だが、あ ま り強 く成 りす ぎては困 る、 という警戒感 が米高官 の発 言 に
に じんでいた とい え よう。
さらに、 日本 国内かち 「
大東亜共栄 圏のエ ピゴー ネ ン」 とす る声が 出 るこ とも予想 さ
れ る。 確 か に、円建 て比 率 を高 めれ ば、為替 リス クを相手側 に押 しつ け る こ と とな り
「弱 い ものい じめ 」 と映 るか も しれ ない。 しか し、 そ れ は アジア通 貨 が ドル と密接 に
ペ ッグ してい る こ とを前提 と した議論 だ。 ドル、ユ ー ロ、円 を 3本柱 と した 「
バスケ ッ
十方式」で は通用 しない。
この ように考 えてい くと、円の国際化 はアジア諸 国 に とって もプ ラスであ る とい う認
識 を徹底 させ る必 要があ る。 この点 に関 して政府 は まだ まだ努力不足 と言 わ ざる をえな
い。
(
デ ノミで基本単位 の統一 を)
で は、円の国際化 に向 けた 日本 の強い決意 を内外 に知 らせ るには どうす れば よいか。
政府 も外為審 も口 を閉 ざ してい るが、最 も効 果があ るの はデ ノ ミネー シ ョンであ ろ う。
1
0
0分 の 1のデ ノ ミを実施す る こ とだ。 このデ ノ ミを行 えば、為替表示 は 1下ル- 1
・
2円
-1
.
3ユ ー ロ とい った形 になる。 基本 的 な単位 は
1で統 一 され る こ とにな り、三者 の 関
係 は一 目瞭然 になる。 ユ ーロがス ター トす る直前 の9
8
年末 までは、先進 国通 貨 の 中で も
イ タリア ・リラの ように、円 よ りも大 きな単位 で表示 され る通貨があ った。 しか し、 イ
タ リアがユ 」 ロ に参加 した結 果 、 ドルやユ ー ロ に対 し 2桁 で表 示 され るの は円 だ け と
-45-
な ってい る 。 これで三極体制 とい えるのか。形 を整 えるため には、デ ノ ミを行 うこ とが
不 可 欠 とさえ考 え られ る。
デ ノ ミとは通 貨 の呼称 、 または単位 を変更す る こ とで あ る。 具体 的 には① 単位 を切 り
下 げ るデ ノ ミネー シ ョン切下 げ② 単位 を切 り上 げるデ ノ ミネー シ ョン切上 げ③ 呼称 だけ
を変更す る単純 デ ノ ミネー シ ョンー が あ る。 この内最 も簡単 なのが③ の単純 デ ノ ミであ
る。 これ は明治 の初期 、 日本政府 が江戸時代 まで使 っていた 「
両 」を 「円」 に変更 、 1
ドル -1円 に した よ うに、単位 を変更せず呼称 だけ を変更す る もので、新興独立 国が国
際社 会 に仲 間入 りす る ような ときに実施 されてい る。
② の デ ノ ミ切上 げ は、過去 に若干 の例 が あ るが、 デ フ レが ひ どい ケースで なければ実
施 しに くく、例外 的 なデ ノ ミとい える。
今 問題 に してい るの は① の デ ノ ミ切 下 げであ る。 理論 的 には、,
1
00円 を 日本 の通貨 の
単 位 と して、その呼称 を改 め て円 にす る こ とを意味 す る。 つ ま り1
00円 -新 1円 にす る
わ けだ。 その結 果 、経 済活動 につ いて完全 に中立 なので あ る。
こう した デ ノ ミネー シ ョン切下 げは イ ンフ レ収束後 、通貨 の通用力 回復 の手段 と して
実 施 され て い る 。 歴 史 的 に振 り返 る と、第一次 世 界 大 戦後 、 ドイ ツ、 オース トリア、
ポ ー ラ ン ド、 リ トリア、ハ ンガ リー、ペ ルーな どが相次 いで実施 したの を第一波 に、第
95
0年代 の イ ン ドネシア、
二次大戦直後 のギ リシャ、ハ ンガ リー、中国、台湾 の第二波 、 1
ソ連 、 フ ィンラ ン ド、そ して最近 のチ リ、 ブ ラジル、 ボ リビア、 アルゼ ンチ ン、ペ ルー
な どの第 四波 と続 い てい る。 そ して多 く?国が デ ノ ミに よ り、通 貨 の安定 をな しとげて
い る。
我 々 日本 人 は イ ンフ レとは無縁 の ように思 いが ちだ。 しか し、歴 史 的 にみ れば、戟 中
戦後 に猛 烈 な イ ンフ レに見舞 われてお り、その後始末 を してい ない ともい える。 それが、
現在 の よ うに円の為 替 レー トが対 ドルで 2桁表示 にな ってい えるの だ。 これ まで は 「
混
乱 が予想 され る」 とい う理 由だけで先延 ば しされて きた 。 しか し、現在 、デ ノ ミは円の
国際化 の決意表 明手段 と して浮上 してい るのであ り、 これ までの状 況 とは全 く異 なる。
20世紀 を決算 しこ新 しい戦略構 築 とい う観点 か ら実施すべ き政策 とい え よう。
(フランスのデ ノミをモデルに)
その際 、参考 にな るの は フラ ンスが 1
960年 1月 1日に実施 したデ ノ ミであ る。 1
95
0年
代 の後半 、 フラ ンス は植 民地 だ ったアルジェ リア、ベ トナムの独 立 を抑 えるため に軍事
ー46-
費 が膨 張 し、巨額 の財 政 赤 字 を抱 えてい た 。 そ の ため失 業 率 も高 く 「ヨー ロ ッパ の病
人」 とさえい われていた 。
こう した状 況下 の5
8
年1
2月、第二次 世界大 我 の英雄 であ る ドゴールが大統 領選 で当選
「
した。 この とき、 ドゴー ルが行 ったのが デ ノ ミ宣言 だ った 。 栄 光 の フ ラ ンス を取 り戻
そ う」 と ドゴールは 1
0
0分 の 1のデ ノ ミを打 ち出 したのであ る。
デ ノ ミの実施 日は宣言 か ら 1年 と十数 日後 の 1
9
60年 の 1月 1日と し、 この 間 を準備期
間 と した。 その ほぼ中間 に当 たる5
9
年 7月 1日に、準備措 置 と して、い ままで流通 して
い る紙 幣 その もの に、 そ の額面 に対 応 す る 「
新 フ ラ ン」(
1
00分 の 1) の額 を赤 字 で上
刷 りした紙 幣 を発行 した。 日本 でい えば、現在 の福 沢諭吉 の 1万 円札 の上 に 1
00円 と赤
字 で上刷 りした紙 幣 を発行 す る ような もので あ る。 この新紙 幣で フラ ンス 国民 に 「デ ノ
ミは経済活動 に中立 で、単 な る呼称単位 の変 更 にす ぎない こ と」 を印象づ けた。
さらに実施 日か ら 3年 間、新 フラ ンと旧 フラ ンの紙幣 を並行 して流通 させ 、6
3年 1月
1日に新 フラ ンの呼称 をフラ ンに変更 した。周到 な準備 で ほ とん ど混乱 はなか った とい
う。 ドゴールは成功 したので あ るd これ以来 三十数年 間、 フラ ンの対 ドル レー トはユ ー
ロに参加す る まで 1ドル - 5フラ ン前後 で大 きな変動 はお きなか った。 も し、 ドゴール
が デ ノ ミを実施 してい なけれ ば、ユ ー ロが誕生 したか どうか、疑 問であ る。
現在 は コ ンピュー タ利 用 が進 み、 デ ノ ミを実施す るには フラ ンスの ケース に比 べ 、準
備期 間 を長 くした り、デ ー タの変更 な どの コス トが高 くなるか も しれ ない。 しか し、激
しさを増す 国際金融情勢 の下 で、三極通貨体 制 を作 り上 げ る、 とい う大 目標 を達 成す る
ため に蒔跨 すべ きで はない と思 われ る。
-4
7-
付
属
資
料
資料 1.1
999年 OECD閣僚理事会及 びケル ン G8経済サ ミッ トに
向 けた労働 組合声 明 (
連合仮訳 )
資料 2. アジア通貨危機 支援 に関す る新構想
・
・
・
・
・
・
57
一新宮 津構想 一
資料 3.外 国為替等審議会答 申 (
要 旨)
21
世紀 に向 けた円の国際化
・
・
・
6
0
-世界 の経済 ・金融情勢 の変化 と日本 の対応 一
資料 4.金融 システム改革 (日本版 ビ ック ・バ ン) の概 要
資料 5.金融 システム安定化 のため の主 な 目的別取 り組 み
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
6
3
・・
・-・
・
・
・
-・
6
4
・
資料 6.金融再生策 (
98年1
0月) の枠組 み -・
・
-・
・
-・
- -・
・
・
資料 7.米 国の預 金保 険制度 の概 要
-
-・
-6
5
-・
・
- -・
・ --・
- -・
-・ --・
・
・
6
6
資料 8.英 国の オ ンブズマ ン制度 (
概 要)
資料 9.歴史年表
-
・
-
・
-
---・
---・
・
・
-・
・
・ ---6
7
金融 自由化 ・金融危機 ・金融改革
-
・
・
・
・
・
-・
・
・
-・
-68
1
9
9
9年 OECD 閣僚理事会及びケル ン G8経済サ ミッ トに向けた
資 料 1
労 働 組 合 声 明1
(
連合仮訳)
1
99
9年 5月
グローバ リゼーシ ョン :新たな政策方向の必要性
1
.
金融市場は、1
9
9
8年の崩壊寸前の状態か ら、ある程度の回復を見せている。しか し、
金融危機は成長停滞 と景気後退 という遺物を残 した。世界経済の 30%は依然低迷を続 け、世
99
9年の成長を 1
9
8
2年以来最低のものになると予測 している。ロシアでは、移行
界銀行は 1
作業が跨き、三分の一以上の労働者が貸金の支払いを受けていない。ブラジルにお いては、
金融市場が安定 してきた ものの、それは景気後退 というの代償 を払っての安定である。景気
後退が どれ くらい深 く、そ して どれ くらい続 くのかはいまだはっき りしない状態である。 日
本は不況 に陥 り、欧州連合は低成長 とな り潜在生産力を大きく下回っている。アメ リカ経済
のみが、活気 をみせている。
2.
根本的質問は、 この脆弱な状況が どれ くらい続 きうるのか ということである。アメ
リカ経済が世界経済の唯一の原動力という状態は、大 きな危険をは らんでいる。 もしこの原
動力が失速 したな らば、世界経済は即座に深刻な不況 に陥るであろう。各国政府 は、 この危
険を認識 し、世界経済における拡大の源泉を多様化 させるため、均衡の取れた成長 を刺激す
るための行動 を早急にとらな くてはな らない。
3.
この 2年間の金融経済危機の根本的原因は、国内および国際的な適切な規制の枠組
みの議論 を行わずに、金融の自由化だけを追求 してきた ことにあ.
る。その結果 として資本 は
方々に飛び散 り、世界経済 を不安定にしてきた。危機 の被害を受けた国へ押 し付け られてい
る緊縮政策は国内での混乱 を引き起 こし、世界の需要 の拡大 を阻害 してきた。同時に、政策
当局者は、貿易 ・資本の自由化の社会的影響 をかた くなに無視する ことによ り、グローバ リ
ゼー ションに対する反発 を逆 に引き起 こしている。
4.
主要 国と国際諸機関は、危機か らの教訓 を正 しく導き出 し、世界市場を統治す る公
共政策の新たな方向性 を確立 しな くてはな らない。政府 と制度の透明性 と民主的な説明責任
を早急 に強化する必要がある。OECD 閣僚理事会 とケル ン G8サ ミッ トは、新たな方向性 に
はずみをつける機会である。政府 に対 して、特 に次の ことを要求する。
デ フ レの危険を拭 い去 るため、世界経済の均衡の とれた成長 を回復させるための、協調
5
-l
l
)
行動 をとる。 (
基本的人権の尊重を条件に、最貧途上国の多国間および二国間債務を帳消 しにする。 (
8)
ワシントン G8労働大臣会議で決め られた、広範囲の社会的セーフティネッ トの原則 を
1
0)
国際的基盤で拡大する。 (
国際金高虫市場 を制御するための規制の枠組みを作る国際委員会 を設立する。 (
1
2-1
6)
wTO シア トル閣僚会議に先立ち、国際貿易 ・投資制度 と国際金融機関が中核的労働基準
を保証す るよ う、I
LO の任務 を強化する。 (
1
7-1
9)
社会的に受容 しうる労働市場の適応性 に向けたアプローチについての合意を形成 してい
1 この声明は、
経済協力開発機構 ・
労働組合諮問委員会 (
OECD・
TUAC)が、国際自由労連 (
I
CFTU)
、
WCL)そして欧州労連 (
ETUC) との協力の下に作成 した。
国際労連 (
-51-
くため、ソーシャルパー トナーとの 「
雇用対話」 を、OEC
Dおよび G8のレベルで開始
する。 (
2
0-22)
持続可能な開発における、社会的および雇用に関する側面を構築する。 (
23)
グローバルな需要拡大
5.
アジア危機が勃発 し、グローバル経済は深刻なデフレの危機 と、さらなる失業の増
大 に直面 している。アメリカの貿易赤字の急増は、新たな金融不安の火の元 となる。 これに
D加盟国の中央銀行総裁および蔵相は、均衡のとれた需要拡大を維持 し、成長
対 して、OEC
と雇用創出を再発進 させるための協細行動を取っていかなければな らない。
ヨーロッパ経済は世界の経済活動のおよそ 30%を占め、その景気拡大はきわめて重
要である。 しかし、ヨーロッパ経済の活動水準は、失業を減少させ世界経済におけー
る責任
を呆た していくために維持すべきレベルを大きく下回っている。最近の欧州中央銀行による
金利引下げを歓迎するものの、実質金利は依然高すぎる。この遅すぎた金利引下げは、経済 ・
通貨統合後の経済政策決定の枠組みに欠陥があることを反映 している。供給面の潜在生産力
に需要の拡大をマ ッチさせることが緊要であ り、これにより構造的な弱点 も克服することが
できる。単一通貨政策を補完するよう、ヨーロッパ ・レベルでの財政政策の能力を高めてい
かなければな らない。
6.
7
.
日本 については、国内需要を刺激するための思い切った行動を継続 していく必要が
ある。財 ・サー ビスの消費のコンフィデンスを回復 していくため、すべての働 く家庭、特に
所得のよ り低い層のために、恒久減税 と安心できる年金計画を実行する必要がある。
8
.
G8および OECD加盟国の政府は、最貧途上国の二国間債務を帳消 しにするととも
一
に、国際金融機関による債務帳消 しが可能 となるよう、その財政基盤強化に対応 していくべ
0
0
0」を通 して表明されている世論への適切な対応で
きである。債務帳消 しは、「
ジュビレー2
ある。帳消 しに当たっては、対象国が労働権 を含む基本的人権 を尊重 していくことを条件 と
するべきである。
9
.
アジアおよびラテンアメリカの危機にある国々に対 して、国内需要を拡大 し、グロ
MFの安定化プログラムは、緊縮
ーバル経済の回復に手助けをする術 を与えるべきである。I
か ら成長支援に転換 していかなくてはな らない。ロシアの労働者に未払いの貸金を支払い、
税収の損失や金融危機の長期化につながる悪循環を断ち切らな くてはな らない。多 くの重荷
が女性 に押 しつけられてお り、適切な社章的セーフティネッ トの不在の中、極端に減少した
家計収入で家庭を維持 し若年者や老人を世話する責任を負っている。
1
0.
貧困の撲滅 と広 い意味での社会保障制度の発展のための財政的援助により、危機に
c
i
al
ある国々の成長志向型政策 を支持 していく必要がある。世界銀行が最近 「
社会規範 so
Co
d
e
」発表 したが、その方針を支持するべきである。ワシン トン G8労働大臣会議 (
1
9
9
9年
2 月)では、 このようなアプローチの要素について議論 している。つまり、途上国、移行経
済国そ して新興経済国への国際的支援は、危機に最も被害を受けた国と、それ らの国の最 も
弱い人たちに向けられるべきである。優先順位 として次のことが挙げられる。
最 も貧 しい人々が彼 らの子供を学校に行かせ、
、必須医療へのアクセスを確保するため、
・
教育および保健の予算 を確保する。
一
不完全雇用または失業状態にある人々が生活 していくに足る収入を確保するため、社会
的セーフティネッ トを構築 ・拡大 し、児童労働を撲滅する I
LO支援プログラムを拡大 し
ていく。
-5
2-
雇用集約型の公共事業計画を拡大 し、訓練および求職プログラムを充実する。
必需品の価格 を抑え、最低賃金の購買力を維持する。
LO の中核的労働基準を基盤 とした、健全な労使
政労使間の三者対話の促進を通 して、I
関係システムを発展する。
ll
.
政府は、グローバ リゼーションに対 して、公共財政を支える健全な課税ベースを維
持するというチャレンジに直面 している。資本所得 ・利潤に適切に課税できないことが、課
税ベースを侵食 し、労働に対する課税への過度なシフ トという結果を生んできた。所得税か
ら消費税への転換は、税制をいっそ う逆進的なものにしてきた。公正な税制度への国民の支
持を取 り付けていくため、均衡がとれた資本 ・利潤課税を確保する国際的合意を築いていく
ことが必要である。
国際金融システム :市場の規制
1
2.
最近の危機で、国際金融システムの 「
断層線」 が暴露されてきた。今 日では、資本
家 ・銀行家の失敗は、大勢の労働者とその家族の生活に直接的な影響を持つようになった。
国際金融の枠組みを再構築 していくことが重要な仕事 となっている。度重なる金融危機に対
する公的な対応は、これまでのところ、透明性 と監視を改善していくためのイニシアティブ
をとるということである。確かにこれは必要ではあるが、問題の根幹を直視 していない。不
適切な透明性 と監視が今回の危機の原因であるという確証はない一方で、貸 し手が、手に入
9
80年代アメリカでの貯蓄貸付組
る多 くの情報を利用 していなかったことは明 らかである。1
令 (
S&L)の危機 と 90年代のスカンジナビア諸国の銀行危機は、透明で良く規制されたシ
ステムにおいても金融危機が発生しうることを証明 している。 ここでの教訓は、国際金融シ
ステムにおいて安定を確保するためには、もっと大胆なステップが必要であるということで
ある。長期的成長 を回復するためには、政府が、国際金融機関のネッ トワークをとお して、
グローバル市場、特に金融市場を規制 ・管理 していく方法を根本的に再構築 していく必要が
ある。長期の生産的投資を促進するために、金融市場に再度たがをはめることを目標 としな
くてはな らない。
1
3
. 銀行家 と財務官僚は、労働組合や市民社会の公式な参加な しに、未だ閉ざされた ド
アの向こうで議論を行なっている。G7は最近新たに、国際決済銀行 (
BI
S)の議長の下、G7
の官僚と民間金融機関代表によって行われる 「
金融安定フォーラム Fi
na
nc
i
a
lSt
a
bi
l
i
s
a
t
i
o
n
Fo
r
um」 を創設 した。 しかし、これもまた閉ざされた 「
クラブ」である。規制は、規制当局
だけに任 してお くには、重要すぎる問題である。それ故、政府は、現在必要 とされている国
際的な規制の枠組みについて早急 に報告することを目的とする 「
独立国際委員会」 を広範な
参加のもとに設置するべきである。最初のステ ップとして、金融安定 フォーラムは公聴会や
協議 を行なうべきである。
1
4.
必要な措置には次のことが挙げられる。
為替 レー トが、投機操作ではな く経済のファンダメンタルを反映することを保証 し、長
期間にわたる大幅な経常収支赤字 ・黒字の解消を進めていくために、地域 レベルおよび
ドル ・円 ・ユー ロの準備通貨間の、財政 ・金融政策の協調を進める。
国内マクロ経済および社会安定の利益のために、政府が短期海外資本の流出入をコン ト
ロールする権利を認める。
投機的資金移動を減少させるため、外国為替取引に対 して国際的課税 を行 う。
自己資本基準、短期の外貨借入の制限、デ リバティブ取引やその他の信用ベースにレバ
ー53-
レッジを効か した投資の管理 ・
認可など、金融市場規制のための国際基準を徹底させる。
資金移動、串間債務、外貨準備高に関する情報を改善する。
1
5.
国際通貨基金 (
I
MF)がグローバル経済の幹事役の地位にあることが、心配の種で
あると広 く認識 されるようになっている。一連の危機は、資本勘定の完全な交換性を進める
ために、I
MF規約を修正しようという動きの愚かさを明らかにした.東アジアとブラジルに対するI
MF
の当初の政策勧告は、基本的にマクロ経済バランスに問題がなかった国に過度な節約と緊縮を求
めるという誤りにより、景気後退を悪化させてしまった。国連コペンハーゲン社会開発サミットで求めら
れたように、今、I
MFの改革が必要である。これやゝ
らのプログラムは、
層 縮ではなく、グッド・
ガバナン
ス(
良い統治)や雇用の増大、貧困の減少を促進していくものでなければならないI
J MF規約4条に
よる各国-の定期ミッションは、定期的に労働組合代表と会談を持つべきである0
1
6.
国際金融のガバナンス (
統治)の改善とともに、コーポレー ト・ガバナンスのより
良い基準が必要 と声れている。本年 5月の OECD 閣僚理事会で採択される 「
コーポ レー トガ
バナ ンスの原則 」 は、すべてのステークホルダーの一連の権利を提示 している。「
原則」 の促
進努力の一環 として、「
原則」 を適切に反映 していくための国内での取 り組みが必要である。
また、OECD の協定などを基礎として、贈賄や腐敗を除去 していくためのアクションを、労
働組合および産業界 と協力して、起 こしていくべきである。
変化す るグローバ リゼーションの社会的側面
1
7
. 危機は、 グローバ リゼーションの社会的側面を無視することの危険性 を証明してき
た。 この ことは、貿易 ・投資システム自体 を後戻 りさせ、OECD における不均衡な多国間投
資協定 (
MAI
)交渉 を脱線させる原因となった。今後の貿易・
投資ルールは、国または企業に
与え られた、あ らゆる権利に付随する社会的および環境に関する責任を具体化 していかなけ
ればな らない。新たな交渉ラウンドを開始する 1
999年の WTO シア トル閣僚会議が、その最
初のテス トとなる。規制緩和 し競争を強化 していくのではなく、途上国、先進国ともに、雇
用 を促進 し、生活水準を向上 していくよう広範囲のラウンドを計画 していかな くてはな らな
い。環境に対する配慮 とともに、今後の交渉においては、中核的労働基準を促進 し、貿易政
策のレビュー においてこれ らの基準を具体化 し、
WTO 内にそのための適切な機関を設置して
いかなければな らない。そ して、I
LO と WTO との間の協力関係を強化するため、具体的な
措置をとる必要がある。 これ らの努力な しには、世論の支持を得ることは出来ず、協定の実
施 を保証 していくことは難 しくなる。
1
8.
金融、経済そ して社会の安定は、そ れぞれ相互 に関連 し合っている。不公平なまで
に労働者に負担 をかける安定化政策は、社会不安を招き、究極的には I
MFおよび世界銀行の
信頼性 をお としめ、さらに傷つけることになる。社会経済発展の目標 とそのための行動につ
いてのコンセ ンサスを築いていくため、政労使間の社会対話が必要である。人材開発や、資
源配分 をめぐる意見対立の調整のためには、労働組合のような強固な社会的集団が不可欠で
ある。グローバル金融の安定 と持続可能な開発のための新たな構造は、G8や世界銀行で開発
される社会規範 を取入れていかなくてはな らない。
1
9.
ブ レ トンウッズ機関と地域開発銀行は、援助対象国での 「
労働における基本的原則
LO宣言」の採用を、運営上の要件基準にしていくべきである。当該国は中
と権利 に関する I
核的労働基準 を遵守、実行 していくことで、進行中の調整援助プログラムの適性を証明して
いかなければな らない。各国の大蔵大臣と国際金融機関は、労働基準を単に労働大臣の守備
範囲とみてきた これまでの慣習を絶つ必要がある。労働市場が所得の適切な分配を生み出し、
国内市場拡大 を基盤 とした真の意味での経済発展を支えていくことを保証 していくためには、
ー5
4-
このような労働基準が必要である。中核的労働基準はまた、開発過程を歪め、金融市場にお
ける資金配分の効率性 と安定性を害 している腐敗 を妨 ぐべ く、対抗する政治勢力を築いてい
くためにも必要である。OECD多国籍企業ガイ ドラインは、すべての中核的労働基準を包含
していく方向で改正 していかなけばな らない。ガイ ドラインをよ り意味のあるものにしてい
くため、今回の見直 しでは効果的な実施機構 を確保 していく必要がある。
G8雇用対話
20.
持続的需要拡大を雇用創出につなげ、失業を減少させていくためには、適応的な労
働市場を創 り出 し、経済の需要サイ ドと供給サイ ド双方を同調させていく行動をとっていく
必要がある。 「
OECD 雇用戦略」の国別審査は、労働市場の規制緩和に狭窄 に焦点を当てて
お り、労働組合の弱体化、賃金交渉の溶解、雇用保護の低減、失業者への罰則などに換言さ
れている。新 しいアプローチが必要である。グローバル経済においては、教育 ・訓練、医療、
そ して強い労働組合を基礎とする健全な労使関係への投資をとお して築き上げてきた強固な
社会的一体性 を持った国こそが、競争優位を達成することが出来る。途上国、先進国とも、
市場が求める柔軟性 ・ダイナミズムと、社会が求める生活の保障 ・人間としての尊厳を、均
衡させるうる制度を備えた国が、最 も成功する国である。国民は、雇用条件や経済開発 に関
して発言する権利を与えられなければな らない。
21
.
G8および OECD 政府の間で、人的資本への投資が将来の鍵であるという合意が形
成されている。 しか し、企業、個人、公共部門による投資を通 じて人的資本 を築 くことにな
る生涯教育の財源確保のため、まだ多 くのことがなされなければな らない。教育および労働
担当大臣が労使 とのパー トナーシップを築いていくことなしには、各国で、教育 ・訓練のた
めに官民で財源をどうするかに関する問題の答えを見つけ出す ことは出来ない。
22.
現在 ヨーロッパでは、ルクセンブルグ ・サミッ ト (
1
997年)で合意された雇用問題
の目標が実行 されている。労働組合は、G8と OECD のレベルにおいて、経済の変化を管理
していくため、政府および産業界との対話を開始する準備がある。今後次のことについての
同意が可能である。
労働者の技能を向上し、教育制度を改革することで、生涯教育を現実のものとする。
貧困を除去 し、労働市場統合を促進 していくため、社会福祉、最低賃金そ して貸金構造
のシステムを一体化する。
危機 に瀕 しているグループや地域を支援するため、積極的労働市場プログラムの実効性
を確保する。
若年者 と女性 を労働市場に統合する。
技術の変化 をうまく利用 し、技術革新への包括的アプローチを進め、社会的に容認 しう
る働き方 を促進 していく。
23.
リオ会議アジェンダ 21の社会 ・環境 ・経済の 「
柱」 で合意されたように、需要 と雇
用の拡大の回復は、持続可能な開発の枠組みで実現 していかな くてはな らない。雇用転換の
苦痛を低減 し平等を保証するという社会 目標は、持続可能な開発 を実行 していく戦略の中心
とな らなければな らない。 これには、OECD が触媒 とな り、労働、財務、環境の各担当大臣
と、それぞれの分野における国際諸機関が共同 して行動 していく必要がある。持続可能な開
発戦略の全般的な 目標は、労働者と労働組合の参加を保証し、持続不可能な生産 ・消費パタ
ーンを変えていくことである。 こうした参加な しには、変化の目標は限 られた成功 しか得 ら
れないであろう。雇用転換は、労働者が、構造変化にもかかわ らず、自分たちの生計が失わ
れることがないことへの信頼を保証するものでなければな らない。
-5
5-
結論
24.
グローバル不況を防止 し、回復と持続可能な開発の基礎を築いていくことは、先進
国、途上国双方の主要な民主国家のリーダーシップに与えられたチャレンジである。グロー
バ リゼー ションは、しばしば人間のコン トロールの限界を超える様相をみせるが、人間が作
り出 した ものであ り、自然界の力ではない。国際社会に突き付けられた真の問題は、「
グロー
バ リゼー ションを民衆のニーズや希望に合致するように制御する国際的な政策 ・制度を築 こ
うとする政治的意志が存在するか ?」 ということである。
以上
-5
6-
アジア通貨危機支援 に関する新構想
一新宵揮構想 -
通貨危機に見舞われたアジア諸国の経済困難の寛服を支援 し、国際金融資本市場の安定化を図るため、
我が国として早急に支援策を講 じていく必要がある。
そのため、アジア諸国の実体経済回復のための中長期の資金支援 として 150億 ドル、これ らの諸国が
経済改革 を推進 していく過程で短期の資金需要が生じた場合の備えとして 150億 ドル、合わせて全体で
300億 ドル規模の資金支援スキームを用意する。
I.アジア帝国に対する中長期の資金支援
1.アジア諸国における資金需要
通貨危機に見舞われたアジア諸国では、実体経済回復のため、それぞれの国で次のような施策 を講
ずるために必要な中長期の資金需要がある。
(
1
) 民間企業債務等のリス トラ策及び金融システム安定化 ・健全化対策
(
2
) 社会的弱者対策 (
ソーシャル ・セーフティー ・ネッ トの拡充、強化)
(
3
) 景気対策 (
雇用促進的な公共事業の推進等)
(
4
) 貸 し渋 り対策 (
貿易金融の円滑化支援、中小企業支援)
2.支援の方法
アジア諸国における上記のような中長期の資金需要に応えるため、我が国として、以下に掲げるよ
うな方法でこれ ら諸国の資金調達を支援する。その際、東京市場の活用を図 り、我が国の資金の連
流に努める。
(
1
) 我が国か らの直接的な公的資金協力による支援
① アジア諸国への輸銀融資の供与
② アジア諸国の発行するソ ブリン債の輸銀による取得
-57-
③ アジア諸国への円借款の供与
(
2
) アジア諸国が国際金融資本市場か ら円滑に資金調達できるようにするための支援
① 保証機能の活用
イ)輸銀の保証機能を活用する。
・アジア諸国が民間金融機関か ら行 う借入に対 して輸銀が保証を行 う。
・アジア諸国が発行するソブリン債を輪銀が保証する (
所要の法改正が必要)
ロ
) アジア諸国が民間金融機関か ら行 う借入に対 して貿易保険を適用する。
ハ)世界銀行及びアジア開発銀行に対 し、アジア諸国の借入及び債券発行による資金調達
に対 して積極的に保証を行 うよう要請する。
ニ)将来的には、アジア諸国を中心 とする新たな国際的な保証機構の設立が真剣に検討さ
れることを期待する。
② 利子補給
利子補給等を行 うためのファン ドとして、我が国の拠出によ り 「
アジア通貨危機支援資金
(
仮称)
'」を設立する。本資金を活用 して、輸銀や民間金融機関等がアジア開発銀行 と協調
してアジア諸国に対 して融資を行 う場合に、当該融資に関して利子補給等を行 う。本資金
は、他のアジア諸国等にも開かれた枠組みとし、参加の意向があれば歓迎する。
(
3
) 国際開発金融機関との協調による資金支援
世界銀行及びアジア開発銀行 と協調 してアジア諸国に対する資金支援に努める。特に、民間
企業債務等の リス トラ及び金融 システム安定化に向けての取組によ りアジア諸国政府が抱え
る資金需要に対 し、世界銀行及びアジア開発銀行が最大限の支援を行 うよう要請 し、その
際、我が国としても協調 して資金支援する。
(
4
) 技術支援
日本特別基金を積極的に活用 し、アジア諸国が民間企業債務等のリス トラ及び金融 システム
安定化のための総合的な対策を実施するため、これ ら諸国に対 して必要な技術支援を行 うよ
う世界銀行及びアジア開発銀行に要請する。また、このような総合的な対策を実施するた
め、我が国としても、個別国の実情に応 じ、必要な技術支援を行 う。
Ⅱ.アジア帝国に対する短期の資金支壌
アジア諸国が経済改革を着実に推進 していく過程で、貿易金融円滑化等の短期の資金需要が生じた場合
に備えて、スワップ等を用いた総額 150億 ドルの短期資金を用意する。
-5
8-
我が国としては、これ らの施策の実現に向けて、国際開発金融機関及び関係諸国、特にアジア太平洋諸
国及び G7各国と緊密に協調 していくこととしたい。
-5
9-
資料3
外国為替等審議会答 申(
要旨)
21
世紀に向けた円の国際化
一世界の経済 ・
金融情勢の変化と日本の対応 -
Ⅰ.円の国際化の現状と最近における内外経済情勢の変化 <級
今ノ
甲の虜貯必bl
>
。 円の国際化の現状は、日本経済の世界におけるウェイトが約 1
4%に達し、日本が世界最大の純債権国で
ある等の状況にかんがみると、必ずしも十分な状況にあるとは言えない。
. 円の歯隙化が90年代に入って停滞した背景を、特に貿易及び資本取引について分析してみると、貿易取
引については、国際的にドル建てで取引される原材料の輸入に占める割合が高いこと、日本の親会社が
為替リスクを負担していること等が指摘される。資本取引については、クロスボーダー取引に対する規制が
最近に至るまで残った、非居住者が円資産を運用する手段に制約があった、非居住者に関する税制等の
環境整備が十分でなかった、との指摘もなされていた。
。 アジア遭芳彦G の発 生、ユー D の a嵐 ビッグン1
'
ンの慮 虜といった内外の経済 ・
金融情勢の変化の中で、
円の国際化の推進が 、21
世紀を目前に控え、改めて今 日的課題として問われている。
Ⅱ.円の国際化の必要性 <舟のためのノ
甲の周財政bl
>
1
. 国際的な側面における必要性
. 世界の3大経済地域の一端を担う欧州のユーロ及びアジアにおける主要通貨である円が、ドルを補完し、
の鹿 粛 こ貢献することが期
各国及び地域が節度ある経済運営を行うことにより、見 定Lた脚
待される。
=al
f名題声絹 の鑑
。 円の国際通貨としての役割強化は、為替市場、特にアジ7/
由の経済の安定に資する。
ひいてはアジア諸
2. 日本にとっての必要性
. 国際取引における通貨の多様化は、金融サービスの新しい業務展開の可能性を提供し、円のマザー・
マー
昔# 於に貢献する。
ケットである貞首 相 の一
。 国際金融取引における円ビジネスの拡大は、日本の金融機関にとって、ビジネス・
チャンスの拡大につなが
るとともに、外貨建ての調達リスクを低減させ、ひいては励
声カの@ 好.
慮上に資する。
。 対外取引の円建て化は、日本の企業等にとって為 替I
JRク点
滅のメリットがある。
Ⅱ.円の国際化を進めるに当たっての課題
<F
Fの周m舟のため/
=何を倉すべきか>
1
. 基本的視点
. 円の国際化を推進する上では、日本経済の安定的成長や円の安定等の国際的な責務に応えていく覚悟が
必要である。
。 さらに、円を国際的な取引で使用するに当たっての環境整備を進めることが不可欠であるとともに、円に対
世紀に向けて長期的に取り組んでいく
する意識改革を含めた官民双方の取り組みが必要であり、今後21
課題であるとの認識も必要である。
。 当面は、日本との関係が極めて深いアジアにおいて国際通貨として円の使用の一層の広がりを図ることが
現実的であり、このためにも、実体経済面でのアジアとの結び付きを速やかに回復 ・
拡充し、アジアに円が
供給され、国際取引において円が流通する基盤を作っていくことが重要となる。
ー60-
2
. 提言
(
1
)円が国際通貨として広く受け入れられていくためには、その前提条件として、金融システムの速やかな安
定と景気回復によ尋8本鮒
する虐雷 の@窟・
hl、そのための中長期的なマクロ経済バランスの
回復が不可欠である。
(
2) 主要通貨であるf
l
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L
,
、1 -D.f
gtのノ
野での為 #舟虜の棚
を図ることが、国際通貨を提供する
国としての責任である。
(
3) アジア諸国にとって、ドル、円、ユーロ等を構成要素とする通貨バスケットとの関係が安定的になるような
慮
為替制度も1つの選択肢であり、この中でアジア肋 t
d
Htの 静圧を強めていくことは望ましい。また、
将来的なアジア域 内の通貨制度について、日本としても積極的に議論に参加していくことが必要である。
(
4) 円の国際化を進める上で、円の利便性を高めるとともに、安心して利用できるようなインフラの整備が必
要である。
① 金融 ・
資本市場における環境整備
98年 4月の改正外為法の施行や、両年 1
2月発表の円の国際化推進策に盛り込まれた 、FBの市中公
FBの償還差益に係る源泉徴収の免除、国債利子について非居住者 ・
外国法人
募入札発行の開始 、TB・
を非課税とする措置等は、その後所要の法令整備等が実施されており、円の国際化の観点から大きな
前進であった。今後も引き続き甜 ・
.
資本絹 の朗 を図っていくことが重要である。
ィ .非居住者の参入を促す観点から、欧米で採られている売買形態での取引を推進していくためのレポ
市場の環境整備を早急に行うべきである。
口 .国債のイールド・
カーブの効率的な形成を一層促進するべく、中期債 のベンチマークとなる5年利付
国債を導入すべきである。
ハ .投資家の様 々なニーズに対応するべく国債の商品性を一層多様化させることが重要であり、欧米主
要国の国債市場で取引されているストリップス債の導入を検討すべきである。
② 決済システムの改善
康彦 システムの塵1
節ま円の国際化の観点からも喫緊の課題であり、非居住者が安心して円資産の運
用・
調達を行っていく上で不可欠の条件と言える。
ィ .日銀ネットの 2000年末までのRTGS化や稼働時間の延長の確実な実現が重要である。
口 .D
VPの実現等を目指した、CD・
CPの決済システムの整備に係る検討の早期の成果を期待する。
ハ .中長期的な観点から、証券決済全般につき、より包括的な集中決済の仕組みの整備を検討するこ
とも必要である。
③ この他 、日銀が提供する各国中銀等へのサービスの拡充、国際商品市場における取扱商品の拡大、
会計原則 ・
会計基準の継続的見直し、及び倒産法制の整備も必要である。
(
5) 現状のように内外の経済状況が大きく変わろうとしている時期に当たっては、g易滋榊
5
mこおい
て、これまでの プラタテホス象房GL円の利用につき新たな角度から検討することも必要になってきている。
① 貿易取引
・ 建値通貨に伴うリスクとコストを再評価し、これまでの貿易取引における通貨建ての現状につき見直
し、円建て取引拡大の可能性につき検討する必要性が高まっている。
・ 円の国際化が進展するためには、日本の円建て輸入の拡大等により、非居住者の円保有が拡大す
ることが必要である。
② 資本取 引
・ 資本取引においても円資金を供給していくことは、円市場の厚みを増し円の国際化を推進していく
上でも、また、日本の超過貯蓄を海外へ円建てで還流する上からも、その必要性が高まっている。
・ 貸し手、借り手双方がこれまでの対外資金供給の在り方を見直し、円建てでの資金供給の活用によ
る日本の金融機関の金融仲介機能の回復 ・
向上を図っていくことが重要である。
-61-
・ アジア経済の現状等にかんがみると、アジア-の円資金の供給に当たって公的支援の果たす役割
は従来にも増して大きくなっている。(
国際協力銀行のソブリン債保証業務の活用や新宮淳構想に基
づく円資金の供給等)
③ その他、国際機関による円建て融資の拡大や、日本として円建て表示を積極的に準用することも必要
である。
-62-
金融システム改革 (日本版 ビッグバ ン)の概要
① 目標 :2
0
01年 までに ロン ドン、ニ ュー ヨー ク並み の国際金融 市場 と して再 生
②改革 3原則
Fr
e
e(
市場原理 が働 く自由な市場 に)
-参入 ・商 品 ・価格 等の 自由化
Fa
i
r(
透 明で倍額 で きる市場 に)
-ルール の明確化 ・透 明化 ・投 資家保護
Gl
o
b
a
l(
国際的 で時代 を先取 りす る市場 に)
- グ ロー バル化 に対応 した法 制度 、会計制度 、監督体制 の整備
③ 具体的事項 とスケ ジ ュール
事
1
9
97 1
998 1
99
9 2
000 2
001
項
1
)
投 資家 .
.
資金調達草 の選 択肢 Q
)拡 大択肢の拡 大
・投 資信託 の商 品多様化
備
考
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・「証券総合 F)
1
座 J導入 p
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・証券デ リバテ ィブの全 面解 禁
9
た
7年
だ7
し、
月開始
個 別株 式 オ プ シ ョンは
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・ABS (
資産捜保 証券 ) な ど僚権 等 の流動化
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・外 国為 替法 改正
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98
年 4月 1日施 行
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2
)
仲 介者サー ビスの質 の 向上及 び競争 の嘩連
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・証券会社の業務 多角化
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9
そ
円超
由化部分
9年末
の前段階
か には完
ら5
を現行
千と
万
全
して
円超
の売
自由化
、
9
まで引下
8
買代金
年 4月 1
に
0
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億
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99年度 下期 中i
羊制限 を撤廃
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年i月まで に実現
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・保 険会 社 と金融他 業 態 との間の参 入
3
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利 用 しやす い市場 の整備 .
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・店頭登録市虜 にお け る疎通 面 の改 善 .
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・未 上場 .未登録株 式 市 場 の整備
・証 券取 引法 の公正 取 引ル ール の整備 .拡充等
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・証 券子 会社 、借 託銀 行 子会社 の業 務範囲
・連 結財 務諸表 制度 の阜 直 し
98年 3月 1
1日施行 _
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・株 式売 実委託 手数料 の 自由化
・証 券会社の免許制か ら原 則 登録 制 - の静行
4)
倍 額 で きる公正 .
透 明 な取 引の枠 組 み .
ルール の整備
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97年 7月に偉株 制度 を導入済 等
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(
備 考) 大蔵 省 資料 等 よ り作成 .
-6
3-
:
3
罰0則準化
日施行 に つ い ては 、
97年 1
2月
金融 システム安定化のための主な目的別取 り組み
破綻処理、不良債権処理
健全性 の強化等
88年 7月
成)
準」
B
に野す
(
国際業務
Ⅰ
S一
日
92
弓
年
る画一
資本
度
に換わ
未
際的統
比
までに達
率
る銀行
規
一基
制
90年6月
劣後 ローン り許可
92年8月
許可
外貨建 て永 久劣後債 の
93年 1
月
93年 2月
96年 6月
98年 2月
共
(
民間金融機
同債 権 買関の出資)
取機 構 を設 立
可
円建 て永 久 劣後債 の許
金 融関連 四津 (
住 専処理、
_預金保険法改正等)
2001
年 3月 末 ま で金 融 機 整理 画 収 銀.
行 の創 設 (
東京 早期是 正捨 置 く
98年 4月
関 の債 務 の 全 額 保 護 (こ.
共同銀 行 を改組 し、破 綻信 導入 目標)
の.
た め 、特 訓 保 険 料 徴 用組合 の受皿 とす る)
収.
.それ 以 降 は預金 の元 住 専の債 務 処 琴 の た め、住
本1
,
000万円まで保塵) 宅金融債権管理機構 を創設
金融安定化二法 (
30兆 円の公的資金確保等)
預 金保険機 構 の財 政 基盤 整 理 回 収 銀 行 の 機 能 拡 充 金融機 関 の優 先株 等 の
強化 (
7兆 円 の 交 付 国 債 、(
信 用組 合 だ けで な く一般 引受 け を行 う金融危機
1
0兆 円の政 府保 証借入 枠 金融機 関の受皿 とす る)
管理勘 定 を頭金保 険機
計1
7兆円〕)
頚 金保 険機 構 の回収体制強 横 に設 置 (
3兆 円の交付
[
化(
罰則付 立入調査権)
98年4月
98年 7月
98年 1
0月
国債、1
借入枠
0
【
計
兆円の政府保証
1
3兆円]
)
早期是
1
(
年延期)
由内基準行-の適用は
正措 置 ス ター ト
金融監督庁発足 金融再生関連法等 (
総額 60兆 円の公的資金枠)
健全 な借 手 に対す る敵 襲
継 続 の た め 、破 嘩 行 の 業
務 を公的管理 で きる制度
を創 設 (
①株 式 取 得 に よ
る特 別公 的 管 理 、② 金 融
整 理 回収 機 構 (日本版 RT
C)を創 設 し(
住宅金融債権
管理機構 が整理 回収銀行 を
吸収合併 )、
破綻行等の不良
債権を買取 .
回収
整理管財 人 に よ る業務 管 不 良債 権 流 動化 等 の 峰 進
理、
③ ブ リッジバ ンク)
手続
(
サーきの迅速化等)
ピサ一業の許 .
可、競売
-6
4-
存続可能 な過 少 資本行
尊の早期健全化衷策 (
98
年 2月の金融危機管理勘
定は廃止 し、
新たな資本
注入制度 を創喪 )
金融 再 生 策 (
98年1
0月)の枠組み
①公的資金の内訳
円
破 綻 金融機 関の預金 者
保護
特 別 公 的 管理 、ブ リッ
ジバ ンク設 立
資本 注入
l
_
_
_
_
_
_
_
_
一
.
_____
__
_____
∫
②破綻処理及び早期健全化 のスキーム
(
*
)
1
) 自己資本比率に基づ く区分の具体的数値は、金融 再生委員会が定める‥法案審議 の段階では、
-8%(
国内基準行は 4%)
-r
過′
ト資本行 J-4
%(
同 2%)
-r
著 しい過小 資本行 j-2%
r
健全行J
(
同1
%)
-「
特に著 しい過′
ト資本行Jの数値が示 され ている.
・
.
2
)資産査定 ・貸倒 引 当、有価証 券の評価方法は、金 融再生委員会が定め るところに よる…
3
)r
健全行J-の資本注入 は、a)
受 け皿銀行 、b)
信用収縮回避 に不可欠 、C
)
合併 な ど金融再編に
不可欠の場合に限 る.
.
4
)r
特 に著 しい過′
J
、
資本行」-の 資本注入は、地域経 済に必要不可欠 な場合に限 る.
.
-6
5-
米
F D
1933 年
I C
国 の 預 金
保 険
制 度
の 概 要
(連 邦 預 金 保 険 公 社 ) の 金 融 毛
幾 関 破 轟在処 至聖制 度 の 変 遷
F D IC設 立
ペ イ オ フ
-
くま邑金 保 険 金 の 直 接 支 払 しヽ) の み 可 能
35 年
預 金 乗 手き くP & A の 原 型 ○ た だ し _ 毒素 主 や 出 資 者 に 壬勇 夫 を 負 壬巨 さ せ な し、き巨閉 鎖
型 処 理 ) (
= 対 す る 資 金 岩露助 _ 付 保 預 金 の 覇多転 を 行 う 権 限 付 与
55 年 頃
コ ス ト ・テ ス ト の 確 立 (ペ イ オ フ よ り も 他 の 処 軍竪方 式 の 方 カ,
'処 宅 コ ス
場 合 の み 他 の 処 理 方 式 を 選 択
能 )
65 年 頃
P & A 方 ≡亡 く破 轟き金 融 機 色尋の 閉 垂良 を 前 召邑と し _ 入 手Ll= よ っ て 資 産 売 却 ・ 負 債 乗
継 を 行 う 方 三に) の 確 立
当 初 は 健 全 資 産 と 全 負 債 を 乗 翁墓さ せ る 方 式
82 年
コ ス
84 年
コ ニ′チ ネ ニータ JL
I ・イ リ ノ イ 銀 行 救 済
87
ブ リ ッ ジ Jく
ンクの 駈
年
可
-
ト 基 準 の 法 制 イヒ く不
く80 年 代 後 半 ∼
91 年
ト カく低 Lヽ
可欠 鯛
宅 の 導 入 )
く Toobig to fd - 1
=対 す .
る批 判 )
# 限 付 与
預 金 保 険 基 金 の 収 支 悪 イ
ヒ)
連 邦 講 垂 保 険 公 社 改 善 法
・ コ ス ト テ ス ト の 巌 手鼻イヒ
・早 期 是 正 措 置 の 主事 入
(
FD 工C工A ) の 制 定
(長 J
Jヽコ ス ト 原 点T
J) と シ ス テ ミ ッ ク リ ス ク 例 外 親 玉巨
・付
保 対 象 外 預 金 者 及 び 一 般 債 権 者 に 対 す る 予 ヨ要 請 葺 き己当 の 先 払 I
_ヽの 権 限 を
E
j
=Z a
米国における破綻金融機関の処理方式
処理方式
A.
(
閉鎖型(
1
)
保険金支払
①郵破産処理)
妾支払
(
Pa
y
-o
f
f
)
処理方式の概要
代表例
< .
>内資金量
○ 預金者に対して、FDI
Cが小切手、現金により ペン.
スクエア銀行<5億トル̀>
直接保険金を支払う○
フラン
過去最大のペイ
クリ
ン寸シヨ
ナル銀行
オフ
<3
(
7
1
億ド
9
82
ル
年)
>
.
・
_
(
2
)
P&
①付廃強金
A(
(
資産.
De
po
s
負債の承継)
i
t
p
T
&
r
A
a
ns
f
e
r
) ○ 付保対象預金を健全な金融機関に移転.
破綻金融機関の資産.
負債を入札方式によっ
②預金移転
(
3
)
ブ②全預金
リッジバシク
p&A
/
(ンク
.
わ`
.
ニュ
ーイングラント
●
<1
91
億ド(
ル
1
>
9
74年)
.
・
付保対象預金のみ承継.
せる。
,
当時と
し
ては最大の銀行破綻
○て健全な金融機関に承継さ
破綻金融機関の最終的な処理が決定するま
すべての預金を承継.
での間、資産.
負債をP&A方式で引き継ぐ.
a.非閉鎖型(
救済)
- 資産評価が難行し
設立
年)
o03ケ月後にブリ
たため
-ト/
(ン
、
ク
フ
に売却
■
リツ
シ●
ハ(
●
L
ン
1
9
ク
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○ 自立再建を目指す金融機関に対する資本注 コンチネンタル.
イリ
ノ
イ銀行<29
4億ドル>
-66-
英 国 の オ ニ
ノブ ズ マ ニ′制 度
オ ニノブ ズ マ ニノ希J
J度
○
くイ ギ リ ス
(概
要
)
ド ・.
オ ニ′プ ズ マ ニ′協 会 H P イ反 約 )
・ ア イ JL
,ラ ン
オ ニノブ ズ マ ニ′と l
ま 何 カヽ?
協 会 の 考 え る オ ニ′ブ ズ マ ン 制 度 の 要 件 l
ま 、 ① 調 査 対 象 組 織 力、ら の 独 立 性 、 ② 効 率 性 _ ③
公 平 性 _ ④ ア カ r
ウ ニ′タ ビ リ テ ィ _ の 4 つ で あ る ○ こ れ
ブ ズ マ ン 制 度 を 他 の 苦 情 処 理
制度
ら の
う ち _ 特 f=
r独
立 性 」 力{- オ ニー
と 区 男t
Jす る 金蔓(こ な る ○ 組 織 内 音Bの 苦 情 処 理 部 門 lニ (
まオ
ン
ブ ズ マ ニ′の 名 称 を 使 う も の カ{あ る 力モー 独 立 性 カ{あ る と (
ま 音 え な しヽo
オ ニ′プ ズ マ ン 制 度 l
ま何 の た め の
O
も の カヽ`
?
オ ン プ ズ ー ニ′(
ま 、 公 的 卓拝Ft
l. 或 t
.ヽ(
ま 私 的 部 F「カ{提
さ れ る 苦 情 を 扱
O
供
す る サ -
ビ ス (
こ 関 し _ 市 民 力ヽら 提 出
う た め lニ あ る o
オ ニノブ ズ マ ン 制 度 の 利 用 l
ニお 金 l
ま 力ヽカヽる 力ヽ?
オ ー ブ ズ マ ン
⊂)
ーサ - ビ ス l
ま 無 筆事で 提 供 さ れ る ○
オ ニ′プ ズ マ ン l
こl
ま ど ん な も の カであ る カヽ?
協 会 1て(
こ.
ま 2 4 の オ ン ブ ズ マ ン 制 度 カモあ り _ 過 半 (
ま 法 令 (こ 基 づ しヽて しヽる 力{、 法 令 lこ 基 づ
カヽず 、 対 象 と な る サ - ビ ス 部 Ft
lの イ ニ シ ア チ ブ (
こよ L
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P 自 主 的 (ニ 創 投 さ れ て しヽる 制 度 も あ る ○
制 度 毎 (
こ、 取
り扱 う 苦 情 の 種 類 一
世 _ 弓垂 制 力 _ 羊 毛轟 き 等 (
ま 異 な っ て し、る カモ_ 各 々 (ニ ー 制 度
の 毒筆細 や 苦 情 提 出 の 方 法 を 紹 介
し た 無 料 の 祝 明 冊 子 カモ月弓意
さ れ
て しヽる o
r
ま と ん ど の 制 度 (
= お し、て _ 個 人 の オ ニ′プ ズ マ ニ′カモし、る カ{_ 中 (ニ t
ま _ 兼 吉養性 の オ ニーブ ズ マ
ニ′も あ る o
オ ニノブ ズ ー ン (
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どの 段
階 で
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月写す 一く き も の カヽ?
オ ニ′ブ ズ マ ニ′カ{苦 情 処 理 lこ 関 与 す る の (
ま 、 検 書寸対 象 葉 音 等 カ{苦 情 を 処 理 す る 適 切 な 機 会
を 与 え ら れ た 後 l= な る の カモ通 常 で あ る ○ 薫 香 等 (
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ま 苦 情 処 理 シ ス テ ム カ{あ る の カで通 常 で あ
り _ 苦 情 の 多 く l
ま そ こ で 成 功 裡 lニ 解 決 さ れ て しヽる ○ オ ニ′ブ ズ マ ン l
まラ ス
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/ラ ニ′ ド ・ オ ニ′ブ ズ マ ニ′協 会 メ ニ′Jく-
く金 融 関 連 )
The B anking O m budsm 召
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lding Societies O m bt
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The ェnsurance O m budsm an B ureau 、 The 工nvestm entO m btldsm an
The Persona
l 工nvestm entA uthor
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英 国 の
「銀 行 オ ニ′ブ ズ マ ニ/協 会 」 組 織 概 要
○ 葺受立 の 背 景
英 国 の 裁 竿t
J制 度 で (
ま、 単 純 な 案 件 で も
ま た
裁
1 年 程 度 _ 複 雑 な 件 ・
て≡t
ま 3 年 以 」二の 時 間 を 婁 す る ○
判 の 草 月可負 担 fニ ー
つ しヽて (
ま 、 敗 訴 側 カ<勝 訴 側 の 弁 護 士 費 用 ま で 負 担 す る の 力{通 常 で あ
り _ 金 額 .
ま 弁 恕蔓士 の 請 求 (こ よ っ て 決 ま る た め ー 訴 於 (こ (
ま 高 額 の 費 月弓負 担 力ヾ生
こ う し た 事 情 を 背 景 l
ニ ー 享肖 糞 者 の コ ス
じ る ○
ト 負 担 力{な く - 角等決 ま で の 期 間 カ{短 し、紛 争 処 理 機
1 日 _ 垂艮育子 乗 務 (ニ 関 す る 個 男I
J紛 争 処 理 を 目 的 と す る 垂良行 オ ン ブ
ズ マ ン 協 会 (
The Office of the Banking Or
nbudsT
T
l
an)舟 で設 置 さ れ た o
関 カモ求 db.ら れ _ 1986年
1 月
O 協 会 の 構 成
(Board)
理 事 会
: 垂畏行 業 界 カ{選 任 す る 理 事 力、ら 構 成 さ れ _ オ ニ′ブ ズ マ ン カヽら
提 示 さ れ る 予 算 (= 応
じ _ 各 メ ニ′ J {-
(垂艮行 ) へ の 会 費 害可当
を 決 定
評 議 員 会
(CouncH )
: 主 と し て 5
肖 貧 者 を 代 表 す る 5 人 の 独 立 メ ン ′{- と 銀 行 選 任
の 3 人 の 計
8人
で 構 成 ○ 正 オ
ニ′ プ
ズ マ ン の 選 任 と 協 会 活 動
の チ ェ ッ ク を 行 しヽ一 葉 界 等 の 圧 力 カヽら 協 会 の 独 立 性 を 保 つ
名 の 盲qオ ン ブ ズ マ ン _ 及 び 約 50
構 成 ○ 申 立 の 受 理 _ 調 査 ー 仲 裁 等
オ ニープ ズ マ ニ′く
Qnbudsr
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名 の 事 鞍 局 ス タ ッ フ カヽら
の 具 体 的 乗 務 を 担 当
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オ ー ブ ズ マ ニー協 会 (± 持 ち こ ま れ る 案 件 の 処 理 の フ ロ - と 処 理 状 況 (
ま 一 男q兼氏の フ ロ ャ -
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協 会 (
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ナ る 紛 争 処 理 Iこ 必 要 な コ ス
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ま 全 て 菓 界 団 体 カ、ら の 会 費 で 賄 わ れ _ 5肖 費 者 へ の
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ま - 切 行 わ れ な しヽ○
オ ン ブ ズ マ ニ′(こ よ る 最 終 決 定 (こ つ し、て _ 5肖 費 者 t
ま 拘 束 さ れ な し、 (不 服 で あ れ (
ま裁 判 を 提
起 で き る ) カモ、 5肖 貴 著 カモ受 葺旨 し た 場 合 _ 業 界 団 体 Iこ 加 盟 す る 会長行 (
ま拘 束 さ れ る こ と f
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O 屯 申 しヽ案 件 の 内 訳 ・・ 手点償 金 琴
取 扱 しヽ案 件 の 内 訳 を 見 る と 、
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3 書叫弓重 力{ロ - ニ′関 連 、 預 金 口 座 関 連 力{15% 一 手莞 t
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・
ド_ ′
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ビ 又 等 ) と な っ て し、る ○
正 式 手 続 き (二 人 ? た 事 例 で l
ま ー 約 半 数 1二 つ し、て 何 ら カ、の 手貞 横 力{決 定 さ れ て お り _ 手甫償 金
書員(
ま _ 平 均 で 2114ポ ン
ド
(98/97年 ) t 最 高 で 55000ポ ン ド で あ っ た ○ な お _ 垂艮行 オ ニノブ ズ
マ ン t
森 会 で の 補 償 金 重要 の 」ニ限 (
ま _ 100000ポ ン
(注 )
1 ポ ニー ド ニ 約 183円
ドま で と 定 め ら れ て い る ○
く99年 8 月 17日 現 在 )
-67-
歴史年表
金融 自由化 ・金融危機 ・金融改革
1985年 円 ・ドル委員会報告
1992年 6月
「
生活大国 5か年計画 」策定 -
連合 ブーム も-背景
年半ばか ら後退
秋 にはバ ブル経済の崩壊明瞭に (
実際の統計で は 91
の開始)
1993年 4月金融制度改革関連法成立
縦割の金融仲介業務を こえ、銀行に証券子会社設立み とめる。 しか し、
制約 ・規制多 くす ぐには機能 しない
1994年 まで 金利 自由化の完了
郵貯の市場金利連動へ
東京か ら国際金融機関の撤退あいっ ぐ
主要企業、社債等を国内不便なので海外での資金調達
「
金融の空洞化懸念 」
現行の金融活動規制の上での 「自由化 」す ぎぬ実態
1995年
住宅金融専門会社危機 の登場
7社 13兆 円の資産の うち 9.6兆円の不良資産
9月 大和銀行問題、米監督当局が全業務停止命令
同行米 よ り撤退
9月 大蔵省 「
金融 システムの機能回復 について」、今後 5年間の構図
ペイオフ猶予 5年
12月 金融制度調査会 「
金融 システム安定化の諸施策 」
①不良債権の早期処理、デ ィスクロー ジャー、 自己資本比率等 に
よる組織是正措置の必要
②破綻 に際 して保護 され るべ きは預金者、金融 システムであ って
銀行等の金融機関で はない。 5年以 内にペイオフ実施
11月 「
構造改革のための経済社会計画 」 (6か年計画)
12月 住専処理法をめ ぐりた国会混乱 ・対立
総合経済対策」
デ フ レ ・スパ イラル懸念、 14兆円の 「
1996年
6月住専処理法成立
6月 さきの金融制度調査会答 申を うけた金融改革 3法成立
①預金保険法改正
預金保険機構の強化
②金融機関の更生手続 き法
破綻 した とき更生手続 き
③金融機関等の経営健全性確保のための法律
早期是正措置
(98年 4月実施予定)
第- 区分 (8%未満)
金融監督庁が経営健全計画の策定
実施命令
-6
8-
第二区分 (4%未満)
第三区分 (0%)
各種 リス斗 ラ策の命令
業務停止
2001年 3月までの 1000万円までの保護
7月 住宅金融債権回収機構設立 一般会計より初の公的資金導入
7月財政審議会 「中間報告」 財政構造改革白書
10月経済審議会 ワーキ ング ・レポー ト
衆議院選挙 ? 橋本内閣大勝
11月 橋本 6大改革のひとつ として 「
金融 ビッグ ・バ ン」 構想首相声明 「
わが国金融 システムの改革 2000年に向けて」
フ リー、 フェア、グローバル
12月 与党三党、大蔵省か らの金融検査、監督部門の分離独立決定
行革会議設置
財政構造改革会議設置
97年 1月
6つの大改革の課題
橋本首相施政方針演説
初のI
r
財政構造改革会議 」 (21日)_
次年度マイナスシー リングへ
公正取引委員会 持株会社容認に関す る独禁法改正素莱 (28日)
2月
金融制度調査会
56年ぶ り日銀法改正 (
独立性強化)の答申案
(6日)
4月
金融監督庁設置 1998年夏決定
5月
外資取引の完全 自由化のための外為法改正
6月
(98年 4月実施)
日銀独立性をたかめるための法改正 (98年 6月実施)
大蔵省機構改革
6月 三審議会 答申 (金融制度、保険、証券)
日本版 ビッグ ・バ ン、グローバル化 に対応す る法制度、会計
制度、
.監督制度の確立、証券を金融仲介の主役 にす る、東京
世紀に通用す るもの とす る
市場の復権、 21
7月 2日 タイ ・バーツ切下げ
イ ン ドネシア、マ レーシアに飛火
7月 12日 政府系金融機関改革案 自民案
9月
開銀改組 ほか 6法人甲統廃合
韓国ウォン下落
日本、国内消費不況色強まり株価下落傾向明確 に
10月 6日 富士銀行、記者会見で、山一の薄外債務などで救済の意思な し
を表明
10月末
ドー ンブッシュ報告、マイア ミで 「
アジアは日本を中心に世界恐慌
にはいりかけている」報告
-6
9-
11月
3日 三洋証券、会社更正法適用申請 (
事実上の倒産)
6日 ムーディーズ、山一証券の格下げ検討報道
10日 株式市場大荒れ、急降下へ
大蔵省無力感広がる。山一証券を公的資金導入のスケープゴー トへ
また、大蔵省の金融 ・財政分離論への反撃のチャンス。
(コスモ信金や木津信組は日銀主導の 日銀特融資、今回は大蔵省主導
13日 山一、資金繰 り困難、拓銀にも資金提供できず)
15日 日経株価 1万 5000円割れ
17日 山一会社更生法申請検討
しか し債務超過ではないとした。
24兆円の資産保全の困難か ら挫折、
大蔵省 と証券取引等監視委員会に薄外債務- 「
飛ば し」融資報告
億円程度 とされる
公式には 2600
24兆円の資産保全の困難か ら挫折
会社更生法は顧客の所有権に平等に返済の建前」三洋は国内、海外運
用の山一運用は山一名義なので返済難 しい。
大手年銀行の北海道拓殖銀行、第二地銀の北洋銀行に営業権を
譲渡、預金保護 と日銀特融を蔵相、 日銀総裁表明
18日金融 システム対策、梶山構想、政府所有 NTT株などをもとに国債発
赤字で も建設で もない第三の道の国債 ?)
行 10兆円規模 (
19日 山一証券株価、 59円に値下が り
マニラ、 14か国地域蔵相、中央銀行総裁会議、 IMF補完のアジア地
域の融資枠組み創設合意
20日 宮沢元首相、官邸に橋本首相を訪問、公的資金導入を進言
宮沢試案を公表 (
預金保護 と金融 システム安定)、のち自民党の金融 シ
ステム安定化推進本部長へ、 12月 1日には衆議院予算委員会で、橋本
首相か らセーフティーネ ッ ト策 としての公的支援」 回答を引き出す0
21日 韓国政府、通貨危機克服のため国債通貨基金に融資申請を行 う。
22日 山一時間切れ、大蔵省 も入 り自主廃業 (
債務超過な しを前提-日銀
特融を確保のため)
24日 APEC首脳会議 (バ ンクーバー)、 IMFによる金融安定化策
(
月曜) 三塚蔵相、公式に公的資金導入について言及
ベ トナム、ペルー、ロシアの新規加盟などの首脳宣言
山一証券、負債総額 3兆 5100万円で自主廃業公表
26日徳陽シティーバ ンク (
第二地銀、 3年前の合併話 しなどかねてよりう
わさ)、仙台銀行に営業権譲渡
28日 財政構造改革特別措置法成立
11月末 日銀特融 - 残高 3兆 8000億円
(
拓銀へ 2.2兆円、山一 1. 1兆円)
-7
0-
12月 3日 中央省庁改革最終案
15日 自民党、 10兆円の国債交付 ・特別国債の発行を中心にすえた金融
(
月) システム安定化策を公表。国債 10兆円
・日銀短期観測のフタケタの悪化、月例報告 「
回復削除 」
・1ドル 131円へ
16日 自民党税制調査会 税制改正大綱 (法人税引下げ」地価税凍結)
17日 橋本首相 2兆円所得税、特別減税容認 (一回限 り)
17-19日
18日
(6万 5000円標準世帯) 2月か ら実施
円買 ・ドル売 り日銀介入で 100
億 ドル規模
東食 (
一部上場の食品商社)の会社更生法適用申請
(
負債総額 6397億円)
東食 ファイナ ンス損失か らすでに株価 は額面割れ
さくら銀行等 ささえ切れず-信用収縮問題が前面へ
「
貸 しぶ り倒産 」の激増が注 目される
・生保の解約、フタケタ資金流出
ゼネコンの破綻 目前に迫 る雰囲気
19日 韓国大統領、金大中氏
22日
株再び 1
万 5000円を切 る
24日 政府 ・自民の金融 システム対策決定
要求私)国債交付
預金保険機構に 10兆円 (
政府保証)
同金融危機管理勘定に 10兆円の融資 (
国債交付の うちの 3兆円分- これで優先株購入など
同特別勘定に 10兆円の融資 (
政府保証)
うち 7兆円分
したが って
破綻 した金融機関処理 17兆円 - 預金保護
破綻 していない金融機関の 自己資本増強用 に 13兆円
(
優先株購入など)
計 30兆円
(
公的資金、大手
19銀行の優先株をひきうければ 2.6兆円。 ×25倍
[自
己資金 4%分 に算入 して計算]な らば貸出能力 65兆円ふ くらむはず)
12月 24日大蔵省 BISの自己資本比率ヽ 「
早期是正措置 1998
年 4月導入予定
」、比率が低 い金融機関には業務停止命令 (
大蔵省-金融監督庁 に引き
継がれ る)。 この実施について弾力化す る措置を公表。
年以内へ株式の評価法を原価法 と低
まず国内金融機関について 1
価法 (
現行 - 時価が簿価を下回る場合差額を評価損 として損失
計上 しなければな らない)への切替えを猶予 し、いずれかの選択
制に切替え (
蔵相公表)原価法では株価下落の とき大幅損失計上
が減 る)
(
注
% 修正国内基準
国際統一基準、海外支店をもつ ところ 8
-71-
- 4%)
12月 25日 23日の韓国ウォン下落をうけて IMFと主要 7か国は韓国に 100
0億 ドルの支援を前倒 し実施
株価 1万 4000円台の低値で越年
〔1998年〕
1月 12日
・橋本首相、金融演説 (
衆 ・参院両院)
「日本発の恐慌 は起 こさない」
・大蔵省、銀行の自己査定 (
都市銀行、地方銀行、第二地銀合計)公表
問題債権 77兆円 (97年 9月未公表の 3.5倍、貸出 し、保障の
預信総額に占める割合は 12%
第一分類∼第 4分類 - 3、 4分類 (
計 11兆円)は大半損失へ
安全な第一分類
(624兆円)を除 くと 77兆円
・年明け株価、景気低迷顕著に
・大蔵省、金融検査官不正摘発 さる
1月 17日
訪米中の官房副長官 ら 「
4月 にも大型補正予算 」約束
1月 20日 加藤幹事長
4月新年度補正予算の可能性
1月 22日 全国銀行協会 「
土地再評価」で大手 19銀行の 「
貸出余力 19兆円」拡
大、 自民の資産再評価委員会へ、経団連の後押 し
地価税の納付額を もとに簿価 との差である 「
含み益 」を推計で 3. 5兆
円
1月 26日 大蔵省金融検査官逮捕
2月
内外か らアジア経済危機での日本の役割期待指摘
・金融安定二法
金融機能安定化緊急措置法成立 (
①資本注入 13兆円枠、
預金者保護 17兆円枠、 30兆円の公的資金投入)
金融再生委員会が投入を決定
3月
23銀行が公的資金投入を申請、金融危機管理委員会は 21行に
1. 8兆円を投入 (
長銀、 日債銀をふ くめ)
金融関連 6法案国会へ
早期是正措置スター ト
日銀不祥事を契機に松下総裁辞任、速水総裁着任
大蔵省不詳事 次官以下退任 (100名余の処分)
16兆円規模の総合経済対策政府案公表
5月
G8蔵相中央銀行総裁会議 (
首脳サ ミッ ト準備会議)
イ ン ドネシア、スハル ト退任
-72-
6月
1計 日興証券、 トラベラーズと新会社設立
金融危機深 まる長銀危機 (
住信 と合併へ ?)
同日 金融監督庁発足、大蔵省銀行局 ・証券局廃止、金融企画局⇒金融庁へ
7月 2日 「
金融再生 トータルプラン」
7月
与党 「
金融再生 トータル ・プラン」 (ブ リッジ ・バ ンク構想他)
弓〉
金融再生 6法案へ
18日 問題債権 87兆円 金融監督庁発表
自民参院選挙で大敗
31日 橋本政権か ら小淵政権へ
財政構造改革法凍結方針
8月 ロシア経済危機
9月 米ヘ ッジ ・ファン ド危機が明 らか となる
米連銀
債権共同保護など緊急介入
世界金融の システム リスク
深まる
9月
金融再生 トータルプランに関わ り金融再生関連法与野党修正の基本合意
特別公的管理 またはブ リッジバ ンク③ (18兆円)
10月金融再生関連法か参院で成立
金融機能早期健全化緊急措置法成立
2001年 4月
(
預金者保護② 25兆円 (13兆か ら)-、また
① 17+② 25+③ 18- 60兆円枠へ
ペ イオ フ解禁
23日長銀、再生法の もとづ く特別公的管理 に移行
11月 23日 長期信用銀行の国家管理へ
12月 1日 総理府の外局 として金融再生委員会発足 (内閣の下、担当大臣)
住宅金融債権管理機構 と整理回収銀行の合併
12月 1日 1ドル ・129円へ
宮沢元首相、貸出 し圧縮状況について 586兆円の 5%として 30兆 円
規模の圧縮がある (
衆院予算委員会)
3日 政府行革会議、 1府 12省庁へ
国鉄 ・林野の債務 28兆 3000億円を一般会計につけかえ 60年間で
元利処置 (
政府与党の財政構造改革会議)
5日 行政改革会議、最終報告
9日 介護保険法成立
23日 日本債権信用銀行、破綻認定、特別公的管理に移行
99年
2月 G7会議
国際金融 システムの監視強化
3月 中央省庁再編の内容 ・プログラムの決定予定
公的資金一斉注入
-7
3-
99年 3月
金融再生委員会
早期健全化法 に もとづ き 15銀行 に 7兆円 4500億円 各銀行の
健全化計画提 出
これまで公的資金注入九兆円、預金保険機構へ 9兆円 (
予)
-7
4-
ヒアリング要旨
第 1回 ヒア リング
国 際 金 融 資 本 市 場 の 実 態
藤 原 直 哉 氏 (
早稲 田大学講 師、金融 コ ンサ ル タン ト)
為替市場の変化
今、 日本 の金融界 は、大混乱 に陥 ってい る とい うのが現実 やはないか と思 い ます。確
か に金融 に関す る本 もた くさん出てい ますが、や は りよ くわか りませ ん。 今 日は、今 の
国際金融界、あるい はデ リバ テ ィブズで何 が見 えていないのか とい うところを中心 にお
話 ししたい と思 い ます。
0年代 の前半 は、国際金融 とい うの は貿易 に伴 うお金 の移動が 中心 であ りま
そ もそ も8
した。ですか ら、為替 レー トが円高 になる とか、円安 になる とい うときに、や は り見 る
べ きものは貿易の資金移動で した。貿易で赤字 .
、黒字 の不均 衡が出 る と、そ こに資金移
動 が生 まれる、 と考 えていけば よか ったのですが、最近 は状 況が違 って きてい ます。例
えば、赤字が進 んだか ら ドル安 だ とは最近 あ ま り言 われ ませ ん。 アメ リカの赤字 は強 さ
の象徴 だ と言 い ますが、強いか ら高 くなる、弱 いか ら安 くなる とい う単純 な発想 は、以
前 は為替 にはな くて、 これは株 の発想 で した。 しか し、 この発想 は非常 に短絡 的ですか
ら、何 が強いのか、 よ く考 えてみ.
る とつ じつ まは全 く合 わないわけです。 アメ リカは財
政収支 は黒ですが貿易赤字 は史上最悪 とい った ように、強い と言 って もよ く見 れば さほ
ど強いわけで はな く、弱 い部分 は幾 らで もあ ります。
ここで重要 なのは、株 を買 うの と同様 に為替 を売 り買 い してい る人達がい る とい うこ
とです。つ ま り、今 まで為替 とい うの は、極 めて重 要 な各国間の経済調整手段 であ った
わけですが、今 は株 を売買す るの と同様 に、いい加減 な リス クで為替が売買 されて、大
不況 になった り、あ るい は活況 になった りしてい る とい うこ となのです。
その背景 には、相 当マ ネーが余 って きている と感 じられ ます。今 、一般 的 に 1日に国
際金融市場 で取 引 され るお金 が20
0兆円 といい ます か ら、 日本 の 1年 間の GDPが、約
3日もあれば取引 されて しまうわけです。 これはや は り、大 き過 ぎる金融市場 を持 て余
してい る部分 が多分 にあ る と思い ます。
-7
7-
デ リバ テ ィブズ の 問題 点
それか ら、 デ リバ テ ィブズ とい う言葉 です が、 デ リバ テ ィブズで ない もの とい うの は
非常 に数 が少 な くて、現 金 、預 金 、貸金 、債 券 、株券 、 この 5ら です。 これ以外 の もの 、
例 えば、 オ プ シ ョン、先 物 、ス ワ ップ全 てデ リバ テ ィブズです。 です か ら、最近 の金融
界 で扱 われ てい る ものの ほ とん どはデ リバ テ ィブズ なのです 。 この よ うにな ったの は、
や は りこの 1
0年 です 。 あ りとあ らゆ る手段 を尽 くして、世 界 中で一番安 いお金 を調達 し
よう とい うのが、今 の世 界 です。世 界 の金融 の 中心 で は、以前 の ように株券 をや りと り
し、預 金 を預 か って貸 し出 しす る とい った商売 は、 もう商売 にな らないわけです 。
しか し、 こ の デ リバ テ ィブ ズ につ い て も大 きな 問 題 が 2つ あ ります 0 1つ は、
LTCMの破 綻 (
LTCM:正式 名称 は ロ ング ・ターム
・キ ャピ タル ・マ ネジメ ン ト。
米大手 ヘ ッジ フ ァン ドで 、9
8年夏 の ロ シア市場等 の暴 落 に よ り経営破綻 寸前 まで追 い込
まれ、米政府 か ら巨額 の資 金救 済 を受 けた) に象徴 され る ように最先端 の ア メ リカが失
敗 した とい うこ と、 そ して 2つ め は 日本 の金 融機 関 は、残念 なが らその中で非常 に遅 れ
を とってい る とい うこ とです。
一つ めの問題点 です が 、 オ プ シ ョンとい うデ リバ テ ィブズ を例 にお話 ししま しょう。
オプ シ ョンとい うの は、そ もそ も保 険 なのです。 つ ま り、極端 に値段 が動 い た ときに損
をカバ ーす るため にオプ シ ョンをす るのが普通 です。 で も、今 のヘ ッジフ ァン ドや証 券
会社 の オプ シ ョンで は、二番 カバ ー されて ほ しい価格 の暴 落 の時 に価格 が プ ロテ ク トで
きてい ませ ん 。 要 は、今 の オプ シ ョン理論 には限界が あ って、方程式 1つで将来 の価格
が わか るな どあ りえない とい うこ とです。 ひ とた び大 きな価格 変動 が起 これ ば、方程 式
は途 端 に機 能 しな くな ります 。 ところが 、 い まだ に この方程 式 が使 わ れ てい ま して、
ヘ ッジで きない もの を売 りま くってい ます。 また、 オプ シ ョン理論 を作 った本 人達 は理
論 の どこに問題 点 が あ るのか わか ってい ます が最 初 に作 った人達 はや めてい ってお り、
それ をわか って ない人が や るわけです か らリス クをカバ ーで きるはず が ないのです。 デ
リバ テ ィブズ も、 もう一 回原 点 に立 ち返 らない とい け ない わけです。
もう一 つ の 日本 の問題 につ いてです が、あ る大手 金融機 関の研 修 会 で ここ しば ら くオ
プ シ ョンの話 を してい るのです が 、 デ リバ テ ィブズ を専 門 とす る部 隊 で も全然 わか って
して も、 ど う して そ うい う値 段 が つ くの か 、
い ませ ん 。 そ のか ら く りを説 明 しよ う とや ってい る本 人が理 解 で きないです ね。 メー カー な ら何 を作 ってい て も、その し くみが
わか るエ ンジニ アは必 ず い るはず です が、 日本 の金融機 関の多 くは、 デ リバ テ ィブズ の
-78-
本 当の構造 とか機能が よ くわか らない まま取 引 しているのが実状 です。ですか ら 日本 の
金融界 は、 これか ら人材 の入れ替 えか ら始 まって、-か らや り直 しに近 い もの になる と
思 い ます。
アメ リカ金融 エ リー トの信念
- マ ネ タリズム と合理的期待形成-
それで、話 は変 わ りますが 、今言 い ま したヘ ッジフ ァン ドですが、ヘ ッジ フ ァン ドに
行 ってい る人達 は とにか く優秀です。 しか し、彼 らが何 を信 じてあの ような仕事 を して
い るので しょうか。 とい うの は、 アメ リカ人 は偉 い人ほ ど理念 が ない と仕事 を しないの
です。 ただ単 に金 もうけす る とい うので は、入 って くる人が限 られて くるわけです。
私が まず思 うのは、彼 らの精神 的支柱 にはマ ネ タリズムが あ るので はないか とい うこ
とです。 日本 の今 までの考 え方 は実物 と金融 をはっ き り分 けます。 しか し彼 らの発想 で
は、実物 と金融が分かれてい ないわけです。 要す るに経 済が どの ように動 いてい くか と
い うときに、あ る一定 のマ ネーサ プライがあ る と、景気 のいい国で は実物資産 に投資 が
どん どん行 く、金融 の ほ うも実物 に どん どん向か う、 しか し、不景気 にな って くれば、
どん どん金融 のぼ うにお金が流 れて くる、 とい う考 えであ ります。マ ネーサ プラ イは常
に一定で、実物 に向か うか、金融 に向か うか は、その ときの経 済 が決 め るか ら放 ってお
きな さい、政策担 当者 は口 を出 してはいけない、 とい う発想 です。 日本 で は、実物 と金
融 は車輪 の両輪 とはい うものの、実物 が先 にあ って、それか ら金融が動 くわけです。 そ
れ を逆 にす る と、今 みたいな状況 ですが、金融 を先 に助 け ようとす る と、何 をや ってい
るんだ、 とい う話 になるわけです。 ところが 、 アメ リカの主張す る ところは、経 済がつ
ぶ れて金 が どこか-行 って しまった とい う発想 で はな くて、 「金 は、実物経 済 が立 ち直
れば また戻 って くる。 実物 か ら金 を引 き上 げ られた ら終 わ りとい うので はな くて、実物
と金融 の間 を常 に金が行 った り来 た りしてい る。 だか ら、 どん どん実物経 済 が効率 的 に
な ってい けば、 よ り多 くの雇用機 会 も生 まれ る。
」とい う理論 で あ りま して、 これ を彼
らは本気 で信 じてい る ようです。生半可 に信 じてないか らこそ、あれだけ堂 々 と世界 中
に投資 がで きる し、そ して、 アジアが危機 になって も、あれ ほ ど強い 口調 で もっ と改革
せ よと言 えるのだ と思 い ます。
彼 らが もう一つ信 じてい るのは、合理 的期待形成 だ と思 い ます。合理 的期待形 成 とい
うのは、例 えば、 このマ ーケ ッ トのあ る財 の平均 値 の値段 が幾 らになるか とい うの を市
場 参加者 は きちん と知 ってい る とい う話 です。それ は、売 り主 は誰で、買 い主 は誰 で、
-79-
そ うい う需給 関係 、マ ーケ ッ トの構造 、需 要 曲線 、供給 曲線 の姿 が全部 わか ってい るか
らです。 したが って市場 とい うの は、あ らか じめわか ってい る値段 で 、単 に財 を配給す
るだけの ものだ とい う考 え方 です。 なぜ彼 らは見 えてい るのか とい う と、それ は彼 らが
最高 の仲 間内資本主義 だか らです。少 な くとも 3カ月 に 1度 は、主立 った相場 のマ ネー
ジ ャーた ちが全部集 まってい ろい ろ話 をす る世界です。 それで、彼 らは悪事 をや ってい
る とは全然思 ってい ないわけで す。 そ うい うことをや る こ とに よって、市場 の状 況 を全
員 で把握 して、合理 的期待形 成 を持 てば、混乱 な く財 は効率 的 に分配 され る と本気 で信
じてい る と思 い ます。
市場 の落 と し穴
- いか にルール を作 るか-
そ うす る と、マ ネ タリズ ム も合理 的期待形成 も、 これ らを本気 で実用化 してい るのが、
ウ ォー ル街 、そ してヘ ッジ フ ァン ドの連 中で はないか と思 い ます。 そ して、 あ る意味 で
マ ネ タリズ ムがい よい よ限界 に きた と思 ってい ます。彼 らの発想 に非常 に大 きな見落 と
しが あ ったので はないで しょうか。市場 が大 き く変 わ る ような ときは、所詮 耐 え られ な
か ったわ けです。
しか し、 これ は非常 に大 きな問題 で して、資源 の効率 配分 とい うこ とで フェアプライ
ス (
合理 的期待形成 に よる価格 ) をや ってい けば うま くで きるんだ とい うこ とですが 、
現 実 には イ ン ドネ シアの ように株 の暴 落 に よって政権 が ひっ く.
り返 って、暴動 が起 き、
人が死 んで い るわけで あ りま して、 これはや は りうま くい って ないわ けです。何 かが違
う と、だれかが早急 に言 い出す必 要があ る と思 い ます。
9
7
年代 に、 日本が宮沢構想 で アジアの中 に EMUの ような もの を作 ろ うと しま したが、
これ に対 して アメ リカは強 く反対 しま した 。 なぜ な ら、 ア メ リカが 一元 的 に世 界 の マ
ネーの動 きを見 てい るわけです か ら、誰 かが勝手 に動 き始 めた ら、い わゆる合理 的期待
形 成 は成 り立 たな くなるか らです 。 しか も、 日本 のや ろ うと した こ とは、 アメ リカか ら
覇権 を奪 お う とい うので はな くて、マ ネ タリズム と逆 の こ とを しよう と したわけです。
実物経 済重視 に回帰 しようとい う話 にな ります か ら、それ はゲ ームの ルール を変 え られ
て しま うこ とにな り、 アメ リカ と して は一番 や ってほ し くない こ とで しょう。 ゲ ームの
ルールが変 わ る こ との善 し悪 しはわか りませ んが、 とにか くプ ライス変化 が起 こる と、
今 までの理屈 は全部通用 しな くな って しまい ます。 それ を も し避 けたいので あれ ば、そ
うい う大破 綻 を起 こ してはい けないわけです。大破綻 を起 こさない ようなゲ ームの ルー
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ルは何 なのか、や り方 は何 なのか を考 えない といけない こ とにな って きます。
だか ら、 アメ リカ も最近随分ず るい と思 うの は、要す るに独 占、寡 占の弊害 です。合
理 的期待形成 とか、一元 的 に管理す る とい うの はアメ リカの強 さの象徴 だ と言 って、そ
のほ うが効率 的 に資源 が動 くと言 われ ますが、反対側 か ら見 れば独 占、寡 占の弊害 に過
ぎませ ん。例 えばい ろんな事件 が起 こって、円高 に行 くか、円安 に行 くか とい うの は、
マ ーケ ッ トが 開いて値段 がつ くまでわかち ないのが普通 です。 ところが、 アメ リカの金
融機 関がみんな クロー一一でつ なが ってい るわけですか ら、マーケ ッ トがあ くまで全部
連絡取 り合 って 、「こん な感 じか な 。 よ し、 これで行 こう。」 とや ってい るわ けですら
日本 は完全 に フ ォロア-です が、 これ はアメ リカの強 さで も何 で もあ りませ ん。単 なる
寡 占の弊害であ って、 日本 はそ うい うことを堂 々 と言 わないです。 どん どん合併 して、
社員 もどん どん首 にす れば、 どん どん市場 を とれ ます。で も、それでいいので しょうか。
だか ら、 ビ ッグバ ンだ とい って、寡 占会社 にマーケ ッ トを全部 明け渡 して どうなるか
とい う.
と、全部持 っていかれて しまうわけです。 日本 だ って、そ うい う寡 占 ・独 占企業
と本気 で渡 り合 うには、それ相応 の し くみ をつ くらなければ な りませ ん 。 イ ンベステ ィ
ゲー シ ョンの機 関 をつ くって、価格操 縦 な どを どこまで も追 いか けてい くパ トカーが な
い と対処 で きませ ん。
やは り、 この恐 ろ しい ほ どのマ ネーが充満 した時代 、それか ら、ブ ラ ックボ ックス に
近 い よ うなデ リバ テ ィブが跳 梁放電 す る時代 を どうや って乗 り切 るか とい うゲ ー ムの
ルールが必 要です。通貨体制 と金融 システムの見直 しは避 けては通 れ ませ ん 。 マ ネ タリ
ズムに して も合理 的期待形成 に して も価格至上主義 に して も、価格理論 だけで経 済が動
いてい くのは不可能です。政治 も大 き く関与 してい る し、何 十年 か に一遍 の ような大 き
な動 きも出て くる中、改 めて もう一度 、資源 の効率 配分 は どうや った らうま くい くのか
とい うこ とを考 え直す必 要が あ るので はないか と思 い ます。
-81-
第 2回 ヒア リング
金融のグローバル化 と国内における
金融システムのあり方
露 見 誠 良 氏
(
法政大学比較経済研 究所所 長)
金融危機 とは何か
アジアの金融危機 についてですが、 まず、確認 してお きたいの は、最初 は金融危機 と
い う言葉 を使 わず に、通貨危機 とい う言葉 を使 ってお りま した。 しか し、実 は通貨危機
と言 うと金融危機 の中のあ る特徴 だけ を強調す るこ とになって、誤解 を招 きかねない部
分があ ります。金融危機 の 中身 を もう少 し整理 し`
、分類 して考 える必 要があ ります。危
機 の中身 を分類 します と、次 の 4つ ぐらい に分 け られ る と思 い ます。
1つ は、いわゆる通 貨危機 と呼 ばれ る ものです。 これ は、海外資本 あるい は国内資本
が突然流 出 を始 めて、そ して外 国為替 レー トが暴落 して、そ して外貨準備 が枯渇す る と
い った性格 の ものであ ります。それ を引 き起 こす引 き金 は、海外資本 のいわゆるホ ッ ト
マ ネーの動 きか、あ るい は海外 だけで はな く、国内の資本 、あ るいは国内の主体 が外へ
資本逃避 とい う形 で出てい く場合があ ります。
2つ 目は、資産危機 です。 これは、言い換 えれば、資産 デ フ レあ るいは資 産価格 の暴
落 とい うこ とです。 この場 合 の資産の代表的 な もの は株式 や不動 産で しょう。
3番 目は銀行危機 といわれてい る ものです。 これ は要す るに銀行 の取 りつ けが起 こ り、
それ に巻 き込 まれて、銀行 が連鎖 的 に倒 産 を してい くとい うものであ ります。
4番 目は、経済危機 とい うことにな ります。 これは実体経 済が通貨危機 、資産危機 、
銀行危機 の影響 を受 けて経 済成長率が大 き く下が る とい うこ とです。現在 の我 々の経済
は、大 き く下が らない ようにで きてお りますが、その予想 をはるか に下 回る ような形 で
マ イナス成長 を余儀 な くされてい る状態 、 これ を経 済危機 と呼 んで もいい と思 い ます。
金融危機 とい うの は、以上 4つの性格 に大 き く分 け られそ うです。 そ して、我 々が今
直面 してい る危機 とい うのは、 この 4つの危機 が絡 み合 い、複合 的 な形 で起 きてい る と
思 われ ます。ですか ら、最初の段 階で、 ASEANの タイか ら始 まって、マ レー シア、
イ ン ドネシア、 フィリピンを含 めた形 で金融危機が起 きた ときには通 貨危機 と言 われて
-8
2-
お りま したが 、 それ は、各国の為 替 レー トが暴 落 してい くとい う1
点 に注 目 して定 義 づ
けが な されたわけです。 しか し、実 はその裏 で 、通 貨危機 と同時 に資 産価格 の暴 落 が起
きて、株 価 が 同 じぐらいのス ピー ドで下落 してお ります。
ですか ら、我 々の今 の アジアの金融危機 の特 徴 の 1つ は、通 貨危 機 と資産危機 とい うの
が背 中合 わせ で起 きてい る とい うこ とであ ります 。 どの危機 が発 火点 にな ってい るか は
国 に よって異 な りますが 、最終 的 には、現段 階で は タイ、韓 国、あ るい はマ レー シア、
イ ン ドネ シア、あ るい は 日本 や香港 まで含 め て、同 じような局面 に どん どん落 ち込 んで
お ります。 それ は単 に通 貨危機 、それか ら、資産危機 だけが起 きてい るわけで は な くて、
銀行危機 も起 きて、それか ら経 済危機 も起 きてい る とい う、その 4つ の側面 が 同時 に今
起 きてい る とい うこ とに 1つ の大 きな特徴 が あ る と思 い ます。 それ は言 い換 えれ ば、 各
危機 は波 及連動 し、孤立 した形 で終わ らない とい うこ とであ ります。
もう一つの特徴 は、そ うい う波 及連動性 は、 4つ の性格 の危機が相互 に作 用する とい
うだけで はな くて、地域 的 に波 及 し、連動 す る とい うこ とです。最初 に タイで通 貨危 機
が始 まった と言 われてお りますが 、その タイで起 きた通 貨危 機が、 しば ら くしてマ レー
シア、 イ ン ドネシア、 フ ィリピン、そ して A SEAN全体 を落 ち込 ませ 、それが次 に韓
国 に飛 び火 しま した 。 今 、それが東 アジア全体 を危 機 に巻 き込 む ような形 になって、 さ
らにそれが ロ シア、東 欧圏 に及び、米大手 ヘ ッジ フ ァン ドの ロ ング ・ターム ・キ ャピ タ
ル ・マ ネジメ ン トの危機 につ なが って、そ して南米へ行 って、今度 は世界 に波 及す るか
とい う話 にな ってい ます。
この地域 的 な波 及 とい うの は、
.単 に国の玉突 きで起 きてい るので はな くて、 タイ とい
う 1点 か ら、今度 は ASEAN とい う、 もう一つ高次 の地域 地帯へ行 って、 さらにそれ
が もう 1つ高次 の東 アジア とい うところ-行 って、東 アジアか ら、今度世界- とい う動
きを してい ます。 そ うい う連動 が よ り大 きな、高次 の地域 的 な次元 に上 が って危 機 が拡
大 してい くという性格 を持 ってい ます。
そ うい う意味 で、 この波 及連動性 とい うの は、現在 の アジアの金融危機 を考 える ときの
1つのポ イ ン トであ ろ う と思 い ます。私 の発 想 で は、 こうい う危機 の対 策 と して は、い
か に波 及連動 を早期 に防 ぐか とい うこ とが セ ー フテ ィネ ッ トのあ り方 につ なが って くる
と思 い ます。
-8
3-
ア ジア金融危機 の原 因
で は、実 際 にアジ アの金融危機 が なぜ起 きたか とい うこ とであ ります。 1つ は、海外
短期資本 移動 に起 因す る とい う考 え方 であ ります。 これ は危機が起 きた ときか ら言 われ
ていた こ とで して、特 にマ レー シアのマハ テ ィールが声 を大 に してヘ ッジフ ァン ドを批
判 した こ とか ら注 目を浴 びてお ります。要す るに海外 の短期 資本 移動 、ホ ッ トマ ネーが
入 って きて、そ してそれが また急 に出てい くとい う、その こ とが アジアの金融危機 を引
き起 こ した んだ とい う議 論 で あ ります。 マハ テ ィー ル に言 わせ れ ば、 「マ レ」 シア経 済
には問題 は な くて、悪 い の はホ ッ トマ ネー、投機資本 なんだ占 だか ら、投機資本 を規制
せ よ」 とい う論調 になるわけであ ります。 これ は確 か に大 きな一 因だ と思 い ます。
で は、 この短期資 本移動 が なぜ起 きたので しょうか。 まず 1つ は、金融 の グローバ リ
ゼ ー シ ョンとい うのがあ って、それ と同時 に世界の金融資産 が非常 に膨張 し、累積 して、
その金融資 産が グローバ ル化 で世界 中 に配分 され る ようにな った とい うことだ と思 い ま
す。 1
9
8
0
年代 に資本取 引 の 自由化 が アジア途上 国 にお い て も行 われ ま した。 それ に よっ
て、先進 国の短期資本 の グローバ ルな移動 が可能 になる土俵 がで きていた とい うこ とで
す。 そ して、 1
9
9
0年代 の 中頃 にか けて、短期資本が アジアの国 々に相 当入 ったわけです。
資本取 引 の 自由化 があ って、そ してその土俵 に海外 の短期資本 が とうとうと入 って き
て、そ してあ る ときそれが逃 げてい きま した。逃 げてい ったため に、その国の為替 レー
トが暴落 しま した。 それ と同時 に、資 産、特 に株価 が 同 じス ピー ドで下落 を した とい う
こ とが起 きてい ます 。 なぜ株 価 の下落 が同時 に起 きてい るか とい うと、 もともと投 資資
金 が株式 や土地 に向か ってい たため に、逃 げてい くとき も株 や土 地 を売 って、その通貨
を ドルに替 えて出てい きます ので、株価 が下が って、そ して通貨 も下 が る とい うこ とに
な ります。
さらに、マ レー シアや タイは外 貨準備 が薄 か った こ とが事 態 を悪 くしま した 。 日本 や
台湾が 1
,
0
0
0
億 ドル以上 の準備 があ ったの に対 し、マ レー シアや タイで は5
0
0
億 ドル を下
回 ってい ま した。危機 を吸収 す る ク ッシ ョンに違 いが あ った とい うこ とです。
それか ら もうーっ 、通常 よ く言 われ るの は、今で もそ うですが 、 タイ、マ レー シアの
ような国 々が、事 実上 の ドルペ ッグを とっていたため、実質上割高 にな って しまい、投
機 の ア タックを受 けたんだ とい う原 因論 です。確 か に ドルペ ッグ を もう少 しフ レキ シブ
ル に動 か していれ ば違 ったのか もしれ ませ ん 。 ただ、変動 レー ト制 で は円 ドル レー トが
半分 あ るい は倍 にな る よ うな乱高下 を してい る ような ときに、安 定 的 な輸 出 を確保 で き
-8
4-
る ような為替 レー トをうま く設定 で きない とい うこ とがあ ります。
それか ら、海外資本が流 出 してい った非常 に大 きな理 由の 1つ は、ア ジアの国 々がバ
ブル経済化 していた とい うこ とです。 これは、 タイや韓 国が一番代表 的ですが、海外資
金が相当入 り込 んで きて、入 り込 んだ資金 をマ クロ経済上大 きな影響 が出 ない ように、
当局 はその効果 を遮断 しようとします。政策 当局 と しては、その流動性 を吸収す る必 要
がある とい うので、大規模 に流動性対 策 を と ります。 しか し、いかんせ ん、入 って くる
金額が非常 に膨大ですので 、遮断 し切 れない ところが出 ます。その部分が生産部 門に向
か えばいいのですが、生産部 門に向かわないで、不動産 、株 とい った ところへ向か って
しまったわけです。
なぜ 日本 の金融危機 は起 きたのか
翻 って、 アジアの金融危機等 をなが めなが ら、 日本の金融危機 はなぜ起 きたのか とい
うことであ ります。 1つ はバ ブル経済化 であ りま して、バ ブル経 済化 はなぜ起 きたか と
い う.
と、やは・
り低金利 です。いけなか ったのは、国際協調下 の低金利政策で、金利引 き
上 げの機会 を逸 した とい うことです。 ブラ ックマ ンデーの後 の金利引 き上 げが アメ リカ
の非常 に強い プ レッシャーにあ って十分で きなか ったわけです。 それが資産価格 高騰 を
もた らした とい うこ とであ ります。そ うい う意味 で、国際金融協調 の もとでの各国の金
利 の 自立性 とい うの は どうあ るべ きか とい うのは非常 に大 きい問題 であ ります。
もう 1点強調 したいのは、 日本 のバ ブル経 済 とい うのが、金利引 き上 げがで きなか っ
た とい うの と同時 に、海外 で資金 を調達 して、そ してそれ を 日本 に持 って くる とい う、
金融の グローバ リゼ ー シ ョンの中の一環 で起 きた とい うことです。性格 は少 し違 い ます
が、 アジアの国々のバ ブル も外 か ら資金 を引 っ張 って きてい て、そ うい う意味 で似 た と
ころがあ ります。
それか ら、金融の 自由化 とい うの もおそ ら く影響 しているで しょう。 この金融 自由化
とい うのが こうい う危機 を引 き起 こす のだ とい うス トレー トな議論 はあ ま りな されてい
0
年代 か ら今 まで、世界 中で見 てみ る と、半数以上 の国
ませ ん。 しか し、翻 ってみて、8
々が こう・
い う金融危機 に見舞 われていて、そ うい う国のほ とん どが金融 の 自由化 を して
い る とい うことか らすれば、直接 の原 因 にはなっていないけれ ども、少 な くとも土俵 を
つ くってい ることは否定で きない ように思 い ます。
-8
5-
ア ジア危機 に対する 日本 の責任
それか ら、次 は、 日本 はアジア危機 に責任 があ るか とい うことです が、要す るに 日本
とアジア との間 に、 この金融危機 をめ ぐって、 どうい う連 関があ るか とい うことであ り
ます。 ここで見逃せ ないのは、 アジア- の投資 の中で 日本 か らの直接投資がかな り大 き
な ウエ ー トを占めていた とい うこ とです。直接投資 はなぜ起 きたか とい うと、 1つの大
きな要因 と して円高があ りま した。円高 を嫌 って、直接投資 が アジアに向か ったわけで
す。その直接投資が入 って きた ものだか ら、投資が膨 らんで輸 出が伸 びて、景気 が よ く
な って、バ ブルが引 き起 こされて、そ して今 の資産危機 になった とい う流 れ にな ります。
また、それだけで はな くて、 日本 のバ ブル を引 き起 こ した ときの海外短期資金 の中 に、
日本 か らアジアに向か って流 れてい った ものがか なりあ りま した。 そ うい うわけで、直 一
接投資 と短期 の投資 と二重 に資金源 になってい るわけで して、多かれ少 なかれ アジア危
機 の遠 因 になってい る とい うこ とにな ります。
もう一つ は、東 アジアに整合的 な為替 シス テムが ないため に、円 ドル レー ト変動 とア
ジアの景気循環があ る程度関係 して しまうとい うことです。 ASEANの国 々の小 国が
どうい う為替 レー トを設定 した らいいか とい うことについて、名案 が今 の ところあ りま
せ ん。 です か ら、結局 、 ドルに リンクす るか、円 に リンクす るかで、 ドルの方が投資 が
入 りやす い とい うこ とで ドルに リンク してお くわけですが、それで も円 ドル レー トが動
くと、それ を維持 で きない とい うことであ ります。 ドルペ ッグ制 が問題 だ と言 うのは簡
単 ですが、実 は、 アジア全体 で整 合的 な為替 システムが ない とい うところに大 きな問題
が あ るわけです。
なぜ危機 は深 まるのか
次 は、 なぜ危機 は らせ ん的 に深 まるのか とい う話 であ ります。 日本 は今 ここまで危機
が深化 しま して、 どこで とめ るか とい うので四苦八苦 して、 これだけの資金 を投 入 して、
ようや くとまるか とまらないか とい う ところ まで来 てい ますが、 これ も予 断 を許 さない
ところがあ ります。
まず 1つ は、資産危機 が解消 されて ませ ん。資産危機 が解消 され ない とい うの は、 日
本 の場合 には特 に不動産価格 ですが、それが一向 に改善 をみ ない とい うのが、不動産担
保 、それか ら銀行 の貸 し出 しの ところで ネ ックにな ってい る と思 い ます。 この資 産危機
に対す る今 までの金融 当局 の姿勢 は 「いずれ回復 す るであろ う。 市況 が 回復 す れ ば、不
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良資産 とい うの もおのず とな くな って しまうだろ う」 とい う待望論 に縛 られてい たわ け
です。待 ちの姿 勢 で は な くて、早 め に早 め に手 を打 ってお け ば ∴ ここ まで悪 くな らな
か ったんだ とい う議論 が9
0年代 の最初 にアメ リカで はな され てい ま したが、 日本 で は残
念 なが ら、その議論 とい うの は9
0年代 前半 にあ りませ んで した 。 それで、結 局 、 5年 以
上 にわた って、ず っ と待 ちの姿勢 で来 たため に、 ここまで深刻化 して しまった とい うこ
とです。 です か ら、 アメ リガ と日本 の経験 か ら言 って も、で きるだけ早期 に対処 す る こ
とが必 要 だ った とい うこ とです。
2つ 目は、信 用 の崩壊 が起 きて しまった こ とが大 きいです。 これ は、国内で は預 金者
の取 りつ け、 そ して銀行 間あ るい は取 引業者 間での資 金 の引 き上 げ とい う形 で信 用崩壊
が表面化 します。通常 、 こうい う取 りつ け とい うの は、国内の銀行 で はあ ります が、 国
際的 な海外市場 の レベ ルで はそんな に大規模 な形 で はあ ま り起 きた こ とがあ りませ ん。
ただ、 アジアの金融危機 の と きには、資金 が どっ と逃 げてい きま したが 、その逃 げ方 と
い うの は、我 々預 金者が浮足立 ったの と同 じように、世 界 中の投 資 家が浮足 立 って、 ア
ジアの国 々か ら投資 を引 き揚 げてい ます。 それは、マ レー シアの 国、 タイの国 とい うの
を 1つの・
銀行 だ ととらえれば、そ こか ら資 金が どっ と逃 げてい った状 態 で した。 つ ま り、
通 貨危機 と して表 に出て きてい ます が、国か ら見 れ ば、外 貨準備 が枯 渇 してい くわけで
す か ら、要す るに国の流動性 が枯 渇 してい ったわけで、 それ は銀行 の取 りつ け騒 ぎと変
わ りませ ん。 さらにい うと、 イ ン ドネシアの ような国 は、通 貨危 機 が もう 1ラ ンク上へ
行 って しまってい ます。 それ は どうい う意味 か とい う と、海外資 金が資 金 を回収 す るだ
けで はな くて、 イ ン ドネシアの国民 が資金 を外 に逃 が してY、るわ けです。 それ も大投 資
家 だけで はな くて、 中産階級 の人た ち まで もが ドル に逃 げてい ます。 海外 の投資 家 だけ
で は な く国民 の信 用 もな くな ってい る とい う、 もう 1ラ ン ク厳 しい ところ まで来 て し
まってい ます。
もう 1つの原 因は、緊縮 マ クロ政策 です。 アジアの国 々 もそ うです が、 日本 で は一生
懸命橋 本首相 が財 政均 衡 に取 り組 み、大蔵省 がそれ をバ ックア ップ して、非常 に タイ ト
に均 衡財 政 を執行 しま した。 しか し、それが裏 目に出て しまい ま した。 それ を 1年後 に
な って、 同 じ金額 を減税 して も意味 が あ りませ ん。 そ うい う意味 で、いか に早 くその芽
をつ むか とい うこ とが重 要で あ ります が、 アジアの国で IMFが や ってい る こ とも、緊
縮財政 です。 その緊縮政策 とい うのが意味 のあ る局面 もあ ります が、意味 をな さない局
面 もあ る とい うこ とです。 これ は、 1
920年代 にケ イ ンズが、恐慌 下 での短期拡大 政策 の
-8
7-
必 要性 を訴 えた ケース と同 じです 。 それ なの に、7
0
年 た ってみ て、 同 じような事 態 に
な った ときに、大蔵省 、 IMF等 々は、新古 典派 の色彩 が非常 に強 くて、緊縮政策 を と
り、それが うま くいか なか った とい うことであ ります。
金融 セ ー フテ ィネ ッ トの現代化
最後 に金融 セー フテ ィネ ッ トの話 を したい と思 い ます。 このセー フテ ィネ ッ トであ り
ます が、我 々は、 もう裸 で はな くて、相 当の よろい を持 ってお ります。銀行 のパ ニ ック
0
年 間、 ほ
が勃発 しない ように、 よろい を既 に身 につ けてお ります。です か ら、我 々は5
ぼ金融パ ニ ック とい う もの に遭遇 してい ませ ん 。 この よろい とい うのが一体 どうや って
で きたのか とい うと、 これ は 1
9
2
9
年 の大恐慌対 策 として、我 々が 自分 たちでつ くって身
につ けたのであ ります。 アメ リカの銀行 パニ ックの防止装置 とい うの は預 金保 険機構 、
それか ら、 中央銀行 とい うシス テムであ りま して、 これ は新規参 入す る入 り口は 自由 に
して、出 口 をガー ドす る とい うシステムです 。 も し銀行 がつぶれ た ら、預 金保 険機構 あ
るい は中央 銀行 がそれ を守 り、パ ニ ックが起 きない ようにす るわけです。
日本 は どうか とい うと、預 金保 険機構 とい うの はつ くりませ んで した。 その代 わ りに
秩 序 あ る市場 とい うの をつ くりま した。 1
,
8
0
0ぐらい あ った銀行 を無理 や りに合併 させ
て、 1県 1行 、あ るい は大都市 の都市銀行 とい う、現在 の少数精鋭 の銀行市場 をつ くり
上 げ ま した。 むだな競争 を しない ように、秩 序 だ った市場 をつ くったわけです。 です か
ら、入 り口 を規制 してお り・
ます ので、乱暴 な新参者 が入 って こないわけです。 そ して競
争 を制 限す る とい う形 でパ ニ ックが起 きない ように してい ます。
それで金 融 の 自由化 を してい けば、当然 こ うい うパ ニ ック二
防止装置 に緩 みがで きます
ので、その ままで はパ ニ ックが起 きて しまい ます。起 きないため には どう した らいいか
とい うこ とで 、セー フテ ィネ ッ トの現代化 が必 要 にな って きます。
このセ ー フテ ィネ ッ トの現代 化 とい うときに、 まず 、考 えなければな らないの は、現
在 の金融革新 の流 れ は、銀行業 ・保 険業等 の垣根 が な くなる単一金融 サ ー ビス市場- の
練 合化 、 そ して グローバ ル化 にあ る とい うこ とです 。 そ して、それ に即 した形 で セー フ
テ ィネ ッ トを考 えるべ きであ ります。
そ の た め に は、 まず 、 国際 的波 及連 鎖 ・流 動 性 危 機 を早 い ところで遮 断す るセ ー フ
テ ィネ ッ トが必 要です。パ ニ ックにな らない ようにグローバ ルな資金移動 を どう制御 し
てい くか を国際監督機構 も含 めて考 えなけれ ばい けない だろ うと思 い ます。
-8
8-
それか ら、預金者保護 ・投資家保護 につ いていわれ るの は、 こうい うセナ フテ ィネ ッ
トを張 り過 ぎる とモ ラルハザ ー ドが起 きるので、預 金者保護 や投 資家保護 も最小 限の と
ころで抑 えなければな らない とい うこ とです。 で は、その最小 限 とい うの は一体何 か と
い うのが今問われている ところであ ります。
全体 的 には、先 は どの入 口 と出 口の話 に もあ りま した よ うに、事 前 的 なセ ー フテ ィ
ネ ッ トと事後的 なセー フテ ィネ ッ トにわかれ ます。事前 的 とい うのは、要す るに競争制
限で、事前 に競争 を制 限す れば、おのず と秩序 がで きる とい うこ とであ ります。事後 的
とい うの は、つぶれ るけれ ど、それがパニ ックにな らない ように波 及 を防 ぐとい うこ と
です。そのため には中央銀行 や預 金保 険機構 や投資基金 とい うような ものがあ ります。
今 の流 れ は、やは り事前 的 な ところか ら事後 的 な ところへ移 ってい ますが、それ だけで
十分 とい うのは難 しい部分 がある と思 い ます。パ ニ ックが起 きない ように事後 を固め る
こ とは必 要ですが、それ以前 にバ ブルが発生 しない仕組 み を作 る こともまた重 要 です。
最低限のパニ ックを防止す るための装 置 とい うの は一体何 か とい うの を少 し厳密 に考 え
てみ る必 要があ ります。
-8
9-
第 3回 ヒア リング
ビッグバ ン時代の自己責任 と消費者保護
楠 本
く に 代 氏 (
東京都消 費者 セ ンター相談員)
ビッグバ ン型苦情の実態
まず最初 に、今 、 どうい う金融消費者像が あるのか とい うこ とを、知 っていただ くた
め に、消費者 セ ンター に寄せ られてい る苦情 の概 要 をご紹介 してみたい と思 い ます。
実 は、 この ところ金融 関係 の苦情 が増 えてい るのです。数字 を見 てみ ます と、全 国の
消 費 者 セ ン ター に寄 せ られ る銀行 に関す る苦情 が 、 1
988年 には436件 だ った ものが、
1
9
9
7
年 には2
,1
6
8
件 となってい ます。証券 関係 の苦情 については、8
8
年 は4
6
6
件 だ った も
のが、9
7
年 には2
,
4
8
4件 と増 えてい ます。生命保険 にいた っては、8
8
年 が1
,2
3
8
件 だ った
ものが、9
7
年 には7
,
3
6
3件 とい うように急増 してい ます。
この中で、 ビッグバ ン型苦情 といい ます と、その基本例 と しては、 ご存 じの変額保 険
に関す る苦情 です。 なぜ ビ ッグバ ン型 の苦情 か といい ます と、従来 の保険 とい うのは、
保 険会社 が保険料 を運用 し、その運用 にかかわる リス クが出た場 合 には保険会社 が負担
していたわけですが、変額保 険 とい うのは、そ うい う従来 の発想 を全 く変 える新 しい保
険で、 これ は リス クが出た場 合 も、 リター ンがあ った場合 も、すべ て消費者が負担 し、
享受す る とい う保険 にな ってい るわけです。 そ う した保険 についての特性 を十分説明 さ
れ ない ままに契約 して しまい、被 害が生 じて きてい ます。現在 、非常 に深刻 なの は、変
額保 険一括 支払 いで、銀行 か ら融資 を受 けて、それで変額保 険 を買 って しまってい る場
合です。 そ うす る と、運用益 が出 ない、元本割 れ を してい る とい う状 況 の中で、担保 に
なってい る住居 を取 られて しまうとい うことにな り、非常 に深刻 な事態 に発展 してい ま
す。
そ れで 、 さ らに深 刻 な こ とには、契 約 者 が 1
00万 人以 上 い るわ けです 。 今 、訴 訟 に
なってい るのが6
0
0
件。 1つの金融商 品で6
0
0
件 もの訴訟 が起 こる とい うこと自体 が、非
常 に異常 な こ とです し、 こう した ことは きちん と、何 らかの形 での政治的 な解決 が必 要
である と私 たちは唱 えてい るのですが、 なか なか、そ う した意見 は受 け入れ られ ませ ん。
しか も、少 し資金的 に余裕 のあ る方 は訴訟 を争い ます けれ ども、 ほん とうに底辺 で どう
-90-
しょうもない方 とい うの は、結局 、あ きらめ て しまってい ます。
金 融 ビ ッグバ ン と消 費
あ と非 常 に最 近 な んです け れ ど も、 国民 生 活 セ ン ターが 、 『
者 』とい う本 を出 しま して、その 中で 国際金融商 品 に関す る消 費者相談件 数 を調 べ てい
るのです が、9
6
年度 には 1
0
9
件 だ った ものが 、9
7
年度 には3
6
3
件 に増 えてい ます。私 ど も
の実感か らす る と、今年度 は もっ と増 えて くる と予想 され ます 。
ここで非常 に深刻 だ と思 うのは、その契約 当事 者 の属性 です。性別 で見 ます と、女性
が7
0%余 りを占め て い るのです 。 しか も年代 別 に見 ます と、 6
0歳代 ・7
0歳代 で お よそ
5
0%とい うこ とにな ってい ます。 それか ら職 業別 に見 ます と、家事従事 者 が ほぼ4
6%と
い うように、半数近 くになってい る とい うこ となのです。
5
歳 以 上 の女性 が 7
0最近 よ く聞 くこ とです が 、証 券 会社 の講 習 会 な どに行 くと、6
8
0%を占めてい る ら しいのです。 そ うい う方 たちが説明者 の意見 をふ んふ ん と聞 きなが
ら、結局 の ところ、契約 になだれ込 んでい って しま うわけです。 こうい う話 を聞 いて、
非常 に憂慮 してい る ところなのです が 、それが こ う した統計 には っ き りとあ らわれて き
ている とい うの は、私 ど もに とって は非常 に シ ョックな こ となのです b 結 局 の ところ、
将 来 もっ とビ ッグバ ンが突 き進 んで い くにつ れて、 こうい うパ ター ンで 、被 害者 が出 て
くるので はないか と予想 され ます。
金融規制緩和 の一方 的進行
しか し、規制緩和 とい うの は着 実 にス ケジュー ル どお りに進 んでい ます。 9
6
年 の1
1
月
に、橋本首相 が ビ ッグバ ンをす る と発 表 を して、その翌年 の 6月 には、金融制度調査 会
をは じめ、証 券 、保 険 関係 の審議 会報告 が一斉 に出 ま して、その 3つ の審議 会 の報告 に
基づいて、着実 に規 制 の枠組 みの取 り外 しが行 われて きてい ます。
消費者 に関 して も、い ろい ろ規制緩和 が な され て きてい ます。例 えば、証 券総 合 口座
である とか、会社型投 資信託 であ る とか、そ う した商 品が どん どん認 可 され て、 もう現
実 にこれが売 り出 され てい るわけです。 しか も販売形態 で も、今 まで こ・
う した リス ク商
品 にアプ ローチで きる人 は、 ほん とうに証券 会社 と取 引 を してい るほんの一部 の人だ っ
たわけですが、去年 の 1
2月か らは、銀行 での投資信託 の窓 口販売 とい うこ とが行 われ て、
だれで もが リス ク商 品 にアプローチす る こ とがで きます。 また例 えば、預 金 を Lに行 っ
て、それで リス ク商 品 を勧 め られた りす る と、 「
銀行 で売 るんだか ら、・
これ は リス ク商
品で はない だ ろ う。」 あ るい は 「
預 金保 険 で保護 されてい るんだ ろ う。
」と思 って買 っ
ー91-
て しまうこ とがあ り得 ます。そ う した ことで、規制緩和 は一方的 に進 み、そ して消費者
に とっては新 しい商 品が新 しい売 り方で どん どん売 られて きてい る とい うのが実態 です。
ところが それ に反 して、英米 の実態 と比較す る と、 よ くわか るのですが、弱 肉強食の
金融市場 の 中で、本来 な らば消費者 を守 る安 全弁 とい う ものが絶対 に必 要 なわけです け
れ ども、そ うい う安 全弁 とい うこ とに関 しては、一向 にスケ ジュールの上 に乗 って きて
い ないのが現実 なのです。
それで、 この安全弁 とい うもの を当局 は どの ように考 えてい るのだろ うか とい うこと
ですが、金融制度調査 会 は、規制緩和 のスケ ジュー ル、それか ら方向 を きちん と決め る
と同時 に、や は り、利用者 の保護 について も しっか りと書 いてい るのです。私 は これ を
見 た ときに、 ほっ と しま した。 と言 い ます の は、事業者 と消費者 との間 には情報力 に大
きな格差 が あ ります 。 だか らその格差 を埋 め て、 それで消 費者 と事業 者 と同 じ土俵 に
持 って きて、その上 で初 めて 自己責任 が問 える とい うこ とにな ります。 この ような世界
の消費者保護法 に共通す る考 え方が は っ き りと出 されてい るの には少 々安心 しま した。
中で も驚 いたのは、苦情処理 や紛争処理 の システム を、 きちん とビッグバ ンの前提 と し
てつ くっていかなければいけない と、 はっ き りと言 ってい る ことです。 しか し、現実 に
は何 らの取 り組 み も見 られない とい うのが、実態 なのです。
英 国の金融消費者保護法制
それで は ビ ッグバ ンの本家英 国で は、 どの ような形 で消費者保護が な されてい るのか
とい うこ とですが、サ ッチ ャー首相 が 1
9
8
6
年 に ビッグバ ンを行 った と同時 に金融サ ー ビ
ス法 とい う法律 がで きてい ます。英 国 には、 日本 の証券取 引法 の ような ものが ないので、
このサ ー ビス法で、 日本 の証券取 引法が規制 してい る範 囲の ことか ら利用者 の保護 まで
全 て を規制 してい るわけです。その規制 の仕 方ですが、 まず投資 とい うの を非常 に幅広
く定義 してい ます。例 えば株式 とか社債 とい った項 目を列挙 してい るわけやす。 それか
ら、投資 を業 として行 う者 は どうい うこ とがで きるのか について も細 か く定義 されてい
るわけです。
そ して、 こう した業務 を行 うため には、認可 を受 けなければな らず、認可 を受 けて業
務 に参 入 した者 は、認可主体 か ら非常 に厳 しい規制 を受 ける ことになってい ます。監督
官 庁 は大 蔵 大 臣です が 、実 際 の権 限 は SIB (
証 券 投 資 委 員 会 ) に、 1
9
9
7
年 か らは
SIBを改組 した FSA (フ ィナ ンシャル ・サ ー ビス
-9
2-
・オー ソリテ ィ) に委 嘱 されてい
ます。 さらに、 FSAの下 に、各業態 ご とに様 々な規制監督機関があ りま して、 これ ら
が全 て 自主規制機 関 になっていて、 ここが具体的 にそれぞれの業界 を統括 し、監視監督
を してい るわけです。
非常 に注 目すべ きことは、 こう した FSAの規制監督 に要す る費用 や各 自主規制機 関
の紛争解決 の費用等 、全 て事業者 の拠 出であ る とい うことです。 日本 では とて も考 え ら
れない こ とですが、 これが ご く当た り前 の こ ととして受 け入れ られてい ます。事実、 こ
の金融サ ー ビス法 を作 る過程 で、「
利益 を受 ける事業者 は、 その利益 を受 ける過程 で損
失 が生 じたな らば、その損失 を も負担 しなければな らない 。
」 とい う、いわば PL法 的
な発想 が、根本 に位 置づ け られてい ます。
986年金融サ ー ビス法 です が、実 は、驚 いた こ とに、 この金融
これが一応 、現行 の 1
サ ー ビス法が今 、 まさに大改革の過程 にあ るのです。私 たちか ら見れば、非常 に完成 さ
れた法律 だ と感 じていたのですが、英 国は、 ブ レア政権 にな ってか ら非常 に積極 的 に、
この金融サ ー ビス法 の大改革 とい う問題 に取 り組 んでい ます。
改革が必 要 な最大 の理 由は、新 しい商品が出て きた ときに、 これは保険 なのか、それ
とも投資 なのか、 とい った ようなこ とが非常 にあい まいでわか りに くくなって きていた
とい うこ とが挙 げ られ ます。それが原 因で発生 した典型的 な事態 が、年金 ミスセ リング
8年か ら9
4年 にか
・スキ ャンダル とい う事件です。 この事件 は、年金 の改革が行 われた8
けて起 こ りま した。 今 まで企業年金 だ った もの を個 人年金 にス イ ッチ して もいい ように
法制度が変 わ ったわけです。 その ときに個 人年金の獲得 のため に、各事業者がす さま じ
い争奪戟 を繰 り広 げ、「
企業年金 よ りもず っ と有利」とい う誤 った うたい文句 に乗 って、
非常 に多 くの人 々が個 人年金 にス イ ッチ し、結果 と して、2
00万 人以上 の被害者 が出 ま
した。 こうい う形 で新 しく出て きた商品 に対 して、即 、対応 で きなか った とい う反省 が
今 回の金融制度改革 の大 きな原点 になってい るようです。
それで、今 回の法律改正 の骨子 は、マーケ ッ トへ の信頼、消費者保護 、そ して金融犯
罪 の取 り締 ま り、 この 3つ を達成す るための効果的で透 明で強力 な規制体制 をつ くる と
い うことです。そ して、 この法律 の第 1条が、要す るに FSAについての規定 になって
い るのです。つ ま り、新 しい法律 の 目的は、今 まで規制機関 もい ろい ろあ ったが、一元
化 されてい なか ったため に実効力 が なか った とい うことで、今 回は FSAとい う もの に
ま とめ、機能 させ よう じゃないか とい うことなのです。新 しい金融 システム にお ける消
費者保護 の体制 をつ くってい こうとい うのが今 回の 目的であ るわけです。
-9
3-
消費者保護 システ ム確 立への課題
翻 って、 わが 国で はそ うい う体制が根本的 に出来 てい ませ ん。 自己責任 とよ く言 われ
ます が、 日本 で は 自己責任 を問 える状況 にな り得 てい ないのです。確 か に、英 国や米 国
で も、金融サ ー ビス は自己責任 とい うことをはっ き りとうた ってい ます。 しか しなが ら、
その 自己責任 を問 う前提 と して、英 国では今言 った ような形 で、至 れ り尽 くせ りの金融
サ ー ビス法 が あ るわけです。その至 れ り尽 くせ りの金融サ ー ビス法 であ って も、改革 し
ようと してい るわけです。 それで、法 をつ くって、それか ら苦情処理 システムを作 って、
そ して、紛 争 が生 じた ときには消費者が無料 で相談 で き、紛争解決 して もらえる ところ
が なけれ ばいけ ない とい うこ とで、 オ ンブズマ ン組織 をつ くってい るわけです。それが 、
日本 で は、消 費者保護 の システムが ない ままに、金融 ビ ッグバ ンが進 め られてい る とい
うのが実態 です。
それが結 局 、最初 に申 しま した ような、 さまざまな深刻 な苦情 を引 き起 こ してい る原
因 になってい るわけです。今 まで は証券会社 の窓 口で しか金融商 品が売 られてい なか っ
たの にそ うい う問題 が出て きていたわけです。 ところが今度 は、何十倍 、何百倍 もの銀
行 の窓口で金融 の リス ク商 品が売 られ るようになるわけです か ら、 この まま放 っておい
た ら、 どん な形 で、 どれほ どひ どい消費者被 害が生 じて くるか予想 もつか ないほ ど深刻
な問題 を抱 えてい るので はないか と感 じてい ます。
自己責任 を問 う前提 と して、 どう して も消費者保護等 の整備 が必 要、 と りあ えず金融
サ ー ビス法 を絶対 に作 らなけれ ばいけない と思い ます。 この 中で、規制 の対 象 を漏れ な
く定義 しなければな りませ ん。
それか ら法律 があ って も、規制監督機 関が一元化 していて、 しっか りしていなければ
い けない とい うことで、そ うい う規制監督機 関 とい うものが、 きちん と法律上、規定 さ
れてなけれ ばいけない と思 い ます。 日本 の場合 は、英 国の ように事業者の費用の負担 で
すべ て を賄 う とい うの は とて も無理 な状況 だ と思 い ます ので 、規制 のモ デ ルは米 国 の
SECの ような形 で政府が関与 した機 関、 日本で言 えば金融監督庁等 の システムの中 に
しっか りと消費者保護 の部分 を位 置づ けていか なければいけない と思 い ます。
それか ら、紛争解決機 関ですが、今 は紛争 が起 こった ときには訴訟 しか ないわけです。
貧 しくて訴訟 に行 けない人たちは、 もうあ きらめ ざるを得 ない とい う実態 になってい ま
す 。 です か ら、 この ぐらい はせ めて事業者 の負 担 で 、 オ ンブズマ ンや仲裁 シス テ ム と
い った もの を作 らなければい けない と考 えてい ます。
-9
4-
それか ら金融商 品規制 とい う新 しい分野 に も積極 的 に取 り組 まなければな りませ ん。
どんなに売 り方 を規制 して も、や は り私 たちは、あの難 しいデ リバ テ ィブは理解 で きな
いわけです。ですか ら、市場 に出てい る商 品 をだれ もが一応 の範 囲で は把握 で きる よう
な規制 のあ り方 を考 えていか なければいけないので はないか と思 い ます。
次 に、消費者啓発 とい うのが大事 だ と思 い ます。 ただ し、 こ と金融サ ー ビス に関 して
は、他 の商品の消費者教 育 とは異 質の もので して、学校教育 な どで取 り上 げる とい うあ
い まいな形 ではな く、あ る程 度 、範 囲 を確定 しなければいけ ませ ん。例 えば、格付 け制
とか、最低基準制 とか、そ うい うもの を しっか りと設 けて、 それ を周知徹底 させ る。 こ
こが金融サ ー ビスの消費者教育 の原点 で はないか と思 い ます。
それか ら、情報提供 システムの整備 が必 要です。米 国で は、 SECの もとに作 られ て
い る NA SD とい う業界 団体 (日本 の証券取 引業協 会の ような もの)があ るのですが、
そのホームペ ージに もそ う した被 害状 況がす ぐ出 るわけです。 これは何 よ り消費者教 育
だ と思 い ます。 そ して、その被害情報 を提供す るのは、その政府 の側 の役割 だ と思 うの
です。
最後 に、大変重 要 な点 です が、先 ほ ど、6
5
歳以上 の人たちが証券会社 の講習会 の受講
者 の大半 を占めていて、苦情 の中で6
5歳以上 の人 たちの被害 が多い とい うこ とをお伝 え
しま したが、そ うい う、従来 な らそ うい うマ ネーゲーム には本 当 は関わ らな くて もいい
人 たちが、今 、被害者 になってい るわけです。 だか ら、そ うい う不適格者 を巻 き込 まな
い ような システムを考 えな くてほな らない と思 い ます。
具体 的 に私 は、4
01Kとい う ものが去年 の 1
2月 に出て きた ときに、非常 に困 った こ と
だ な と思 ったのですが、それ は年金 その ものの問題 もさる こ となが ら、4
01K等 が導 入
されるこ とに よって、今 まで投資等 に関係 ・関心 のなか った人 たちが、好 む と好 まざる
とに関わ らずマ ネーゲーム に巻 き込 まれて しまう とい うことなのです。
この4
01Kがす ご く早期 に導 入 され る ような こ とを言 われ てい ます が 、私 は非常 に危
険 な ことだ し、導入す る と した ら地 に足 がついた法律制度 を作 らなければい けない と思
い ます。米 国の法律 の中で も、人のお金 を預 か る人たちの信 任義務 とい う哲 学 的 な問題
が原点 に位置づ け られ、最高度 の忠実義務 で、 自分 の利益 をすべ て投 げ捨 てて、相手 の
ため に尽 くさなければい けない、その義務 を尽 くさなか った らば、忠実義務 違反 とい う
こ とで、非常 に重 い責任 を負 わ され る ことになってい ます。
それか ら、銀行 窓口での リス ク商 品の販売 とい うことも、 その不適格 者 をマ ネーゲ -
-9
5-
ム に巻 き込 んでい く大 きな入 り口 になって しまう と思 い ます。 です か ら、銀行 で リス ク
商 品 を売 る場 合 には、非常 に しっか りと した法制度 をつ くらなければい け ませ ん 。 今 は
きちん と した売 り方 を してい ますが、競争 が激化 して きた らどうなるか わか りませ ん。
これ に よって不適格 者が マ ネーゲ ーム に引 きず られ てい くお それが十分 にあ る と考 えて
い ます。
そ う した意味 で、金融 サ ー ビス にお ける ビ ッグバ ン時代 の 自己責任 とい うのは、実 は、
自己責任 を問 う前提 と しての、 さまざまな消 費者保護 の シス テ ムが必 要であ り、それ を
つ くった上 で、 ようや く同 じ土俵 で、情報 の非対称性 とい う もの を ク リア して、 自己責
任 とい うこ とで取 引がで きるのだ と、私 は考 えてお ります。
-96-
第 4回 ヒア リング
金融 ビッグバン時代の地方銀行の経営戦略
田 忠 明 氏 (トマ ト銀行社 長)
金融の 自由化 とバブルの発生
そ もそ も、金融環境 の大 きな変化 は、金融 の 自由化 か ら始 まった ものです。最初 に大
口預金の金利が 自由化 され ま して、金利が 自由化 され る とい うこ とは、預金金利 につい
ては、大 口の預金 を取 らな くてほな らない とい うこ とか らす れば、や は り従来の規制金
利時代 よ りは金利 を上 げる とい うことにな ります。預金金利 が上 が る とい うことは、銀
行 の収益 圧迫 の要因 にな ります。 また金融 自由化 で、大企業 の 自己資金調達 の道 が CP
の発行等色 々準備 され ま した し、それか ら経 済が高度成長 してい く過程 で、企業 が資金
力 を次 第 に増 や して きていた とい うことで、大企業 を中心 に して企業 の銀行 離 れが次 第
に始 まってい ま した。
そ うい う大 きな流 れの中で、銀行 としては、特 に大手銀行 を中心 に、当時大 きな危機
感 を持 ち、そ して不動産融資 や住宅 ロー ンとい った新規 の分野 に参入 してい った とい う
ことです。 この住宅 ロー ンに関 しては、本来 は住宅専 門金融会社 、いわゆる住専 が 自己
の専 門分野 として大 い に稼 いでい ま した。そ こ-収益改善 とい うことで銀行 自体 が入 っ
てV、き、住専 の仕事 を取 って しまった ことか ら、住専 自体 も本来 の住宅 ロー ン以外 の不
動産融資 で稼 ぐとい う方向 に追 い込 まれ、住専問題 の発生 とい うことになったわけです。
住専 に して も、銀行 に して も、不動産融資 にのめ り込 んでい った とい うの は、結局 、
土地神話 が非常 に強 か ったか らです。土地 は絶対 に下が らない、土地 を担保 に融資す れ
ば間違い ない とい うこ とで、 しか も地価が どん どん上が っていた こともあ って、不動産
融資 にのめ り込 んでい きま した。そ して、金融機 関 自体 がバ ブル をつ くった責任 を問 わ
れるような結果 にな ったわけです。他 に も、当時の激 しい 日米経 済摩擦 の中で米 国の プ
レッシャーに押 され て、内需拡大政策 を政府 が と り続 けた とい うこともバ ブル発 生 の大
きな一つの原 因であ ろ うと思 い ますが、金融 的 には、土地神話 と担保主義が不動 産融資
を拡大 させ てい った とい うこ とです。
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B 暮S規制 と貸 し渋 り
一方 、 B IS基準 とい う規制 は、 は っ き り言 えば、国際的 に 日本 の銀行 の オーバ ープ
レゼ ンス (
急速 な海外進 出) をチ ェ ックす る必 要が あ る、 とい う発想 か ら来 てい る と思
い ます 。 国際決済銀行 (
B IS) に よって、
ノ「国際業務 を行 う銀行 は 自己資 本比率 (自
己資本/総資 産) を 8% 以上 キー プすべ し。 それ を切 れ ば、 国際金融市場 にお いて不利
な扱 い を受 け る し、海外 業務 がで きない よ うな扱 い を受 け る可 能性 もあ る。
」とい う非
常 に厳 しい基準 が課せ られ ま した 。
私 ど もの ように海外 に拠点 を持 ってい ない、いわ ゆる国内基準行 は、従来 か ら半分 の
4%で よい とい うこ とですが、 どう して こん なに差 があ るか といい ます と、計 算方式が
当初違 い ま した。 国際基準行 には、少 し甘 い基準 で計算 で きる ような仕組 みでス ター ト
したわけです。 この 8% を 日本 の銀行 に も適用 しようとい う際 に、 日本 の大 蔵省 がか な
り奮戟 しま して、株式 の含 み益 の約 6割 は法 人税分 だか ら残 りの約 4割 を自己資本 に算
入 して もよい、 とい うこ とで話 をつ け ま した 。 含 み益 の算入 を認 め ない従来 の方法 で計
算 します と、 8% を切 る銀行 がか な りあ ったので はないか と思 い ます が、株式 の含 み益
が 当時 は相 当あ りま したので、その 4割 を 自己資本 に算 入で きる とい う便法 のおか げで 、
この規制 が か け られ た当時 は 8% とい う基準 を楽 々 とク リア し、外 国の国際基準行 の レ
ベ ルであ る 1
0%前後 にまで達 してい ま した 。
これが昨 今 のバ ブ ル崩壊 か らの株 価 下 落 に よって、 この含 み益 が ほ とん ど消 滅 に向
か った こ とか ら、 自己資本が減 り、 8% の維持 とい うのがか な り厳 しい状態 に追 い込 ま
れ て きたわ けです。 そ こで都市銀行等 の ア クシ ョンと しては、 自己資本比率 を世 界 レベ
ルの 1
0%に回復 す るには、結局分母 を減 らす しかあ りませ ん。 そ うい うこ とで、資 産 の
圧 縮 の た め に、現 在 も続 い てい る とい われ る貸 し渋 りとい う行 動 に走 らざる を得 な く
な ってい るわけです。
確 か に貸 し渋 りは社 会 的 に責 め られ る面 が あ りますが 、現 下 の状況 か らす れ ば、増資
の ような分子 す なわ ち 自己資本 自体 を増 やす とい う道 はか な り厳 しい方法 です し、 きち
ん と収益 を上 げて 自己資本 を増 やす とい うの も、今 、不 良債 権 の処理 をどん どん進 めて
い る過程 か らい って とうてい無理 な話 で しょう。 とす れ ば、結局 、分 母す なわ ち資 産 を
圧 縮す る しか ない とい うこ とにな って しまい ます。 や は り、経済合理性 のあ る民 間企業
と して はその方 向 に走 らざる を得 ない と思 い ます。
それ と、貸 し渋 りが、今 、い ろい ろ批判 されてお りますが 、別 の面 か ら言 い ます と、
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8-
バ ブルの過程 において貸 し過 ぎが あ って、その整理 の段 階だ とい う見 方 もで きる と思 い
ます。つ ま り、現在 までの貸 し過 ぎに よって、本来 は競争力 の ない貸 出先 の企業 が生 き
て きたのが、冷 たい表現 で言 えば、正常 に戻 る過程 において整理 されつつ あ る と も言 え
る と思 い ます。
これ を証 明す る数字 的 な もの と して は、「金融機 関の仝貸 し出 L/ GNP」とい う比
率 があ りますが、 これはバ ブルに入 る まで は、 日本 の場 合 にはほぼ7
0%前後 で安 定 して
推 移 してい ま したが、バ ブルの時期 に急増 して、 ピー ク時 には 1
07% まで膨 らん で しま
い ま した。 GNPの規模 に比べ て、銀行 の貸 し出 しが多過 ぎたわ けです。現在 は直近 の
数字 で、 1
07%が 1
00% にまでや っ と下 が った段 階ですか ら、7
0%が通常 の状態 とす れば、
まだ3
0% も貸 し出 しが多 く、その部分 は圧縮 しなければいけ ない わけです。確 か に、貸
し渋 りとい うのは、社会的 には様 々な問題 を生 じてい ますが 、経 済の論理 か ら言 い ます
と、 まだ この動 きは止 ま らないので はないか と、思 ってい ます。
公的資本注入の意義
そ うい うような状 態 を前提 と して、国 と しては手 を打 た ざる を得 ない とい うこ とで、
例 の公的資金 に よる資本注 入が行 われたわけです。資本注入 を して、 自己資本比率 を政
府 のサポー トで回復 させ たわけです。
そのかわ り、 3つの厳 しい条件 が金融再生委員会 か ら付 け られ ま した。 第 1は、 この
資本注入 に よって、不 良債権処理 を全部終了 させ る こと。第 2は、 リス トラ して、場 合
に よっては海外業務 か ら撤退す る とい った業務 の再構築 。そ して第 3が、貸 し渋 りを解
消 し、特 に中小企業 に対す る貸 し出 しを増加 させ る こと。 この 3つの条件 に応 える よう
な計画書 を提 出 して OKを もらって初 めて、先般 の資本注入 の金額 、配 当率等 が決 まっ
た とい うこ とです。先 ほ どの 自己資本比率 の問題 や貸 し出 し回収 とい う現実 に対す る即
効性 の点 か ら、政府 はか な り思 い切 った手 を打 たれた と思 い ます。
ただ、私 の個 人的 な見解ですが、最初 の 2つの条件す なわ ち不 良債 権処理 お よび リス
トラと、第 3の条件 の貸 し渋 り解消 とい うの は、か な り矛盾す る面 が あ るので はないか
と思 い ます。金融再生委員会 は少 し欲張 られたので はないで しょうか。 とい うの は、 中
小企業等へ の貸 し出 しを促進す る とい うこ とは、将来の不良債権 の種 を背負 い込 む こ と
に もつ なが りかね ませ ん。 また、業務 の再構 築 で、都市銀行 とす れば、あ る業務 に集 中
したい ところなの に、無理 や り中小企業へ の融資 を増加 す る よう約束 させ てい ます。 こ
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の辺 りには少 し無理 が あ るので はないか と思 われ ます。
それか ら、私 ども中小 金融機 関、地 方銀行 の立場 か ら して も、 中小企業- の融資 とい
うの は、 や は り中小 金融機 関や地方銀行 が集 中的 に取 り組 むべ き分野 で して、そ こに金
融再生委 員 会の しりたた きで都市銀行等 が この分野 に入 って くる とい うの は、金融秩序
か らす れ ば少 々困 った こ とだ と、少 しエ ゴが あ ります けれ ど も、思 ってい る ところです。
しか し、 この資本 注 入が、 日本 の金融 シス テム に対 す る信 用 を回復 させ た ことは確 か
です。 要す るに、資 本注 入 は大手銀行 の国有化 にか な り近 い性格 の措 置で して、 ひ どい
ところで は株式 の半 分近 くが 国の株式 になる との こ とです。 とい うこ とは、反対 か ら見
れ ば、それ だけ大手銀行 に対 す る信 用力 は国際的 に回復 す る こ とにな り、 日本 の金融 シ
ス テ ム に とってはか な り大 きなプ ラスであ ります。 それか ら、 この資本注 入 をえ さに し
て、今 い ろい ろ発表 されてい る金融機 関の再編 とか淘汰が進 め られ、か な りの効 果があ
るので はないか と思 ってい ます。
銀 行 業界 の再編 の行 方
現状 と しては、金融機 関の数が多過 ぎる とい うの は否 定 で きない事 実 だ と思 い ます。
従 来 の よ うな規制行 政 、護送船 団方式 か ら変 わ り、金融 自由化 、 ビ ッグバ ンが どん どん
進 んでい ます ので、金融 の業態 ご との垣根 が撤廃 されつつ あ ります し、金融機 関以外 の
他 業種 も金融 に どん どん進 出 して くる とい うことで、高度成長時代 か ら推持 されて きた
金融機 関の うち力 の弱 い ところか ら淘汰 されてい くで しょう。
そ こで 、今後 、金融機 関 は、 どの ような秩 序 、類 型化 が されてい くのか とい うことで
す が、大 き く 5つ の金融機 関 に類 型化 され るので はないか と言 われてい ます。
まず 第 1の グルー プが 、 グローバ ルバ ンク、国際的大銀行 といわれ る銀行 です 。 これ
は国際 的 な活動 も行 い、国内 にお いて も全 国的 な営業活動 を行 う銀行 で、 日本 において
は 2-3行 に絞 られて くるので はないか と思 われ ます。
第 2の グルー プが 、 ナ シ ョナ ルバ ンクまた はユ ニバ ーサ ルバ ンク といわれ る銀行 です。
この グルー プは、海外 の重 要拠 点 には足場 を持 ち ます が、主 に 日本全 国で営業展 開 して、
金融 、証 券 、保 険 な ど全 ての金融商 品 を扱 う とい う銀行 です。 ここに現在 の上位 大手銀
行 数行 が 入 るだろ う とい うこ とです。
す る と、大手都市銀行 が現在 1
5行 ですが、第 1
ない し第2の グルー プに 6- 7行 しか入
れ ない とい うこ とになる と、約半分 は これ までの都銀 とは別 の道 を歩 まざる を得 ませ ん。
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そ こで出て くる第 3の グループが、ス ーパー リージ ョナルバ ンクといわれるグループで
して、 これ は 日本 国内の ブ ロ ックに またが り、個 人及 び ミ ドルマ ーケ ッ トを中心 に リ
テール業務 を展 開す る大型地銀 とい う位置付 けにな ります。現在 の都市銀行 の中下位行
と上位地銀の一部が この 中に入 って くるので はないか といわれてい ます。硯 に大和銀行
や東海銀行 、あ さひ銀行 な どが この道 を進 む ことをかな りはっ き り表 明 されてい るよう
です。
その次 の第 4の グループが、 リージ ョナルバ ンクです。 これはおお むね現在 の地方銀
行が イメージされてい ま して、県 な ど一定範 囲のエ リアを営業基盤 とす る地域金融機 関
で、現在 の地銀 と第 2地銀 はほ とん どこの中に入 って くるので はないか といわれてい ま
す。 ただ、現在 の数でそ っ くりいけるのか とい うのは疑 問で して、他業態等 か らの金融
業へ の進 出や外銀 の地方へ の展 開等 が もし将来起 これば、数 の整理 は必然 だろ う と思 っ
てい ます。
最後 の第 5の類型化が コ ミュニテ ィノアンクと呼 ばれる グループで して、 これは県 の中
で もかな り限 られたエ リア、例 えば岡山市 とか倉敷市 とい うようにかl
な り限定 されたエ
リアを営業基盤 とす る地域密着型 の金融機 関です。 ここに信 用金庫以下、信 用組 合 とか
農協等協 同組織系 の金融機関が類 型化 され るのではないか とい う話 です。
もちろん、 この グル「プ分 けは、 自然 にいつの間 にか類型化 され る とい うもので はな
く、その過程 でかな り激 しい競争 があ って、それ に生 き残 った金融機 関だけが 自分 の居
場所 を見つ けることがで き、居場所 の見つか らない金融機 関 は消 えてい くとい うことで
す。殊 に信用金庫 とか農協 な どはか な りの数があ ります ので、や は り下の小 さい ところ
か ら整理が始 ま り、次 第 に大 きい金融機関 に も及んで くるので はないか と見 てい ます。
地方銀行の今後
そ うい う将来の方向 をに らんで、で は地方銀行 は どうなるのか とい う話 になるわけで
すが、現在 の ところ、おお むね 1つの県 に鞄方銀行 が 1-3行 、それ に第 2地方銀行 が
1-2行 とい う分布 になってい ます。今残 ってい る銀行 、特 に地方銀行 は、 1つ の県 内
の シェアをが っち り押 さえて お り、第 2地方銀行 はある程度すみ分 け を して、現在 の と
ころはかな り安定 した状態 であ る と認識 してい ます。
銀行離 れの影響が地方銀行段 階 には まだ及んでいない とい うこ とで、間接 金融 が まだ
圧倒 的 な シェアを占めていて、地方の企業 で 自己で資本調達 され る とい うところは、 ま
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だそ う多 くあ りませ ん。 当面 は営業基盤 自体 を大 き く脅 か され る とい うこ とには な らな
い と思 ってい ます。
また、幸 い に して、都市銀行 が 、地方か ら支店の引 き揚 げ をぼちぼ ち と始 めてお られ
ま して、そ うい う大手銀行 の業務再構築 とい うの は、今 の ところ、地方銀行 に とって プ
ラス に働 くと思 ってい ます。
た だ、地 方銀行 で も、東 京 とか大 阪 に所 在 します地 方銀行 は、都市 銀 行 の支 店網 が
大都 会地 で は、
きっち り引 かれ てい る中での競争 です か ら、地銀 、それか ら第 2地銀 も.
か な り厳 しい事態 に追 い込 まれ るので はないか と思 ってい ます。 それか ら、先 ほ ども申
しま した ように、大手銀行 自体 が金融再生委員会 に中小企業へ の融資 の増加 を約束 させ
られてい ます ので、地方 の支 店 を集約 しつつ あ る中での中小企業融資 の増加 とい うの は、
都 会地 の地方銀行 に もろに影響 を与 えるので はないか と思 ってい ます。 しか し、全体 と
しては、地 方 にお ける地方銀行 は、 これか らそ う大 きな波 に襲 われ る こ とはなか ろ うと
思 い ます 。
しか し、 もちろん、護送船 団で はあ りませ んか ら、経営効率化 、収益 増 強 をめ ざ して
か な り厳 しい努力 を しなけれ ばな らないの はい うまで もあ りませ ん 。 そ うい う過程 にお
い て、地 方銀行 と しては、 3つ の大 きな方向があ るだろ うと思 ってい ます。 第 1の方向
は、大手銀行 グループへ参加 して、その グループの 中で 1つの地域 を担 当 させ て もらう、
い わば大手銀行 の子 会社化 であ ります。 それか ら、第 2の方 向 と して は、地域銀行 同士
が グルー プ化 し、持 ち株 会社 を設立 して、様 々な経営 の効率化 で助 け合 い、地域 、地域
の縄張 りはその まま持 って他 の業態 と競争 してい く、 とい う選択肢 もあ るで しょう。 そ
して、独 立独 歩 でい くとい うのが 第 3の方 向 になるか と思 い ます。
しか し、 これか らの銀行 の経営 とい うの は、や は り情報力 の勝負 なので、 コ ンピュー
タでの処理 を相 当増 やす必 要が あ るのです が 、 この機械化 とい うの は莫大 な経 費 を伴 う
ものです か ら、競争 に勝 つ には 1社 だけで は とて も経費 の負担 がで きませ ん。 とい うこ
とで 、地 方 銀行 と して は今 の 第 1ない し第 2の方 向- の道 を迫 られ るの で は ない か、
第 3の方 向へ行 けるの はか な り強力 な優 良地 方銀行 だけで はないか とい う見方 を してい
ます。
また、経 営効率化 の点 で も、今後 は、その地域 な ら地域 、 また はあ る業務 な ら業務 に
特化 して役 割分担す る戦略が必 要 にな って きます。 とす れば、や は り第 1や第 2の方 向
を選択 せ ざる を得 ないか もしれ ない、 と見 てい ます。
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トマ ト銀行の戦 略
で は、私 ど もの銀行 の経営 戟略 は ど うなんだ ?
とい うこ とですが 、私 の頭 の 中で は、
先 ほ どの銀行 の類型化 でい う第 4の リ⊥ ジ ョナルバ ンク と第 5の コ ミュニテ ィバ ンクの
中間 を狙 ってい こうと考 えてお ります。地方銀行 は、おお むね第 4グルー プに入 る と思
われ ますが、私 どもは もう 1つ下 の コ ミュニテ ィバ ンクの性 格 を持 って、 イメー ジ と し
て は庶民銀行 と しての特性 を打 ち出 してい こ うと してお ります。
そのため に、お相手 させ てい ただ くターゲ ッ トを地元 の 中小 ・零細 、 それか ら中堅層
以下の個 人 に しぼって、完全 な中小 金融機 関、庶民銀行 と して経営資 源 を しぼ り込み 、
特化 してい こうと考 えてい ます。 そ して、昨年末 か ら可能 にな った投信 の窓販 につい て
は、当社 の経営 の基本 方針 に合 わ ない とい うこ とで、参 入 しない 旨は っ き り新 聞等 で も
表 明いた しま した。 参 入 され てない地方銀行 はか な りあ る よ うです が 、参 入 しない と公
表 した ところはか な り少 ないので はないか と思 い ます。 とい うの は、計 算 した ところ、
まず儲 か らない、そ して銀行 が手 数料 で儲 け よう と した らか な りリス クのあ る商 品 をj
q
R
売 す る必 要があ るのです。 これ は、庶 民銀行 を目指 す 当行 の性格 とは、明 らか に方向が
違 い ます。 しか も投信 を買 われ る方 はおそ ら く富裕層 の方が 多 い と思 われ ます が 、 この
層 のお客様 は先 に も述べ た よ うに当行 の メー ンターゲ ッ トで はあ りませ ん 。 そ うい う意
味 で、投信 の窓販 には参 入 しない とは っ き り決断 した ところです。
そ して、中長期 的 な課題 と しては、や は り、地元 のお客様 をお相手 させ てい た だ くに
して も、 きめの細 かいサ ー ビス を提 供 す るには情報 を持 ってい なけれ ば な らず 、情報 の
収集 ・管理 ・整理 の ための機械 化がか な り大 きなテーマ にな って きてい ます 。 また、地
方 において も銀行離 れ はいず れ進 んで きます ので、本来 の 「
預 金 を預 か って、融資 でお
貸 しす る」 とい うこ とだけで は、到底 や っていけ ませ ん 。 今 後 は、地元 のお客様 に対 す
る総合経営 コ ンサ ル タン トの性格 を もっ と強 めていか ざるを得 ない と思 ってい ます。 そ
の ため に、人材育成 にか な り力 を入れてい ます が、 ただ、 これ はか な り息 の長 い話 です
ので、銀行離 れが地 方 に及んで くる まで には人材 を きちん と養 成 したい と思 ってい ます。
将来 は、資金運用 の ような ものの ウエ ー トは金融業 の 中で次 第 に小 さ くな り、 む しろ総
合経営 コ ンサ ル タン ト業 に脱皮 してい くとい う展望 を措 いてい ます。大手銀行 に もい え
るか もしれ ませ んが、地方銀行 は、将 来的 には今以上 に、地 方 に密着 した総 合経 営 コ ン
サ ル タン トと しての能力 を期 待 され る と思 い ます し、その道 で生 き残 ってい くほか ない
と考 えてい ます。
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第 5回 ヒア リング
ユ ー ロ誕 生 と円の 国際化
益 田 安 良 氏 (
富士総 合研究所主任研 究員)
は じめ に
-イギ リスは いつユ ー ロには いるのか -
ご案 内の とお り今年 の 1月 1日にユ ー ロが誕生 したわけですが、 この統一通貨構想 が
出た当初 は、 イギ リス な どで は 「
通貨統 合 なんか出来 るわけない じゃないか」 とい う見
方が主流 で した。 しか し、 ドイツ、 フラ ンスが 中心 にな って相 当頑張 って、 なん とか通
貨統 合 を実現 した とい うこ とで、 ヨー ロ ッパ のパ ワーあ るい は長期 的 な戟略 とい うの は
す ごい もの だ な と感心 してい る次 第であ ります。
結局 、 EU1
5カ国の うち、 1
1カ国が9
9年 か ら通 貨統 合 を実現 しま した。現在残 ってい
るの は イギ リス、ス ウェーデ ン、デ ンマ ー ク、ギ リシャです が、 これ らの国 々が いつ 入
るのか とい うのが一つの注 目点 になってお ります。 ただ、第 2次通貨統合 に どこが入 る
のか とい うの は条約等 で は何 も決 まってお りませ ん。 ですか ら今後 これ らの国が 入 るに
は、 まず 入 りたい とい う意思 を表 明 し、 なお かつ財 政赤字 の GDP比 を 3%以 内 にお さ
える等 の基準 をク リア して、欧州委員会 とい う EUの官僚組織 の審査 をパス しなければ
な りませ ん 。
ちなみ に、 イギ リス は伝統 的 に EU嫌 いで して、通貨統合 には今 回参加 しなか ったわ
けですが 、一方 イギ リスの産業界 は大変焦 ってお ります。産業界 の 中で は通 貨統 合 にす
ぐにで も入 るべ きだ とい う意見が強 く、産業界 での通貨統合 の支持率 も 6割近 くに達 し
てい ます。 ただ、いか んせ ん国民 の中で は EUア レルギ ーが あ りま して、国民 の支持率
0数 % との こ とです。 国民 の支持率 がや は り 5割 を超 えて こない となか なか参加 とい
は3
うこ とにはな らない と思 い ます。 国民 の意識 が変 わ るには、や は りユ ーロ圏の経 済が イ
ギ リス よ りも明 らか に良 くな って こな くてはな らず 、そのため には短 くて も 2-3年 は
かか るだ ろ うとい う感 じです 。
デ ンマ ー ク、ス ウェーデ ンにつ いては、EU とのつ なが りが イギ リス よ りも強 い面 が
あ り、 もう少 し早 く入 るか も しれ ませ ん 。 ギ リシ ャにつ いて は、経 済基準 を満 たせ ない
で入れ なか っただけです ので、経 済状 況 が よ くなれ ば入 って くるか も しれ ない とい う感
ー1
0
4-
じです。 いず れ に して も、 この 4カ国が2
0
01-3年 あた りに少 しずつ 入 って くる可能性
が強い とい うこ とであ ります。
なぜ通貨統合 なのか
さて 、い ったい ヨー ロ ッパ の 国 々の通 貨統 合へ の動 機 は何 なの で しょうか。 まず 、
EUの公式見解 では、通貨統合 とい うの は市場統合 の完成 の ため にや るのだ とい うこと
です。市場 統 合 の狙 い は、 国のバ リア をな くして、経 済 の生 産性 を高 め 、ス ケ ー ル メ
リ ッ トを生 かす ことにあ ります。◆
それ に よって停滞 の欧州 を抜 け出そ うとい うこ とです。
そ の ため高 まバ リアの一 つ であ った通 貨 も一緒 に しま しょう とい うこ とです 。確 か に
ユ ーロ圏 とい うのは、人 口で もアメ リカを上 回 り、 GDPで もアメ リカに準ず る とい う
こ とで、相 当 な規模 にな ってい ます。 ス ケールメ リッ下が うま く生 きれ ば確 か に通貨統
合 は成功 す るで しょう。 ただ、そのス ケールメ リッ トを生かす には、企業 レベ ルで統合
が進 まなけれ ばな りませ ん。産業再編成が ヨー ロ ッパ全体 で起 こって、効率的 な ビジネ
スが ヨー ロ ッパでで きる ようにな らない といけない とい うこ とです。 これ には少 々時 間
がかか るだろ うと思 い ます。
経済面 の もう一つ のね らい は、 フラ ンス、ベ ネル クス 3国、あ るい はオース トリア と
い った ドイツの周辺 国 と しては、 これ まで ドイツの金融政策 にいい ように振 り回 されて
きたわけで、その呪縛 か ら脱 したい とい うこ とがあ ります。 ドイツは ヨー ロ'
ッパ最大 の
経 済力 を持 つ 国です か ら、その中央銀行 の金融政策 に周辺 国 はいつ も追随 しなければな
らなか ったわけです。 ところが通貨統 合 をす る と、金融政策 は欧州 中央銀行 が行 うこと
にな ります。 そ して、 この欧州 中央銀行 の意思 決定 は各国の代表 によって な され るわけ
ですか ら、周辺 国 とすれ ば少 しで も金融政策 に関与 で きる よ うになる とい うこ とです。
3つ 目は基軸 通 貨特 権 です 。 これ は円 の 国際化 の話 と大 い に絡 み ます が 、ユ ー ロ を
作 った大 きな理 由の一つ として、 ドルか ら基軸通貨 の地位 を奪 いたい とい う意識 が挙 げ
られ ます。 これ は ヨーロ ッパ ではあ ま り公式発 言 で は出て こないのです が、明 らか に本
音 です。かつ てのニ クソ ンシ ョックや プラザ合意 とい ったアメ リカの奔放 な通貨政策 に
ヨーロ ッパ は翻弄 されて きま した。様 々な局面 で ドルが どん どん安 くな り、その迷惑 を
被 るのは ヨー ロ ッパ や 日本です。 そ うい うところに彼 らは我慢 な らないわけです。
あ と政治面 の理 由 も大 きか った ようです。 ヨー ロ ッパ の様 々な動 きを見 る ときには政
治 的、歴 史的 な背景 は無視で きませ ん。例 えば フラ ンス に とって は強大 になった ドイツ
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5-
をつ な ぎ止 め るため には通 貨 を一緒 に しなければい け ない とい う焦 りが あ りま した。
1
989年 に東西 の ドイツの統合が な され、経済 的 に強か った ドイツが軍事 的 に も政治的 に
もパ ワー を増 して きま した。 そこ で9
2年 にマース トリヒ ト条約 をつ くって、通貨統合の
路線 を引 い たわけです。 また、 ドイツにす れば、過去 に戟争 をい ろい ろ起 こ してい ます
ので、その罪 を償 い、そ して早 くヨー ロ ッパの一員 にな りたい とい う意識があ りま した。
それか ら、E
Uとい うの は長 い歴 史の中で、統合の深化 と拡大 を本能的 に くり返 して き
た とい う側面 もあ ります。 1
952年 に EUの前 身がで きて以来 、 EU官僚 は参加 国 を増 や
しなが ら統 合 を深めて きま した。 それが合理 的か どうか は別 として、欧州委員会の官僚
の力がす ご くて、彼 らが リー ドして通貨統合 まで来 て しまった とい う感 じがあ ります。
以上 の ように通貨統合 には様 々な要素があ ります。す なわち、い ろい ろな国がいろい ろ
な思 い を持 って通貨統合 とい う大事業 に挑 んでい る とい うこ とです。
ユ ー ロは成功するのか
次 にユ ー ロは成功す るのか とい う論点 に移 ります。成功 とい うの はい ろい ろな意味が
あ るのだ ろ うと思 い ます ので、私 の方で勝手 に 3項 目に分 けて考 えます。 まず 1点 は、
そ もそ もユ ーロが欧州経 済 を活性 化す るのか。 2点 目は、過渡期 の 3年 間でユ ーロが壊
れて通貨統 合が終 わ って しま うな どとい うこ とがあ るのか。 3点 目は、各国の経済格差
は拡 が るのか とい う話 です。
まず 、ユ ーロが欧州経 済全体 の成長 を促進す るのか どうか とい う点 ですが、ユ ーロラ
ン ド全体 で見 る と、や は り通貨練 合 とい うのはプラスだろ うと思 い ます。 とい うのは、
ヨー ロ ッパでは国ご とのバ リアがあ って、 ビジネス には非常 に効率が悪 か ったわけです。
マ ーケ ッ トが細分化 されてい る し、通 貨 も違 うので、企業 は各国毎 に財務拠点 を持 たな
ければな りませ ん。 ところが通貨 のバ リブ が な くなる と、 まだ会計制度 とか税制 の違い
は残 ってい る ものの、 ビジネス上 は 「ヨー ロ ッパ は一つ」 とい った感 が強 くなって きま
す。 そ うなる とビジネス効 率 とい うの は今後随分増 して くるだろ うと思 い ます。
それか ら 2番 目の、過渡期 の 3年 間の崩壊 リス クはないのか とい う点です。 ご案 内の
とお り、通 貨練合 は9
9年 の初 め に全 て完了 したわけではあ りませ んo現金 のユ 「ロの発
行 は2
002年 の 1月 まで遅 れ ます。つ ま り、99年か ら2
001
年末 までの間 は、現金以外 の部
分 でのみユ ーロが使 える とい うこ とです。ですか ら、すで にユ ー ロで送金 も貿易取引 も
で きる し、 ク レジ ッ トカー ドも トラベ ラーズチ ェ ックも使 え ます が、ユ ーロ現金 はあ り
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06-
ませ ん。2
0
01
年末 までの間 に ドイツマ ルクとか フ レンチ フラ ンの取引 はだんだんやめて
い ってユ ーロに移行 してい きな さい とい うこ とです。 そのため に、その間、既存 の ドイ
ツマ ルク等 とユ ー ロの間 に固定 の交換 レー トが設定 されてい るわけです。 そ こで 、固定
レー トとい うとす ぐに壊 れ るので はないか とい う懸念 が 出 ます。事実 、 アジアに しろ、
ブ ラジルに しろ、最近 固定 レー トが推持 で きない とい う話が あ ち こちで起 こってい ます。
しか し、ユ ーロにおいては固定 レー トが崩れ る とい う心配 はないだろ う と思 い ます。
とい うの は、ユ ー ロラ ン ドの通貨供給量 は欧州 中央銀行 が一元 的 に見 るので、例 えば フ
ラ ンスで通用 してい るユ ー ロは ドイツで も当然通用す るわけです。す なわ ち、 ドイツマ
ル クや フ レンチ フラ ンはユ ー ロ と別の通貨 とい うよ りも、む しろ完全 にユ ー ロの補助通
貨 の ようにな ってい る と考 えるべ きなのだ ろ うと思 い ます。例 えば 1ドルが 1
0
0セ ン ト
.
95
5
8
3マ ルクだ とい う理屈 です。 です か ら闇 レー トみ たい
で あ る ように、 1ユ ー ロは1
な ものが出て こない限 り、交換 レー トが崩れ るこ とはないだ ろ う と思 い ます。
3番 目の経 済格差 は拡大す るのか とい う懸念 ですが、 これ は大 い にあ りといわ ざる を
え ませ ん。 通 貨統合が行 われ ます と、ユ ー ロラ ン ドにお ける金融政策 は欧州 中銀 が一元
的 に行 い、各国は金融政策手段 を失 い ます。加 えて、各国 には為替政策 もあ りませ ん。
このため、競争力が な くなって どう しようもな くなる と為替 を切 り下 げて凌 ぐとい う手
法 が二度 と使 えないわけです。財 政政策 は一応 自由です が、 ただ財政赤字 の GDP比 を
3%以内 に抑 えな さい とい う厳 しい基準が設 け られてい ます 。 これ を守 らない と国が罰
金 を取 られ ることにな ります。
以上 の ように、景気 の調整機能 とい うのは随分損 なわれ ます。 そ うなる と競争 力 の弱
い国には どう して も失業が た まって きます。 これが、労働移動 が 自由であれば まだ他 の
国 に行 って働 くとい うこ ともで きます が、欧州委員 会の試算 に よる と、 EU内の労働 移
動 はアメ リカの半分程度 とい うこ とであ ります。 い くらヒ ト、モ ノ、 カネの移動 が 自由
になった とはいえ、実態 的 には言葉 の壁 や カルチ ャーの壁 な どがあ ってなか なか動 きづ
らい とい うこ とです。 そ うなる と競争力の弱 い ところで は失 業 が どん どんた ま り、 そ し
て財政赤字が また悪化す る とい うこ とです。
最悪 の場合 、財政赤字 が どん どん悪化 し、 GDP比 3% ぎ りぎ りの ところ まで い けば、
社 会保障 をカ ッ トす る とか、大増税 をす る とか しない限 り守 れ ない こ とにな ります。 そ
の ときに国民 がそれ に耐 え られ ない とい うこ とになる と、通 貨統 合脱退 とい う選択 もあ
り得 ない話 で はない と思 い ます。今 は各国 ともそ こそ こ優等 生 になって きてい ます が、
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0
7-
1
0年 ぐらい経 つ とどこか落 ち こぼれて くる国 もな きに Lもあ らず だ と思 い ます。
以上総 じて言 い ます と、通 貨統 合 とい うの はユ ー ロ ラ ン ド全体 に とって プ ラス なのだ
が 、ただ国 に よって は非常 に厳 しい 目に遭 う可能性 が あ る とい うことです。
通 貨統合 の 欧州経済 への影響
で は、実 際 に通貨統合 は欧州 ビジネス に どう作用す るのか とい うこ とです が、 まず は、
当然 の こ となが ら多国間の商 品価 格 の比較 が容 易 にな り、それ に よって価格 の収 れんが
起 こって くる と思 われ ます。 したが って今後 は、欧州 に立地す る企業 は汎 ヨーロ ピア ン
経 営 、す なわ ち財務拠点 、販売拠 点等 を集約 し合理 化 してス ケー ルメ リッ トを生 かす経
営 をやれ るか どうかが勝負 になるだろ うと思 い ます。
それ と同時 に もう一つ大切 なの は、付加価値税 の差 が 目立 って くる とい うことです。
今 回通 貨統 合 に入 った中で は フ ィンラ ン ドが2
2%で一番高 く、一番低 いのは ル クセ ンブ
ル グの 1
5%で 7% も.
差が あ るわけです。商 品 に よっては 7%の差 とい うの はたい- ん大
きい。 そ こで、付加価値税 を調和 す る動 きとい うのが 当然 出て きます 。 これ は税率 の高
い国の財 政 に とっては大 変です。
それか ら もう 1点 は、金融税制 、つ ま り利子 の課税 です。現在 は各国 に よって税率 は
まち まちだ し、源泉課税 の有無 もまち まちです。 しか し、同 じユ ー ロの金融資産 につ い
て税制 が違 うな どとい うこ とは明 らか におか しい。 これ につ いて は EUの中で、源泉課
税 を行 う方 向で調和 してい こうとい う話 が決 まってお ります。
世界経済 に とってのユー ロの意味
で は、次 に もう少 し視野 を広 げて、ユ ー ロが世界 に どうい う影響 を与 えるのか とい う
こ とを考 えてみ たい と思 い ます。 1番 のポ イ ン トは、国際通 貨 と してのユ ー ロのステ イ
タス は どうなるかで しょう。 それ を端 的 に表 す指標 はおそ ら く世界の外 貨準備 で どの通
貨 が どの程 度使 われてい るか だ と思 い ます。 それが 9
7
年末時点で は、 ドルは5
7.
0%、円
は4
.
9%、ユ ー ロは1
9.
4% (
通 貨統 合参加 国の既存通 貨 の合計 で換 算) とい うこ とです。
つ ま り現状 で は、 ドルが圧倒 的 に国際通 貨 と して使 われていて、 まだ まだユ ー ロ と ドル
の差 は大 きい とい うこ とであ ります。
で は、ユ ー ロは国際通 貨 た りうるのか とい うこ とですが、それ には幾 つか条件 があ ろ
うか と思 い ます。 まず① 経 済規模 が あ る程 度大 きい。②購買力 が安定 してい る。 ③経常
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08-
収支が黒字 であ る。 ④ 貿 易制 限、資本取引の規制 が ない。⑤ 自由で発達 した金融市場 が
あ る。 こうい った条件 が必 要 だ と国際金融学者 の間で言 われ ます。それでユ ー ロ を見 て
み る と、① -④ まで はお そ ら く問題 はないだ ろ うと思 い ますム経 済規模 は アメ リカ並 み、
物価 は安定 、・
黒字 は 日本並 み に大 き.
い、為替取 引 の規制 もあ ま りない等 問題 は見 られ ま
せ ん。 しか し、⑤ だけは少 々問題 です。 とい うの は、 ヨー ロ ッパ での金融 の 中心 は まだ
フランクフル トではな くロ ン ドンであ って、その ロ ン ドンが まだユ ー ロ圏 に入 っていな
0
0
3
年 ごろ イギ リスが統合 に参加す るのであれ ば、
、ユ ーロ圏̀ は白
いか らです。 ただ し、2
ン ドンを持 つ こ とにな り、そ うなればニュー ヨー クにか な り対抗で きる ようにな るだろ
うと思 い ます。
・以上 の_
ような ことか らユ ーロ とい うのは、国際通 貨 と しての資格 は十分
に持 ってい るだろ うと思 い ます 。
ただ、国際 金融学者が よ く言 うイ ナー シャの考 え方が あ り,
ます。基軸通貨 め交代 には
非常 に長 い時間がかか る とい うこ,
tです。 とい うの は、基軸通貨 と してのス テ イ タス は、
′
通貨の利用 者側 が決 め るわけで、それ は要す るに外 国が その通貨 をどれだけ信 認 す るか
の問題 です。 それ にはや は り少 な くとも数十年 の歴 史が必 要 だ とい うこ とです。
しか し、いずれ に して も、ユ ー ロは徐 々に ドルに準 ず る国際通 貨に なってい く・
で しょ
う 。 で は、そ こには どうい うインパ ク トがあ るのか とい うこ とですが、 1つ はナ メ リカ
が徐 々に基軸通貨特 権 を失 ってい く可能性 があ ります。 アメ リカは米 ドル を輪転 機 で回
せ ば 自動 的 にフ ァイナ ンスがで きる、あるい は対外 的 な配慮 を全 くせ ず に奔放 な為替政
策 をで きる、 またい くら ドル安 になって もイ ンフ レにな りに くい とい うこ とか ら、'
節度
の ない政策 を行 い うる特 権 を持 ってい ます。 これを アメ リカが少 しずつ失 うこ とに よっ
て、世界経 済 は少 しはアメ リカに振 り回 され な くて済 む ようになるので はないか と思 わ
れ ます。
もう一つ は為替 レー トにつ いてですが、基軸通貨 の ドルが少 しずつ地位 を下 げてユ ー
ロが地位 を上 げてい く過程 で、今 まで ドルに集 中 してい た資 産がユ ー ロに少 しず つ シフ
トしてい きます。 その過程 でユ T ロ高 ・ドル安 になるこ とが 当然予想 され るのですが、
同時 に為替 の変動幅 が非常 に大 き くなる可能性 が あ ります。 とい うの は、今 まで は世界
中のマ ネーは最後 には基軸通貨国であ るアメ リカに流 入せ ざる:
を得 なか ったわけですが、
今後 はユ T ロで も決済 され る とい うこ とにな ります。す なわ ち、 自動 的 にアメ リカに還
流す る とい う仕組 みで はな くな ります。そ うなる と国際資本 がユ -ロ と ドルの由で揺 れ
動 く可能性 が あ るわけです。
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0
9-
そ こで一つ問題 なの は、 日本 は、今 まで対外資 産 を ドルに集 中的 につ ぎ込 んで きてい
る こ とです 。今後 、為替 レー トが基本 的 にユ ー ロ高 ・ドル安 になる中 においては、対外
資 産 の 目減 りの リス クが非常 に高 まるので はないか とい う こ とです。今後 は、企業 、個
人、国の各 レベ ルで ドル とユ ー ロ- の分散投 資 を進 め る こ とが必 要で はないか と思 い ま
す。
円の 国際化 の意義
さて、国際通 貨 の様 々な動 きの 中で、円 は どうなるので しょうか。先程 、外 貨準備 に
占め る円の比率 は4.
9% と申 し上 げ ま した 。 これだ け見 て も、円 とい うの は ドル、ユ ー
ロにはるか に及ば ない とい うこ とが言 えます。 さらに別 の数字 で 日本 の貿易 ・金融取 引
において円が どれ ぐらい使 われてい るか を見 て も円の プ レゼ ンスは 低 い。例 えば、 日本
との貿 易取 引であれ ば、円 は少 な くとも半分程 度 は使 われていて しか るべ きです。 とこ
ろが残念 なが ら、その半分 に も届 いてい ない とい うのが現状 です。 ここか ら円 を国際化
してい く、要す るに円建 ての比率 を高 めてい く必 要が あ るので はないか とい う議論 が 、
昨今盛 ん にな って きま した 。
で は、 なぜ 円の国際化 をす る必 要があ るので しょうか。 まず は貿 易 にお け る為替 リス
クの軽減 とい うこ とが挙 げ られ ます。 ただ注意 しなけれ ばな らないの は円建 て貿易 とい
え ども為替 レー トが変 わ ります と、結局円建 て価格 を切 り下 げ ざる を得 なか った りしま
す。確 か に円建 て な ら契約 か ら決済 の間の リス クはな くな ります が、為替 レー ト変動 に
よる収益 の変動 とい うの は完全 には避 け られ ない とい うこ とは含 んでお く必 要が あ る と
思 い ます。
む しろそれ よ りも大事 なの は、 日本 の金融面 での資 産 の為替 リス クを軽減す る こ とだ
ろ うと思 い ます。 とい うの は、 日本 は世界一 の膨 大 な村外資 産 を持 ってい ます。 そ して
悲 しいか な、そのか な りの部分 が外 貨建 て とな ってお り、 この部分 は完全 に為替 リス ク
に さらされ てい ます。 これが 円建 て に切 り替 われ ば、 日本 と して は対外資産 を持 ちなが
ら為替 リス ク持 たな くて済 む とい うこ とにな ります。 ご案 内の とお り、 ドル とい うの は
どん どん低 下 して きた歴 史 を持 ってい ます 。 か つ て 3
6
0円 だ った の が今 は 3分 の
1に
な ってい るわけで、 その間膨大 な実損 が出てい るわけです。 その損 をだれが負 ったか と
い うと機 関投資家が まず負 うわけですが、最終 的 には国民 が全部負担 して きたわけです 。
です か ら、 円の国際化 とい うの は、や は り日本 の国民全体 に とって非常 に重 要 な問題 な
-1
1
0-
のだ とい うこ とです。
そ こで、対外資産が リス クに さらされてい るな ら黒字 を減 らせ ば良いで はないか とい
う話 が アメ リカか ら必 ず出て くるのですが、 これは私 は言語道 断 な話 だ と思 い ます。黒
字 とい うのは我 々の所得 の源泉であ って、それ を減 ら して為 替 リス クを減 らす とい うの
は本末転倒 だろ うと思 い ます。黒 字 を増 やす のがいい とは言 い ませ んが、黒字 を減 らさ
な くて も為替 リス クを回避す る とい うのが大切 だろ うと思 い ます。
3つ 目は、当然 の話 ですが、円建 て金融取 引の活発化 は 日本 の金融市場 の発展 要因 に
なる とい うこ とです 。 イギ リスの例 な どを見 る と、金融産菜 が国民 を潤 す とい う面 が多
分 にあ ります。 日本 の東京市場 とい うのは最近地盤沈下 してい ま して、 シ ンガポールに
も負 けそ うな状況 になって きて い ます ので、円の国際化 によって金融市場 の発展 を促 そ
うとい うことです。
円の国際化 はいか に進 め るべ きか
最後 に、円の国際化 は どう進 め るべ きか とい う、現在一番 ホ ッ トな議論 に触 れ たい と
思 い ます。そ もそ も円の国際化 とい うの は、それほ ど新 しい議論 で はな く、金融市場 の
開放 をア メ リカに迫 られた 1
98
0年代後半 の頃か らあ りま した。大蔵 省 は80年代 か ら円の
国際化の ため に金融市場 の整備 な どを進 めて きたわけです。 ただ、 この ところ、 日本 の
金融市場 の整備 が急加速 してい ます。例 えば9
8年 4月には外 為法 が改正 されて、内外 の
9年 の 4月には短期 の国債 の源泉徴収課
資本取 引 は完全 に自由 にな りま した 。 また今年 9
税 を廃止 し、有価証券取引税 も廃止 しま した。 これ らは全て円の 国際化 の ため とい うこ
とで実施 されてお ります。 そのかいあ って、客観 的 に見 て も諸外 国 に比べ て制度 的 には
さほ ど遜色の ない状 況 になって きてお ります。
残 された問題 は、 どうすれ ば円の利用者す なわち外 国人が 円 を使 う気 になるかであ り
ます。 もちろん 日本 が外 国 に対 して政策的 に直接手 を下す とい うの は難 しい。 しか し今
の状況 は、 日本が一生懸命 アジアに働 きかければ円 を使 って もらえる ような仕組 み をつ
くり得 る絶好 のチ ャ ンスです。
す なわ ち、 アジアの通貨体制が今変わ ろ う と してい る とい うこ とで あ ります。 9
7
年に
アジアの通貨危機が起 こったわけですが、その大 きな原 因の 1つ と して彼 らが ドルペ ッ
グ を してい た とい うこ とが挙 げ られ ます。元 来 ドル とい うの は どん どん弱 くな る通 貨
だ ったわけで、 だか ら彼 らも ドルペ ッグを していれば競争力 を保 てたのです が、 1
9
9
6年
-111-
に ドルが反転 して急激に上が り出 してしまいました。彼 らは日本 と輸出品がかなり競合
していますので、それで彼 らは競争力を随分失って しまったわけです。そ して、彼 らの
経済は大 きなダメージを受 けてあの危機になったという面があ ります。
今、彼 らは ドルペ ッグを維持できな くなって変動相場制になっているわけですが、そ
れは次の為替制度をどうしようか と模索 している状況でもあ ります。再び ドルペ ッグに
戻ると、また ドル高が進んだときにはまた同 じようなことが起こる可能性があ ります。
対米貿易げか りであれば ドルペ ッグしていても全然問題はないのですが、対 日本や対E
U
が同程度に大 きい現状では必ず競争力の問題が生 じてきます。
そこで、地域別の貿易量に応 じて通貨バスケットをつ くって、アジア諸国の通貨がそ
のバスケットにリンクするという体制が良いのではないかという議論が出てきています。
日本 もこの通貨バスケットペ ッグが良いのではないかと言ってお りまして、私 も昔から
このバスケットペ ッグがいいだろうと申し上げてお ります。ただアジアの国々はなかな.
かこれを理解 して くれません。彼 らはやはりドルを信頼 しているのです。
、
.
あるいはアメ
リカへの配慮が見え隠れするのであ ります。
しか し、いずれにしてもこの通貨バスケットにリンクするということになると円の国
際化はかな り進む可能性があ ります。 というのは彼 らが対円にも部分的にリンクすると
いうことになるので、円調達、円投資、あるいは円貿易 といったもののリスクが少なく
なるわけです。すると、円をより多 く使 うようにな ります。仮に円と ドルとユーロとを
約 1:1:1の割合で含むバスケットにリンクするということになれば、ユーロ,
b使わ
れるということで、ヨーロッパの国々も通貨バスケットを支持することになります。 し
か し、反対論 を示すのは、やはりアメリカです。アメリカにしてみればアジアの国々が
ドルペ ッグを続けて くれるのが一番良いわけです。それがアメリカ企業にとって貿易の
リスクが最 も少な く、ある,
いはアジアに投資するアメリカの銀行にとってリスクが最 も
少ないシステムだからです。
今後は、 日本は通貨外交 としてアジアの国々に、「
通貨バスケットにリンクするのが
あなたたちのためなのだ」 と説得 し続けることが非常に大切だろうと思います。それと
同時に、円をもっと実際に流 してい くことも大事だと思います。例えば政府借款や日本
輸出入銀行の融資等の中には円建てでないものもあ りますが、こういうものは円建てに
してい くべ きだろうと思います。いずれにしても、そういう様々な手法を絡めて円の国
際化を進めてい くことが、現在、 日本政府に求められています。また、実際そういうア
ー11
2-
ク シ ョンを起 こ しつつ あ る ところだ と思 い ます 。
「
金融の グローバル化 と今後 のあ り方」 プロジェク ト事務局
-11
3-
連合総研副所長
井上 克彦
同 主任研 究員
川崎 泰 史
同 研
玉岡 哲也
究
員
連合総研ブックレットNo.
2
金融のグローバル化を考える
1999年 9月30日発行
発 行 人
●栗林 世
編
集
●財団法人 連合総合生活開発研究所
〒1
020072 東京都千代田区飯田橋 132
曙杉館 ビル 3F
TEL0352100851 FAX0352100852
制
作
●株式会社 コンポーズ ・ユニ
〒1
088326 東京都潜区三田 1101
3
TEL0334561541 FAX0337983303
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