...

アジア経済 - 三菱総合研究所

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

アジア経済 - 三菱総合研究所
研究員
群像 17
の方が、よりドラスティックな変化を遂げ
ると永野は予測する。永野は、当社にお
けるアジア担当のエコノミストである。
政策・経済研究センター 主任研究員
永野 護
現在、多くの業界で、世界的に大規模な
M&A ブームに見舞われているが、2020
年には日本企業の姿が大きく変化し、おそ
らく企業には国籍がなくなっているとは
永野の言葉だ。すでに東証上場企業、特
に日経 225 採用企業の多くは、40 ∼ 50%
程度の株式を外国人や外国企業に所有さ
れる。経営者が外国人という企業も出現
している。企業名が日本企業であっても
アジア経済
【2020年、世界は日中韓ASEANの時代へ】
株主、経営者が外国人、逆に日本人が外国
企業のオーナー、経営者となるケースが
2020 年には一般化しているというのだ。
このときに、
「東京が、世界の成長セ
ンター・東アジアの中心地として、世界
世界の成長センター・
東アジアと日本
経済を円滑に回転するための役割を果た
していくことが日本の発展につながる」
20
企業を取り巻くビジネス社会、金融資
と永野は主張する。そのためには、日本
本市場、環境・エネルギーおよび安全保
の企業や人材は世界へ向かって出て行く
障問題などを考える場合、もはや日本だ
ばかりでなく、日本国内を活性化する必
けを見据えていくことはできない。特に、
要があり、そのための方策や仕組み作り
世界の人口の 45%を超える中国・イン
が必要だという。
ドや、今後の東アジア共同体の設立の可
最近になり、中国企業から東証上場を
能性などを考えると、今後も日本社会は
実現した企業も現れており、実は東京で
東アジアとの一体化を進めるだろう。
の上場意向を持つ企業や、日本への留学
「2020 年には、日本、東アジア、国際社
希望を持つ学生は多い。
「例えば東アジ
会は激変しているだろう」と、当社 政策・
アの国々の中には、東大を卒業してトヨ
経済研究センター 主任研究員 永野 護は
タ自動車に就職し、自国の駐在員として
述べる。1990 年代から 2000 年初頭は「失
凱旋帰国することを目指す学生も増えて
われた 10 年」と呼ばれた経済低迷が続い
いるのです」と永野は教えてくれた。
た。この時代にも、終身雇用制度が見直さ
2020 年には、東京が東アジアの中心
れ、企業の合従連衡がブームとなり、
IT
となるためには、日本で学びたい、働き
化社会が想像を超える速度で進展したり
たい、行きたい、という人材や企業に、
と、戦後 60 年の日本の枠組みは一変し
どのような活躍の場を提供できているか
たが、2005 年から 2020 年までの 15 年間
が鍵となる。
200706 研究員群像
広げている。インドネシア・スリムヤニ
ミクロ情報を鳥瞰し、
有用なマクロ情報を提供
財務相、タイ・チャランポップ財務相は、
かつてアジア通貨危機後に共同研究を開
永野は、大学院修了後、1991 年に当社
催した際の研究メンバーであった。
に入社する。入社後は、顧客からの依頼
によるいわゆる受託研究に携わり、東ア
東アジアの経済統合と
モノ・カネ・ヒトの移動
ジアの仕事を数多く手掛けていた。
折しもアジア通貨危機が起こった1997
今後永野は、日本がアジアと共生し、
年、現在所属する政策・経済研究セン
そのなかでリーダーシップを取っていく
ターが設置される。学生時代に培った金
ためには、いくつかのステップがあると
融についての知見と東アジアの仕事を手
言う。まずは、東アジア諸国との FTA 政
掛けた経験が買われ、東アジアのマクロ
策を進めてゆくことによる「モノの移動
経済予測を担当することになる。その後
の自由化」である。次は、アジア債券市
は、東アジア諸国の台頭や、時代と顧客
場構想など、東アジア共同体を見据え、
のニーズにより、東アジアのマクロ経済
金融資本市場の域内統合を進める「カネ
予測担当者として活躍する日々を送る。
の移動の自由化」、第 3 に高技能者、介護
永野は数値データだけに頼りはしな
福祉士等の国境を越える移動を緩和し、
い。東アジア各国に足繁く通いヒアリン
ヒトの往来が容易な世の中を作る「ヒト
グを行う。その結果を取り入れ、乖離の
の移動の自由化」である。変化著しい今
少ない地に足の付いた予測をモットーと
後の日本、そして東アジアを、よりよい方
している。また、個別の顧客に対しては、
向へ導くため、エコノミストの一人とし
顧客が持つミクロ情報をもとに、マクロ
て、永野はその努力を惜しまないだろう。
情報などを織り交ぜ全体を鳥瞰するな
ど、より有用な情報を提供する。社内の
他部署とも連携を取り、専門的なことに
専門分野
◎ 内外経済
マクロ経済を結びつけ、付加価値を生み
主なプロジェクト実績
出したりと、総合シンクタンクとしての
◎ 2006・2007 年 中国・東アジア経済見通し(社内受託)
強みを発揮することを心がける。
また、政策志向が強い点も持ち味の一
◎ インドの金融システムの現状と展望に関する調査研究(日本銀行)
◎ 日豪経済関係強化の方策に関する調査(外務省)
◎ 日米韓の IT 国際比較調査((独)経済産業研究所)
つと言えよう。今後はさらに日本と東ア
ジアとの関係は強化される。通商外交政
策をどのように進めてゆくべきなのか、
講演・寄稿等
寄稿 ◎「インサイト」ロイター通信(ロイター・ジャパン)
(2007.06 ∼ 12)
TV ◎「What's on Japan:朝鮮半島情勢の展望」
(NHK 国際放送)
(2007.04.04)
常に日本が「オープンなイノベーション」
寄稿 ◎ 経済セミナー6月号 特集「ビジネスと経済学」
(日本評論社)
(2007.06.25)
による「美しい国」へと向かうためには
TV ◎「マーケット・ウォッチ」日経 CNBCマーケット・ウォッチ(日経映像)
(2007.04.11)
どうすべきなのかといった意識が根底に
ある。さらには、国内外の学会活動にも
力を入れ、内外に多くのネットワークを
TV ◎「中国再利上げの可能性と株式市場」
(ブルームバーグ・テレビジョン)
(2007.03.28)
委員 ◎ インド経済の諸課題と対印協力に関する研究会(財務省)
TV ◎「NHK ニュースウォッチ9」2006.10.11 21 時(NHK)
(2006.10.11)
著書 ◎「新アジア金融アーキテクチャ」
(日本評論社)
(2005.10) 等多数
研究員群像
200706 21
Fly UP