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28 浜崎しっちょる会

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28 浜崎しっちょる会
住民が共に育てる
観光まちづくり
事例
山口県 萩市
浜崎しっちょる会
28
地域の中のコミュニケーション
山口県萩市の浜崎地区は、北前船の寄港地であったため江戸時代か
ら栄えたまちである。しかし、昭和 30 年代以降、かつての賑わいは衰
退の一途をたどっていた。このような状況を危惧した地域住民は、
“昔
のような賑やかさを浜崎に取り戻したい”という強い思いのもと、有
志約 30 名が集い「浜崎しっちょる会」を結成した。
浜崎しっちょる会は、浜崎の町並みを守り、活かすための活動とし
て、江戸時代から残る歴史的資産の旧山村家住宅や梅屋七兵衛旧宅の
管理に取り組み、さらに地域のお宝探しと、そのお宝を広く紹介しよ
うというまちづくりイベント「浜崎伝建おたから博物館」を実施し大
成功をおさめた。
梶原 衞氏(かじはらまもる)
これをきっかけに、御船倉ミニコンサートの開催、伝建地区ボラン
ティアガイドの育成と案内の実施など次々と斬新なアイディアを具体
化していく。なによりも地域住民間のコミュニケーションの活発化を
重視しながら、訪れる方々を楽しませる努力を続けている。
取組主体
浜崎しっちょる会
設 立 年
平成 10 年(1998 年)2 月
住
山口県萩市浜崎町
所
(http://hamasakih.exblog.jp (関連サイト) )
電話 0838-22-0133
FAX 0838-22-0133
萩の歴史的景観の保護・活用を
目指す住民グループ「浜崎しっ
ちょる会」会長。強烈な行動力、
判断力、発言力をもちあわせた
天性のリーダー。元郵便局長。
萩市浜崎在住
地域の課題
ソリューション
かつて繁栄したまちが衰退の一途をたどって
いる
→
“昔の賑わいを取り戻そう”という共通目標のもとに
有志が集まる「浜崎しっちょる会」を発足
まちには、多くの文化的遺産が残されている
が、住民はそのことに気付いていない
→
地域のお宝を探し、展示するまちづくりイベント「浜
崎伝建おたから博物館」を開催【住民も来訪客も共
に楽しむ】
(地域の特徴)
昔の賑わいを取り戻そう
平成 9 年 2 月、地元有志約 30 名が集まって、浜崎のまちづくりにつ
いて話し合っていた。北前船が寄港する港町であった浜崎は江戸時代
から繁栄していたこと、木炭バスが走っていたこと、今も江戸時代の
建物が残っていること、てんぷらやかまぼこなどの水産加工物がある
ことなど、浜崎の良さがどんどんでてきた。しかし、かつて萩で最も
賑やかだったまちは、昭和 30 年代以降は衰退の一途ではないか。こん
なにも素晴らしいものがたくさんあるのに、まちに元気がない。なら
ば、
“昔の賑わいを取り戻そう”という共通目標に向けて動きだそうと
町内に眠る数々のお宝。お宝を核に
してまちの賑わいを取り戻す
いうことになった。そしてこの時の有志が母体となって「浜崎しっち
ょる会」が平成 10 年 2 月に発足した。その後周辺地域にも仲間を増や
して、現在は約 90 名の会となっている。
(取り組み概要)
イベントの目的は、地元の人と、来訪客が共に楽しむこと
話し合いを続けると、
「私の家には吉田松陰の書状がある」とか、
「坂
本龍馬が名前を書き入れた萩焼茶碗がある」という話まである。それ
では一度そういうお宝を各家に展示して、江戸時代の町並みと一緒に
見てもらおうということになり、まちづくりイベント「浜崎おたから
博物館」を開催することになった。初めてのイベント開催に取り組む
浜崎しっちょる会の 20 数名の役員は、毎週 1 回、夜 7 時から 9 時まで
集まり、町内のお宝探し、食堂でふるまうメニュー、露天の内容、手
住民がみんなで楽しむイベントは、コ
ミュニケーションの場
伝いの人集めなどをとことん話し合った。その結果、全町内会、婦人
部、若者グループの協力を得て開催したイベントには、町内外から約
3,000 人もの人が集まった。このイベントは現在も毎年 5 月に開催し
ている。他にも運動会や、旧萩藩御船倉を会場としたコンサートも開
いている。イベントの目的は、地域内でのコミュニケーションの活発
化と、浜崎しっちょる会のことを知ってもらうこと。これによって、
町並みの保存というハード整備の考え方にも理解が広まった。
イベントの実施には、婦人部などの
協力が欠かせない
地域の課題
ソリューション
歴史的な町並みを保存し、活用する
→
「街なみ環境整備事業」と「重要伝統的建造物群保
存地区」に向けて活動を展開 【町並み保存】
来訪者の増大への対応
→
ガイド班を設置して、自分たちでまちのお宝を案内
する 【有料ガイドによる町並み案内】
(地域資源の発掘と活用術①)
歴史的町並みを保存・活用したまちづくり
ソフト事業の成功を受けて、地域住民はハード整備にも着手し、ま
ずは市の担当者の助言を受け、建設省(現国土交通省)の「街なみ環
境整備事業」に取り組んだ。これは地区住民の 3 分の 2 以上が建築協
定を結び、協定に従って住環境を整えるにあたり国と市から補助金が
でる制度である。はたして住民同士の建築協定が結べるのか、不安は
つきなかった。平成 11 年の後半から各町内で 30 数回の説明会や協議
会を開催した。このとき、浜崎しっちょる会の会員が友人を引き連れ
北前船の寄港地として栄えたまちに
は江戸時代の建物が残る
て説明会に参加したり、会の役員が建築協定の印鑑集めに奔走した結
果、平成 12 年 2 月には 8 割を超える加入者により協定が締結された。
さらに文化庁の「重要伝統的建造物群保存地区」の選定にも取り組
んだ。平成 12 年度に浜崎町づくり委員会をつくり、
保存計画を策定し、
この計画に対する住民の合意を得るために 20 数回の説明会を実施し
た。地元委員 19 名のうち 18 名が浜崎しっちょる会の会員であり、説
明会には浜崎しっちょる会の会員が住民をひきつれて参加したことも
あり、平成 13 年 11 月に、正式に保存地区の選定を受けた。
しっちょる会ガイドによる町並み
案内
(地域資源の発掘と活用術②)
まちの宝を自分たちで案内する
重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けたことにより、まちを観
光客が訪れるようになったことを受け、自分たちでまちのお宝を案内
しようと、平成 17 年に浜崎しっちょる会の会員 9 名によるガイド班を
つくった。当初は、市でつくられた資料をもとに案内していたが、少
しずつ自分たちの知恵を加えて、手作りの資料を作成した。年に数回
の勉強会を開いて言い回しを訓練した。方言で話すことは良いことだ
が、時間厳守でウソはいわないという基本を確認した。平成 22 年度か
らはガイドを有料化して、現在は観光バス 1 台当たり、1 時間程度の
案内につき 1,000 円徴収している。新たな課題は、ガイドの高齢化で
あり、後継者のスカウトと育成に悩む日々である。
自分たちで作成した「しっちょる会
浜崎マップ」
“御船倉コンサート”ができるまで
(地域資源を観光事業に活かすまでのプロセス)
萩市から浜崎しっちょる会が管理運営委託を受けている国指定
史跡御船倉を利用したイベントも毎年開催している。
平成 22 年には御船倉の中で「津軽三味線演奏会」を開催した。
実現させたのは浜崎しっちょる会会長梶原氏の行動力。青森県で
開催された伝建地区の大会に参加した梶原氏は、その時のアトラ
クションとして催された津軽三味線演奏会に感銘を受け、この演
国指定史跡「旧萩藩御船倉」
奏会の誘致を決断する。すぐさま演奏責任者とその場で交渉を開
始した。旅費負担のことも考慮し、せっかく山口県まで来るので
あればと、浜崎の他にもいくつも声がけをし、結果として山口市
など計 4 箇所で 5 回の公演会となった。
平成 23 年には「アカペラのコンサート」を開いた。もともとこ
の催しは岩手県大船渡で開催される予定だったが、東日本大震災
により開催できなくなった。それならば浜崎でやろうと梶原氏は
決断し、誘致に向けて動き出した。運営費のうちチケット販売で
津軽三味線演奏会の様子
賄いきれない分は、県に補助金を申請し、経費に充てた。萩市内、
山口県内から多くの来訪客がかけつけ、大盛況であった。
他にも「二胡の演奏会」や、地元の出演者による大正琴のコン
サートなども実施してきた。地域住民が触れる機会の少ないホン
モノのコンサートを臨場感あふれる間近で体験することができる
と、地域外にも多くのファンができた。
このようなイベントの実施と成功は、梶原氏の行動力、発言力
及び判断力によるところが大きい。梶原氏は組織運営にはきまり
ごとが必要で、きまりを守らない人には厳しくあたる、きらわれ
るぐらいのリーダーでなければ物事は進まないと話す。
(統計データ)
数字でみる「町並みガイド」
町並みガイドの
まち並みガイドの
観光バス扱い台数
(台)
観光バス扱い台数
500
平成 17 年にスタートした「浜崎しっちょる会」ガイド班が案内した
観光バスの台数は、平成 21 年は 217 台、平成 22 年は 374 台、平成 23
年は 424 台と年々増加してきた。平成 24 年は 3 月の一ヶ月だけで約
60 台の観光バスに対応する予定である。
374
400
300
424
217
200
100
0
平成21年
平成22年
平成23年
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